歯周病の阻止および治療、歯周創傷の治癒の改善および口腔衛生の促進を目的とする新規薬物
本発明は、プラスミノーゲン活性化経路の成分の使用およびプラスミノーゲンを直接的にまたはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する化合物の使用であって、ヒトおよび非ヒト対象におけるインプラント周囲炎などの歯周病の予防、阻止および治療、歯周創傷の治癒ならびに口腔衛生の促進のための使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば歯肉炎および歯周炎などの感染性歯周病および歯肉組織に影響を及ぼす壊死病態の予防、阻止および/または治療のための化合物および方法、一般的な口腔衛生の促進に関し、局所的な外科創傷などの歯周創傷の治癒の改善にも関する。特に、本発明は感染性歯周病を阻止および治療し、口腔衛生を促進し、および歯周創傷の治癒を改善する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病
歯周病は歯を支持し固定する組織(歯周組織としても知られる)に影響を及ぼす慢性炎症性疾患である。これは、特異的な歯肉縁下微生物と宿主の免疫および炎症応答との不均衡な相互作用により引き起こされる(1)。成人人口のほぼ四分の三に影響を及ぼし、ヒトの最も一般的な疾患の一つとされる。歯周病に関与する組織は歯茎であり、これは歯肉、歯周靱帯、セメント質および歯槽骨を含む(Fig.1)。歯肉は歯および歯槽骨の一部を覆う桃色の角化粘膜である。歯周靱帯は歯茎の主な部分である。セメント質は歯の低い部分を覆う石灰化構造である。歯槽骨は歯が埋め込まれた顎骨(上顎骨および下顎骨)からの1セットの突起である。歯周病が開始される領域は歯肉溝(歯と歯茎の間のポケット)である。
【0003】
感染、炎症およびこれに伴う宿主防衛および創傷治癒はすべて、歯周病の特質である。この疾患は歯の周りの歯肉における混合細菌感染として開始する(2)。健康な口内では、500種より多い微生物が発見されている。歯周病においては、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、カンピロバクター・レクタス(Campylobacter rectus)、アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス(Actinobacillus actinomcetemcomitans)およびフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)などのいくつかの潜在的歯周病原菌が研究されており、病原性微生物叢の有意な部分を示すと考えられる。これらの微生物は、歯茎、歯槽骨、歯根の外層の破壊などの不可逆的組織破壊をもたらし最終的に歯を失わせると直接的または間接的に考えられる、IL-1、IL-6、TNFなどのいくつかの因子ならびに酵素を宿主細胞にて誘発しうる。さらに、重篤な歯周病は、口臭、心疾患および卒中、糖尿病、呼吸器疾患および妊娠中の早産を引き起こしうる。喫煙/煙草使用、遺伝、妊娠および思春期ストレス、薬物、糖尿病、栄養不足および他の全身性疾患などの他の病原因子がある。
【0004】
歯槽骨の感染性破壊の別形態は、歯周炎、すなわちインプラント周囲炎(Periimplantitis)に近似しており、アロプラスト物質(alloplastic material)の顎への外科的移植後に起こりうる。移植法はオッセオインテグレーション(osseointegration)とも称されることが多く(3)、アロプラスト物質、すなわち歯科インプラント(チタン製であることが多い)と生きている骨との近接した接触を伴う。この方法は、本当の歯の欠乏の後に咬合を修復するために用いられ、現在エデンツリズム(edentulism)を治療するための標準的方法である。オッセオインテグレーションされた歯科インプラントと本当の歯との主な違いは、インプラントの周りの真の歯周組織の非存在である。正常な歯は歯槽骨内の歯の生理的な動揺を可能にする膠原線維の網構造に吊されるが、歯科インプラントは軟組織に干渉しないで骨に堅く連結される。骨組織への接着における主な相違にもかかわらず、感染中の歯およびインプラントの病変は、生物膜形成およびコロニー形成による感染、炎症応答ならびに免疫学的防衛などの多くの重要な特徴を共有する。従って、インプラント周囲炎は、機能上オッセオインテグレーションされたインプラントの周りの組織に影響を与え、支持骨の欠乏をもたらす炎症/感染過程である。インプラント周囲炎は、たとえインプラント周囲の感染の分解を標的化した広範な治療が行われても、完全な崩壊およびインプラント欠乏をもたらすことがある。インプラント周囲炎はまた、骨欠乏を伴わないで、インプラント周辺軟組織の不可逆的炎症性/感染性変化としても起こる。軟組織におけるインプラント周囲炎の有病率は8〜44%の範囲にて報告されているが、骨のインプラント周囲炎の割合は1〜19%の範囲にて報告されている。広範な割合は実体の少なくとも一部の定義における差によるようである。インプラント周囲炎の割合はインプラントを使った年数に関連する可能性が最も高い。歯科インプラント治療は近年比較的導入されたため、その数はここ数年増大しているようだ。歯および歯科インプラントにおける感染に対する炎症応答および免疫学的防衛における多くの類似性を考慮すると、インプラント周囲炎はインプラントされたアロプラスト物質に影響を及ぼす歯周病の形態と考えることができる。
【0005】
歯周病は一般的な口腔衛生の重要な態様である。口腔衛生は、個体が活動性疾患、不快または機能障害なく、食事し、会話し、社会に適合することを可能にし、一般的な健康問題に貢献する、口腔および関連組織の健康状態を意味する。口腔衛生の主な兆候としては、唾液および歯肉組織における細菌叢ならびに組織壊死および歯肉組織における炎症が挙げられる。口腔衛生は一般的健康に不可欠であり、分離して考えるべきではない。
【0006】
抗生物質および他の抗菌剤は第二次世界大戦時代以来感染症の治療に広く用いられてきた。疾患を引き起こす病原菌に対する抗菌剤の成功は、現代医薬の大きな達成の中にある。しかし、多くの抗菌剤は昔ほど有効ではない。抗生物質に対する抵抗の発展における重要な因子は新環境状態に素早く適応する感染性生物の能力である。時間とともに、いくつかの細菌は抗生物質の効果を回避する方法を発展してきた。抗生物質の広範な使用は、これらのかつて強力であった薬物から細菌を生き残らせる進化的な適応を促進させたと考えられる。究極的に、病原菌を撃退する困難性の増大は、病院または他の設備にて感染する危険性の増大をもたらす。薬物耐性は、抗生物質の補助なしでは感染を撃退することができない危篤状態の患者を有する病院には特に困難な問題である。それゆえ感染に対する感染防衛を改善するために新規な治療戦略が大いに必要であるという認識が増大している。
【0007】
歯周病の治療としては、保守的(非外科的)方法および外科的方法が挙げられる。保守的治療は、歯石除去および根面平滑化ならびに歯肉掻爬として知られる念入りなクリーニングからなる。この治療は、患部の歯根表面に定着する生物膜を除去し、治癒が起こりうる環境を再構築することを目的とする。良い口腔衛生状態に伴い、これにより健康な正常な歯茎を維持されるだろう。外科的歯周治療は、歯槽骨(骨)外科手術、歯肉/歯周移植、歯肉弁手順、小帯切除術、歯肉切除、組織再生誘導法/骨増強からなる。しかし、歯周病の治療をうまく改善した種々の治療方法にかかわらず、口腔衛生における多くの課題が未だ存在する。そのような課題の要因としては、抗生物質に対する口腔細菌の耐性の増大、口腔の一般的健康を改善するより単純な方法の必要性、高価で面倒な歯科治療手順、ストレスの多い現代生活、および先進国および発展途上国における恵まれない人々の重い歯科負担が挙げられる。それゆえ歯周病を阻止し治療し、口腔衛生を促進し、歯周創傷の治癒を改善する新規な方法が大いに必要である。
【0008】
壊死
壊死は細胞および生きている組織の非定型的または偶発的な死に付けられた名称である。これは定型的な細胞死の一部であるアポトーシスより規則的ではない。無秩序な細胞死は一般に、死にかけている細胞を巻き込むように近接する食細胞に言う「食べて(eat-me)」細胞シグナルを送らないため、免疫系の食細胞による細胞残屑の掃除はアポトーシスと対称的に、一般により困難である。このシグナル伝達の欠如は、細胞がアポトーシスを受けた場合よりも壊死により死ぬ死細胞を免疫系が探して再利用することをより困難にする。細胞膜損傷後の細胞内内容物の放出は壊死における炎症の原因である。傷害、感染、がん、梗塞、毒物注入(invenomation)および炎症などの壊死の多くの原因がある。細胞におけるある不可欠な系へのいくつかの損傷は、他の系への二次損傷、いわゆる「効果の連鎖」を引き起こす。壊死は、細胞成分または完全な細胞自体を消化することができるリソソームにより放出される特定の酵素により引き起こされる。細胞により受ける傷害は、リソソーム膜を危険にさらすことがあるか、または酵素における放出をもたらす未組織の連鎖反応を誘発することがある。アポトーシスと異なり、壊死により死んだ細胞は他の細胞を損傷する有害な化学物質を放出することがある。生検材料の壊死は固定または冷凍により停止する。
【0009】
壊死はいくつかのタイプの歯周病に起こる。歯肉の壊死は隣接歯間壊死性潰瘍、突発性出血、疼痛の急激な発生および悪臭により特徴付けられる炎症性破壊的歯肉病態である。適切に治療しなければ、歯肉の壊死は再発の傾向が著しく、歯周サポートのかなりの欠如を引き起こす。
【0010】
現在、壊死を治癒する主な治療方法が四つある。第一は外科的であり、最も速く、それゆえ多くの壊死領域または深い傷が存在している場合に勧められる。第二は機械的であり、水治療法、デキストラノマーおよび傷口洗浄が挙げられる。第三は酵素的であり、使用する酵素は主にコラゲナーゼ(例えばSantyl)であるが、効果は感染が示されたときには遅すぎ、第四は自己分解方法により、創傷液中の酵素によるが効果は極めて遅い。しかし、四つの治療方法のいずれも機能的および審美的に満足いく壊死除去および組織改造を与えることができない。それゆえ壊死の見事な除去を達成するために、新規治療戦略が大いに必要である。
【0011】
プラスミノーゲン活性化系
プラスミンはPA系の重要な成分である。これはフィブリン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニンおよびプロテオグリカンなどのECMのいくつかの成分を分解する能力を有する広範な薬効範囲のプロテアーゼである(4)。さらに、プラスミンはいくつかのプロマトリックス・メタロプロテイナーゼ(pro-MMPs)を活性MMPsに変換することができる。それゆえプラスミンが細胞外タンパク質分解の重要な上流調節因子であることができることが示唆されている(5;6)。プラスミンは、二つの生理的PAs、tPAまたはuPAのいずれかによるタンパク質分解的開裂を通してチモーゲンプラスミノーゲンから形成される。プラスミノーゲンが比較的高レベルにて血漿および他の体液中に存在するので、PA系の調節は主にPAの合成および活性のレベルにて起こる。PA系の成分の合成はホルモン、成長因子およびサイトカインなどの異なる因子により非常に調節される。さらに、血漿およびPAの特異的な生理学的阻害剤が存在する。プラスミンの主な阻害剤はα2-抗プラスミンである。PAの活性は、uPAおよびtPAの両方を阻害するPAI-1、および主にuPAを阻害するPAI-2により調節される。いくつかの細胞もまた、直接的なタンパク質分解活性を細胞表面に向けることができるuPA(uPAR)のための特異的細胞表面レセプターを有する(8;9)。
【0012】
プラスミノーゲンはおよそ92 kDaの分子量を有する790アミノ酸からなる一本鎖糖タンパク質である(7;8)。プラスミノーゲンは、主に肝臓にて合成され、ほとんどの細胞外液中に豊富にある。血漿にてプラスミノーゲンの濃度はおよそ2μMである。それゆえプラスミノーゲンは組織および体液におけるタンパク質分解活性の大きな可能性源を構成する(9;10)。プラスミノーゲンは二の分子形態にて存在する:Glu-プラスミノーゲンおよびLys-プラスミノーゲン。天然の分泌および未開裂形態はアミノ末端(N-末端)グルタミン酸を有し、それゆえGlu-プラスミノーゲンに指定される。しかし、プラスミンの存在下、Glu-プラスミノーゲンはLys76-Lys77にて開裂し、Lys-プラスミノーゲンとなる。Glu-プラスミノーゲンと比較して、Lys-プラスミノーゲンはフィブリンとより高い親和性を有しており、PAによりより高速度にて活性化される。プラスミノーゲンのこれら二つの形態はuPAまたはtPAによりArg560-Val561ペプチド結合にて開裂し、ジスルフィド連結二本鎖プロテアーゼプラスミンの形成をもたらしうる(11)。プラスミノーゲンのアミノ末端部は五つの同種三重ループ、いわゆるクリングルを含み、カルボキシル末端部はプロテアーゼドメインを含む。いくつかのクリングルは、プラスミノーゲンとフィブリンおよびその阻害剤α2-APとの特異的相互作用を媒介するリジン結合部位を含む。新規かつ興味深い発見は、クリングル1-4からなるプラスミノーゲンの38-kDaフラグメントが血管形成の強力な阻害剤であることである。このフラグメントはアンギオスタチンと称され、いくつかのMMPsによるタンパク質分解的開裂を通してプラスミノーゲンから生成しうる。
【0013】
プラスミンのための主な基質はフィブリンであり、フィブリンの溶解は病的血栓形成の阻止のために極めて重要である(12)。プラスミンはまた、ECM改造に重要な役割も果たすことを示すラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカンおよびゼラチンなどのECMのいくつかの他の成分に基質特異性も有する(8;13;14)。間接的に、プラスミンはまた、いくつかのpro-MMPsをMMP-1、MMP-2、MMP-3およびMMP-9などの活性MMPsに変換するECMの能力によりECMの別の成分を分解することもできる。それゆえ、プラスミンが細胞外タンパク質分解の重要な上流調節因子であることができることが示唆されている(15)。さらに、プラスミンはいくつかの成長因子の潜在形態を活性化する能力を有する(16-18)。インビトロにてプラスミンはまた、補完系の成分も開裂し、それにより走化性補完フラグメントを放出する。
【0014】
PA系は、細菌侵入中のいくつかの段階に関与し、種々の機序により影響を受けることが示唆されている(19)。膨大な数の病原菌はプラスミン(プラスミノーゲン)レセプターを発現する(20;21)。細菌はまた、哺乳類細胞からPAおよびその阻害剤の分泌も促す(22;23)。例えばuPAの生成は種々の細菌により感染する細胞にて増強されることが見出されている(24)。これまで、病因におけるプラスミノーゲン活性化の役割のためのインビボにおける証拠は、ペスト菌、ボレリア菌および連鎖球菌A群などのいくつかの細菌にて存在する。
【0015】
いくつかの細菌の表面に存在するプラスミノーゲンのレセプターへの結合は、これらの細菌をタンパク質分解生物に変換する。グラム陰性菌にて、線維状表面付属体はプラスミノーゲンレセプターの主な群を形成する(25;26)。グラム陽性菌にて、表面結合分子はプラスミノーゲンレセプターとして認識されている(27;28)。結果として、プラスミンはインフルエンザ菌、ネズミチフス菌、肺炎連鎖球菌、ペスト菌およびボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)などの微生物の表面にて生成することができ、哺乳類ECMの崩壊を引き起こしうる。さらに、細菌プロテアーゼはまた、ヒト血漿にて潜在的プロ-コラゲナーゼを直接活性化するか、またはプロテアーゼ阻害剤を不活性化することもでき、従って組織損傷および組織壁を超えた細菌拡散の一因となることがある。
【0016】
歯周病および歯周損傷のモデル
歯周病のモデルとしては、自発型と誘導型が挙げられる。歯周組織は微生物リッチ環境に曝露される。口腔における細菌侵入、続く宿主防衛は絶えず起こり、通常は不安定な状態のままである。この宿主-細菌バランスの崩壊は種々の歯周病を引き起こす。これは口腔微生物叢、食細胞機能における変化および/または特異的免疫応答の間の不均衡に起因しうる。いくつかの歯周病は米国青少年のおよそ2%および米国成人のおよそ20%にて起こる。
【0017】
いくつかの細菌種により誘発される歯周病は、歯周炎について明確なモデルを提供する。一般に用いられる歯周病原菌としては、ポルフィロモナス・ジンジバリス、カンピロバクター・レクタス、アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンスおよびフソバクテリウム・ヌクレアタムが挙げられ、これらは病原性微生物叢の重要な部分を示すと考えられる。それらはIL-1、IL-6、腫瘍壊死因子、表面結合タンパク質、線毛、小嚢、毒素および酵素などのいくつかの因子を宿主細胞内に有するか、または誘導することができ、これらは直接または間接的に歯周支持組織の不可逆的損失を引き起こすと考えられる。
【0018】
歯周創傷は一般に見られ、特に歯根膜手術中に見られる。歯周創傷モデルはマウスにおける歯肉組織にて切開創傷を誘発することにより構築することができる。その後、創傷の治癒パターンおよび候補薬物または化合物の効果を評価することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
壊死などの感染ならびに歯周病の現在の治療方法は、上記の欠点を有する。従って、歯周病の治療および口腔衛生の改善についての改善された戦略および手段が当分野にて未だ必要である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の要約
本発明は、プラスミノーゲン活性化経路の成分およびプラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物が一般に、歯周創傷(外科的創傷など)の治癒および口腔衛生の促進のために、歯周病および組織壊死を阻止および治療するための新規かつ改善された戦略のために用いることができるという新たな発見に関する。プラスミノーゲンおよび/またはプラスミノーゲン活性化経路の他のメンバーまたはプラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物の投与は、炎症細胞を活性化し、ケラチノサイト移動を増進し、殺菌し、壊死組織を除去し、サイトカイン発現を増強することにより、細菌誘発感染から保護し、歯周創傷の治癒を促進する多能性の役割を果たす。天然条件下、プラスミノーゲン欠損マウスにおける歯周病の広範な発生はまた一般に、歯周病の研究のための優れた動物モデル、ならびに種々の態様の歯周病の新規薬物および治療方法、歯周創傷改善および適切な口腔衛生を認識し、評価するためのスクリーニング方法も提供する。
【0021】
従って、本発明は、治療を必要とする対象における歯周病、特に感染性歯周病の予防、阻止および/もしくは治療、および/または歯肉組織における壊死の除去のための有効量の化合物/薬剤または二以上のそのような薬剤/化合物の組合せを含む医薬組成物の製造のための使用であって、有効薬剤または化合物がプラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接もしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、使用を提供する。好ましくは、有効薬剤はプラスミノーゲン活性化剤、tPA、uPA、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される。より好ましくは、有効薬剤はプラスミンまたはプラスミノーゲンおよびそれらの誘導体、例えばプラスミンまたはプラスミノーゲンのクリングルドメイン、プラスミンまたはプラスミノーゲンのタンパク質フラグメント、ミニ-プラスミノーゲンおよびミニ-プラスミンならびにプラスミンまたはプラスミノーゲンの合成誘導体から選択される。最も好ましくは、有効薬剤はプラスミノーゲンおよびその誘導体である。有効薬剤は当分野にて知られる任意の投与経路により投与することができる。好ましい非限定的な投与経路としては、局所適用、歯肉内注射および静脈内注射が挙げられる。該薬剤はまた、可能ならば歯周組織の感染部位に転移する歯周組織の感染領域に適用される創傷包帯中に存在することもできる。組成物はゲル、ローション、香油、ペースト(歯磨き粉)、うがい溶液(うがい薬)または創傷包帯の一部であることができる。
【0022】
本発明はまた、治療を必要とする対象における歯周創傷および外科的歯周創傷、特に感染性歯周創傷および外科的感染性歯周創傷の解消の改善および/または治癒の促進のための有効量の化合物/薬剤または二以上の化合物/薬剤の組合せを含む医薬組成物の製造のための使用であって、化合物または有効薬剤がプラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接もしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、使用も提供する。好ましくは、有効薬剤はプラスミノーゲン活性化剤、tPA、uPA、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される。より好ましくは、有効薬剤はプラスミンまたはプラスミノーゲンから選択される。最も好ましくは、有効薬剤はプラスミノーゲンである。有効薬剤は当分野にて知られる任意の投与経路により投与することができる。好ましい非限定的な投与経路としては、局所適用、歯肉内注射および静脈内注射が挙げられる。該薬剤はまた、可能ならば歯周組織の創傷部位に転移する歯周組織の創傷領域に適用される創傷包帯、ゲル、ローション、香油、ペースト、うがい薬および歯磨き粉中に存在することもできる。
【0023】
さらに、本発明は、プラスミノーゲン活性化経路の成分もしくはプラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物である有効薬剤または二以上の該薬剤の組合せを含む組成物を投与することを含む、口腔衛生を促進する方法を提供する。好ましくは、有効薬剤はプラスミノーゲン活性化剤、tPA、uPA、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される。より好ましくは、有効薬剤はプラスミンまたはプラスミノーゲンから選択される。最も好ましくは、有効薬剤はGlu-プラスミノーゲンまたはLys-プラスミノーゲンなどのプラスミノーゲンである。有効薬剤は当分野にて知られる任意の投与経路により投与することができる。組成物はゲル、ローション、香油、ペーストまたは包帯の一部であることができる。好ましい非限定的な投与経路としては、歯を腐食に対して強化し、口腔衛生を促進するために用いることができる歯磨き粉またはうがい溶液(うがい薬)の使用などの局所適用が挙げられる。
【0024】
本発明はまた、宿主防衛が妨害されるか、または損なわれる病態にて歯周病、特に感染性歯周病を治療するために宿主防衛を開始する方法であって、プラスミンまたはプラスミノーゲンである有効成分を投与することを含む、方法も提供する。具体的態様にて、本発明の方法は、プラスミンまたはプラスミノーゲンの局所的または全身性欠乏/障害の病態における歯周病に対する宿主防衛を改善するために用いることができる。
【0025】
別の具体的態様にて、本発明は、プラスミノーゲンもしくはプラスミンおよびそれらの誘導体、プラスミノーゲン活性化剤またはプラスミンの活性を増強する化合物である化合物または薬物を投与することによりヒトまたは非ヒト対象における歯周病、特に感染性歯周病の予防、阻止および治療、外科的創傷などの歯周創傷の治癒の改善および口腔衛生の促進のための方法を提供する。好ましくは、化合物を局所投与し、感染領域における高濃度を達成する。
【0026】
さらに、本発明は、プラスミノーゲン活性化経路の成分である化合物またはプラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物を含む組成物の局所的または全身性投与を含む、組成物を投与することにより口腔壊死形成を軽減または阻止する方法を提供する。組成物はゲル、ローション、香油、ペーストまたは創傷包帯の一部であることができる。あるいは、組成物は全身投与することができる。ある具体的態様にて、本発明の方法は、歯周組織における形成外科と併用して適用され、感染、潰瘍および壊死の発生および形成を軽減する。
【0027】
別の具体的態様にて、本発明は、プラスミノーゲン活性化経路の成分である有効量の化合物またはプラスミノーゲンを活性化する能力を有する有効量の化合物を含む、歯周病、特に感染性歯周病の治療、予防および阻止のための医薬組成物を提供する。プラスミノーゲン活性化経路の成分は、プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択することができる。好ましくは、プラスミノーゲン活性化経路の成分はプラスミノーゲンまたはプラスミンである。プラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物は、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択することができる。
【0028】
さらなる具体的態様にて、本発明は、化合物がプラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、有効量の請求項1〜16記載の化合物を含む医薬組成物を治療を必要とする対象に投与することを含む、歯周病、特に感染性歯周病を予防、阻止および/または治療する方法を提供する。プラスミノーゲン活性化経路の成分は、プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択することができる。好ましくは、プラスミノーゲン活性化経路の成分はプラスミノーゲンまたはプラスミンである。プラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物は、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択することができる。
【0029】
さらに別の具体的態様にて、本発明は、歯周創傷、特に感染性歯周創傷の治癒を促進するための医薬組成物であって、プラスミノーゲン活性化経路の有効量の成分またはプラスミノーゲンを活性化する能力を有する有効量の化合物を含む、組成物を提供する。プラスミノーゲン活性化経路の成分は、プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択することができる。好ましくは、プラスミノーゲン活性化経路の成分はプラスミノーゲンまたはプラスミンである。プラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物は、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択することができる。
【0030】
さらなる具体的態様にて、本発明は、歯周創傷、特に感染性歯周創傷の治癒を促進する方法であって、プラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、有効量の化合物を含む医薬組成物を治療を必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。プラスミノーゲン活性化経路の成分は、プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択することができる。好ましくは、プラスミノーゲン活性化経路の成分はプラスミノーゲンまたはプラスミンである。プラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物は、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択することができる。
【0031】
発明の詳細な記載
歯周病の阻止および治療、歯周創傷の治癒および口腔衛生の維持の改善
本発明によれば、プラスミノーゲンおよび/またはプラスミンのレベルの提供または増強は、歯周病の予防、阻止および治療、歯周創傷の治癒の増進し、口腔衛生を促進するために用いることができる。これは多くの異なる方法にて達成することができる。例えば有効な薬剤、薬物、ホルモン、サイトカイン、抗体、またはプラスミン、プラスミノーゲンもしくはプラスミノーゲン活性化剤を上方制御する他の化合物で患者を治療し;これらの成分のいずれかの崩壊を軽減することにより、プラスミノーゲンおよび/またはプラスミンの局所的または全身性レベルを増大することができる。別の具体的態様にて、局所的プラスミンまたはプラスミノーゲンレベルは、直接的にプラスミン/プラスミノーゲンタンパク質およびそれらの誘導体を適用することにより増大する。さらに別の具体的態様にて、プラスミン活性はプラスミンまたはプラスミノーゲンの活性化剤の投与により増強する。さらなる別の具体的態様にて、ストレプトキナーゼおよびスタフィロキナーゼなどの人工、組換えまたは細菌性プラスミノーゲン活性化剤を用いる。さらなる別の具体的態様にて、合成ペプチド、クリングルドメインミニプラスミノーゲンまたはミニプラスミンなどのプラスミノーゲンタンパク質配列のフラグメントを用いる。
【0032】
プラスミノーゲン活性化経路の成分またはプラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物は、細菌、ヒトもしくは他の動物からの成分もしくは化合物の精製により、またはS. cerevisiaeなどの酵母、E. coliなどの細菌およびチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞株などの哺乳類細胞株における組換え生産により産生されうる。成分は野生型または改変/突然変異型であることができる。全長成分の少なくとも一部の所望の活性を保持する成分のフラグメントもまた用いることができる。好ましい具体的態様にて、ヒトプラスミノーゲンの実質的に純粋な生成物を用いる。別の好ましい具体的態様にて、ヒトプラスミンの実質的に純粋な生成物を用いる。さらに別の好ましい具体的態様にて、ミニプラスミノーゲン、ミニプラスミン、またはプラスミノーゲンタンパク質配列のフラグメントの実質的に純粋な生成物を用いる。
【0033】
適用
本発明の方法は、歯周病の予防、阻止および治療、歯周創傷の治癒、および日常生活のための口腔衛生の促進のために用いる。そのような動物としては、ヒトならびにイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタおよび家禽などの家畜などの脊椎動物が挙げられるが、これらに限定されない。ある具体的態様にて、本発明の方法は、ヒト対象における歯周病の管理のために適用する。ヒトまたは非ヒト対象は歯周病の治癒を減じる病態を患っているか、または患っていないこともある。別の具体的態様にて、本発明の方法は、歯周創傷の治癒を改善するために適用する。歯周創傷としては、傷害および外科創傷による外傷性創傷が挙げられるが、これに限定されない。特定の具体的態様にて、対象は、口の歯周領域における形成外科を受ける予定であるか、受けているか、または受けた、ヒトである。そのような場合、例えばプラスミノーゲンを含む組成物は、外科の前および/または後の両方に適用するか、または投与することができる。さらなる別の具体的態様にて、本発明の方法は、口腔衛生の促進のために適用する。そのような場合、プラスミノーゲン、プラスミンまたはミニプラスミンのレベル/活性を増大する組成物、方法は、口腔衛生の促進のために適用するか、または投与することができる。
【0034】
組成物および治療
本発明の有効薬剤は、薬物標的の生物活性を調節するために用いられ、ECM、宿主防衛の崩壊および/または創傷治癒の低下が観察される病態の治療にて用いられる。特に、歯周病の阻止および治療、歯周創傷の治癒、および口腔衛生の促進のために用いることができる。
【0035】
従って、本発明の有効薬剤は、インビボにおける投与に適切な生物学的に両立可能な形態における対象への投与のための医薬組成物に製剤化することができる。インビボにおける投与に適切な生物学的に両立可能な形態によりは、いずれの毒性効果も治療効果を凌ぐ投与用有効薬剤の形態を意味する。有効薬剤は、ヒトおよび動物などの生物に投与することができる。本発明の有効薬剤の有効量は、所望の結果を達成するのに必要な投与量および時間にて有効な量として定義する。例えば、治療的有効量の有効薬剤は、個体の疾患状態、年齢、性別および重量、および個体における所望の反応を誘導するための抗体の能力などの因子により変化しうる。投与量範囲は、調節して最適治療応答を提供することができる。例えばいくつかの分割用量は、毎日投与することができるか、または治療状況の危急により指摘されるように比例的に減少しうる。
【0036】
組成物は、注射(皮下、静脈内など)、経口投与、吸入、直腸投与または経皮投与などによる従来の方法にて投与することができる。投与経路により、有効薬剤は、薬剤を不活性化しうる酵素、酸および他の自然条件の作用から薬剤を保護するために物質にてコーティングすることができる。従って、適切な投与経路としては、局所、静脈内、筋肉内、皮内、経口、直腸および膣内投与が挙げられる。好ましい投与経路は、局所投与または経口投与である。
【0037】
本明細書に記載の組成物は、対象に投与することができる医薬的に許容される組成物の製造のためにそれ自体知られている方法により製造することができ、該方法にて医薬的に許容されるビヒクルとの混合物にて1以上の有効量の有効薬剤を混合する。適切なビヒクルは、例えばRemingtonのPharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company, Easton, Pa., USA 1985)にて記載される。これに基づき、組成物としては、1以上の医薬的に許容されるビヒクルまたは希釈剤と混合した有効薬剤の溶液が挙げられるが、これに限定されず、適切なpHを有し生理液と等浸透圧を有する緩衝溶液中に含まれる。
【0038】
本発明による有効薬剤の送達に用いることができるビヒクルの例としては、充填剤を含む/含まない、ゲル、ペースト、香油、蝋、ローション、肌クリーム、リンス溶液、乾燥粉末および当分野にて知られる局所投与のための種々の他の型が挙げられるが、これらに限定されない。組成物はまた、スプレー用粉末もしくは溶液またはうがい溶液の形態にて局所的に送達することもできる。あるいは、本発明の組成物は、そこから必要とされる領域に移動するような創傷包帯、パッド、絆創膏、ガーゼまたは興味の領域に適用される他の手段であることができる。そのような手段としてはまた、持続時間にて本発明のプラスミノーゲンもしくは他の薬剤を連続的に放出する遅延放出手段、または使用時間にて即時に本発明のプラスミノーゲンもしくは他の薬剤を放出する即時放出手段を挙げることができる。
【0039】
医薬組成物を製造した後、適切な容器に置き、適応病態の治療のために標識することができる。本発明の組成物の投与のために、そのような標識は、投与の量、頻度および方法を含むだろう。
【0040】
組成物は、一定の間隔、例えば一日一回もしくは二回で投与するか、または必要に応じて変化する包帯もしくは遅延放出手段にて加えることができる。口腔衛生の促進に関して、組成物は使用時間にて組成物を形成することにより即時に投与することができる。
【0041】
本発明の上記特徴および多くの他の利点は、添付の図面とともに以下の詳細な記載を参照することによりより良く理解できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】正常な健康状態の歯肉組織(A)、炎症性歯肉炎(B)および歯周炎(C)の写真。
【0043】
【図2】成長培地中のプラスミノーゲンの存在によりインビボ創傷治癒モデルにてケラチノサイト移動が促進される。
【0044】
【図3】未処置8〜12週齢野生型およびプラスミノーゲン欠損マウス顎の形態。壊死組織(N, 赤)および骨隔膜の重篤な分解(B)がプラスミノーゲン欠損マウスの歯肉組織にて起こるが、野生型マウスの歯肉組織は完全に正常であることに留意。より高倍率下(×200)、野生型およびプラスミノーゲン欠損マウス間の差異はより一層明らかである(下方パネル)。B, 骨隔膜。N, 壊死組織。
【0045】
【図4】未処置12〜16週齢野生型およびプラスミノーゲン欠損マウス顎の形態。12〜16週齢のプラスミノーゲン欠損マウスの自然歯周病は8〜12週齢よりも重篤である。壊死組織(N, 赤)および骨隔膜の重篤な分解(B)がプラスミノーゲン欠損マウスの歯肉組織にて起こるが、野生型マウスの歯肉組織は完全に正常であることに留意。より高倍率下(×200)、野生型およびプラスミノーゲン欠損マウス間の差異はより一層明らかである(下方パネル)。B, 骨隔膜。N, 壊死組織。
【0046】
【図5】未処置16〜20週齢野生型およびプラスミノーゲン欠損マウス顎の形態。16〜20週齢のプラスミノーゲン欠損マウスの自然歯周病は12〜16週齢よりも重篤である。壊死組織(N, 赤)および骨隔膜の重篤な分解(B)がプラスミノーゲン欠損マウスの歯肉組織にて起こるが(上方右パネル)、野生型マウスの歯肉組織は完全に正常である(上方左パネル)ことに留意。より高倍率下(×200)、野生型およびプラスミノーゲン欠損マウス間の差異はより一層明らかである(下方パネル)。B, 骨隔膜。N, 壊死組織。
【0047】
【図6】野生型、プラスミノーゲンヘテロ接合およびプラスミノーゲン欠損マウスの唾液からの細菌回収。プラスミノーゲン欠損およびプラスミノーゲンヘテロ接合マウスは野生型マウスのものと比較して唾液中に有意に多数の細菌を有する。
【0048】
【図7】ヒトプラスミノーゲン補完プラスミノーゲン欠損マウス、PBS補完プラスミノーゲン欠損マウスおよびいずれの処置もされていない野生型マウスの引き抜いた歯からの細菌回収。
【0049】
【図8】PBSまたはヒトプラスミノーゲン補完プラスミノーゲン欠損マウスの形態。PBS処置プラスミノーゲン欠損マウスにて壊死組織が歯肉組織中に存在し、周囲コラーゲン組織が歯から分離し始め、骨吸収が起こったことに留意(左パネル)。しかし、プラスミノーゲン欠損マウスにおけるヒトプラスミノーゲンの補完は、歯周組織中の細胞構造および組織構造を完全に回復した。倍率, ×50。
【0050】
【図9】高倍率下(×50)におけるPBSまたはヒトプラスミノーゲンを補完したプラスミノーゲン欠損マウスの形態。
【0051】
【図10】経口注射によりPBSまたはヒトプラスミノーゲンを補完したプラスミノーゲン欠損マウスの形態。PBS処置プラスミノーゲン欠損マウスにて壊死組織が歯肉組織中に存在し、周囲コラーゲン組織が歯から分離し始め、骨吸収が起こったことに留意(上方の二の左パネル)。しかし、プラスミノーゲン欠損マウスにおけるヒトプラスミノーゲンの補完は、歯周組織中の細胞構造および組織構造を回復した。倍率, ×100。
【0052】
【図11】未処置22週齢野生型(左パネル)およびtPA/uPA二重欠損(右パネル)マウス顎の形態。壊死組織(N, 赤)および骨隔膜の重篤な分解(B)がtPA/uPA二重欠損マウスの歯肉組織にて起こるが、野生型マウスの歯肉組織は完全に正常であることに留意。B, 骨隔膜。N, 壊死組織。
【0053】
【図12】膝関節における1×106 CFUのS. aureus Phillips接種後の異なる局所および全身処置を行ったplg-/-およびplg+/+マウスの膝関節における細菌数。
【0054】
【図13】膝関節におけるS. aureus接種の3日後におけるPlg(塗りつぶし)またはPBS(中抜き)の局所注射後のplg+/+マウスの膝関節における細菌数。Plgで局所注射した野生型マウスにて細菌数はPBSで局所注射した野生型のものよりも有意に5倍低下していることに留意。
【発明を実施するための形態】
【0055】
定義
本明細書における用語は一般に、本発明の内容の範囲内および各用語が用いられる具体的な文脈内にて当分野における通常の意味を有する。いくつかの用語は以下または本明細書中に説明し、本発明の組成物および方法を記載する際の実行者へのさらなる案内、およびそれらをどのように製造し用いるかを提供する。
【0056】
「プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲン活性化経路の成分、ミニ-プラスミンなどのプラスミノーゲン類似体、プラスミン類似体、プラスミノーゲン活性化経路の成分の類似体、プラスミノーゲン活性化剤」は、それぞれプラスミノーゲンまたはプラスミンの効果を直接的または間接的に提供する化合物を意味する。
【0057】
「プラスミノーゲン活性化経路の成分」は、プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミノーゲンにより例示される1以上のクリングルドメインおよびタンパク質分解ドメインなどのプラスミノーゲンの1以上のドメインを含むプラスミノーゲンの変形および類似体;プラスミン、ならびにミニ-プラスミンおよびデルタ-プラスミンにより例示される1以上のクリングルドメインおよびタンパク質分解ドメインなどのプラスミンの少なくとも1以上のドメインを含むプラスミンの変形および類似体;uPAおよびtPA、ならびに例えば1以上のクリングルドメインおよびタンパク質分解ドメインなどのtPAまたはuPAの1以上のドメインを含むtPAおよびuPAの変形および類似体により例示されるプラスミノーゲンの形成または活性化をもたらす一連の事象によりプラスミノーゲンを活性化する最終効果を有するプラスミノーゲン活性化剤を意味する。プラスミノーゲン、プラスミン、tPAおよびuPAの変形としては、これらのタンパク質のヒトならびに他の哺乳類形態の天然由来の全遺伝的変形、ならびに保存アミノ酸置換により得られるこれらのタンパク質の突然変異体が挙げられる。プラスミノーゲンまたはプラスミンの「類似体」は、それぞれエンザイモグラフィー(enzymography)ELISA(酵素免疫測定法)およびFACS(蛍光活性化細胞分類装置)により測定された、本質的にプラスミノーゲンまたはプラスミンとしての類似効果を提供する化合物である。先に記載されているとおり、変換プラスミン活性のレベルを測定するためのアッセイもある:Ny, A., Leonardsson, G., Hagglund, A.C., Hagglof, P., Ploplis, V.A., Carmeliet, P., and Ny, T. (1999). Ovulation in plasminogen-deficient mice. Endocrinology 140, 5030-5035。プラスミノーゲン活性化経路の成分の「類似体」は、この類似体を活性化するプラスミン活性のレベルにより測定されるプラスミノーゲン活性化経路の成分として本質的に類似効果を提供する化合物である。
【0058】
「歯周病」は、特定の歯肉縁下微生物および宿主免疫および炎症反応間の相互作用により引き起こされる一般的な炎症障害である。歯周病は、単純な歯肉炎症から歯を支持する軟組織および骨への主な損傷をもたらす重篤な疾患まで及ぶ。最悪の場合、歯が失われる。細菌は「歯肉炎」と称される歯肉の炎症を引き起こす。歯肉炎にて、歯肉は紅く腫れ上がり、出血しやすくなる。歯肉炎は通常、日常の歯磨きおよび掃除、および歯医者または歯科衛生士による通常のクリーニングで改善しうる歯肉疾患の軽症型である。この歯肉疾患の形態は、歯を適当な位置に保持するいずれの骨および組織の喪失も含まない。歯肉炎が処置されない場合、「歯周炎」(「歯の周りの炎症」を意味する)に進行しうる。歯周炎にて、歯肉は歯から引き離され、感染する「ポケット」を形成する。身体の免疫系はプラークが歯肉線下で広がり成長するように細菌と闘う。細菌毒素および感染と闘う身体の酵素は実際、歯を適当な位置に保持する骨および結合組織を分解し始める。処置されなければ、歯を支持する骨、歯肉および結合組織は破壊される。歯は結局、失われ、除去せざるを得ない。歯周病の別のタイプのインプラント周囲炎は、顎骨へのアロプラスト物質の外科的移植後の生物学的合併症として起こる。インプラント周囲炎は、オッセオインテグレーテッド・インプラントの周りの組織に機能上影響を及ぼし、支持骨の喪失をもたらす炎症/感染過程である。インプラント周囲炎は、たとえインプラント周囲の感染を解消する目的の大規模な治療が行われても、完全な崩壊およびインプラント喪失をもたらしうる。インプラント周囲炎はまた、骨喪失が全くなく、インプラント周囲軟組織の可逆的炎症/感染性変化としても起こり、ときどきインプラント周囲粘膜炎として称される。本特許では、歯周病の定義は、少なくとも歯周炎、歯肉炎、インプラント周囲炎およびインプラント周囲粘膜炎を含む。
【0059】
「感染性歯周病」は、例えば木質性歯周炎と比較して、感染によりもたらされる歯周病である。例えば感染性歯周病は、細菌、ウイルスまたは真菌感染によりもたらされうる。
【0060】
「細菌性歯周病」は、細菌感染によりもたらされる。
「歯周創傷」は、歯周領域におけるインプラントの周りの組織における創傷などの口の歯周組織に起こる外的創傷および外科的創傷を意味する。
【0061】
「口腔衛生」は、個人が活動性疾患、不快または困惑なく食事し、会話し、社会生活をすることができ、一般的な幸せに寄与する口腔および関連組織の標準的な衛生を意味する。口腔衛生の主な適応は、唾液および歯肉組織における細菌叢ならびに歯肉組織における組織の壊死および炎症を含む。口腔衛生は一般的健康に不可欠であり、分離して考えるべきではない。
【0062】
「プラスミン/プラスミノーゲンの誘導体」は、例えばプラスミンまたはプラスミノーゲンのクリングルドメイン、プラスミンまたはプラスミノーゲンのタンパク質フラグメント、ミニ-プラスミノーゲンおよびミニ-プラスミンならびにプラスミンまたはプラスミノーゲンの合成誘導体を意味する。
【0063】
「ミニ-プラスミノーゲン」は、酵素活性部位を含む天然プラスミノーゲンのC末端フラグメントを意味する。ミニプラスミノーゲンのMrは38000である。ウロキナーゼまたはストレプトキナーゼによる活性化は、プラスミノーゲンのものと極端に類似した基質特異性を有する二本鎖酵素を与え、これは「ミニ-プラスミン」と称される。
【0064】
「壊死」は、体内の組織の死を意味する。これは、傷害、放射線または化学品に起因するかにかかわらず、十分な血液が組織に供給されない場合に起こる。壊死は不可逆的である。傷害、感染、がん、梗塞、毒物注入、慢性創傷、潰瘍および炎症などの多くの壊死の原因がある。
【0065】
「局所」および「局所適用」は、有効成分の非全身性局所投与を意味する。従って、局所適用は創傷の外部表面への有効成分の適用を意味しうる。
【0066】
タンパク質または化合物の「活性」は、タンパク質または化合物が有する特定の反応に対する効果を意味し、反応に影響を及ぼし、調節し、関与し、または促進する能力の測定である。一般に、タンパク質または他の化合物の活性を測定することができる。例えばプラスミン、PAおよびMMPなどの酵素およびモジュレータの場合、酵素活性は、反応の生成物が生成する速度として表すことができ、例えば時間および酵素単位あたり生成した生成物の量(例えば濃度または重量)として表すことができる。PAなどのモジュレータの場合、活性は反応の速度または反応から形成される生成物の量を阻害または促進し、増大または減少し、上方または下方調整するモジュレータの能力を意味しうる。
【0067】
「創傷」は、外部薬剤により引き起こされる、上皮、結合組織および筋組織などの器官または組織の構造における破損である。創傷の例としては、打撲傷、かすり傷、裂傷、切り傷、刺し傷および熱傷が挙げられるが、これらに限定されない。他の特定のタイプの創傷は、形成外科手術の結果であるものである。
【0068】
本明細書において疾患または病態についての対象の「治療」または対象を「治療する」は、低下したまたは遅い創傷治癒などの疾患または病態の臨床症状を軽減または緩和することを意味する。
【0069】
創傷治癒の「増強」は、それにより創傷を治癒する速度を増大することを意味する。あるいは、創傷治癒の「増強」は、治癒中または治癒後の瘢痕組織の形成を軽減することを意味する。
【0070】
本明細書において「対象」は、ヒトおよび非ヒト動物の両方を含む。非ヒト動物としては、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモットなどの実験動物;イヌおよびネコなどの家畜;およびヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマおよびウシなどの農場動物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の非ヒト動物は、哺乳動物または非哺乳動物;脊椎動物または非脊椎動物であってよい。
【0071】
アッセイにおける「対照」、「対照値」または「参照値」は、例えば歯周病の治療、歯周創傷の治癒および口腔衛生の促進または本明細書に記載の任意の他のアッセイにおける変化を検出するために用いる値である。
【0072】
疾患または病態「の危険性がある」、「に罹患しやすい」または「に感染しやすい」対象は、個体が疾患または病態に罹るかまたは発症する危険性が平均的母集団よりも高いことを意味する。
【0073】
化合物の「欠損」は、化合物の量、レベルまたは濃度が対照値より有意に低いことを意味する。例えばプラスミノーゲン欠損動物にて、プラスミノーゲンの体液および組織レベルは野生型動物より有意に低い。
【0074】
本明細書において「約」または「およそ」は、与えられた値または範囲の50パーセント、好ましくは20パーセント、より好ましくは5パーセント以内を意味する。
【0075】
別の値と「実質的に異なる」値は、二の値間の統計的に有意な差異を意味しうる。当分野にて知られる任意の適切な統計的方法は、差異が有意であるか否かを評価するために用いることができる。「統計的に有意な」差異は、有意性を少なくとも90%、より好ましくは95%の信頼区間にて測定することを意味する。
【0076】
略語
本明細書において略語としては、以下のものが挙げられる:
uPA = ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化剤;
PA = プラスミノーゲン活性化剤;
MMP = マトリックスメタロプロテイナーゼ;
TIMP = メタロプロテイナーゼの組織阻害剤;
tPA = 組織型プラスミノーゲン活性化剤;
Plg = プラスミノーゲン;
ECM = 細胞外マトリックス。
【実施例】
【0077】
本発明はさらに、以下の実施例により記載する。しかし、これらの実施例は、本発明の例示のみであり、本発明の範囲および意義を何ら限定するものではない。実に、本発明の多くの改変および変形は本明細書にあたった当業者に明らかであり、その精神および範囲から逸脱しないでなしうる。
【0078】
実施例1
インビトロケラチノサイト移動は相対量のプラスミノーゲンに依存する。
創傷治癒が多くの異なる要因、細胞および工程を含むので、単純化されたインビトロモデルが含まれ、細胞移動における可能なプラスミノーゲン効果を詳述する。
【0079】
方法:
DOK(早期腫瘍性/異形成ヒト経口ケラチノサイト)細胞を細胞培養培地中にてインキュベーションした。飢餓後、DOK細胞をDMEM細胞培養培地中にてインキュベーションし、該培地はヒトプラスミノーゲン非存在下または存在下にてヒドロコルチゾン、グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、10%プラスミノーゲン欠損ウシ胎仔血清を含む。0 hにて、インビトロ創傷治癒モデルにて導入するために、標準擦り傷をケラチノサイト層上に作成した。異なる時点(0 h、12 hおよび24 h)にて、ZEISSマイクロスコープ下、ケラチノサイト移動を記録した。
【0080】
結果:
DOK(早期腫瘍性/異形成ヒト経口ケラチノサイト)細胞移動は、実験期間中培養培地中にプラスミノーゲン非存在下にてほぼ停止したようだ(Fig. 2A上方パネル)。しかし、培養培地中のプラスミノーゲンの存在下、ケラチノサイト移動はプラスミノーゲン欠損培地中のものと比較して増強されているようだ(Fig. 2A下方パネル)。プラスミノーゲン曝露(4μM)の24時間後に、そのようなインビトロ創傷の端はほぼ融合している(Fig. 2B)。さらに、細胞移動速度はプラスミノーゲン濃度依存であるようだ。この実験は明らかに、プラスミノーゲンがインビトロにおけるより速い創縫合および損傷組織の治癒速度の増強に重要であることを示す。
【0081】
実施例2
プラスミノーゲン欠損マウスにおける歯周病の自然発症
方法:
この実験は、異なる年齢の野生型およびプラスミノーゲン欠損マウスを分析することにより歯周病の発症におけるプラスミノーゲンの重要性を調査するために行う。
プラスミノーゲン欠損(plg欠損)および野生型(wt)マウスを三の年齢群に分割した(5〜8マウス/遺伝子型/群):群I: 8〜12週齢;群II: 12〜16週齢;群III: 16〜20週齢。歯周病が発症し、次いで各遺伝子型および年齢群の組織サンプルを分析した。
組織サンプルを分析するために、下および上顎を頭蓋から分離し、舌などの全軟組織から肉を剥ぎ取り、24時間4%パラホルムアルデヒド(PFA)に固定する。その後、サンプルを脱灰溶液に移し、骨組織からカルシウムを除去した。脱灰工程の4週間後、標本をパラフィン中に埋め込み、形態染色のために5μm厚さに切断した。サフラニンO染色を形態分析に用い、従ってカートリッジおよびムチンは暗赤色に染色され、骨構造および歯は青色に染色され、細胞核は暗青色に染色される。
【0082】
結果:
8〜12週齢の歯の周りの歯肉組織の形態分析は、野生型マウスは炎症または歯の表面からのコラーゲン組織の分離が全くないことを示す。一方、全plg欠損マウスは、初期歯肉炎段階の明らかなサイン−炎症、歯からのコラーゲン組織分離、歯間の壊死組織形成、および骨隔膜および下顎骨の分解を示す(Fig. 3)。野生型マウスは20週齢まで健康な口腔を有するが(Fig. 3, 4, 5)、プラスミノーゲン欠損マウスにて歯肉炎は齢とともに歯周炎に進行し:歯肉組織はひどく炎症を起こし、壊死組織は軟組織中深くに形成され、明らかな骨隔膜破壊を起こす(Fig. 4, 5)。これらのデータは明らかに、プラスミノーゲン欠損マウスが自然に重篤な歯周病を発症し、疾患重篤度が齢とともに進行することを示す。
【0083】
実施例3
プラスミノーゲン欠損マウスは野生型マウスよりも唾液中に有意に多量の細菌を有する。
方法:
16〜20週齢の野生型、プラスミノーゲンヘテロ接合およびプラスミノーゲン欠損マウスをこの研究にて用いた(第1表)。マウスの唾液サンプリングは、滅菌ピペットチップで口から唾液を集めることにより行い、即時の培養のために嫌気性培地中に移した。
【0084】
結果:
野生型およびプラスミノーゲンヘテロ接合マウスから唾液サンプル5 ulをうまく集めた。しかし、プラスミノーゲン欠損マウスにおいて、一般的な口の乾燥条件により、唾液サンプルの可能な量は1.0 ul〜5.0 ulの範囲で変化した。細菌回収により、プラスミノーゲン欠損マウスが唾液中にほぼ9.0x106/mlの細菌を有し、三群の中で最も高く、野生型マウスより有意に高いことが示された。重要なことに、プラスミノーゲンヘテロ接合マウスもまた、野生型マウスのものより有意に多量の細菌を有する(FIg. 6)。これらのデータは明らかに、プラスミノーゲンが口腔細菌に対する耐性の維持に重大な役割を果たすことを示す。さらに細菌の数は、相対量のプラスミノーゲンに非常に依存するようであり、これは新規薬物としてのプラスミノーゲンが口腔衛生を促進する治療的重要性を示唆する。
【0085】
実施例4
プラスミノーゲン欠損マウスにおけるヒトプラスミノーゲンの補充は、これらのマウスにおける自然歯周病の臨床的病態をうまく改善する。
方法:
プラスミノーゲン欠損(8〜12週齢)マウスを無作為にプラスミノーゲンおよびPBS処置群(5マウス/群)に分割した。0日目〜9日目に、マウスにヒトプラスミノーゲン100μl(10 mg/ml)またはPBSを毎日静脈注射した。10日目にマウスを犠牲にした。左側の顎について、細菌の回収のために臼歯を抜歯した。右側の顎は、脱灰、パラフィン埋め込みおよび形態染色について処理した。同じ年齢の三の未処置野生型マウスが本実験における対照として含まれた。
【0086】
結果:
抜歯サンプルからの細菌回収により、ヒトプラスミノーゲンを補充したプラスミノーゲン欠損マウスがPBS補充のものと比較して有意に少数の細菌を有することが示された(Fig. 7)。これらのデータは、プラスミノーゲンが歯の細菌のコロニー形成に対する宿主防衛に不可欠であることを示す。
予期されるように、重篤な歯周病が5のすべてのPBS処置プラスミノーゲン欠損マウスにて起こり:壊死組織が歯肉組織に存在し、周りのコラーゲン組織が歯から分離し始め、骨吸収が起こった(Fig. 8およびFig. 9左パネル)。ヒトプラスミノーゲンを補充したプラスミノーゲン欠損マウスは、完全に細胞および組織構造を回復し:歯肉組織にて炎症が全く観察されず、壊死組織が除去され、コラーゲン組織の改造が起こった(Fig. 8およびFig. 9右パネル)。3の未処置野生型マウスについて、形態分析はFig. 3と同様の正常な組織構造を示した。このデータは明らかに、プラスミノーゲンが歯周病に対して正常な組織構造および機能を維持するのに極めて重要な役割を果たすことを示す。
【0087】
実施例5
プラスミノーゲン欠損マウスにおける歯肉組織のヒトプラスミノーゲンの局所補充はこれらのマウスにおける自然歯周病の臨床的病態をうまく改善する。
10のプラスミノーゲン欠損(16〜20週齢)マウスを、無作為にプラスミノーゲンおよびPBS処置群(5マウス/群)に分割した。0日目〜9日目にて、10μlのヒトプラスミノーゲン(10 mg/ml)をプラスミノーゲン欠損マウスの下顎の両側の歯肉組織に毎日局所注射した。対照PBS処置群について、PBS 10μlをプラスミノーゲン欠損マウスの下顎の両側の歯肉組織に毎日局所注射した。10日目にマウスを犠牲にし、形態研究を行った。三の未処置野生型マウスおよび三の未処置プラスミノーゲン欠損マウスを未処置対照として用いた。
組織サンプルを分析するために、下および上顎を頭蓋から分離し、舌などの全軟組織から肉を剥ぎ取り、24時間4% PFAに固定する。その後、サンプルを脱灰溶液に移し、骨組織からカルシウムを除去した。脱灰工程の4週間後、標本をパラフィン中に埋め込み、形態染色のために5μm厚さに切断した。サフラニンO染色を形態分析に用い、従って軟骨およびムチンを暗赤色に染色し、骨構造および歯を青色に染色し、細胞核を暗青色に染色する。
【0088】
結果:
歯肉組織におけるプラスミノーゲンの局所注射は、プラスミノーゲン欠損マウスにおける歯周病の重篤度をうまく軽減した。予期されるように、重篤な歯周病は5のすべてのPBS処置プラスミノーゲン欠損マウスにて起こり:壊死組織が歯肉組織に存在し(N)、周りのコラーゲン組織が歯から分離し始め、骨吸収が起こった(Fig. 10二の上方パネル左)。ヒトプラスミノーゲンを局所的に補充したプラスミノーゲン欠損マウスは、正常な細胞および組織構造を大幅に回復し:歯肉組織にて低レベルの炎症が観察され、壊死組織が除去され、コラーゲン組織の改造が起こった(Fig. 10二の上方パネル右)。3の未処置野生型およびプラスミノーゲン欠損マウスについて、形態分析はFig. 3と同様の組織構造をそれぞれ示した。このデータは明らかに、プラスミノーゲンの局所的補充が歯周病の治療に有効かつ有力な方法を提供することを示す。
【0089】
実施例6
uPAおよびtPA二重欠損マウスにおける歯周病の自然発症
方法:
本実験は、野生型およびtPA/uPA二重欠損マウスにおける歯周組織を分析することにより歯周病の発症におけるプラスミンの重要性を調査するために行う。プラスミノーゲン活性化を欠如したマウスを作成するために我々の研究室にてtPAおよびuPA二重欠損マウスを作成した。その体内にプラスミノーゲンを含むにも関わらず、これらのマウスはプラスミン前駆体を活性プラスミンに変換することができない。それゆえ、これらのマウスからのデータは、自然歯周病に対する宿主防衛における活性プラスミンの重要性に直接的に対処することができる。
22週齢のtPA/uPA二重欠損マウスおよび野生型同腹子における歯周病の発生後に、各遺伝子型の組織サンプルを分析した。
組織サンプルを分析するために、下および上顎を頭蓋から分離し、舌などの全軟組織から肉を除去し、24時間4%パラホルムアルデヒド(PFA)中に固定する。その後、サンプルを脱灰溶液に移し、カルシウムを骨組織から除去した。脱灰工程の4週間後、標本をパラフィンに埋め込み、形態学的染色のために5μm厚さに切断した。サフラニンO染色を形態学的分析に用い、従って軟骨およびムチンを暗赤色に染色し、骨構造および歯を青色に、細胞核を暗青色に染色する。
【0090】
結果:
22週齢野生型およびtPAおよびuPA二重欠損マウスの形態学的分析は、野生型マウスでは歯からのコラーゲン組織の炎症または剥離を生じなかったが(Fig. 11、左パネル)、すべての四のtPAおよびuPA二重欠損マウスでは重篤な歯周病を示し:歯肉組織が重篤に炎症を起こし、壊死組織(N)が軟組織深くに形成され、明らかな骨隔膜破壊(B)が起こった(Fig. 11)。これらのデータは明らかに、tPAおよびuPA二重欠損マウスが重篤な歯周病を自然発症させ、活性プラスミンがまた、正常な歯周衛生の維持に重要であることを示す。
【0091】
以下の実施例にて、細菌性関節炎の研究にてなされる発見、および我々が行う研究を記載する。我々は細菌性関節炎研究にて我々が得た類似の有望なデータを得るだろうと考える。我々が得たデータは細菌性関節炎の研究からのものであるが、これらの結果は類似の研究が歯周領域にて行われる場合に有望な結果を強く明らかにすると考える。それゆえ、これらの結果は、歯周領域におけるヒトプラスミノーゲンの局所注射がまた、plg-/-マウスにおける歯周病に対する正常な宿主防衛も回復しうることを示す。この結果は、以下の理由の考察に基づく:
【0092】
1.膝関節領域および歯周領域にて炎症細胞が活性化し、感染領域に移動し、細菌が活性化炎症細胞および他の分子により殺菌され、サイトカインネットワークの発現が増強され、壊死組織が除去され、組織改造が宿主防衛工程にわたり起こるという点において、これらの領域における宿主防衛機序は多くの程度類似する。
2.S.aureusは、歯周炎および細菌性関節炎の両方の間の感染工程にて重要な役割を果たす臨床病原体である。それゆえ、S.aureus誘発細菌性関節炎の研究から得られるデータは感染の具体的な組織の場所に関わらず大概一般的な現象を示す。
3.細菌性関節炎モデルにて用いられた局所注射方法はまた、歯周炎研究にても用いられ(実施例5を参照のこと)、プラスミノーゲンの局所注射がplg-/-マウスにおける自然歯周炎を軽減する良好な結果を示した。これらの類似性はさらに、細菌性関節炎から得られた結果が歯周病の基礎でもある一般的な機序を示すことを示す。
【0093】
それゆえ、我々は、細菌性関節炎における我々の研究(実施例7および8)からのデータを用いて、本願における特許請求の範囲を支持することを望む。細菌性関節炎からのデータの重要性は、まず、実施例7の結果により、プラスミノーゲンの局所注射がplg-/-マウスにおける誘発感染モデルにて宿主防衛能力(例えば殺菌)を回復させることを示すことである。さらに、実施例8の結果により、誘発感染モデルにおけるプラスミノーゲンの局所注射がさらに、正常野生型マウスにおける正常な宿主防衛能力(例えば殺菌)を増強することが示される。さらに、これらの理由に基づき、我々はまた、我々が行う別の実施例(実施例9)も本願に含む。この実施例にて、誘発性歯周病の臨床モデルを記載し、プラスミノーゲンの適用がplg-/-マウスにおける宿主防衛を回復させ、さらに野生型マウスまたは他の種における正常な宿主防衛を増強することができると考える。
【0094】
実施例7
plg-/-マウスへのヒトプラスミノーゲン(hPlg)の局所補充が膝関節における細菌感染に対する正常な宿主防衛を回復させた。
方法
滅菌PBS 10μl中S.aureus Phillipsの1x106 CFUのマウスの両膝関節への局所接種により細菌性関節炎を誘発させた。細菌接種の15分後、6のplg-/-マウスの膝関節の一方に膝関節組織の周りの局所注射によりヒトプラスミノーゲン40μl(PBS中10μg/μl, Biopool, Umea,Sweden)を補充した。その後、ヒトプラスミノーゲンを7日間24時間間隔にて補充した。局所注射についての対照として、6のplg-/-マウスの膝関節組織の周りに滅菌PBSのみ40μlを細菌接種の15分後に局所注射した後、7日間24時間間隔を実験期間とした。野生型マウスについての対照として、2のplg+/+マウスに滅菌PBSのみ40μlを細菌接種の15分後に与えた後、7日間24時間ごととした。全身注射のplg-/-マウスについての対照として、2のplg-/-マウスに細菌接種の1時間前にヒトプラスミノーゲン100μl(10μg/μl)を静脈注射した後、7日間24時間ごととした。
マウスを細菌接種の7日後に犠牲にし、膝関節を取り、滅菌PBS 1 mlにてホモジネートした。連続希釈後、ホモジネート溶液をLB寒天プレート上に広げ、37℃にて終夜インキュベーションした。次いで、生菌コロニーをカウントし、各ホモジネート中のS.aureus細菌数を評価した。
【0095】
結果
plg-/-マウスへのプラスミノーゲンの局所注射の7日はS.aureusでうまく接種し、これらのマウスにおけるPBS局所処置と比較して100倍まで細菌量を有意に軽減した。ヒトプラスミノーゲンを全身注射したplg-/-マウスまたはPBSを局所注射したplg+/+マウスの両方はまた、その膝関節にてS.aureusをうまく殺傷した。これらのデータ(第1表)は明らかに、ヒトプラスミノーゲンの局所注射がplg-/-マウスにおける正常な殺菌能力を回復させ得ることを示す。
【0096】
第1表.S.aureus Phillipsの1x106 CFUの接種後3日における異なる局所および全身処置をしたplg-/-およびplg+/+マウスにおける細菌数
【表1】
*, P<0.05, PBS局所注射plg-/-マウスの群と比較
【0097】
実施例8
plg+/+マウスのヒトプラスミノーゲン局所補充は、膝関節における細菌感染に対する宿主防衛を増強する。
方法
細菌性関節炎を10μl滅菌PBS中1×106CFUのS.aureus Phillipsのマウス膝関節への局所接種により誘発させた。細菌接種の15分後に、7のplg+/+マウスの一方の膝関節にヒトプラスミノーゲン50μl(hPlg, PBS中10μg/μl, Biopool, Umea, Sweden)を膝の皮膚の下および膝関節組織の周りへの局所注射により補充した。その後、ヒトプラスミノーゲンを0日目〜2日目に24時間間隔にて同じパターンで補充した。局所注射の対照として、7のplg+/+マウスの膝の皮膚の下および膝関節組織の周りに細菌接種の15分後に滅菌PBSのみ50 ulを局所注射した後、同じ局所注射を実験期間の0日目〜2日目に24時間間隔にて行った。
細菌接種の3日後にマウスを犠牲にし、膝関節を取り、滅菌PBS 1 ml中に均質化した。連続希釈後、ホモジネート溶液をLB寒天プレート上に広げ、終夜37℃にてインキュベートした。次いで、生菌コロニーをカウントし、S.aureus菌の数を各ホモジネートにて評価した。
【0098】
結果
plg+/+マウスの3日間のヒトプラスミノーゲンの膝関節における局所注射により、生存S.aureus数はPBSで処置された対照plg+/+群の5倍うまく有意に減少した。これらのデータは明らかに、ヒトプラスミノーゲンが野生型動物におけるものでさえも細菌感染に対する宿主防衛を促進する強力な炎症性因子であることを示す。これらのデータはさらに、プラスミノーゲンが臨床用途のための新規抗感染候補薬であることを示唆する(第2表)。
【0099】
第2表.1×106CFUのS.aureus Phillipsの接種後3日目におけるヒトプラスミノーゲンまたはPBSを局所注射された野生型(plg+/+)マウスにおける細菌数。Plgを局所注射された野生型マウスにて、細菌数はPBSを局所注射された野生型マウスよりも5倍も有意に減少することに留意。
【表2】
*, P<0.05, PBS局所注射Plg+/+マウスの群と比較
【0100】
実施例9
プラスミノーゲンの補充により実験動物におけるS.aureus誘発歯周病に対する宿主防衛が回復/増強される。
方法
本実験に適用される実験モデルは、先に大部分記載されているように(31)、我々の研究設定に必要な修正を加える。S.aureusが歯周病における主要病原菌の一つであるため、我々は本モデルにて感染性細菌としてS.aureusを最初に使用する。しかし、プラスミノーゲンが感染に対する宿主防衛を実験条件に依存して促進するのに一般的な役割を担うと考えられるため、別の感染性細菌としてP.gingivalisを使用し、S.aureusと同様の実験を行うだろう。
36の8週齢マウスを無作為に三つの群に分ける:結紮感染、結紮偽感染および対照。マウスを12時間明/12時間暗周期で従来の維持にて維持し、随意に食事および水を与えた。
【0101】
経口感染についてのS.aureus付着結紮
7 mm片の滅菌結紮をLB培養液に浸すことにより歯周感染についてのS.aureus付着結紮を調製し、対数定常期初期〜後期まで37℃にて培養した。偽群について、上記手順によるが微生物を用いないで結紮を行う。結紮における細菌の列挙について、LB培養液1 mlに懸濁させ、30秒間撹拌した。その後、懸濁物を連続希釈し、LB寒天プレート上に広げ、37℃にて終夜インキュベーションする。次いで、生菌コロニーをカウントし、S.aureus数を評価した。
【0102】
歯周感染
実験群および偽感染群における歯周組織の感染を麻酔動物の上顎の臼歯の周りに結紮を置き縛ることにより行う。S.aureus付着処置結紮または偽処置結紮を滅菌器具の補助により左上顎の上顎第一大臼歯(M1)上に縛る。結節を堅く締めた後、結紮を隙間に押す。対照動物は結紮せず微生物にも感染させない。
【0103】
S.aureusの検出および同定
犠牲時に、結紮臼歯部における生物膜サンプルを取るか、または注意深く滅菌して臼歯を引き抜くことにより細菌の存在を調べる。サンプルをLB培養液にすぐに移し、激しく撹拌し、連続希釈し、LB寒天プレート上に置き、37℃にて終夜インキュベーションした。その後、LB寒天プレート上の全CFUをカウントし、細菌数を測定する。
【0104】
プラスミノーゲン処置
マウスモデルの構築の確認後、全身静脈注射または左上顎M1における歯肉縁への局所注射によるヒトplg(10 ul/ul)の毎日注射を開始する。注射の開始点は実験開始時点または実験の感染段階中であることができる。実験の終了時に、最終細菌学的サンプリングおよび分析のために各群の動物を犠牲にする。上顎を頭蓋から分離し、舌などの全軟組織から肉を剥ぎ取り、4%パラホルムアルデヒド中にて24時間固定した。その後、サンプルを脱灰溶液に移し、骨組織からカルシウムを除去した。脱灰工程の4週間後、標本をパラフィン中に埋め込み、形態学的染色のために5μm厚さに切断した。サフラニンO染色を形態学的分析のために用い、従って軟骨およびムチンを暗赤色に、骨構造および歯を青色に、細胞核を暗青色に染色する。
【0105】
結果
全身および局所注射が自然歯周病を有するplg-/-マウスにて歯肉炎、正常な宿主防衛(例えば殺菌)および適切な歯周再付着を再構成したplg-/-マウスのプラスミノーゲン処置からの先の経験に基づき、上記のように誘発歯周病モデルにおけるplg-/-マウスのプラスミノーゲン処置に同様の応答が強く予測される。さらに、プラスミノーゲンの局所注射がplg+/+マウスにおける感染性細菌に対する正常な宿主防衛を増強する、別の感染モデル、細菌性関節炎モデルにおける我々の先の研究のデータに基づき、plg+/+マウスにおける上記誘発性歯周病モデル中のプラスミノーゲンの局所処置もまた、plg+/+マウスにおける正常な宿主防衛を増強することが強く予測される。従って、これらすべてのデータはプラスミノーゲンが歯周病を阻止し治療し、歯周創傷の治癒を改善し、口腔衛生を促進する新規候補薬物であることを強く示唆するものである。
【0106】
参考文献リスト
【表3−1】
【表3−2】
【表3−3】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば歯肉炎および歯周炎などの感染性歯周病および歯肉組織に影響を及ぼす壊死病態の予防、阻止および/または治療のための化合物および方法、一般的な口腔衛生の促進に関し、局所的な外科創傷などの歯周創傷の治癒の改善にも関する。特に、本発明は感染性歯周病を阻止および治療し、口腔衛生を促進し、および歯周創傷の治癒を改善する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病
歯周病は歯を支持し固定する組織(歯周組織としても知られる)に影響を及ぼす慢性炎症性疾患である。これは、特異的な歯肉縁下微生物と宿主の免疫および炎症応答との不均衡な相互作用により引き起こされる(1)。成人人口のほぼ四分の三に影響を及ぼし、ヒトの最も一般的な疾患の一つとされる。歯周病に関与する組織は歯茎であり、これは歯肉、歯周靱帯、セメント質および歯槽骨を含む(Fig.1)。歯肉は歯および歯槽骨の一部を覆う桃色の角化粘膜である。歯周靱帯は歯茎の主な部分である。セメント質は歯の低い部分を覆う石灰化構造である。歯槽骨は歯が埋め込まれた顎骨(上顎骨および下顎骨)からの1セットの突起である。歯周病が開始される領域は歯肉溝(歯と歯茎の間のポケット)である。
【0003】
感染、炎症およびこれに伴う宿主防衛および創傷治癒はすべて、歯周病の特質である。この疾患は歯の周りの歯肉における混合細菌感染として開始する(2)。健康な口内では、500種より多い微生物が発見されている。歯周病においては、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、カンピロバクター・レクタス(Campylobacter rectus)、アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス(Actinobacillus actinomcetemcomitans)およびフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)などのいくつかの潜在的歯周病原菌が研究されており、病原性微生物叢の有意な部分を示すと考えられる。これらの微生物は、歯茎、歯槽骨、歯根の外層の破壊などの不可逆的組織破壊をもたらし最終的に歯を失わせると直接的または間接的に考えられる、IL-1、IL-6、TNFなどのいくつかの因子ならびに酵素を宿主細胞にて誘発しうる。さらに、重篤な歯周病は、口臭、心疾患および卒中、糖尿病、呼吸器疾患および妊娠中の早産を引き起こしうる。喫煙/煙草使用、遺伝、妊娠および思春期ストレス、薬物、糖尿病、栄養不足および他の全身性疾患などの他の病原因子がある。
【0004】
歯槽骨の感染性破壊の別形態は、歯周炎、すなわちインプラント周囲炎(Periimplantitis)に近似しており、アロプラスト物質(alloplastic material)の顎への外科的移植後に起こりうる。移植法はオッセオインテグレーション(osseointegration)とも称されることが多く(3)、アロプラスト物質、すなわち歯科インプラント(チタン製であることが多い)と生きている骨との近接した接触を伴う。この方法は、本当の歯の欠乏の後に咬合を修復するために用いられ、現在エデンツリズム(edentulism)を治療するための標準的方法である。オッセオインテグレーションされた歯科インプラントと本当の歯との主な違いは、インプラントの周りの真の歯周組織の非存在である。正常な歯は歯槽骨内の歯の生理的な動揺を可能にする膠原線維の網構造に吊されるが、歯科インプラントは軟組織に干渉しないで骨に堅く連結される。骨組織への接着における主な相違にもかかわらず、感染中の歯およびインプラントの病変は、生物膜形成およびコロニー形成による感染、炎症応答ならびに免疫学的防衛などの多くの重要な特徴を共有する。従って、インプラント周囲炎は、機能上オッセオインテグレーションされたインプラントの周りの組織に影響を与え、支持骨の欠乏をもたらす炎症/感染過程である。インプラント周囲炎は、たとえインプラント周囲の感染の分解を標的化した広範な治療が行われても、完全な崩壊およびインプラント欠乏をもたらすことがある。インプラント周囲炎はまた、骨欠乏を伴わないで、インプラント周辺軟組織の不可逆的炎症性/感染性変化としても起こる。軟組織におけるインプラント周囲炎の有病率は8〜44%の範囲にて報告されているが、骨のインプラント周囲炎の割合は1〜19%の範囲にて報告されている。広範な割合は実体の少なくとも一部の定義における差によるようである。インプラント周囲炎の割合はインプラントを使った年数に関連する可能性が最も高い。歯科インプラント治療は近年比較的導入されたため、その数はここ数年増大しているようだ。歯および歯科インプラントにおける感染に対する炎症応答および免疫学的防衛における多くの類似性を考慮すると、インプラント周囲炎はインプラントされたアロプラスト物質に影響を及ぼす歯周病の形態と考えることができる。
【0005】
歯周病は一般的な口腔衛生の重要な態様である。口腔衛生は、個体が活動性疾患、不快または機能障害なく、食事し、会話し、社会に適合することを可能にし、一般的な健康問題に貢献する、口腔および関連組織の健康状態を意味する。口腔衛生の主な兆候としては、唾液および歯肉組織における細菌叢ならびに組織壊死および歯肉組織における炎症が挙げられる。口腔衛生は一般的健康に不可欠であり、分離して考えるべきではない。
【0006】
抗生物質および他の抗菌剤は第二次世界大戦時代以来感染症の治療に広く用いられてきた。疾患を引き起こす病原菌に対する抗菌剤の成功は、現代医薬の大きな達成の中にある。しかし、多くの抗菌剤は昔ほど有効ではない。抗生物質に対する抵抗の発展における重要な因子は新環境状態に素早く適応する感染性生物の能力である。時間とともに、いくつかの細菌は抗生物質の効果を回避する方法を発展してきた。抗生物質の広範な使用は、これらのかつて強力であった薬物から細菌を生き残らせる進化的な適応を促進させたと考えられる。究極的に、病原菌を撃退する困難性の増大は、病院または他の設備にて感染する危険性の増大をもたらす。薬物耐性は、抗生物質の補助なしでは感染を撃退することができない危篤状態の患者を有する病院には特に困難な問題である。それゆえ感染に対する感染防衛を改善するために新規な治療戦略が大いに必要であるという認識が増大している。
【0007】
歯周病の治療としては、保守的(非外科的)方法および外科的方法が挙げられる。保守的治療は、歯石除去および根面平滑化ならびに歯肉掻爬として知られる念入りなクリーニングからなる。この治療は、患部の歯根表面に定着する生物膜を除去し、治癒が起こりうる環境を再構築することを目的とする。良い口腔衛生状態に伴い、これにより健康な正常な歯茎を維持されるだろう。外科的歯周治療は、歯槽骨(骨)外科手術、歯肉/歯周移植、歯肉弁手順、小帯切除術、歯肉切除、組織再生誘導法/骨増強からなる。しかし、歯周病の治療をうまく改善した種々の治療方法にかかわらず、口腔衛生における多くの課題が未だ存在する。そのような課題の要因としては、抗生物質に対する口腔細菌の耐性の増大、口腔の一般的健康を改善するより単純な方法の必要性、高価で面倒な歯科治療手順、ストレスの多い現代生活、および先進国および発展途上国における恵まれない人々の重い歯科負担が挙げられる。それゆえ歯周病を阻止し治療し、口腔衛生を促進し、歯周創傷の治癒を改善する新規な方法が大いに必要である。
【0008】
壊死
壊死は細胞および生きている組織の非定型的または偶発的な死に付けられた名称である。これは定型的な細胞死の一部であるアポトーシスより規則的ではない。無秩序な細胞死は一般に、死にかけている細胞を巻き込むように近接する食細胞に言う「食べて(eat-me)」細胞シグナルを送らないため、免疫系の食細胞による細胞残屑の掃除はアポトーシスと対称的に、一般により困難である。このシグナル伝達の欠如は、細胞がアポトーシスを受けた場合よりも壊死により死ぬ死細胞を免疫系が探して再利用することをより困難にする。細胞膜損傷後の細胞内内容物の放出は壊死における炎症の原因である。傷害、感染、がん、梗塞、毒物注入(invenomation)および炎症などの壊死の多くの原因がある。細胞におけるある不可欠な系へのいくつかの損傷は、他の系への二次損傷、いわゆる「効果の連鎖」を引き起こす。壊死は、細胞成分または完全な細胞自体を消化することができるリソソームにより放出される特定の酵素により引き起こされる。細胞により受ける傷害は、リソソーム膜を危険にさらすことがあるか、または酵素における放出をもたらす未組織の連鎖反応を誘発することがある。アポトーシスと異なり、壊死により死んだ細胞は他の細胞を損傷する有害な化学物質を放出することがある。生検材料の壊死は固定または冷凍により停止する。
【0009】
壊死はいくつかのタイプの歯周病に起こる。歯肉の壊死は隣接歯間壊死性潰瘍、突発性出血、疼痛の急激な発生および悪臭により特徴付けられる炎症性破壊的歯肉病態である。適切に治療しなければ、歯肉の壊死は再発の傾向が著しく、歯周サポートのかなりの欠如を引き起こす。
【0010】
現在、壊死を治癒する主な治療方法が四つある。第一は外科的であり、最も速く、それゆえ多くの壊死領域または深い傷が存在している場合に勧められる。第二は機械的であり、水治療法、デキストラノマーおよび傷口洗浄が挙げられる。第三は酵素的であり、使用する酵素は主にコラゲナーゼ(例えばSantyl)であるが、効果は感染が示されたときには遅すぎ、第四は自己分解方法により、創傷液中の酵素によるが効果は極めて遅い。しかし、四つの治療方法のいずれも機能的および審美的に満足いく壊死除去および組織改造を与えることができない。それゆえ壊死の見事な除去を達成するために、新規治療戦略が大いに必要である。
【0011】
プラスミノーゲン活性化系
プラスミンはPA系の重要な成分である。これはフィブリン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニンおよびプロテオグリカンなどのECMのいくつかの成分を分解する能力を有する広範な薬効範囲のプロテアーゼである(4)。さらに、プラスミンはいくつかのプロマトリックス・メタロプロテイナーゼ(pro-MMPs)を活性MMPsに変換することができる。それゆえプラスミンが細胞外タンパク質分解の重要な上流調節因子であることができることが示唆されている(5;6)。プラスミンは、二つの生理的PAs、tPAまたはuPAのいずれかによるタンパク質分解的開裂を通してチモーゲンプラスミノーゲンから形成される。プラスミノーゲンが比較的高レベルにて血漿および他の体液中に存在するので、PA系の調節は主にPAの合成および活性のレベルにて起こる。PA系の成分の合成はホルモン、成長因子およびサイトカインなどの異なる因子により非常に調節される。さらに、血漿およびPAの特異的な生理学的阻害剤が存在する。プラスミンの主な阻害剤はα2-抗プラスミンである。PAの活性は、uPAおよびtPAの両方を阻害するPAI-1、および主にuPAを阻害するPAI-2により調節される。いくつかの細胞もまた、直接的なタンパク質分解活性を細胞表面に向けることができるuPA(uPAR)のための特異的細胞表面レセプターを有する(8;9)。
【0012】
プラスミノーゲンはおよそ92 kDaの分子量を有する790アミノ酸からなる一本鎖糖タンパク質である(7;8)。プラスミノーゲンは、主に肝臓にて合成され、ほとんどの細胞外液中に豊富にある。血漿にてプラスミノーゲンの濃度はおよそ2μMである。それゆえプラスミノーゲンは組織および体液におけるタンパク質分解活性の大きな可能性源を構成する(9;10)。プラスミノーゲンは二の分子形態にて存在する:Glu-プラスミノーゲンおよびLys-プラスミノーゲン。天然の分泌および未開裂形態はアミノ末端(N-末端)グルタミン酸を有し、それゆえGlu-プラスミノーゲンに指定される。しかし、プラスミンの存在下、Glu-プラスミノーゲンはLys76-Lys77にて開裂し、Lys-プラスミノーゲンとなる。Glu-プラスミノーゲンと比較して、Lys-プラスミノーゲンはフィブリンとより高い親和性を有しており、PAによりより高速度にて活性化される。プラスミノーゲンのこれら二つの形態はuPAまたはtPAによりArg560-Val561ペプチド結合にて開裂し、ジスルフィド連結二本鎖プロテアーゼプラスミンの形成をもたらしうる(11)。プラスミノーゲンのアミノ末端部は五つの同種三重ループ、いわゆるクリングルを含み、カルボキシル末端部はプロテアーゼドメインを含む。いくつかのクリングルは、プラスミノーゲンとフィブリンおよびその阻害剤α2-APとの特異的相互作用を媒介するリジン結合部位を含む。新規かつ興味深い発見は、クリングル1-4からなるプラスミノーゲンの38-kDaフラグメントが血管形成の強力な阻害剤であることである。このフラグメントはアンギオスタチンと称され、いくつかのMMPsによるタンパク質分解的開裂を通してプラスミノーゲンから生成しうる。
【0013】
プラスミンのための主な基質はフィブリンであり、フィブリンの溶解は病的血栓形成の阻止のために極めて重要である(12)。プラスミンはまた、ECM改造に重要な役割も果たすことを示すラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカンおよびゼラチンなどのECMのいくつかの他の成分に基質特異性も有する(8;13;14)。間接的に、プラスミンはまた、いくつかのpro-MMPsをMMP-1、MMP-2、MMP-3およびMMP-9などの活性MMPsに変換するECMの能力によりECMの別の成分を分解することもできる。それゆえ、プラスミンが細胞外タンパク質分解の重要な上流調節因子であることができることが示唆されている(15)。さらに、プラスミンはいくつかの成長因子の潜在形態を活性化する能力を有する(16-18)。インビトロにてプラスミンはまた、補完系の成分も開裂し、それにより走化性補完フラグメントを放出する。
【0014】
PA系は、細菌侵入中のいくつかの段階に関与し、種々の機序により影響を受けることが示唆されている(19)。膨大な数の病原菌はプラスミン(プラスミノーゲン)レセプターを発現する(20;21)。細菌はまた、哺乳類細胞からPAおよびその阻害剤の分泌も促す(22;23)。例えばuPAの生成は種々の細菌により感染する細胞にて増強されることが見出されている(24)。これまで、病因におけるプラスミノーゲン活性化の役割のためのインビボにおける証拠は、ペスト菌、ボレリア菌および連鎖球菌A群などのいくつかの細菌にて存在する。
【0015】
いくつかの細菌の表面に存在するプラスミノーゲンのレセプターへの結合は、これらの細菌をタンパク質分解生物に変換する。グラム陰性菌にて、線維状表面付属体はプラスミノーゲンレセプターの主な群を形成する(25;26)。グラム陽性菌にて、表面結合分子はプラスミノーゲンレセプターとして認識されている(27;28)。結果として、プラスミンはインフルエンザ菌、ネズミチフス菌、肺炎連鎖球菌、ペスト菌およびボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)などの微生物の表面にて生成することができ、哺乳類ECMの崩壊を引き起こしうる。さらに、細菌プロテアーゼはまた、ヒト血漿にて潜在的プロ-コラゲナーゼを直接活性化するか、またはプロテアーゼ阻害剤を不活性化することもでき、従って組織損傷および組織壁を超えた細菌拡散の一因となることがある。
【0016】
歯周病および歯周損傷のモデル
歯周病のモデルとしては、自発型と誘導型が挙げられる。歯周組織は微生物リッチ環境に曝露される。口腔における細菌侵入、続く宿主防衛は絶えず起こり、通常は不安定な状態のままである。この宿主-細菌バランスの崩壊は種々の歯周病を引き起こす。これは口腔微生物叢、食細胞機能における変化および/または特異的免疫応答の間の不均衡に起因しうる。いくつかの歯周病は米国青少年のおよそ2%および米国成人のおよそ20%にて起こる。
【0017】
いくつかの細菌種により誘発される歯周病は、歯周炎について明確なモデルを提供する。一般に用いられる歯周病原菌としては、ポルフィロモナス・ジンジバリス、カンピロバクター・レクタス、アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンスおよびフソバクテリウム・ヌクレアタムが挙げられ、これらは病原性微生物叢の重要な部分を示すと考えられる。それらはIL-1、IL-6、腫瘍壊死因子、表面結合タンパク質、線毛、小嚢、毒素および酵素などのいくつかの因子を宿主細胞内に有するか、または誘導することができ、これらは直接または間接的に歯周支持組織の不可逆的損失を引き起こすと考えられる。
【0018】
歯周創傷は一般に見られ、特に歯根膜手術中に見られる。歯周創傷モデルはマウスにおける歯肉組織にて切開創傷を誘発することにより構築することができる。その後、創傷の治癒パターンおよび候補薬物または化合物の効果を評価することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
壊死などの感染ならびに歯周病の現在の治療方法は、上記の欠点を有する。従って、歯周病の治療および口腔衛生の改善についての改善された戦略および手段が当分野にて未だ必要である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の要約
本発明は、プラスミノーゲン活性化経路の成分およびプラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物が一般に、歯周創傷(外科的創傷など)の治癒および口腔衛生の促進のために、歯周病および組織壊死を阻止および治療するための新規かつ改善された戦略のために用いることができるという新たな発見に関する。プラスミノーゲンおよび/またはプラスミノーゲン活性化経路の他のメンバーまたはプラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物の投与は、炎症細胞を活性化し、ケラチノサイト移動を増進し、殺菌し、壊死組織を除去し、サイトカイン発現を増強することにより、細菌誘発感染から保護し、歯周創傷の治癒を促進する多能性の役割を果たす。天然条件下、プラスミノーゲン欠損マウスにおける歯周病の広範な発生はまた一般に、歯周病の研究のための優れた動物モデル、ならびに種々の態様の歯周病の新規薬物および治療方法、歯周創傷改善および適切な口腔衛生を認識し、評価するためのスクリーニング方法も提供する。
【0021】
従って、本発明は、治療を必要とする対象における歯周病、特に感染性歯周病の予防、阻止および/もしくは治療、および/または歯肉組織における壊死の除去のための有効量の化合物/薬剤または二以上のそのような薬剤/化合物の組合せを含む医薬組成物の製造のための使用であって、有効薬剤または化合物がプラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接もしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、使用を提供する。好ましくは、有効薬剤はプラスミノーゲン活性化剤、tPA、uPA、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される。より好ましくは、有効薬剤はプラスミンまたはプラスミノーゲンおよびそれらの誘導体、例えばプラスミンまたはプラスミノーゲンのクリングルドメイン、プラスミンまたはプラスミノーゲンのタンパク質フラグメント、ミニ-プラスミノーゲンおよびミニ-プラスミンならびにプラスミンまたはプラスミノーゲンの合成誘導体から選択される。最も好ましくは、有効薬剤はプラスミノーゲンおよびその誘導体である。有効薬剤は当分野にて知られる任意の投与経路により投与することができる。好ましい非限定的な投与経路としては、局所適用、歯肉内注射および静脈内注射が挙げられる。該薬剤はまた、可能ならば歯周組織の感染部位に転移する歯周組織の感染領域に適用される創傷包帯中に存在することもできる。組成物はゲル、ローション、香油、ペースト(歯磨き粉)、うがい溶液(うがい薬)または創傷包帯の一部であることができる。
【0022】
本発明はまた、治療を必要とする対象における歯周創傷および外科的歯周創傷、特に感染性歯周創傷および外科的感染性歯周創傷の解消の改善および/または治癒の促進のための有効量の化合物/薬剤または二以上の化合物/薬剤の組合せを含む医薬組成物の製造のための使用であって、化合物または有効薬剤がプラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接もしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、使用も提供する。好ましくは、有効薬剤はプラスミノーゲン活性化剤、tPA、uPA、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される。より好ましくは、有効薬剤はプラスミンまたはプラスミノーゲンから選択される。最も好ましくは、有効薬剤はプラスミノーゲンである。有効薬剤は当分野にて知られる任意の投与経路により投与することができる。好ましい非限定的な投与経路としては、局所適用、歯肉内注射および静脈内注射が挙げられる。該薬剤はまた、可能ならば歯周組織の創傷部位に転移する歯周組織の創傷領域に適用される創傷包帯、ゲル、ローション、香油、ペースト、うがい薬および歯磨き粉中に存在することもできる。
【0023】
さらに、本発明は、プラスミノーゲン活性化経路の成分もしくはプラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物である有効薬剤または二以上の該薬剤の組合せを含む組成物を投与することを含む、口腔衛生を促進する方法を提供する。好ましくは、有効薬剤はプラスミノーゲン活性化剤、tPA、uPA、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される。より好ましくは、有効薬剤はプラスミンまたはプラスミノーゲンから選択される。最も好ましくは、有効薬剤はGlu-プラスミノーゲンまたはLys-プラスミノーゲンなどのプラスミノーゲンである。有効薬剤は当分野にて知られる任意の投与経路により投与することができる。組成物はゲル、ローション、香油、ペーストまたは包帯の一部であることができる。好ましい非限定的な投与経路としては、歯を腐食に対して強化し、口腔衛生を促進するために用いることができる歯磨き粉またはうがい溶液(うがい薬)の使用などの局所適用が挙げられる。
【0024】
本発明はまた、宿主防衛が妨害されるか、または損なわれる病態にて歯周病、特に感染性歯周病を治療するために宿主防衛を開始する方法であって、プラスミンまたはプラスミノーゲンである有効成分を投与することを含む、方法も提供する。具体的態様にて、本発明の方法は、プラスミンまたはプラスミノーゲンの局所的または全身性欠乏/障害の病態における歯周病に対する宿主防衛を改善するために用いることができる。
【0025】
別の具体的態様にて、本発明は、プラスミノーゲンもしくはプラスミンおよびそれらの誘導体、プラスミノーゲン活性化剤またはプラスミンの活性を増強する化合物である化合物または薬物を投与することによりヒトまたは非ヒト対象における歯周病、特に感染性歯周病の予防、阻止および治療、外科的創傷などの歯周創傷の治癒の改善および口腔衛生の促進のための方法を提供する。好ましくは、化合物を局所投与し、感染領域における高濃度を達成する。
【0026】
さらに、本発明は、プラスミノーゲン活性化経路の成分である化合物またはプラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物を含む組成物の局所的または全身性投与を含む、組成物を投与することにより口腔壊死形成を軽減または阻止する方法を提供する。組成物はゲル、ローション、香油、ペーストまたは創傷包帯の一部であることができる。あるいは、組成物は全身投与することができる。ある具体的態様にて、本発明の方法は、歯周組織における形成外科と併用して適用され、感染、潰瘍および壊死の発生および形成を軽減する。
【0027】
別の具体的態様にて、本発明は、プラスミノーゲン活性化経路の成分である有効量の化合物またはプラスミノーゲンを活性化する能力を有する有効量の化合物を含む、歯周病、特に感染性歯周病の治療、予防および阻止のための医薬組成物を提供する。プラスミノーゲン活性化経路の成分は、プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択することができる。好ましくは、プラスミノーゲン活性化経路の成分はプラスミノーゲンまたはプラスミンである。プラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物は、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択することができる。
【0028】
さらなる具体的態様にて、本発明は、化合物がプラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、有効量の請求項1〜16記載の化合物を含む医薬組成物を治療を必要とする対象に投与することを含む、歯周病、特に感染性歯周病を予防、阻止および/または治療する方法を提供する。プラスミノーゲン活性化経路の成分は、プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択することができる。好ましくは、プラスミノーゲン活性化経路の成分はプラスミノーゲンまたはプラスミンである。プラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物は、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択することができる。
【0029】
さらに別の具体的態様にて、本発明は、歯周創傷、特に感染性歯周創傷の治癒を促進するための医薬組成物であって、プラスミノーゲン活性化経路の有効量の成分またはプラスミノーゲンを活性化する能力を有する有効量の化合物を含む、組成物を提供する。プラスミノーゲン活性化経路の成分は、プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択することができる。好ましくは、プラスミノーゲン活性化経路の成分はプラスミノーゲンまたはプラスミンである。プラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物は、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択することができる。
【0030】
さらなる具体的態様にて、本発明は、歯周創傷、特に感染性歯周創傷の治癒を促進する方法であって、プラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、有効量の化合物を含む医薬組成物を治療を必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。プラスミノーゲン活性化経路の成分は、プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択することができる。好ましくは、プラスミノーゲン活性化経路の成分はプラスミノーゲンまたはプラスミンである。プラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物は、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択することができる。
【0031】
発明の詳細な記載
歯周病の阻止および治療、歯周創傷の治癒および口腔衛生の維持の改善
本発明によれば、プラスミノーゲンおよび/またはプラスミンのレベルの提供または増強は、歯周病の予防、阻止および治療、歯周創傷の治癒の増進し、口腔衛生を促進するために用いることができる。これは多くの異なる方法にて達成することができる。例えば有効な薬剤、薬物、ホルモン、サイトカイン、抗体、またはプラスミン、プラスミノーゲンもしくはプラスミノーゲン活性化剤を上方制御する他の化合物で患者を治療し;これらの成分のいずれかの崩壊を軽減することにより、プラスミノーゲンおよび/またはプラスミンの局所的または全身性レベルを増大することができる。別の具体的態様にて、局所的プラスミンまたはプラスミノーゲンレベルは、直接的にプラスミン/プラスミノーゲンタンパク質およびそれらの誘導体を適用することにより増大する。さらに別の具体的態様にて、プラスミン活性はプラスミンまたはプラスミノーゲンの活性化剤の投与により増強する。さらなる別の具体的態様にて、ストレプトキナーゼおよびスタフィロキナーゼなどの人工、組換えまたは細菌性プラスミノーゲン活性化剤を用いる。さらなる別の具体的態様にて、合成ペプチド、クリングルドメインミニプラスミノーゲンまたはミニプラスミンなどのプラスミノーゲンタンパク質配列のフラグメントを用いる。
【0032】
プラスミノーゲン活性化経路の成分またはプラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物は、細菌、ヒトもしくは他の動物からの成分もしくは化合物の精製により、またはS. cerevisiaeなどの酵母、E. coliなどの細菌およびチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞株などの哺乳類細胞株における組換え生産により産生されうる。成分は野生型または改変/突然変異型であることができる。全長成分の少なくとも一部の所望の活性を保持する成分のフラグメントもまた用いることができる。好ましい具体的態様にて、ヒトプラスミノーゲンの実質的に純粋な生成物を用いる。別の好ましい具体的態様にて、ヒトプラスミンの実質的に純粋な生成物を用いる。さらに別の好ましい具体的態様にて、ミニプラスミノーゲン、ミニプラスミン、またはプラスミノーゲンタンパク質配列のフラグメントの実質的に純粋な生成物を用いる。
【0033】
適用
本発明の方法は、歯周病の予防、阻止および治療、歯周創傷の治癒、および日常生活のための口腔衛生の促進のために用いる。そのような動物としては、ヒトならびにイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタおよび家禽などの家畜などの脊椎動物が挙げられるが、これらに限定されない。ある具体的態様にて、本発明の方法は、ヒト対象における歯周病の管理のために適用する。ヒトまたは非ヒト対象は歯周病の治癒を減じる病態を患っているか、または患っていないこともある。別の具体的態様にて、本発明の方法は、歯周創傷の治癒を改善するために適用する。歯周創傷としては、傷害および外科創傷による外傷性創傷が挙げられるが、これに限定されない。特定の具体的態様にて、対象は、口の歯周領域における形成外科を受ける予定であるか、受けているか、または受けた、ヒトである。そのような場合、例えばプラスミノーゲンを含む組成物は、外科の前および/または後の両方に適用するか、または投与することができる。さらなる別の具体的態様にて、本発明の方法は、口腔衛生の促進のために適用する。そのような場合、プラスミノーゲン、プラスミンまたはミニプラスミンのレベル/活性を増大する組成物、方法は、口腔衛生の促進のために適用するか、または投与することができる。
【0034】
組成物および治療
本発明の有効薬剤は、薬物標的の生物活性を調節するために用いられ、ECM、宿主防衛の崩壊および/または創傷治癒の低下が観察される病態の治療にて用いられる。特に、歯周病の阻止および治療、歯周創傷の治癒、および口腔衛生の促進のために用いることができる。
【0035】
従って、本発明の有効薬剤は、インビボにおける投与に適切な生物学的に両立可能な形態における対象への投与のための医薬組成物に製剤化することができる。インビボにおける投与に適切な生物学的に両立可能な形態によりは、いずれの毒性効果も治療効果を凌ぐ投与用有効薬剤の形態を意味する。有効薬剤は、ヒトおよび動物などの生物に投与することができる。本発明の有効薬剤の有効量は、所望の結果を達成するのに必要な投与量および時間にて有効な量として定義する。例えば、治療的有効量の有効薬剤は、個体の疾患状態、年齢、性別および重量、および個体における所望の反応を誘導するための抗体の能力などの因子により変化しうる。投与量範囲は、調節して最適治療応答を提供することができる。例えばいくつかの分割用量は、毎日投与することができるか、または治療状況の危急により指摘されるように比例的に減少しうる。
【0036】
組成物は、注射(皮下、静脈内など)、経口投与、吸入、直腸投与または経皮投与などによる従来の方法にて投与することができる。投与経路により、有効薬剤は、薬剤を不活性化しうる酵素、酸および他の自然条件の作用から薬剤を保護するために物質にてコーティングすることができる。従って、適切な投与経路としては、局所、静脈内、筋肉内、皮内、経口、直腸および膣内投与が挙げられる。好ましい投与経路は、局所投与または経口投与である。
【0037】
本明細書に記載の組成物は、対象に投与することができる医薬的に許容される組成物の製造のためにそれ自体知られている方法により製造することができ、該方法にて医薬的に許容されるビヒクルとの混合物にて1以上の有効量の有効薬剤を混合する。適切なビヒクルは、例えばRemingtonのPharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company, Easton, Pa., USA 1985)にて記載される。これに基づき、組成物としては、1以上の医薬的に許容されるビヒクルまたは希釈剤と混合した有効薬剤の溶液が挙げられるが、これに限定されず、適切なpHを有し生理液と等浸透圧を有する緩衝溶液中に含まれる。
【0038】
本発明による有効薬剤の送達に用いることができるビヒクルの例としては、充填剤を含む/含まない、ゲル、ペースト、香油、蝋、ローション、肌クリーム、リンス溶液、乾燥粉末および当分野にて知られる局所投与のための種々の他の型が挙げられるが、これらに限定されない。組成物はまた、スプレー用粉末もしくは溶液またはうがい溶液の形態にて局所的に送達することもできる。あるいは、本発明の組成物は、そこから必要とされる領域に移動するような創傷包帯、パッド、絆創膏、ガーゼまたは興味の領域に適用される他の手段であることができる。そのような手段としてはまた、持続時間にて本発明のプラスミノーゲンもしくは他の薬剤を連続的に放出する遅延放出手段、または使用時間にて即時に本発明のプラスミノーゲンもしくは他の薬剤を放出する即時放出手段を挙げることができる。
【0039】
医薬組成物を製造した後、適切な容器に置き、適応病態の治療のために標識することができる。本発明の組成物の投与のために、そのような標識は、投与の量、頻度および方法を含むだろう。
【0040】
組成物は、一定の間隔、例えば一日一回もしくは二回で投与するか、または必要に応じて変化する包帯もしくは遅延放出手段にて加えることができる。口腔衛生の促進に関して、組成物は使用時間にて組成物を形成することにより即時に投与することができる。
【0041】
本発明の上記特徴および多くの他の利点は、添付の図面とともに以下の詳細な記載を参照することによりより良く理解できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】正常な健康状態の歯肉組織(A)、炎症性歯肉炎(B)および歯周炎(C)の写真。
【0043】
【図2】成長培地中のプラスミノーゲンの存在によりインビボ創傷治癒モデルにてケラチノサイト移動が促進される。
【0044】
【図3】未処置8〜12週齢野生型およびプラスミノーゲン欠損マウス顎の形態。壊死組織(N, 赤)および骨隔膜の重篤な分解(B)がプラスミノーゲン欠損マウスの歯肉組織にて起こるが、野生型マウスの歯肉組織は完全に正常であることに留意。より高倍率下(×200)、野生型およびプラスミノーゲン欠損マウス間の差異はより一層明らかである(下方パネル)。B, 骨隔膜。N, 壊死組織。
【0045】
【図4】未処置12〜16週齢野生型およびプラスミノーゲン欠損マウス顎の形態。12〜16週齢のプラスミノーゲン欠損マウスの自然歯周病は8〜12週齢よりも重篤である。壊死組織(N, 赤)および骨隔膜の重篤な分解(B)がプラスミノーゲン欠損マウスの歯肉組織にて起こるが、野生型マウスの歯肉組織は完全に正常であることに留意。より高倍率下(×200)、野生型およびプラスミノーゲン欠損マウス間の差異はより一層明らかである(下方パネル)。B, 骨隔膜。N, 壊死組織。
【0046】
【図5】未処置16〜20週齢野生型およびプラスミノーゲン欠損マウス顎の形態。16〜20週齢のプラスミノーゲン欠損マウスの自然歯周病は12〜16週齢よりも重篤である。壊死組織(N, 赤)および骨隔膜の重篤な分解(B)がプラスミノーゲン欠損マウスの歯肉組織にて起こるが(上方右パネル)、野生型マウスの歯肉組織は完全に正常である(上方左パネル)ことに留意。より高倍率下(×200)、野生型およびプラスミノーゲン欠損マウス間の差異はより一層明らかである(下方パネル)。B, 骨隔膜。N, 壊死組織。
【0047】
【図6】野生型、プラスミノーゲンヘテロ接合およびプラスミノーゲン欠損マウスの唾液からの細菌回収。プラスミノーゲン欠損およびプラスミノーゲンヘテロ接合マウスは野生型マウスのものと比較して唾液中に有意に多数の細菌を有する。
【0048】
【図7】ヒトプラスミノーゲン補完プラスミノーゲン欠損マウス、PBS補完プラスミノーゲン欠損マウスおよびいずれの処置もされていない野生型マウスの引き抜いた歯からの細菌回収。
【0049】
【図8】PBSまたはヒトプラスミノーゲン補完プラスミノーゲン欠損マウスの形態。PBS処置プラスミノーゲン欠損マウスにて壊死組織が歯肉組織中に存在し、周囲コラーゲン組織が歯から分離し始め、骨吸収が起こったことに留意(左パネル)。しかし、プラスミノーゲン欠損マウスにおけるヒトプラスミノーゲンの補完は、歯周組織中の細胞構造および組織構造を完全に回復した。倍率, ×50。
【0050】
【図9】高倍率下(×50)におけるPBSまたはヒトプラスミノーゲンを補完したプラスミノーゲン欠損マウスの形態。
【0051】
【図10】経口注射によりPBSまたはヒトプラスミノーゲンを補完したプラスミノーゲン欠損マウスの形態。PBS処置プラスミノーゲン欠損マウスにて壊死組織が歯肉組織中に存在し、周囲コラーゲン組織が歯から分離し始め、骨吸収が起こったことに留意(上方の二の左パネル)。しかし、プラスミノーゲン欠損マウスにおけるヒトプラスミノーゲンの補完は、歯周組織中の細胞構造および組織構造を回復した。倍率, ×100。
【0052】
【図11】未処置22週齢野生型(左パネル)およびtPA/uPA二重欠損(右パネル)マウス顎の形態。壊死組織(N, 赤)および骨隔膜の重篤な分解(B)がtPA/uPA二重欠損マウスの歯肉組織にて起こるが、野生型マウスの歯肉組織は完全に正常であることに留意。B, 骨隔膜。N, 壊死組織。
【0053】
【図12】膝関節における1×106 CFUのS. aureus Phillips接種後の異なる局所および全身処置を行ったplg-/-およびplg+/+マウスの膝関節における細菌数。
【0054】
【図13】膝関節におけるS. aureus接種の3日後におけるPlg(塗りつぶし)またはPBS(中抜き)の局所注射後のplg+/+マウスの膝関節における細菌数。Plgで局所注射した野生型マウスにて細菌数はPBSで局所注射した野生型のものよりも有意に5倍低下していることに留意。
【発明を実施するための形態】
【0055】
定義
本明細書における用語は一般に、本発明の内容の範囲内および各用語が用いられる具体的な文脈内にて当分野における通常の意味を有する。いくつかの用語は以下または本明細書中に説明し、本発明の組成物および方法を記載する際の実行者へのさらなる案内、およびそれらをどのように製造し用いるかを提供する。
【0056】
「プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲン活性化経路の成分、ミニ-プラスミンなどのプラスミノーゲン類似体、プラスミン類似体、プラスミノーゲン活性化経路の成分の類似体、プラスミノーゲン活性化剤」は、それぞれプラスミノーゲンまたはプラスミンの効果を直接的または間接的に提供する化合物を意味する。
【0057】
「プラスミノーゲン活性化経路の成分」は、プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミノーゲンにより例示される1以上のクリングルドメインおよびタンパク質分解ドメインなどのプラスミノーゲンの1以上のドメインを含むプラスミノーゲンの変形および類似体;プラスミン、ならびにミニ-プラスミンおよびデルタ-プラスミンにより例示される1以上のクリングルドメインおよびタンパク質分解ドメインなどのプラスミンの少なくとも1以上のドメインを含むプラスミンの変形および類似体;uPAおよびtPA、ならびに例えば1以上のクリングルドメインおよびタンパク質分解ドメインなどのtPAまたはuPAの1以上のドメインを含むtPAおよびuPAの変形および類似体により例示されるプラスミノーゲンの形成または活性化をもたらす一連の事象によりプラスミノーゲンを活性化する最終効果を有するプラスミノーゲン活性化剤を意味する。プラスミノーゲン、プラスミン、tPAおよびuPAの変形としては、これらのタンパク質のヒトならびに他の哺乳類形態の天然由来の全遺伝的変形、ならびに保存アミノ酸置換により得られるこれらのタンパク質の突然変異体が挙げられる。プラスミノーゲンまたはプラスミンの「類似体」は、それぞれエンザイモグラフィー(enzymography)ELISA(酵素免疫測定法)およびFACS(蛍光活性化細胞分類装置)により測定された、本質的にプラスミノーゲンまたはプラスミンとしての類似効果を提供する化合物である。先に記載されているとおり、変換プラスミン活性のレベルを測定するためのアッセイもある:Ny, A., Leonardsson, G., Hagglund, A.C., Hagglof, P., Ploplis, V.A., Carmeliet, P., and Ny, T. (1999). Ovulation in plasminogen-deficient mice. Endocrinology 140, 5030-5035。プラスミノーゲン活性化経路の成分の「類似体」は、この類似体を活性化するプラスミン活性のレベルにより測定されるプラスミノーゲン活性化経路の成分として本質的に類似効果を提供する化合物である。
【0058】
「歯周病」は、特定の歯肉縁下微生物および宿主免疫および炎症反応間の相互作用により引き起こされる一般的な炎症障害である。歯周病は、単純な歯肉炎症から歯を支持する軟組織および骨への主な損傷をもたらす重篤な疾患まで及ぶ。最悪の場合、歯が失われる。細菌は「歯肉炎」と称される歯肉の炎症を引き起こす。歯肉炎にて、歯肉は紅く腫れ上がり、出血しやすくなる。歯肉炎は通常、日常の歯磨きおよび掃除、および歯医者または歯科衛生士による通常のクリーニングで改善しうる歯肉疾患の軽症型である。この歯肉疾患の形態は、歯を適当な位置に保持するいずれの骨および組織の喪失も含まない。歯肉炎が処置されない場合、「歯周炎」(「歯の周りの炎症」を意味する)に進行しうる。歯周炎にて、歯肉は歯から引き離され、感染する「ポケット」を形成する。身体の免疫系はプラークが歯肉線下で広がり成長するように細菌と闘う。細菌毒素および感染と闘う身体の酵素は実際、歯を適当な位置に保持する骨および結合組織を分解し始める。処置されなければ、歯を支持する骨、歯肉および結合組織は破壊される。歯は結局、失われ、除去せざるを得ない。歯周病の別のタイプのインプラント周囲炎は、顎骨へのアロプラスト物質の外科的移植後の生物学的合併症として起こる。インプラント周囲炎は、オッセオインテグレーテッド・インプラントの周りの組織に機能上影響を及ぼし、支持骨の喪失をもたらす炎症/感染過程である。インプラント周囲炎は、たとえインプラント周囲の感染を解消する目的の大規模な治療が行われても、完全な崩壊およびインプラント喪失をもたらしうる。インプラント周囲炎はまた、骨喪失が全くなく、インプラント周囲軟組織の可逆的炎症/感染性変化としても起こり、ときどきインプラント周囲粘膜炎として称される。本特許では、歯周病の定義は、少なくとも歯周炎、歯肉炎、インプラント周囲炎およびインプラント周囲粘膜炎を含む。
【0059】
「感染性歯周病」は、例えば木質性歯周炎と比較して、感染によりもたらされる歯周病である。例えば感染性歯周病は、細菌、ウイルスまたは真菌感染によりもたらされうる。
【0060】
「細菌性歯周病」は、細菌感染によりもたらされる。
「歯周創傷」は、歯周領域におけるインプラントの周りの組織における創傷などの口の歯周組織に起こる外的創傷および外科的創傷を意味する。
【0061】
「口腔衛生」は、個人が活動性疾患、不快または困惑なく食事し、会話し、社会生活をすることができ、一般的な幸せに寄与する口腔および関連組織の標準的な衛生を意味する。口腔衛生の主な適応は、唾液および歯肉組織における細菌叢ならびに歯肉組織における組織の壊死および炎症を含む。口腔衛生は一般的健康に不可欠であり、分離して考えるべきではない。
【0062】
「プラスミン/プラスミノーゲンの誘導体」は、例えばプラスミンまたはプラスミノーゲンのクリングルドメイン、プラスミンまたはプラスミノーゲンのタンパク質フラグメント、ミニ-プラスミノーゲンおよびミニ-プラスミンならびにプラスミンまたはプラスミノーゲンの合成誘導体を意味する。
【0063】
「ミニ-プラスミノーゲン」は、酵素活性部位を含む天然プラスミノーゲンのC末端フラグメントを意味する。ミニプラスミノーゲンのMrは38000である。ウロキナーゼまたはストレプトキナーゼによる活性化は、プラスミノーゲンのものと極端に類似した基質特異性を有する二本鎖酵素を与え、これは「ミニ-プラスミン」と称される。
【0064】
「壊死」は、体内の組織の死を意味する。これは、傷害、放射線または化学品に起因するかにかかわらず、十分な血液が組織に供給されない場合に起こる。壊死は不可逆的である。傷害、感染、がん、梗塞、毒物注入、慢性創傷、潰瘍および炎症などの多くの壊死の原因がある。
【0065】
「局所」および「局所適用」は、有効成分の非全身性局所投与を意味する。従って、局所適用は創傷の外部表面への有効成分の適用を意味しうる。
【0066】
タンパク質または化合物の「活性」は、タンパク質または化合物が有する特定の反応に対する効果を意味し、反応に影響を及ぼし、調節し、関与し、または促進する能力の測定である。一般に、タンパク質または他の化合物の活性を測定することができる。例えばプラスミン、PAおよびMMPなどの酵素およびモジュレータの場合、酵素活性は、反応の生成物が生成する速度として表すことができ、例えば時間および酵素単位あたり生成した生成物の量(例えば濃度または重量)として表すことができる。PAなどのモジュレータの場合、活性は反応の速度または反応から形成される生成物の量を阻害または促進し、増大または減少し、上方または下方調整するモジュレータの能力を意味しうる。
【0067】
「創傷」は、外部薬剤により引き起こされる、上皮、結合組織および筋組織などの器官または組織の構造における破損である。創傷の例としては、打撲傷、かすり傷、裂傷、切り傷、刺し傷および熱傷が挙げられるが、これらに限定されない。他の特定のタイプの創傷は、形成外科手術の結果であるものである。
【0068】
本明細書において疾患または病態についての対象の「治療」または対象を「治療する」は、低下したまたは遅い創傷治癒などの疾患または病態の臨床症状を軽減または緩和することを意味する。
【0069】
創傷治癒の「増強」は、それにより創傷を治癒する速度を増大することを意味する。あるいは、創傷治癒の「増強」は、治癒中または治癒後の瘢痕組織の形成を軽減することを意味する。
【0070】
本明細書において「対象」は、ヒトおよび非ヒト動物の両方を含む。非ヒト動物としては、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモットなどの実験動物;イヌおよびネコなどの家畜;およびヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマおよびウシなどの農場動物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の非ヒト動物は、哺乳動物または非哺乳動物;脊椎動物または非脊椎動物であってよい。
【0071】
アッセイにおける「対照」、「対照値」または「参照値」は、例えば歯周病の治療、歯周創傷の治癒および口腔衛生の促進または本明細書に記載の任意の他のアッセイにおける変化を検出するために用いる値である。
【0072】
疾患または病態「の危険性がある」、「に罹患しやすい」または「に感染しやすい」対象は、個体が疾患または病態に罹るかまたは発症する危険性が平均的母集団よりも高いことを意味する。
【0073】
化合物の「欠損」は、化合物の量、レベルまたは濃度が対照値より有意に低いことを意味する。例えばプラスミノーゲン欠損動物にて、プラスミノーゲンの体液および組織レベルは野生型動物より有意に低い。
【0074】
本明細書において「約」または「およそ」は、与えられた値または範囲の50パーセント、好ましくは20パーセント、より好ましくは5パーセント以内を意味する。
【0075】
別の値と「実質的に異なる」値は、二の値間の統計的に有意な差異を意味しうる。当分野にて知られる任意の適切な統計的方法は、差異が有意であるか否かを評価するために用いることができる。「統計的に有意な」差異は、有意性を少なくとも90%、より好ましくは95%の信頼区間にて測定することを意味する。
【0076】
略語
本明細書において略語としては、以下のものが挙げられる:
uPA = ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化剤;
PA = プラスミノーゲン活性化剤;
MMP = マトリックスメタロプロテイナーゼ;
TIMP = メタロプロテイナーゼの組織阻害剤;
tPA = 組織型プラスミノーゲン活性化剤;
Plg = プラスミノーゲン;
ECM = 細胞外マトリックス。
【実施例】
【0077】
本発明はさらに、以下の実施例により記載する。しかし、これらの実施例は、本発明の例示のみであり、本発明の範囲および意義を何ら限定するものではない。実に、本発明の多くの改変および変形は本明細書にあたった当業者に明らかであり、その精神および範囲から逸脱しないでなしうる。
【0078】
実施例1
インビトロケラチノサイト移動は相対量のプラスミノーゲンに依存する。
創傷治癒が多くの異なる要因、細胞および工程を含むので、単純化されたインビトロモデルが含まれ、細胞移動における可能なプラスミノーゲン効果を詳述する。
【0079】
方法:
DOK(早期腫瘍性/異形成ヒト経口ケラチノサイト)細胞を細胞培養培地中にてインキュベーションした。飢餓後、DOK細胞をDMEM細胞培養培地中にてインキュベーションし、該培地はヒトプラスミノーゲン非存在下または存在下にてヒドロコルチゾン、グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、10%プラスミノーゲン欠損ウシ胎仔血清を含む。0 hにて、インビトロ創傷治癒モデルにて導入するために、標準擦り傷をケラチノサイト層上に作成した。異なる時点(0 h、12 hおよび24 h)にて、ZEISSマイクロスコープ下、ケラチノサイト移動を記録した。
【0080】
結果:
DOK(早期腫瘍性/異形成ヒト経口ケラチノサイト)細胞移動は、実験期間中培養培地中にプラスミノーゲン非存在下にてほぼ停止したようだ(Fig. 2A上方パネル)。しかし、培養培地中のプラスミノーゲンの存在下、ケラチノサイト移動はプラスミノーゲン欠損培地中のものと比較して増強されているようだ(Fig. 2A下方パネル)。プラスミノーゲン曝露(4μM)の24時間後に、そのようなインビトロ創傷の端はほぼ融合している(Fig. 2B)。さらに、細胞移動速度はプラスミノーゲン濃度依存であるようだ。この実験は明らかに、プラスミノーゲンがインビトロにおけるより速い創縫合および損傷組織の治癒速度の増強に重要であることを示す。
【0081】
実施例2
プラスミノーゲン欠損マウスにおける歯周病の自然発症
方法:
この実験は、異なる年齢の野生型およびプラスミノーゲン欠損マウスを分析することにより歯周病の発症におけるプラスミノーゲンの重要性を調査するために行う。
プラスミノーゲン欠損(plg欠損)および野生型(wt)マウスを三の年齢群に分割した(5〜8マウス/遺伝子型/群):群I: 8〜12週齢;群II: 12〜16週齢;群III: 16〜20週齢。歯周病が発症し、次いで各遺伝子型および年齢群の組織サンプルを分析した。
組織サンプルを分析するために、下および上顎を頭蓋から分離し、舌などの全軟組織から肉を剥ぎ取り、24時間4%パラホルムアルデヒド(PFA)に固定する。その後、サンプルを脱灰溶液に移し、骨組織からカルシウムを除去した。脱灰工程の4週間後、標本をパラフィン中に埋め込み、形態染色のために5μm厚さに切断した。サフラニンO染色を形態分析に用い、従ってカートリッジおよびムチンは暗赤色に染色され、骨構造および歯は青色に染色され、細胞核は暗青色に染色される。
【0082】
結果:
8〜12週齢の歯の周りの歯肉組織の形態分析は、野生型マウスは炎症または歯の表面からのコラーゲン組織の分離が全くないことを示す。一方、全plg欠損マウスは、初期歯肉炎段階の明らかなサイン−炎症、歯からのコラーゲン組織分離、歯間の壊死組織形成、および骨隔膜および下顎骨の分解を示す(Fig. 3)。野生型マウスは20週齢まで健康な口腔を有するが(Fig. 3, 4, 5)、プラスミノーゲン欠損マウスにて歯肉炎は齢とともに歯周炎に進行し:歯肉組織はひどく炎症を起こし、壊死組織は軟組織中深くに形成され、明らかな骨隔膜破壊を起こす(Fig. 4, 5)。これらのデータは明らかに、プラスミノーゲン欠損マウスが自然に重篤な歯周病を発症し、疾患重篤度が齢とともに進行することを示す。
【0083】
実施例3
プラスミノーゲン欠損マウスは野生型マウスよりも唾液中に有意に多量の細菌を有する。
方法:
16〜20週齢の野生型、プラスミノーゲンヘテロ接合およびプラスミノーゲン欠損マウスをこの研究にて用いた(第1表)。マウスの唾液サンプリングは、滅菌ピペットチップで口から唾液を集めることにより行い、即時の培養のために嫌気性培地中に移した。
【0084】
結果:
野生型およびプラスミノーゲンヘテロ接合マウスから唾液サンプル5 ulをうまく集めた。しかし、プラスミノーゲン欠損マウスにおいて、一般的な口の乾燥条件により、唾液サンプルの可能な量は1.0 ul〜5.0 ulの範囲で変化した。細菌回収により、プラスミノーゲン欠損マウスが唾液中にほぼ9.0x106/mlの細菌を有し、三群の中で最も高く、野生型マウスより有意に高いことが示された。重要なことに、プラスミノーゲンヘテロ接合マウスもまた、野生型マウスのものより有意に多量の細菌を有する(FIg. 6)。これらのデータは明らかに、プラスミノーゲンが口腔細菌に対する耐性の維持に重大な役割を果たすことを示す。さらに細菌の数は、相対量のプラスミノーゲンに非常に依存するようであり、これは新規薬物としてのプラスミノーゲンが口腔衛生を促進する治療的重要性を示唆する。
【0085】
実施例4
プラスミノーゲン欠損マウスにおけるヒトプラスミノーゲンの補充は、これらのマウスにおける自然歯周病の臨床的病態をうまく改善する。
方法:
プラスミノーゲン欠損(8〜12週齢)マウスを無作為にプラスミノーゲンおよびPBS処置群(5マウス/群)に分割した。0日目〜9日目に、マウスにヒトプラスミノーゲン100μl(10 mg/ml)またはPBSを毎日静脈注射した。10日目にマウスを犠牲にした。左側の顎について、細菌の回収のために臼歯を抜歯した。右側の顎は、脱灰、パラフィン埋め込みおよび形態染色について処理した。同じ年齢の三の未処置野生型マウスが本実験における対照として含まれた。
【0086】
結果:
抜歯サンプルからの細菌回収により、ヒトプラスミノーゲンを補充したプラスミノーゲン欠損マウスがPBS補充のものと比較して有意に少数の細菌を有することが示された(Fig. 7)。これらのデータは、プラスミノーゲンが歯の細菌のコロニー形成に対する宿主防衛に不可欠であることを示す。
予期されるように、重篤な歯周病が5のすべてのPBS処置プラスミノーゲン欠損マウスにて起こり:壊死組織が歯肉組織に存在し、周りのコラーゲン組織が歯から分離し始め、骨吸収が起こった(Fig. 8およびFig. 9左パネル)。ヒトプラスミノーゲンを補充したプラスミノーゲン欠損マウスは、完全に細胞および組織構造を回復し:歯肉組織にて炎症が全く観察されず、壊死組織が除去され、コラーゲン組織の改造が起こった(Fig. 8およびFig. 9右パネル)。3の未処置野生型マウスについて、形態分析はFig. 3と同様の正常な組織構造を示した。このデータは明らかに、プラスミノーゲンが歯周病に対して正常な組織構造および機能を維持するのに極めて重要な役割を果たすことを示す。
【0087】
実施例5
プラスミノーゲン欠損マウスにおける歯肉組織のヒトプラスミノーゲンの局所補充はこれらのマウスにおける自然歯周病の臨床的病態をうまく改善する。
10のプラスミノーゲン欠損(16〜20週齢)マウスを、無作為にプラスミノーゲンおよびPBS処置群(5マウス/群)に分割した。0日目〜9日目にて、10μlのヒトプラスミノーゲン(10 mg/ml)をプラスミノーゲン欠損マウスの下顎の両側の歯肉組織に毎日局所注射した。対照PBS処置群について、PBS 10μlをプラスミノーゲン欠損マウスの下顎の両側の歯肉組織に毎日局所注射した。10日目にマウスを犠牲にし、形態研究を行った。三の未処置野生型マウスおよび三の未処置プラスミノーゲン欠損マウスを未処置対照として用いた。
組織サンプルを分析するために、下および上顎を頭蓋から分離し、舌などの全軟組織から肉を剥ぎ取り、24時間4% PFAに固定する。その後、サンプルを脱灰溶液に移し、骨組織からカルシウムを除去した。脱灰工程の4週間後、標本をパラフィン中に埋め込み、形態染色のために5μm厚さに切断した。サフラニンO染色を形態分析に用い、従って軟骨およびムチンを暗赤色に染色し、骨構造および歯を青色に染色し、細胞核を暗青色に染色する。
【0088】
結果:
歯肉組織におけるプラスミノーゲンの局所注射は、プラスミノーゲン欠損マウスにおける歯周病の重篤度をうまく軽減した。予期されるように、重篤な歯周病は5のすべてのPBS処置プラスミノーゲン欠損マウスにて起こり:壊死組織が歯肉組織に存在し(N)、周りのコラーゲン組織が歯から分離し始め、骨吸収が起こった(Fig. 10二の上方パネル左)。ヒトプラスミノーゲンを局所的に補充したプラスミノーゲン欠損マウスは、正常な細胞および組織構造を大幅に回復し:歯肉組織にて低レベルの炎症が観察され、壊死組織が除去され、コラーゲン組織の改造が起こった(Fig. 10二の上方パネル右)。3の未処置野生型およびプラスミノーゲン欠損マウスについて、形態分析はFig. 3と同様の組織構造をそれぞれ示した。このデータは明らかに、プラスミノーゲンの局所的補充が歯周病の治療に有効かつ有力な方法を提供することを示す。
【0089】
実施例6
uPAおよびtPA二重欠損マウスにおける歯周病の自然発症
方法:
本実験は、野生型およびtPA/uPA二重欠損マウスにおける歯周組織を分析することにより歯周病の発症におけるプラスミンの重要性を調査するために行う。プラスミノーゲン活性化を欠如したマウスを作成するために我々の研究室にてtPAおよびuPA二重欠損マウスを作成した。その体内にプラスミノーゲンを含むにも関わらず、これらのマウスはプラスミン前駆体を活性プラスミンに変換することができない。それゆえ、これらのマウスからのデータは、自然歯周病に対する宿主防衛における活性プラスミンの重要性に直接的に対処することができる。
22週齢のtPA/uPA二重欠損マウスおよび野生型同腹子における歯周病の発生後に、各遺伝子型の組織サンプルを分析した。
組織サンプルを分析するために、下および上顎を頭蓋から分離し、舌などの全軟組織から肉を除去し、24時間4%パラホルムアルデヒド(PFA)中に固定する。その後、サンプルを脱灰溶液に移し、カルシウムを骨組織から除去した。脱灰工程の4週間後、標本をパラフィンに埋め込み、形態学的染色のために5μm厚さに切断した。サフラニンO染色を形態学的分析に用い、従って軟骨およびムチンを暗赤色に染色し、骨構造および歯を青色に、細胞核を暗青色に染色する。
【0090】
結果:
22週齢野生型およびtPAおよびuPA二重欠損マウスの形態学的分析は、野生型マウスでは歯からのコラーゲン組織の炎症または剥離を生じなかったが(Fig. 11、左パネル)、すべての四のtPAおよびuPA二重欠損マウスでは重篤な歯周病を示し:歯肉組織が重篤に炎症を起こし、壊死組織(N)が軟組織深くに形成され、明らかな骨隔膜破壊(B)が起こった(Fig. 11)。これらのデータは明らかに、tPAおよびuPA二重欠損マウスが重篤な歯周病を自然発症させ、活性プラスミンがまた、正常な歯周衛生の維持に重要であることを示す。
【0091】
以下の実施例にて、細菌性関節炎の研究にてなされる発見、および我々が行う研究を記載する。我々は細菌性関節炎研究にて我々が得た類似の有望なデータを得るだろうと考える。我々が得たデータは細菌性関節炎の研究からのものであるが、これらの結果は類似の研究が歯周領域にて行われる場合に有望な結果を強く明らかにすると考える。それゆえ、これらの結果は、歯周領域におけるヒトプラスミノーゲンの局所注射がまた、plg-/-マウスにおける歯周病に対する正常な宿主防衛も回復しうることを示す。この結果は、以下の理由の考察に基づく:
【0092】
1.膝関節領域および歯周領域にて炎症細胞が活性化し、感染領域に移動し、細菌が活性化炎症細胞および他の分子により殺菌され、サイトカインネットワークの発現が増強され、壊死組織が除去され、組織改造が宿主防衛工程にわたり起こるという点において、これらの領域における宿主防衛機序は多くの程度類似する。
2.S.aureusは、歯周炎および細菌性関節炎の両方の間の感染工程にて重要な役割を果たす臨床病原体である。それゆえ、S.aureus誘発細菌性関節炎の研究から得られるデータは感染の具体的な組織の場所に関わらず大概一般的な現象を示す。
3.細菌性関節炎モデルにて用いられた局所注射方法はまた、歯周炎研究にても用いられ(実施例5を参照のこと)、プラスミノーゲンの局所注射がplg-/-マウスにおける自然歯周炎を軽減する良好な結果を示した。これらの類似性はさらに、細菌性関節炎から得られた結果が歯周病の基礎でもある一般的な機序を示すことを示す。
【0093】
それゆえ、我々は、細菌性関節炎における我々の研究(実施例7および8)からのデータを用いて、本願における特許請求の範囲を支持することを望む。細菌性関節炎からのデータの重要性は、まず、実施例7の結果により、プラスミノーゲンの局所注射がplg-/-マウスにおける誘発感染モデルにて宿主防衛能力(例えば殺菌)を回復させることを示すことである。さらに、実施例8の結果により、誘発感染モデルにおけるプラスミノーゲンの局所注射がさらに、正常野生型マウスにおける正常な宿主防衛能力(例えば殺菌)を増強することが示される。さらに、これらの理由に基づき、我々はまた、我々が行う別の実施例(実施例9)も本願に含む。この実施例にて、誘発性歯周病の臨床モデルを記載し、プラスミノーゲンの適用がplg-/-マウスにおける宿主防衛を回復させ、さらに野生型マウスまたは他の種における正常な宿主防衛を増強することができると考える。
【0094】
実施例7
plg-/-マウスへのヒトプラスミノーゲン(hPlg)の局所補充が膝関節における細菌感染に対する正常な宿主防衛を回復させた。
方法
滅菌PBS 10μl中S.aureus Phillipsの1x106 CFUのマウスの両膝関節への局所接種により細菌性関節炎を誘発させた。細菌接種の15分後、6のplg-/-マウスの膝関節の一方に膝関節組織の周りの局所注射によりヒトプラスミノーゲン40μl(PBS中10μg/μl, Biopool, Umea,Sweden)を補充した。その後、ヒトプラスミノーゲンを7日間24時間間隔にて補充した。局所注射についての対照として、6のplg-/-マウスの膝関節組織の周りに滅菌PBSのみ40μlを細菌接種の15分後に局所注射した後、7日間24時間間隔を実験期間とした。野生型マウスについての対照として、2のplg+/+マウスに滅菌PBSのみ40μlを細菌接種の15分後に与えた後、7日間24時間ごととした。全身注射のplg-/-マウスについての対照として、2のplg-/-マウスに細菌接種の1時間前にヒトプラスミノーゲン100μl(10μg/μl)を静脈注射した後、7日間24時間ごととした。
マウスを細菌接種の7日後に犠牲にし、膝関節を取り、滅菌PBS 1 mlにてホモジネートした。連続希釈後、ホモジネート溶液をLB寒天プレート上に広げ、37℃にて終夜インキュベーションした。次いで、生菌コロニーをカウントし、各ホモジネート中のS.aureus細菌数を評価した。
【0095】
結果
plg-/-マウスへのプラスミノーゲンの局所注射の7日はS.aureusでうまく接種し、これらのマウスにおけるPBS局所処置と比較して100倍まで細菌量を有意に軽減した。ヒトプラスミノーゲンを全身注射したplg-/-マウスまたはPBSを局所注射したplg+/+マウスの両方はまた、その膝関節にてS.aureusをうまく殺傷した。これらのデータ(第1表)は明らかに、ヒトプラスミノーゲンの局所注射がplg-/-マウスにおける正常な殺菌能力を回復させ得ることを示す。
【0096】
第1表.S.aureus Phillipsの1x106 CFUの接種後3日における異なる局所および全身処置をしたplg-/-およびplg+/+マウスにおける細菌数
【表1】
*, P<0.05, PBS局所注射plg-/-マウスの群と比較
【0097】
実施例8
plg+/+マウスのヒトプラスミノーゲン局所補充は、膝関節における細菌感染に対する宿主防衛を増強する。
方法
細菌性関節炎を10μl滅菌PBS中1×106CFUのS.aureus Phillipsのマウス膝関節への局所接種により誘発させた。細菌接種の15分後に、7のplg+/+マウスの一方の膝関節にヒトプラスミノーゲン50μl(hPlg, PBS中10μg/μl, Biopool, Umea, Sweden)を膝の皮膚の下および膝関節組織の周りへの局所注射により補充した。その後、ヒトプラスミノーゲンを0日目〜2日目に24時間間隔にて同じパターンで補充した。局所注射の対照として、7のplg+/+マウスの膝の皮膚の下および膝関節組織の周りに細菌接種の15分後に滅菌PBSのみ50 ulを局所注射した後、同じ局所注射を実験期間の0日目〜2日目に24時間間隔にて行った。
細菌接種の3日後にマウスを犠牲にし、膝関節を取り、滅菌PBS 1 ml中に均質化した。連続希釈後、ホモジネート溶液をLB寒天プレート上に広げ、終夜37℃にてインキュベートした。次いで、生菌コロニーをカウントし、S.aureus菌の数を各ホモジネートにて評価した。
【0098】
結果
plg+/+マウスの3日間のヒトプラスミノーゲンの膝関節における局所注射により、生存S.aureus数はPBSで処置された対照plg+/+群の5倍うまく有意に減少した。これらのデータは明らかに、ヒトプラスミノーゲンが野生型動物におけるものでさえも細菌感染に対する宿主防衛を促進する強力な炎症性因子であることを示す。これらのデータはさらに、プラスミノーゲンが臨床用途のための新規抗感染候補薬であることを示唆する(第2表)。
【0099】
第2表.1×106CFUのS.aureus Phillipsの接種後3日目におけるヒトプラスミノーゲンまたはPBSを局所注射された野生型(plg+/+)マウスにおける細菌数。Plgを局所注射された野生型マウスにて、細菌数はPBSを局所注射された野生型マウスよりも5倍も有意に減少することに留意。
【表2】
*, P<0.05, PBS局所注射Plg+/+マウスの群と比較
【0100】
実施例9
プラスミノーゲンの補充により実験動物におけるS.aureus誘発歯周病に対する宿主防衛が回復/増強される。
方法
本実験に適用される実験モデルは、先に大部分記載されているように(31)、我々の研究設定に必要な修正を加える。S.aureusが歯周病における主要病原菌の一つであるため、我々は本モデルにて感染性細菌としてS.aureusを最初に使用する。しかし、プラスミノーゲンが感染に対する宿主防衛を実験条件に依存して促進するのに一般的な役割を担うと考えられるため、別の感染性細菌としてP.gingivalisを使用し、S.aureusと同様の実験を行うだろう。
36の8週齢マウスを無作為に三つの群に分ける:結紮感染、結紮偽感染および対照。マウスを12時間明/12時間暗周期で従来の維持にて維持し、随意に食事および水を与えた。
【0101】
経口感染についてのS.aureus付着結紮
7 mm片の滅菌結紮をLB培養液に浸すことにより歯周感染についてのS.aureus付着結紮を調製し、対数定常期初期〜後期まで37℃にて培養した。偽群について、上記手順によるが微生物を用いないで結紮を行う。結紮における細菌の列挙について、LB培養液1 mlに懸濁させ、30秒間撹拌した。その後、懸濁物を連続希釈し、LB寒天プレート上に広げ、37℃にて終夜インキュベーションする。次いで、生菌コロニーをカウントし、S.aureus数を評価した。
【0102】
歯周感染
実験群および偽感染群における歯周組織の感染を麻酔動物の上顎の臼歯の周りに結紮を置き縛ることにより行う。S.aureus付着処置結紮または偽処置結紮を滅菌器具の補助により左上顎の上顎第一大臼歯(M1)上に縛る。結節を堅く締めた後、結紮を隙間に押す。対照動物は結紮せず微生物にも感染させない。
【0103】
S.aureusの検出および同定
犠牲時に、結紮臼歯部における生物膜サンプルを取るか、または注意深く滅菌して臼歯を引き抜くことにより細菌の存在を調べる。サンプルをLB培養液にすぐに移し、激しく撹拌し、連続希釈し、LB寒天プレート上に置き、37℃にて終夜インキュベーションした。その後、LB寒天プレート上の全CFUをカウントし、細菌数を測定する。
【0104】
プラスミノーゲン処置
マウスモデルの構築の確認後、全身静脈注射または左上顎M1における歯肉縁への局所注射によるヒトplg(10 ul/ul)の毎日注射を開始する。注射の開始点は実験開始時点または実験の感染段階中であることができる。実験の終了時に、最終細菌学的サンプリングおよび分析のために各群の動物を犠牲にする。上顎を頭蓋から分離し、舌などの全軟組織から肉を剥ぎ取り、4%パラホルムアルデヒド中にて24時間固定した。その後、サンプルを脱灰溶液に移し、骨組織からカルシウムを除去した。脱灰工程の4週間後、標本をパラフィン中に埋め込み、形態学的染色のために5μm厚さに切断した。サフラニンO染色を形態学的分析のために用い、従って軟骨およびムチンを暗赤色に、骨構造および歯を青色に、細胞核を暗青色に染色する。
【0105】
結果
全身および局所注射が自然歯周病を有するplg-/-マウスにて歯肉炎、正常な宿主防衛(例えば殺菌)および適切な歯周再付着を再構成したplg-/-マウスのプラスミノーゲン処置からの先の経験に基づき、上記のように誘発歯周病モデルにおけるplg-/-マウスのプラスミノーゲン処置に同様の応答が強く予測される。さらに、プラスミノーゲンの局所注射がplg+/+マウスにおける感染性細菌に対する正常な宿主防衛を増強する、別の感染モデル、細菌性関節炎モデルにおける我々の先の研究のデータに基づき、plg+/+マウスにおける上記誘発性歯周病モデル中のプラスミノーゲンの局所処置もまた、plg+/+マウスにおける正常な宿主防衛を増強することが強く予測される。従って、これらすべてのデータはプラスミノーゲンが歯周病を阻止し治療し、歯周創傷の治癒を改善し、口腔衛生を促進する新規候補薬物であることを強く示唆するものである。
【0106】
参考文献リスト
【表3−1】
【表3−2】
【表3−3】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする対象における感染性歯周病の予防、阻止および/または治療のための有効量の化合物を含む医薬組成物の製造のための化合物の使用であって、化合物がプラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、使用。
【請求項2】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択されるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する化合物がストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される、請求項1記載の使用。
【請求項3】
対象がヒトであり、プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミノーゲンである、請求項1記載の使用。
【請求項4】
対象がヒトであり、プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミンである、請求項1記載の使用。
【請求項5】
対象が非ヒト哺乳類である、請求項1記載の使用。
【請求項6】
組成物がさらに医薬的に許容される担体を含む、請求項1記載の使用。
【請求項7】
組成物が水溶液、うがい溶液、ゲル、ローション、香油、粉末、ペースト、歯磨き粉、包帯または創傷包帯からなる群から選択される、請求項1記載の使用。
【請求項8】
組成物がスプレーにより投与される、請求項1記載の使用。
【請求項9】
投与が局所、経口、局部および全身投与から選択される、請求項1記載の使用。
【請求項10】
投与が局所投与である、請求項9記載の使用。
【請求項11】
組成物が適用領域のセンチメートル四方あたりプラスミノーゲン約1μg〜約500 mgを含む、請求項10記載の使用。
【請求項12】
歯周病が細菌感染であるか、または細菌感染により引き起こされる、請求項1記載の使用。
【請求項13】
さらに炎症細胞を活性化し、ケラチノサイト移動を増強し、細菌増殖を軽減し、壊死組織を除去し、組織改造を改善しおよび/またはサイトカイン発現を増強する、請求項1記載の使用。
【請求項14】
投与が少なくとも一回繰り返される、請求項1記載の使用。
【請求項15】
投与が毎日繰り返される、請求項13記載の使用。
【請求項16】
歯周病が歯周炎、歯肉炎、壊死性歯肉炎、インプラント周囲炎(periimplantitis)およびインプラント周囲(periimplant)粘膜炎から選択される、請求項1〜15のいずれか記載の使用。
【請求項17】
治療を必要とする対象における感染性歯周創傷の治癒を促進するための有効量の化合物を含む医薬組成物の製造のための化合物の使用であって、化合物がプラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、使用。
【請求項18】
さらに線維素沈着を軽減し、ケラチノサイト移動を促進し、サイトカイン発現を増強し、壊死組織を除去し、炎症細胞を活性化しおよび/または組織改造を改善する、請求項17記載の使用。
【請求項19】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択されるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する化合物がストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される、請求項17記載の使用。
【請求項20】
対象がヒト対象であり、プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミノーゲンである、請求項17記載の使用。
【請求項21】
対象がヒト対象であり、プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミンである、請求項17記載の使用。
【請求項22】
対象が非ヒト哺乳類である、請求項17記載の使用。
【請求項23】
投与が局所であり、組成物が創傷領域のセンチメートル四方あたりプラスミノーゲン約1μg〜約500 mgを含む、請求項17記載の使用。
【請求項24】
投与が少なくとも一回繰り返される、請求項17記載の使用。
【請求項25】
投与が少なくとも毎日繰り返される、請求項24記載の使用。
【請求項26】
感染性歯周創傷が傷害により引き起こされる創傷または歯根膜手術もしくは形成外科により引き起こされる創傷である、請求項17記載の使用。
【請求項27】
プラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、有効量の化合物を含む、感染性歯周病の治療、予防および/または阻止のための医薬組成物。
【請求項28】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択されるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する化合物がストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
プラスミノーゲン活性化経路がヒトプラスミノーゲンである、請求項27記載の組成物。
【請求項30】
プラスミノーゲン活性化経路がヒトプラスミンである、請求項27記載の組成物。
【請求項31】
化合物がプラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、有効量の請求項1〜16記載の化合物を含む医薬組成物を治療を必要とする対象に投与することを含む、感染性歯周病を予防、阻止および/または治療する方法。
【請求項32】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択されるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する化合物がストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミノーゲンである、請求項31記載の方法。
【請求項34】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミンである、請求項31記載の方法。
【請求項35】
プラスミノーゲン活性化経路の有効量の成分またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する有効量の化合物を含む、感染性歯周創傷の治癒を促進するための医薬組成物。
【請求項36】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択されるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する化合物がストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される、請求項35記載の医薬組成物。
【請求項37】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミノーゲンである、請求項35記載の医薬組成物。
【請求項38】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミンである、請求項35記載の医薬組成物。
【請求項39】
プラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、有効量の化合物を含む医薬組成物を治療を必要とする対象に投与することを含む、感染性歯周創傷の治癒を促進する方法。
【請求項40】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択されるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する化合物がストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミノーゲンである、請求項39記載の方法。
【請求項42】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミンである、請求項39記載の方法。
【請求項1】
治療を必要とする対象における感染性歯周病の予防、阻止および/または治療のための有効量の化合物を含む医薬組成物の製造のための化合物の使用であって、化合物がプラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、使用。
【請求項2】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択されるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する化合物がストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される、請求項1記載の使用。
【請求項3】
対象がヒトであり、プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミノーゲンである、請求項1記載の使用。
【請求項4】
対象がヒトであり、プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミンである、請求項1記載の使用。
【請求項5】
対象が非ヒト哺乳類である、請求項1記載の使用。
【請求項6】
組成物がさらに医薬的に許容される担体を含む、請求項1記載の使用。
【請求項7】
組成物が水溶液、うがい溶液、ゲル、ローション、香油、粉末、ペースト、歯磨き粉、包帯または創傷包帯からなる群から選択される、請求項1記載の使用。
【請求項8】
組成物がスプレーにより投与される、請求項1記載の使用。
【請求項9】
投与が局所、経口、局部および全身投与から選択される、請求項1記載の使用。
【請求項10】
投与が局所投与である、請求項9記載の使用。
【請求項11】
組成物が適用領域のセンチメートル四方あたりプラスミノーゲン約1μg〜約500 mgを含む、請求項10記載の使用。
【請求項12】
歯周病が細菌感染であるか、または細菌感染により引き起こされる、請求項1記載の使用。
【請求項13】
さらに炎症細胞を活性化し、ケラチノサイト移動を増強し、細菌増殖を軽減し、壊死組織を除去し、組織改造を改善しおよび/またはサイトカイン発現を増強する、請求項1記載の使用。
【請求項14】
投与が少なくとも一回繰り返される、請求項1記載の使用。
【請求項15】
投与が毎日繰り返される、請求項13記載の使用。
【請求項16】
歯周病が歯周炎、歯肉炎、壊死性歯肉炎、インプラント周囲炎(periimplantitis)およびインプラント周囲(periimplant)粘膜炎から選択される、請求項1〜15のいずれか記載の使用。
【請求項17】
治療を必要とする対象における感染性歯周創傷の治癒を促進するための有効量の化合物を含む医薬組成物の製造のための化合物の使用であって、化合物がプラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、使用。
【請求項18】
さらに線維素沈着を軽減し、ケラチノサイト移動を促進し、サイトカイン発現を増強し、壊死組織を除去し、炎症細胞を活性化しおよび/または組織改造を改善する、請求項17記載の使用。
【請求項19】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択されるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する化合物がストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される、請求項17記載の使用。
【請求項20】
対象がヒト対象であり、プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミノーゲンである、請求項17記載の使用。
【請求項21】
対象がヒト対象であり、プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミンである、請求項17記載の使用。
【請求項22】
対象が非ヒト哺乳類である、請求項17記載の使用。
【請求項23】
投与が局所であり、組成物が創傷領域のセンチメートル四方あたりプラスミノーゲン約1μg〜約500 mgを含む、請求項17記載の使用。
【請求項24】
投与が少なくとも一回繰り返される、請求項17記載の使用。
【請求項25】
投与が少なくとも毎日繰り返される、請求項24記載の使用。
【請求項26】
感染性歯周創傷が傷害により引き起こされる創傷または歯根膜手術もしくは形成外科により引き起こされる創傷である、請求項17記載の使用。
【請求項27】
プラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、有効量の化合物を含む、感染性歯周病の治療、予防および/または阻止のための医薬組成物。
【請求項28】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択されるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する化合物がストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
プラスミノーゲン活性化経路がヒトプラスミノーゲンである、請求項27記載の組成物。
【請求項30】
プラスミノーゲン活性化経路がヒトプラスミンである、請求項27記載の組成物。
【請求項31】
化合物がプラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、有効量の請求項1〜16記載の化合物を含む医薬組成物を治療を必要とする対象に投与することを含む、感染性歯周病を予防、阻止および/または治療する方法。
【請求項32】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択されるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する化合物がストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミノーゲンである、請求項31記載の方法。
【請求項34】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミンである、請求項31記載の方法。
【請求項35】
プラスミノーゲン活性化経路の有効量の成分またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する有効量の化合物を含む、感染性歯周創傷の治癒を促進するための医薬組成物。
【請求項36】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択されるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する化合物がストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される、請求項35記載の医薬組成物。
【請求項37】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミノーゲンである、請求項35記載の医薬組成物。
【請求項38】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミンである、請求項35記載の医薬組成物。
【請求項39】
プラスミノーゲン活性化経路の成分であるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する、有効量の化合物を含む医薬組成物を治療を必要とする対象に投与することを含む、感染性歯周創傷の治癒を促進する方法。
【請求項40】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化剤、tPAおよびuPAから選択されるか、またはプラスミノーゲンを直接的にもしくはプラスミノーゲン活性化経路により活性化する能力を有する化合物がストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼならびにプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変形から選択される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミノーゲンである、請求項39記載の方法。
【請求項42】
プラスミノーゲン活性化経路の成分がヒトプラスミンである、請求項39記載の方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2010−502601(P2010−502601A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526573(P2009−526573)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050586
【国際公開番号】WO2008/027000
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(509060110)オムニオ・ヒーラー・アクチボラゲット (2)
【氏名又は名称原語表記】OMNIO HEALER AB
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050586
【国際公開番号】WO2008/027000
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(509060110)オムニオ・ヒーラー・アクチボラゲット (2)
【氏名又は名称原語表記】OMNIO HEALER AB
【Fターム(参考)】
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