歯科用ＣＴを用いた人工歯の製造装置
【課題】患者の天然歯から直接的に必要なデータを取得することによって蓄積されるエラーの影響を最小限にとどめて、損傷部を除去した後に損傷部が除去された天然歯に取り付けることが可能な人工歯の製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】人工歯の製造方法は、損傷部を有する天然歯から、損傷部を除去するステップと、歯科用CT装置を用いて損傷部が除去された天然歯の表面座標を得るステップと、天然歯の表面座標をCAD／CAMデータに変換するステップと、変換した前記CAD／CAMデータを用いて、３次元N／C装置により材料を切削して人工歯を作製するステップと、人工歯に対応する天然歯の上歯または下歯の形状データを取得するステップと、人工歯の形状を加工するステップと、表面処理が施された前記人工歯を一定期間焼成した後に、人工歯の表面をセラミックでコーティングするステップとを有する。
【解決手段】人工歯の製造方法は、損傷部を有する天然歯から、損傷部を除去するステップと、歯科用CT装置を用いて損傷部が除去された天然歯の表面座標を得るステップと、天然歯の表面座標をCAD／CAMデータに変換するステップと、変換した前記CAD／CAMデータを用いて、３次元N／C装置により材料を切削して人工歯を作製するステップと、人工歯に対応する天然歯の上歯または下歯の形状データを取得するステップと、人工歯の形状を加工するステップと、表面処理が施された前記人工歯を一定期間焼成した後に、人工歯の表面をセラミックでコーティングするステップとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、歯科用ＣＴ（コンピュータ断層撮影）を用いた人工歯の製造装置に関する。特に、人工歯の製造過程において、患者の天然歯から直接的に必要なデータを取得することによって蓄積されるエラーの影響を最小限にとどめて、損傷部を除去した後に損傷部が除去された天然歯に取り付けることが可能な人工歯の製造装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
図１に示すように、一般的な人工歯の製造方法は、天然歯の損傷部を除去するステップと、損傷部が除去された天然歯の表面に印象材をコーティングし、硬化させることによって印象用トレイを形成するステップと、印象用トレイに溶融した石膏または金属を流し込むことによって歯型を形成するステップと、スタイラススキャナーまたはレーザースキャナーを用いて歯型の表面座標を取得するステップと、歯型の表面座標をＣＡＤ／ＣＡＭデータに変換するステップと、変換したデータを用いて３次元Ｎ／Ｃ装置により金属を切削して人工歯を製造するステップと、処理された人工歯を一定期間焼成した後に人工歯の表面をセラミックでコーティングするステップとを有する。
【０００３】
上述した人工歯の製造方法によれば、損傷部が除去された天然歯を被覆する人工歯は、３次元Ｎ／Ｃ装置を用いた人工歯の製造方法によって、天然歯の形状に合わせて製造することができる。以下に、従来の人工歯の製造方法を説明する。
【０００４】
まず始めに、天然歯の神経組織を歯科クリニックで治療し、損傷した天然歯の表面（損傷部）を除去する。そして、損傷部が除去された天然歯の表面に印象材をコーティングする。印象材が硬化した後、天然歯から硬化した印象材を取り外して、印象用トレイを得る。次に、印象用トレイを、人工歯を製造する歯科技工所に運ぶ。そして、歯科技工所において、印象用トレイに溶融した石膏または金属を流し込むことによって、損傷部が除去された実際の天然歯と同じ形状の歯の見本（歯型）を作製する。
【０００５】
歯型を作製した後、歯型をスタイラススキャナーまたはレーザースキャナーを用いてスキャンする。このスキャニングプロセスによって、歯型の表面座標が得られる。その後、得られた歯型の表面座標をＣＡＤ／ＣＡＭデータに変換し、変換したデータを用いて３次元Ｎ／Ｃ装置を用いて金属を切削し、人工歯が製造される。
【０００６】
製造された人工歯は一定期間焼成された後、得られた人工歯が実際の天然歯と類似するように、人工歯の表面をセラミックでコーティングする。その後、人工歯を歯科クリニックに運び、接着剤等を用いて患者の患部に人工歯を取り付ける。これらのプロセスを経て、患者に対する歯の治療は終了する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかしながら、上述したような従来の人工歯の製造方法では、複雑な製造プロセスが原因で、製造コストが高く、また生産性が落ちるという問題を有していた。また、患者は、人工歯が患部の天然歯と間違い無く調和するようにするため、人工歯が出来上がるまでに何度も歯科に通院しなければならなく、患者に不便をかけてしまう。
【０００８】
従来の人工歯の製造方法によれば、まず第一に、印象用トレイと歯型を作製しなければならなかった。また、人工歯は、歯型をスキャニングした後に、スキャニングした歯型の表面座標に基づいて処理される。このようなプロセスでは、各製造プロセスで起こる蓄積されたエラーによって、人工歯の形状が実際の天然歯の形状とは異なってしまうことがあり、人工歯を患者の患部の天然歯に正確に取り付けることができない。
【０００９】
特に、複数の歯を連結するブリッジタイプの人工歯を製造する場合、３次元変形が起こる可能性がある。ブリッジがとても長い場合には、この変形が深刻になり、ブリッジを患部の天然歯に正確に取り付けることができないため、患部にブリッジを取り付けるのにさらなるプロセスが必要となってしまう。
【００１０】
本発明は、上述したような従来技術の本質的な欠点を解決するためになされたものである。本発明の一つの目的は、製造プロセスの簡素化によって製造コストを削減することができるとともに、印象用トレイおよび歯型を作製することなく実際の天然歯の形状を利用して人工歯を製造することにより生産性を高めることができる歯科用CTを用いた人工歯の製造装置を提供することである。
【００１１】
また、本発明のもう一つの目的は、歯科クリニックで診察するために用いられる歯科用CT装置を活用して、直接天然歯のデータを取得することができ、それにより、歯科用CT装置の利用頻度が高くなり、製造プロセスが簡素化され、蓄積されるエラーを最小限にとどめて、正確に患者の患部の天然歯に取り付けることが可能な天然歯を得ることができる歯科用CTを用いた人工歯の製造装置を提供することである。
【００１２】
また、本発明のさらなる目的は、患者が歯科クリニックに通院する回数を最小限にとどめるとともに、製造プロセスを短縮し、患者にかける不便を減らすことができる歯科用CTを用いた人工歯の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１３】
このような目的を解決する観点から、本発明は、以下の歯科用CTを用いた人工歯の製造装置を提供する。すなわち、本発明の人工歯の製造装置は、患者の天然歯の状態を診断するとともに該天然歯の形状データを取得する歯科用CT装置（１０）と、前記歯科用CT装置（１０）によって得られた前記天然歯の表面座標をCAD／CAMデータに変換するデータコンバータ（２０）と、前記データコンバータ（２０）により変換された前記CAD／CAMデータを利用して金属またはセラミックにより人工歯を作製する３次元N/C装置（３０）とを備えた歯科用CT装置（１０）を用いて人工歯を製造する装置であって、前記データコンバータ（２０）が前記３次元N/C装置（３０）と前記歯科用CT装置（１０）との間に位置しており、前記データコンバータ（２０）と前記３次元N/C装置（３０）との間のデータ通信が有線または無線通信により行われることを特徴とする。
【００１４】
また、本発明の人工歯の製造装置は、前記データコンバータ（２０）が、各歯科クリニックに置かれた複数の歯科用CT装置（１０）と有線または無線通信により接続されており、各歯科クリニックに置かれた複数の前記歯科用CT装置（１０）が前記天然歯の表面座標を前記データコンバータ（２０）に送信し、および／または前記データコンバータ（２０）が変換した前記CAD／CAMデータを前記データコンバータ（２０）とは離れた位置にある前記３次元N／C装置（３０）に送信するものであることが好ましい。
【００１５】
上述したように、本発明の歯科用CT装置を用いた人工歯の製造装置は、印象用トレイおよび歯型を作製することなく実際の天然歯の形状を利用して人工歯を製造することができるという効果を提供する。そのため、製造プロセスの簡素化によって製造コストを削減することができるとともに、生産性を高めることができる。
【００１６】
さらに、本発明の歯科用CT装置を用いた人工歯の製造装置は、印象用トレイを作製するプロセスおよび歯型を作製するプロセスを省略して、蓄積されるエラーを削減する効果を提供する。したがって、製造される人工歯、特にブリッジタイプの人工歯を、患者の患部の天然歯に正確に取り付けることができる。
【００１７】
また、本発明の歯科用CT装置を用いた人工歯の製造装置は、一度に、人工歯を製造するための正確なデータを得ることができるという効果を提供する。そのため、患者が歯科クリニックに通院する回数を最小限に抑えることができる。
【００１８】
上述した効果を有しながらも、さらに、本発明の歯科用CT装置を用いた人工歯の製造装置は、様々な人工歯を製造するために必要なデータが、有線または無線通信を通じて、各歯科クリニックに接続されたデータコンバータによって各歯科クリニックからリアルタイムで得ることができるという効果を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１９】
以下に、本発明の歯科用ＣＴを用いた人工歯の製造装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【００２０】
図１は、従来の人工歯の製造プロセスを示すフローチャートである。図２は、本発明に関する人工歯の製造プロセスを示すフローチャートである。図３は、本発明に関する人工歯の製造装置を示す略ブロック図である。
【００２１】
本発明の歯科用ＣＴを用いた人工歯の製造方法は、損傷部を有する天然歯から、損傷部を除去するステップと、歯科クリニックに置かれた診察用の歯科用CT装置（１０）を用いて損傷部が除去された天然歯の表面座標を得るステップと、天然歯の表面座標をCAD／CAMデータに変換するステップと、変換した前記CAD／CAMデータを用いて、３次元N／C装置（３０）により金属材料またはセラミック材料を切削して人工歯を作製するステップと、人工歯に対応する前記天然歯の上歯または下歯（損傷部を除去した側とは反対側の天然歯）の形状データを取得するステップと、上歯または下歯の形状データに基づいて、人工歯に対して直接表面処理を施し、人工歯の形状を加工するステップと、表面処理が施された人工歯を一定期間焼成した後に、人工歯の表面をセラミックでコーティングするステップとを有する。
【００２２】
また、本発明の歯科用ＣＴを用いた人工歯の製造装置は、患者の天然歯の状態を診断するとともに天然歯の形状データを取得する歯科用CT装置（１０）と、歯科用CT装置（１０）によって得られた天然歯の表面座標をCAD／CAMデータに変換するデータコンバータ（２０）と、データコンバータ（２０）により変換されたCAD／CAMデータを利用して金属材料またはセラミック材料により人工歯を作製する３次元N/C装置（３０）とを備えている。
【００２３】
また、本発明の人工歯の製造装置では、データコンバータ（２０）が各歯科クリニックに置かれた複数の歯科用ＣＴ装置（１０）と有線または無線通信により接続されており、各歯科クリニックに置かれた複数の歯科用ＣＴ装置（１０）は、リアルタイムで天然歯の表面座標をデータコンバータ（２０）に送信する。
【００２４】
また、３次元Ｎ／Ｃ装置（３０）は、各歯科クリニックに備えることができ、各歯科クリニックに置かれた歯科用ＣＴ装置（１０）に直接接続させることができる。しかしながら、図３に示すように、１つの３次元Ｎ／Ｃ装置（３０）を各歯科クリニックに置かれた複数の歯科用ＣＴ装置（１０）に接続させるのが望ましい。いずれの場合にしても、人工歯を作製するための表面座標のデータは、リアルタイムで３次元Ｎ／Ｃ装置（３０）に送信される。そのため、遅れることなく、人工歯を作製し、供給することができる。
【００２５】
各歯科クリニックに置かれた複数の歯科用ＣＴ装置（１０）は、１つのＮ／Ｃ装置（３０）と接続されているため、人工歯の製造および供給を非常に効率良く行うことができる。したがって、人工歯の生産性を非常に高めることができる。
【００２６】
また、３次元Ｎ／Ｃ装置（３０）は、様々な有線または無線通信を経由して、異なる歯科クリニックに置かれた複数の歯科用ＣＴ装置（１０）に接続することができる。したがって、異なる場所に設置された各歯科クリニックから送信されたデータを収集することによって、人工歯の製造プロセスは効率良く行われる。その結果、人工歯の製造時間を短縮することができるとともに、遅れることなく各歯科クリニックに人工歯を供給することができる。
【００２７】
明細書中、「歯科用ＣＴ装置」とは、歯科クリニックで診察に用いられる一般的な歯科用ＣＴ装置を意味する。現在では、歯科用ＣＴは、インプラント処理の場合に、必要な画像情報を得るためだけに用いられる。
【００２８】
本発明は、患者の天然歯を診断するプロセスにおいて、天然歯の表面座標を検出し、その表面座標をリアルタイムで３次元Ｎ／Ｃ装置（３０）に送信する点に特徴を有している。
【００２９】
歯科用ＣＴを用いた人工歯の製造装置に関する本発明によれば、人工歯を製造するために印象用トレイおよび歯型を作製する必要がないため、人工歯の製造プロセスを簡素化することができる。
【００３０】
また、天然歯の表面座標は、患者の天然歯の診断時に得ることができるため、患者は、人工歯を得るために何度も歯科クリニックに通院する必要はない。
【００３１】
以下、本発明の人工歯の製造装置を用いた人口歯の製造方法について説明する。
【００３２】
まず始めに、天然歯の神経組織を歯科クリニックで治療した後に、損傷した天然歯の表面（損傷部）を除去する。その後、歯科用ＣＴ装置（１０）を用いて、治療した天然歯の写真を撮る。その撮られた写真から実際の患者の天然歯の表面座標を得ることができる。得られた表面座標は、リアルタイムでデータコンバータ（２０）に送信され、データコンバータ（２０）によってＣＡＤ／ＣＡＭデータに変換される。そして、３次元Ｎ／Ｃ装置（３０）が、その表面座標を用いて金属材料またはセラミック材料を切削して、人工歯を製造する。
【００３３】
人工歯が製造された後に、人工歯の形状は、人工歯に対応する天然歯の上歯または下歯（損傷部を除去した側とは反対側の天然歯）の形状によって直接表面処理されることにより、加工される。したがって、患者の天然歯に対応した正確な人工歯を得ることができる。
【００３４】
その後、得られた人工歯は歯科クリニックに運ばれ、一定期間焼成された後、セラミックでコーティングされる。最終的に、人工歯は、歯科用セメントのような接着剤により患者の患部の天然歯に取り付けられる。これらのプロセスを経て、患者への治療は終了する。
【００３５】
以上、本発明を本発明の好ましい実施形態に基づいて説明したが、これは、説明の都合上のためだけの説明であり、決して、発明の範囲を限定しようとするものではない。当業者であれば、クレームで規定する精神および範囲から離れることなく様々な変更および修正を上述した実施形態に加えることができるのは理解されよう。
【００３６】
上述したように、本発明は、天然歯の損傷部を除去した後に、患者の患部の天然歯に取り付けることができる歯科用ＣＴを用いた人工歯の製造方法および製造装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【００３７】
【図１】図１は、従来の人工歯の製造プロセスを示すフローチャートである。
【図２】図２は、本発明に関する人工歯の製造プロセスを示すフローチャートである。
【図３】図３は、本発明に関する人工歯の製造装置を示す略ブロック図である。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、歯科用ＣＴ（コンピュータ断層撮影）を用いた人工歯の製造装置に関する。特に、人工歯の製造過程において、患者の天然歯から直接的に必要なデータを取得することによって蓄積されるエラーの影響を最小限にとどめて、損傷部を除去した後に損傷部が除去された天然歯に取り付けることが可能な人工歯の製造装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
図１に示すように、一般的な人工歯の製造方法は、天然歯の損傷部を除去するステップと、損傷部が除去された天然歯の表面に印象材をコーティングし、硬化させることによって印象用トレイを形成するステップと、印象用トレイに溶融した石膏または金属を流し込むことによって歯型を形成するステップと、スタイラススキャナーまたはレーザースキャナーを用いて歯型の表面座標を取得するステップと、歯型の表面座標をＣＡＤ／ＣＡＭデータに変換するステップと、変換したデータを用いて３次元Ｎ／Ｃ装置により金属を切削して人工歯を製造するステップと、処理された人工歯を一定期間焼成した後に人工歯の表面をセラミックでコーティングするステップとを有する。
【０００３】
上述した人工歯の製造方法によれば、損傷部が除去された天然歯を被覆する人工歯は、３次元Ｎ／Ｃ装置を用いた人工歯の製造方法によって、天然歯の形状に合わせて製造することができる。以下に、従来の人工歯の製造方法を説明する。
【０００４】
まず始めに、天然歯の神経組織を歯科クリニックで治療し、損傷した天然歯の表面（損傷部）を除去する。そして、損傷部が除去された天然歯の表面に印象材をコーティングする。印象材が硬化した後、天然歯から硬化した印象材を取り外して、印象用トレイを得る。次に、印象用トレイを、人工歯を製造する歯科技工所に運ぶ。そして、歯科技工所において、印象用トレイに溶融した石膏または金属を流し込むことによって、損傷部が除去された実際の天然歯と同じ形状の歯の見本（歯型）を作製する。
【０００５】
歯型を作製した後、歯型をスタイラススキャナーまたはレーザースキャナーを用いてスキャンする。このスキャニングプロセスによって、歯型の表面座標が得られる。その後、得られた歯型の表面座標をＣＡＤ／ＣＡＭデータに変換し、変換したデータを用いて３次元Ｎ／Ｃ装置を用いて金属を切削し、人工歯が製造される。
【０００６】
製造された人工歯は一定期間焼成された後、得られた人工歯が実際の天然歯と類似するように、人工歯の表面をセラミックでコーティングする。その後、人工歯を歯科クリニックに運び、接着剤等を用いて患者の患部に人工歯を取り付ける。これらのプロセスを経て、患者に対する歯の治療は終了する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかしながら、上述したような従来の人工歯の製造方法では、複雑な製造プロセスが原因で、製造コストが高く、また生産性が落ちるという問題を有していた。また、患者は、人工歯が患部の天然歯と間違い無く調和するようにするため、人工歯が出来上がるまでに何度も歯科に通院しなければならなく、患者に不便をかけてしまう。
【０００８】
従来の人工歯の製造方法によれば、まず第一に、印象用トレイと歯型を作製しなければならなかった。また、人工歯は、歯型をスキャニングした後に、スキャニングした歯型の表面座標に基づいて処理される。このようなプロセスでは、各製造プロセスで起こる蓄積されたエラーによって、人工歯の形状が実際の天然歯の形状とは異なってしまうことがあり、人工歯を患者の患部の天然歯に正確に取り付けることができない。
【０００９】
特に、複数の歯を連結するブリッジタイプの人工歯を製造する場合、３次元変形が起こる可能性がある。ブリッジがとても長い場合には、この変形が深刻になり、ブリッジを患部の天然歯に正確に取り付けることができないため、患部にブリッジを取り付けるのにさらなるプロセスが必要となってしまう。
【００１０】
本発明は、上述したような従来技術の本質的な欠点を解決するためになされたものである。本発明の一つの目的は、製造プロセスの簡素化によって製造コストを削減することができるとともに、印象用トレイおよび歯型を作製することなく実際の天然歯の形状を利用して人工歯を製造することにより生産性を高めることができる歯科用CTを用いた人工歯の製造装置を提供することである。
【００１１】
また、本発明のもう一つの目的は、歯科クリニックで診察するために用いられる歯科用CT装置を活用して、直接天然歯のデータを取得することができ、それにより、歯科用CT装置の利用頻度が高くなり、製造プロセスが簡素化され、蓄積されるエラーを最小限にとどめて、正確に患者の患部の天然歯に取り付けることが可能な天然歯を得ることができる歯科用CTを用いた人工歯の製造装置を提供することである。
【００１２】
また、本発明のさらなる目的は、患者が歯科クリニックに通院する回数を最小限にとどめるとともに、製造プロセスを短縮し、患者にかける不便を減らすことができる歯科用CTを用いた人工歯の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１３】
このような目的を解決する観点から、本発明は、以下の歯科用CTを用いた人工歯の製造装置を提供する。すなわち、本発明の人工歯の製造装置は、患者の天然歯の状態を診断するとともに該天然歯の形状データを取得する歯科用CT装置（１０）と、前記歯科用CT装置（１０）によって得られた前記天然歯の表面座標をCAD／CAMデータに変換するデータコンバータ（２０）と、前記データコンバータ（２０）により変換された前記CAD／CAMデータを利用して金属またはセラミックにより人工歯を作製する３次元N/C装置（３０）とを備えた歯科用CT装置（１０）を用いて人工歯を製造する装置であって、前記データコンバータ（２０）が前記３次元N/C装置（３０）と前記歯科用CT装置（１０）との間に位置しており、前記データコンバータ（２０）と前記３次元N/C装置（３０）との間のデータ通信が有線または無線通信により行われることを特徴とする。
【００１４】
また、本発明の人工歯の製造装置は、前記データコンバータ（２０）が、各歯科クリニックに置かれた複数の歯科用CT装置（１０）と有線または無線通信により接続されており、各歯科クリニックに置かれた複数の前記歯科用CT装置（１０）が前記天然歯の表面座標を前記データコンバータ（２０）に送信し、および／または前記データコンバータ（２０）が変換した前記CAD／CAMデータを前記データコンバータ（２０）とは離れた位置にある前記３次元N／C装置（３０）に送信するものであることが好ましい。
【００１５】
上述したように、本発明の歯科用CT装置を用いた人工歯の製造装置は、印象用トレイおよび歯型を作製することなく実際の天然歯の形状を利用して人工歯を製造することができるという効果を提供する。そのため、製造プロセスの簡素化によって製造コストを削減することができるとともに、生産性を高めることができる。
【００１６】
さらに、本発明の歯科用CT装置を用いた人工歯の製造装置は、印象用トレイを作製するプロセスおよび歯型を作製するプロセスを省略して、蓄積されるエラーを削減する効果を提供する。したがって、製造される人工歯、特にブリッジタイプの人工歯を、患者の患部の天然歯に正確に取り付けることができる。
【００１７】
また、本発明の歯科用CT装置を用いた人工歯の製造装置は、一度に、人工歯を製造するための正確なデータを得ることができるという効果を提供する。そのため、患者が歯科クリニックに通院する回数を最小限に抑えることができる。
【００１８】
上述した効果を有しながらも、さらに、本発明の歯科用CT装置を用いた人工歯の製造装置は、様々な人工歯を製造するために必要なデータが、有線または無線通信を通じて、各歯科クリニックに接続されたデータコンバータによって各歯科クリニックからリアルタイムで得ることができるという効果を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１９】
以下に、本発明の歯科用ＣＴを用いた人工歯の製造装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【００２０】
図１は、従来の人工歯の製造プロセスを示すフローチャートである。図２は、本発明に関する人工歯の製造プロセスを示すフローチャートである。図３は、本発明に関する人工歯の製造装置を示す略ブロック図である。
【００２１】
本発明の歯科用ＣＴを用いた人工歯の製造方法は、損傷部を有する天然歯から、損傷部を除去するステップと、歯科クリニックに置かれた診察用の歯科用CT装置（１０）を用いて損傷部が除去された天然歯の表面座標を得るステップと、天然歯の表面座標をCAD／CAMデータに変換するステップと、変換した前記CAD／CAMデータを用いて、３次元N／C装置（３０）により金属材料またはセラミック材料を切削して人工歯を作製するステップと、人工歯に対応する前記天然歯の上歯または下歯（損傷部を除去した側とは反対側の天然歯）の形状データを取得するステップと、上歯または下歯の形状データに基づいて、人工歯に対して直接表面処理を施し、人工歯の形状を加工するステップと、表面処理が施された人工歯を一定期間焼成した後に、人工歯の表面をセラミックでコーティングするステップとを有する。
【００２２】
また、本発明の歯科用ＣＴを用いた人工歯の製造装置は、患者の天然歯の状態を診断するとともに天然歯の形状データを取得する歯科用CT装置（１０）と、歯科用CT装置（１０）によって得られた天然歯の表面座標をCAD／CAMデータに変換するデータコンバータ（２０）と、データコンバータ（２０）により変換されたCAD／CAMデータを利用して金属材料またはセラミック材料により人工歯を作製する３次元N/C装置（３０）とを備えている。
【００２３】
また、本発明の人工歯の製造装置では、データコンバータ（２０）が各歯科クリニックに置かれた複数の歯科用ＣＴ装置（１０）と有線または無線通信により接続されており、各歯科クリニックに置かれた複数の歯科用ＣＴ装置（１０）は、リアルタイムで天然歯の表面座標をデータコンバータ（２０）に送信する。
【００２４】
また、３次元Ｎ／Ｃ装置（３０）は、各歯科クリニックに備えることができ、各歯科クリニックに置かれた歯科用ＣＴ装置（１０）に直接接続させることができる。しかしながら、図３に示すように、１つの３次元Ｎ／Ｃ装置（３０）を各歯科クリニックに置かれた複数の歯科用ＣＴ装置（１０）に接続させるのが望ましい。いずれの場合にしても、人工歯を作製するための表面座標のデータは、リアルタイムで３次元Ｎ／Ｃ装置（３０）に送信される。そのため、遅れることなく、人工歯を作製し、供給することができる。
【００２５】
各歯科クリニックに置かれた複数の歯科用ＣＴ装置（１０）は、１つのＮ／Ｃ装置（３０）と接続されているため、人工歯の製造および供給を非常に効率良く行うことができる。したがって、人工歯の生産性を非常に高めることができる。
【００２６】
また、３次元Ｎ／Ｃ装置（３０）は、様々な有線または無線通信を経由して、異なる歯科クリニックに置かれた複数の歯科用ＣＴ装置（１０）に接続することができる。したがって、異なる場所に設置された各歯科クリニックから送信されたデータを収集することによって、人工歯の製造プロセスは効率良く行われる。その結果、人工歯の製造時間を短縮することができるとともに、遅れることなく各歯科クリニックに人工歯を供給することができる。
【００２７】
明細書中、「歯科用ＣＴ装置」とは、歯科クリニックで診察に用いられる一般的な歯科用ＣＴ装置を意味する。現在では、歯科用ＣＴは、インプラント処理の場合に、必要な画像情報を得るためだけに用いられる。
【００２８】
本発明は、患者の天然歯を診断するプロセスにおいて、天然歯の表面座標を検出し、その表面座標をリアルタイムで３次元Ｎ／Ｃ装置（３０）に送信する点に特徴を有している。
【００２９】
歯科用ＣＴを用いた人工歯の製造装置に関する本発明によれば、人工歯を製造するために印象用トレイおよび歯型を作製する必要がないため、人工歯の製造プロセスを簡素化することができる。
【００３０】
また、天然歯の表面座標は、患者の天然歯の診断時に得ることができるため、患者は、人工歯を得るために何度も歯科クリニックに通院する必要はない。
【００３１】
以下、本発明の人工歯の製造装置を用いた人口歯の製造方法について説明する。
【００３２】
まず始めに、天然歯の神経組織を歯科クリニックで治療した後に、損傷した天然歯の表面（損傷部）を除去する。その後、歯科用ＣＴ装置（１０）を用いて、治療した天然歯の写真を撮る。その撮られた写真から実際の患者の天然歯の表面座標を得ることができる。得られた表面座標は、リアルタイムでデータコンバータ（２０）に送信され、データコンバータ（２０）によってＣＡＤ／ＣＡＭデータに変換される。そして、３次元Ｎ／Ｃ装置（３０）が、その表面座標を用いて金属材料またはセラミック材料を切削して、人工歯を製造する。
【００３３】
人工歯が製造された後に、人工歯の形状は、人工歯に対応する天然歯の上歯または下歯（損傷部を除去した側とは反対側の天然歯）の形状によって直接表面処理されることにより、加工される。したがって、患者の天然歯に対応した正確な人工歯を得ることができる。
【００３４】
その後、得られた人工歯は歯科クリニックに運ばれ、一定期間焼成された後、セラミックでコーティングされる。最終的に、人工歯は、歯科用セメントのような接着剤により患者の患部の天然歯に取り付けられる。これらのプロセスを経て、患者への治療は終了する。
【００３５】
以上、本発明を本発明の好ましい実施形態に基づいて説明したが、これは、説明の都合上のためだけの説明であり、決して、発明の範囲を限定しようとするものではない。当業者であれば、クレームで規定する精神および範囲から離れることなく様々な変更および修正を上述した実施形態に加えることができるのは理解されよう。
【００３６】
上述したように、本発明は、天然歯の損傷部を除去した後に、患者の患部の天然歯に取り付けることができる歯科用ＣＴを用いた人工歯の製造方法および製造装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【００３７】
【図１】図１は、従来の人工歯の製造プロセスを示すフローチャートである。
【図２】図２は、本発明に関する人工歯の製造プロセスを示すフローチャートである。
【図３】図３は、本発明に関する人工歯の製造装置を示す略ブロック図である。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
患者の天然歯の状態を診断するとともに該天然歯の形状データを取得する歯科用CT装置と、前記歯科用CT装置によって得られた前記天然歯の表面座標をCAD／CAMデータに変換するデータコンバータと、前記データコンバータにより変換された前記CAD／CAMデータを利用して金属またはセラミックにより人工歯を作製する３次元N/C装置とを備えた歯科用CTを用いて人工歯を製造する装置であって、
前記データコンバータが前記３次元N/C装置と前記歯科用CT装置との間に位置しており、前記データコンバータと前記３次元N/C装置との間のデータ通信が有線または無線通信により行われることを特徴とする人工歯の製造装置。
【請求項２】
前記データコンバータは、各歯科クリニックに置かれた複数の歯科用CT装置と有線または無線通信により接続されており、各歯科クリニックに置かれた複数の前記歯科用CT装置が前記天然歯の表面座標を前記データコンバータに送信し、および／または前記データコンバータが変換した前記CAD／CAMデータを前記データコンバータとは離れた位置にある前記３次元N／C装置に送信する請求項１に記載の人工歯の製造装置。
【請求項１】
患者の天然歯の状態を診断するとともに該天然歯の形状データを取得する歯科用CT装置と、前記歯科用CT装置によって得られた前記天然歯の表面座標をCAD／CAMデータに変換するデータコンバータと、前記データコンバータにより変換された前記CAD／CAMデータを利用して金属またはセラミックにより人工歯を作製する３次元N/C装置とを備えた歯科用CTを用いて人工歯を製造する装置であって、
前記データコンバータが前記３次元N/C装置と前記歯科用CT装置との間に位置しており、前記データコンバータと前記３次元N/C装置との間のデータ通信が有線または無線通信により行われることを特徴とする人工歯の製造装置。
【請求項２】
前記データコンバータは、各歯科クリニックに置かれた複数の歯科用CT装置と有線または無線通信により接続されており、各歯科クリニックに置かれた複数の前記歯科用CT装置が前記天然歯の表面座標を前記データコンバータに送信し、および／または前記データコンバータが変換した前記CAD／CAMデータを前記データコンバータとは離れた位置にある前記３次元N／C装置に送信する請求項１に記載の人工歯の製造装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図２】
【図３】
【公開番号】特開２０１３−９９９６（Ｐ２０１３−９９９６Ａ）
【公開日】平成２５年１月１７日（２０１３．１．１７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１２−２０４７５４（Ｐ２０１２−２０４７５４）
【出願日】平成２４年９月１８日（２０１２．９．１８）
【分割の表示】特願２００９−５３８３０１（Ｐ２００９−５３８３０１）の分割
【原出願日】平成１９年８月２９日（２００７．８．２９）
【出願人】（５０９１４１７１８）レイ カンパニー，リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】ＲＡＹ ＣＯ．， ＬＴＤ
【住所又は居所原語表記】Ｐａｒｋｖｉｅｗ ｂｕｓｉｎｅｓｓ ｓｅｃｔｉｏｎ ＃９０３ ９０４， ６ Ｊｅｏｎｇｊａ−Ｄｏｎｇ，Ｂｕｎｄａｎｇ−Ｇｕ，Ｓｅｏｎｇｎａｍ−ｓｉ，Ｇｙｅｏｎｇｇｉ−ｄｏ ４６３−０１０ Ｒｅｐｕｂｌｉｃ ｏｆ Ｋｏｒｅａ
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２５年１月１７日（２０１３．１．１７）
【国際特許分類】
【出願日】平成２４年９月１８日（２０１２．９．１８）
【分割の表示】特願２００９−５３８３０１（Ｐ２００９−５３８３０１）の分割
【原出願日】平成１９年８月２９日（２００７．８．２９）
【出願人】（５０９１４１７１８）レイ カンパニー，リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】ＲＡＹ ＣＯ．， ＬＴＤ
【住所又は居所原語表記】Ｐａｒｋｖｉｅｗ ｂｕｓｉｎｅｓｓ ｓｅｃｔｉｏｎ ＃９０３ ９０４， ６ Ｊｅｏｎｇｊａ−Ｄｏｎｇ，Ｂｕｎｄａｎｇ−Ｇｕ，Ｓｅｏｎｇｎａｍ−ｓｉ，Ｇｙｅｏｎｇｇｉ−ｄｏ ４６３−０１０ Ｒｅｐｕｂｌｉｃ ｏｆ Ｋｏｒｅａ
【Ｆターム（参考）】
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