説明

歯科用修復材組成物

【課題】歯冠用レジン、人工歯等のレジン系補綴材料、コンポジットレジン、シ−ラント等のレジン系保存修復材料等に利用できるペ−ストとして付形性等の操作性に優れ、硬化体の機械的特性、耐摩耗性、等が良好な新規な歯科用修復材組成物の提供。
【解決手段】(a)重合性単量体、(b)重合開剤、(c)粒径2〜15μmの複合ポリマ−粉体(1)と粒径が15μmを超え50μm以下の複合ポリマ−粉体(2)、ここで、(1)と(2)は、平均粒径が0.001〜1μmの第一無機酸化物粉体をポリマ−で複合したもの、(d)平均粒径が0.001〜1μmの第一の無機酸化物粉体(3)および(e)珪素を除く周期律表II〜IV族元素よりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素とシリカから構成され、平均粒子径が0.001μm〜1μmの粒子の凝集体と同じ表面構造を持つ平均粒径1〜100μmの第二の無機酸化物粉体(4)からなる歯科用修復材組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用修復材組成物に関する。更に詳しくは、歯冠用レジン、人工歯、レジンインレ−等のレジン系補綴材料、コンポジットレジン、シ−ラント等のレジン系保存修復材料等に好適に利用できるペ−ストとして付形性等の操作性に優れ、硬化体の機械的特性、耐摩耗性、透明性等が良好な新規な歯科用修復材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歯科治療においてポ−セレン等の無機酸化物系、ニッケル−クロム系等の卑金属、金合金等の貴金属系材料の代わりにレジン系補綴材料(歯冠用レジン、レジンインレ−、レジンアンレ−、人工歯、デンチャ−等)やレジン系保存修復材料(コンポジットレジン、シ−ラント等)が多用されている。これらレジン系材料は、一般に、重合性単量体、無機酸化物粉体等の粉体と重合開始剤等を配合したペ−ストで供され、ペースト及びその硬化体の特性は無機酸化物粉体の種類や平均粒径、充填率、マトリックスレジンの種類等よって決定されることが多い。例えば、平均粒子径が100μm程度の無機酸化物粉体を充填材として配合したペ−ストは、機械的強度は優れているが粒子径が余りにも大きいため研磨性が悪く、光沢感のある表面が得られ難いと云う欠点や、口腔内でマトリックスレジン部分が選択的に磨耗して無機酸化物粉体が突出してヤスリ状になるため、対合する人歯や歯科材料を磨耗させたり、光が乱反射して光沢感が失われたりする問題点が指摘されている。
【0003】
そこで、前記の問題点を解決するため、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4には粒子径が0.1〜1μmの範囲にあり、粒度分布が揃った真球状の無機酸化物充填材を使用する方法が提案されている。この無機酸化物は、真球体でしかも粒度が揃っているため、重合性単量体に高配合でき、機械的強度や表面の光沢性が優れる等の利点がある。しかしながら、真球状の無機酸化物粉体を配合しているためレジンへの投錨効果が不定形型の無機酸化物よりも劣り、マトリックスレジンから真球状の粉末が脱落し易いと云う欠点が指摘されている。また、無機酸化物として粒子径が0.1μm以下の粒子を使用する方法も提案されており、この粉体を使用すると、表面の光沢性が良く、対合物を磨耗させない等の利点があるが、粒子の表面積が大きいため、高配合しようとすると、ペ−スト粘度が上昇する。また、充填率を低下させるとペ−ストがべたついてスパチュラへ付着するためペ−ストの操作性が悪化する欠点や機械的強度が低い欠点がある。
【0004】
また、特許文献5では、0.1μm以下の無機酸化物粉体を重合性単量体で被覆し重合した粉体(以下複合ポリマ−と云う)を使用する方法で上記の問題点を解決しようとする試みがなされている。この方法によって作製された複合充填材は、(メタ)アクリレート系重合性単量体中に3個以上のエチレン性不飽和基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物を使用しているため、エチレン性不飽和基の全てが重合することはなく、その一部が残存する。そして、この複合体の粉体を配合した歯科用修復材組成物は、この複合充填材粉体の表面に残存するエチレン性不飽和基とマトリックスを構成する重合性単量体とが共有結合するため、硬化体の機械的強度が向上し、更に、複合充填材の脱落がないため、耐摩耗性に優れる利点があるが、この複合充填材自体が非常に硬脆いため、硬化体が破折し易く、耐衝撃性に劣る欠点が指摘されている。
【0005】
また、特許文献6には重合性単量体、重合開始剤、平均粒径が0.01〜1μmの無機酸化物粉末をポリマ−で被覆した複合体ポリマ−粉末、珪素と珪素以外の周期律表I〜IV族の少なくとも一種からなる一次粒径0.01〜1μmの粒子が凝集した1〜100μmの無機酸化物粉末からなる歯科用充填材組成物であって、ペ−ストの操作性、安定性に優れ、且つ硬化体の光沢性、機械的特性、耐摩耗性に優れることが特徴として挙げられている。しかしながら一種類の粒径の複合ポリマ−しか使用していないためペ−スト操作性、機械的特性等が未だ十分ではなく、改良の余地が残されていることが分かった。
【特許文献1】特開昭62−89701号公報
【特許文献2】特公昭62−86003号公報
【特許文献3】特公平1−57082号公報
【特許文献4】米国特許第4764497号明細書
【特許文献5】特開昭56−20066号公報
【特許文献6】特開平9−194674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、歯科用修復材組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、歯冠用レジン、人工歯、レジンインレ−等のレジン系補綴材料、コンポジットレジン、シ−ラント等のレジン系保存修復材料等に好適に利用できるペーストとして付形性等の操作性に優れ、硬化体の機械的特性、耐摩耗性、透明性等が良好な新規な歯科用修復材組成物を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、
(a)重合性単量体、
(b)重合開始剤、
(c)粒径2〜15μmの複合ポリマ−粉体(1)と
粒径が15μmを超え50μm以下の複合ポリマ−粉体(2)、ここで、複合ポリマー粉体(1)と(2)は、平均粒径が0.001〜1μmの第一無機酸化物粉体をポリマ−で複合したものである、
(d)平均粒径が0.001〜1μmの第一の無機酸化物粉体(3)および
(e)珪素を除く周期律表II〜IV族元素よりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素とシリカから構成され、平均粒子径が0.001μm以上1μm未満の粒子の凝集体と同じ表面構造を持つ平均粒径1〜100μmの第二の無機酸化物粉体(4)
からなることを特徴とする歯科用修復材組成物によって達成される。
【0009】
第一の無機酸化物粉体はシリカであることが好ましい。
また、前記複合ポリマ−(1)及び(2)に含まれる第一の無機酸化物粉体の含有率は20〜60重量%であることが好ましい。
前記複合ポリマ−(1)及び(2)のポリマ−成分の40重量%以上が重合性基を三個以上有する少なくとも一種類以上の重合性単量体から誘導されたものであるであることも好ましい。
【0010】
第二の無機酸化物粉体は、10mgについて300mlの水系分散中、出力40W、周波数39kHzの超音波強度で分散処理30分間処理した場合、0.01〜1μmの粒子径に分散されない粉体の重量が元の粉体の重量の90%以上を占めることが好ましい。
(a)重合性単量体100重量部に対し、(b)重合開始剤0.01〜10重量部、
(c)上記粉体(1)、(2)、(3)および(4)の合計が40〜900重量部からなる歯科用修復材組成物であることが好ましい。
前記粉体(1)、(2)、(3)および(4)の合計100重量部あたり、粉体(1)が40〜60重量部、粉体(2)が40〜60重量部、粉体(3)が10〜40重量部そして粉体(4)が1〜10重量部からなることも好ましい。
【0011】
そして、更に
(a)重合性単量体、
(b)重合開始剤、
(c)平均粒径分布曲線において、粒径が2〜15μmの範囲と、粒径が15μmを超え50μm未満の範囲に、それぞれ1つ以上の極大点を有する複合ポリマ−粉体混合物(12)、この複合ポリマー粉体混合物(12)は平均粒径が0.001〜1μmの第一の無機酸化物粉体をポリマ−で複合した複合ポリマー粉体である、
(d)平均粒径が0.001〜1μmの第一の無機酸化物粉体(3)および
(e)珪素を除く周期律表II〜IV族元素よりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素とシリカから構成され、平均粒子径が0.001μm以上1μm未満の粒子の凝集体と同じ表面構造を持つ平均粒径1〜100μmの第二の無機酸化物の凝集粉体(4)
からなる歯科用修復材組成物であることも好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、前記の通りに構成を有する歯科用修復材組成物であり、歯冠用レジン、人工歯、レジンインレ−等のレジン系補綴材料、コンポジットレジン、シ−ラント等のレジン系保存修復材料等に好適に利用できるペ−ストの付形性等操作性に優れ、更に、硬化体の機械的特性、研磨性、耐摩耗性、透明性等が良好な新規な歯科用修復材組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
先ず、(a)重合性単量体から詳細に説明する。重合性単量体は公知のものであれば、その種類は特に限定されるものではなく、好ましくは下記に示す重合可能な単官能性または多官能性の重合性単量体例えば(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0014】
(i)単官能重合性単量体としては、例えば
メチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、ノルマルブチル(メタ)アクリレ−ト、イソブチル(メタ)アクリレ−ト、tert−ブチル(メタ)アクリレ−ト、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレ−ト、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコ−ルアセトアセテ−ト(メタ)アクリレ−ト、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート、β−(メタ)アクリロキシエチルハイドロゲンサクシネート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレン(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシン、N−(メタ)アクリロイルグリシン、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物等の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、(メタ)アクリルアルデヒドエチルアセタール等のビニルエーテル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等のアルケニルベンゼン;アクリロニトリル、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;(メタ)アクリルアルデヒド、3−シアノ(メタ)アクリルアルデヒド等の(メタ)アクリルアルデヒド;(メタ)アクリルアミド、N−スクシン(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド;(メタ)アクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸等の(メタ)アクリル酸もしくはそれらの金属塩;アシッドホスホエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル燐酸等の燐酸エステル基を含有する重合性単量体もしくはそれらの金属塩;アリルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、tert−ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸等のスルホン酸基を含有する重合性単量体もしくはそれらの金属塩が挙げられる。
【0015】
(ii)二官能重合性単量体としては、例えば下記式(1)
【0016】
【化1】

【0017】
ここで、yは1〜20の整数で、R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子もしくはメチル基を表す、で示される単量体例えば、エチレンジオ−ル、プロピレンジオ−ル、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、エイコサンジオール等のジ(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を有するビニル単量体とヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフオロンジイソシアネート、メチルビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加物から誘導されるウレタン系重合性単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を有するビニル単量体とジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族含有ジイソシアネート化合物との付加物から誘導される芳香族環とウレタン結合を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体;2,2−ビス((メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシイソプロポキシフェニル)プロパン等の芳香族環とエーテル結合を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体、ビスフェノ−ルAもしくは水添ビスフェノ−ルAとグリシジル(メタ)アクリレ−トの1:2反応物、例えば、ビスフェノ−ルAジグリシジルエ−テル(メタ)アクリル酸付加物等のビスフェノ−ルAもしくは水添ビスフェノ−ルAとエポキシ基を持つ(メタ)アクリレ−トの1:2付加物等が挙げられる。
【0018】
(iii)三官能重合性単量体としては、例えば
トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ホスファゼン骨格を持つトリ(メタ)アクリレ−ト、イソシアヌル酸骨格を持つトリ(メタ)アクリレ−ト等が挙げられる。
【0019】
(iv)四官能重合性単量体としては、例えば
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、またジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフオロンジイソシアネート、メチルビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物とグリシドールジ(メタ)アクリレートのような水酸基を有するビニルモノマーから誘導されるウレタン系重合性単量体が挙げられる。
【0020】
(v)五官能以上重合性単量体としては、例えば
ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレートのようなエチレン性不飽和基を5個以上有する重合性単量体、特公平7−80736号報に記載されているエチレン性不飽和基を6個有するポリエチレン性不飽和カルバモイルイソシアヌレ−ト、エチレン性不飽和基を7個以上有する重合性単量体、フォスファゼン環に6個の(メタ)アクリレ−トが結合した化合物等が挙げられる。
【0021】
上記二官能以上の多官能重合性単量体としては、例えばトリエチレングリコールアクリレートメタクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレートジメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートジメタクリレートのようにメタクリレート基とアクリレート基を一分子中に併せ持つ化合物も同様に用いられる。
【0022】
これらの重合性単量体のなかで、好ましいものは2官能以上の重合性単量体である。2官能性重合性単量体では、例えば式(1)で表わされる化合物、特にyが3〜15の化合物、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のグルコ−ル系ジ(メタ)アクリレ−ト、脂肪族系のウレタンジ(メタ)アクリレ−ト、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等の芳香族環とエーテル結合を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体、ビスフェノ−ルAジグリシジルエ−テル(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。また、3官能以上の重合性単量体としては、例えば、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、特公平7−80736号報に記載されているエチレン性不飽和基を6個有するポリエチレン性不飽和カルバモイルイソシアヌレ−ト、フォスファゼン環に6個の(メタ)アクリレ−トが結合した化合物等が挙げらる。好ましくは、本発明で用いられる粉体の屈折率にあわせて、これらの重合性単量体は単独でもしくは組み合わせて使用することができる。
【0023】
次に、重合開始剤(b)について説明する。本発明の歯科用修復材組成物に使用される重合開始剤(b)としては、公知の開始剤が使用でき、光重合開始剤、熱重合開始剤、レドックス開始剤、またはそれぞれの組み合わせが好ましく使用される。本発明の歯科用修復材組成物がペ−ストである場合は、光重合性開始剤を使用すると、施術者が簡単な操作や所望するタイミングで硬化できるので好まい。
【0024】
光重合開始剤としては、例えばベンジル、カンファーキノン等のα−ジケトン化合物、α−ナフチル、p,p’−ジメトキシベンジル、ペンタジオン、1,4−フェナントレンキノン、ナフトキノン、アシルフォスフィンオキサイド等の紫外光あるいは可視光で励起され重合を開始する公知の化合物を挙げることができる。これらは1種または2種以上を混合して使用してもよい。このなかで、カンファーキノン、ジフェニルトリメチルベンゾイルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシドまたはその誘導体が特に好ましく使用される。また、光重合開始剤を使用する際には、光重合促進剤を併用することが好ましい。ここで使用される光重合促進剤の例としては、p−トルエンスルフィン酸またはそのアルカリ金属;N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチル、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸メチル、p−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、p−N,N−ジメチルアミノベンゾニトリル、p−N,N−ジエチルアミノベンゾニトリル、p−N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、N−エチルエタノールアミン等の第三級アミン、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシンのアルカリ金属塩等の第二級アミン;上記第三級アミンまたは第二級アミンと、クエン酸、リンゴ酸、2−ヒドロキシプロパン酸との組み合わせ;5−ブチルアミノバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物を挙げることができる。光重合促進剤としては、これらから選ばれる1種または2種以上を混合して用いてもよい。特に、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の芳香族に直接窒素原子が結合した第三級芳香族アミン誘導体もしくはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の重合性基を有する脂肪族系第三級アミン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシンのアルカリ金属塩等の第二級アミン誘導体が好ましく用いられる。特に本発明の歯科用修復材組成物の硬化を速やかに完結させようとする場合には、光増感剤と光重合促進剤との組み合わせが好ましく、カンファーキノン及び/またはアシルフォスフィンオキサイドと、(ア)p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル等の芳香族に直接窒素原子が結合した第三級芳香族アミンのエステル化合物またはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の重合性基を有する脂肪族系第三級アミンまたはN−フェニルグリシン、N−フェニルグリシンのアルカリ金属塩等の第二級アミンとの組み合わせ;(イ)p−トルエンスルフィン酸またはそのアルカリ金属塩との組み合わせ;(ウ)芳香族に直接窒素原子が結合した第三級芳香族アミンのエステル化合物との組み合わせ;(エ)芳香族に直接窒素原子が結合した第三級芳香族アミンのエステル化合物とp−トルエンスルフィン酸のアルカリ金属塩との組み合わせ等が好ましく用いられる。重合促進剤の配合量は光硬化性能が促進されれば限定されないが、好ましくは光重合開始剤100重量部に対して1〜3000重量部の範囲で使用される。
【0025】
光重合開始剤の量は、本発明の光硬化性特性や硬化体の機械的特性を勘案して適宜決定される。好ましくは(a)重合性単量体100重量部に対して0.01〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部、更に好ましくは0.01〜3重量部である。重合開始剤が0.01未満であると光硬化不良を惹起するので好ましくなく、逆に10重量部を超えると、光開始剤の色調が反映されて硬化体が黄色がかって色調不良になったり、硬化体の吸水率や溶解率が高くなって汚染が進行し易くなるため好ましくない。
【0026】
次に、平均粒径が0.001〜1μmの第一の無機酸化物粉体をポリマ−で複合した粒径2〜15μmの複合ポリマ−粉体(1)と粒径が15〜50μm(但し、15はこの範囲を含まない)の複合ポリマ−粒子(2)について説明する。
【0027】
先ず、第一の無機酸化物の種類としては特に制限がなく、製造法も溶液沈殿法、気相法、溶融法等の如何なる製造法で製造されるものであってもよい。また、形状についても制限はなく、不定形であっても球形であってもよい。かかる第1の無機酸化物粉体としては、例えば石英、溶融シリカ、水晶、シリカゾル、シリカゲル、アモルファスシリカ(AEROSIL、グレ−ドでは50、70、130、200、200V、200CF、200FDA、300、300CF、380、R972、R972CF、R972V、RX200、RY200、R202、R976、R202、R976、RM50、OX50、50、TT600、MOX80、MOX170、COK84:日本アエロジル(株)製)等の微粒子シリカ系フィラ−、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、シリカ−ジルコニアガラス、シリカ−チタニアガラス等のセラミックス微粒子粉体が好適に利用される。これらになかでも、RM50、RM50の下記に示す表面処理品、R972、R812、R976等の平均粒径0.001〜1μmの微粒子シリカは、それを使用すると硬化体の透明性が良い等の理由から特に好ましく使用される。
【0028】
第一の無機酸化物の平均粒径はペ−スト性状や硬化体の研磨性等から好ましい範囲が適宜選択される。平均粒径は0.001〜1μmの範囲、好ましくは0.001〜0.5μm、更に好ましくは0.001〜0.1μmの範囲である。平均粒径が0.001μm未満であると複合ポリマ−粒子に含まれる無機酸化物の充填率を高くすることができないため硬化体の機械的特性が劣るので好ましくない。また、平均粒径が1μmを超える無機酸化物粉体では、硬化体の研磨性が損なわれ、光沢のある表面を得にくいため好ましくない。
【0029】
複合ポリマ−に含まれる第一の無機酸化物粉体はそのまま、複合ポリマ−の製造に使用することができるが、複合ポリマ−を構成する無機酸化物とポリマ−の親和性や結合性を高めるために、無機酸化物は表面処理することが好ましい。表面処理剤としては、公知のものが使用でき、例えば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランシリルイソシアネ−ト、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン等のジアルキルジクロロシラン、ヘキサメチレンジシラザン等のシランカップリング剤、または相当するジルコニウムカップリング剤、チタニウムカップリング剤等を挙げることができる。表面処理方法としては、(A)ボ−ルミル、V−ブレンダ−、ヘンシェルミキサ−等で表面処理剤単独または表面処理材がアルコキサイド等の加水分解可能な官能基を含む場合にはそれを加水分解するのに必要な水を添加して処理する方法や、(B)表面処理剤をエタノ−ル水溶液等の有機溶剤と水とが均一に混合した有機溶剤含有の水溶液で希釈したものを無機酸化物粉体に添加して混合した後、50℃〜150℃で数分間〜数時間熱処理する方法(乾式法)、(C)エタノ−ル、トルエン、キシレン等の有機溶媒、加水分解を促進するために適当量の水や酸性水を加えた有機溶媒、水に無機酸化物粉体を添加してスラリ−状にして、上記の表面処理剤を加えて室温〜還流温度で数分間〜数時間処理し、溶媒をデカンテーションやエバポレーション等公知の方法で除去した後、50℃〜150℃で数時間熱処理する方法(湿式、スラリ−法)、(D)高温の無機酸化物粉体に表面処理剤をそのまま、または上記の水溶液を直接噴霧する方法(スプレ−法)を挙げることができる。また、重合性単量体(a)に表面処理剤を直接添加し、無機酸化物粉体を配合する方法(インテグラルブレンド法)も使用できる。もちろん、市販品が既に表面処理されている無機酸化物粉体はそのまま使用してもよいし、前記の方法等で更に表面処理を追加してもよい。
【0030】
複合ポリマ−の好ましい製造法とその粒径について述べる。複合ポリマ−の製造法としては、限定されるものではないが、好ましくは、前記の(a)重合性単量体と(b)第一の無機酸化物粉体、(c)重合開始剤(特に限定されないが好ましくは、ベンゾイルペルオキシド等の活性酸素ラジカルを発生させる化合物やアゾビスイソブチロニトリル等の活性窒素ラジカルを発生させる化合物等の80℃での分解半減期が10時間以下であるラジカル発生剤)をロール、ニ−ダ−、自動乳鉢等で機械的に混練してペ−スト化した後、このペ−ストを0〜100MPa好ましくは10〜50MPaの圧力をかけて80℃〜200℃、好ましくは100℃〜150℃で数分間〜数時間、好ましくは5分間〜1時間重合させて複合化することが好ましい。ここで、(a)重合性単量体に上記したトリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、ジトリメチロ−ルプロパンテトラ(メタ)アクリレ−ト等の3官能以上の重合性単量体を含むと複合体にペンダント二重結合が残存し、本発明の歯科用修復材組成物のペ−ストを重合させた時に(a)重合性単量体とこのペンダント二重結合とが共重合するため、硬化体からの複合ポリマ−粉体の脱落がなくなるため耐磨耗性が良く、更に光沢性が維持されるため好ましく使用される。3官能以上の重合性単量体の量は耐摩耗性等を勘案して適宜決定されるが、3官能以上の重合性単量体の量がポリマ−成分の40重量%未満であると複合体のペンダント二重結合が減少し耐摩耗性を損なう恐れがあるので好ましくない。(b)第一の無機酸化物粉体の複合ポリマー中の含有率は耐摩耗性等を勘案して適宜決定されるが、好ましくは20〜60重量%、好ましくは25〜60重量%、更に好ましくは30〜60重量%である。第一の無機酸化物粉体の含有率が20重量%未満であると硬化体の機械的特性が損なわれる虞があるので好ましくない。また、60重量%を超えると、硬化体が堅脆くなりチッピング等を起こす原因となるので好ましくない。(c)重合開始剤も特に限定されないが、好ましくは、重合を短時間に終了させるためにベンゾイルペルオキシド等の活性酸素ラジカルを発生させる化合物やアゾビスイソブチロニトリル等の活性窒素ラジカルを発生させる化合物等の80℃での分解半減期が10時間以下であるラジカル発生剤が好ましい。重合開始剤の量も特に限定されないが、複合ポリマ−の前駆体の一構成物である重合性単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部、更に好ましくは0.1〜5重量部である。重合開始剤が0.01重量部未満であると複合ポリマ−作製時に硬化不良を起こす虞があるので好ましくなく、また、10重量部を超えると複合ポリマ−中に未反応のラジカル発生剤が残存し、本発明のペーストの保存安定性を低下させる虞があるため好ましくない。
【0031】
複合ポリマー粉体の構造は、典型的には、ポリマーマトリクス中に複数の無機酸化物粉体が分散しているものである。
複合ポリマ−が塊状体で形成された場合、カッチングミル等で1mm角程度に粗粉砕した後、ボ−ルミル、雷かい機、ビ−ズミル等で粉砕し、更に分級等で所望の粒径にすることが好ましい。粒径は本発明の硬化体の機械的特性やペ−スト性状を勘案して適宜決定されるが、粒径が2〜15μmであり、好ましくは5〜15μm、更に好ましくは7〜の15μmの複合ポリマ−粉体(1)と粒径が15μmを超え50μm以下、より好ましくは15μmを超え40μm以下、更に好ましくは15μmを超え30μm以下の複合ポリマ−粒子(2)が組み合わせて用いられる。粉体の粒径測定法としては、レ−ザ−回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−910:(株)堀場製作所製)を使用し、水にヘキサメタ燐酸ナトリウム等の界面活性剤を添加し、出力40W、周波数39Hzの条件下で攪拌強度3及び循環強度4で10分間超音波処理し、粒子の頻度(%)を測定する方法が採用できる。複合ポリマ−粉体(1)及び(2)以外に、これらの粉体(1)、(2)と異なる粒径の他の複合ポリマー粉体が含まれていてもよい。かかる他の複合ポリマー粉体は、例えばその平均粒径分布曲線において、小径範囲として粒径が0.01〜80μmの範囲と、大径範囲として粒径が0.01〜150μmの範囲に、それぞれ1つ以上の極大点(小径範囲極大点D1、大径範囲極大点D2)を有することが好ましい。前記において、小径範囲は、より好ましくは0.03〜75μmの範囲であり、更に好ましくは0.05〜70μmの範囲であり、大径範囲は、より好ましくは0.03〜140μmの範囲、更に好ましくは0.05〜130μmの範囲であることが好ましい。
しかし、150μmを超える粒子を含むとペ−ストにザラツキが認められ操作性が悪化する虞があるので好ましくない。
複合ポリマ−粉体(1)、(2)を使用することにより硬化体の機械的特性等が特開平9−194674号公報よりも優れたものとなる。
【0032】
さらに、平均粒径が0.001〜1μmの第一の無機酸化物粉体(3)としては、前記の複合ポリマー(1)、(2)に含まれる平均粒径が0.001〜1μmの第一の無機酸化物粉体と同様のものが、好ましく用いられる。複合ポリマー(1)、(2)乃至は無機酸化物粉体(3)に用いられる第一の無機酸化物粉体は、全て同一のものを用いても良いし、少なくとも1つは、異なるものを用いても良い。勿論、複合ポリマー(1)、(2)乃至は無機酸化物粉体(3)の少なくとも1つにおいて、複数種の無機酸化物粉体(3)の混合物を用いてもよい。
【0033】
但し、少なくとも無機酸化物粉体(3)に用いられる第一の無機酸化物粉体は、好ましくは下記条件(A)、より好ましくは下記条件(B)、さらに好ましくは下記条件(C)に該当しないものが望ましい。
(A)、その表面の実質的に全面にわたって平均高さが0.001〜0.1μmの粒子状の突起乃至は凹凸がある。
(B)、その表面の実質的に全面にわたって平均高さが0.001〜0.5μmの粒子状の突起乃至は凹凸がある。
(C)、その表面の実質的に全面にわたって平均高さが0.001〜1μmの粒子状の突起乃至は凹凸がある。
突起乃至は凹凸の長径についても上記高さと同様に考慮される。
【0034】
次に、第二の無機酸化物粉体(4)について説明する。第二の無機酸化物の凝集粉体(4)は、珪素を除く周期律表II〜IV族元素よりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素とシリカから構成され、平均粒子径が0.001μm以上1μm未満の粒子の凝集体と同じ表面構造を持つ平均粒径1〜100μmの無機酸化物である。シリカ対珪素を除く周期律表II〜IV族元素の少なくとも一種類から構成される金属酸化物等の金属を含む物質の組成比は、硬化体の透明性等から適宜決定され、特に制限はないが、透明性の良い硬化体を得るためには、モル比で、好ましくは1:99〜99:1、より好ましくは90:10〜10:90、更に好ましくは80:20〜20:80である。
【0035】
なお、平均粒子径が0.001μm以上1μm未満の粒子の凝集体と同じ表面構造とは、平均粒子径が0.001μm以上1μm未満の粒子を実際に凝集させた粒子の表面構造と同様の形態であるのならば前記凝集により形成されたものでなくともよい。前記表面構造は、平均長径が0.001μm以上1μm未満であり、平均高さが0.001μm以上1μm未満である粒子状の突起乃至は凹凸が隙間無く実質上全面に形成されている形態である。前記平均長径は、好ましくは0.001〜0.5μm、更に好ましくは0.001〜0.1μmの範囲であり、前記平均高さは、好ましくは0.001〜0.5μm、更に好ましくは0.001〜0.1μmの範囲である。
【0036】
通常、平均粒径が1μm以上の無機酸化物粉体を充填材に使用すると、ペーストが垂れたり、研磨操作によって表面光沢性が出ない等の欠点があるが、前記の通りの形態を有する無機酸化物粉体を充填すると、ペ−ストの垂れがなく、しかも表面光沢性が良好な硬化体を得ることができる。これは、第二の無機酸化物粉体が平均粒径0.001〜1μmの一次粒子から構成された特徴ある形態と同じ表面構造を有することに起因するためであると云える。
【0037】
第二の無機酸化物粒子の製造法としては、前記した凝集体の形態を与える方法であれば限定されるものではない。例えば、平均粒径0.001μm以上1μm未満の微粒子を凝集させて前記凝集粒子と成すのがもっとも一般的製造方法ではあるものの、これに限定されるものではない。その他の方法例示すれば、前記微粒子以上の粒径を有する核となる粒子に前記微粒子を凝集・付着させてもよいし、或いは、平均粒径1〜100μm程度の粒子、或いはそれより大きな粒子に対して、機械的、電磁気的、化学的乃至は生物学的な手段にて、その粒子表面に対して、浸食、付着、膨張、収縮等の処理を施すことにより、平均粒径0.001〜1μmの粒子が凝集した表面構造と同じ表面構造を形成してもよい。一般的な方法は、より詳細には、有機珪素化合物と少なくとも一種類以上の周期律表II族、III族、IV族の有機金属化合物とをゾルゲル反応で製造する方法を採用することが好ましい。有機珪素化合物としては具体的にはSi(ORが好ましく用いられる。(ここで、Rは独立してC〜C20のアルキル基を示し、例えばメチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基等である。)また、周期律表II族、III族、IV族の有機金属化合物としては、MII(OR4、MIII(OR4、MIV(OR(但し、MIIはII族の金属元素、MIIIはIII族の金属元素、MIVはIV族の金属元素を示す。)で表される化合物でRは独立してC〜C20のアルキル基を示し、例えばメチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基等である。また、それ以外の周期律表II族、III族、IV族の有機金属化合物としては金属アセチルアセトネ−ト、金属カルボキシレ−ト等の上記(OR)のひとつ以上をβ−ジカルボニル基或はカルボキシル基で置換した化合物も利用できる。また、Mg[Al(iso−OCH]、Mg「Al(sec−OCH)]、Ni[Al(isoOC]、(CO)Zr[Al(OC、Ba[Zr(OC等のように金属アルコキシドを一分子中に2種類以上含む化合物を使用できる。
【0038】
第二の無機酸化物粉体の屈折率は、アルコキシシランと少なくとも一種以上の周期律表II族、III族、IV族の有機金属化合物の混合比を変化させたり、後述するアルコキシシランの溶液に添加する酸濃度や水の量や、アルコキシシランと少なくとも一種以上の周期律表II族、III族、IV族の有機金属化合物の混合比などを変えることによって1.45〜2.50程度まで変化させることができるため、複合ポリマ−やマトリックスレジンの屈折率に一致させることができ透明性の良い硬化体を得ることが可能になる。アルコキシシラン対少なくとも一種以上の周期律表II族、III族、IV族の有機金属化合物の混合比は、モル比で1:99〜99:1、好ましくは60:40〜95:5、更に好ましくは80:20〜90:10である。アルコキシシランのモル比が1未満、もしくは99を超えると透明性の良い硬化体を得難くなるので好ましくない。
【0039】
次に、凝集粒子の詳しい製造法を説明する。アルコキシシランとその他の有機金属化合物を同時に別々の容器から凝集粒子生成反応釜に移すと、反応の不均一化を招くので、後述する方法により、調整したアルコキシシランと有機金属化合物は予め均一に混合(以下、原料混合物という)して添加する方法が好ましい。混合に関して該混合物が溶液の場合は溶媒に溶解することなく使用することも可能であるが、一般には該混合物を溶解し、且つ水に任意の割合で溶解する溶媒で希釈する方が好ましい。好ましい溶媒としては、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロパノ−ル、イソアミルアルコ−ル、エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル等のアルコ−ル、また、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキサイド、ジオキサン、ジメチルホルムアミド等の水に任意に混合し得る有機化合物も利用可能であり、なかでもアルコ−ルが好ましい。更に、ジエチルエ−テル、酢酸エチル、ベンゼン等水に不溶または殆ど不溶な有機化合物を使用する場合には、水に任意の割合で溶解し得る有機化合物に混合して水に溶解できるようにして使用すればよい。また、原料に有機溶媒を添加すると沈殿を生じる場合があるので、有機溶媒に原料を徐々に添加する方が好ましい。原料を添加する方法は特に限定されず前記原料を、アルコキシシランと有機金属化合物(以下、「原料」と云う)とを同時に別々の容器から凝集粒子生成反応溶液中に添加すると反応の不均一化を招いたり、反応が煩雑になったりする恐れが有るため、後述する方法により調製したアルコキシシランと有機金属化合物は予め均一に混合し添加する方がよい。
【0040】
次に、原料混合物溶液の調製法について述べる。一般に、アルコキシシランと有機金属化合物を同時に凝集粒子生成させるために加水分解を行う場合、アルコキシシランは一般に他の金属例えばAl、Ti、Zrなどのアルコキシドに比べて加水分解速度が遅いため、珪素以外の有機金属化合物が選択的に早く加水分解され、分子レベルで組成が不均一化する可能性がある。そこでアルコキシシランの加水分解速度を珪素以外の有機金属化合物と合わせるために、アルコキシランを予め少なくとも部分的に加水分解した化合物と珪素以外の有機金属化合物とを均一混合することが好ましい。アルコキシシランの前記予備加水分解物を得る方法としては限定されることはないが、例えばその市販品を使用する方法;上記溶媒にアルコキシシランを溶解した後、酸性化合物を水に溶解した酸性水を所定量添加し室温から環流温度の範囲内で数分間から数時間加水分解反応させて得る方法を挙げることができる。焼成粒子の色目がよく(白色体)、アルコキシシランと有機金属化合物の混合比から推察される屈折率を持つ無機酸化物の凝集粒子を得るための酸性水の好適な水量(酸性水から酸性化合物を除いた量を示す。)はアルコキシシラン1モルに対して0.01〜0.98モル、好ましくは0.02〜0.90モル、特に好ましくは0.05〜0.49モルである。酸性化合物の種類としては塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの鉱酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸などの水溶性有機酸であり、なかでも鉱酸が好ましく、塩酸が特に好ましい。また、酸性水の酸性化合物の濃度は0.3重量%を越え3重量%未満が好ましく、0.5〜2重量%が特に好ましい。このようにして得られたアルコキシシランの加水分解物を含む溶液は有機金属化合物を直接、もしくは上記溶媒に有機金属化合物を溶解した溶液と均一混合することによって前記の原料混合物溶液として調製することができる。原料混合物の濃度としては、アルコキシシランを加水分解した溶液には未反応の水が存在し有機金属化合物とも反応することが推測できるため、Siおよび周期律表II〜IV族の金属の合計のモル数で表すと0.7〜2.0モル/リットルが好ましく、1.0〜1.5モル/リットルの範囲が特に好ましい。
【0041】
以上のように調製した原料混合物溶液は、酸性、中性、又はアルカリ性溶液中に添加して加水分解し、ゾル−ゲル反応により無機酸化物を析出させることが必要である。短時間で反応析出物を析出させるためにはアルカリ性溶液を使用することが特に好ましい。アルカリ性溶液の種類には制限がないが、前記に示した原料混合物を溶解し、且つ水に任意の割合で溶解する上記した溶媒に公知のアルカリ性水溶液を混合・均一化した溶液であることが好ましい。なかでもメタノ−ル、エタノ−ル、イソプロパノ−ル、イソブタノ−ル、イソアミルアルコ−ルなどのアルコ−ル類とアンモニア水との組み合わせが特に好ましく使用され、原料混合物溶液を混合した後でも塩基性を示すことが必要である。また、アンモニア水を使用すると、乾燥や焼成工程で容易にアンモニアが除去できるため好ましい側面もある。アルカリ性溶液を構成する上記溶媒及びアルカリ性水溶液の混合量およびその比率は添加される原料混合物溶液の濃度および後述する無機酸化物の凝集粒子の性状を損なわない範囲で適切な条件を選択すればよいが、ハンドリングの容易さなどの理由から一般には、前記の原料混合物の濃度であれば、アルカリ性溶液と水に任意の割合で溶解する上記した溶媒と原料混合物溶液を合計した時の原料混合物の濃度が0.3〜0.6モル/リットル、好ましくは0.4〜0.5モル/リットルの範囲になるように調製すればよい。
【0042】
アルカリ性水溶液については15〜30重量%濃度のアンモニア水を使用し、原料混合物/水のモル比が、好ましくは0.03〜0.07、より好ましくは0.04〜0.05の範囲になるように調製することが好ましい。
【0043】
溶液の攪拌速度としては特に限定されないが、反応析出物を凝集させ、且つ濾過採取を可能にするためには、先端速度が30〜500cm/s、好ましくは60〜350cm/sになるように攪拌したほうが好ましい。また反応温度としては、加水分解反応が起こる範囲であれば限定されることはないが、好ましくは10〜40℃であり、15〜30℃が特に好ましい。本反応は、減圧下、加圧下、常圧下で行うことができるが、常圧下、室温付近で十分に反応が進行する。
【0044】
なお、前記のアルカリ性溶液中に原料混合物溶液を添加する前に、反応析出物の核種となるシリカ重合体を添加もしくは生成させた後、反応混合物を添加してもよい。本核種は、シリカ重合体であれば種類や添加もしくは生成方法は限定されることはない。例えば、コロイダルシリカなどのシリカ重合体微粒子を添加する方法;前記に示したアルコキシシランもしくはその部分加水分解物を直接もしくは前記した溶媒に溶解して一括添加するか、もしくは数分間〜数時間、好ましくは1分間〜30分間以内に添加しin situで核種を生成させる方法などを挙げることができる。シリカ重合体微粒子使用する場合の好適な添加量としては、原料混合物100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲である。アルコキシシランもしくはその加水分解物を直接添加する場合の好ましい添加量としては原料混合物に対して0.5〜5モル%の範囲であり、上記の溶媒に溶解する場合の好ましい添加量としては、原料混合物に対して0.5〜5モル%のアルコキシシランもしくはその加水分解物を含む溶液を原料混合物溶液100重量部に対して0.5〜5重量部、好ましくは0.8〜3重量部の範囲である。また、この核種を反応溶液に添加した後の原料混合物溶液の添加開始時間は特に限定されるものではなく、核種添加後直ちに原料混合物溶液の添加を開始してもよいし、数十秒間〜数時間後に添加を開始してもよい。
【0045】
アルカリ性溶液中への原料混合物溶液の添加方法としては、限定されるものではなく、一括添加する方法や数十分間〜数時間、好ましくは1時間〜7時間、特に好ましくは3時間〜6時間の範囲で滴下する方法などを挙げることができる。また、析出反応を完了させるために原料混合物溶液を添加した後上記温度で、さらに5時間〜20時間、好ましくは10時間〜18時間攪拌を継続した方がよい。
【0046】
このようにして得られた反応析出物の採取方法としては、凍結乾燥法;エバポレ−タ−などで溶液を減圧除去する方法;遠心分離法;遠心濾過法;常圧濾過法、減圧濾過法、加圧濾過法など公知の方法が限定されず採用できる。また、反応終了後、攪拌を停止し反応析出物を沈殿させた上で上澄み液をデカンテ−ションなどで除去した後、前記方法で反応析出物を採取してもよい。本発明の反応析出物は1μm〜10μmの空隙を持っている濾紙または濾布などによってもその80重量%以上、一般には90重量%以上が採取できるため、コストおよび操作性の簡便さから考えて濾過法を採用すれば十分である。濾過に際しては前記濾過法が限定されず利用できるが短時間に操作を終了するためには、遠心濾過、加圧濾過、減圧濾過が好ましい。
【0047】
また、第二の無機酸化物粒子の特性を損なわない範囲であれば、反応時もしくは反応終了後に高分子電解質、無機化合物、有機化合物などの一般に凝集剤として使用される化合物を添加して強制的に反応析出物を凝集させて採取してもなんら差し支えない。
このようにして採取された反応析出物は次に常圧もしくは減圧下で乾燥することによって溶媒、アンモニア、水などを除去すればよい。乾燥に際しては窒素、アルゴンなど不活性ガスの雰囲気下で乾燥してもよい。乾燥温度としては特に限定されないが、40〜150℃、好ましくは70〜120℃の範囲である。また、乾燥時間は反応析出物の重量によって適宜最適時間を決定すればよい。
【0048】
乾燥した反応析出物は次いで焼成することが好ましい。乾燥体の焼成は乾燥した塊状体を解砕し粉体とした後焼成する方法、乾燥した塊状体をそのまま焼成した後解砕し粉体とする方法を挙げることができる。解砕方法としては公知の方法が限定されず使用されるがボ−ルミルなどで数十分間〜数十時間解砕すればよい。乾燥体もしくは焼成体をボ−ルミルで解砕しても第2の無機酸化物粒子の殆どがそれを構成する一次粒子すなわち平均粒径が0.01μm以上1μm未満にまで粉砕されることはない。
【0049】
焼成条件としては、焼成温度があまり低いと乾燥体に残存する水分や有機物などが十分に除去されないために、硬化レジンの機械的強度が低下したり、逆に乾燥体が溶融するほどの高温で焼成してガラス状にすると、後述する第二の無機酸化物粉体の特徴である表面構造の凹凸が消失し、ペーストの付形性が良くなるという添加効果が損なわれる場合もあるので好ましくない。そのため、焼成温度および時間としては、200〜1,200℃、好ましくは300〜1,200℃、特に好ましくは300〜1,100℃の範囲で数十分間〜数十時間、好ましくは2時間〜20時間の範囲である。むろん前記範囲であれば、ある温度を一定時間保留した後、温度を上昇させ再び一定時間保留するといった焼成方法を採用してもよい。また、残存する有機物を除去するために空気もしくは酸素存在下で焼成することが好ましい。焼成した無機酸化物粉体を充填すると未焼成体を配合した場合に比べてペ−ストのべたつきがなく、操作性の良いペ−ストを作製することができる。
【0050】
次に第二の無機酸化物粉体の凝集強度について述べる。通常、市販の無機酸化物粉体は凝集体として存在しているが、音波処理による分散状態および平均粒子径を測定するに際し、レ−ザ−回折/散乱式粒度分布装置(LA−910:(株)堀場製作所製)を好ましくは使用し簡便には水でも良いが、厳密には5重量%のヘキサメタ燐酸ナトリウムなどの界面活性剤を添加した水(分散媒)300mLに無機酸化物粉体10mgを添加し、30分間、出力40W、周波数39KHzの超音波強度、攪拌強度3、循環強度4で分散処理するとメ−カ−表示の粒子径まで分散される程度の弱い凝集力しか有しない。しかしながら、本発明の凝集粉体は凝集力が強く、前記の処理に対しても、元の重量の90%以上、好ましくは95%以上が0.001〜1μmの粒子径に分散されない粒子同士が強固に凝集した無機酸化物である。また、無機酸化物の凝集粉体の形態、凝集粉体を構成する一次粒子径の測定方法としては、凝集粒子の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)で観察する方法が好ましく利用できる。なお、凝集粉体をSEMもしくはTEMで観察する場合は粒子同士が重なり合わないように0.05〜1重量%濃度の水懸濁液とし、30分間超音波によって十分分散させた後観察する方がよい。また、無機酸化物の凝集粉体の粒径および粒度分布は重合性単量体などと共に乳鉢などで機械的に混練・配合しペ−スト化してもペ−ストの調製前後で殆ど変化は認められずその形態は保たれたものである。
【0051】
第二の無機酸化物粉体は、反応終了後の溶液段階で既に平均粒径が0.001μm以上1μm未満の粒子同士が強固に凝集し1〜100μmの平均粒径を有する粒子を構成している場合が多く、このことは前述した濾過による採取が可能であることからも裏付けられる。また、一旦溶液を除去すると完全に前記した粒子形態を有する凝集粒子が形成され、乾燥、解砕、焼成工程および重合性単量体(a)と配合しペ−ストを調製した後でも本粒子形態を維持している。また、本粒子形態を有することが、ペ−ストの垂れ、ベタツキが無く、適度に伸びのあるペ−ストにするための重要な要因となると考えられる。
【0052】
第二の無機酸化物粉体の特徴としては、上記のとおり平均粒径が1〜100μmであることは既に述べたが、さらに粉体の大部分が1〜200μm程度までブロ−ドした多分散系であることも挙げられる。粒子の粒子形態に加えて多分散系であることもペ−ストの操作性を決定する要因のひとつであることが推察される。また、第二の無機酸化物粒子の平均粒径は1〜80μmが好ましく、さらに好ましくは3〜50μm、特に好ましくは3〜20μmの範囲である。平均粒径が1μm未満であても、100μmを超えてもペーストの付形性が悪くなるため好ましくない。また、粉体の形態をSEMで観察すると、形状は不定形であり、さらに粉体の表面観察から、平均粒径が0.01〜1μm、粒子径の多くは0.03〜0.09μm程度の一次粒子の凝集体で構成された凹凸を持つ表面であることが認められる。
【0053】
第二の無機酸化物粉体の上記以外の製造方法としては、上記した本粉体の形態を損なわない方法であれば、限定されるものではないが、例えば平均粒径が0.01〜1μmの無機酸化物粉体を静電的に帯電し平均粒径1〜100μmの粒径に凝集せる方法;平均粒径が1〜100μmの無機酸化物粉体と平均粒子径が0.01〜1μmの無機酸化物粉体とを存在させ静電的に帯電して平均粒径1〜100μmの無機酸化物粉体の表面に平均粒径0.01〜1μmの無機酸化物粒子を付着もしくは凝集させる方法;ハイブリタイザ−などで平均粒径が0.01〜1μmの無機酸化物粒子を平均粒径1〜100μmの粒径に凝集せる方法;平均粒径が1〜100μmの無機酸化物の粉体と平均粒径が0.01〜1μmの無機酸化物の粉体とをハイブリタイザ−などで処理し平均粒径1〜100μmの無機酸化物粒子の表面に平均粒径0.001〜1μmの無機酸化物粉体を付着もしくは凝集させる方法;平均粒径0.001〜1μmの無機酸化物粉体を加圧下、凝集粒子表面の凹凸が無くならない程度に加熱して平均粒径1〜100μmの粒径に凝集せる方法;平均粒径1〜100μmの無機酸化物粉体と平均粒径0.001〜1μmの無機酸化物粉体とを存在させ加圧下、凝集粒子表面の凹凸が無くならない程度に加熱して平均粒径1〜100μmの無機酸化物粉体の表面に平均粒径0.01〜1μmの無機酸化物粒子を付着もしくは凝集させる方法などを挙げることができる。
【0054】
第2の無機酸化物粉体体についてもこのままペ−ストを調整するための充填材として使用してもよいが、重合性単量体(a)との親和性を高めたり、硬化レジンの機械的強度、耐磨耗性を向上させるために、前記した表面処理剤や表面処理方法で表面処理を施すことが好ましい。表面処理剤の量としては制限はなく、粉体粒子の平均粒径もしくは粒度分布およびペ−スト性状、硬化レジンの機械強度などから最適条件が決定されるが一般的には、粉体粒子100重量部に対して0.5〜10重量部、好ましくは3〜8重量部の範囲である。なお、粉体粒子は本表面処理によっても、粒径もしくは、粒度分布が処理前の凝集粒子と殆ど変化するものではない。
【0055】
本発明の各成分の組成はペ−スト性状や硬化体の機械的特性等から適宜決定すれば良いが、一般的には(a)重合性単量体100重量部に対し、(b)重合開始剤0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部、更に好ましくは0.1〜5重量部である。重合開始剤が0.01未満であると重合が不十分で硬化体の機械的特性が発揮されない場合があるので、好ましくない。また、10重量部を超えると未反応の重合開始剤の残存量が多くなり、好ましくない。更に、(c)上記(1)+(2)+(3)+(4)の粉体は(a)重合性単量体100重量部に対し、40〜900重量部であり、好ましくは50〜900重量部、更に好ましくは100重量部〜900重量部である。ここで、粉体が40重量部未満であると本発明の硬化レジンの曲げ強度等機械的特性が損なわれるので好ましくない。また、900重量部を超えるとペ−ストが硬くなりすぎて操作性が悪化するので好ましくない。
【0056】
また、前記の粉体の組成比は本発明のペ−スト特性や硬化体の機械的特性等から適宜決定され、特に制限はないが、一般には、粉体(1)+(2)+(3)+(4)=100重量部あたり、粉体(1)は40〜60重量部、好ましくは40〜55重量部、更に好ましくは40〜50重量部、粉体(2)は40〜60重量部、好ましくは40〜55重量部、更に好ましくは40〜50重量部、粉体(3)は10〜40重量部、好ましくは15〜40重量部、更に好ましくは20〜40重量部、粉体(4)は1〜10重量部、好ましく1〜8重量部、更に好ましくは1〜7重量部である。これらの範囲を逸脱するとペ−スト操作性や硬化レジンの研磨性や曲げ強度等の機械的特性を損なう虞があるので好ましくない。
【0057】
また、歯科用修復材組成物の保存安定性を付与するために、ハイドロキノン、ジブチルハイドロキノンなどのハイドロキノン化合物;ハイドロキノンモノメチルエ−テル、2,6−ジ−tert−ブチルフェノ−ル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾ−ルなどのフェノ−ル類など、通常重合禁止剤として使用される化合物を1種以上添加してもよい。なかでも、ハイドロキノンモノメチルエ−テルと2,6−tert−ブチル−p−クレゾ−ルの組み合わせが長期に亘る保存安定に極めて効果があり好適に利用できる。添加量としては特に制限はなく、ペ−ストの保存安定性や硬化レジンの機械的強度などから適宜最適量が決定されるが、一般には、重合性単量体(a)100重量部に対して0.001〜2重量部が好ましく、0.02〜1重量部が特に好ましい。ここで、0.001未満であると保存安定性が十分ではなく、逆に1重量部を超えると硬化不良をまねく虞があるので好ましくない。
さらに、色合わせのためにチタンホワイト、チタンイエロ−、べんがら等の顔料、骨材および紫外線吸収剤などを上記歯科用修復材組成物に必要に応じて添加することもできる。
【0058】
本発明においては、
(a)重合性単量体、
(b)重合開始剤、
(c)その平均粒径分布曲線において粒径が2〜15μmの範囲(小径範囲)と、粒径が15μmを超え50μm以下の範囲(大径範囲)に、それぞれ1つ以上の極大点を有する複合ポリマ−粉体混合物(12)、これらの複合ポリマー粉体混合物は、平均粒径が0.001〜1μmの第一の無機酸化物粉体をポリマ−で複合したものである、
(d)平均粒径が0.001〜1μmの第一の無機酸化物粉体(3)および
(e)珪素を除く周期律表II〜IV族元素よりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素とシリカから構成され、平均粒子径が0.001μm以上1μm未満の粒子の凝集体と同じ表面構造の平均粒径1〜100μmの第二の無機酸化物の凝集粉体(4)
からなる歯科用修復材組成物も好適である。
【0059】
なお、複合ポリマ−粉体混合物(12)は、その平均粒径分布曲線において、小径範囲として粒径が0.01〜80μmの範囲と、大径範囲として粒径が0.01〜150μmの範囲に、それぞれ1つ以上の極大点(小径範囲極大点D1、大径範囲極大点D2)を有することが好ましい。前記において、小径範囲は、より好ましくは0.03〜75μmの範囲であり、更に好ましくは0.05〜70μmの範囲であり、大径範囲は、より好ましくは0.03〜140μmの範囲、更に好ましくは0.05〜130μmの範囲である。
【0060】
極大点とは、曲線において上に凸なるピークであり、微積分学における通常の意味での極大点を指す。即ち粒子経Dに対する平均粒径度数n(D)における極大点Dは、変数Dによる関数n(D)の1次及び2次微分係数に関して、
dn(D)/dD=0、かつ、dn(D)/dD<0
にて規定できる。
【0061】
前記の両範囲外にも微積分学的意味での極大点があっても良いが、その高さは、極大点のうち、3番目以降の低いものであることが好ましい。
なお、粉体混合物が単分散の物が複数種混合されているように、連続した曲線分布を成さず、散発的に単分散のピークが疎らにあるような場合には、前記両範囲内には、1、2番目に高いピークが存在することが好ましい。
【実施例】
【0062】
以下に実施例、比較例を例示して具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。尚、例示する無機酸化物の平均粒径および粒径、粒度分布および屈折率、曲げ強度、圧縮強度、表面光沢性、およびペ−ストの操作性は以下の測定方法で測定した。
【0063】
シリカ/ジルコニア凝集粉体屈折率は表1の重合性単量体の種類および組成比を変化させた溶液にシリカ/ジルコニアを添加し、肉眼で観察して透明に見える溶液の屈折率を測定して決定した。測定はアッベ屈折率計(NAR−1T;ATAGO Co.,LTD.)にて20℃で行った。
シリカ/ジルコニアの凝集粉体および複合ポリマ−粉体の粒径および粒度分布:1重量%のシリカ/ジルコニアの凝集粉体を懸濁した水溶液を30分間超音波処理した後、凝集粒子の形態および一次粒径を走査型電子顕微鏡(JSM−5400;JEOL社製)で観察した。レ−ザ−回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−910;(株)堀場製作所製)を用いて5重量%ヘキサメタリン酸水溶液/水=5mL/295mL中で10mgのシリカ/ジルコニアの凝集粒子、および複合ポリマ−を攪拌強度3、循環強度4のモ−ドで30分間超音波処理し粒径および粒度分布を測定した。なお、参考実施例に示した平均粒径、粒度分布の値は特別な記載がない限りLA−910で測定した値である。
【0064】
曲げ強度:30mm×2mm×2mmの直方体の穴を開けたテフロン(登録商標)モ−ルドにペ−ストを充填した。セロファンフィルムで覆ってα−Light(モリタ(株)製)で3分間光照射し、37℃の水中に24時間浸漬した後、AUTOGRAPH(SBL−500K−350;島津(株)製)でスパン間20mm、クロスヘッドスピ−ド2mm/minで測定した。
圧縮強度:φ3mm×3mmの円柱の穴を開けたテフロン(登録商標)モ−ルドにペ−ストを充填した。セロファンフィルムで覆ってα−Lightで3分間光照射し、37℃の水中に24時間浸漬した後、AGS−1000D(島津(株)製)でスパン間20mm、クロスヘッドスピ−ド2mm/minで測定した。
【0065】
ペ−ストの操作性1. 垂れ:疎水性練和紙にペ−スト0.2gを置き、軽く圧接して円形状とした後、金属スパチュラで縦、横各3本の切れ目を入れた。練和紙を垂直にして23℃で1時間放置し、切れ目の変化を調べた。(○:変化なし。×:わずかに変化する〜切れ目消失。
【0066】
2.べたつき:ペ−スト1gを疎水性練和紙上に円形にしα−Lightで1分間光照射した。硬化レジンの照射側の面にペ−スト0.05gをステンレス製のスパチュラで圧接し、スパチュラを離した時にスパチュラにペ−ストが付くか否かで判断した。(○:無し。×:有り。)
【0067】
3. 伸び:ペ−ストをφ2mmの穴の開いたテルモシリンジに入れ、φ2×20mmの円柱状に絞り出した。ペ−ストの両端を手で持って1分間に5mm伸ばしその間にペ−ストが切れるか否かで判断した。(○:切れない。×:切れる。)
研磨性:φ3mm×3mmの円柱の穴を開けたテフロン(登録商標)モ−ルドにペ−ストを充填した。セロファンフィルムで覆ってα−Lightで3分間光照射し、硬化体を作製した。硬化体を水存在下で耐水エメリ−#2000で研削した後、馬布研磨し、硬化体に光沢性が出るか否かを目視で判断した。
光沢性あり:○、光沢性なし:×
透明性:φ3mm×3mmの円柱の穴を開けたテフロン(登録商標)モ−ルドにペ−ストを充填した。セロファンフィルムで覆ってα−Lightで3分間光照射し、硬化体を作製した。硬化体を水存在下で耐水エメリ−#2000で研削した後、馬布研磨し、白紙に黒マジックで線を入れた上に研磨後の硬化体を置いて透明感を目視で判断した。
透明性:良好 ○、不良 ×
【0068】
実施例、比較例、参考実施例で使用した化合物およびその略式名を表1に示す。また、第1の無機酸化物粉体として日本アエロジル(株)製のRM50(平均粒子径:50nm)、R976(平均子径:8nm)、R812(平均粒子径:8nm)を使用した。尚、平均粒子径はメ−カ−測定値である。
【0069】
【表1】

参考実施例1(シリカ/ジルコニア凝集粉体:ZMFの製造)無機酸化物の凝集粒子として、以下の方法によりシリカ/ジルコニアフィラ−を製造した。IPA1.50LにTES441g(2.12モル)、1.3重量%塩酸水溶液15g(H2O/TESモル比=0.39、HCl/TESモル比=0.0025)を添加して均一化した後、室温下で2時間静置した(A1溶液の調製)。IPA0.38LにTBZR120g(0.31モル)を室温下添加して均一化した溶液を先に調製したA1溶液に添加して均一化した(B1溶液の調製)。セパラブルフラスコにIPA3.75L、25%アンモニア水1.5Lを添加して先端速度157cm/sで室温下攪拌し均一溶液(C1溶液)とした後、シリカの核種を生成させるためにIPA0.09LにTES7.5g(0.04モル)を溶解した溶液(D1溶液)を滴下ロ−トに入れ5分間で滴下した後、B1溶液を滴下ロ−トに入れて5時間掛けて滴下した。滴下終了後さらに16時間攪拌を継続した後、攪拌を停止した。反応溶液中の白色析出物の平均粒径は12.0μmであった。この溶液を5A濾紙(ポアサイズ7μm)で減圧濾過して、白色の反応析出物を採取した。白色塊状体を窒素雰囲気下80℃で減圧乾燥して溶媒を除去し、乾燥体191gを得た。乾燥体の粒径および粒度分布をレ−ザ−回折/散乱式粒度分布測定装置で測定したところ、平均粒径は11.7μmで99%の積算頻度の粒子が1〜100μmの範囲に幅広く分布し多分散系であることが認められた。この乾燥体をφ40mmのアルミナボ−ルを10個入れた2Lのアルミナポットに入れ30rpmで10時間解砕した。解砕後の白色粉体の粒径および粒度分布を前記と同様に測定したところ、平均粒径は10.8μmで99%の粒子数が1〜100μmの範囲に幅広く分布し多分散系であることが認められた。また、平均粒径が1μm未満にまで分散されることはなかった。
【0070】
次にこの白色粉体を350℃で3時間、650℃で3時間焼成し白色の無機酸化物の凝集粉体152gを得た。無機酸化物の凝集粒子の粒径および粒度分布を同様に測定したところ、平均粒径は11.3μmで99%の粒子数が1〜100μmの範囲に幅広く分布し多分散系であることが認められた。さらに、凝集粉体を上記した方法で走査型顕微鏡(SEM)で観察したところ粒子の形態は不定形であり、その表面は粒径が0.01〜0.09μmの範囲の無機酸化物の粒子が密に凝集した凹凸を持つ表面性状を呈していることが分かった。 さらに、乾燥体、解砕後の粒子形態を同様にSEM観察したところ同様に無機酸化物の凝集体であることが分かった。また凝集粒子の屈折率を測定したところ1.51〜1.52であった。
【0071】
重量分析法およびICP法によりシリカ/ジルコニアの組成分析を行ったところシリカ/ジルコニア=87.9/12.1(モル比)(理論モル比:87.3/12.7)であり理論値とほぼ一致していた。シリカ/ジルコニアの凝集粉体は次いで以下の方法で表面処理してペ−スト化に供した。シリカ/ジルコニアの凝集粉体120gをエタノ−ル0.30Lに懸濁し、MPTMSを6g、精製水1.2gを添加し2時間環流させた。溶媒をエバポレ−タ−で除去した後、窒素雰囲気下で減圧下80℃で2時間熱処理し、凝集粒子を表面処理した。表面処理品の粒径および粒度分布を同様に測定したところ、平均粒径は12.9μmで粒子頻度が1〜100μmの範囲に幅広く分布し多分散系であることが確認された。以下このフィラ−をZMFと云う。粒子の電子顕微鏡像は図1〜3の通りであった。
【0072】
参考実施例2(複合ポリマ−の製造:TU−1及びTU−2)
TMPT/UDMA=90/10(重量%)60gにR972(日本アエロジル(株)製)40gをTest Mixing Roll((株)安田精機製作所製)を使用して機械的に十分練り混んでペ−スト化した。このペ−ストにベンゾイルペルオキシドを0.3g同様に練り込んだ後、170mm×170mm×5mmの穴の開いた金型に入れ圧縮成型機(YSR−10:神藤金属工業(株)製)で10MPaの加圧下、120℃で10分間重合した。重合体をハンマ−で約1mm角に砕いた後、1Lの磁性ポット(φ25mmの磁性ボ−ル30個、φ15mmの磁性ポット30個入り)に入れ、40rpmで20時間粉砕した。280メッシュの篩いを通過した粉体を窒素気流下、140℃で8時間減圧熱処理した後、複合ポリマ−の粉体(以下、「TU−1」と云う)を得た。また、TMPT/UDMA=90/10(重量%)60gにR972(日本アエロジル(株)製)40gをTest Mixing Roll((株)安田精機製作所製)を使用して機械的に十分練り混んでペ−スト化した。このペ−ストにベンゾイルペルオキシドを0.3g同様に練り込んだ後、170mm×170mm×5mmの穴の開いた金型に入れ圧縮成型機(YSR−10:神藤金属工業(株)製)で10MPaの加圧下、120℃で10分間重合した。重合体をハンマ−で約1mm角に砕いた後、1Lの磁性ポット(φ25mmの磁性ボ−ル30個、φ15mmの磁性ポット30個入り)に入れ、40rpmで50時間粉砕した。280メッシュの篩いを通過した粉体を窒素気流下、140℃で8時間減圧熱処理した後、歯科用充填組成物の複合ポリマ−の粉体(以下、「TU-2」と云う)とした。TU90−1の粒径は1〜150μmの粒子が100%であったまた、。TU−90−2の粒径は1〜130mの粒子が100%であった。
【0073】
参考実施例3(複合ポリマ−の製造:TUE−1及びTUE−2)TMPT/UDMA/2.6E=80/10/10(wt%)50gにR972(日本アエロジル(株)製)30gをTest Mixing Roll((株)安田精機製作所製)を使用して機械的に十分練り混んでペ−スト化した。ペ−ストに0.25gのベンゾイルペルオキシドを添加して同様に練り混んだ後、このペ−ストを170mm×170mm×5mmの穴の開いた金型に入れ圧縮成型機(YSR−10:神藤金属工業(株)製)で10MPaの加圧下、120℃で10分間重合した。重合体をハンマ−で約1cm角に砕いた後、1Lの磁性ポット(φ25mmの磁性ボ−ル30個、φ15mmの磁性ポット30個入り)に入れ、40rpmで20時間粉砕した。280メッシュの篩いを通過した粉体を窒素気流下、140℃で8時間減圧熱処理した後、歯科用充填組成物の複合ポリマ−の粉体(以下、「TUE30」と云う)を得た。また、TMPT/UDMA/2.6E=80/10/10(wt%)50gにR972(日本アエロジル(株)製)30gをTest Mixing Roll((株)安田精機製作所製)を使用して機械的に十分練り混んでペ−スト化した。ペ−ストに0.25gのベンゾイルペルオキシドを添加して同様に練り混んだ後、このペ−ストを170mm×170mm×5mmの穴の開いた金型に入れ圧縮成型機(YSR−10:神藤金属工業(株)製)で10MPaの加圧下、120℃で10分間重合した。重合体をハンマ−で約1cm角に砕いた後、1Lの磁性ポット(φ25mmの磁性ボ−ル30個、φ15mmの磁性ポット30個入り)に入れ、40rpmで45時間粉砕した。280メッシュの篩いを通過した粉体を窒素気流下、140℃で8時間減圧熱処理した後、歯科用充填組成物の複合ポリマ−の粉体(以下、「TUE−2」と云う)を得た。TUE−1の粒径は1〜150μmの粒子が100%であった。、TUE−2の粒子径は1〜130μmの粒子が100%であった。
【0074】
参考製造例
宇部日東化成(株)製ハイプレシカ(平均粒径1μmの球状シリカ)120gをエタノ−ル0.30Lに懸濁し、MPTMSを6g、精製水1.2gを添加し2時間環流させた。溶媒をエバポレ−タ−で除去した後、窒素雰囲気下で減圧下80℃で2時間熱処理して表面処理した。以下このフィラ−をHPと云う。
【0075】
実施例1
UDMA/3G=90g/10gにCQを0.1g、DMABABEを0.1g添加して光重合性モノマ−を調整した。光重合性モノマ−2.5gに、TU−1を3g、TU−2を2g、RM50を2g、ZMFを0.5gそれぞれ乳鉢で混練しながら投入し、光重合性ペ−ストを製造した。このペ−ストを上記の方法にて曲げ試験、圧縮試験した。またペ−スト性状、研磨性、透明性についても評価した。結果を表2に示す。
【0076】
実施例2
実施例1の光重合性モノマ−3.5gに、TU−1を6g、TU−2を2g、RM50を2g、ZMFを0.5gそれぞれ乳鉢で混練しながら投入し、光重合性ペ−ストを製造した。このペ−ストを上記の方法にて曲げ試験、圧縮試験した。またペ−スト性状についても評価した。またペ−スト性状、研磨性、透明性についても評価した。結果を表2に示す。
【0077】
実施例3
UDMA/2.6E/3G=80g/10g/10gにCQを0.1g、DMABABEを0.1g添加して光重合性モノマ−を調整した。光重合性モノマ−2.5gに、TUE−1を3g、TUE−2を2g、RM50を2g、ZMFを0.5gそれぞれ乳鉢で混練しながら投入し、光重合性ペ−ストを製造した。このペ−ストを上記の方法にて曲げ試験、圧縮試験した。またペ−スト性状、研磨性、透明性についても評価した。結果を表2に示す。
【0078】
実施例4
実施例2の光重合性モノマ−3.5gに、TUE−1を6g、TUE−2を2g、RM50を2g、ZMFを0.5gそれぞれ乳鉢で混練しながら投入し、光重合性ペ−ストを製造した。このペ−ストを上記の方法にて曲げ試験、圧縮試験した。またペ−スト性状、研磨性、透明性についても評価した。結果を表2に示す。
【0079】
実施例5
実施例1の光重合性モノマ−2.5gに、TU−1を3g、TUE−2を2g、RM50を2g、ZMFを0.5gそれぞれ乳鉢で混練しながら投入し、光重合性ペ−ストを製造した。このペ−ストを上記の方法にて曲げ試験、圧縮試験した。またペ−スト性状、研磨性、透明性についても評価した。結果を表2に示す。
【0080】
実施例6
実施例1の光重合性モノマ−2.5gに、TUE−1を3g、TUE−2を2g、RM50を2g、ZMFを0.5gそれぞれ乳鉢で混練しながら投入し、光重合性ペ−ストを製造した。このペ−ストを上記の方法にて曲げ試験、圧縮試験した。またペ−スト性状、研磨性、透明性についても評価した。結果を表2に示す。
更に、ブラシ磨耗試験(福田器機(株)製)用の治具にユーティリティ−ワックス(GC社製)で硬化体を水平に固定し、歯磨剤(White&White:ライオン(株)製)/蒸留水=100/60重量部で懸濁液を調整し、歯ブラシ(#411、バトラ−社製)で6cm/sの速度で2km走行させて、磨耗状態をマイクロスコ−プ(VMS−70A、スカラ社製)で観察した。磨耗痕は比較例1に比べて僅かで耐摩耗性に優れることが分かった。
【0081】
比較例1
実施例1の光重合性モノマ−2.5gに、TUE−1を5g、RM50を2g、ZMFを0.5gそれぞれ乳鉢で混練しながら投入し、光重合性ペ−ストを製造した。このペ−ストを上記の方法にて曲げ試験、圧縮試験した。またペ−スト性状、研磨性、透明性についても評価した。結果を表2に示す。また、実施例6と同法にて歯ブラシ磨耗試験を実施した結果、磨耗痕は実施例6に比べ明瞭に観察でき、耐摩耗性が劣ることが分かった。
【0082】
比較例2
実施例1の光重合性モノマ−2.5gに、TUE−2を5g、RM50を2g、ZMFを0.5gそれぞれ乳鉢で混練しながら投入し、光重合性ペ−ストを製造した。このペ−ストを上記の方法にて曲げ試験、圧縮試験した。またペ−スト性状、研磨性、透明性についても評価した。結果を表2に示す。
【0083】
比較例3
実施例1の光重合性モノマ−2.5gに、HPを7、RM50を2g、ZMFを0.5gそれぞれ乳鉢で混練しながら投入し、光重合性ペ−ストを製造した。このペ−ストを上記の方法にて曲げ試験、圧縮試験した。またペ−スト性状、研磨性、透明性についても評価した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】参考実施例1にて得られたシリカ/ジルコニア凝集粉体(ZMF)の走査電子顕微鏡像である。
【図2】ZMFの倍率の異なる走査電子顕微鏡像である。
【図3】ZMFの倍率の異なる走査電子顕微鏡像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)重合性単量体、
(b)重合開始剤、
(c)粒径2〜15μmの複合ポリマ−粉体(1)と
粒径が15μmを超え50μm以下の複合ポリマ−粉体(2)、ここで、複合ポリマー粉体(1)と(2)は、平均粒径が0.001〜1μmの第一無機酸化物粉体をポリマ−で複合したものである、
(d)平均粒径が0.001〜1μmの第一の無機酸化物粉体(3)および
(e)珪素を除く周期律表II〜IV族元素よりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素とシリカから構成され、平均粒子径が0.001μm以上1μm未満の粒子の凝集体と同じ表面構造を持つ平均粒径1〜100μmの第二の無機酸化物粉体(4)
からなることを特徴とする歯科用修復材組成物。
【請求項2】
第一の無機酸化物粉体がシリカである請求項1に記載の歯科用修復材組成物。
【請求項3】
前記複合ポリマ−(1)及び(2)に含まれる第一の無機酸化物粉体の含有率が20〜60重量%である請求項1または2に記載の歯科用修復材組成物。
【請求項4】
前記複合ポリマ−(1)及び(2)のポリマ−成分の40重量%以上が重合性基を三個以上有する少なくとも一種以上の重合性単量体から誘導されたものである請求項1〜3のいずれかに記載の歯科用修復材組成物。
【請求項5】
第二の無機酸化物粉体は、10mgについて300mlの水系分散中、出力40W、周波数39kHzの超音波強度で分散処理30分間で、0.001〜1μmの粒子径に分散されない粉体の重量が元の粉体の重量の90%以上を占める請求項1〜4のいずれかに記載の歯科用修復材組成物。
【請求項6】
(a)重合性単量体100重量部、
(b)重合開始剤0.01〜10重量部、および
(c)上記粉体(1)、(2)、(3)および(4)の合計が40〜900重量部からなる請求項1〜5のいずれかに記載の歯科用修復材組成物。
【請求項7】
前記粉体(1)、(2)、(3)および(4)の合計100重量部あたり、粉体(1)40〜60重量部、粉体(2)40〜60重量部、粉体(3)10〜40重量部および粉体(4)1〜10重量部からなる請求項1〜6のいずれかに記載の歯科用修復材組成物。
【請求項8】
(a)重合性単量体、
(b)重合開始剤、
(c)平均粒径分布曲線において、粒径が2〜15μmの範囲と、粒径が15μmを超え50μm未満の範囲に、それぞれ1つ以上の極大点を有する複合ポリマ−粉体混合物(12)、この複合ポリマー粉体混合物(12)は平均粒径が0.001〜1μmの第一の無機酸化物粉体をポリマ−で複合した複合ポリマー粉体である、
(d)平均粒径が0.001〜1μmの第一の無機酸化物粉体(3)および
(e)珪素を除く周期律表II〜IV族元素よりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素とシリカから構成され、平均粒子径が0.001μm以上1μm未満の粒子の凝集体と同じ表面構造を持つ平均粒径1〜100μmの第二の無機酸化物の凝集粉体(4)
からなる請求項1に記載の歯科用修復材組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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