説明

歯磨剤組成物

【課題】着色除去効果の増強された歯磨剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】次の成分(A)、(B)、及び(C)を含有し、成分(B)と(C)の合計量が、0.1〜10質量%である歯磨剤組成物。
(A)研磨性無機粉体
(B)平均粒子径75〜300μmの有機樹脂粉末
(C)平均粒子径5〜50μmのセルロース粉末

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色除去効果に優れる歯磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯磨剤の効能効果には、むし歯を防ぐ、歯垢を除去する、口中を浄化する等の他に、歯の着色を除去し、歯を白くする等の美白効果がある。最近では、食生活の変化に伴い、お茶や紅茶、コーヒー等に加えて、赤ワインなども日常的に摂取する傾向にあり、歯の着色汚れや黄ばみを、さらに効率よく除去できる歯磨剤が望まれている。歯を白くする手段として、研磨剤を配合することで歯の表面から歯垢や着色物を物理的に除去する手段や、リンゴ酸等の有機酸、ポリリン酸やオルトリン酸等のリン酸化合物のような歯の美白成分により化学的に除去する手段が用いられている。
【0003】
歯磨き剤に使用される研磨剤としては、例えば炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、シリカ、水酸化アルミニウム、ピロリン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、炭酸マグネシウム等の無機粉体が汎用的に用いられている。また、このような無機粉体以外には、水不溶性のセルロースパウダーを研磨剤として使用すること(特許文献1)や、無機粉体と粉末セルロースを組合せて着色除去効果の向上をさせる(特許文献2)ことが行われている。しかしながら、歯の着色汚れや黄ばみを除去して、自然なつやと白さを得ることの要望は高く、さらに着色除去効果の高い口腔用組成物への期待が強くなっている。
【特許文献1】特開昭55−98111号公報
【特許文献2】特開平2005−298498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、さらに着色除去効果の増強された歯磨剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、研磨性無機粉体に、粒径の大きな有機樹脂粉末と粒径の小さなセルロース粉末を併用すると、歯の着色除去効果が飛躍的に向上することを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)、及び(C)を含有し、成分(B)と(C)の合計量が、0.1〜10質量%である歯磨剤組成物を提供するものである。
(A)研磨性無機粉体
(B)平均粒子径75〜300μmの有機樹脂粉末
(C)平均粒子径5〜50μmのセルロース粉末
【発明の効果】
【0007】
本発明の歯磨剤組成物は、効率よく歯の着色物を除去でき、優れた歯の美白効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の歯磨剤組成物に用いられる(A)研磨性無機粉体としては、含水シリカ、無水シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水物、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、ゼオライト、ピロリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム等が挙げられる。このうちシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水物、炭酸カルシウムが好ましく、特にシリカ系研磨剤が好ましい。当該(A)研磨性無機粉体の平均粒子径は、着色除去効果の点から、1〜20μmが好ましく、さらに2〜15μm、特に3〜10μmが好ましい。本発明の歯磨剤組成物中、これら研磨性無機粉体の含有量は、十分な着色除去効果を得る観点から、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは3〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%である。以下、特に限定のない限り、本明細書中の各成分の含有量は、組成物全量を基準とする。
【0009】
本発明に用いられる有機樹脂粉末としては、ポリエチレン粉末、ポリプロピレン粉末等のポリオレフィン粉末;ナイロン粉末を含むポリアミド粉末;アクリル粉末、フッ素樹脂粉末、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合体)樹脂粉末、エポキシ樹脂粉末、FRP(繊維強化プラスチック)樹脂粉末、塩化ビニル樹脂粉末等が挙げられる。このうち、着色除去効果と、使用感や味の点から、ポリオレフィン粉末、ポリアミド粉末が好ましく、さらにポリエチレン粉末、ポリプロピレン粉末、ナイロン粉末が好ましく、ポリエチレン粉末が特に好ましい。また、(B)有機樹脂粉末の平均粒子径は、75〜300μmであるが、着色除去効果や使用感の点から、100〜250μmが好ましく、特に125〜200μmが好ましい。また(B)有機樹脂粉末の形状は、着色除去効果、使用感の点から略球状、楕円形状、または塊状が好ましい。(B)有機樹脂粉末は、着色除去効果や使用感の点から、本発明歯磨剤組成物中に0.1〜5質量%含有するのが好ましく、さらに0.2〜3質量%、特に0.3〜2質量%含有するのが好ましい。また、有機樹脂粉末は、その硬度が25〜75であることが好ましい。硬度は、デュロメータ硬さで表され、JIS法K7215で測定できる。
【0010】
本発明に用いられる(C)セルロース粉末としては、水不溶性のセルロースであればよく、例えばパルプ粉末、不溶性粉末セルロース、粉末α−セルロース、微結晶セルロース等が挙げられる。当該セルロース粉末の平均粒子径は、5〜50μmであるが、着色除去効果、使用感の点から10〜40μmが好ましく、特に15〜35μmが好ましい。(C)セルロース粉末は、着色除去効果、使用感の点から、本発明歯磨剤組成物中に0.1〜5質量%が好ましく、さらに0.2〜3質量%、特に0.3〜2質量%含有するのが好ましい。また、(B)有機樹脂粉末と(C)セルロース粉末の合計量は、0.1〜10質量%であるが、(A)研磨性無機粉末と併用することにより着色除去効果を向上させる点から、0.5〜6質量%であることが好ましい。
【0011】
本発明歯磨剤組成物における成分(A)と成分(B)及び(C)の合計量との比、(A)/〔(B)+(C)〕は、着色除去効果の点から20〜0.2が好ましく、さらに15〜0.3、特に10〜1が好ましい。また、研磨性無機粉体及び2種の粉末の平均粒子径の関係は、研磨性無機粉体≦セルロース粉末≦有機樹脂粉末であることが、3種の粉体の効果を生かせる点から好ましい。本発明を限定する趣旨ではないが、有機樹脂粉末は、一般に研磨性無機粉体やセルロース粉末と比較して柔らかいため、例えば歯を磨いている時に歯ブラシの毛で変形しやすく、研磨性無機粉体を含めた3種類の粉末の粒子径を上記関係にすることで、セルロース粉末や研磨性無機粉体への相互作用が高まり、着色除去効果が増強するものと考えられる。
【0012】
本発明の歯磨剤組成物中には、清涼感、冷涼感の付与、及びう触菌や歯周病菌の共凝集抑制効果を得る点から、エリスリトールを配合するのが好ましい。当該エリスリトールの平均粒子径としては、粒径10〜500μmが好ましく、さらに20〜350μm、特に30〜200μmのものを含有するのが好ましい。また、エリスリトールの含有量は、本発明の歯磨剤組成物中に、25〜50質量%であることが好ましく、さらに30〜50質量%、特に35〜50質量%含有するのが好ましい。また、エリスリトールは、十分な清涼感を得る観点から、粉末の状態で歯磨き組成物中に分散していることが望ましい。そのためには、エリスリトールは製造の最終工程に、粉体のままで投入することが好ましい。このような製造方法を用いることで、エリスリトールは水にほとんど溶解せずに、歯磨き組成物中に粉末の状態で存在させることが可能となる。
【0013】
本発明の歯磨剤組成物には、前記成分以外に、粘結剤、フッ素イオン供給化合物、他の糖アルコール、湿潤剤、pH調整剤、甘味剤、香料、保存料、酵素、殺菌剤、薬効成分、顔料、色素、水等を適宜含有させることができる。
【0014】
粘結剤としては、例えばアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース又はその塩、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体からなる水溶性高分子を1種又は2種以上使用するのが好ましい。本発明の歯磨剤組成物中、粘結剤の含有量は、着色除去効果及び歯磨剤組成物の安定性の観点から、0.6〜2質量%が好ましく、より好ましくは、0.7〜1.5質量%、さらにより好ましくは0.8〜1.2質量%である。
【0015】
フッ素イオン供給化合物としては、フッ化ナトリウム、フッ化スズ、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、フッ化アンモニウム等が挙げられる。
【0016】
他の糖アルコールとしては、キシリトール、ソルビトール、マルチット、ラクチット等が挙げられるが、このうちキシリトール、ソルビトールが好ましい。これらの糖アルコールの含有量は、歯磨剤組成物中10〜40質量%、さらに15〜35質量%、特に20〜30質量%であるのが好ましい。
【0017】
湿潤剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トレハロース等が好適に用いられる。歯の清掃効果を補う点からポリエチレングリコールを使用することが好ましい。ポリエチレングリコールには、タバコのヤニを溶解する働きがあるため、喫煙による歯の汚れに対しては有効であり、フィチン酸及び研磨性粉体と併用することで、さらに、歯の清掃効果を高めることが可能となる。ここで、ポリエチレングリコールの分子量は、200〜6000、より好ましくは、200〜3000、さらに、より好ましくは、200〜1000である。また含有量は歯磨剤組成物中、0.5〜15質量%が好ましく、特に1〜12質量%、さらに2〜10質量%である。
【0018】
pH調整剤としては、正リン酸カリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0019】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ソーマチン、アセスルファムカリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン等が挙げられる。
【0020】
香料としては、l−メントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、ペパーミント油、スペアミント油、オシメン、n−アミルアルコール、シトロネロール、α−テルピネオール、サリチル酸メチル、メチルアセテート、シトロネオールアセテート、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、シソ油、丁子油、ユーカリ油等が挙げられる。
【0021】
また、その他の各種有効成分としては、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、酢酸dl−トコフェロール、アズレン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、メトキシエチレン、無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、ジヒドロコレステロール、クエン酸亜鉛、トウキ、オウバク、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物、α−ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、トリクロロカルバニリド等が挙げられる。
【0022】
本発明の歯磨剤組成物の形態としては、ゲル状、ペースト状の練歯磨剤、半液状歯磨剤等が挙げられる。これらの形態の歯磨剤は、前記成分を混合して製造することができる。
【実施例】
【0023】
[歯磨き組成物の調製]
表1に示す組成に従って、実施例1〜4及び比較例1〜5の歯磨剤組成物を調製した。まず、水に、成分A〜Cの各粉体、ラウリル硫酸ナトリウム、香料、エリスリトール以外の成分を混合して粘結剤(CMC及びキザンタンガム)を十分に膨潤させた後、各粉体、ラウリル硫酸ナトリウム、香料を加え、最後にエリスリトールを加えて脱泡混合して歯磨剤組成物とした。
【0024】
(1)着色除去力の評価
市販のビデオテープの磁性粉面を表側になるようにして、プラスチック板に貼り付けたものを、ブラシ摩擦磨耗試験機(HEIDON−14)に固定し、毛の硬さがふつうで、植毛長さが2cmのラウンドカット歯ブラシを用い、この歯ブラシに表1に示す歯磨剤組成物をそれぞれ歯ブラシ全体に絞り出し、荷重300g、刷掃距離3cm、120rpmの速度で、磁性粉面を150ストロークさせた。なお、50ストローク毎に、再度、歯磨剤を歯ブラシに加えて同様の試験を行った。試験終了後、デジタルカメラで撮影し、磁性粉が剥がれた部分の面積を画像解析により算出し、比較例1の歯磨剤組成物で得られた値を基準(100%)として、着色除去力を評価した。
【0025】
表1から明らかなように、本発明の歯磨剤組成物は、研磨性無機粉体に粒子径の異なる2種類の粉末(有機樹脂粉末及びセルロース粉末)を含むため、着色除去効果が高い。これに対し、有機樹脂粉末及びセルロース粉末を含まない場合(比較例1)や、有機樹脂粉末を含まない場合(比較例2)、セルロース粉末を含まない場合(比較例3)、有機樹脂粉末の平均粒子径が小さすぎる場合(比較例4)、セルロース粉末の平均粒子径が大きすぎる場合(比較例5)は、いずれの場合においても着色除去効果が低かった。
【0026】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、及び(C)を含有し、成分(B)と(C)の合計量が、0.1〜10質量%である歯磨剤組成物。
(A)研磨性無機粉体
(B)平均粒子径75〜300μmの有機樹脂粉末、
(C)平均粒子径5〜50μmのセルロース粉末
【請求項2】
成分(A)と成分(B)及び(C)の合計量との比が、(A)/〔(B)+(C)〕=20〜0.2である請求項1記載の歯磨剤組成物。
【請求項3】
(B)有機樹脂粉末が、ポリオレフィン粉末及びポリアミド粉末から選ばれる1種以上を含有する請求項1又は2記載の歯磨剤組成物。
【請求項4】
さらに(D)エリスリトールを25〜50質量%含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の歯磨剤組成物。

【公開番号】特開2009−249305(P2009−249305A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96690(P2008−96690)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】