説明

歯周病予防剤

【課題】歯周病の予防に有用な薬剤、及びそれを含む口腔用組成物の提供。
【解決手段】ムチン型糖鎖結合部位及びインテグリン認識部位を有する化合物を有効成分とする歯周病予防剤であって、ムチン型糖鎖結合部位はムチン型糖鎖結合性レクチンに由来し、インテグリン認識部位はインテグリン認識配列を有するポリペプチドに由来し、前記化合物は、ムチン型糖鎖結合性レクチンと、インテグリン認識配列を有するポリペプチドとが結合してなる化合物である、歯周病予防剤。並びに前記歯周病予防剤を含む口腔用組成物又は歯磨き器具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯周病の予防に有用な薬剤、及びそれを含む口腔用組成物及び歯磨き器具に主に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病とは、歯の周りに形成されるバイオフィルムであるデンタルプラーク(歯垢)に棲息する歯周病菌が惹起する慢性炎症病変である(非特許文献1及び2参照)。歯周病菌ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis、以下「P. gingivalis」と称する)は最も病原性の強い病原菌と考えられており、その線毛は本菌の様々な病原性の発揮に関与していると考えられている。大阪大学歯学研究科 天野敦雄教授は、線毛サブユニットFimAをコードする遺伝子(fimA)の塩基配列の相違性に基づきfimAを6つの遺伝子多型(I, Ib, II, III, IV, V型)に分類し、II型fimA遺伝子を持つP. gingivalisと歯周炎との臨床的相関を成人歯周病患者(非特許文献3参照)、知的障害者(非特許文献4参照)やダウン症(非特許文献5参照)および2型糖尿病を有する歯周病患者において明らかにしてきた(非特許文献4参照)。すなわち、歯周病患者においては優位に2型fimA遺伝子を持つP. gingivalisを保菌し、歯周病を発症し歯周炎が進行することを明らかにした。
【0003】
また、天野教授はII型fimA遺伝子を持つP. gingivalisのII型FimA線毛たん白質が上皮細胞のα5β1インテグリンを介して接着し上皮細胞に進入し細胞障害を引き起こすことを明らかにした(非特許文献6参照)。
また、II型fimA遺伝子の線毛を持つP. gingivalisとα5β1インテグリンとの結合親和性はII型fimA遺伝子以外の線毛を持つP. gingivalis に比べ極めて高いことも明らかとなった。
【0004】
現在、一度口腔内に感染したP. gingivalisの除去は困難と考えられており、特にII型fimA遺伝子を持つP. gingivalisに感染した場合、将来歯周病を発症する可能性が高いと考えられている。そして、保菌者の率は極めて高いが、これまで本菌に対する薬剤を口腔内に長時間滞留させることが難しかったため、歯周病の発症や症状の進展を抑制するためには相当のケアとプラークコントロールが必要とされていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Socransky SS, and Haffajee AD, (1994): Evidence of bacterial etiology: a historical perspective. Periodontol 2000 5, 7-25
【非特許文献2】Socransky SS, and Haffajee AD, (2005): Periodontal microbial ecology. Periodontol 2000 38, 135-87
【非特許文献3】Tamura K, Nakano K, Nomura R, Miyake S, Nakagawa I, Amano A and Ooshima T. (2005): Distribution of Porphyromonas gingivalis fimA genotypes in Japanese children and adolescents. Journal of Periodontology 76, 674-679
【非特許文献4】Amamo A, Nakagawa I, Okahashi N and Hamada N (2004): Variations of Porphyromonas gingivalis fimbriae in relation to microbial pathogenesis. Journal of periodont Reserch 39, 136-142
【非特許文献5】Ojima M, Takeda M, Yoshioka H, Nomura M, Tanaka N, Kato T, Shizukushi, S and Amano, A (2005): Relationship of periodontal bacterium genotypic variation with periodontitis in type 2 diabetic patients. Diabetes care 28, 433-434
【非特許文献6】稲葉裕明, 竹田宗弘, 天野敦雄、日本歯周病学会会誌, 47 : 164, 2005「P.gingivalis線毛遺伝子(fimA)型の上皮細胞侵入性,傷害性への影響」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、歯周病菌とインテグリンとの結合を阻害する成分の歯周病の病巣獲得被膜に対する滞留性を高め、歯周病の予防に有用な薬剤を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、口腔内の獲得被膜がムチン型糖タンパク質を主成分にすることに着眼し、ムチン型糖鎖に結合するレクチンを、歯周病菌とインテグリンとの結合を阻害する成分と結合させることにより、その成分の歯周病の病巣獲得被膜への滞留性が高まり、歯周病の予防に効果的な薬剤が作製され得ることを見出し、更に検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は次の事項に関する。
【0009】
項1:ムチン型糖鎖結合部位及びインテグリン認識部位を有する化合物を有効成分とする歯周病予防剤であって、
ムチン型糖鎖結合部位はムチン型糖鎖結合性レクチンに由来し、インテグリン認識部位はインテグリン認識配列を有するポリペプチドに由来し、
前記化合物が、ムチン型糖鎖結合性レクチンと、インテグリン認識配列を有するポリペプチドとが結合してなる化合物である、
歯周病予防剤。
【0010】
特に、ムチン型糖鎖結合部位及びインテグリン認識部位を有する化合物を有効成分とする歯周病予防剤であって、
ムチン型糖鎖結合部位はムチン型糖鎖結合性レクチンに由来し、インテグリン認識部位はインテグリン認識配列を有するポリペプチドに由来し、
前記化合物は、ムチン型糖鎖結合性レクチンのアミノ基と、インテグリン認識配列を有するポリペプチドのカルボキシル基がアミド結合してなる化合物である、
歯周病予防剤。
【0011】
項2:ムチン型糖鎖結合性レクチンが、ダイズレクチンである、項1に記載の歯周病予防剤。
【0012】
また、インテグリン認識部位がα5β1インテグリン認識部位である項1に記載の歯周病予防剤。
また、インテグリン認識配列が、RGD配列である項1に記載の歯周病予防剤。
【0013】
項3:項1又は2に記載の歯周病予防剤を含む口腔用組成物。
【0014】
項4:項1又は2に記載の歯周病予防剤を含む歯磨き器具。
【0015】
以下、本発明について、より詳細に説明を行う。
【0016】
尚、本明細書において、「歯周病予防」とは、歯周病の発症を予防する効果と、既に生じている歯周病の症状又は病変が更に重篤になることを防ぐ予防の両方の意味を持つ。
【0017】
1.歯周病予防剤
本発明における歯周病予防剤は、ムチン型糖鎖結合部位及びインテグリン認識部位を有する化合物を有効成分とする。
【0018】
本発明の歯周病予防剤の有効成分となる化合物において、「ムチン型糖鎖結合部位」とはムチン型糖鎖結合性レクチンに由来する部位である。ムチン型糖鎖結合部位は、ムチン型糖タンパク質を主成分とする口腔内の獲得皮膜との相互作用により、インテグリン認識配列を有するポリペプチドの獲得被膜への滞留性を高める作用を有する。更に、ムチン型糖鎖結合部位は、II型FimA線毛タンパク質を持つP. gingivalisと歯肉細胞との結合阻害作用を有し、インテグリン認識部位によるP. gingivalisと歯肉細胞との結合阻害作用を増強する作用を有する。
【0019】
ムチンは、細胞内で生産される糖タンパク質の1種で、口腔、気管、胃腸、消化管などの内腔を覆う主要な糖タンパク質である。
【0020】
糖タンパク質に含まれる糖鎖は、タンパク質の結合との形でO型糖鎖、N型糖鎖の2種類に分類される。このうち、ムチンに存在する糖鎖のほとんどは、タンパク質またはペプチドのセリン又はスレオニン残基の水酸基に糖鎖が-O−グリコシド結合で結びついたO型糖鎖であり、O型糖鎖はムチン型糖鎖とも呼ばれる。一方、N型糖鎖は、タンパク質またはペプチドのアスパラギン残基に糖鎖が結合した構造の糖鎖である。
【0021】
本発明における「ムチン型糖鎖結合性レクチン」とは、ムチン型糖鎖、即ち、O型糖鎖に対する結合性を有するレクチンである。
【0022】
ムチン型糖鎖は、N-アセチルガラクトサミンのC3の水酸基にβ1-3結合でガラクトースが結合するとコア1構造に、またN-アセチルグルコサミンが結合するとコア3構造となる。また、N-アセチルガラクトサミンにα1-3結合でN-アセチルガラクトサミンが結合するとコア5構造に、β1-6結合でN-アセチルグルコサミンが結合すると、コア6構造となる。これらの組み合わせで様々な母核構造がつくられる。基幹領域は二糖:Gal (β1-3) GlcNAc(タイプ1)とGal (β1-4) GlcNAc(タイプ2)からなる。タイプ1と2の糖鎖は、さらにガラクトースにβ1-6とβ1-3結合でN-アセチルグルコサミンが結合することにより枝分かれする。基幹領域の糖鎖は、末梢の糖すなわち通常α結合したガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、フコース、あるいはシアル酸で終結した糖鎖構造である。
【0023】
口腔内でムチン型糖鎖を持つ糖蛋白質としては、例えば、Mucin-1、Mucin5B、Mucin-7が挙げられる。
【0024】
ムチン型糖鎖結合性レクチンは、ムチン型糖鎖を特異的に認識し、結合するレクチンである。
【0025】
レクチンには、動物、植物又は菌類等に由来する種々のレクチンがある。本発明に用いるムチン型糖鎖結合性レクチンは、ムチン型糖鎖を特異的に認識する限り、その由来及び構造は特に限定されないが、本発明におけるムチン型結合性レクチンとしては、特に、ダイズレクチンが、Nアセチルガラクトサミンα1→3ガラクトサミン(GalNac alpha1-3Gal)の構造を有するムチン型糖鎖を強く、また広い範囲で認識する点で、好適に用いられる。
【0026】
また、本発明において、「インテグリン認識部位」はインテグリン認識配列を有するポリペプチドのインテグリン認識配列に由来する部位である。インテグリン認識部位は、インテグリン認識配列のみからなる部位でもよく、インテグリンを認識する範囲でインテグリン認識配列以外の構造を備えていてもよい。インテグリン認識部位は、線毛構成サブユニットII型FimA線毛タンパク質とインテグリンとの結合を阻害し、プラークコントロールに効果的な作用を奏する。またTGFβの産生を抑制し、TNFレセプターの活性化を抑制させ、歯肉細胞の炎症発生を抑制する作用を有する。
【0027】
インテグリン認識配列を有するポリペプチドとは、インテグリンを認識する特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0028】
インテグリン認識配列としては、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(配列表の配列番号1)で表されるアミノ酸配列(以下、「RGD配列」)や、アルギニン−ヒスチジン−セリン−アルギニン−アスパラギン(配列表の配列番号2)で表されるアミノ酸配列(以下、「RHSRN配列」)が挙げられる。換言すると、インテグリン認識配列を有するポリペプドとしては、RGD配列を有するポリペプチドやRHSRN配列を有するポリペプチドが挙げられる。
【0029】
またインテグリンとしては、α5β1インテグリンが挙げられる。
【0030】
ポリペプチドには、ペプチド及びタンパク質が含まれる。
【0031】
ペプチドは、インテグリン認識配列からなるペプチドであってもよく、インテグリン認識配列以外に複数のアミノ酸残基が結合したペプチドであってもよい。またインテグリン認識配列以外のアミノ酸残基の側鎖が適当な官能基で保護又は置換されたペプチドであってもよい。
【0032】
また、タンパク質は、天然由来又は合成タンパク質であってよく、また糖鎖や脂肪酸が結合した複合タンパク質であってもよい。例えば、RGD配列を有するタンパク質としては、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン等が挙げられる。
【0033】
本発明の歯周病予防剤の有効成分となる化合物は、上記ムチン型糖鎖結合部位及びインテグリン認識部位を有し、上記ムチン型結合性レクチンと上記インテグリン認識配列を有するポリペプチドとが結合してなる化合物である。
【0034】
ムチン型糖鎖結合性レクチンと、インテグリン認識配列を有するポリペプチドとの結合の種類は特に限定されないが、例えば、ムチン型糖鎖結合部位を有するレクチンのアミノ基と、インテグリン認識部位を有するポリペプチドのカルボキシル基とのアミド結合が挙げられる。
【0035】
尚、ムチン型糖鎖結合性レクチンとインテグリン認識配列を有するポリペプチドとの結合部位は、ムチン型糖鎖結合性部位とインテグリン認識部位が損なわれない部位である。
【0036】
ムチン型糖鎖結合性レクチンと、インテグリン認識配列を有するポリペプチドとの結合割合は、本発明の効果を奏する範囲内で適宜設定し得るが、モル比で、ムチン型糖鎖結合性レクチン:インテグリン認識配列を有するポリペプチド=1:0.3〜10、特に3:1〜10程度である。
【0037】
本発明の歯周病予防剤は、上記ムチン型糖鎖結合部位及びインテグリン認識部位の両者を有する化合物を有効成分とする。本発明の歯周病予防剤は、上記化合物そのものからなるものであってもよいし、上記化合物を有効成分として薬学上又は衛生上許容される担体を含むものであってもよい。
【0038】
かかる担体の種類及び配合量は、本発明の効果を損なわないことを限度として、歯周病予防剤の剤型等に応じて、適宜選択調整することができる。
【0039】
また、歯周病予防剤の形態についても特に制限されず、液状、乳液状、クリーム状、粉末状、顆粒等に任意に調製することができる。
【0040】
また、本発明の歯周病予防剤は、下記口腔用組成物や歯磨器具、或いは、噛み玩具等の他の口腔内用製品の構成要素の一部として利用できる。
【0041】
本発明の歯周病予防剤の有効成分となる化合物は、ムチン型糖鎖結合部位とインテグリン認識部位の両者を備えていることから、インテグリン認識部位の口腔細胞への滞留性に優れ、II型FimA線毛タンパク質とインテグリンとの結合を長期的に阻害させることができる。更に、P. gingivalisと歯肉細胞との結合阻害作用が高く、TNFレセプターの活性化を抑制させることができ、歯周病の発症や炎症の進行を効果的に抑制する作用を有する。
【0042】
そして、本発明の歯周病予防剤は、上記化合物を有効成分とすることから、II型FimA線毛タンパク質とインテグリンとの結合を長期的に阻害することができ、更に、P. gingivalisと歯肉細胞との結合阻害作用が高く、歯周病の発症や炎症の進行を効果的に抑制する作用を有する。
【0043】
2.口腔用組成物
本発明の口腔用組成物は、上記歯周病予防剤を含有してなり、歯周病の発症予防や歯周病の症状の悪化の予防のために用いられる組成物である。
【0044】
歯周病予防剤は、そのまま組成物に含有されていてもよく、或いは薬学的に適当な担体に結合した形で含有されていてもよい。
【0045】
担体としては、例えば、研磨剤や、ナイロン繊維等が挙げられる。研磨剤としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。担体の形状も特に限定されないが、例えば、微粒子状、繊維状、球状、紐状等が挙げられる。
【0046】
歯周病予防剤と担体との結合の種類も特に限定されないが、例えば、研磨剤の場合は多孔体を形成するので蛋白質やペプチドを充填する方法が挙げられる。ナイロン繊維の場合は、静電的、疎水的結合により結合させる方法が挙げられる。
【0047】
歯周病予防剤と担体との結合割合も、組成物の形態や、ペプチド又はタンパク質の種類等によって適宜設定でき、特に限定されないが、例えば、担体1mlに対し、歯周病予防剤が0.03〜10mg程度、特に0.1〜0.5mg程度で結合したものを用いることができる。
【0048】
担体に結合させることで、歯周病予防剤を適度な時間滞留させることが容易になり、更に歯周病予防剤を要しなくなった場合や過度の滞留を防ぐ必要がある場合、その除去も容易に行えるという利点がある。
【0049】
口腔用組成物としては、口腔用洗浄液、練り歯磨き粉等が挙げられる。 また、口腔用組成物の形態も特に限定されず、例えば、液状形態とすることができる。
【0050】
口腔用組成物における歯周病予防剤の割合は、本発明の効果が奏される限り、特に限定されないが、口腔用組成物全量に対し、歯周病予防剤が 1〜10%程度、好ましくは 1〜5%程度である。
【0051】
また、口腔用組成物には、歯周病予防剤及び担体以外の他の薬効成分を配合することもできる。他の薬効成分としては、例えば、ミノサイクリン塩酸塩、クロルヘキシジン、フェノール化合物、ポピドンヨード等が挙げられる。
【0052】
本発明の口腔用組成物は、上記本発明の歯周病予防剤を含んでいることから、歯周病原菌のII型FimA線毛タンパク質とインテグリンとの結合を長期的に阻害する作用を有し、歯周病の発症や進行の予防乃至抑制に優れる。またこれにより、長期的なプラークコントロールや歯周病菌による口臭抑制等にも優れるという効果を奏する。
【0053】
3.歯磨き器具
本発明において歯磨き器具とは、歯を磨くための器具であって、例えば、歯ブラシ、デンタルフロス、歯間ブラシ、歯間刺激子、ラバーチップ、口腔洗浄機等が挙げられる。
【0054】
本発明における歯磨き器具は、上記歯周病予防剤を含有し、歯周病の発症予防や歯周病の症状の悪化の予防のためなどに用いられる。
【0055】
本発明の歯磨き器具における歯周病予防剤の含有方法は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、歯ブラシの原料に歯周病予防剤を練り込み、歯周病予防剤が口腔内で徐放されるように設計した歯ブラシが挙げられる。また、例えば、公知の材質により成形された歯磨き器具の表面の全部又は一部に歯周病予防剤を被覆又は付着させた歯磨き器具が挙げられる。具体的には、歯ブラシのブラシ部分に歯周病予防剤を被覆させた歯磨き器具等が挙げられる。
【0056】
また歯周病予防剤は、適当な担体に結合させた形で、歯磨き器具に含有させてもよい。担体としては、上記口腔用組成物で説明したものと同様のものが挙げられる。
【0057】
また、歯磨き器具における本発明の歯周病予防剤の含有量も、本発明の効果を奏する範囲内で適宜設定し得る。
【0058】
本発明の歯磨き器具は、上記本発明の歯周病予防剤を含んでいることから、歯周病原菌のII型FimA線毛タンパク質とインテグリンとの結合を長期的に阻害する作用を有し、歯周病の発症や進行の予防乃至抑制する作用に優れる。またこれにより、長期的なプラークコントロール、歯周病菌による口臭抑制等にも優れるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0059】
本発明の歯周病予防剤は、ムチン型糖鎖結合部位とインテグリン認識部位の両者を備える化合物を有効成分とすることから、インテグリンを認識する薬剤の獲得被膜への滞留性が高く、II型FimA繊毛タンパク質とインテグリンとの結合を長期的に阻害することができるという作用を有する。更に、P. gingivalisと歯肉細胞との結合阻害作用が高く、またサイトカインの産生を抑制し、TNFレセプターの活性化を阻害する作用を有し、歯周病の発症や炎症の進行を効果的に抑制するという優れた作用を有する。
【0060】
また、本発明の口腔要組成物及び歯磨き器具は、上記本発明の歯周病予防剤を含んでいることから、歯周病原菌のII型FimA繊毛タンパク質とインテグリンとの結合を長期的に阻害する作用を有し、歯周病の発症や進行を効果的に予防乃至抑制するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】インテグリンα5β1が発現している細胞表面へのFimAの結合を調べた結果を示す図面である。図1において、白色はバックグラウンドを示し、黒色は結合している細胞を示す。上の列は、細胞上のインテグリンα5β1の発現を確認した図面である。また下の列は、細胞へのII型FimA繊毛タンパク質の結合を確認した図面である。
【図2】細胞を固定し、それにFimA を結合させる実験系において、未処理(untreated)、或いは、(i)SBAビーズ(SBA alone)、(ii)フィブロネクチン(Fibronectin alone) 、(iii)フィブロネクチン−SBAビーズ(F+SBA)、(iv)RGDペプチド(RGD peptide alone)、又は(v)RGDペプチド−SBAビーズ(RGD+SBA)を共存させて、結合阻害作用を調べた実験結果を示す図面である。
【図3】FimAを固定し、それにα5β1インテグリン発現細胞を結合させる実験系において、未処理(untreated)、或いは、(i)SBAビーズ(SBA alone)、(ii)フィブロネクチン(Fibronectin alone)、(iii)フィブロネクチン−SBAビーズ(Fibronectin+SBA)、(iv)RGDペプチド(RGD peptide alone)、又は(v)RGDペプチド−SBAビーズ(RGD peptide+SBA)を共存させて、結合阻害作用を調べた実験結果を示す図面である。
【図4】細胞を固定し、それにII型FimA線毛タンパク質を持つP. gingivalisを結合させる実験系において、未処理(untreated)、或いは、(i)SBAビーズ(SBA alone)、(ii)フィブロネクチン−SBAビーズ(Fibronectin-SBA )又は(iii)RGDペプチド−SBAビーズ(RGD-SBA)を共存させて、結合阻害作用を調べた実験結果を示す図面である。
【図5】FimAを固定し、それにα5β1インテグリン発現細胞を結合させる実験系において、未処理(untreated)、或いは、(i)SBAビーズ(SBA bease)、(ii)RGDペプチド(RGD peptide)、(iii)RGDペプチド−SBAビーズ(SBA+RGD peptide)、(iv)WGAビーズ(WGA)、又は(v)RGDペプチド−WGAビーズ(WGA+RGD peptide)を共存させて、結合阻害作用を調べた実験結果を示す図面である。
【図6】FimAを固定し、それにα5β1インテグリン発現細胞を結合させる実験系において、未処理(untreated)、或いは、(i)SBAビーズ(SBA alone)、(ii)RGDペプチド(RGD peptide)、(iii)RGDペプチド−SBAビーズ(SBA-RGD peptide)、(iv)RGDペプチド−SBAビーズとグルコース(SBA-RGD+glucose)、(v)RGDペプチド−SBAビーズ とN−アセチルガラクトサミン(SBA-RGD+GalNac)、又は(vi)N-アセチルガラクトサミンのみ(GalNac alone)を共存させて、単糖のSBA結合阻害作用に対する影響を調べた実験結果を示す図面である。
【図7】細胞を固定し、それに(1)未処理(untreated)、(2)リポ多糖(LPS)、(3)TNF alpha、(4)II型FimA線毛タンパク質を持つP. gingivalis、又は(5)FimA を添加した実験系において、(i)未処理(untreated)、(ii)SBAビーズ(SBA alone)、(iii)フィブロネクチン−SBAビーズ(Fibronectin+SBA )又は(iv)RGDペプチド−SBAビーズ(peptide+SBA)を共存させて、TGFβサイトカインの産生の抑制作用を調べた結果を示す図面である。
【図8】(1)未処理(untreated)、或いは、(2)SBAビーズ(SBA alone)、(3)フィブロネクチン−SBAビーズ(Fibronectin+SBA )又は(4)RGDペプチド−SBAビーズ(RGD peptide+SBA)を存在させた実験系において、(i)抗TNFRI抗体、(ii)抗チロシンリン酸化抗体、又は(iii)抗アクチン抗体を用いたウェスタンブロットにより、TNFレセプター1(TNFRI)のリン酸化の阻害作用を調べた結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0063】
1.ダイズレクチンビーズ(SBAビーズ)の作製
セファロースビーズ1mlあたり、大豆レクチン5mgを用意し、NHS-activated ビーズ(GEヘルスケア社)を加えて混合し、室温で一時間放置し、大豆レクチンのアミノ基をビーズと結合させた。
【0064】
セファロースビーズに結合した大豆レクチンの割合を測定したところ、5mgの大豆レクチンがほぼ完全にセファロースビーズ1mlに結合していた。
【0065】
以下、得られた大豆レクチンとビーズの結合物を、SBAビーズ又はSBAと称する。
【0066】
2.RGDペプチド−SBAビーズ又はフィブロネクチン−SBAビーズの作製
配列表の配列番号3の配列からなるRGD-ペプチド(シグマアルドリッチジャパン株式会社)あるいはフィブロネクチン(和光純薬工業株式会社)を、上記1.で作製した大豆レクチンビーズと混合し、それぞれ室温で一時間放置して、RGDペプチドまたはフィブロネクチンのカルボキシル末端を介してEDC(1-ethyl-3-[3-dimethylaminopropyl] carbodiimide hydrochloride,Pierce 社製)を使用して、大豆レクチンビーズと結合させた。結合しなかった蛋白質あるいはペプチドは回収し、SBAビーズとRGD-ペプチドを結合させたビーズ、及び、SBAビーズとフィブロネクチンを結合させたビーズを得た。
【0067】
以下、SBAビーズとRGD-ペプチドを結合させたビーズを「RGDペプチド-SBAビーズ」、またSBAビーズとフィブロネクチンを結合させたビーズを「フィブロネクチン-SBAビーズ」とも称する。
【0068】
3.試験細胞
下記結合阻害実験では、α5β1インテグリンをコードする遺伝子を導入し、α5β1インテグリンを強制発現させたCHO細胞(「CHO−VLA5」とも称する)及び歯肉細胞を使用した。歯肉細胞としては、GE1、Ca9-22及びSa3の3種類を使用した。また、コントロールとして、α5β1インテグリンを導入していないCHO細胞を使用した。
【0069】
それぞれ約1万個の細胞を用意し、細胞表面上にα5β1インテグリンが発現していることを、抗インテグリンα5抗体およびFITC 抗マウスIgG抗体を用いて、フローサイトメーター(FACSC alibur: Becton Deckinson)にて確認した。また、FimA II-GSTと各細胞が結合することを、抗GST抗体およびFITC抗マウスIgG抗体により、上記と同じくフローサイトメーターにて確認した。
【0070】
結果を図1に示す。
【0071】
図1に示されるように、α5β1インテグリン導入CHO細胞、GE1、Ca9-22及びSa3のいずれにおいても、α5β1インテグリンの発現が確認できた。
【0072】
以下、前記4種の細胞と、ネガティブコントロールであるα5β1インテグリンを導入していないCHO細胞を、試験細胞として、使用した。
【0073】
4.結合阻害実験1
96穴プレートに、試験細胞を5 X 105 cells播種し、10マイクログラム/mlのFimA II-His50マイクロリットルを結合させ、ここにSBAビーズ、RGDペプチド-SBAビーズ、及びフィブロネクチン-SBAビーズを各10マイクロリットル共存させ、室温にて10分間プレートを揺らした。また比較のために、RGDペプチド、又はフィブロネクチンを共存させた実験を同様に行った。
【0074】
96穴プレートを緩やかに洗浄し、細胞に結合しているFimA II-Hisを抗His抗体にて検出した。
【0075】
結果を図2に示す。
【0076】
図2の結果に示されるように、フィブロネクチン-SBAビーズは、フィブロネクチン単独を用いる場合に比べて、II型FimA繊毛タンパク質とα5β1インテグリン発現細胞との結合を有意に阻害した。また、RGDペプチド−SBAビーズは、RGDペプチド単独を用いる場合に比べて、II型FimA繊毛タンパク質とα5β1インテグリン発現細胞との結合を有意に阻害した。
【0077】
5.結合阻害実験2
FimAII-His(10マイクログラム/ml)を96穴プレートに固定し、CellTracker Green CMFDA (Invitrogen)にて蛍光標識した試験細胞を1×10cells結合させた。
【0078】
ここにSBAビーズ、RGDペプチド-SBAビーズ、フィブロネクチン-SBAビーズを50マイクロリットル共存させ、プレートを揺らした。また比較のために、RGDペプチド、又はフィブロネクチンを共存させた実験を同様に行った。
【0079】
96穴プレートに、無血清Dulbecco’s Modified Eagle Medium(以下、DMEMとも称する)あるいはPBSを満たし、結合しない細胞を取り除いた後、結合している細胞を蛍光プレートリーダーにて検出した。
【0080】
結果を図3に示す。
【0081】
図3の結果に示されるように、フィブロネクチン-SBAビーズは、フィブロネクチンを存在させた場合に比べて、II型FimAタンパク質とα5β1インテグリン発現細胞との結合を有意に阻害した。また、RGDペプチド−SBAビーズは、RGDペプチドを存在させた場合に比べて、FimAIIたん白質とα5β1インテグリン発現細胞との結合を有意に阻害した。
【0082】
また、阻害効果はRGDペプチド-SBAビーズの方がフィブロネクチン-SBAビーズよりも数倍高い事が示された。これは、RGDペプチド−SBAビーズの方が、RGD配列部分がSBAビーズ表面に効果的に露出しているためと考えられる。
【0083】
また、結合阻害実験1及び結合阻害実験2の結果から明らかなように、細胞あるいはFimAのいずれが固定されている場合においても結合阻害効果があることが確認された。
【0084】
またα5β1インテグリン発現細胞を用い、上記FimA-Hisタグ蛋白質との結合阻害実験と同様の実験を行って、SBAビーズに対するRGDペプチド又はフィブロネクチンの結合割合について調べた。その結果、RGDペプチド-SBAビーズでは、SBAビーズ100マイクロリットルあたりRGDペプチドが10〜30マイクログラムの時に最も効果的に結合を阻害した。また、フィブロネクチン-SBAビーズでは、SBAビーズ100マイクロリットルあたりフィブロネクチンが100〜30マイクログラムの時に最も効果的に結合を阻害した。
【0085】
6.結合阻害実験3
96穴プレートに、試験細胞を5 X 105 cells播種し、翌日最終濃度10マイクログラム/ml のリコンビナントII型FimA繊毛タンパク質(FimA-His)あるいは、II型FimA繊毛タンパク質を持つP. gingivalis 10マイクロリットルを結合させ、ここにSBAビーズ、RGDペプチド-SBAビーズ及びフィブロネクチン-SBAビーズを30マイクロリットル共存させ、室温にて10分間プレートを揺らした。
【0086】
96穴プレートを緩やかに洗浄し、細胞に結合しているII型FimA繊毛タンパク質を持つP. gingivalis(蛍光標識した)をP. gingivalisは蛍光検出器で検出した。また、リコンビナントFimA-Hisは抗His抗体にてELISA法を用いて検出した。
【0087】
結果を図4に示す。
【0088】
図4の結果に示されるように、II型FimA繊毛タンパク質を持つP. gingivalisと歯肉細胞との結合はRGDペプチド-SBAビーズ、フィブロネクチン-SBAビーズにより阻害された。また、RGDペプチド−SBAビーズ及びフィブロネクチン−SBAビーズの方が結合阻害効果は高いが、SBAビーズでもわずかに結合が阻害された。これから、RGDペプチド又はフィブロネクチンだけでなく、ムチン型糖鎖結合性レクチンによっても、II型FimA繊毛タンパク質を持つP. gingivalisと歯肉細胞と結合阻害作用が行われていると考えられた。
【0089】
7.他のレクチンとの比較
SBAに加えて、小麦胚芽レクチン(wheat germ agglutinin,以下、WGAともいう)を用いた検討を行った。
【0090】
FimAII-His(10マイクログラム/ml)を96穴プレートに固定し、CellTracker Green CMFDA (Invitrogen)にて蛍光標識した試験細胞を1×10cells結合させた。
【0091】
ここに、SBAビーズ、RGDペプチド、RGDペプチド−SBAビーズ、WGAビーズ、RGDペプチド−WGAビーズを10マイクロリットル共存させ、プレートを揺らした。
【0092】
尚、WGAビーズは、前記1.のSBAビーズの作製において、SBAに代えてWGAを用いる以外は同様に作製したビーズである。また、RGDペプチド−WGAビーズは、前記2.のRGDペプチド−SBAビーズの作製において、SBAに代えてWGAを用いる以外は同様に作製したビーズである。
【0093】
96穴プレートに、PBSを満たし、結合しない細胞を取り除いた後、結合している細胞を蛍光プレートリーダーにて検出した。
【0094】
結果を図5に示す。
【0095】
WGAはD-GlcNacを持つキトオリゴ糖やN-アセチルラクトサミン構造を持つアスパラギン型複合型糖鎖に結合する。図5に示されるように、WGAよりもSBAを用いる場合の方が、歯肉細胞とFimAとの相互作用を強く阻害することから、GalNacα1-3Gal構造を有するムチン型糖鎖を利用してRGDまたはフィブロネクチンの滞留性が高められていると考えられた。
【0096】
8.単糖による結合阻害作用に与える影響
FimAII-His(10マイクログラム/ml)を96穴プレートに固定し、CellTracker Green CMFDA (Invitrogen)にて蛍光標識した試験細胞を1×10cells結合させた。
【0097】
ここにSBAビーズ、RGDペプチド又はRGDペプチド-SBAビーズを10マイクロリットル共存させ、プレートを揺らした。また、RGDペプチド-SBAビーズに加えて、グルコース(glucose)又はN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を最終濃度50マイクログラム/ml共存させた。また比較のために、各種ビーズは存在させず、N-アセチルガラクトサミンのみを最終濃度50マイクログラム/ml存在させた。
【0098】
96穴プレートに、PBSを満たし、結合しない細胞を取り除いた後、結合している細胞を蛍光プレートリーダーにて検出した。
【0099】
結果を図6に示す。
【0100】
図6の結果に示されるように、RGDペプチド−SBAの結合阻害作用はグルコースを共存させても抑制されなかったが、N-アセチルガラクトサミンの共存により抑制されたことから、N-アセチルガラクトサミン構造と結合するSBAが歯肉細胞とFimAとの結合阻害に寄与していることが示された。
【0101】
9.サイトカイン産生の確認
96穴プレートにCa9-22細胞を5 X 105 cells播種し、翌日50マイクロリットル培地中に、(1)リポ多糖(以下、「LPS」とも称する、10ng/ml)、(2)TNFα(10ng/ml)、(3)II型FimA型線毛タンパク質を持つP. gingivalis(5マイクロリットル)或いは(4)FimA II-GST(10マイクログラム/ml)を試薬として添加する処理を行った。なお、前記文章において、括弧内の数値は、培地中の試の最終濃度を示す。
【0102】
それらにSBAビーズ、RGDペプチド-SBAビーズ又はフィブロネクチン-SBAビーズを30マイクロリットル共存させ、プレートを揺らした。その後。ELISAにてTGFβの産生量を測定した。
【0103】
結果を図7に示す。
【0104】
その結果、(1)のLPS又は(2)のTNF alphaで処理したプレート中では、ビーズを共存させない場合と同様に、SBAビーズ、RGDペプチド-SBAビーズ又はフィブロネクチン-SBAビーズを共存させた場合において、TGF βの産生が観察された。これから、RGDペプチド-SBAビーズおよびフィブロネクチン-SBAビーズは、(1)のLPS又は(2)のTNF alphaによる炎症反応にあまり影響を与えないことが示された。
【0105】
一方、(3)P. gingivalisを添加したプレート中では、ビーズを共存させない場合またはSBAビーズを共存させた場合はTGFβの産生が検出されたが、RGDペプチド-SBAビーズ又はフィブロネクチン-SBAビーズを共存させた場合は、TGF beta 産生が抑制された。また、(4)FimAIIを添加したプレート中で処理した場合も、ビーズを共存させない場合またはSBAビーズを共存させた場合はTGFβの産生が検出されたが、RGDペプチド-SBAビーズ又はフィブロネクチン-SBAビーズを共存させることにより、TGF beta 産生が抑制された。
【0106】
このことから、RGDペプチド-SBAビーズおよびフィブロネクチン-SBAビーズにより、TGFβの産生が抑制されることが確認できた。
【0107】
10.TNFRI(TNFα receptor type I)のリン酸化に与える影響
96穴プレートに試験細胞を5 X 105 cells播種し、翌日、DMEMで各ウェルを洗った後に、II型FimA線毛タンパク質を持つP. gingivalis(10マイクロリットル)を試薬添加する処理を行った。なお、括弧内の数値は、培地中の試の最終濃度を示す。
【0108】
それらにSBAビーズ、RGDペプチド-SBAビーズ又はフィブロネクチン-SBAビーズを30マイクロリットル共存させ、プレートを揺らした。PBSで十分に各ウェルを洗った後に、1% NP-40で細胞を溶かし、抗TNFRI抗体、抗チロシンリン酸化抗体、及び抗アクチン抗体を用いてウエスタンブロットに供した。
【0109】
結果を図8に示す。
【0110】
その結果、フィブロネクチン-SBAビーズ又はRGDペプチド-SBAビーズを添加した場合には、活性化レセプターのリン酸化チロシンが検出されず、II型FimA線毛タンパク質と歯肉細胞上のα5β1の結合がRGDペプチド-SBAビーズおよびフィブロネクチン-SBAビーズに阻害されることにより、炎症性サイトカインTNFレセプターの活性化が抑制されることがわかった。このことから、RGDペプチド-SBAビーズおよびフィブロネクチン-SBAビーズにより、歯肉細胞のFimAが起因する炎症が阻害される可能性が示唆された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムチン型糖鎖結合部位及びインテグリン認識部位を有する化合物を有効成分とする歯周病予防剤であって、
ムチン型糖鎖結合部位はムチン型糖鎖結合性レクチンに由来し、インテグリン認識部位はインテグリン認識配列を有するポリペプチドに由来し、
前記化合物は、ムチン型糖鎖結合性レクチンと、インテグリン認識配列を有するポリペプチドとが結合してなる化合物である、
歯周病予防剤。
【請求項2】
ムチン型糖鎖結合性レクチンが、ダイズレクチンである、請求項1に記載の歯周病予防剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の歯周病予防剤を含む口腔用組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の歯周病予防剤を含む歯磨き器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−79776(P2011−79776A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233379(P2009−233379)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ▲1▼ 発行所名 財団法人 不二たん白質研究振興財団 理事長 海老原善隆 刊行物名 第12回研究報告会 講演要旨集 発行年月日 平成21年5月25日 ▲2▼ 発行所名 日本食品科学工学会第56回大会事務局 刊行物名 日本食品科学工学会第56回大会講演集 発行年月日 平成21年9月10日
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【Fターム(参考)】