説明

歯磨組成物

【課題】
不快な味等の抑制された歯磨剤の提供。
【解決手段】
下記成分(A)〜(D)を含有する歯磨組成物。
(A)粉末セルロース、0.1〜4質量%
(B)メントール、0.01〜1質量%
(C)界面活性剤、0.1〜5質量%
(D)ソルビトール、成分(A)1質量部に対し10〜400質量部
好ましくはさらに、グリセリン等ソルビトール以外の湿潤剤、無機研磨剤、水溶性高分子等の粘結剤、甘味剤、メントール以外の香料、水等を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不快な味の抑制された歯磨組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メントールは、歯磨剤に爽快感や清涼感を持たせるために配合されることが多いが、同時に刺激感、苦味や渋味が発現し、味覚上好ましくないので、甘味剤等でマスキングされてきた。さらに、界面活性剤とメントールとの相互作用により苦味や渋味が増幅され、特に、これらのものを、ソルビトールを含有する歯磨剤に共存させた場合、渋味と苦味、更にソルビトール由来の甘味が同時に発現して、非常に不快な異味と感じられ、これらのものを歯磨剤に同時に配合することが味覚上好ましくない。
【0003】
このような特異味を低減するための技術として、2種以上の甘味成分を添加する方法が開示されている(特許文献1)。
【0004】
一方、セルロースを配合した歯磨剤として、研磨剤の代替品として平均粒径0.005〜1mmのセルロースパウダーを含有する歯磨組成物が開示されているが、不快な味の抑制については何ら記載されていない(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−149481号公報
【特許文献2】特開昭55−98111号号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、メントールの刺激、苦味や渋味などの異味(不快な味)を抑制することや、さらには、界面活性剤、メントール及びソルビトールを同時に配合した際に発現する不快な味を抑制した歯磨組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、界面活性剤、メントール及びソルビトールを含有する歯磨組成物に、特定量の粉末セルロースを共存させると、界面活性剤、メントール及びソルビトールが共存する際に発現する刺激感や不快な味を抑制できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記成分(A)〜(D)を含有する歯磨組成物を提供するものである。
(A)粉末セルロース、0.1〜4質量%
(B)メントール、0.01〜1質量%
(C)界面活性剤、0.1〜5質量%
(D)ソルビトール、成分(A)を1質量部とした場合、10〜400質量部
【発明の効果】
【0009】
本発明の歯磨組成物は、メントール、界面活性剤及びソルビトールが共存することにより生じる不快な異味の発現を効果的に抑制することができ、味覚的に優れるとともに粉っぽさも少ないことから、歯磨剤として好適に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いる粉末セルロースとしては、パルプ粉末、不溶性粉末セルロース、粉末α−セルロース、パルプ等のセルロース類を化学処理して不溶化したものを粉砕したもの等を1種又は2種以上使用することができる。歯垢及び着色除去効果の点から粉末セルロースの平均重合度は、好ましくは350以上、より好ましくは350〜2250程度、さらに好ましくは440〜2250程度である。また、粉末セルロースの平均粒径は、好ましくは10〜300μm、より好ましくは10〜50μmである。また、製造コストの点から、非造粒物であることが好ましい。
【0011】
粉末セルロースの含有量は、歯磨組成物中、0.1〜4質量%であり、好ましくは0.2〜2質量%である。0.1質量%以上とするのは、刺激や異味の抑制効果の点からであり、4質量%以下とするのは、使用感の点からである。
【0012】
本発明の歯磨組成物を製造する際、粉末セルロースは、粉体としてそのまま配合しても、水、低級アルコール、多価アルコールなどの液体に分散させた分散液として配合してもよい。低級アルコールとしては、エタノール、イソプロパノールなどを例示することができ、多価アルコールとしては、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどを例示することができる。製造する際には、水、低級アルコール、多価アルコールなどの液体に分散させた分散液を用いるのが好ましい。
【0013】
メントールは、歯磨組成物を使用した後の適度な清涼感を付与するために配合され、本発明の歯磨組成物中、含有量は0.01〜1質量%であり、好ましくは0.4〜0.8質量%である。
【0014】
本発明の歯磨組成物に含まれる界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0015】
アニオン界面活性剤としては、アシルグルタミン酸ナトリウム、アシルサルコシンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、アルキルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩、N−メチル長鎖アシルタウリンナトリウム塩、ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩等が挙げられ、疎水基のアルキル基、アシル基は炭素数6〜18、特に10〜14のものが好ましく、また、ナトリウム塩が好ましい。発泡性が良く、かつ安価に入手可能な点からアルキル硫酸ナトリウムが好ましい。
【0016】
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレン付加系界面活性剤 、アミンオキサイド系界面活性剤 、モノまたはジエタノールアミド系界面活性剤 、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルを挙げることができる。この中でもソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが好ましく、モノステアリン酸デカグリセリン、モノミリスチン酸ペンタグリセリン等のポリグリセリン脂肪酸エステルが特に好ましい。
【0017】
これら界面活性剤は、1種以上用いることができる。その含有量は、清浄及び発泡効果の面から、本発明の歯磨組成物中0.1〜5質量%であり、好ましくは0.2〜2質量%である。
【0018】
ソルビトールは、歯磨用組成物が乾燥して固化するのを防ぐために湿潤剤として配合される。粉っぽさを抑制する点から、その量は、(A)粉末セルロース1質量部に対し10〜400質量部であり、好ましくは20〜200質量部である。また、歯磨組成物中の含有量は、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
【0019】
湿潤剤としては、ソルビトールに加え、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、キシリトール、マルチット、ラクチット、トレハロース等の多価アルコールを用いることができる。
【0020】
本発明の歯磨組成物には、前記成分の他、例えば、研磨剤、粘結剤、甘味剤、pH調整剤、香料、保存料、酵素、殺菌剤、発泡助剤、薬効成分、顔料、色素等を適宜含有させることができる。
【0021】
研磨剤としては、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、酢酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、合成樹脂系研磨剤等を用いることが好ましく、これらは、2種以上を併用してもよい。
【0022】
粘結剤としては、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体等の水溶性高分子やベントナイト、ラポナイト等の粘土鉱物が挙げられる。粘結剤の含有量は、歯磨組成物中、好ましくは0.1〜3質量%程度、より好ましくは0.2〜1.5質量%程度である。
【0023】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ソーマチン、アセスルファムカリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン等が挙げられる。
【0024】
pH調整剤としては、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、マレイン酸塩、アスパラギン酸、コハク酸、グルクロン酸、フマル酸、グルタミン酸、アジピン酸等の弱酸又はそのナトリウム塩等の塩類や塩酸等の強酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ;ケイ酸ナトリウム等の弱アルカリを例示することができる。pH調整剤の含有量は、所望のpHとなる限り特に制限されないが、歯磨組成物中好ましくは0.01〜5質量%程度、より好ましくは0.1〜3質量%程度である。本発明の組成物のpHは、本発明の効果が奏される限り特に制限されない。
【0025】
また、保存料、酵素、殺菌剤その他各種有効成分としては、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、酢酸dl−トコフェロール、アズレン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、メトキシエチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、ジヒドロコレステロール、クエン酸亜鉛、トウキ、オウバク、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物、α−ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、トリクロロカルバニリド等が挙げられる。
【0026】
水の含有量は、剤形などに応じて適宜設定することができるが、組成物全体に対して、通常0〜60質量%程度、好ましくは10〜50%程度である。
【0027】
本発明の組成物は、粉末セルロース、界面活性剤、メントール及びソルビトールを必須とする点以外は、常法に従って製造することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
実施例及び比較例
表1記載の歯磨組成物を調製し、健康な5名の被験者に、実施例及び比較例を用いて歯磨きさせ、メントール又は界面活性剤について対応する比較品と比べて刺激や異味が抑制されたと判断した被験者数を記載した。
【0029】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(D)を含有する歯磨組成物。
(A)粉末セルロース、0.1〜4質量%
(B)メントール、0.01〜1質量%
(C)界面活性剤、0.1〜5質量%
(D)ソルビトール、成分(A)1質量部に対し10〜400質量部

【公開番号】特開2006−69985(P2006−69985A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257544(P2004−257544)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】