説明

残留洗剤低減繊維製品

【課題】 優れた洗浄効果及び洗濯耐久性を確保しつつ、洗濯後の残留洗剤の量を低減させることが可能な残留洗剤低減繊維製品、残留洗剤低減繊維製品の製造方法及び繊維製品の洗濯処理方法を提供する。
【解決手段】 繊維の表面及び内部にアニオン性基を有する残留洗剤低減繊維製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた洗浄効果及び洗濯耐久性を確保しつつ、洗濯後の残留洗剤の量を低減させることが可能な残留洗剤低減繊維製品、残留洗剤低減繊維製品の製造方法及び繊維製品の洗濯処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭における繊維製品の洗濯方法としては、水及び洗剤を用いた洗濯が一般的である。最近は洗濯機や洗剤の進歩により洗浄効果は高まってきてはいるものの、靴下や襟袖といった部分汚れ、食べこぼしや油のしみ、泥汚れといったものに対しては充分な洗浄効果が得られない場合があった。このような問題に対して、現在の衣料用洗剤は高い洗浄力を得るために、界面活性剤としてアニオン性界面活性剤が、助剤として蛍光増白剤、酵素、ビルダー類等が含まれる合成洗剤が主に用いられている。
【0003】
しかし、これらのような化学系物質を含む合成洗剤の中には、人体に対して悪影響を及ぼすものが少なからず存在する。また、近年、アトピー性皮膚炎患者の増加が顕著であり社会現象となってきている。アトピー性皮膚炎の特徴の1つとして化学物質等により刺激を受けやすいことが挙げられ、アトピー性皮膚炎患者は肌から刺激原因物質を除去するために、一般的に洗浄により肌を常に清潔に保つことが指導されている。しかし、アトピー性皮膚炎患者が、このような化学物質を含む合成洗剤を用いて洗濯を行った繊維製品を着用した場合、繊維製品に残留した化学物質に敏感に反応して肌荒れや炎症を招いてしまうという懸念があった。
【0004】
これに対して、アトピー性皮膚炎患者が着用する繊維製品を洗濯する場合に、特許文献1に示すような低刺激性の洗剤や、石けんや複合石けんを使用することが行われている。しかしながら、これらを用いた場合は、従来よりも手間がかかったり、油汚れや泥汚れに対する洗浄効果が充分でなかったりする等の問題があった。また、石けんを使用した場合は、水道水の金属イオンと石けんのアルカリイオンとが塩交換をおこし、石鹸カスと呼ばれる水不溶性の金属石けんが生成されるため、アトピー性皮膚炎患者の皮膚刺激の軽減についても達成されていなかった。
【特許文献1】特開2002−3900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、優れた洗浄効果や洗濯耐久性を確保しつつ、洗濯後の残留洗剤の量を低減させることが可能な残留洗剤低減繊維製品、残留洗剤低減繊維製品の製造方法及び繊維製品の洗濯処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、繊維の表面及び内部にアニオン性基を有する残留洗剤低減繊維製品である。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、繊維製品を構成する繊維の表面及び内部にアニオン性基を導入することにより、このような繊維製品を用いて洗濯を行った場合に、繊維製品の表面及び内部にあるアニオン性基と、洗剤として一般的に使用されているアニオン性界面活性剤とがイオン的に反発し合って洗剤の残留を効果的に防止できるとともに、洗剤が本来有する洗浄力を損なうことなく、充分な洗浄効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、特開平10−245775号公報には、繊維構造物の表面にカルボキシル基、水酸基、スルホン酸基等のアニオン性基を導入し、植物油を主成分とした柔軟剤が付与された洗剤残留抑制性繊維構造物が開示されている。しかしながら、このような方法で得られた洗剤残留抑制性繊維構造物は、アニオン性基が繊維の表面に導入されているため、繰り返し洗濯に対する耐久性が不充分であり、使用期間が長期化すると、洗剤残留抑制効果が低下するという問題があった。本発明の残留洗剤低減繊維製品は、単にアニオン性基を有するだけでなく、繊維の内部にも有することで、上記アニオン性基を繊維の表面のみに有する場合と比較して、洗濯耐久性を大幅に向上させることができ、長期間に渡って効果を持続させることが可能となる。また、繊維の内部に入り込んだ洗剤が残留してしまうことを防止することができる。
【0008】
上記アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、ホスホン酸基、硫酸エステルやリン酸エステル等のエステル基等が挙げられる。なかでも、カルボキシル基は、皮膚への刺激性が低く、セルロース繊維に容易に導入できることから好適である。なかでも、カルボキシル基をカルボキシメチル基として導入した場合、セルロース繊維に容易に導入可能となるため、好ましい。
なお、上記アニオン性基として、スルホン酸基、COOを有する基を導入した場合は、カプロン酸、イソ吉草酸等の臭気成分を中和して、無臭化する消臭機能を繊維製品に付与することができる。
【0009】
本発明の残留洗剤低減繊維製品における上記アニオン性基の含有量は、アニオン性基の種類によって適宜決められるが、繊維の黄変や硬化等が発生して繊維の物性が低下しない程度とすることが好ましい。
【0010】
本発明の残留洗剤低減繊維製品の形態としては特に限定されず、例えば、糸、綿類、織編物、不織布、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のフィルム類、合成紙等の紙類や、これらを用いた繊維製品等が挙げられる。
【0011】
本発明において用いられる繊維製品の素材としては、特に限定されず、天然繊維、半合成繊維、合成繊維等からなるものを用いることができる。
上記天然繊維としては、例えば、羊毛、絹、木綿、麻等が挙げられる。
上記半合成繊維としては、例えば、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテート等が挙げられる。
上記合成繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド、ポリアクリル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0012】
本発明の残留洗剤低減繊維製品の用途としては、例えば、衣料用品、雑貨用品、インテリア用品、寝具用品等が挙げられる。
上記衣料用品としては、外出着衣料、スポーツウェア、ホームウェア、リラックスウェア、パジャマ、寝間着、肌着のほか、オフィスウェア、作業服、食品白衣、看護白衣、患者衣、介護衣、学生服、厨房衣等が挙げられる。上記雑貨用品としては、エプロン、タオル、手袋、マフラー、靴下、帽子、靴、サンダル、かばん、傘等が挙げられる。上記インテリア用品としては、カーテン、じゅうたん、マット、こたつカバー、ソファーカバー、クッションカバー、ソファー用側地、便座カバー、便座マット、テーブルクロス等が挙げられる。上記寝具用品としては、布団用側地、布団用詰めわた、毛布、毛布用側地、枕の充填材、シーツ、防水シーツ、布団カバー、枕カバー等が挙げられる。
【0013】
本発明の残留洗剤低減繊維用品は、繊維の表面及び内部をアニオン化処理する工程を行うことにより製造することができる。このような残留洗剤低減繊維用品の製造方法もまた本発明の1つである。
【0014】
繊維の表面及び内部をアニオン化処理する方法としては、例えば、アニオン性基を繊維に直接導入する方法や、アニオン性を有する分子を繊維に導入する方法等が挙げられる。
【0015】
上記アニオン性基を繊維に直接導入する際の具体的方法としては、カルボキシル基やスルホン酸基等のアニオン性基を有するセルロース系繊維用品を構成するセルロースの水酸基の水素と置換することにより導入する方法等が挙げられる。
【0016】
上記セルロース系繊維にカルボキシル基を導入する方法の好ましい態様の1つを説明する。上記カルボキシル基は、例えば、セルロース系繊維にモノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)を含有する処理液を接触させることによりカルボキシメチル基の形で容易にセルロース系繊維に導入することができる。このようにカルボキシメチル基を導入することを、以下、カルボキシメチル化ともいう。
【0017】
上記カルボキシメチル化を行う場合の処理液中における、モノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩の濃度としては、目的の加工度が得られるよう処理液の条件を適宜定めればよいが、好ましい下限は10g/L、好ましい上限は500g/Lであり、より好ましい下限は50g/L、より好ましい上限は300g/Lであり、更に好ましい下限は100g/L、更に好ましい上限は200g/Lである。
【0018】
上記カルボキシメチル化を行う場合の処理液には、アルカリ金属の水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムを配合することが好ましい。水酸化ナトリウムを配合することにより、得られる処理繊維のカルボキシメチル化度を向上させることができる。上記処理液中における水酸化ナトリウム濃度を上げるほど反応度が上がる傾向があり、通常は20g/L以上とすることが好ましい。ただし、大量の水酸化ナトリウムを配合すると、得られる繊維の風合いが悪化する傾向があるので注意を要する。
【0019】
セルロース系繊維と上記処理液とを接触させる方法としては、例えば、処理液中で繊維を回転させる液流法;繊維を処理液中に浸漬した後にパディング(絞り)する方法等が挙げられる。使用効率の点で、浴比(処理液の使用割合)を下げることが有効であり、この点で浸漬した後にパディングする方法が有効である。
なお、セルロース系繊維と処理液とを接触させる際の温度条件としては特に限定されず、例えば、5〜50℃の範囲内とすることができる。
【0020】
上記セルロース系繊維と処理液とを接触させる時間としては目的とするカルボキシメチル化度や処理中のモノクロル酢酸濃度、水酸化ナトリウム濃度等の諸条件から適宜選択すればよい。常温で数時間〜数日間程度接触させていてもよいし、熱処理することにより要する時間を短縮することもできる。
【0021】
上記カルボキシメチル化度の好ましい下限は0.1モル%である。0.1モル%未満であると、充分な吸湿度が得られないことがある。より好ましい下限は1モル%である。カルボキシメチル化度の上限は特に限定されないが、好ましい上限は10モル%、より好ましい上限は5モル%である。なお、本明細書においてカルボキシメチル化度とは、カルボキシメチル化反応したセルロースのOH基の割合(%)、即ち、未処理のセルロースの水酸基の数に対するカルボキシメチル化した後のCOO基の数の割合(%)を意味する。また、セルロース系繊維中のCOO基の数は、セルロース系繊維の全COO基をCOOH基とし、水酸化ナトリウム水溶液(0.1N)に浸漬した後、その置換に使用されたNaを定量することにより求めることができる。置換に使用されたNa量は、セルロース系繊維等を浸漬した水酸化ナトリウム水溶液を、例えば、塩酸(0.1N)を使用して滴定することにより、定量することができる。具体的には、以下の測定方法を採用することができる。
【0022】
まず、セルロース繊維(例えば、生地小片)を、0.3Nの塩酸に、浴比1:50、液温20℃の条件で1時間浸漬して全COO基をCOOH基とし、脱水し、乾燥して残留HClを除去し、約4gをサンプリングして絶乾重量(W(g))を秤量する。次いで、絶乾重量を秤量したセルロース繊維等を、精秤した0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液50mL(B(mL))に浸漬して液温20℃で1晩放置することにより、全COOH基をCOONaに置換する。更に、置換に使用されたNaを定量するため、0.1N塩酸を使用して液を滴定し、滴定値をX(mL)とする。指示薬としてはフェノールフタレインを使用することができる。
【0023】
上記カルボキシメチル化度は、セルロース系繊維等の絶乾重量(W(g))、水酸化ナトリウム水溶液の体積(B(mL))、滴定に要した塩酸の体積(X(mL))から、下記式(1)に従って算出することができる。
【0024】
【数1】

【0025】
上記アニオン性基を有する分子を繊維に導入する際の具体的方法としては、例えば、セルロース系繊維にアニオン性基を分子内に有するモノマーをグラフト化する方法等が挙げられる。上記アニオン性基を分子内に有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、リン酸モノ−10−メタクリロイルオキシデシル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記グラフト化の方法としては、例えば、上記モノマーを、セルロース系繊維と接触させた状態で、重合反応させる方法等が挙げられる。具体的には、例えば、上記モノマー及び重合開始剤(例えば、ペルオキソ2硫酸アンモニウム等)を含有する液中に、セルロース系繊維を浸漬して絞った後、加熱することにより、アニオン性基を有する分子がグラフトしたセルロース系繊維を得ることができる。
【0027】
上記グラフト化により導入するアニオン性基を有する分子の量としては、アニオン性基を有する分子の種類、セルロース系繊維に要求される吸湿率等を考慮して適宜選択することができるが、グラフト率の好ましい下限は1%である。1%未満であると、充分な吸湿度が得られないことがある。より好ましい下限は2%である。グラフト率の上限については特に限定されないが、好ましい上限は30%、より好ましい上限は25%、更に好ましい上限は20%である。
なお、本明細書においてグラフト率は、グラフトさせる前のセルロース系繊維等の絶乾重量(処理前絶乾重量)とグラフトさせた後の絶乾重量(処理後絶乾重量)から、下記式(2)により算出することができる。
【0028】
【数2】

【0029】
上記式(2)において、絶乾重量は、例えば10×20cm程度の大きさの生地小片を、秤量ビンに入れ105℃で2時間乾燥後、秤量し、予め秤量しておいた秤量ビンの重量を差し引くことにより、算出することができる。
【0030】
本発明の残留洗剤低減繊維製品を、アニオン性界面活性剤を含有する洗濯液で洗濯する洗濯工程、及び、前記アニオン性界面活性剤を除くすすぎ工程を行うことにより、残留洗剤の量が大幅に低減することが可能な洗濯処理方法を実現することができる。
このような繊維製品の洗濯処理方法もまた、本発明の1つである。
【0031】
本発明の繊維製品の洗濯処理方法では、まず、本発明の残留洗剤低減繊維製品を、アニオン性界面活性剤を含有する洗濯液で洗濯する洗濯工程を行う。
【0032】
本発明において使用されるアニオン性界面活性剤としては、例えば、アルコールの硫酸エステル塩、アルコールのエトキシレート化物の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩又は脂肪酸塩等を用いることができる。特に、アルキル鎖の炭素数が8〜18の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数8〜18のアルキル硫酸エステル塩が好ましく、対イオンとしては、アルカリ金属類、アルカノールアミン塩が好ましい。なかでも、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)が好ましい。
【0033】
上記アニオン性界面活性剤としてLASを用いる場合、上記洗濯液におけるLASの含有量の好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は0.3重量%である。0.01重量%未満であると、洗浄不足となり、0.3重量%を超えると、界面活性剤の無駄となり、残留洗剤も増えることがある。
【0034】
本発明では、上述した効果を妨げない範囲で、上記洗濯液にアニオン性界面活性剤以外の各種添加剤を添加してもよい。上記添加剤としては、例えば、香料、蛍光剤、漂白剤、漂白活性化剤、酵素、カルシウム捕捉剤、溶剤、ハイドロトロープ剤等が挙げられる。
【0035】
本発明では、次いで、上記アニオン性界面活性剤を除くすすぎ工程を行う。
本発明では、上記アニオン化された繊維製品とアニオン性界面活性剤とのイオン的な反発により、上記アニオン性界面活性剤を充分に除去することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、優れた洗浄効果及び洗濯耐久性を確保しつつ、洗濯後の残留洗剤の量を低減させることが可能な繊維製品の洗濯処理方法を提供することができる。これにより、本発明の残留洗剤低減繊維製品を洗濯した後、アトピー性皮膚炎患者等が着用した場合であっても、残留洗剤に起因する肌荒れや炎症等を招くことがなく、皮膚刺激の軽減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0038】
(実施例)
元地として綿製の肌着を使用し、モノクロル酢酸ナトリウム(200g/L)及び水酸化ナトリウム(70g/L)を含有する処理液中に1:20の浴比で浸漬し、パッダーで絞った後、25℃、24時間放置して反応させた。その後、水洗して未反応物を除去し、アニオン化処理肌着を得た。
【0039】
(対照例)
対照布として実施例1で用いた未処理の綿製の肌着を用いた。
【0040】
(評価)
(1)洗剤残留量の測定
実施例で得られたアニオン化処理肌着及び対照例の肌着について、洗剤としてアタック(花王社製)を用い、JIS L 0217の103法に準拠した方法で洗濯を10回行った後の洗剤残留量を以下の方法で測定した。
なお、洗剤中のデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS(C10))、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS(C12))、テトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS(C14))及びヘプタエチレングリコールモノ−n−ドデシルエーテル(AE(C12EO7))の濃度をLS−MS/MS(島津製作所社製)を用いて事前に測定したところ、表1のような結果となり、LAS(C10)、LAS(C12)及びAE(C12EO7)が多く含まれることが確認できたため、測定はLAS(C10)、LAS(C12)及びAE(C12EO7)の残留量について行った。結果を表2に示した。
【0041】
【表1】

【0042】
(1−1)LAS残留量の測定
実施例及び対照例の肌着から4gを量り取り、メタノール25mLを加えて、1時間振とう抽出した。次いで、超音波を20分照射し、得られた溶液を試料溶液とした。
得られた試料溶液のLAS(C10)及びLAS(C12)の濃度をHPLC(島津製作所社製)を用い、下記の条件で測定した。
カラム:atlantis 2.1mm×50mm、3μm(40℃)
移動相:10mM 酢酸アンモニウム/アセトニトリル、3/7
流速 :0.2mL/min
注入量:20μL
【0043】
(1−2)AE残留量の測定
実施例及び対照例の肌着から2gを量り取り、メタノール25mLを加えて、1時間振とう抽出した。次いで、超音波を20分照射し、得られた溶液を試料溶液とした。
得られた試料溶液のAE(C12EO7)の濃度をHPLC(島津製作所社製)を用い、下記の条件で測定した。
カラム:atlantis 2.1mm×50mm、3μm(40℃)
移動相:10mM 酢酸アンモニウム/アセトニトリル、3/7
流速 :0.2mL/min
注入量:10μL
【0044】
【表2】

【0045】
(2)オレイン酸洗浄性試験
実施例及び対照例の肌着を切り取った試験布にオレイン酸10%owf、ゼラチン2.5%owfを付着させた後、通常の家庭用洗濯機(シャープ社製、ES−S4A)を用い、洗剤としてアタック(花王社製)を0.67g/Lの濃度となるように加え、JIS L 0217の103法に準拠した方法で洗濯を行った。洗濯後の各試験布を天日乾燥した後、試験布上に残存するオレイン酸をメタノールで抽出し、ガスクロマトグラフ(島津製作所社製、GC−17A)によりオレイン酸の残留量を測定し、オレイン酸残留率(%)を求めた。結果を表3に示した。
【0046】
【表3】

【0047】
表3に示すように、対照例の肌着を用いた場合に比べ、実施例の肌着を用いた場合の方がオレイン酸残留率が低く、アニオン化処理を行うことによる洗浄性の低下は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、優れた洗浄効果及び洗濯耐久性を確保しつつ、洗濯後の残留洗剤の量を低減させることが可能な繊維製品の洗濯処理方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維の表面及び内部にアニオン性基を有することを特徴とする残留洗剤低減繊維製品。
【請求項2】
繊維の表面及び内部をアニオン化処理する工程を有することを特徴とする残留洗剤低減繊維製品の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の残留洗剤低減繊維製品を、アニオン性界面活性剤を含有する洗濯液で洗濯する洗濯工程、及び、前記アニオン性界面活性剤を除くすすぎ工程を有することを特徴とする繊維製品の洗濯処理方法。


【公開番号】特開2007−254910(P2007−254910A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79246(P2006−79246)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】