説明

残留塩素除去剤及びそれを用いた残留塩素含有水の処理方法

【課題】遊離塩素や結合塩素等の残留塩素を含有する水を加熱処理することなく、触媒的に水中に含まれる残留塩素を十分に分解除去することを可能とする残留塩素除去剤を提供すること。
【解決手段】(A)下記一般式(1):
【化1】


[式(1)中、R、R及びRは、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基等を表す。]
で表される3級アミン、
N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート重合体、
N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド重合体、
N,N−ジ置換アミノアルキル化スチレン重合体、
N,N−ジ置換アミノアルキル化シリカゲル、及び
N,N−ジ置換アミノアルキル化ゼオライト
からなる群から選択される少なくとも1種の3級アミノ化合物;及び/又は;
(B)下記一般式(2):
【化2】


[式(2)中、Rは、アミノ基等を表す。]
で表されるグアニジノ化合物;
を含有することを特徴とする残留塩素除去剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に含まれる残留塩素を分解除去する技術として有用な残留塩素除去剤並びにそれを用いた残留塩素含有水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
殺菌や滅菌のために用水や廃水を塩素処理した場合には、遊離塩素や結合塩素等の残留塩素が処理水中に残留するために後工程の処理の障害になったり、そのまま放流できないために、残留塩素を除去する必要が生ずる場合がある。従来より、遊離塩素を除去する方法としては亜硫酸塩、次亜硫酸塩、チオ硫酸塩といった還元剤を処理水に添加する方法が、また、残留塩素を除去する方法としては活性炭と接触させる方法が一般的に用いられている。例えば、特開平7−185565号公報(特許文献1)には、廃水中の塩素をきわめて低い濃度まで低減させ、周辺環境への影響を軽減させる方法として、廃水を曝気層に貯留して廃水中の塩素を揮散させたのち、さらにチオ硫酸ナトリウムを添加する遊離塩素除去方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、還元剤を用いる方法は、還元剤を遊離塩素に対して当量添加するために、酸化還元電位計といった制御装置を必要とし、また、制御装置を用いても完全に当量を添加することは難しいので、遊離塩素又は還元剤のいずれかが残留してしまう。さらに、還元剤が消費されるので、経済性に問題があった。一方、活性炭を用いる方法は、活性炭が残留塩素を吸着して消費され、特に高濃度の遊離塩素と接触させた場合、粒状活性炭の一部が破損したり、活性炭を頻繁に取り替えない限り活性炭の充填領域において雑菌が繁殖する虞れがあるといった問題があった。
【0004】
また、遊離塩素はアンモニア等の1級又は2級アミン化合物とクロラミン(結合塩素)を形成することが知られており、アンモニア成分を除去する方法として用いられている。しかしながら、クロラミンを形成するためには遊離塩素と1級又は2級アミン化合物が当量必要となり、制御装置を必要とし、また、制御装置を用いても完全に当量を添加することは難しいので、遊離塩素又は1級若しくは2級アミン化合物のいずれかが過剰に残留してしまうといった問題があった。さらに、クロラミンは経時的に徐々に分解して再び遊離塩素が発生するといった問題があった。
【0005】
これらの問題を解決するために特開平6−142659号公報(特許文献2)や特開2003−47977号公報(特許文献3)には、遊離塩素を含有する水を金属チタンやコバルト酸化物担持物と接触処理させて遊離塩素を除去する方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、遊離塩素を含有する水が低温では遊離塩素が除去できず、そのため遊離塩素を含有する水を加熱処理して高温にする必要があるといった問題があった。
【特許文献1】特開平7−185565号公報
【特許文献2】特開平6−142659号公報
【特許文献3】特開2003−47977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、遊離塩素や結合塩素等の残留塩素を含有する水を加熱処理することなく、触媒的に水中に含まれる残留塩素を十分に分解除去することを可能とする残留塩素除去剤、並びに接触処理により水中の残留塩素を十分に分解除去することを可能とする残留塩素含有水の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の3級アミノ化合物及び/又は特定のグアニジノ化合物を有する化合物を含有する残留塩素除去剤により、残留塩素含有水と接触処理することによって、常温においても触媒的に水中に含まれる遊離塩素や結合塩素等の残留塩素を効率よく分解除去することができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の残留塩素除去剤は、(A)下記一般式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
[式(1)中、R、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、及びシクロヘキシル基からなる群から選択される少なくとも1種を表し、R及びR、R及びR、又は、R及びRは相互に結合して窒素原子と共に環を形成していてもよい。]
で表される3級アミン、
N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート重合体、
N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド重合体、
N,N−ジ置換アミノアルキル化スチレン重合体、
N,N−ジ置換アミノアルキル化シリカゲル、及び
N,N−ジ置換アミノアルキル化ゼオライト
からなる群から選択される少なくとも1種の3級アミノ化合物;及び/又は;
(B)下記一般式(2):
【0012】
【化2】

【0013】
[式(2)中、Rは、水素、アミノ基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、アミジノ基、ビグアニド基、アリルアミジノ基、グアニジノアルキレン基、及びアミノカルボキシアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種を表す。]
で表されるグアニジノ化合物;
を含有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の残留塩素除去剤においては、前記(A)3級アミノ化合物が、3級アルキルアミン、3級ヒドロキシアルキルアミン、3級アルケニルアミン、3級アラルキルアミン、N,N−ジ置換アニリン、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジ置換アミノアルキル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジ置換アミノアルキル化シリカゲル及びN,N−ジ置換アミノアルキル化ゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の残留塩素除去剤においては、前記(A)3級アミノ化合物が、塩を形成していることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の残留塩素除去剤においては、前記(B)グアニジノ化合物が、グアニジン、アミノグアニジン、グアニル尿素、グアニルチオ尿素、ビグアニド、トリグアニド、アリルビグアニド、アルキレンジグアニジン及びアルギニンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の残留塩素除去剤においては、前記(B)グアニジノ化合物が、塩を形成していることが好ましい。
【0018】
本発明の残留塩素含有水の処理方法は、前記残留塩素除去剤と残留塩素含有水とを接触処理することを特徴とする方法である。
【0019】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味し、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルを意味する。また、残留塩素とは、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン又は溶存塩素の形で存在する塩素等の遊離塩素、及びクロラミン等の結合塩素を意味する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、遊離塩素や結合塩素等の残留塩素を含有する水を加熱処理することなく、触媒的に水中に含まれる残留塩素を十分に分解除去することを可能とする残留塩素除去剤、並びに接触処理により水中の残留塩素を十分に分解除去することを可能とする残留塩素含有水の処理方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の残留塩素除去剤及びそれを用いた残留塩素含有水の処理方法をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0022】
先ず、本発明の残留塩素除去剤について説明する。本発明の残留塩素除去剤は、後述する(A)3級アミノ化合物、及び/又は後述する(B)グアニジノ化合物を含有するものである。
【0023】
本発明に用いられる(A)3級アミノ化合物は、後述する3級アミン、
後述するN,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート重合体、
後述するN,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド重合体、
後述するN,N−ジ置換アミノアルキル化スチレン重合体、
後述するN,N−ジ置換アミノアルキル化シリカゲル、及び
後述するN,N−ジ置換アミノアルキル化ゼオライト
からなる群から選択される少なくとも1種のものである。
【0024】
本発明に用いられる3級アミンは、下記一般式(1)により表される化合物である。
【0025】
【化3】

【0026】
一般式(1)において、R、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、及びシクロヘキシル基からなる群から選択される少なくとも1種を表す。そして、炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。このような3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の3級アルキルアミンが挙げられる。また、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基が挙げられる。このような3級アミンとしては、例えば、トリヒドロキシエチルアミン、トリヒドロキシプロピルアミン、トリヒドロキシブチルアミン、N−メチルジヒドロキシエチルアミン、N−メチルジヒドロキシプロピルアミン、N−メチルジヒドロキシブチルアミン、N−エチルジヒドロキシエチルアミン、N−プロピルジヒドロキシエチルアミン、N−ブチルジヒドロキシエチルアミン、N,N−ジメチルヒドロキシエチルアミン、N,N−ジメチルヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジメチルヒドロキシブチルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシエチルアミン、N,N−ジプロピルヒドロキシエチルアミン、N,N−ジブチルヒドロキシエチルアミン等の3級ヒドロキシアルキルアミンが挙げられる。
【0027】
さらに、炭素数2〜4のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基が挙げられる。このような3級アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N−ジメチルイソプロペニルアミン、N,N−ジメチルブテニルアミン、N,N−ジエチルアリルアミン、N,N−ジプロピルアリルアミン、N,N−ジブチルアリルアミン、N,N−ジヒドロキシエチルアリルアミン、N,N−ジヒドロキシプロピルアリルアミン、N,N−ジヒドロキシブチルアリルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N−メチルジアリルアミン、N−エチルジアリルアミン、N−プロピルジアリルアミン、N−ブチルジアリルアミン、N−ヒドロキシエチルジアリルアミン、N−ヒドロキシプロピルジアリルアミン、N−ヒドロキシブチルジアリルアミン、トリアリルアミン等の3級アルケニルアミンが挙げられる。また、置換基を有してもよいアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、メチルベンジル基、メトキシベンジル基が挙げられる。このような3級アミンとしては、例えば、トリベンジルアミン、N−メチルジベンジルアミン、N−エチルジベンジルアミン、N−プロピルジベンジルアミン、N−ブチルジベンジルアミン、N−ヒドロキシエチルジベンジルアミン、N−ヒドロキシプロピルジベンジルアミン、N−ヒドロキシブチルジベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチル−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチル−メトキシベンジルアミン、N,N−ジエチルベンジルアミン、N,N−ジプロピルベンジルアミン、N,N−ジブチルベンジルアミン、N,N−ジヒドロキシエチルベンジルアミン、N,N−ジヒドロキシプロピルベンジルアミン、N,N−ジヒドロキシブチルベンジルアミン、N−メチル−N−ヒドロキシエチルベンジルアミン、N−メチル−N−ヒドロキシプロピルベンジルアミン、N−エチル−N−ヒドロキシエチルベンジルアミン、N−エチル−N−ヒドロキシプロピルベンジルアミン等の3級アラルキルアミンが挙げられる。さらに、置換基を有してもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メトキシフェニル基が挙げられる。このような3級アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジプロピルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシプロピルアニリン、N,N−ジヒドロキシブチルアニリン、N,N−ジメチル−メチルアニリン、N,N−ジメチル−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−メトキシアニリン、N−メチル−N−ヒドロキシエチルアニリン、N−メチル−N−ヒドロキシプロピルアニリン、N−エチル−N−ヒドロキシエチルアニリン、N−エチル−N−ヒドロキシプロピルアニリン等のN,N−ジ置換アニリンが挙げられる。また、シクロヘキシル基を有する3級アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノシクロヘキサン、N,N−ジエチルアミノシクロヘキサン、N,N−ジプロピルアミノシクロヘキサン、N,N−ジブチルアミノシクロヘキサン、N,N−ジヒドロキシエチルアミノシクロヘキサン、N,N−ジヒドロキシプロピルアミノシクロヘキサン、N,N−ジヒドロキシブチルアミノシクロヘキサン等のN,N−ジ置換アミノシクロヘキサンが挙げられる。
【0028】
また、一般式(1)においては、R及びR、R及びR、又は、R及びRは相互に結合して窒素原子と共に環を形成していてもよい。そして、このような3級アミンとしては、例えば、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−プロピルピペリジン、N−ブチルピペリジン、N−ヒドロキシエチルピペリジン、N−ヒドロキシプロピルピペリジン、N−ヒドロキシブチルピペリジン等のN−置換ピペリジン;N−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン、N−プロピルピロリジン、N−ブチルピロリジン、N−ヒドロキシエチルピロリジン、N−ヒドロキシプロピルピロリジン、N−ヒドロキシブチルピロリジン等のN−置換ピロリジン;N,N’−ジメチルピペラジン、N,N’−ジエチルピペラジン、N,N’−ジプロピルピペラジン、N,N’−ジブチルピペラジン、N,N’−ジヒドロキシエチルピペラジン、N,N’−ジヒドロキシプロピルピペラジン、N,N’−ジヒドロキシブチルピペラジン等のN,N−ジ置換ピペラジンが挙げられる。
【0029】
本発明に用いられるN,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート重合体は、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体であってもよく、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な他のビニル系化合物との共重合体であってもよく、さらには2量体や3量体等のオリゴマーであってもよい。N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート重合体のアルキルとしては、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン等が挙げられ、かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等のヒドロキシアルキル基が挙げられる。また、このような重合可能な他のビニル系化合物としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミド;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル;ビニルベンゼン(スチレン)、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の芳香族アルケニル化合物が挙げられる。
【0030】
このようなN,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート重合体としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート重合体、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート重合体、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート重合体、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート重合体、N,N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート重合体、N,N−ジヒドロキシプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート重合体、N,N−ジヒドロキシブチルアミノエチル(メタ)アクリレート重合体、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート重合体、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート重合体、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート重合体、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート重合体、N,N−ジプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート重合体、N,N−ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート重合体等の単独重合体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジヒドロキシプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジヒドロキシブチルアミノエチル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体等の共重合体が挙げられる。これらの重合体の中でも、残留塩素の除去性を高めることができるという観点から、ジビニルベンゼンとの共重合体が好ましい。
【0031】
また、このようなN,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート重合体の数平均分子量は3,000,000以下であることが好ましく、1,000,000以下であることがより好ましい。N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート重合体の平均分子量が前記上限を超えると残留塩素の除去性が低下する傾向にある。
【0032】
本発明に用いられるN,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド重合体は、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミドの単独重合体であってもよく、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミドと共重合可能な他のビニル系化合物との共重合体であってもよく、さらには2量体や3量体等のオリゴマーであってもよい。N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド重合体のアルキルとしては、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン等が挙げられ、かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等のヒドロキシアルキル基が挙げられる。また、このような重合可能な他のビニル系化合物としては、前記N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な他のビニル系化合物と同様のものが挙げられる。
【0033】
このようなN,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド重合体としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド重合体、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド重合体、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド重合体、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド重合体、N,N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド重合体、N,N−ジヒドロキシプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド重合体、N,N−ジヒドロキシブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド重合体、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド重合体、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド重合体、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド重合体、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド重合体、N,N−ジプロピルアミノメチル(メタ)アクリルアミド重合体、N,N−ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド重合体等の単独重合体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジヒドロキシプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジヒドロキシブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジプロピルアミノメチル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体等の共重合体が挙げられる。これらの重合体の中でも、残留塩素の除去性を高めることができるという観点から、ジビニルベンゼンとの共重合体が好ましい。
【0034】
また、このようなN,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド重合体の数平均分子量は3,000,000以下であることが好ましく、1,000,000以下であることがより好ましい。N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド重合体の平均分子量が前記上限を超えると残留塩素の除去性が低下する傾向にある。
【0035】
本発明に用いられるN,N−ジ置換アミノアルキル化スチレン重合体は、N,N−ジ置換アミノアルキル化スチレンの単独重合体であってもよく、N,N−ジ置換アミノアルキル化スチレンと共重合可能な他のビニル系化合物との共重合体であってもよく、さらには2量体や3量体等のオリゴマーであってもよい。N,N−ジ置換アミノアルキル化スチレン重合体のアルキルとしては、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン等が挙げられ、かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等のヒドロキシアルキル基が挙げられる。また、このような重合可能な他のビニル系化合物としては、前記N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な他のビニル系化合物と同様のものが挙げられる。
【0036】
このようなN,N−ジ置換アミノアルキル化スチレン重合体としては、例えば、N,N−ジメチルアミノメチル化スチレン重合体、N,N−ジエチルアミノメチル化スチレン重合体、N,N−ジプロピルアミノメチル化スチレン重合体、N,N−ジブチルアミノメチル化スチレン重合体、N,N−ジヒドロキシエチルアミノメチル化スチレン重合体、N,N−ジヒドロキシプロピルアミノメチル化スチレン重合体、N,N−ジヒドロキシブチルアミノメチル化スチレン重合体、N,N−ジメチルアミノエチル化スチレン重合体、N,N−ジエチルアミノエチル化スチレン重合体、N,N−ジプロピルアミノエチル化スチレン重合体等の単独重合体;N,N−ジメチルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジエチルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジプロピルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジブチルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジヒドロキシエチルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジヒドロキシプロピルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジヒドロキシブチルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジメチルアミノエチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジエチルアミノエチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジプロピルアミノエチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体等の共重合体が挙げられる。これらの重合体の中でも、残留塩素の除去性を高めることができるという観点から、ジビニルベンゼンとの共重合体が好ましい。
【0037】
また、このようなN,N−ジ置換アミノアルキル化スチレン重合体の数平均分子量は10,000,000以下であることが好ましく、7,000,000以下であることがより好ましい。N,N−ジ置換アミノアルキル化スチレン重合体の平均分子量が前記上限を超えると残留塩素の除去性が低下する傾向にある。
【0038】
本発明に用いられるN,N−ジ置換アミノアルキル化シリカゲルは、シリカゲルをN,N−ジ置換アミノアルキル化したものである。N,N−ジ置換アミノアルキル化シリカゲルのアルキルとしては、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン等が挙げられ、かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等のヒドロキシアルキル基が挙げられる。
【0039】
このようなN,N−ジ置換アミノアルキル化シリカゲルとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピル化シリカゲル、N,N−ジエチルアミノプロピル化シリカゲル、N,N−ジプロピルアミノプロピル化シリカゲル、N,N−ジブチルアミノプロピル化シリカゲル、N,N−ジヒドロキシエチルアミノプロピル化シリカゲル、N,N−ジヒドロキシプロピルアミノプロピル化シリカゲル、N,N−ジヒドロキシブチルアミノプロピル化シリカゲル、N,N−ジメチルアミノメチル化シリカゲル、N,N−ジメチルアミノエチル化シリカゲル、N,N−ジメチルアミノブチル化シリカゲルが挙げられる。
【0040】
本発明に用いられるN,N−ジ置換アミノアルキル化ゼオライトは、ゼオライトをN,N−ジ置換アミノアルキル化したものである。N,N−ジ置換アミノアルキル化ゼオライトのアルキルとしては、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン等が挙げられ、かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等のヒドロキシアルキル基が挙げられる。
【0041】
このようなN,N−ジ置換アミノアルキル化ゼオライトとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピル化ゼオライト、N,N−ジエチルアミノプロピル化ゼオライト、N,N−ジプロピルアミノプロピル化ゼオライト、N,N−ジブチルアミノプロピル化ゼオライト、N,N−ジヒドロキシエチルアミノプロピル化ゼオライト、N,N−ジヒドロキシプロピルアミノプロピル化ゼオライト、N,N−ジヒドロキシブチルアミノプロピル化ゼオライト、N,N−ジメチルアミノメチル化ゼオライト、N,N−ジメチルアミノエチル化ゼオライト、N,N−ジメチルアミノブチル化ゼオライトが挙げられる。
【0042】
本発明においては、残留塩素の除去性を高めることができるという観点から、前記(A)3級アミノ化合物が、塩を形成していることが好ましい。このように塩を形成させるために用いられる酸としては、例えば、塩酸、リン酸、硝酸、硫酸等の無機酸;蟻酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、スルファミン酸等の有機酸;α−オレフィンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルエーテルスルホン酸、メチルタウリン酸等のスルホン酸エステル;アルキルリン酸、アルキルエーテルリン酸等のリン酸エステル;N−アシルアミノ酸が挙げられる。これらの酸の中でも、残留塩素の除去性を高めることができるという観点から、無機酸、有機酸が好ましい。また、前記(A)3級アミノ化合物とこれらの酸との塩を形成させる場合には、前記(A)3級アミノ化合物とこれらの酸とにより予め塩を形成させてもよく、処理液中へそれぞれ別々に添加して処理液中で塩を形成させてもよい。
【0043】
また、本発明の残留塩素除去剤を廃水等の処理に使用する場合においては、廃水処理の容易性や遊離塩素の除去性の観点から、前記(A)3級アミノ化合物が、3級アルキルアミン化合物、3級ヒドロキシアルキルアミン、3級アラルキルアミン、3級アルケニルアミン、N,N−ジ置換アニリン、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジ置換アミノアルキル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジ置換アミノアルキル化シリカゲル及びN,N−ジ置換アミノアルキル化ゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、また、結合塩素の除去性の観点から、前記(A)3級アミノ化合物が、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジ置換アミノアルキル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジ置換アミノアルキル化シリカゲル及びN,N−ジ置換アミノアルキル化ゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。一方、本発明の残留塩素除去剤を飲料用、洗浄用、化粧品用等の浄水のために使用する場合は、水への難溶解性や残留塩素の除去性の観点から、前記(A)3級アミノ化合物が、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジ置換アミノアルキル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジ置換アミノアルキル化シリカゲル及びN,N−ジ置換アミノアルキル化ゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0044】
本発明の残留塩素除去剤は、前述した(A)3級アミノ化合物、及び/又は以下説明する(B)グアニジノ化合物を含有するものである。
【0045】
本発明に用いられる(B)グアニジノ化合物は、下記一般式(2)により表される化合物である。
【0046】
【化4】

【0047】
一般式(2)において、Rは、水素、アミノ基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、アミジノ基、ビグアニド基、アリルアミジノ基、グアニジノアルキレン基、及びアミノカルボキシアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種を表す。そして、水素基を有するグアニジノ化合物としては、グアニジンが挙げられる。また、アミノ基を有するグアニジノ化合物としては、アミノグアニジンが挙げられる。さらに、カルバモイル基を有するグアニジノ化合物としては、グアニル尿素が挙げられる。また、チオカルバモイル基を有するグアニジノ化合物としては、グアニルチオ尿素が挙げられる。さらに、アミジノ基を有するグアニジノ化合物としては、ビグアニドが挙げられる。また、ビグアニド基を有するグアニジノ化合物としては、トリグアニドが挙げられる。さらに、アリルアミジノ基を有するグアニジノ化合物としては、アリルビグアニドが挙げられる。また、グアニジノアルキル基のアルキルとしては、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン等が挙げられる。このようなグアニジノアルキル基を有するグアニジノ化合物としては、例えば、エチレンジグアニジン、テトラメチレンジグアニジン、ヘキサメチレンジグアニジン、デカメチレンジグアニジンが挙げられる。また、アミノカルボキシアルキル基のアルキルとしては、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン等が挙げられる。このようなアミノカルボキシアルキル基を有するグアニジノ化合物としては、L−アルギニン、D−アルギニンが挙げられる。
【0048】
本発明においては、残留塩素の除去性を高めることができるという観点から、前記(B)グアニジノ化合物が、塩を形成していることが好ましい。このように塩を形成させるために用いられる酸としては、前述した(A)3級アミノ化合物と塩を形成させるために用いられる酸と同様のものが挙げられる。これらの酸の中でも、残留塩素の除去性を高めることができるという観点から、無機酸、有機酸が好ましい。また、前記(B)グアニジノ化合物とこれらの酸との塩を形成させる場合には、前記(B)グアニジノ化合物とこれらの酸とにより予め塩を形成させてもよく、処理液中へそれぞれ別々に添加して処理液中で塩を形成させてもよい。
【0049】
また、本発明の残留塩素除去剤を廃水等の処理に使用する場合においては、廃水処理の容易性や遊離塩素の除去性の観点から、前記(B)グアニジノ化合物が、グアニジン、アミノグアニジン、グアニル尿素、グアニルチオ尿素、ビグアニド、トリグアニド、アリルビグアニド、アルキレンジグアニジン及びアルギニンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0050】
本発明の残留塩素除去剤は、前述した(A)3級アミノ化合物及び前述した(B)グアニジノ化合物の他に、残留塩素の分解除去性を損なわない程度に、他の成分を含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば、亜硫酸カルシウム;チオ硫酸ナトリウム;活性炭;アスコルビン酸、カテキン等の植物ポリフェノール類;コバルト担持体;金属チタン、酸化チタン等のチタン化合物が挙げられる。また、このような他の成分の含有量としては、前記(A)3級アミノ化合物及び/又は前記(B)グアニジノ化合物100質量部に対して30質量部以下であることが好ましい。
【0051】
次に、本発明の残留塩素含有水の処理方法について説明する。本発明の残留塩素含有水の処理方法は、前述した残留塩素除去剤と残留塩素含有水(遊離塩素及び/又は結合塩素を含有する水)とを接触処理することを特徴とする方法である。
【0052】
このように残留塩素除去剤と残留塩素含有水とを接触処理する方法は特に限定されないが、例えば、残留塩素含有水の貯槽に残留塩素除去剤を添加する方法、残留塩素除去剤が充填されたフィルターカートリッジ等に残留塩素含有水を通す方法が挙げられる。
【0053】
このように残留塩素含有水の貯槽に残留塩素除去剤を添加する方法は、下水、し尿、廃水等を不連続点塩素処理した水の残留塩素の除去、廃水等の電解酸化処理水の残留塩素の除去、廃水、し尿等の塩素処理水の残留塩素の除去等の廃水処理に適用することができ、触媒的に水中に含まれる残留塩素を十分に分解除去することができる。また、このような残留塩素含有水の貯槽に残留塩素除去剤を添加する方法においては、触媒的に水中に含まれる残留塩素を十分に分解除去することができるため、残留塩素に対して残留塩素除去剤は当量以下でよい。そして、残留塩素除去剤の残留塩素濃度に対する添加量としては、廃水の濃度、性状によって変動するので一概に規定できないが、0.1〜1モル当量の範囲であることが好ましい。残留塩素除去剤の添加量が前記範囲内であれば、過剰に残留塩素除去剤を添加することがないので経済的にコスト高となることもなく、且つ、効率よく水中に含まれる残留塩素を十分に除去できるという優れた効果が得られる。
【0054】
さらに、このように残留塩素除去剤が充填されたフィルターカートリッジ等に残留塩素含有水を通す方法は、凝集ろ過等の前処理の工程で塩素処理をした逆浸透装置、イオン交換装置等への給水の残留塩素の除去、飲料水、洗浄水等の浄水の残留塩素の除去に適用することができ、触媒的に水中に含まれる残留塩素を十分に分解除去することができる。
【0055】
本発明の残留塩素含有水の処理方法においては、処理対象となる残留塩素含有水のpHが、3.0〜10.0の範囲であることが好ましく、4.0〜9.0の範囲であることがより好ましい。残留塩素含有水のpHが前記範囲内であれば、処理施設の腐食が発生するおそれがなく、また、効率よく残留塩素を除去することができるという優れた効果が得られる。
【0056】
また、本発明の残留塩素含有水の処理方法においては、処理対象となる残留塩素含有水の温度が、10℃以上であることが好ましい。残留塩素含有水の温度が10℃以上であれば、残留塩素含有水を加熱処理することなく、水中に含まれる残留塩素を十分に分解除去することができる。
【0057】
さらに、本発明の残留塩素含有水の処理方法においては、前述した本発明の残留塩素除去剤の他に、残留塩素の分解除去性を損なわない程度に、他の遊離塩素除去剤を併用することもできる。このような他の遊離塩素除去剤としては、例えば、遊離塩素とクロラミンを形成する1級又は2級アミン化合物;亜硫酸カルシウム;チオ硫酸ナトリウム;活性炭;アスコルビン酸、カテキン等の植物ポリフェノール類;コバルト担持体、金属チタン、酸化チタン等のチタン化合物が挙げられる。また、このような他の遊離塩素除去剤の使用量としては、前記本発明の残留塩素除去剤100質量部に対して40質量部以下であることが好ましい。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、処理水中の残留塩素濃度の測定に関しては、遊離塩素濃度についてはJIS K0101 28.3(1998)に記載された方法、また、結合塩素濃度については衛生試験法;注解1990に記載された方法に従って測定した。
【0059】
<バッチ処理による遊離塩素の除去>
(実施例1)
先ず、次亜塩素酸ナトリウムを遊離塩素濃度が100mg/Lとなるように溶解させた後に、pHを7.0に調整して合成廃水を得た。次に、得られた合成廃水500mlを1000mlのガラスビーカーに入れ、さらに、残留塩素除去剤としてトリブチルアミン塩酸塩を遊離塩素濃度の0.5当量となるように添加して試験用廃水を得た。次いで、得られた試験用廃水をマグネチックスターラーを用いて、回転数50rpm、温度25℃にて5分間撹拌処理して処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.1mg/Lであった。
【0060】
(実施例2)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、トリブチルアミン蟻酸塩を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.1mg/Lであった。
【0061】
(実施例3)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、トリエタノールアミン塩酸塩を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.1mg/Lであった。
【0062】
(実施例4)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、N−メチルジアリルアミン塩酸塩を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.1mg/Lであった。
【0063】
(実施例5)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、N−メチルジアリルアミン塩酸塩を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.1mg/Lであった。
【0064】
(実施例6)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、N,N−ジエチルアニリン塩酸塩を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.2mg/Lであった。
【0065】
(実施例7)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、N,N−ジメエチルアミノシクロヘキサン塩酸塩を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、2.7mg/Lであった。
【0066】
(実施例8)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、N,N’−ジメチルピペラジン塩酸塩を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、1.5mg/Lであった。
【0067】
(実施例9)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、グアニジン塩酸塩を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.4mg/Lであった。
【0068】
(実施例10)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、アミノグアニジン塩酸塩を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.4mg/Lであった。
【0069】
(実施例11)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、グアニル尿素リン酸塩を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.5mg/Lであった。
【0070】
(実施例12)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、グアニルチオ尿素塩酸塩を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.4mg/Lであった。
【0071】
(実施例13)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、ビグアニド塩酸塩を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.3mg/Lであった。
【0072】
(実施例14)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、トリグアニド塩酸塩を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.3mg/Lであった。
【0073】
(実施例15)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、アリルビグアニド塩酸塩を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.4mg/Lであった。
【0074】
(実施例16)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、ヘキサメチレンジグアニジン塩酸塩を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.3mg/Lであった。
【0075】
(実施例17)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、L−アルギニン塩酸塩を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.5mg/Lであった。
【0076】
(実施例18)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、トリブチルアミン塩酸塩とグアニジン塩酸塩とのモル比1:1の混合物を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.1mg/Lであった。
【0077】
(実施例19)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、ジメチルアミノエチルアクリレート・ジビニルベンゼン共重合体(アンバーライト(登録商標)IRA67:オルガノ(株)製)を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.1mg/Lであった。
【0078】
(実施例20)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、ジメチルアミノエチルアクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体(ダイヤイオン(登録商標)WA11:三菱化学(株)製)を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.1mg/Lであった。
【0079】
(実施例21)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、ジメチルアミノメチル置換スチレン・ジビニルベンゼン共重合体(アンバーライト(登録商標)IRA96SB:オルガノ(株)製)を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.1mg/Lであった。
【0080】
(実施例22)
先ず、反応容器に、シリカゲル(平均粒径5μm、平均孔径120Å、表面積330m/g)12gを減圧下、温度130℃にて4時間乾燥した後、(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン22gを溶解させた脱水トルエン溶液200gに加え、温度60℃にて6時間攪拌した。次いで、濾過して得られた固体をクロロホルム300ml、メタノール300mlで順次洗浄し、乾燥して、N,N−ジメチルアミノプロピルシリル化されたシリカゲルを得た。得られたN,N−ジメチルアミノプロピルシリル化されたシリカゲルを元素分析したところ、1gに対して、N,N−ジメチルアミノプロピル基が1.2mmolグラフト化されていた。
【0081】
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、上記で得られたN,N−ジメチルアミノプロピルシリル化されたシリカゲルを使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.1mg/Lであった。
【0082】
(実施例23)
先ず、反応容器に、(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン2gを溶解させた95質量%のエタノール水溶液100gに、カチオンが水素イオンのベータ型ゼオライト(HSZ−940HOA、SiO/Alのモル比が37:東ソー(株)製)5gを加え、温度50℃にて6時間攪拌した。次いで、濾過して得られた固体をエタノール300ml、メタノール300mlで順次洗浄し、乾燥して、N,N−ジメチルアミノプロピルシリル化されたゼオライトを得た。得られたN,N−ジメチルアミノプロピルシリル化されたゼオライトを元素分析したところ、1gに対して、N,N−ジメチルアミノプロピル基が1.0mmolグラフト化されていた。
【0083】
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、上記で得られたN,N−ジメチルアミノプロピルシリル化されたゼオライトを使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.2mg/Lであった。
【0084】
(実施例24)
実施例1のpHを7.0に調整された合成廃水の代わりに、pHを4.0に調整された合成廃水を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.3mg/Lであった。
【0085】
(実施例25)
実施例1のpHを7.0に調整された合成廃水の代わりに、pHを9.0に調整された合成廃水を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.3mg/Lであった。
【0086】
(実施例26)
試験用廃水を温度15℃にて5分間撹拌処理した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.2mg/Lであった。
【0087】
(実施例27)
試験用廃水を温度50℃にて5分間撹拌処理した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.1mg/Lであった。
【0088】
(比較例1)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、ジブチルアミン塩酸塩を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、51mg/Lであった。
【0089】
(比較例2)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、テトラブチルアンモニウムクロライドを使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、98mg/Lであった。
【0090】
(比較例3)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、ポリモノアリルアミン塩酸塩(平均分子量5,000)を使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、44mg/Lであった。
【0091】
(比較例4)
実施例1で使用した残留塩素除去剤トリブチルアミン塩酸塩の代わりに、チオ硫酸ナトリウムを使用した以外は実施例1と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、21mg/Lであった。
【0092】
実施例1〜27及び比較例1〜4で得られた結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
上記の表1に記載した結果からも明らかなように、本発明の残留塩素除去剤を用いた実施例1〜23は、処理水中の遊離塩素濃度が低く、遊離塩素がほぼ除去されていた。また、処理水中のpHが異なる実施例24、25においても処理水中の遊離塩素濃度が低く、遊離塩素がほぼ除去されていた。さらに、処理温度が異なる実施例26、27においても処理水中の遊離塩素濃度が低く、遊離塩素がほぼ除去されていた。したがって、本発明の残留塩素除去剤を用いることにより、遊離塩素を含有する水を、加熱処理することを必要とせず、しかも触媒的に水中に含まれる遊離塩素を分解除去することが可能となることが確認された。これに対し、従来の遊離塩素除去剤を用いた比較例4及びクロラミンを形成する2級アミンを用いた比較例1及び1級アミンのポリマーを用いた比較例3では、遊離塩素が除去しきれず残存しており、4級アンモニウム塩を用いた比較例2では全く遊離塩素が除去されていないことが確認された。
【0095】
<通液処理による遊離塩素の除去>
(実施例28)
先ず、次亜塩素酸ナトリウムを遊離塩素濃度が1,000mg/Lとなるように溶解させた後に、pHを7.0に調整して合成廃水を得た。次に、内径30mmのガラス製カラムに、残留塩素除去剤としてジメチルアミノエチルアクリレート・ジビニルベンゼン共重合体(アンバーライト(登録商標)IRA67:オルガノ(株)製)250mlを充填して、反応カラムとした。次いで、この反応カラムを用いて、得られた合成廃水を、空間速度(SV)4hr−1、水温25℃、上向流の条件で4時間通液処理して処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.1mg/Lであった。
【0096】
(実施例29)
実施例28で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノエチルアクリレート・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、ジメチルアミノエチルアクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体(ダイヤイオン(登録商標)WA1:三菱化学(株)製)を使用した以外は実施例28と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.1mg/Lであった。
【0097】
(実施例30)
実施例28で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノエチルアクリレート・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、ジメチルアミノメチル置換スチレン・ジビニルベンゼン共重合体(アンバーライト(登録商標)IRA96SB:オルガノ(株)製)を使用した以外は実施例28と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.1mg/Lであった。
【0098】
(実施例31)
実施例28で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノエチルアクリレート・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、実施例22で得られたN,N−ジメチルアミノプロピルシリル化されたシリカゲルを使用した以外は実施例28と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.2mg/Lであった。
【0099】
(実施例32)
実施例28で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノエチルアクリレート・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、実施例23で得られたN,N−ジメチルアミノプロピルシリル化されたゼオライトを使用した以外は実施例28と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、0.4mg/Lであった。
【0100】
(比較例5)
実施例28で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノエチルアクリレート・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、トリメチルアミノアンモニウムクロライドメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体(アンバーライト(登録商標)IRA400J CL:オルガノ(株)製)を使用した以外は実施例28と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の遊離塩素濃度を測定したところ、725mg/Lであった。
【0101】
実施例28〜32及び比較例5で得られた結果を表2に示す。
【0102】
【表2】

【0103】
上記の表2に記載した結果からも明らかなように、本発明の残留塩素除去剤を用いた実施例28〜32は、処理水中の遊離塩素濃度が低く、遊離塩素がほぼ除去されていた。したがって、本発明の残留塩素除去剤を用いることにより、遊離塩素を含有する水を、加熱処理することを必要とせず、しかも触媒的に水中に含まれる遊離塩素を分解除去することが可能となることが確認された。これに対し、4級アンモニウム塩樹脂を用いた比較例5では、遊離塩素が除去しきれずほとんど残存していることが確認された。
【0104】
<バッチ処理における結合塩素の除去>
(実施例33)
先ず、次亜塩素酸ナトリウムが40mg/Lとなるように溶解させ、遊離塩素に対し2当量の硝酸アンモニウムを添加後に、pHを7.0に調整して合成廃水を得た。なお、得られた合成廃水は、結合塩素濃度が40mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。次に、得られた合成廃水250mlを500mlのガラスビーカーを入れ、さらに、残留塩素除去剤として、全体積の80%以上が10〜200μmの粒径となるように乳鉢で粉砕して調製したジメチルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体(アンバーライト(登録商標)IRA96SB:オルガノ(株)製)を結合塩素濃度の0.5当量となるよう添加して試験用廃水を得た。次いで、得られた試験用廃水をマグネチックスターラーを用いて、回転数50rpm、温度25℃にて90分間撹拌処理して処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素濃度は2.7mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。
【0105】
(実施例34)
実施例33で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、ジメチルアミノエチルアクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体(ダイヤイオン(登録商標)WA11:三菱化学(株)製)を使用した以外は実施例33と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素濃度は2.0mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。
【0106】
(実施例35)
実施例33で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、ジメチルアミノエチルアクリレート・ジビニルベンゼン共重合体(アンバーライト(登録商標)IRA67:オルガノ(株)製)を使用した以外は実施例33と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素濃度は0.9mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。
【0107】
(実施例36)
実施例33で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、実施例22で得られたN,N−ジメチルアミノプロピルシリル化されたシリカゲルを使用した以外は実施例33と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素濃度は1.6mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。
【0108】
(実施例37)
実施例33で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、実施例23で得られたN,N−ジメチルアミノプロピルシリル化されたゼオライトを使用した以外は実施例33と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素濃度は3.1mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。
【0109】
(実施例38)
実施例33で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、トリブチルアミン塩酸塩を使用した以外は実施例33と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素濃度は8mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。
【0110】
(実施例39)
実施例33で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、グアニジン塩酸塩を使用した以外は実施例33と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素濃度は13mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。
【0111】
(実施例40)
実施例33のpHを7.0に調整された合成廃水の代わりに、pHを5.0に調整された合成廃水を使用した以外は実施例33と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素濃度は0.9mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。
【0112】
(実施例41)
実施例33のpHを7.0に調整された合成廃水の代わりに、pHを8.0に調整された合成廃水を使用した以外は実施例33と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素濃度は0.9mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。
【0113】
(実施例42)
試験用廃水を温度15℃にて5分間撹拌処理した以外は実施例33と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素濃度は12mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。
【0114】
(実施例43)
試験用廃水を温度40℃にて5分間撹拌処理した以外は実施例33と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素濃度は0.1mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。
【0115】
(比較例6)
実施例33で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、ジブチルアミン塩酸塩を使用した以外は実施例33と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素濃度は40mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。
【0116】
(比較例7)
実施例33で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、トリメチルアミノアンモニウムクロライドメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体(アンバーライト(登録商標)IRA400J CL:オルガノ(株)製)を使用した以外は実施例33と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素濃度は28mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。
【0117】
(比較例8)
実施例33で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、チオ硫酸ナトリウムを使用した以外は実施例33と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素濃度は20mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。
【0118】
実施例33〜43及び比較例6〜8で得られた結果を表3に示す。
【0119】
【表3】

【0120】
上記の表3に記載した結果からも明らかなように、本発明の残留塩素除去剤を用いた実施例33〜39は、処理水中の結合塩素濃度が低く、遊離塩素も検出されず、結合塩素が低減されていた。特に、実施例33〜37は、処理水中の結合塩素濃度が低く、結合塩素がほぼ除去されていた。また、処理廃水中のpHが異なる実施例40、41においても処理水中の結合塩素濃度が低く、結合塩素がほぼ除去されていた。さらに、処理温度が異なる実施例42、43においても処理水中の結合塩素濃度が低く、遊離塩素も検出されず、結合塩素が低減されていた。したがって、本発明の残留塩素除去剤を用いることにより、結合塩素を含む残留塩素を含有する水を、加熱処理することを必要とせず、しかも触媒的に水中に含まれる残留塩素を分解除去することが可能となることが確認された。これに対し、従来の残留塩素除去剤を用いた比較例7や4級アンモニウム塩重合体を用いた比較例6では、結合塩素が除去しきれずほとんど残存しており、2級アミンを用いた比較例5では全く結合塩素が除去されていないことが確認された。
【0121】
<通液処理における結合塩素の除去>
(実施例44)
先ず、次亜塩素酸ナトリウムが4mg/Lとなるように溶解させ、遊離塩素に対し2当量の硝酸アンモニウムを添加後に、pHを7.0に調整して合成廃水を得た。なお、得られた合成廃水は、結合塩素濃度が4mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。次に、内径30mmのガラス製カラムに、残留塩素除去剤として、全体積の80%以上が10〜200μmの粒径となるように乳鉢で粉砕して調製したジメチルアミノエチルアクリレート・ジビニルベンゼン共重合体(アンバーライト(登録商標)IRA67:オルガノ(株)製)45mlを充填して、反応カラムとした。次いで、この反応カラムを用いて、得られた合成廃水を、空間速度(SV)120hr−1、水温25℃、上向流の条件で1時間通液処理して処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素及び遊離塩素とも検出されなかった。
【0122】
(実施例45)
実施例44で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノエチルアクリレート・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、ジメチルアミノエチルアクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体(ダイヤイオン(登録商標)WA11:三菱化学(株)製)を使用した以外は実施例44と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素及び遊離塩素とも検出されなかった。
【0123】
(実施例46)
実施例44で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノエチルアクリレート・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、ジメチルアミノメチル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体(アンバーライト(登録商標)IRA96SB:オルガノ(株)製)を使用した以外は実施例44と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素及び遊離塩素とも検出されなかった。
【0124】
(実施例47)
実施例44で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノエチルアクリレート・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、実施例22で得られたN,N−ジメチルアミノプロピルシリル化されたシリカゲルを使用した以外は実施例44と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素濃度は0.1mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。
【0125】
(実施例48)
実施例44で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノエチルアクリレート・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、実施例23で得られたN,N−ジメチルアミノプロピルシリル化されたゼオライトを使用した以外は実施例44と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素濃度は0.1mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。
【0126】
(比較例9)
実施例44で使用した残留塩素除去剤ジメチルアミノエチルアクリレート・ジビニルベンゼン共重合体の代わりに、粒状活性炭(平均粒径1mm、全細孔容積0.8ml/g)を使用した以外は実施例44と同様にして処理水を得た。得られた処理水中の結合塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定したところ、結合塩素濃度は1.2mg/Lであり、遊離塩素は検出されなかった。
【0127】
実施例44〜48及び比較例9で得られた結果を表4に示す。
【0128】
【表4】

【0129】
上記の表4に記載した結果からも明らかなように、本発明の残留塩素除去剤を用いた実施例44〜48は、処理水中の結合塩素濃度が低く、遊離塩素濃度も検出されず、結合塩素がほぼ除去されていた。したがって、本発明の残留塩素除去剤を用いることにより、結合塩素を含む残留塩素を含有する水を、加熱処理することを必要とせず、しかも触媒的に水中に含まれる残留塩素を分解除去することが可能となることが確認された。これに対し、従来の活性炭を用いた比較例9では、結合塩素が残存し除去しきれていないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0130】
以上説明したように、本発明によれば、遊離塩素や結合塩素等の残留塩素を含有する水を加熱処理することなく、触媒的に水中に含まれる残留塩素を十分に分解除去することを可能とする残留塩素除去剤を提供することが可能となる。
【0131】
したがって、本発明の残留塩素除去剤は、水中に含まれる残留塩素を分解除去する技術として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1):
【化1】

[式(1)中、R、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、及びシクロヘキシル基からなる群から選択される少なくとも1種を表し、R及びR、R及びR、又は、R及びRは相互に結合して窒素原子と共に環を形成していてもよい。]
で表される3級アミン、
N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート重合体、
N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド重合体、
N,N−ジ置換アミノアルキル化スチレン重合体、
N,N−ジ置換アミノアルキル化シリカゲル、及び
N,N−ジ置換アミノアルキル化ゼオライト
からなる群から選択される少なくとも1種の3級アミノ化合物;及び/又は;
(B)下記一般式(2):
【化2】

[式(2)中、Rは、水素、アミノ基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、アミジノ基、ビグアニド基、アリルアミジノ基、グアニジノアルキレン基、及びアミノカルボキシアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種を表す。]
で表されるグアニジノ化合物;
を含有することを特徴とする残留塩素除去剤。
【請求項2】
前記(A)3級アミノ化合物が、3級アルキルアミン、3級ヒドロキシアルキルアミン、3級アルケニルアミン、3級アラルキルアミン、N,N−ジ置換アニリン、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジ置換アミノアルキル化スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、N,N−ジ置換アミノアルキル化シリカゲル及びN,N−ジ置換アミノアルキル化ゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の残留塩素除去剤。
【請求項3】
前記(A)3級アミノ化合物が、塩を形成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の残留塩素除去剤。
【請求項4】
前記(B)グアニジノ化合物が、グアニジン、アミノグアニジン、グアニル尿素、グアニルチオ尿素、ビグアニド、トリグアニド、アリルビグアニド、アルキレンジグアニジン及びアルギニンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の残留塩素除去剤。
【請求項5】
前記(B)グアニジノ化合物が、塩を形成していることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の残留塩素除去剤。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の残留塩素除去剤と残留塩素含有水とを接触処理することを特徴とする残留塩素含有水の処理方法。

【公開番号】特開2007−144399(P2007−144399A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275066(P2006−275066)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【Fターム(参考)】