説明

歯磨用組成物

【課題】 使用時にきめ細かい触感の泡を生じ、泡持ち感の高い歯磨用組成物の提供。
【解決手段】 下記成分(A)、(B)及び(C):
(A)粉末セルロース、
(B)界面活性剤
(C)30メッシュ篩を通過するが200メッシュ篩は通過しない粒径サイズを有する顆粒、
を含有する歯磨用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用感に優れた歯磨用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯磨剤は、適当量の泡が持続し長時間ブラッシングし易いものが、洗浄力、使用感の点から望まれている。この泡立ちに関しては、一般に高い起泡性のものが好まれており、従来より様々な界面活性剤についてその起泡力や起泡速度について検討が行われている。
高い起泡性を得るためには、起泡量を多くしたり、保型性の高い泡を長時間維持するなどの工夫がなされている(特許文献1)。
一方、セルロースを配合した歯磨剤としては、研磨剤の代替品として平均粒径0.005〜1mmのセルロースパウダーを含有する歯磨組成物が開示されている(特許文献2)。しかし、セルロースパウダーと歯磨剤の泡質及び起泡量の関係については何ら報告はない。
【特許文献1】特開平11−209255号公報
【特許文献2】特開昭55−98111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、使用時にきめ細かい触感の泡を生じ、且つ、泡持ち感の高い歯磨用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、特定量の粉末セルロース、界面活性剤及び顆粒成分を配合することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記成分(A)、(B)及び(C):
(A)粉末セルロース、
(B)界面活性剤、
(C)30メッシュ篩を通過するが200メッシュ篩は通過しない粒型サイズを有する顆粒、
を含有する歯磨用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明により使用時にきめ細かい触感の泡を生じ、且つ、泡持ち感の高い歯磨用組成物の提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に用いる(A)粉末セルロースとしては、パルプ粉末、不溶性粉末セルロース、粉末α−セルロース、パルプ等のセルロース類を化学処理して不溶化したものを粉砕したもの等を1種又は2種以上使用することができる。粉末セルロースの平均重合度は、350以上が好ましく、より好ましくは350〜2250程度、さらに好ましくは440〜2250程度である。また、きめ細かい触感、泡持ち感の点で粉末セルロースは、平均粒径10〜300μmの非造粒粉末セルロースであることが好ましく、さらに好ましくは10〜100μmであり、特に好ましくは15〜50μmである。
【0007】
粉末セルロースの含有量は、歯磨用組成物全体中に、0.2〜3質量%が好ましく、粘り気のある泡を得る目的からは0.4質量%以上が好ましく、組成物の使用感の点からは2質量%以下が好ましい。
【0008】
本発明の組成物を製造する際には、粉末セルロースは、粉体として配合しても、水、低級アルコール、多価アルコールなどの液体に分散させた分散液として配合してもよい。低級アルコールとしては、エタノール、イソプロパノールなどを例示することができ、多価アルコールとしては、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどを例示することができる。製造する際には、水、低級アルコール、多価アルコールなどの液体に分散させた分散液を用いるのが好ましい。
【0009】
本発明の歯磨用組成物に配合される(B)界面活性剤は、アニオン界面活性剤、HLB価が16以上である非イオン界面活性剤又は両性界面活性剤であるが、好ましくはアニオン界面活性剤である。
アニオン界面活性剤は、歯磨用組成物に一般に用いられるアニオン界面活性剤であれば特に制限はなく、例えばアシルグルタミン酸ナトリウム、アシルサルコシンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、アルキルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩、N−メチル長鎖アシルタウリンナトリウム塩、ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩等が挙げられる。疎水基のアルキル基、アシル基は炭素数6〜18、特に10〜14のものが好ましく、また、ナトリウム塩が好ましいが、発泡性が良く、また、安価に入手可能な点からアルキル硫酸エステル塩が特に好ましい。アニオン界面活性剤は、本発明の歯磨用組成物中に0.1〜5質量%、特に0.2〜2質量%含有するのが好ましい。
【0010】
HLB価(Griffin)が16以上である非イオン界面活性剤は、歯磨用組成物に一般に用いられる非イオン界面活性剤であれば特に制限はなく、例えばショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油等が挙げられる。特にHLB価(Griffin)が18〜20である非イオン界面活性剤が好ましい。
【0011】
(数1)
HLB価=20(1−S/A)
(S:けん化価、A:使用脂肪酸の酸価)
【0012】
これらの非イオン界面活性剤の脂肪酸部は炭素数6〜18が好ましい。その含有量は、歯磨用組成物全体中に0.1〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは0.2〜10質量%である。
【0013】
両性界面活性剤は、口腔用組成物に一般に用いられる両性界面活性剤であれば特に制限はなく、例えばアルキルベタイン型、アルキルアミドベタイン型、イミダゾリン型、グリシン型等が挙げられる。その含有量は歯磨用組成物全体中に0.01〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜5質量%である。
【0014】
本発明の歯磨用組成物に配合される(C)顆粒は、30メッシュ篩(JIS規格)を通過するが、200メッシュ篩(JIS規格)は通過しない粒径サイズ(75〜500μm)を有する。このような顆粒としては、特公平06−021053号に記載された水不溶性粉末材料を水不溶性無機結合剤で結着させて得られる顆粒、特許3170250号に記載された炭酸カルシウムの微細粒子のみを凝集させて得られる顆粒、特開平04−243815号に記載された水不溶性粉末材料を水不溶性有機結合剤で結着させて得られる顆粒、特開平09−12436号に記載されたBET法による比表面積が150〜450m2/gである湿式法シリカ顆粒などを挙げることができる。好ましくは炭酸カルシウム又は無水ケイ酸を主成分として含む顆粒であり、使用感の点からは顆粒1個当たり0.1〜30gの荷重を加えたときに崩壊する崩壊強度を有するものが好ましい。その含有量は歯磨用組成物全体中に1〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは2〜20質量%である。
【0015】
本発明の組成物は、さらに粘結剤を2種以上含有することが好ましい。含有する粘結剤としては、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体を挙げることができるが、特にアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン及びキサンタンガムからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。粘結剤の含有量は、組成物全体中に、通常0.1〜3質量%程度、好ましくは0.2〜2質量%、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%程度である。
【0016】
本発明の歯磨用組成物には、前記成分の他、例えば湿潤剤、甘味剤、pH調整剤、香料、保存料、酵素、殺菌剤、薬効成分、顔料、色素等を適宜含有させることができる。
【0017】
湿潤剤としては、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、キシリトール、マルチット、ラクチット、トレハロース等が好適に用いられる。
【0018】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ソーマチン、アセスルファムカリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン等が挙げられる。
【0019】
pH調整剤としては、例えば、リン酸及びその塩(リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウムなど)、クエン酸及びその塩(クエン酸ナトリウム等)、リンゴ酸及びその塩、グルコン酸及びその塩、マレイン酸及びその塩、アスパラギン酸及びその塩、コハク酸及びその塩、グルクロン酸及びその塩、フマル酸及びその塩、グルタミン酸及びその塩、アジピン酸及びその塩、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウムなどを例示することができる。pH調整剤の含有量は、所望のpHとなる限り特に制限されないが、歯磨用組成物全体中に、通常0.01〜5質量%程度、好ましくは0.1〜3質量%程度である。本発明の組成物のpHは、本発明の効果が奏される限り特に制限されないが、通常4〜10程度である。
【0020】
香料としては、l−メントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、ペパーミント油、スペアミント油、オシメン、n−アミルアルコール、シトロネロール、α−テルピネオール、サリチル酸メチル、メチルアセテート、シトロネオールアセテート、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、シソ油、丁子油、ユーカリ油等が挙げられる。
【0021】
また、その他の各種有効成分としては、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、酢酸dl−トコフェロール、アズレン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、メトキシエチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、ジヒドロコレステロール、クエン酸亜鉛、トウキ、オウバク、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物、α−ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、トリクロロカルバニリド等が挙げられる。
【0022】
水の含有量は、剤形などに応じて適宜設定することができるが、組成物全体中に、通常0〜60質量%程度、好ましくは10〜50質量%程度である。
【0023】
また、本発明の歯磨用組成物は、粘り気のある泡を得る目的からHLB価15以下の非イ
オン性界面活性剤を含有しない、あるいは、含有してもアニオン界面活性剤を1質量部とした時に0.5質量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.3質量部以下である。
【実施例】
【0024】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、特に断らない限り、「%」は「質量%」を示す。
【0025】
実施例1及び比較例1、2の練歯磨を表1〜3に記載の処方でを調製した。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
【表3】

【0029】
得られた歯磨剤を用いて、泡立ち性試験をした。アクリル板(30×80×3mm)にφ3の円柱のアクリル棒を台座運動方向と垂直に並べブラッシング面を作成し、それを固定するためのアクリル容器(80×175×35mm)に取り付けた。作成したブラッシング面に対して、
ブラッシングマシーン(図1:台座が前後に動く)を用いて実施例1の歯磨剤、及び比較例1、2の歯磨剤を5倍希釈し発泡試験を行った。
刷掃条件は、荷重500g、速度120rpm、振幅50mm、刷掃回数500回として、ハブラシ(花王製品:毛先が球)を使用し評価した。測定は刷掃後の液をメスシリンダに移し泡量を評価する。評価結果はメスシリンダの泡上部の量(mL)として、表4に示した。
【0030】
【表4】

【0031】
また、5名のパネラーに各歯磨剤を使用させ、泡質及び使用時の泡立ち性について官能評価を行った。評価は、以下の基準にで行った。
(1)泡のきめ細かさ
きめ細かい:2
ややきめ細かい:1
どちらともいえない:0
やや粗い:−1
粗い:−2
(2)泡の弾力性
弾力性がある:2
やや弾力性がある:1
どちらともいえない:0
やや水っぽい:−1
水っぽい:−2
(3)泡の粘り気
粘り気がある:2
やや粘り気がある:1
どちらともいえない:0
あまり粘り気がない:−1
粘り気がない:−2
(4)使用時の泡立ち性
早い:2
やや早い:1
どちらともいえない:0
やや遅い:−1
遅い:−2
【0032】
その結果(5名のパネラーの評価の合計)を表5に示した。
【表5】

【0033】
その結果、粉末セルロース及び顆粒を含まない歯磨剤(比較例1)及び粉末セルロースを含まない歯磨剤(比較例2)は、いずれも泡立ちが十分でなく、泡質も悪いのであった。これに対し、粉末セルロース及び顆粒を含有する本発明の歯磨剤は泡立ちが良好でかつ泡質がきめ細かく良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】ブラッシングマシーンの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、(B)及び(C):
(A)粉末セルロース、
(B)界面活性剤、
(C)30メッシュ篩を通過するが200メッシュ篩は通過しない粒径サイズを有する顆粒、
を含有する歯磨用組成物。
【請求項2】
粉末セルロースの含有量が0.1〜2質量%である請求項1に記載の歯磨用組成物。
【請求項3】
粉末セルロースの平均重合度が350〜2250である請求項1又は2に記載の歯磨用組成物。
【請求項4】
粉末セルロースが、平均粒径10〜300μmの非造粒粉末セルロースである請求項1〜3のいずれかに記載の歯磨用組成物。
【請求項5】
さらに粘結剤を2種以上含有する請求項1〜4のいずれかに記載の歯磨用組成物。
【請求項6】
粘結剤がアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム及びメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体からなる群より選ばれる2種以上である請求項5記載の歯磨用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−8651(P2006−8651A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257541(P2004−257541)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】