説明

歯科用切削器具

【課題】歯科用切削器具を使いやすくする。
【解決手段】歯科用切削器具10は、人の手によって把持される筒状の本体10aと、この本体の先端部12bに設けられ切削対象を切削するバー14と、を含む。筒状の本体12aの人の手によって把持される把持部の周囲を、多孔質弾性体からなる多孔質グリップ22で覆うことで、握りやすくする。また、多孔質グリップ22は、連続気孔を有するため、滅菌が容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の手によって把持される筒状の本体と、この本体の先端側に設けられ切削対象を切削する切削端を含む先端部と、を有する歯科用切削器具に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用の切削器具には、各種のものがある。例えば、先端の切削工具をエアーやモータで高速回転させるハンドピースや、高周波電気メス、超音波メス、レーザメスその他、歯神経の除去や歯垢辞去のための切削器具などがあげられる。
【0003】
これら切削器具は、手術者が本体の把持部を握り、先端の切削工具を対象部分に当てて使用する。従って、その位置決めが重要である。そこで、保持部には、比較的硬い材質のものが使われてきた。
【0004】
【特許文献1】特開2005−211094号公報
【特許文献2】特開2001−2825号公報
【特許文献3】特表2001−501102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、歯科医師等が切削器具を用い手術等を行う場合、手に疲労がたまり、腱鞘炎などになりやすいという問題があった。また、特に手術用具については、滅菌処理を行う必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、人の手によって把持される筒状の本体と、この本体の先端側に設けられ切削対象を切削する切削端を含む先端部と、を有する歯科用切削器具であって、筒状の本体部の人の手によって把持される把持部の周囲を、連続気孔を有する高分子多孔質弾性体で覆うことを特徴とする。
【0007】
また、前記多孔質弾性体は、シリコンゴムを材料とすることが好適である。
【0008】
また、前記切削端は、回転されることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連続気孔を有する多孔質弾性体により把持部の周囲を覆うので、ここに適切な弾性を与えることができ、器具を握りやすくできる。また、器具において生じた振動などを吸収することができる。さらに、連続気孔であるため、気孔内部に消毒液体や、蒸気などを流通することが可能であり、確実な滅菌処理を行うことができる。そこで、手術用具などのグリップとしても好適に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1は、歯科用切削器具10の全体構成を示している。この歯科用切削器具10は、ハンドピース12と、これに差し込まれて使用される切削用の切削端を含むバー(ダイヤモンドポイント)14とから構成されている。ハンドピース12は、くの字状に曲がって、後端に従って徐々に広がった全体として円筒状の本体12aと、この本体12aの先端にその周面の一部が接続された円筒状の先端部12bとからなっている。また、ハンドピース12の本体12aの後端には、エアパイプ16の一端が接続されており、このエアパイプ16から圧縮空気が供給される。本体12a内にはエア通路18が形成されており、そのエア通路18の先端は、先端部12b内で、図における上方に向けて開口している。なお、エアパイプ16をそのまま本体12aを通過させ先端部12b内まで延長してもよいし、エア通路18をエアパイプ16とは独立して形成してもよい。
【0011】
エア通路18の吐出口に対向する位置には、羽根車20が配置されている。この羽根車20は回転可能に先端部12b内に軸支されており、エア通路18の吐出口より吐出されるエアにより高速回転される。なお、エアは、先端部12bの図における上方に排出される。
【0012】
そして、ハンドピースの先端部12bに図における下方から差し込まれるバー14は、この羽根車20と機械的に接続され、羽根車20の回転によってバー14が回転する。従って、バー14の先端を所望の位置に位置させ、バー14の先端部によってその位置の歯を切削する。すなわち、歯科治療において、切削用のバー14は、羽根車20は、圧縮空気により、20万rpm〜30万rpmの回転数で回転する。一方、バー14は、その先端(切削端)の刃部の表面に、ダイヤモンドの砥粒がコーティングされており、硬い歯を削ることができる。
【0013】
本実施形態においては、ハンドピース12の本体12aの先端部12bに近い位置(把持部)には、本体12aの周面を覆って、円筒状の多孔質グリップ22が配置されている。この多孔質グリップ22は、基本的に図2に示すような中空円筒状のもので、これを本体12aの把持部周囲を覆って装着している。
【0014】
従って、医師が患者の歯の切削を行う場合には、医師がこの多孔質グリップ22を手で握り、バー14の先端を患者の歯に当接して歯の切削を行う。上述のように、バーは数十万rpmで回転して歯を削るものであり、その反動、振動はかなり大きなものとなる。医師は十分な力で、バーを所定値に位置決めして切削を行う必要があり、十分な把持力でハンドピース12を握る必要がある。
【0015】
本実施形態においては、ハンドピース12の把持部に多孔質グリップ22が設けられている。この多孔質グリップ22は、連続気孔を有する高分子多孔質体で形成される。従って、このグリップは弾性を有し、衝撃吸収力が非常に大きい。従って、切削時における先端からの衝撃が手に伝わるのを防止でき、医師において腱鞘炎などを起こすことを効果的に防止できる。
【0016】
また、ある程度の弾力があるため、人が握った場合に、本体に把持力が伝わる範囲を大きくして、全体として本体に対する把持力を大きくすることができる。そこで、作業中における位置決めを正確にすることができる。
【0017】
また、多孔質グリップ22は、連続気孔の高分子多孔質体で形成される。連続気孔の場合、気孔中を液体等が通過することができる。そこで、多孔質グリップ22をその内部も含め全体として消毒することができる。
【0018】
さらに、多孔質グリップ22を連続気孔の高分子多孔質体をシリコンゴムで形成することが好適である。シリコンゴムは、高温でも安定であり、オートクレーブで、例えば2気圧、121°Cなどの条件による滅菌処理が行える。そこで、歯科手術などの場合にも、安全に利用することが可能となる。
【0019】
ここで、多孔質グリップ22の材料としては、株式会社朝日ラバーの商品名「サポラス」(登録商標)が好適である。例えば、次のような性状のものが多孔質グリップ22の材料として特に適している。
【表1】

【0020】
ここで、多孔質グリップ22は、本体12aの把持部を外側からきつく覆う形で形成される。本体12aを製造するときに、一体的に形成してもよいし、後からはめ込むようにしてもよい。
【0021】
後から装着する場合には、多孔質グリップ22を単独で滅菌できるため、より確実な滅菌処理を行うことができる。なお、多孔質グリップ22のみを使い捨てにしてもよいし、何度も滅菌して繰り返し使用してもよい。
【0022】
また、多孔質グリップ22の材料となる連続気孔を有する高分子多孔質材料は、気孔形成材料と骨格材料を混合して形成したものから気孔形成材料を溶解除去することで形成できる。上記例では、シリコンゴムを骨格材料として、気孔形成材料を混合した状態で成形し、これを溶剤(例えば、温水)につけて、気孔形成材料を溶解除去する。これによって、骨格材料が残り、気孔形成材料が除去された部分が連続気孔となる。この連続気孔は、液体や蒸気などが流通でき、特にオートクレーブの蒸気による滅菌によって、連続気孔表面を含めて、多孔質グリップ22の表面が確実に滅菌処理できる。なお、このような多孔質グリップ22の製造方法については、(1)特開2006−342248、(2)特開2006−257275、(3)特開2005−314594、(4)特開2004−344871、(5)特開2004−277633、(6)特開2004−166810、(7)特開2002−194131、(8) 特開2001−002825等に記載がある。また、連続気孔を有する高分子多孔質材料であれば、他の製造方法で製造してもよい。
【0023】
上記実施形態においては、多孔質グリップ22は、一定の径の肉厚のパイプ状としたが、人が握りやすいように、凹凸を形成してもよく、また軸方向に全体を縦断する切り目をいれ、この切り目を利用して多孔質グリップ22を広げて本体12bの把持部に装着してもよい。
【0024】
このように、本実施形態によれば、連続気孔を有する高分子多孔質材料により多孔質グリップ22を形成する。従って、多孔質グリップ22に適切な弾性を与えることができ、医師等による歯科用切削器具の把持がより確実に行える。また、歯科用切削器具において生じた振動などを吸収することができ、使用者の手に掛かる負担を少なくして腱鞘炎などの発生を抑制できる。さらに、連続気孔であるため、気孔内部に消毒液体や、蒸気などを流通することが可能であり、確実な滅菌処理を行うことができる。そこで、手術用具などのグリップとしても好適に利用できる。
【0025】
また、ハンドピース12の把持部は、基本的に円筒形で、1種類の多孔質グリップ22を製作すれば、適用が可能と考えられるが、ハンドピース12に応じて適切な形状の多孔質グリップ22を製作してもよい。また、多孔質グリップ22を長い形状として製作し、はさみやナイフで適宜長さに切って使用することも好適である。この場合、多孔質グリップ22を押し出し成形で、長いパイプ状として作製することが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】歯科用切削具の全体構成を示す図である。
【図2】多孔質グリップの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
10 歯科用切削器具、12 ハンドピース、12a 本体、12b 先端部、14 バー、16 エアパイプ、18 エア通路、20 羽根車、22 多孔質グリップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の手によって把持される筒状の本体と、この本体の先端側に設けられ切削対象を切削する切削端を含む先端部と、を有する歯科用切削器具であって、
筒状の本体部の人の手によって把持される把持部の周囲を、連続気孔を有する高分子多孔質弾性体で覆うことを特徴とする歯科用切削器具。
【請求項2】
請求項1に記載の歯科用切削器具において、
前記多孔質弾性体は、シリコンゴムを材料とすることを特徴とする歯科用切削器具。
【請求項3】
請求項1または2記載の歯科用切削器具において、
前記切削端は、回転されることを特徴とする歯科用切削器具。

【図1】
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【図2】
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