説明

歯科用根管密封組成物

重合開始剤の不存在下で硬化可能であり、かつ23℃における粘度が100Pas未満である歯科用根管密封組成物であって、(i)アミノ終端プレポリマーであって、(a)次式(I)(式中、Xは窒素原子または酸素原子を表し;Zは1〜6個の酸素原子を含んでいてもよく、かつ1個以上のC1〜4アルキル基で置換されていてもよいn価の飽和脂肪族または脂環式のC2〜16炭化水素基を表し;かつnは2〜6の整数を表す)の化合物1モルと、(b)次式(II)(式中、RはC1〜4アルキル基、C1〜4アルコキシ基、フェニル基、およびヒドロキシル基から選ばれた1個以上(6個以下)の基で置換されていてもよいC1〜6アルキルまたはC3〜4シクロアルキル基を表す)の化合物、または式(11)の化合物と1種以上のジアミン化合物もしくはポリアミン化合物との組合せのいずれかである1種以上の化合物少なくともnモルとを反応させて得られるアミノ終端プレポリマー;(ii)該アミノ終端プレポリマー(i)と重付加を行うことができる二官能性もしくは多官能性アクリレート化合物または二官能性もしくは多官能性マレイミド化合物;および(iii)少なくとも3mm/mmAIの最小X線不透過性を与えるフィラー40〜85重量%を含み、該組成物が、その第1成分がアミノ終端プレポリマー(i)および場合によってはフィラー(iii)を含み、その第2成分がアミノ終端プレポリマー(i)と重付加を行うことが可能な(ii)および場合によってはフィラー(iii)を含む2成分組成物の形態で存在する歯科用根管密封組成物。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合触媒の不存在下で付加重合によって硬化できる歯科用根管密封組成物に関する。本発明の歯科用根管密封組成物は2成分組成物の形態で提供される。
【背景技術】
【0002】
歯科用根管密封組成物は針管を通して根管に注入されることが多い。針管の寸法は小さいので組成物の粘度は低いことが要求される。あるいは、歯科用根管密封組成物はレンチュロス(lentulos)またはグッタペルカのチップを使用して注入する。したがって、薄いフィルムが形成できるように粘度は低くなければならない。注入技術の如何によらず、これら物質の粘度は該組成物が根管中の象牙質の管に入り込むことができるように十分低くなければならない。
【0003】
歯科用根管密封組成物の注入はX線操作を用いてチェックする。X線不透過性が必要なので、この組成物は相当量のX線不透過性フィラーを含んでいる必要がある。
【0004】
歯科用根管密封組成物は、応用例として2成分ペースト/ペースト系を開示するWO02/13767によって知られている。この2成分ペースト/ペースト系は等モル量の低分子量ジアミンと低分子量ジアクリレートとの、場合によっては組成物の粘度を調整するための反応性希釈剤存在下での付加重合に基づいている。
【特許文献1】WO02/13767
【非特許文献1】J.Klee,H.−H.Horhold,J.Raddatz;Acta Polymerica,41(1990)557−560;”Telechele Prepolymere aus DGEBA und disekundaren Diaminen.Unvernetzte Epoxid−Amin−Additionspolymere,29.”
【非特許文献2】J.E.Klee;Acta Polym.45(1994)73−82;”Telechelic prepolymers and macromonomers by step growth processes”(39)
【非特許文献3】J.E.Klee,R.−E.Grutzner,H.−H.Horhold;Macromol.Chem.Phys.197(1996)2305−2323;Linear aryalamine/Bis−2,2−[4−(2,3−epoxypropoxy)−phenyl]−propane addition polymers−Synthesis and properteis,Uncrosslinked epoxide−amine addition polymers,44.”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、歯科用根管密封組成物中に低分子量アミンが存在すると深刻な問題が生じる。かかるアミンが根管から浸出することによって、細胞毒性作用が観察されることが多い。さらにはWO02/13767の硬化組成物はかなり高い溶解度を示すため細胞毒性の問題は悪化し、さらに使用上の問題が出てくる。さらには、低分子量アミンは蒸気圧が高く、プラスチック包装を貫通する速度が速いので、WO02/13767の組成物の工業的利用には多くの問題がある。
【0006】
WO02/13767号に具体的に開示されているポリアミノエステルは高粘度であり、粘度を下げるために相当量の反応性希釈剤を使用する必要がある。しかし、反応性希釈剤は付加重合によって重合することができず、重合開始剤を存在させる必要がある。
【0007】
WO02/13767号は重付加を行うことのできる二官能性および多官能性のアクリレート化合物ならびに二官能性および多官能性マレイミド化合物は開示していない。
【0008】
本発明は、低粘度で、細胞毒性が低く、溶解度が低いが、低収縮性や柔軟性といった優れた機械的特性を有し、生産および使用中に取り扱い上の問題を生じない歯科用根管密封組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題は特許請求の範囲に記載される本発明によって解決される。本発明は、重合開始剤の不存在下で硬化可能な歯科用根管密封組成物であって、
(i)アミノ終端プレポリマーであって、
(a)次式(I):
【化6】

(式中、Xは窒素原子または酸素原子を表し;Zは1〜6個の酸素原子を含んでいてもよく、かつ1〜6個のC1〜4アルキル基で置換されていてもよいn価の飽和脂肪族C2〜16炭化水素基または2価の飽和脂環式C3〜6炭化水素基を表し;さらにnは2〜6の整数を表す)の化合物1モルと、
(b)次式(II):
【化7】

(式中、RはC1〜4アルキル基、C1〜4アルコキシ基、フェニル基、およびヒドロキシル基から選ばれた1個以上(6個以下)の基で置換されていてもよいC1〜6アルキルまたはC3〜14シクロアルキル基を表す)の化合物、または式(II)の化合物と1種以上のジアミンもしくはポリアミン化合物との組合せのいずれかである1種以上の化合物少なくともnモルとを反応させて得ることができる、23℃における粘度が100Pas未満であるアミノ終端プレポリマー;
(ii)該アミノ終端プレポリマー(i)と重付加することができる二官能性もしくは多官能性アクリレート化合物または二官能性もしくは多官能性マレイミド化合物;および
(iii)少なくとも3mm/mmAlの最小X線不透過性を与えるフィラー40〜85重量%を含んでおり、
がい組成物が、第1成分がアミノ終端プレポリマー(i)および場合によってはフィラー(iii)を含み、第2成分がアミノ終端プレポリマー(i)と重付加を行うことの可能な化合物(ii)および場合によってはフィラー(iii)を含む2成分組成物の形態を有することを特徴とする歯科用根管密封組成物を提供するものである。
【0010】
前記式中、Xは窒素原子もしくは酸素原子を表す。式中、Zはn価の飽和脂肪族C2〜16炭化水素基または2価の飽和脂環式C3〜6炭化水素基であり、それらの基は2〜16個の炭素原子、好ましくは4〜10個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキレン基、または3〜6個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有するシクロアルキレン基に基づくものであってよい。Zは2価(n=2)、3価(n=3)、4価(n=4)、5価(n=5)または6価(n=6)であることができる。好ましいZは2価または3価である。前記炭化水素基は1つ以上のC1〜4アルキル基で置換されていてもよい。かかるアルキル基の具体例はメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチルまたはtert−ブチルである。前記炭化水素基はn個のアクリレート置換基を結びつける炭素鎖中または側鎖中に1〜6個の酸素原子を含んでいてもよい。前記脂肪族または脂環式C2〜16炭化水素基はエーテル結合が存在し、かつ大型の基が存在しないことによって高度にしなやかであることが好ましい。好ましい実施形態においては、Zはエーテル結合を含んでいてもよい直鎖状のアルキル基をベースとする2価の基である。具体的には、ZはC2〜6アルキレン基であることができる。
【0011】
式(II)において、RはC1〜6アルキルまたはC3〜14シクロアルキル基を表す。C1〜6アルキル基の例としては1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシルが含まれる。C3〜14シクロアルキル基の例としては、3〜14個の炭素原子を有するもの、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが含まれる。前記C1〜6アルキル基および前記C3〜14シクロアルキル基はC1〜4アルキル基、C1〜4アルコキシ基、フェニル基およびヒドロキシル基から選ばれた1個以上(6個以下)の基で所望により置換されていてもよい。C1〜4アルキル基の例としては、1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルを含むことができる。C1〜4アルコキシ基の例としては1〜4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝鎖アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、およびtert−ブトキシを含めることができる。
【0012】
前記プレポリマーの調製においては、式(II)の化合物は、場合によっては1種以上のジアミン化合物もしくはポリアミン化合物と組み合わせて使用することができる。前記ジアミン化合物もしくはポリアミン化合物は、プレポリマーを調製する反応に使用する式(II)の化合物のn/1.5モル以下、好ましくはn/20〜n/2モルに置き換えて使用することができる。ここでnは前記の定義による。式(II)のアミンと組み合わせて使用する前記成分の量はプレポリマーの粘度が100Pasを超えないよう、好ましくは80Pas以下、さらに好ましくは20Pas以下となるように選択しなければならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
好ましい実施形態においては、前記歯科用根管密封組成物は、次式(III):
【化8】

(式中、Xは酸素原子または窒素原子を表し;Zは、1〜6個の酸素原子を含んでいてもよく、かつ1〜6個のC1〜4アルキル基で置換されていてもよい、n価の飽和脂肪族C2〜16炭化水素基または2価の飽和脂環式C3〜6炭化水素基を表し;RはC1〜4アルキル基、C1〜4アルコキシ基、フェニル基、またはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1〜6アルキルまたはC3〜14シクロアルキル基を表し;xは1〜8の整数を表す)のプレポリマー;
(ii)前記のアミノ終端プレポリマー(i)と重付加することができる二官能性もしくは多官能性アクリレート化合物または二官能性もしくは多官能性マレイミド化合物;および
(iii)少なくとも3mm/mmAlの最小X線不透過性を与えるフィラー40〜85重量%を含んでいる。
【0014】
この歯科用根管密封組成物は2成分組成物の形態を有しており、その第1成分は前記アミノ終端プレポリマー(i)および場合によってはフィラー(iii)を含んでおり、第2成分はアミノ終端プレポリマー(i)と重付加することができる化合物(ii)および場合によってはフィラー(iii)を含んでいる。両成分の少なくとも1方はフィラーを含んでいる。
【0015】
本発明の歯科用根管密封組成物は、その硬化組成物に少なくとも3mm/mmAlの最小X線不透過性を与えるためにフィラー40〜85重量%を含んでいる。このフィラーはLa、ZrO、BiPO、CaWO、BaWO、SrF、Biを含む。本発明の硬化組成物のX線不透過性は少なくとも3mm/mmAlであり、好ましくは少なくとも5〜7mm/mmAlであり、最も好ましくは少なくとも7mm/mmAlである。
【0016】
本発明の歯科用根管密封組成物は、本発明のプレポリマーの粘度より低い粘度を有する希釈剤、特に反応性希釈剤を含まないことが好ましい。さらに、この歯科用根管密封組成物は、重合開始剤を含む必要がない。好ましい実施形態においては、この歯科用根管密封組成物は実質的に(i)〜(iii)の成分で構成されている。実質的に(i)〜(iii)の各成分で構成される歯科用根管密封組成物は、着色剤、抗生物質剤、イオン放出剤などの歯科の分野で使用されている一般的な添加剤を、全量で組成物の25重量%以下、好ましくは10重量%以下含んでいてもよい。
【0017】
本発明の歯科用根管密封組成物の好ましい実施形態は、フィラー40〜85重量%とアミノ終端プレポリマーおよびアミノ終端プレポリマーと重付加することができる化合物15〜60重量%とを含む。本発明で使用するアミノ終端プレポリマーは通常オリゴマーの混合物である。したがって、アミノ終端プレポリマーおよびアミノ終端プレポリマーと重付加することができる化合物の量は、オリゴマー混合物に基づいて計算する。
【0018】
本発明の歯科用根管密封組成物は使用前に混合する2成分組成物である。この2成分組成物は粉末/液体系、粉末/ペースト系、ペースト/ペースト系あるいは液体/ペースト系が好ましい。ペースト/ペースト系または液体/ペースト系は、両成分がスタティックミキサーで混合されるアプリケーターによって適用してもよい。
【0019】
本発明は、特定のジアミンの特定のジアクリレートまたはオリゴアクリレート化合物へのマイケル付加によって、低粘度のプレポリマーを、低分子量アミンの存在に伴う諸問題を排除しつつ提供することができるという認識に基づいている。驚くべきことに、ジアミンとアクリレートとのマイケル付加の反応動力学は、アミンの他の付加反応の反応動力学とは異なり、反応生成物は架橋したり、高分子量の高粘性物質になったりせず、低粘度での非架橋のプレポリマーとなる。第1級アミンと第2級アミンのアクリレート化合物に対する反応速度の差が本発明の組成物が得られる可能性の基礎であると考えられる。本発明における第1級アミンの特異な反応動力学によって、本発明のプレポリマー中あるいは歯科用根管密封組成物中の残存第1級アミン含有量は、第1級アミンおよび第2級アミンに対して同じ反応性を示す官能性末端基を用いる以下のような系に比べて実質的に減少している。J.Klee,H.−H.Horhold,J.Raddatz;Acta Polymerica,41(1990)557−560;”Telechele Prepolymere aus DGEBA and disekundaren Diaminen.Unvernetzte Epoxid−Amin−Additionspolymere,29.”;J.E.Klee;Acta Polym.45(1994)73−82;”Telechelic prepolymers and macromonomers by step growth processes”(39);J.E.Klee,R.−E.Grutzner,H.−H.Horhold;Macromol.Chem.Phys.197(1996)2305−2323;Linear aryalamine/Bis−2,2−[4−(2,3−epoxypropoxy)−phenyl]−propane addition polymers−synthesis and properteis,Uncrosslinked epoxide−amine addition polymers,44.”第1級アミンは第2級アミンに比べ、特に二官能性もしくは多官能性アクリレートもしくはアクリルアミド、またはビスマレイミドもしくはポリマレイミドとの反応において、はるかに速く反応する。
【0020】
本発明の歯科用根管密封組成物中に含まれるプレポリマーは23℃における粘度が100Pas未満である。プレポリマーの粘度は1〜80Pasの範囲が好ましく、1〜20Pasの範囲がより好ましい。粘度が高すぎると、針管を通して組成物を適用するのが困難となる。粘度が低すぎると、組成物の取扱いが困難となる。
【0021】
本発明の歯科用根管密封組成物は、重合開始剤が存在しなくても硬化することができる。硬化メカニズムは、前記アミノ終端プレポリマー(i)と、前記のアミノ終端プレポリマー(i)と重付加することができる化合物との付加反応に基づいている。このアミノ終端プレポリマー(i)と重付加することができる化合物は二官能性もしくは多官能性アシレート、または二官能性もしくは多官能性マレイミドである。二官能性もしくは多官能性アクリレートおよび二官能性もしくは多官能性マレイミドは第1級および第2級アミノ基との反応における選択性という観点から好ましい。アミノ終端プレポリマー(i)と重付加することができる化合物は、式(I)(式中XおよびZは上に定義したものであり、nは2〜6の整数を表す)で定義される化合物と同一でも異なっていてもよい。
【0022】
上記の特定のアミノ終端プレポリマーを使用すると、低分子量アミンに伴う諸問題を解決あるいは少なくとも大いに低減することができる。さらに、驚くべきことに上記の特定のプレポリマーを使用すると、低粘度の歯科用根管密封組成物を提供することができる。この目的のためにはプレポリマー中の硬い部位は避けることが必要である。
【0023】
本発明の組成物は、従来技術を使用して根管に適用することができる。具体的には、本発明の組成物は注射器の管を経て根管中に注入することができる。さらに、本発明の組成物は、予め作製する根管コーンの生産に使用することもできる。もし、本発明の組成物で作製したコーンを本発明の歯科用根管密封組成物と組み合わせて使用すると、コーンと密封組成物との適合性が保証され、そのためしっかりした密封が得られる。本発明による組成物で得られる硬化生成物は機械的性質、特に柔軟性という点で優れており、根管密封組成物としての応用に不可欠である。
【0024】
ここで、アミノ終端プレポリマーの調製の一般的方法を説明する。アミノ終端プレポリマーは、
(a)次式(I):
【化9】

(式中、XおよびZは上に定義したものであり、nは2〜4の整数を表す)の化合物1モルと、
(b)次式(II):
【化10】

(式中Rは上で定義したものである)の化合物、または式(II)の化合物とジアミンもしくはポリアミン化合物の1種以上との組合せのいずれかである1種以上の化合物少なくともnモルとを反応させることによって得ることができる。
【0025】
この反応は溶媒の存在下でも、適当な溶媒の存在下でも行うことができる。反応温度は10℃〜150℃の範囲が好ましく、20℃〜80℃の範囲がさらに好ましい。反応時間は温度および反応系の反応性に依存し、通常、数時間から数日の範囲である。反応の停止は、IRスペクトルなどの従来法でチェックすることができ、この場合アクリル炭素−炭素二重結合がすべて消失すると反応の終了に達する。反応を溶媒の不存在下で行う場合、化合物(I)と(II)との反応によって得られるプレポリマーは反応混合物の更なるワークアップなしで使用することができる。プレポリマーの調製において、式(II)の化合物は1種以上のジアミンもしくはポリアミン化合物と組み合わせて使用してもよい。かかるジアミンまたはポリアミン化合物はプレポリマー調製反応に使用する式(II)の化合物のn/10〜n/2モルと置き換えて使用することができる。
【0026】
ここで実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。動粘度はBohlin CS50レオメータを使用して23℃において測定した。
【実施例】
【0027】
〔実施例1〕
スターラーおよびコンデンサーを備えた250m1のフラスコ中でベンジルアミン29.982g(279.79ミリモル)およびブタンジオールジアクリレート27.730g(139.89ミリモル)を均一に混合し、室温で3日間攪拌した。その後IRスペクトルにおいて1609および809cm−1に二重結合は見出されなかった。
収量:57.71g(理論値の100%)、h23℃=0.627±0.011Pa
2432;412.53
IR:3027、2954、2837(CH/CH)、1726(CO)、1453、1403、1353、1170(CH/CH)cm−1
13C−NMR(CDCl):171.9(8)、139.6(2)、128.2〜126.5(3−5)、63.4(9)、53.2(1)、44.0(6)、42.7(7)、24.8(10)、ppm
【化11】

FAB−MS m/z=413,718,1022,1327,1633
HPLC分析、ベンジルアミン含有率:7.17%(理論値19.68%)
GC分析、ベンジルアミン含有率:6.36%(理論値19.68%)
【0028】
〔実施例2〜4〕
実施例1と同様にベンジルアミンBAおよびブタンジオールジアクリレートBDODAを反応させた。GCおよび粘度を使用して計算、測定した使用モノマー量、モル比、計算分子量および残存ベンジルアミンを表1にまとめた。
【表1】

【0029】
[実施例5]
スターラーおよびコンデンサーを備えた250mlフラスコ中で、1−アミノアダマンタン29.849g(197.35ミリモル)およびブタンジオールジアクリレート19.559g(98.67ミリモル)を均一に混合し、室温で5日間攪拌した。その後、IRスペクトルにおいて1609および809cmに二重結合は見出されなかった。
収量:49.408g(理論値の100%)、η23℃=0.835±0.020Pa
3048;500.72
IR:3303(OH)、2958、2924(CH/CH)、1725、1720(CO)、1458、1408、1355、1170(CH/CH)cm−1
13C−NMR:173.1(7)、64.5/62.0/61.3(8)、51.7/50.8(5)、46.2(1)、42.7(2)、36.8/36.4/36.1(4)、35.6/35.5(6)、29.7/29.3(9)、25.4(3)ppm
FAB−MS m/z=500
GC分析,1−アミノアダマンタン含有率:3,23%(理論値18.10%).
【化12】

【0030】
[実施例6]
スターラーおよびコンデンサーを備えた250mlのフラスコ中でエタノールアミン17.079g(279.62ミリモル)およびブタンジオールジアクリレート27.713g(139.81ミリモル)を均一に混合し、室温で5日間攪拌した。その後、IRスペクトルにおいて1609および809cm−1に二重結合は見出されなかった。
収量:44.79g(理論値の100%)、h23℃=6.257±0.180Pa
1428;320.39
IR:3303(OH)、2958、2924(CH/CH)、1725、1720(CO)、1458、1408、1355、1170(CH/CH)cm−1
13C−NMR:173.4/172:9(5)、64.7/64.2(6)、62.3/61.7/60.8(2)、51.3(1)、44.9(3)、34.6(4)、29.9 29.3/25.1/25.3(7)ppm
【化13】

FAB−MS m/z=321,579,839,1097
GC分析、エタノールアミン含有率:0.05%(理論値21.66%).
【0031】
[実施例7]
スターラーおよびコンデンサーを備えた250mlのフラスコ中でベンジルアミン22.857g(213.30ミリモル)およびトリメチロールプロパントリアクリレート21.067g(71.10ミリモル)を均一に混合し、室温で3日間攪拌した。その後、IRスペクトルにおいて1609および809cm−1に二重結合は見出されなかった。
収率:43.924g(理論値の100%),η23℃=1.142±0.018Pa
3647;617.79
GC分析,ベンジルアミン含有率:7.19%
【0032】
[実施例8]
ベンジルアミン25.000g(233.30ミリモル)および1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル23.592g(116.65ミリモル)を加熱しながら均一に混合し、50℃で24時間重合した。
収量:48.592(理論値の100%)
23℃=2.377±0.041Pa
2436;416.56
IR:3028、2863、2860(CH/CH)、1451、1105、738(CH/CH)cm−1
13C−NMR:137.2(4)、128.3(2)、128.1(3)、126.8(1)、75.2(8)、71.5(7)、70.5(9)、57.8(5)、55.5(6)、27.3(10)ppm(計算値)
【化14】

調製したプレポリマー2.784g(6.683ミリモル)をエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(SR−601,Sartomer)3.422g(6.683.ミリモル)と均一に混合し、37℃で反応させた。
【0033】
[実施例9]
ビス−2,2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−フェニル]−プロパン10.000g(29.375ミリモル)およびベンジルアミン6.296g(58.751ミリモル)を加熱しながら均一に混合し、100℃で20時間重合した。
収率:16.296(理論の100%)
3542:554.73M(vpo)620g/mol,T11℃
【0034】
[実施例10]
ビス−2,2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−フェニル]−プロパン10.000g(29.375ミリモル)およびベンジルアミン4.722g(44.063ミリモル)を加熱しながら均一に混合し、100℃で20時間重合した。
収量:14.722(理論値の100%)
6375:1002.30g/モル M(vpo)1100g/モル,T30℃
【0035】
〔応用例1〕
実施例7に従ってベンジルアミンとトリメチロールプロパントリアクリレートとの付加反応によって調製したアミノ終端プレポリマー1.198gとシクロヘキサンジメタノールジアクリレート16.439%、タングステン酸カルシウム66.849%および酸化ジルコニウム16.712%で構成される粉末3.133gを均一に混合し、37℃で17時間重合した。ISO6876によるX線不透過性は10.6mm/mmAlである。
【0036】
〔応用例2〕
実施例7に従ってベンジルアミンとトリメチロールプロパントリアクリレートとの付加反応によって調製したアミノ終端プレポリマー1.267g(2.16ミリモル)とシクロヘキサンジメタノールジアクリレート20.00%と酸化ビスマス80.00%とで構成される粉末3.313g(2.16ミリモル)を均一に混合し、37℃で10時間重合した。
ISO6876によるX線不透過性は8.1mm/mmAlである。
【0037】
〔応用例3〕
アクリレートペースト:エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(SR−601,Sartomer)5.000g(9.77ミリモル)、タングステン酸カルシウム9.917g、酸化ジルコニウム2.479g、エアロジル(arosil)A200 0.050g、および酸化鉄(III)0.025gを均一に混合した。
プレポリマーペースト:実施例6によるアミノ終端プレポリマー4.830g(9.77ミリモル)、タングステン酸カルシウム9.500g、酸化ジルコニウム2.375g、およびエアロジルA200の0.536gを均一に混合した。
使用する直前に、アクリレートペースト1.00gおよびアミノ−プレポリマーペースト0.987gを均一に混合し、37℃で3時間重合した。
【0038】
〔比較例〕
スターラーおよびコンデンサーを備えた250mlのフラスコ中で3,(4),8,(9)−ビス(アミノメチル)トリシクロ−5.2.1.02,6デカン25.000g(128.70ミリモル)、ブタンジオールジアクリレート12.755g(64.35ミリモル)を均一に混合し、20〜25℃で3日間攪拌した。その後、IRスペクトルにおいて1609および809cm−1に二重結合が見いだされなかった。収量:37.764g(理論値の100%),η23℃=7157±100Pas(室温で1ヶ月貯蔵後)
調製したプレポリマー2.127g(3.624ミリモル)をトリメチロールプロパントリアクリレート0.716g(2.416ミリモル)と均一に混合し、37℃で反応させた。混合物は37℃において30分のゲルタイムを有している。このプレポリマーは根管密封組成物として応用するのに適していない粘度を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合開始剤の不存在下で硬化可能であり、かつ23℃における粘度が100Pas未満である歯科用根管密封組成物であって、
(i)アミノ終端プレポリマーであって、
(a)次式(I):
【化1】

(式中、Xは窒素原子または酸素原子を表し;Zは1〜6個の酸素原子を含んでいてもよく、かつ1個以上のC1〜4アルキル基で置換されていてもよいn価の飽和脂肪族または脂環式C2〜16炭化水素基を表し;さらにnは2〜6の整数を表す)の化合物1モルと、
(b)次式(II):
【化2】

(式中、RはC1〜4アルキル基、C1〜4アルコキシ基、フェニル基、およびヒドロキシル基から選ばれた1個以上(6個以下)の基で置換されていてもよいC1〜6アルキルまたはC3〜14シクロアルキル基を表す)の化合物、または式(II)の化合物と1種以上のジアミンもしくはポリアミン化合物との組合せのいずれかである1種以上の化合物少なくともnモルとを反応させることによって得られるアミノ終端プレポリマー;
(ii)該アミノ終端プレポリマー(i)と重付加することができる二官能性もしくは多官能性アクリレート化合物または二官能性もしくは多官能性マレイミド化合物;および
(iii)少なくとも3mm/mmAlの最小X線不透過性を与えるフィラー40〜85重量%を含んでおり、
該組成物が、第1成分として該アミノ終端プレポリマー(i)および場合によってはフィラー(iii)を含み、第2成分として該アミノ終端プレポリマー(i)と重付加を行うことの可能な化合物(ii)および場合によってはフィラー(iii)を含む2成分組成物の形態を有することを特徴とする歯科用根管密封組成物。
【請求項2】
次式(III):
【化3】

(式中、Xは酸素原子もしくは窒素原子を表し;Zは1〜6個の酸素原子を含んでいてもよく、かつ1〜6個のC1〜4アルキル基で置換されていてもよいn価の飽和脂肪族C2〜16炭化水素基または2価の飽和脂環式C3〜6炭化水素基を表し;RはC1〜4アルキル基、フェニル基、またはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1〜4アルキルまたはC3〜14シクロアルキル基を表し;さらにxは1〜8の整数を表す)のプレポリマー;
(ii)該アミノ終端プレポリマー(i)と重付加することができる二官能性もしくは多官能性アクリレート化合物または二官能性もしくは多官能性マレイミド化合物;および
(iii)少なくとも3mm/mmAlの最小X線不透過性を与えるフィラー40〜85重量%を含む請求項1に記載の歯科用根管密封組成物。
【請求項3】
Zが1〜6個のC1〜4アルキル基で置換されていてもよい2価の飽和脂肪族C2〜10炭化水素鎖を表す請求項1また2に記載の歯科用根管密封組成物。
【請求項4】
ZがC2〜6アルキレン基を表す請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯科用根管密封組成物。
【請求項5】
Xが酸素原子を表す請求項1〜4のいずれか一項に記載の歯科用根管密封組成物。
【請求項6】
Xが窒素原子を表す請求項1〜5のいずれか一項に記載の歯科用根管密封組成物。
【請求項7】
Rがフェニル基、ヒドロキシル基、またはアミノ基で置換されていてもよいC1〜4アルキル基から選ばれた基である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の歯科用根管密封組成物。
【請求項8】
前記のアミノ終端プレポリマー(i)と重付加することができる化合物が、二官能性もしくは多官能性アクリレート、二官能性もしくは多官能性エポキシド、二官能性もしくは多官能性イソシアナート、二官能性もしくは多官能性イソチオシアナート、二官能性もしくは多官能性アシルアミド、または二官能性もしくは多官能性マレイミドである請求項1〜7のいずれか一項に記載の歯科用根管密封組成物。
【請求項9】
前記フィラーがLa、ZrO、BiPO、CaWO、BaWO、SrF、Biを含んでいる請求項1〜8のいずれか一項に記載の歯科用根管密封組成物。
【請求項10】
前記2成分組成物が粉末/液体系またはペースト/ペースト系である請求項1〜9のいずれか一項に記載の歯科用根管密封組成物。
【請求項11】
前記アミノ終端プレポリマーが、
(i)次式(IV):
【化4】

(式中、XおよびZは請求項2で定義したものである)の化合物1モルと、
(ii)次式(II):
【化5】

(式中、Aは請求項2で定義したものであり;RはC1〜4アルキル基、フェニル基、もしくはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1〜4アルキルまたはC3〜14シクロアルキル基を表す)の化合物の1種以上少なくとも2モルとを反応させて得られるものである請求項1〜10のいずれか一項に記載の歯科用根管密封組成物。

【公表番号】特表2007−500681(P2007−500681A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521549(P2006−521549)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008599
【国際公開番号】WO2005/013922
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(502289695)デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー. (28)
【Fターム(参考)】