説明

歯科用組成物及び色安定アミン電子供与体を有する開始剤系

本発明は、組成物の重合を開始させるための開始系中に、色安定アミン電子供与体を含有する硬化性歯科用組成物(例えば、重合性歯科修復材、接着剤など)を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、重合性モノマーを硬化させるための開始剤系に関する。より具体的には、本発明は、可視光線に露光することで活性化される色安定アミン電子供与体を含む光開始剤系を含有する重合性歯科用組成物に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本発明は、参考として本明細書に組み込まれている米国仮出願シリアル番号第60/984470号(2007年11月1日出願)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
歯の修復は通常、化学的に硬化可能な又は光硬化可能な(メタ)アクリレート系のフリーラジカル重合性樹脂の使用を伴う。化学的硬化は、通常、過酸化物酸化剤を有するレドックス系及び重合を開始させるラジカルを生成するアミン還元剤によって行われる。光硬化は、通常、光(400〜1000nm)に晒された際にラジカルを生成する光開始剤系によって行われる。光開始剤系はまた、カチオン硬化歯科用組成物、例えばカチオン開環重合硬化機構を介して硬化するエポキシ系樹脂と併せて使用されてきた。例えば、ヨードニウム塩、可視光吸収体(例えば、CPQ)、及び電子供与体(例えば、多環式芳香族)を含む三元光開始剤系が、ラジカル硬化(メタ)アクリレート樹脂及びカチオン硬化エポキシ樹脂の両者を硬化するために利用されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの(メタ)アクリレート系複合歯科用修復材は、光開始剤系中の電子供与体としてエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート(EDMAB)を使用する。EDMABは良好な硬化特性を提供するが、EDMABを使用した歯科用複合組成物は通常、ベンゾトリアゾール誘導体(例えば、チヌビンP)などの紫外線安定剤を追加して、適切な色安定性を得る必要がある。色安定性は、歯科用修復用組成物にとって重要な性質であるが、これはそれが当該組成物によりなされる修復の長期審美性に対して影響を与え得るからである。歯科用光開始剤系中で使用される、EDMABなどの多くのアミン電子供与体は、修復材(restorative)の硬化後に生じる光酸化プロセスの結果としての発色の影響を受けやすい。紫外線安定剤を組成物へ添加することで、この発色を防止する効果がある。残念ながら、紫外線安定剤は修復材の蛍光を低下させることがある。天然歯は、紫外線に照射した場合に蛍光を発するために、天然の歯の蛍光を欠く修復材が、例えば、紫外線安定剤の存在ゆえにより目立つようになるために、紫外線又は「ブラックライト」条件下で見た場合、審美的により劣ることになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、開始剤系内の電子供与体として色安定アミンを含有する重合性歯科用組成物に関する。一実施形態では、組成物は、(a)エチレン系不飽和化合物(例えば、(メタ)アクリレート)などの重合性構成成分、及び(b)以下の式Iを有する少なくとも1種の電子供与体を含む開始剤系を含む。
【化1】


上記式Iにおいて、
Nは窒素であり、
R1は、1〜16個の炭素原子を有するアルキル基、又はCHCHX2であり、
R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9は、水素(H)又は1〜4個の炭素(C)原子を有するアルキル基から独立して選択されるが、ここで上記式I中の窒素のα位にある炭素原子の少なくとも1つが、少なくとも1つの水素原子に結合している。
【0006】
X1は、COR10、C(O)R11、C(O)R10、及びCONR10R11から選択され、X2は、CN、COR10、C(O)R11、及びC(O)R10から選択され、ここで、各R10及びR11は、H、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、及びアラルキル基から独立して選択される。典型的には、X2はCOHではない。R1及び/又はR4が−CH−アルキルである場合、アルキル成分は通常は低級アルキル、即ちC〜Cアルキルである。
【0007】
式Iの電子供与体は、歯科用組成物中にて一般に使用されているEDMABなどのその他のアミン電子供与体と比較して優れた色安定性を有する。それらは、例えば、歯の色をした歯科用修復用組成物での使用に対して特に良好に適合するが、ここでは、組成物の硬化後に不所望の発色を避けて、最終修復で、歯の回りの色にマッチする、天然の歯のような外観をできる限り長期間保持することが一般的に望ましい。加えて、色安定電子供与体の使用により、組成物中の紫外線安定剤に対する必要性を減らしたり、あるいは排除したりし得る。色安定性を付与するために、場合によって歯科用組成物に添加される紫外線安定剤は、組成物の蛍光を妨害することがあるため、紫外線安定剤の量を減らして、蛍光の見栄えをより良くすることができ、それにより審美性がより高まる。
【0008】
上記式Iに当てはまる好適な電子供与体としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【化2】


式中、Rは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である。
色安定アミンに加えて、光開始剤系は、可視光増感剤、例えばカンファーキノンを更に含んでよい。通常は、光重合性組成物はヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートを更に含んでもよい。光開始剤系は、1種以上の追加の電子供与体を更に含んでもよい。色安定アミンと組み合わせてもよい好適な追加の電子供与体としては、例えば、アントラセン誘導体、ビフェニレン誘導体、又はこれらの組み合わせなどの多環式芳香族化合物が挙げられる。
【0009】
本発明の歯科用組成物としては更に、所望により充填剤系が挙げられる。幾つかの実施形態においては、充填剤系は、ナノシリカ、ナノジルコニア、ジルコニア−シリカ・ナノクラスター、その他の金属酸化物又は微粒子ガラス及びこれらの組み合わせから選択される1種以上のシラン処理ナノフィラーを含む。
【0010】
本発明の歯科用組成物は、歯科修復、歯科用接着剤、歯科用セメント、窩洞ライナー、歯列矯正用接着剤、歯科用シーラント、歯科用コーティング、などを含む種々の歯科用及び歯列矯正用用途において有益である。これらの組成物を使用し、硬化することによって、例えば、歯牙充填材、歯科用ミルブランク、歯冠、義歯、歯列矯正用デバイスなどを形成するための歯科用物品を作製してよい。
【0011】
上記の要約は、本発明の各実施形態又はあらゆる実施を記載するものではない。本発明の他の実施形態、特徴、及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」及び「特許請求の範囲」から明らかになるであろう。
【0012】
定義
用語「電子供与体」とは、一般に、電子を供与可能な置換基を有する化合物を意味する。好適な実施例としては、一級アミノ、二級アミノ、三級アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
「色安定」とは、硬化済材料のディスク(1mm厚、直径30mm)が、本明細書に記載される「色試験方法」を使用して定義及び測定した場合に、3単位以下のΔEを有することを意味する。
【0014】
本明細書で使用するとき、「紫外線安定剤を本質的に含まない」とは、組成物の蛍光が天然の歯の蛍光のそれよりも小さくならないようにしつつ、組成物中に存在する紫外線安定剤の量が十分に少ないことを意味する。本発明の幾つかの実施形態では、紫外線安定剤の量は、紫外線下で見た場合に組成物の蛍光減少が目に見える程度にならないように十分に少ない。組成物は、典型的には約5重量%未満、より典型的には約1.5重量%未満、最も典型的には約0.75重量%未満の紫外線安定剤を含有する。
【0015】
「天然の歯の蛍光」とは、紫外線下で見た場合、天然歯の蛍光が対象間で変化し、組成物の蛍光が天然の歯の蛍光に対する所望の類似性をどの程度持つかは、患者の正確な状況及び/又は審美的要望(例えば、容易に見ることができない臼歯及びその他の歯は、前歯ほどには、天然の歯の蛍光に一致させる必要がない)に対応していることを認識しつつ、組成物が、天然の歯の蛍光強度に近い蛍光強度を示すことを意味する。
【0016】
本明細書で使用するとき、「硬化性」は、例えば、溶媒を除去し(例えば、蒸発及び/若しくは加熱し)、重合及び/若しくは架橋を誘発するために加熱し、重合及び/若しくは架橋を誘発するために照射し、並びに/又は重合及び/若しくは架橋を誘発するために1つ以上の成分を混合することによって、硬化された(例えば、重合又は架橋可能な)又は固形化可能な材料又は組成物を記載したものである。
【0017】
「歯科用組成物」とは、口腔面へと適用又は付着可能な非充填又は充填(例えば、コンポジット)材料(例えば、歯科用又は歯列矯正用材料)を意味する。歯科用組成物としては、例えば、接着剤(例えば、歯科用及び/又は歯科矯正用接着剤)、セメント(例えば、ガラスアイオノマーセメント、樹脂変性ガラスアイオノマーセメント、及び/又は歯科矯正用セメント)、プライマー(例えば、歯科矯正用プライマー)、修復材(例えば、修復用充填材)、ライナー、シーラント(例えば、歯科矯正用シーラント)、並びにコーティングが挙げられる。歯科用組成物を用いて、歯科用物品を歯牙構造に接着できる場合が多い。「硬化性歯科用組成物」とは、硬化させて歯科用物品を形成可能な、ペーストなどの歯科用組成物を意味する。
【0018】
「歯科用物品」とは、口腔面(例えば、歯牙構造)へと付着(例えば、接着)可能な物品を意味する。典型的には、歯科用物品は修復された歯列又はその一部分である。実施例としては、修復材、代用品、インレー、オンレー、ベニア、フル及びパーシャルクラウン、ブリッジ、インプラント、インプラント橋脚歯、コーピング、前歯部充填、臼歯部充填、窩洞ライナー、シーラント、義歯、ポスト、ブリッジ用フレームワーク及びその他ブリッジ用構造体、橋脚歯、歯列矯正用器具及びデバイス、並びにプロテーゼ(例えば、部分義歯又は総義歯)が挙げられる。
【0019】
本発明で使用する場合、用語「歯科用組成物」及び「歯科用物品」は、歯科用途にて使用される組成物及び物品に限定されず、更に、歯列矯正用組成物(例えば、歯列矯正用接着剤)及び歯列矯正用デバイス(例えば、リテーナ、ナイトガード、ブラケット、頬面管、バンド、クリート、ボタン、舌側リテーナ、開口器、ポジショナ、等などの歯列矯正用器具)もそれぞれ包含する。
【0020】
「口腔面」とは、口腔環境内の軟質又は硬質表面を意味する。硬質表面としては典型的に、例えば、天然の及び人口の歯の表面、骨、歯の模型、象牙質、エナメル質、セメント質等を包含する歯牙構造が挙げられる。
【0021】
「充填剤」とは、口内環境に使用するのに適した粒子状物質を意味する。一般に、歯科充填剤は、最大100マイクロメートルの平均粒子サイズを有する。
【0022】
「ナノ充填剤」とは、最大200ナノメートルの平均一次粒径を有する充填剤を意味する。ナノ充填剤構成要素は、単一のナノ充填剤であってよく、又はナノ充填剤の組み合わせであってよい。典型的にナノ充填剤は、非発熱性ナノ粒子又はナノクラスターを含む。「ナノ構造化」とは、少なくとも1つの寸法が、平均で、最大200ナノメートルである形態の材料(例えば、ナノサイズの粒子)を意味する。したがって、ナノ構造化材料とは、例えば、本明細書において以下のように定義されるナノ粒子を包含する材料を意味する;ナノ粒子の集合体;粒子上にコーティングされた材料、ここでコーティングは、最大200ナノメートルの平均厚さを有する;粒子の集合体上にコーティングされた材料、ここでコーティングは、最大200ナノメートルの平均厚さを有する;最大200ナノメートルの平均孔径を有する多孔質構造に侵潤された材料;及びこれらの組み合わせ。多孔質構造は、例えば、多孔質粒子、粒子の多孔質集合体、多孔質コーティング、及びこれらの組み合わせを包含する。
【0023】
本明細書で使用する場合、「ナノ粒子」は、「ナノサイズ粒子」と同義であり、最大200ナノメートルの平均サイズを有する粒子を意味する。本発明で球状粒子について使用する場合、「サイズ」とは、粒子直径を意味する。本発明で非球状粒子について使用する場合、「サイズ」とは、粒子の最長寸法を意味する。ある実施形態では、ナノ粒子は、別個の、非アグリゲート及び非アグロメレート粒子よりなる。
【0024】
「ナノクラスター」とは、それらを塊、即ち集合体にする比較的弱い分子間力によって共に引き出されるナノ粒子の会合を意味する。典型的に、ナノクラスターは、最大10マイクロメートルの平均サイズを有する。
【0025】
本発明で使用する場合、用語「エチレン系不飽和化合物」は、モノマー、オリゴマー、及び少なくとも1つのエチレン系不飽和を有するポリマーを包含することを意味する。
【0026】
「重合」とは、モノマー又はオリゴマーから、より高分子量(higher weight)の材料を形成することを意味する。重合反応は、架橋反応をも伴い得る。
【0027】
「多環式芳香族構成成分」とは、2個以上の縮合芳香族環を有する少なくとも1種の多環式有機化合物を意味し、それにはそれらのアルキル、アルコキシ、アリール、及びアリールオキシ置換誘導体が含まれる。「縮合した」によって、2つの芳香族環が側面を共有して又は側面を対向させて複数の炭素−炭素結合によって直接的に接合していることを表す。
【0028】
本発明で使用する場合、用語「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、メタクリレート、又はそれらの組み合わせの省略表現であり、「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタクリル、又はそれらの組み合わせの省略表現を表す。本発明で使用する場合、「(メタ)アクリレート官能性化合物」とは、他の物質の中に、(メタ)アクリレート部分を包含する化合物である。
【0029】
用語「含む」、「含んでいる」及びその変形形態は、これらの用語が出現する明細書本文及び特許請求の範囲において、制限する意図を持たない。
【0030】
本明細書において端点による数値範囲の列挙には、その範囲内に包含される全ての数を含むことが意図される(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。
【0031】
本明細書で使用するとき、別段の指定がない限り、不定冠詞は、「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」を意味する。更に、単数形の不定冠詞「a」、「an」、及び「the」は、文脈に明確に示されていない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば「化合物」を含有する組成物への言及は、2種以上の化合物の混合物を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、用語「又は」は、その内容について別段のはっきりした指示がない限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
【0032】
特に指示がない限り、本明細書及び本特許請求の範囲で使用される成分量、性質の測定値、例えばコントラスト比などを表す全ての数字は、全ての場合において「約」という語句によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、特にそれとは反対の指示がない限り、先の明細書及び添付した書類名特許請求の範囲に記述されている数値パラメータは、当業者により本発明の教示を利用して獲得しようと努められる所望の性質に応じて変化し得る近似値である。最低限でも、そして特許請求の範囲への同等物の原則の適用を限定する試行としてではなく、少なくとも各数値パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、そして通常のまるめ方を適用することによって解釈されなければならない。本発明の広範囲で示す数値的範囲及びパラメータは、近似値であるが、具体例に記載の数値は可能な限り正確に報告する。しかし、いずれの数値もそれらの各試験測定値において見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本来包含する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、重合性歯科用組成物(例えば、歯科修復及び接着剤)などの重合性組成物にて使用される開始剤系中の電子供与体としての芳香族アミンの部類の使用を特徴とする。これらの芳香族アミンは、組成物を硬化した際に優れた色安定性を示すので、配合物に含まれる紫外線安定剤に対する必要性を無くしたりあるいは減らしたりすることができる。組成物中の紫外線安定剤の量を減らすことで、蛍光性の見た目が増大し、組成物が天然歯の蛍光により近くなる。したがって、本発明の開始剤系は、材料の長期間審美的品質が多くの場合重要とされる修復歯科学にて使用される硬化性樹脂/充填材複合材料において、特に有用である。このような組成物としては通常、開始剤系に加えて、所望の用途に応じ、重合性構成成分、1種以上の充填剤、及び/又はその他の添加剤が挙げられる。
【0034】
重合性構成成分
本発明の歯科用組成物は、硬化可能であるが、これは通常、重合性構成成分の存在に起因する。幾つかの実施形態では、組成物を口腔面へ適用する前に、組成物を硬化(例えば、従来の光重合及び/又は化学重合技術によって重合させられる)することができる。その他の実施形態では、組成物を口腔面へ適用した後に、組成物を硬化(例えば、従来の光重合及び/又は化学重合技術によって重合させられる)することができる。
【0035】
ある実施形態では、組成物は光重合可能である、即ち、組成物は、化学線の照射により組成物の重合(又は硬化)を開始させる、光開始剤系を含有する。前記光重合可能組成物は、フリーラジカル重合可能又はカチオン重合可能であってもよい。他の実施形態では、前記組成物は化学的に硬化性である。即ち、前記組成物は、化学線による放射に依存することなく、前記組成物を重合、硬化、ないしは別の方法で硬化性の化学的開始剤(即ち、開始剤系)を含有する。このような化学的硬化性組成物は、「自己硬化」組成物と呼ばれることもある
【0036】

典型的には、重合性構成成分は、1種以上のエチレン系不飽和化合物を含み、それは酸性官能基を含有している場合もあるし、あるいは非含有の場合もある。有用なエチレン系不飽和化合物の例としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性アクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性メタクリル酸エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
特に光重合可能な実施形態における組成物は、1つ以上のエチレン系不飽和基を有するモノマー、オリゴマー、及びポリマーを含み得るラジカル活性官能基を有する化合物を含んでよい。好適な化合物類は、少なくとも1つのエチレン系不飽和結合を含有しかつ付加重合可能である。そのようなフリーラジカル重合性化合物としては、モノ−、ジ−又はポリ−(メタ)アクリレート類(即ち、アクリレート類及びメタクリレート類)例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビス[1−(2−アクリロキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、及びトリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレート;(メタ)アクリルアミド類(即ち、アクリルアミド類及びメタクリルアミド類)例えば、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス−(メタ)アクリルアミド、並びにジアセトン(メタ)アクリルアミド;ウレタン(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール類のビス−(メタ)アクリレート類(好ましくは、分子量200〜500)、米国特許第4,652,274号(ボッチャー(Boettcher)他)に記載されているような、アクリレート化されたモノマー類の共重合性混合物、米国特許第4,642,126号(ザドール(Zador)他)に記載されているような、アクリレート化されたオリゴマー類、及び米国特許第4,648,843号(ミトラ(Mitra))に開示されているもののような、ポリ(エチレン部が不飽和の)カルバモイルイソシアヌレート類;ビニル化合物類、例えばスチレン、ジアリルフタレート、ジビニルサクシネート、ジビニルアジペート及びジビニルフタレートが挙げられる。別の適切なフリーラジカル重合可能化合物としては、例えば、国際公開特許第00/38619号(グーゲンベーガー(Guggenberger)ら)、国際公開特許第01/92271号(ウェインマン(Weinmann)ら)、国際公開特許第01/07444号(グーゲンベーガーら)、国際公開特許第00/42092号(グーゲンベーガーら)に開示されているようなシロキサン官能(メタ)アクリレート、並びに、例えば、米国特許第5,076,844号(フォック(Fock)ら)、米国特許第4,356,296号(グリフス(Griffith)ら)、欧州特許第0373384号(ワゲンネクト(Wagenknecht)ら)、欧州特許第0201031号(レイナーズ(Reiners)ら)、及び、欧州特許第0201778号(レイナーズ(Reiners)ら)に開示されているようなフルオロポリマー官能(メタ)アクリレートが挙げられる。所望する場合、2つ以上のラジカル重合可能な化合物の混合物を使用することが可能である。
【0038】
重合性構成成分は、単一分子内にヒドロキシル基及びエチレン系不飽和基を含有していてもよい。このような物質の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;グリセロールモノ−又はジ−(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンモノ−又はジ−(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールモノ−、ジ−又はトリ−(メタ)アクリレート;ソルビトールモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、またペンタ−(メタ)アクリレート;及び2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパンなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が挙げられる。好適なエチレン系不飽和化合物はまた、多種多様な民間の供給元、例えばシグマ−アルドリッチ社(セントルイス)から入手可能である。必要であれば、エチレン性不飽和化合物の混合物を使用できる。
【0039】
特定の実施形態において、重合性構成成分としては、PEGDMA(約400の分子量を有するポリエチレングリコールジメタクリレート)、ビスGMA、UDMA(ウレタンジメタクリレート)、GDMA(グリセロールジメタクリレート)、TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)、米国特許第6,030,606号(ホームズ(Holmes))に記載されるようなビスEMA6、及び/又はNPGDMA(ネオペンチルグリコールジメタクリレート)が挙げられる。所望であれば、これらの硬化性構成成分の様々な組み合わせを使用することができる。
【0040】
組成物が、酸性官能性を持たないエチレン系不飽和化合物を含有する場合、無充填組成物の総重量を基準にして、少なくとも5重量%、より典型的には少なくとも10重量%、最も典型的には少なくとも15重量%の量で、酸性官能基を持たないエチレン系不飽和化合物が存在するのが一般的である。本発明の組成物は、無充填組成物の総重量を基準にして、典型的には最大95重量%、より典型的には最大90重量%、最も典型的には最大80重量%の酸性官能基を持たないエチレン系不飽和化合物を含む。
【0041】
幾つかの実施形態では、重合性構成成分は、1種以上の酸性官能基を持つエチレン系不飽和化合物を含んでよい。本発明で使用する場合、「酸性官能基を持つ」エチレン系不飽和化合物とは、エチレン系不飽和並びに酸及び/又は酸前駆体官能基を有するモノマー、オリゴマー、及びポリマーを含むことを意味する。酸−前駆体官能性としては、例えば、無水物類、酸ハロゲン化物類、及びピロホスフェート類が挙げられる。酸官能性としては、カルボン酸官能性、リン酸官能性、ホスホン酸官能性、スルホン酸官能性、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0042】
酸官能基を有するエチレン系不飽和化合物としては、例えば、α,β−不飽和酸性化合物、例えば、グリセロールホスフェートモノ(メタ)アクリレート類、グリセロールホスフェートジ(メタ)アクリレート類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、HEMA)ホスフェート類、ビス((メタ)アクリルオキシエチル)ホスフェート、((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシ)プロピルオキシホスフェート、(メタ)アクリルオキシヘキシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシヘキシル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシオクチルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシオクチル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシデシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシデシル)ホスフェート、カプロラクトンメタクリレートホスフェート、クエン酸ジ−又はトリ−メタクリレート、ポリ(メタ)アクリレート化オリゴマレイン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリマレイン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリカルボキシル−ポリホスホン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリクロロリン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリスルホネート、ポリ(メタ)アクリレート化ポリホウ酸などが挙げられ、これらは、硬化可能成分系内の成分として使用してもよい。また、不飽和炭酸類のモノマー類、オリゴマー類、及びポリマー類、例えば、(メタ)クリル酸類、芳香族(メタ)アクリレート化酸類、(例えば、メタクリレート化トリメリット酸)、及びそれらの無水物類を使用することが可能である。本発明の特定の好ましい組成物としては、少なくとも1つのP−OH部分を有する酸官能基を有するエチレン系不飽和化合物が挙げられる。
【0043】
これら化合物のあるものは、例えば、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレート類とカルボン酸との間の反応物として得られる。酸−官能性及びエチレン系不飽和構成成分の両方を有するこの種の追加の化合物は、米国特許第4,872,936号(エンゲルブレヒト(Engelbrecht))及び同第5,130,347号(ミトラ(Mitra))に記載されている。エチレン系不飽和部分及び酸部分の両方を含有する多種多様のこのような化合物を使用することが可能である。所望する場合、このような化合物の混合物を使用することが可能である。
【0044】
酸官能基を有する更なるエチレン系不飽和化合物としては、例えば、国際公開特許第2004/060327号(アブエルヤマン(Abuelyaman)他)において開示された重合可能なビスホスホン酸;AA:ITA:IEM(例えば、米国特許第5,130,347号(ミトラ(Mitra))の実施例11に記載されたように、AA:ITAコポリマーと十分な2−イソシアネートエチルメタクリレートとを反応させて、コポリマーの一部の酸基をペンダントメタクリレート基に変換させることにより、製造されたアクリル酸をペンダントメタクリレートを有するイタコン酸のコポリマー);並びに米国特許第4,259,075号(ヤマウチ(Yamauchi)他)、同第4,499,251号(オムラ(Omura)他)、同第4,537,940号(オムラ(Omura)他)、同第4,539,382号(オムラ(Omura)他)、同第5,530,038号(ヤマモト(Yamamoto)他)、同第6,458,868号(オカダ(Okada)他)、及び欧州特許第712,622号(トクヤマ社(Tokuyama Corp.))及び欧州特許第1,051,961(クラレイ社(Kuraray Co., Ltd.))に列挙されたものが挙げられる。
【0045】
本発明の組成物は更に、例えば、国際公開特許第2006/020760号(ルヒターハント(Luchterhandt)ら)に記載されているような、酸性官能基を持つエチレン系不飽和化合物の組み合わせを含むことができる。組成物としては更に、酸性官能基を有するもの及び有しないものの両方のエチレン系不飽和化合物の混合物も挙げられる。
【0046】
組成物が、酸性官能基を持つエチレン系不飽和化合物を含有する場合、無充填組成物の総重量を基準にして、少なくとも1重量%、より典型的には少なくとも3重量%、最も典型的には少なくとも5重量%の量で、酸性官能基を持つエチレン系不飽和化合物が存在するのが一般的である。本発明の組成物は、無充填組成物の総重量を基準にして、典型的には最大80重量%、より典型的には最大70重量%、最も典型的には最大60重量%の酸性官能基を持つエチレン系不飽和化合物を含む。
【0047】
開始剤系
本発明の典型的な実施形態においては、フリーラジカル重合性構成成分は、光開始剤と組み合わされて、光重合性組成物が提供される。フリーラジカル的に光重合するために好適な光開始剤(即ち、1種以上の化合物を含む光開始剤系)には、二成分系、三成分系が挙げられる。典型的3元光開始剤としては、ヨードニウム塩、光増感剤(本明細書においては、可視光増感剤又は可視光吸収体としてもまた参照される)、及び電子供与体化合物が挙げられる。
【0048】
本発明の光開始剤系は、少なくとも1つの芳香族基及びα水素を備えたヒドロカルビル基を有する色安定アミン電子供与体を含む。アミンは更に、典型的には、電子吸引基をアミンのβ位に備えかつアミンのβ位の同一炭素原子上に水素を備えた、少なくとも1つのヒドロカルビル基を有する。
【0049】
本発明のアミン電子供与体は、以下の式Iに示すようなタイプであってよい。
【化3】


式中、
は窒素原子であり、
R1は、1〜16個の炭素原子を有するアルキル基、又はCHCHX2であり、
R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9は、水素(H)又は1〜4個の炭素(C)原子を有するアルキル基から独立して選択されるが、ここで、窒素原子Nに結合している(即ち、α位にて)炭素原子のうち少なくとも1つに結合している水素原子が少なくとも1つある。
【0050】
X1は、COR10、C(O)R11、C(O)R10、及びCONR10R11から選択され、X2は、CN、COR10、C(O)R11、及びC(O)R10から選択され、ここで、各R10及びR11は、H、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、及びアラルキル基から独立して選択される。
【0051】
幾つかの実施形態では、本発明のアミン電子供与体は、以下の式IIに示すようなタイプであってよい。
【化4】


式中、R1’がCH、CH−低級アルキル、又はCHCHX2’であり;R2’がH、CH、又はCH−低級アルキルであり;X1’及びX2’が、それぞれCN、COR3’、CHO、COR3’、及びCONR3’R4’から独立して選択され;式中、R3’及びR4’が、それぞれH、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、及びアラルキル基から独立して選択される。式IIのR1’及び/又はR2’がCH−アルキルであり、アルキル成分は通常は低級アルキル、即ちC〜Cアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、等)である。
【0052】
上記式I及びIIに当てはまる好適な電子供与体としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【化5】


式中、Rは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である。
上記化合物は、アダムソン(Adamson)ら;JCSOA9;J.Chem.Soc.;1949;spl.144,152(参考として本明細書に組み込まれている)に記載されているものなどの既知の方法を使用して合成してよい。
【0053】
上記のように、本発明の開始剤系は、可視光吸収体(即ち、光増感剤)を含有し、かつヨードニウム塩、及び/又は多環式芳香族化合物等などの1種以上の追加の電子供与体もまた所望により含有してよい。ヨードニウム塩は組成物中に溶解性であるべきで、かつ保存性があるのが好ましい。保存性があることは、可視光増感剤及び電子供与体の構成要素の存在下で組成物中に溶解した場合、自発的に重合が起こらないことを意味する。したがって、具体的なヨードニウム塩の選択は、特定な樹脂、可視光増感剤、及び選択された電子供与体にある程度左右される。好適なヨードニウム塩としては、ジアリールヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、及びトリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
可視光増感剤は、光重合性組成物中に部分的又は完全に可溶性であり、重合プロセスを実質的に阻害し得る官能基を含まず、約400〜約1000ナノメートルの範囲内の波長のどこかで光吸収可能でなければならない。典型的な可視光増感剤は、1つ以上のカルボニル官能基を含有する。好適な光増感剤としては、400nm〜520nm(好ましくは、450nm〜500nm)の範囲内でいくらかの光を吸収するモノケトン及びジケトンが挙げられる。特に好適な化合物としては、400nm〜520nm(更により好ましくは、450nm〜500nm)の範囲内の光を吸収するアルファジケトンが挙げられる。代表的な光増感剤化合物としては、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン及びその他の1−アリール−2−アルキル−1,2−エタンジオン、環状α−ジケトン、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
前述したように、光開始剤系は、追加の電子供与体を含有していてもよい。好適な追加の電子供与体としては、多環式芳香族化合物、例えばビフェニレン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、ピレン、アズレン、ペンタセン、デカサイクレン、及び誘導体類(アセナフテン類など)並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
光開始剤系中の個々の構成要素は、光重合性において有効な量(即ち、重合性構成要素の光重合を開始することができることができる光開始剤系をもたらすに有効な量、又はより好ましくは、重合速度を加速することができる光開始剤系をもたらすに有効な量)で供給される。典型的には、可視光増感剤は、光重合性無充填組成物の総量を基準にして、約0.05重量%〜5.0重量%、より典型的には約0.10重量%〜2.0重量%で存在する。ヨードニウム塩は、無充填組成物の総量を基準にして、典型的には約0.05〜10.0重量%、より典型的には約0.20〜5.0重量%、最も典型的には約0.40〜3.0重量%で存在する。色安定アミン電子供与体及び/又は追加の電子供与体(類)は、無充填組成物の総量を基準にして、典型的には約0.01〜5.0重量%、より典型的には約0.05〜1.0重量%、最も典型的には約0.05〜0.50重量%で存在する。
【0057】
本発明の組成物は通常、光重合性であるが、ある実施態様においては、本発明の組成物は、化学的に硬化可能である、即ち、組成物は、化学放射線の照射に依存せずに、重合、硬化、又は別の方法で組成物を硬化できる、化学的に硬化性の構成成分及び化学的開始剤(即ち、開始剤系)を含有する。本発明の幾つかの実施形態では、光硬化及び自己硬化系の組み合わせを使用してもよい。
【0058】
化学的硬化性組成物は、重合性構成成分(例えば、エチレン系不飽和重合性構成成分)、並びに酸化剤及び還元剤を含む酸化還元剤を含む酸化還元硬化系を含んでもよい。好適な硬化性構成要素、レドックス剤、任意の酸官能性構成要素、及び本発明において有用な任意の充填剤は、米国公開特許出願2003/0166740号(ミトラ(Mitraら)等)、及び同第2003/0195273号(ミトラ等)に記載されている。
【0059】
樹脂系(例えば、エチレン性不飽和構成要素)の重合を開始することが可能なフリーラジカルを製造するために、還元剤及び酸化剤は、互いに反応するか、ないしは別の方法で協働すべきである。この種類の硬化は、暗反応、つまり、光の存在に依存せず、光が存在しなくても進行することができる反応である。還元剤及び酸化剤は、好ましくは十分に貯蔵安定性があり、望ましくない着色がなく、典型的な歯科条件下においての保存及び使用を可能にする。これらは、組成物の他の構成成分中に容易に溶解(かつそれから分離し難い)できるように、樹脂系と十分に混和性(好ましくは水溶性)でなければならない。
【0060】
有用な還元剤類としては、米国特許第5,501,727号(ワング(Wang)ら)に記載されているようなアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及び金属錯体アスコルビン酸化合物、アミン、特に三級アミン、例えば、4−第3ブチルメチルアニリン、芳香族スルフィン酸塩、例えば、p−トルエンスルフィン酸塩及びベンゼンスルフィン酸塩、チオ尿素、例えば、1−エチル−2−チオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,1−ジブチルチオ尿素、及び1,3−ジブチルチオ尿素、及びそれらの混合物が挙げられる。他の二次的な還元剤としては、塩化コバルト(II)、塩化第1鉄、硫酸第1鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン(酸化剤の選択に依存する)、亜ジチオン酸塩又は亜硫酸塩アニオンの塩、及びそれらの混合物を包含してもよい。好ましくは、前記還元剤はアミンである。
【0061】
また好適な酸化剤は、当業者に馴染みがあり、過硫酸、並びにナトリウム、カリウム、アンモニウム、セシウム、及びアルキルアンモニウム塩のような過硫酸塩類が挙げられるが、これらに限定されない。更なる酸化剤としては、過酸化ベンゾイルのような過酸化物類、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、及びアミルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシド類、並びに塩化コバルト(III)及び塩化第二鉄、硫酸セリウム(IV)のような遷移金属塩類、過ホウ酸及びその塩類、過マンガン酸及びその塩類、過リン酸及びその塩類、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0062】
複数の酸化剤又は複数の還元剤を使用することが望ましい場合がある。少量の遷移金属化合物を添加して、酸化還元硬化速度を速めてもよい。幾つかの実施形態では、米国特許公開第2003/0195273号(ミトラ(Mitra)ら)に記載されているように、重合性組成物の安定性を増強するために、二次的なイオン性塩を含むことが好ましい可能性がある。
還元剤及び酸化剤は、適切なフリーラジカル反応速度を得るのに十分な量で存在する。これは、任意の充填剤を除く、組成物の全ての成分を混ぜ合わせることにより、かつ硬化した大部分が得られたか否かを観察することにより、評価することができる。
【0063】
還元剤は、少しでも使用される場合、組成物の構成成分の総重量(水を包含する)を基準として、典型的には少なくとも0.01重量%、より典型的には少なくとも0.1重量%の量で存在する。還元剤は、組成物の構成成分の総重量(水を包含する)を基準として、典型的には10重量%以下、より典型的には5重量%以下の量で存在する。
【0064】
酸化剤は、少しでも使用される場合、組成物の構成成分の総重量(水を包含する)を基準として、典型的には少なくとも0.01重量%、より典型的には少なくとも0.10重量%の量で存在する。酸化剤は、組成物の構成成分の総重量(水を包含する)を基準として、典型的には10重量%以下、より典型的には5重量%以下の量で存在する。
【0065】
還元剤又は酸化剤は、米国特許第5,154,762号(ミトラ(Mitra)ら)に記載されている様に、マイクロカプセル化することができる。これは、一般に、組成物の貯蔵安定性を高め、必要であれば、還元剤又は酸化剤の同梱を可能にする。例えば、カプセル化用材料を適切に選択することにより、酸化剤及び還元剤を酸官能性構成成分及び任意の充填剤と組み合わせることができ、かつ安定した貯蔵状態に維持することができる。同様に、非水溶性カプセル化用材料を適切に選択することにより、酸化剤及び還元剤をFASガラス及び水と組み合わせることができ、安定した貯蔵状態に維持することができる。
酸化還元硬化系は、光開始剤系を含む他の硬化系、又は米国特許第5,154,762号(ミトラ(Mitra)ら)に記載されているような組成物と、組み合わせることができる。
【0066】
充填剤(類)
本発明の組成物は、1種以上の充填剤を所望により含有していてもよい。充填剤は、例えば、歯科修復組成物等において現在使用される充填剤のような、歯科用途に使用される組成物への組み込みに好適な多種多様な材料の中から1つ以上選択されてもよい。
【0067】
充填剤の選択は歯科用組成物の重要な特性、例えば、外観、X線不透過性並びに物理的及び機械的特性のような特性に影響を及ぼす。外観は、組成物中の含有物の量及び相対屈折率の調節によって部分的に影響され、これにより複合材の半透明性、不透明性、真珠光沢性の変更が可能になる。このような方法で、歯科用材料の外観を、必要であれば、天然歯の外観に厳密に近似させて作製できる。
【0068】
X線不透過性はX線検査による歯科用組成物の検出能力を測定するものである。X線不透過である歯科用組成物は、例えば、歯科医が歯科修復物が健全に維持されているか否かの試験を可能にするために望まれることが多いであろう。別の状況では、X線不透過ではない組成物が望まれるかもしれない。X線不透過である処方物用の好適な充填剤は、欧州特許A2−0 189 540号、同第B−0 238 025号、及び米国特許第6,306,926 B1号に記載される。
【0069】
複合材に組み入れる充填剤の量は、本明細書では「装填濃度(loading level)」を示し、歯科用材料の総重量を基準にした重量%で表記し、その量は充填剤、硬化性樹脂、並びに組成物中のその他の構成要素の種類、及び複合材の最終用途に応じて変化するであろう。
【0070】
シーラントのような、幾つかの歯科用材料に対しては、本発明の組成物は少量の充填(例えば、約40重量%未満の装填濃度を有して)、又は非充填であることができる。このような実施形態においては、歯科用材料の粘度は、その材料が咬合歯牙面の窩溝の中、並びにエナメル質の侵食領域の中に貫入できるように十分に低く、それにより歯科用材料の保持に役立つ。強度又は耐久性の高いことが望まれる箇所への適用(例えば、前方又は後方の修復剤、義歯、歯冠及び橋義歯セメント材、人口歯冠、人口歯及び入れ歯)では、装填濃度は約95%と同じくらい高くできる。ほとんどの歯科用修復及び補綴用途に対して、充填濃度は一般に、少なくとも40重量%、より典型的には約60〜90重量%である。
【0071】
本発明の組成物中で使用される充填剤(類)は、典型的には、微粉化されている。充填剤(類)は、単峰性又は多峰性(例えば、二峰性)の粒度分布を有することができる。充填剤(類)の最大粒径(粒子の最大寸法であり、通常は直径である)は、典型的には20マイクロメートル未満、より典型的には10マイクロメートル未満、最も典型的には5マイクロメートル未満である。充填剤(類)の平均粒径は通常、0.1マイクロメートル未満、より典型的には0.075マイクロメートル未満である。
【0072】
充填剤(類)は、無機材料であってよい。架橋剤は更に、樹脂系に不溶性の架橋有機材料であってよく、所望により無機充填剤で充填される。充填剤(類)は、いずれにしても無毒でなければならず、かつ口内で使用するのに好適でなければならない。充填剤(類)は、放射線不透過性又は放射線透過性であることができる。充填剤は典型的には、実質的に水に不溶性である。
【0073】
好適な無機充填剤の例としては、石英(即ち、シリカ、SiO);窒化物(例えば、窒化ケイ素);例えば、Zr、Sr、Ce、Sb、Sn、Ba、Zn、及びAlから誘導されるガラス;長石;ボロシリケートガラス;カオリン;タルク;チタニア;低モース硬度充填剤、例えば、米国特許第4,695,251号(ランドクレブ(Randklev))に記載されているようなもの;並びにサブマイクロメートルのシリカ粒子(例えば、商品名アエロジル(デグサ社(Degussa Corp)(オハイオ州、アクロン)からの「OX 50」、「130」、「150」及び「200」シリカ並びにキャボット社(Cabot Corp.)(イリノイ州、タスコラ)からのCAB−O−SIL M5シリカを含む)にて入手可能なもののような発熱性シリカ)を含む天然素材の物質又は合成された物質であるが、これらに限定されるものではない。幾つかの実施形態では、シリカ又はナノリシカ粒子は、非発熱性であり、即ち非ヒュームドシリカを含む。好適な有機充填剤粒子の例としては、充填又は非充填の粉砕ポリカーボネート、ポリエポキシド、等が挙げられる。
【0074】
充填剤は、酸反応性、酸非反応性、又はこれらの組み合わせであってよい。好適な酸非反応性充填剤粒子として、石英、サブミンクロンシリカ、ナノシリカ、ナノジルコニア、及び米国特許第4,503,169号(ランドクルブ(Randklev))に記載されたタイプの非ガラス質微小粒子が挙げられる。これらの酸非反応性充填剤の混合物は更に、有機又は無機材料から調製される複合充填剤でもよい。シラン処理したジルコニア−シリカ(Zr−Si)充填剤は、ある実施形態において特に有用である。本発明の幾つかの実施形態では、充填剤系は、少なくとも1種の重金属酸化物ナノ粒子(例えば、ジルコニアナノ粒子)を含む充填剤及び/又は非重金属酸化物粒子(例えば、シリカナノ粒子)を含む少なくとも1種の充填剤並びに/又は重金属酸化物及び非重金属酸化物を含む少なくとも1種の充填剤(例えば、ジルコニア及びシリカナノ粒子のクラスター)の組み合わせを含有してよい。
【0075】
金属充填剤も同様に組み入れてもよく、そのような微粒子金属充填剤は、IVA族、VA族、VIA族、VIIA族、VIII族、IB族、又はIIB族のもののような純金属、IIIB族のアルミニウム、インジウム、及びタリウム、及びIVB族の錫及び鉛、又はそれらの合金類から作製される。従来の歯科用アマルガム合金粉、代表的には銀、錫、銅、及び亜鉛の混合物も同様に、必要に応じて組み入れてもよい。微粒子金属充填剤は好ましくは約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの平均粒径を有し、より好ましくは約1マイクロメートル〜約50マイクロメートルである。これらの充填材の混合物、並びに有機及び無機材料からできた組み合わせ充填材もまた考察された。未処理の又はシラノール処理したフルオロアルミノシリケートガラス充填剤は、特に好まれる。これらのガラス充填剤は、口内環境に配置された場合、歯科作業の位置でフッ素イオンを放出するという追加の利点を有する。
【0076】
幾つかの実施形態においては、組成物は、酸反応性充填剤を含んでもよい。好適な酸反応性充填剤としては、金属酸化物、ガラス、及び金属塩が挙げられる。典型的な金属酸化物としては、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、及び酸化亜鉛が挙げられる。典型的なガラスとしては、ホウ酸ガラス、リン酸ガラス、及びフルオロアルミノシリケート(「FAS」)ガラスが挙げられる。FASガラスが特に好ましい。ガラスが硬化性組成物の構成要素と混合されるとき、硬化された歯科組成物が形成されるように、FASガラス(存在する場合)は、典型的には十分な溶出性カチオンを含有する。前記ガラスは更に、典型的には、十分な溶離性フッ化物イオンを含有し、これにより前記の硬化した組成物が抗齲蝕性を有する。このようなガラスは、FASガラス製造分野において当業者に馴染みが深い技術を使用して、フッ化物、アルミナ、及び他のガラス形成構成要素を含有する溶融物から製造することができる。FASガラス(存在する場合)は、通常十分に微粉化された粒子の形態であるので、他のセメント構成成分と都合よく混合することができ、得られた混合物が口内に使用されるとき、良好に機能するであろう。
【0077】
一般に、このような組成物中で使用されるFASガラスの平均粒径(典型的には、直径)は、例えば、沈降分析器を使用して測定した場合、約12マイクロメートル以下、典型的には10マイクロメートル以下、より典型的には5マイクロメートル以下である。好適なFASガラス類は、当業者によく知られており、及び多種多様な民間の供給元から入手可能であり、多くは、商品名ヴィトレマー(VITREMER)、ヴィトレボンド(VITREBOND)、リリイ・X・ルーティング(RELY X LUTING)・セメント、リリイ・X・ルーティング(RELY X LUTING)・プラス・セメント、フォタック−フィル(PHOTAC-FIL)クイック、ケタック−モラー(KETAC-MOLAR)、ケタック−フィル(KETAC-FIL)プラス(3M ESPE歯科用製品(ミネソタ州、セントポール))、フジII LC及びフジIX(G−Cデンタル工業社(G-C Dental Industrial Corp.)(日本、東京))、及びCHEMFIL・スペリオール(Superior)(デンツプライ社(Dentsply International)、(ペンシルベニア州、ヨーク))の市販のものなど、現在利用可能なガラスアイオノマーセメント内に見出される。所望であれば、充填剤の混合物を使用することができる。
【0078】
充填剤及び樹脂間の結合を高めるために、充填剤粒子の表面を更に、カップリング剤で処理することもできる。好適なカップリング剤としては、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。ある種の修復材組成物にとっては、シラン処理ジルコニア−シリカ(ZrO2−SiO2)充填剤及びナノフィラー、シラン処理シリカ充填剤及びナノフィラー、シラン処理ジルコニア充填剤及びナノフィラー、並びにこれらの組み合わせが、特に好ましい。
【0079】
その他の好適な充填剤は、米国特許第6,387,981号(ツアン(Zhang)等)、同第6,572,693号(ウー(Wu)等)、同第6,730,156号(ウィンディシュ(Windisch))、及び同第6,899,948号(ツアン)、並びに国際公開特許第03/063804号(ウー等)に開示されている。これらの参考文献に記載されている充填剤構成成分としては、ナノサイズシリカ粒子、ナノサイズ金属酸化物粒子、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ナノ充填剤は、同様に米国特許公開第2005/0252413号(カンガス(Kangas)等)、同第2005/0252414号(クレイグ(Craig)等)、及び同第2005/0256223号(コルブ(Kolb)等)にもまた記載されている。
【0080】
充填剤(例えば、歯科用接着剤組成物)を含む本発明の幾つかの実施形態に対しては、組成物は、組成物の総重量を基準にして、典型的には少なくとも1重量%、より典型的には少なくとも2重量%、最も典型的には少なくとも5重量%の充填剤を含む。そのような実施形態に対して、本発明の組成物は、組成物の総重量を基準にして、典型的には最大で40重量%、より典型的には最大で20重量%、最も典型的には最大で15重量%の充填剤を含む。
【0081】
別の実施形態に対して(例えば、組成物が歯科用修復材又は歯科矯正用接着剤である)、本発明の組成物は、組成物の総重量を基準にして、典型的には少なくとも40重量%、より典型的には少なくとも45重量%、最も典型的には少なくとも50重量%の充填剤を含む。このような実施形態では、本発明の組成物は、組成物の総重量を基準にして、典型的には最大で90重量%、より典型的には最大で80重量%、最も典型的には最大で50重量%の充填剤を含む。
【0082】
その他の添加剤
任意に、本発明の組成物は、溶媒(例えば、アルコール(例えば、プロパノール、エタノール)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エステル(例えば、酢酸エチル)、他の非水性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロリジノン))、又はこれらの混合物を含有してもよい。
【0083】
本発明の幾つかの実施形態では、組成物は非水性である。その他の実施形態では、組成物は所望により水を含有していてもよい。水は、蒸留水、脱イオン水、又は味のない(plain)水道水であることができる。存在する場合、水の量は、適した取扱い及び混合特性を提供するため、並びに/又は、特に充填剤−酸反応において、イオン輸送を許容するために、十分であるべきである。このような実施形態においては、水は、硬化性組成物を形成するために使用される成分の総重量の、少なくとも約1重量%、より好ましくは少なくとも約5重量%に相当する。一般的に、水は、硬化性組成物を形成するために使用される成分の総重量の、約75重量%以下、より好ましくは約50重量%以下に相当する。
【0084】
所望であれば、本発明の組成物は、指示薬、染料(光退色性染料を含む)、色素、阻害剤、促進剤、粘度調節剤、湿潤剤、酸化防止剤、酒石酸、キレート化剤、緩衝剤、安定剤、希釈剤、及び当業者に明らかであろう他の類似成分のような添加剤を含有してよい。界面活性剤、例えば、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及びそれらの組み合わせ、が必要に応じて使用されてもよい。有用な界面活性剤には、非重合性及び重合性の界面活性剤が挙げられる。更に、薬剤又は他の治療用物質を、任意に歯科用組成物に添加することができる。例としては、フッ化物供給源、増白剤類、抗カリエス剤類(例えば、キシリトール)、無機成分補給剤類(例えば、リン酸カルシウム化合物、並びにその他のカルシウム供給源及びホスフェート供給源)、酵素類、気分転換剤類、麻酔剤類、個化剤類、酸中和剤類、化学療法剤類、免疫反応調整剤類、チキソトロープ類、ポリオール類、抗炎症剤類、抗菌剤類、抗カビ剤類、口内乾燥処理剤、減感剤類、など、多くの場合、歯科用組成物にて使用されるタイプのものが挙げられるが、これらに限定されない。上述の添加剤のうち任意のものの組み合わせもまた用いてよい。当業者は、所望の結果を達成するために、過度な実験をすることなく、かかる添加剤の任意の1種の選択及び量を選ぶことができる。
【0085】
組成物の調製及び使用
本発明の歯科用組成物は、従来の混合技術を使用して様々な構成要素を全て組み合わせて調製できる。得られる組成物は、所望により、充填剤、溶媒、水、及び本明細書に記載するようなその他の添加剤を含有してよい。典型的には、本発明の光重合性組成物は、「安全光」条件下で、本発明の組成物の構成成分を単純に混合させることによって調製される。この混合物を使用する場合、所望であれば、好適な不活性溶媒を用いてもよい。本発明の組成物の構成成分とは、認識可能な程度までは反応しない、任意の溶媒を使用してよい。好適な溶媒の例としては、アセトン、ジクロロメタン、アセトニトリル、及びラクトンが挙げられる。重合される予定の液体材料を、別の重合される予定の液体又は固体の材料に対する溶媒として使用してよい。無溶媒の組成物は、ヨードニウム錯塩、増感剤、及び電子供与体を重合性樹脂の中に、溶解を容易にするために温和な加熱を使用して又は使用しないで、単純に溶解することにより調製できる。
【0086】
歯科用組成物中の各々の含有物の量及び種類は、必要とする物理的特性及び重合前後にハンドリング性をもたらすように調節すべきである。例えば、歯科用材料の重合速度、重合安定性、流動性、圧縮強度、引っ張り強度、及び耐久性は、典型的には、重合開始剤の種類及び量、及び存在する場合は、充填剤の使用量及び粒径分布、を変更することによりある程度調節される。そのような調節は、代表的には歯科用材料を用いた以前の体験に基づいて実験的に行われる。歯科用材料が歯に適用される場合、歯は必要に応じてプライマー及び/又は接着剤を用いて当業界に既知の方法によって前処理することができる。
【0087】
組成物は種々の形態で供給でき、それには一液系及び多液系、例えば、二液系である、粉末/液体系、ペースト/液体系、ペースト/粉末系、及びペースト/ペースト系、が挙げられる。多元組み合わせ(即ち、2つ又はそれ以上の部分の組み合わせ)を用いる他の形態の各々は、粉末、液体、ゲルの形態であり、あるいはペーストも利用可能である。組成物の様々な成分を所望するどんな方式でも分離液に分割してもよいが、ただし、レドックス系の多液系では、一液が典型的には酸化剤を含有し、別の液が典型的には還元剤を含有する。しかしながら、例えば、マイクロカプセル化の使用によって、成分を分離したままで保持すれば、還元剤と酸化剤を同じ液中に統合することができる。また、歯科用組成物が樹脂改質ガラスアイオノマー(RMGI)である実施形態については、多塩基酸、酸反応性充填剤及び水は一般に、全て同一部位に存在するとは限らないが、その他の構成成分の任意の組み合わせと共に、これらのうち任意の2つを同一部位にてグループ化してよい。
【0088】
組成物の成分は、キット中に含有でき、その場合、組成物の内容物はパッケージ化され、それらが必要となるまで成分の貯蔵を可能にする。
【0089】
組成物の成分は、混合し、従来の技術を使用して臨床的に塗布できる。硬化用光源が、光重合性組成物の反応開始のために一般に必要とされる。組成物は、象牙質及び/又はエナメル質へと極めて良好に接着する、複合材料又は修復材の形態であってよい。任意に、硬化可能な組成物が使用される歯組織上において、プライマー層を使用することができる。
【0090】
本発明は、充填又は非充填であり得る、多種多様な歯科用組成物を包含する。代表的な歯科用材料には、歯科修復剤(例えば、複合材、充填物、シール材、インレイ、オンレイ、歯冠、及びブリッジ)、歯列矯正術用器具、歯科矯正用接着剤が挙げられる。そのような歯科用材料には、審美的修復材料(例えば、前方及び後方修復剤)、補綴物、口腔硬質組織用の接着剤及びプライマー、シール材、ベニア、窩ライナー、あらゆるタイプのブラケット(例えば、金属、プラスチック及びセラミック)と用いるための歯列矯正ブラケット用の接着剤、歯冠及び橋義歯セメント材、人口歯冠、人口歯、入れ歯、等が挙げられる。これらの歯科用材料は口内で使用され、天然歯に隣接して配置される。本明細書で使用するとき、成句「隣接して配置された」は、歯科用材料を天然歯と、一時的又は永久的に結合するため(例えば接着)、又は接触タッチさせるため(咬合又は基端側に)に配置することを指す。
【0091】
本発明の特徴及び利点が、次の例によって更に例示されるが、それはそれらをいかなる意味でも制限するものではない。これらの実施例において列挙されるその特定の材料及び量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を過度に制限しないと解釈されるべきである。指示がない限り、全ての部及びパーセントは重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。
【実施例】
【0092】
別段の指定がない限り、全ての溶媒は、ミズーリ州セントルイス(St. Louis)のシグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich, Inc.)から入手した、又は入手可能なものである。
【0093】
本発明で使用する場合、
「ビスGMA」は、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイロキシプロポキシ)フェニル]プロパンを意味し、
「TEGDMA」は、サートマー社(Sartomer Co., Inc.)(ペンシルバニア州、エクストン(Exton))から得られるトリエチレングリコールジメタクリレートを指し、
「UDMA]は、ローム・アメリカLLC(Rohm America LLC)(ニュージャージー州、ピスカタウェイ(Piscataway))から商標「ロハメレ(ROHAMERE)6661−0」で得られる、ジウレタンジメタクリレートを指し、
「ビスEMA」は、サートマー社(Sartomer Co., Inc.)(ペンシルバニア州、エクストン(Exton))から得られる、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートを指し、
「BHT」は、ブチル化ヒドロキシトルエンを指し、
「Zr−Si充填剤」は、米国特許第4,503,169号(ランドクレブ(Randklev))に記載されているように調製したシラン処理されたジルコニア−シリカ充填剤を指し、
「CPQ」は、カンファーキノンを指し、
「EDMAB」は、エチル4−ジメチルアミノベンゾエートを指し、
「DPIPF6」は、アルファ・エイサー(マサチューセッツ州、ワードヒル(Ward Hill))から得られる、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートを指し、
「チヌビン(TINUVIN)」は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)(ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown))から商品名チヌビンR796として入手した重合性紫外線安定剤を指し、
「Zr−Siフィラー」は、本質的に米国特許第6,730,156号に記載されているように調製した、シラン処理ジルコニア/シリカナノクラスタフィラーを指し、
「シリカフィラー」は、本質的に米国特許公報第2005/0252413号でフィラーFに関して記載されているように調製した、約20nmの公称粒径を有するシラン処理ナノサイズシリカを指し、
「LUMILUX」とは、ハネウェル・インターナショナル・スペシャルティ・マテリアルズ(Honeywell International Specialty Materials)(ニュージャージー州モリスタウン)から入手可能な発光色素を意味する。
【0094】
「ENMP」とは、エチル−N−メチル−N−フェニル−3−アミノプロピオネート、式1−aの化合物を意味する。
【0095】
「NMPN」とは、N−メチル−N−フェニル−3−アミノプロピオニトリル、式IIの化合物を意味する。
【0096】
色試験方法
初期着色及び最終色は、ハンターラボ・ウルトラスキャン・XE(HunterLab Ultrascan XE)分光比色計(バージニア州、レストン(Reston))を用いて測定した。分光式差計は、拡散/8°光トラップ(Diffuse/8° light trap)に続く拡散/8°機器標準(Diffuse/8° instrument standard)(U3322)(L:98.99、a:−0.29、b:−0.21)を用いて標準化した。機器標準は、NIST(米国標準技術局(National Institute of Standards and Technology))に準拠するハンターラボマスタートランスファー標準(HunterLab Master Transfer Standards)と直接比較することによって較正した。本方法では、直径が25.4ミリメートル(1インチ)のポートサイズの小領域の視野を用いた。硬化サンプルは、各実施例について下記で述べる様にして得た。色データ(L)各サンプルが硬化した直後に測定した。次に、サンプルを水中に37℃にて24時間浸漬させてエージングさせたが、その間、キセノンランプで照らした。次に、サンプル上で色データを測定した。ΔEは、色の3次元における全ての色変化として計算した。それを以下の式で記述する。ΔE=[(L−L+(a−a+(b−b]の平方根ここで、添え字「1」は初期硬化状態を示し、「2」は、最終エージング状態を示す。
【0097】
直径引張り強度(DTS)及び圧縮強さ(CS)の決定
直径引張り強度及び圧縮強さは、ANSI/ADA規格第27号(1993年)に従って決定した。各組成物は、4ミリメートルの内径を有するガラス管内へ注入し、次にシリコーンゴム栓にて充填管をキャップした。次いで、組成物を約0.28MPa(約40.62ポンド/平方インチ)で5分間軸方向に圧縮した。圧縮しつつ、次に、サンプルを90秒間、モデルXL 1500歯科用硬化用光源(3M ESPEデンタル・プロダクツ(ミネソタ州セントポール)製)にさらし、次に、90秒間、モデルUNIXS光硬化ボックス(ヘレウスクルツァー(Heraeus Kulzer)(ドイツ、ハーナウ)製)内で照射することにより光硬化した。次に、ダイヤモンドソーを使用して硬化サンプルを十字に切り、約2ミリメートルの長さを有するディスク(DTS試験用)又は約8ミリメートルの長さを有するディスク(CS試験用)にした。ディスクは、測定に先だって、蒸留水中にて、37℃にて24時間保管した。DTS及びCS試験は、10キロニュートン(kN)のロードセル及び1m/分のクロスヘッド速度で、4505型インストロン試験機(インストロン社(Instron Corp.)(マサチューセッツ州ノーウッド(Norwood))製)にて実施した。各硬化組成物の5枚のディスクをDTS用に準備して、試験した。各硬化組成物の6枚のディスクをCS用に準備して、試験した。
【0098】
実施例1〜2及び比較実施例1〜2
実施例1〜2及び比較実施例1〜2の組成物は、最初に、表1に記載されているような割合で構成成分を混ぜ合わせ、樹脂混合物A〜Dを得ることによって調製した。表1においては、全ての百分率は重量百分率であり、「n/a」とは、構成成分が当該組成物中に含まれていなかったことを意味する。
【表1】

【0099】
実施例1〜2及び比較実施例1〜2の組成物は、各樹脂A〜D(各19.746g)の一部と、シリカフィラー(6.671g)、Zr−Siフィラー(63.529g)、及びルミラックス(LUMILUX)(0.054g)それぞれとを、型式DAC 150 FVZスピードミキサー(Speedmixer)(フラックテック(FlackTek, Inc)(サウスカロライナ州ランドラム)製)を使用して、3000rpmにて、混ぜ合わせることにより調製した。1ミリメートルの厚み及び30ミリメートルの直径を有する各組成物のディスクを作製し、2分間液圧プレス(カーヴァー(Carver, Inc.)(インディアナ州ウォバシュ)から入手)内にて、68.95MPa(平方インチ当たり10,000ポンド)の圧力で硬化させた。プレス機に、光ファイバーケーブルを装着して、型式A20500 ACE光源(北米ショット社(SCHOTT North America, Inc.)(ニューヨーク州オーバーン))からディスクへと、光を向けた。ディスクをプレス機から取り外し、ストロボ光硬化装置(UNISX;ヘレウスクルツァー(Heaeus Kulzer, Inc.)(ニューヨーク州アーモンク))を使用して、更に90秒間硬化させた。上記のように、水中37℃で浸漬させながら、照射前後で、各硬化ディスクの色を測定した。各組成物のΔE値は、6.2(実施例1)、6.0(実施例2)、8.4(比較実施例1)、及び9.1(比較実施例2)であった。
【0100】
実施例3及び比較実施例3〜4
実施例3及び比較実施例3の組成物は、最初に、表2に記載されているような割合で構成成分を混ぜ合わせ、樹脂混合物E及びFを得ることによって調製した。比較実施例4の組成物は、市販の複合歯科用修復材(3M ESPEデンタル・プロダクツ(ミネソタ州セントポール)からフィルテック・シュプリーム・ユニバーサル・レストラティブ(FILTEK SUPREME UNIVERSAL RESTORATIVE)の商標名にて入手可能)であった。表2においては、全ての百分率は重量百分率であり、「n/a」とは、構成成分が当該組成物中に含まれていなかったことを意味する。
【表2】

【0101】
実施例3及び比較実施例3の組成物は、各樹脂E及びF(各2.588g)の一部と、シリカフィラー(0.896g)、Zr−Siフィラー(8.525g)、及びルミラックス(LUMILUX)(0.0117g)それぞれとを、型式DAC 150 FVZスピードミキサー(Speedmixer)(フラックテック(FlackTek, Inc)(サウスカロライナ州ランドラム)製)を使用して、3000rpmにて、混ぜ合わせることにより調製した。基本的には上記のようにして、これら組成物及び比較実施例4の組成物それぞれのディスクを硬化させた。上記のように、水中37℃で浸漬させながら、照射前後で、各硬化ディスクの色を測定した。各組成物のΔE値は、4.31(実施例3)、9.1(比較実施例3)、及び5.6(比較実施例4)であった。実施例3及び比較実施例4の各硬化サンプルの直径引張り強度(DTS)及び圧縮強さ(CS)は、上記のようにして決定した。DTS値は、69.63MPa(実施例3)及び63.82MPa(比較実施例4)であった。CS値は、336.7MPa(実施例3)及び335.2MPa(比較実施例4)であった。
【0102】
本願明細書に引用した特許、特許文献、刊行物の完全な開示内容全体を、それぞれを個別に援用したかのように本願明細書に援用する。本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明の範囲は、以下のように記述される書類名特許請求の範囲によってのみ限定されると考えており、本発明が、本明細書で説明された例示的実施形態及び実施例により過度に限定されるものではないこと、及びこのような実施例及び実施形態は、例示のためにのみ提示されていることを理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性構成成分と、
以下の式:
【化6】


(式中、
Nは窒素であり、
R1は、1〜16個の炭素原子を有するアルキル基、又はCHCHX2であり、
R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9は、H又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択され(ただし、窒素のα位にある炭素原子の少なくとも1つが、少なくとも1つの水素原子に結合している)、
X1は、COR10、C(O)R11、C(O)R10、及びCONR10R11から選択され、X2は、CN、COR10、C(O)R11、及びC(O)R10から選択され、ここで、各R10及びR11は、H、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、及びアラルキル基から独立して選択される)
を有する少なくとも1種の電子供与体を含む開始剤系と、
を含む、硬化性歯科用組成物。
【請求項2】
R1が、CH、CH−(低級アルキル)、又はCHCHX2であり;
R2及びR6が独立してH又はCHであり;
R3及びR5がHであり;
R4が、H、CH3、又はCH−(低級アルキル)であり;並びに
R7、R8、R9及びR10がHである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記電子供与体が以下の式:
【化7】


(式中、Rは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である)
を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記電子供与体が以下の式:
【化8】


(式中、Rは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である)
を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記重合性構成成分がエチレン系不飽和構成成分を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記エチレン系不飽和構成成分がメタ(アクリレート)を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記開始剤系が可視光吸収体を更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記可視光吸収体がカンファーキノン(CPQ)を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記開始剤系がヨードニウム塩を更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ヨードニウム塩がジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記開始剤系が第2電子供与体を更に含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記第2電子供与体が多環式芳香族化合物を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記多環式芳香族の構成要素が、アントラセン誘導体、ビフェニレン誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
充填剤を更に含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記充填剤がナノ粒子を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
紫外線安定剤を実質的に含まない、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
天然歯の蛍光を有する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
可視光吸収体と、
ヨードニウム塩と、
以下の式:
【化9】


(式中、
Nは窒素であり、
R1は1〜16個の炭素原子を有するアルキル基、又は−CH−CHX2であり、
R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9は、H又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択され(ただし、窒素のα位にある炭素原子の少なくとも1つが、少なくとも1つの水素原子に結合している)、
X1は、COR10、C(O)R11、C(O)R10、及びCONR10R11から選択され、X2は、CN、COR10、C(O)R11、及びC(O)R10から選択され、ここで、各R10及びR11は、H、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、及びアラルキル基から独立して選択される)
を有する少なくとも1種の電子供与体と、
を含む、光開始剤系。
【請求項19】
前記電子供与体が以下の式:
【化10】


(式中、Rは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である)
を有する、請求項18に記載の光開始剤系。
【請求項20】
前記電子供与体が以下の式:
【化11】


(式中、Rは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である)
を有する、請求項18に記載の光開始剤系。
【請求項21】
前記可視光吸収体がカンファーキノン(CPQ)を含む、請求項18〜20のいずれか一項に記載の光開始剤系。
【請求項22】
前記ヨードニウム塩がジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートを含む、請求項18〜21のいずれか一項に記載の光開始剤系。
【請求項23】
前記光開始剤系が第2電子供与体を更に含む、請求項18〜22のいずれか一項に記載の光開始剤系。
【請求項24】
前記第2電子供与体が多環式芳香族化合物を含む、請求項23に記載の光開始剤系。
【請求項25】
前記多環式芳香族の構成要素が、アントラセン誘導体、ビフェニレン誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項24に記載の光開始剤系。
【請求項26】
重合性構成成分と、請求項18〜25のいずれか一項に記載の光開始剤系とを含む硬化性組成物。
【請求項27】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物を重合することによって作製される歯科用物品。

【公表番号】特表2011−502992(P2011−502992A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532200(P2010−532200)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/081559
【国際公開番号】WO2009/058843
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】