説明

殺有害生物剤及びベンゾトリアゾールUV吸収剤を含む組成物

本発明は殺有害生物剤及びUV吸収剤を含む農薬組成物に関する。さらに、本発明はUV吸収剤及び農薬組成物におけるその使用にも関する。さらに、本発明は植物病原性菌類及び/又は望ましくない植物成長及び/又は望ましくない昆虫若しくはダニの侵入を防除する、並びに/又は植物の成長を調節する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は殺有害生物剤及びUV吸収剤を含む農薬組成物に関する。さらに、本発明はUV吸収剤及び農薬組成物におけるその使用にも関する。さらに、本発明は植物病原性菌類及び/又は望ましくない植物成長及び/又は望ましくない昆虫若しくはダニの侵入を防除する、並びに/又は植物成長を調節する方法にも関する。好ましい特徴と他の好ましい特徴との組み合わせは本発明に含まれる。
【背景技術】
【0002】
一般に、殺有害生物剤及びUV吸収剤を含む農薬組成物は公知である。
【0003】
WO1992/03926には、ピレスロイド、UV吸収剤及び酸化防止剤を含む殺虫組成物が開示されている。
【0004】
EP0376888 A1には、有害な昆虫の行動を変性させる物質及び殺有害生物活性化合物を含み、その両方が、紫外線照射から行動変性物質を保護する流動性マトリクスに含まれる、有害な昆虫を防除するための組成物が開示されている。一般に、組成物は51〜98重量%のマトリクスを含み、通常、該マトリクスは、好ましくは1,000〜40,000cpの粘度を有するUV吸収剤である。好適なUV吸収剤は、例えば、以下のアルコキシル化2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾトリアゾールTinuAとTinuB
【化1】

【0005】
の、TinuA対TinuBの重量比が50対38である混合物であり、CibaからTinuvin(登録商標)1130の商品名で入手できる。
【0006】
WO2006/089747には、光解離性殺有害生物剤及びUV吸収剤(例えば、アルファ−[3−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]−1−オキソプロピル]−オメガ−ヒドロキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)を含有するカプセルを含む組成物の使用を含む、材料を保護する方法が開示されている。
【0007】
WO1997/42815には、0.1〜20%の殺有害生物剤、0.01〜30%のフェロモン及び40〜98%のUV吸収剤を含む組成物が開示されている。例えば、Tinuvin1130をUV吸収剤として使用することができる。
【0008】
WO2008/085682には、光解離性殺有害生物剤及びUV安定剤(例えば、ベンゾトリアゾール又はその誘導体であることができる)を含む組成物が開示されている。
【0009】
ベンゾトリアゾール類からのUV吸収剤が知られている。
【0010】
EP0280650には、以下の構造
【化2】

【0011】
(例えば、Rは−OCHCHOCHCHOC又は−NHCHCHOCであることができる)
のベンゾトリアゾールが開示されている。
【0012】
以下の構造
【化3】

【0013】
のベンゾトリアゾール(CASNo.127519−17−9)は、CibaからTinuvin(登録商標)99又はTinuvin(登録商標)384−2の商品名で市販されている。この構造中、アルキルは分岐及び直鎖C7−9アルキル基の混合物を表す。
【0014】
以下の構造
【化4】

【0015】
のベンゾトリアゾール(CASNo.96478−09−0)は、CibaからTinuvin(登録商標)R796の商品名で市販されている。
【0016】
従来技術からの、特にベンゾトリアゾール類からのUV吸収剤には種々の問題が存在し、別の助剤(例えば、酸化防止剤)を加えなければならず、UV吸収剤をマトリクス中に使用しなければならず、UV吸収剤は感光性殺有害生物剤を十分に長い期間にわたって安定化することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】WO1992/03926
【特許文献2】EP0376888 A1
【特許文献3】WO2006/089747
【特許文献4】WO1997/42815
【特許文献5】WO2008/085682
【特許文献6】EP0280650
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は農薬組成物における使用のための、ベンゾトリアゾール類からの別のUV吸収剤を提供することであった。本発明の別の目的は、UV感応性殺有害生物剤を安定化するベンゾトリアゾールUV吸収剤を見出すことであった。この安定化は、特に比較的低い濃度のベンゾトリアゾールUV吸収剤で、先行技術よりも優れるべきである。さらに、本発明は、界面活性が増大しており、水の表面張力を大幅に減少させることができるベンゾトリアゾールUV吸収剤を提供するという課題も有していた。さらに、本発明の目的は、例えば、より少ない助剤(例えば界面活性剤)が必要であるという点で、殺有害生物剤のより簡単な製剤化が可能になるベンゾトリアゾールUV吸収剤を見出すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の目的は、殺有害生物剤及びUV吸収剤を含み、UV吸収剤が式I
【化5】

【0020】
[式中、
X:NH又はO;
:−[C−Cアルコキシ]−(C−C18アルキル)又は−[CHCHNH]−H;
:H又はCl;
:H又はC−Cアルキル;
n:3〜50]
に対応する農薬組成物により達成された。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好適なUV吸収剤は上記に定義したように式Iの構造である。
【0022】
好適なR基は−[C−Cアルコキシ]−(C−C18アルキル)又は−[CHCHNH]−H、好ましくは−[C−Cアルコキシ]−(C−C18アルキル)、さらに好ましくは−[CHCHO]−CHである。
【0023】
語句「C−Cアルコキシ」は、好ましくは−CHCHO−、−CH(CH)CHO−又は−CH(CHCH)CHO−、特に−CHCHO−を示す。−CHCHO−、−CH(CH)CHO−又は−CH(CHCH)CHO−の混合物も同様に可能であり、その場合、アルコキシユニットは任意の順序で、又はブロックとして、好ましくはブロックとして存在することができる。−CHCHO−と−CH(CH)CHO−の混合物、特に、ブロックとして存在する−CHCHO−と−CH(CH)CHOの混合物が好ましい。
【0024】
語句「C−C18アルキル」は、典型的には、1〜18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐、好ましくは直鎖のアルキル基を示す。
【0025】
一つの好ましい実施形態において、アルキル基は直鎖であり、1〜8個、さらに好ましくは1〜4個、特に1個の炭素原子を含む。別の好ましい実施形態において、アルキル基は分岐であり、3〜18個、好ましくは6〜18個、さらに好ましくは9〜15個、特に10〜13個の炭素原子を含む。
【0026】
語句「−CHCHNH−」は、経験的一般式であり、ポリエチレンイミン基[CHCHNH]のモノマーユニットを示す。これらのポリエチレンイミン基は直鎖又は分岐であることができ、好ましくは分岐である。分岐のポリエチレンイミン基は、通常、第一級、第二級及び第三級アミノ基を含む。第一級/第二級/第三級アミノ基のモル比は1/0.5/0.2〜1/1.9/1.5、好ましくは1/0.7/0.4〜1/1.5/1.1であることができる。
【0027】
添え字nは3〜50、好ましくは3〜30、特に3〜25、特に3〜15を示す。別の好ましい実施形態において、nは少なくとも10〜50、好ましくは10.3〜30、特に好ましくは10.5〜25、特に11〜20を示す。
【0028】
好適なX基はNH又はO、好ましくはOである。別の好ましい実施形態において、XはNH又はOであり、Rは−[CHCHNH]−Hである。
【0029】
通常、RはH又はCl、好ましくはHである。
【0030】
通常、RはH又はC−C−アルキル、好ましくはC−C−アルキル、さらに好ましくは分岐のC−C−アルキル、特にtert−ブチルである。
【0031】
一つの特に好ましい実施形態において、UV吸収剤は式II
【化6】

【0032】
(R及びnは、それぞれ前記の通りであり、Alkylはアルキルである)である。語句「C−Cアルキル」は、典型的には、直鎖又は分岐、好ましくは直鎖のアルキル基を示し、好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜2個、特に1個の炭素原子を含む。
【0033】
UV吸収剤は、通常、最大でも50mN/m、好ましくは最大でも46mN/m、特に好ましくは最大でも44mN/m、特に最大でも40mN/mの水の空気に対する界面における、25℃での表面張力(ST)を有する。STは、典型的には、少なくとも25mN/m、好ましくは少なくとも30mN/mである。
【0034】
本発明による農薬組成物は、一般に、いずれの場合にも組成物に対して0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%、特に好ましくは1.0〜15重量%のUV吸収剤を含む。
【0035】
用語「殺有害生物剤」は殺菌剤、殺虫剤、殺線虫剤、除草剤、薬害軽減剤(safener)及び/又は成長調節剤の群から選択される少なくとも1種の活性化合物を示す。好ましい殺有害生物剤は殺菌剤、殺虫剤及び除草剤、特に殺虫剤である。2種以上の前記の群からの殺有害生物剤の混合物も使用することができる。当業者はかかる殺有害生物剤に精通しており、例えば、「Pesticide Manual、14th Ed.(2006)、The British Crop Protection Council、London」に見出すことができる。好適な殺虫剤は、カルバメート、有機ホスフェート、有機塩素殺虫剤、フェニルピラゾール、ピレスロイド、ネオニコチノイド、スピノシン(spinosin)、アベルメクチン、ミルベマイシン、幼若ホルモン様物質(juvenile hormone analogue)、ハロゲン化アルキル、有機スズ化合物、ネライストキシン(nereistoxin)類似物、ベンゾイル尿素、ジアシルヒドラジン、METI殺ダニ剤(acaricide)の群からの殺虫剤、及び、クロロピクリン、ピメトロジン、フロニカミド、クロフェンテジン、ヘキシチアゾクス、エトキサゾール、ジアフェンチウロン、プロパルギット、テトラジホン、クロルフェナピル、DNOC、ブプロフェジン、シロマジン、アミトラズ、ヒドラメチルノン、アセキノシル、フルアクリピリム、ロテノン又はその誘導体等の殺虫剤である。好適な殺菌剤は、ジニトロアニリン、アリルアミン、アニリノピリミジン、抗生物質、芳香族炭化水素、ベンゼンスルホンアミド、ベンゾイミダゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアジン、ベンジルカルバメート、カルバメート、カルボキサミド、カルボン酸アミド、クロロニトリル、シアノアセトアミドオキシム、シアノイミダゾール、シクロプロパンカルボキサミド、ジカルボキシミド、ジヒドロジオキサジン、ジニトロフェニルクロトネート、ジチオカルバメート、ジチオラン、エチルホスホネート、エチルアミノチアゾールカルボキサミド、グアニジン、ヒドロキシ−(2−アミノ−)ピリミジン、ヒドロキシアニリド、イミダゾール、イミダゾリノン、無機化合物、イソベンゾフラノン、メトキシアクリレート、メトキシカルバメート、モルホリン、N−フェニルカルバメート、オキサゾリジンジオン、オキシミノアセテート、オキシミノアセトアミド、ペプチジルピリミジンヌクレオシド、フェニルアセトアミド、フェニルアミド、フェニルピロール、フェニル尿素、ホスホネート、ホスホロチオレート、フタルアミド酸、フタルイミド、ピペラジン、ピペリジン、プロピオンアミド、ピリダジノン、ピリジン、ピリジニルメチルベンズアミド、ピリミジンアミン、ピリミジン、ピリミジノンヒドラゾン、ピロロキノリノン、キナゾリノン、キノリン、キノン、スルファミド、スルファモイルトリアゾール、チアゾールカルボキサミド、チオカルバメート、チオカルバメート、チオファネート、チオフェンカルボキサミド、トルアミド、トリフェニルスズ化合物、トリアジン、トリアゾールの群の殺菌剤である。好適な除草剤は、アセトアミド、アミド、アリールオキシフェノキシプロピオネート、ベンズアミド、ベンゾフラン、安息香酸、ベンゾチアジアジノン、ビピリジリウム、カルバメート、クロロアセトアミド、クロロカルボン酸、シクロヘキサンジオン、ジニトロアニリン、ジニトロフェノール、ジフェニルエーテル、グリシン、イミダゾリノン、イソオキサゾール、イソオキサゾリジノン、ニトリル、N−フェニルフタルイミド、オキサジアゾール、オキサゾリジンジオン、オキシアセトアミド、フェノキシカルボン酸、フェニルカルバメート、フェニルピラゾール、フェニルピラゾリン、フェニルピリダジン、ホスフィン酸、ホスホロアミデート、ホスホロジチオエート、フタルアマート、ピラゾール、ピリダジノン、ピリジン、ピリジンカルボン酸、ピリジンカルボキサミド、ピリミジンジオン、ピリミジニル(チオ)ベンゾエート、キノリンカルボン酸、セミカルバゾン、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン、スルホニル尿素、テトラゾリノン、チアジアゾール、チオカルバメート、トリアジン、トリアジノン、トリアゾール、トリアゾリノン、トリアゾリノン、トリアゾロカルボキサミド、トリアゾロピリミジン、トリケトン、ウラシル、尿素の群の除草剤である。
【0036】
好ましい除草剤はナプロパミド、プロパニル、ベンタゾン、パラコート(paraquat)ジクロリド、シクロキシジム、セトキシジム、エタルフルラリン、オリザリン、ペンディメタリン、トリフルラリン、アシフルレン(acifluren)、アクロニフェン、ホメサフェン、オキシフルオレン(oxyfluoren)、アイオキシニル、イマゼタピル、イマザキン、クロリダゾン、ノルフルラゾン、チアゾピル、トリクロピル、ジチオピル、ジフルフェニカン、ピコリナフェン、アミドスルフロン、モリネート、バーナレート、プロメトン、メトリブジン、アザフェニジン、カルフェントラゾン−エチル、スルフェントラゾン、メトキスロン、モノリニュロン、フルクロラリン及びフルレノールである。好ましい殺菌剤はシプロジニル、フベリダゾール、ジメトモルフ、プロクロラズ、トリフルミゾール、トリデモルフ、エディフェンホス(edifenfos)、フェナリモル、ヌアリモール、エチリモール、キノキシフェン、ジチアノン、メトミノストロビン、トリフロキシストロビン、ジクロフルアニド、ブロムコナゾール及びミクロブタニルである。好ましい殺虫剤はアセフェート、アジンホス−エチル、アジンホス−メチル、イソフェンホス、クロルピリホス−メチル、ジメチルビンホス、ホレート、ホキシム、プロチオホス、シヘキサチン、アラニカルブ、エチオフェンカルブ、ピリミカーブ、チオジカルブ、フィプロニル、ビオアレトリン、ビオレスメトリン、デルタメトリン、フェンプロパトリン、フルシトリネート、タウフルバリナート(taufluvalinate)、アルファ−シペルメトリン、メタフルミゾン、ゼータ−シペルメトリン、レスメトリン、テフルトリン、ラムダ−シハロトリン及びヒドラメチルノンである。別の実施形態において、好ましい殺有害生物剤はピレスロイド又はメタフルミゾン、特に、ピレスロイドである。特に好ましい殺有害生物剤はアルファ−シペルメトリン及びメタフルミゾンである。
【0037】
一つの実施形態において、UV感応性である殺有害生物剤が使用される。このUV感応性は簡単な予備試験で決定することができる。好ましくは、好適な溶媒中(好ましくはアセトン中)の殺有害生物剤の25重量%溶液を乾燥させることにより得られる殺有害生物剤フィルムに波長300〜800nmのUV/VIS光を照射すると、25℃で、24時間以内に少なくとも20重量%の殺有害生物剤が分解する場合、殺有害生物剤はUV感応性であるとみなされる。使用される照度は、典型的には10000〜100000lux、好ましくは50000〜80000luxである。殺有害生物剤は、殺有害生物剤(又は、複数の殺有害生物成分の混合物中の1種の殺有害生物成分)の濃度が相応に減少する場合、分解したとみなされる。
【0038】
本発明による農薬組成物は、一般に、いずれの場合にも組成物に対して、0.01〜95重量%、好ましくは0.5〜80重量%、特に好ましくは2〜50重量%、特に5〜20重量%の殺有害生物剤を含む。
【0039】
殺有害生物剤対UV吸収剤の重量比は、通常、30:1〜1:3、好ましくは15:1〜1:2、特に好ましくは8:1〜1:1である。
【0040】
殺有害生物剤及びUV吸収剤を含む農薬組成物は、農薬製剤に通常の組成物のタイプ、例えば、溶液、エマルション、懸濁液、粉剤(dust)、粉末(powder)、ペースト(paste)及び粒剤であることができる。そのタイプは目的とする特定の用途によって決まる。いずれの場合にも、本発明による化合物の微細かつ均一な分布を確実にするべきである。組成物のタイプの例は、水に溶解性又は分散性である懸濁液(SC,OD,FS)、乳剤(EC)、エマルション(EW,EO,ES)、ペースト、錠剤(pastille)、湿潤性粉末若しくは粉剤(WP,SP,SS,WS,DP,DS)又は粒剤(GR,FG,GG,MG)、植物繁殖材料(例えば種子)の処理のためのゲル(GF)である。動物(例えば、アリ又はネズミ)用の餌は種々の前記組成物のタイプであることができ、好ましくは粉末、ペースト、粒剤又はゲルである。一般に、例えば、SC、EC、OD、FS、WG、SG、WP、SP、SS、WS、GF等の組成物のタイプは希釈した形態で使用される。DP、DS、GR、FG、GG、MG等の組成物のタイプ又は餌は、一般に、希釈されない形態で使用される。好ましい組成物のタイプは懸濁液である。
【0041】
さらに、農薬組成物は、植物保護組成物に通常の助剤を含むこともでき、助剤の選択は具体的な使用形態又は活性化合物によって決まる。好適な助剤の例は、溶媒、固体担体物質、界面活性物質(例えば、別の可溶化剤、保護コロイド、湿潤剤及び接着剤)、有機及び無機増粘剤、殺バクテリア剤、不凍剤、消泡剤、場合によって染料及び(例えば、種子処理用の)接着剤又は餌製剤(bait formulation)に通常の助剤(例えば、誘引剤(attractant)、飼料、苦味剤(bitters))である。
【0042】
可能な溶媒は水、有機溶媒、例えば中程度から高沸点の鉱油留分、例えば、ケロシン及びディーゼル油、さらに、コールタール油及び植物又は動物由来の油、脂肪族、環式及び芳香族炭化水素、例えば、パラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレン及びその誘導体、アルキル化ベンゼン及びその誘導体、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びシクロヘキサノール、グリコール、ケトン、例えばシクロヘキサノン、ガンマ−ブチロラクトン、ジメチル−脂肪酸アミド、脂肪酸及び脂肪酸エステル並びに強極性溶媒、例えば、アミン、例えばN−メチルピロリドンである。原則として、溶媒混合物及び前記溶媒と水との混合物を使用することもできる。
【0043】
固体担体物質は、鉱物土類(mineral earth)、例えば、シリカ、シリカゲル、シリケート、タルク、カオリン、石灰石、石灰、チョーク、膠灰粘土(bolus)、黄土(loam)、粘土(clay)、ドロマイト、珪藻土、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、粉砕プラスチック、肥料、例えば、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素、及び植物製品、例えば、穀粉、樹皮粉、木粉及び堅果粉、セルロース粉末又は他の固体担体物質である。
【0044】
可能な界面活性剤(アジュバント、湿潤剤、粘着性付与剤、分散剤又は乳化剤)は、芳香族スルホン酸、例えばリグノスルホン酸(Borresperse(登録商標)タイプ、Borregaard、ノルウェイ)、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸(Morwet(登録商標)タイプ、Akzo Nobel、米国)及びジブチルナフタレンスルホン酸(Nekal(登録商標)タイプ、BASF、ドイツ)、並びに同様に脂肪酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属及びアンモニウム塩、アルキル及びアルキルアリールスルホネート、アルキル、ラウリルエーテル及び脂肪アルコールサルフェート、及び、硫酸化ヘキサ−、ヘプタ−、及びオクタデカノールの塩、及び、脂肪アルコールグリコールエーテルの塩、スルホン化ナフタレン及びその誘導体とホルムアルデヒドの縮合物、ナフタレン又はナフタレンスルホン酸とフェノール及びホルムアルデヒドの縮合物、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、エトキシ化イソオクチル−、オクチル−又はノニルフェノール、アルキルフェニル又はトリブチルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、イソトリデシルアルコール、脂肪アルコール−エチレンオキシド縮合物、エトキシ化ヒマシ油、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセテート、ソルビトールエステル、リグニン−亜硫酸廃液、及びタンパク質、変性タンパク質、多糖(例えばメチルセルロース)、疎水変性デンプン、ポリビニルアルコール(Mowiol(登録商標)タイプ、Clariant、スイス)、ポリカルボキシレート(Sokalan(登録商標)タイプ、BASF、ドイツ)、ポリアルコキシレート、ポリビニルアミン(Lupamin(登録商標)タイプ、BASF、ドイツ)、ポリエチレンイミン(Lupasol(登録商標)タイプ、BASF、ドイツ)、ポリビニルピロリドン及びそのコポリマーである。
【0045】
増粘剤(すなわち、組成物の流動性を変性させる化合物(すなわち、静止状態で高粘度であり、攪拌状態で低粘度である))の例は、多糖、有機及び無機薄層鉱物(laminar mineral)、例えば、キサンタンガム(Kelzan(登録商標)、CP Kelco、米国)、Rhodopol(登録商標)23(Rhodia、フランス)若しくはVeegum(登録商標)(R.T.Vanderbilt、米国)又はAttaclay(登録商標)(Engelhard Corp.、NJ、米国)である。
【0046】
殺バクテリア剤を、組成物を安定化するために加えることができる。殺バクテリア剤の例は、ジクロロフェン及びベンジルアルコールヘミホルマール及びイソチアゾリノン誘導体、例えばアルキルイソチアゾリノン及びベンゾイソチアゾリノン(Thor ChemieのActicide(登録商標)MBS)に基づくものである。
【0047】
好適な不凍剤の例はエチレングリコール、プロピレングリコール、尿素及びグリセリンである。
【0048】
消泡剤の例は、シリコーンエマルション(例えば、Silikon(登録商標)SRE、Wacker、Germany又はRhodorsil(登録商標)、Rhodia、フランス)、長鎖アルコール、脂肪酸、脂肪酸の塩、有機フッ素化合物及びその混合物である。
【0049】
組成物のタイプの例は:
1.水で希釈する組成物のタイプ
i)水溶性濃縮物(SL、LS)
10重量部の殺有害生物剤を90重量部の水又は水溶性溶媒に溶解する。或いは、湿潤剤又は他の助剤を加える。水により希釈すると殺有害生物剤が溶解する。この方法により、10重量%の活性化合物含有量を有する組成物が得られる。
【0050】
ii)分散性濃縮物(DC)
20重量部の殺有害生物剤を、10重量部の分散剤(例えばポリビニルピロリドン)を加えて、70重量部のシクロヘキサノンに溶解する。水により希釈すると分散液が得られる。活性化合物含有量は20重量%である。
【0051】
iii)乳剤(EC)
15重量部の殺有害生物剤を、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム及びエトキシ化ヒマシ油(それぞれ5重量部)を加えて、75重量部のキシレンに溶解する。水により希釈するとエマルションが得られる。組成物は15重量%の活性化合物含有量を有する。
【0052】
iv)エマルション(EW、EO、ES)
25重量部の殺有害生物剤を、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム及びエトキシ化ヒマシ油(それぞれ5重量部)を加えて35重量部のキシレンに溶解する。この混合物を30重量部の水に加え、乳化装置(例えば、Ultraturrax)を用いて均一なエマルションへと変換する。水により希釈するとエマルションが得られる。組成物は25重量%の活性化合物含有量を有する。
【0053】
v)懸濁液(SC、OD、FS)
撹拌式ボールミル中で、20重量部の殺有害生物剤を、10重量部の分散剤及び湿潤剤並びに70重量部の水又は有機溶媒を加えて粉砕して、微細な活性化合物の懸濁液を得る。水により希釈すると、活性化合物の安定な懸濁液が得られる。組成物中の活性化合物含有量は20重量%である。
【0054】
vi)水分散性粒剤及び水溶性粒剤(WG、SG)
50重量部の殺有害生物剤を、50重量部の分散剤及び湿潤剤を加えて微細に粉砕し、工業装置(例えば、射出機、噴霧塔、流動床)を用いて水分散性又は水溶性粒剤を調製する。水により希釈すると活性化合物の安定な分散液又は溶液が得られる。組成物は50重量%の活性化合物含有量を有する。
【0055】
vii)水分散性粉末及び水溶性粉末(WP、SP、SS、WS)
75重量部の殺有害生物剤を、25重量部の分散剤、湿潤剤及びシリカゲルを加えてローターステーターミルで粉砕する。水により希釈すると活性化合物の安定な分散液又は溶液が得られる。組成物の活性化合物含有量は75重量%である。
【0056】
viii)ゲル(GF)
20重量部の殺有害生物剤、10重量部の分散剤、1重量部の湿潤剤(ゲル化剤)及び70重量部の水又は有機溶媒をボールミルで粉砕して微細な懸濁液を得る。水により希釈すると、20重量%の活性化合物含有量を有する安定な懸濁液が得られる。
【0057】
2.直接施用するための組成物のタイプ
ix)粉剤(DP、DS)
5重量部の殺有害生物剤を微粉砕し、95重量部の微粉砕カオリンと十分に混合する。これにより、5重量%の活性化合物含有量を有する粉剤組成物が得られる。
【0058】
x)粒剤(GR、FG、GG、MG)
0.5重量部の殺有害生物剤を微粉砕し、99.5重量部の担体物質と結合させる。ここで、通常の調製方法は、押出、噴霧乾燥又は流動床である。これにより、0.5重量%の活性化合物含有量を有する直接施用するための粒剤が得られる。
【0059】
xi)ULV溶液(UL)
10重量部の殺有害生物剤を、90重量部の有機溶媒(例えば、キシレン)に溶解する。これにより、10重量%の活性化合物含有量を有する直接施用するための組成物が得られる。
【0060】
化合物は、散布(spraying)、噴霧(misting)、散粉(dusting)、ばらまき(scattering)、餌の配置(laying out)、ブラッシング(brushing)、浸漬(dipping)又は注入(pouring)により、そのままで、又はその組成物の形態で、例えば、直接噴霧可能な溶液、粉末、懸濁液、分散液、エマルション、油分散液、ペースト、粉剤組成物、ばらまき(scattering)組成物又は粒剤の形態で使用することができる。水性の使用形態は、水を加えることにより、エマルション濃縮物、ペースト又は湿潤粉末(散布用粉末、油分散液)から調製することができる。エマルション、ペースト又は油分散液の調製について、当該物質を、そのままで、又は、油若しくは溶媒中の溶液として、湿潤剤、接着剤、分散剤又は乳化剤を用いて、水中で均一化することができる。しかし、水による希釈に好適である湿潤剤、接着剤、分散剤又は乳化剤、場合によって溶媒又は油を含む濃縮物を活性物質から調製することもできる。
【0061】
そのまま使用できる製剤中の活性化合物濃度は比較的広い範囲で変化させることができる。一般に、その濃度は0.0001〜10%、好ましくは0.01〜1%である。植物保護における使用のために施用される量は1ha当り0.01〜2.0kgの活性化合物であり、所望の効果の性質によって決まる。植物繁殖材料(例えば、種子)の処理において、一般に、繁殖材料又は種子に対して1〜1,000g/100kg、好ましくは5〜100g/100kgの量の活性化合物が使用される。材料又は貯蔵製品の保護における使用について、施用される活性化合物の量は使用分野及び所望の効果の性質によって決まる。材料の保護において施用される通常の量は、例えば、処理される材料の1立方メートル当り0.001g〜2kg、好ましくは0.005〜1kgの活性化合物である。
【0062】
さらに、本発明は式III
【化7】

【0063】
[式中、YはNH又はOを表し、R、R、n、m及び「[CHCHNH]−H」は上記に定義される通りである]
のUV吸収剤にも関する。好ましい実施形態において、YはNHを表す。
【0064】
本発明による式IIIのUV吸収剤は、通常、最大でも50mN/m、好ましくは最大でも46mN/m、特に好ましくは最大でも44mN/m、特に最大でも40mN/mの水の空気に対する界面における、25℃での表面張力を有する。典型的には、STは少なくとも25mN/m、好ましくは少なくとも30mN/mである。
【0065】
さらに、本発明は農薬組成物における本発明による式IIIのUV吸収剤の使用にも関する。農薬組成物における使用が好ましい。UV感応性殺有害生物剤を、特に日光に対し、安定化する使用が特に好ましい。好適な農薬組成物は前記の通りである。
【0066】
さらに、本発明は、本発明による組成物を特定の有害生物、その生息地又は特定の有害生物から保護すべき植物、土壌及び/又は望ましくない植物及び/又は作物及び/又はその生息地に作用させる、植物病原性菌類及び/又は望ましくない植物成長及び/又は望ましくない昆虫若しくはダニの侵入を防除する、並びに/又は植物成長を調節する方法にも関する。
【0067】
本発明の利点は、特に、UV吸収剤の濃度が低い場合において、UV感応性殺有害生物剤を安定化することである。別の利点は、安定性の高い活性化合物分散液(特に、活性化合物懸濁液)を得るために使用される必要がある界面活性剤がより少ないことである。さらに、本発明のUV吸収剤は水の表面張力を大幅に減少させることができる(すなわち、より高い界面活性を有する)ことも利点である。本発明のUV吸収剤は農薬製剤に容易に溶解するか、或いは、水性エマルション及び水性懸濁液等の農薬製剤と非常に容易に混合可能であり、例えば、UV吸収剤を製剤に含ませるための追加の乳化剤が必要ない。
【0068】
以下の実施例は限定することなく、本発明を例示する。
【実施例】
【0069】
Pluriol(登録商標)A350E:ポリアルコキシレングリコールモノメチルエーテル、OH数 約160mgKOH/g、モル質量(OH数により決定される)約350g/mol、BASFからPluriol(登録商標)A350Eとして市販されている
Pluriol(登録商標)A500E:メチル−ポリエチレングリコール、OH数 約110mgKOH/g、モル質量(OH数により決定される)約500g/mol、BASF SEからPluriol(登録商標)A500Eとして市販されている。
【0070】
Pluronic(登録商標)10500:モル質量3,250g/molのプロピレングリコールブロックを有し、全分子量6,500g/molを有するポリ(エチレングリコールブロック−プロピレンブロック−エチレングリコール)(BASF SEからPluronic(登録商標)PE10500として市販されている)
殺バクテリア剤:2.5重量%の2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)と2.5重量%の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(BIT)の水性混合物(ThorからActicide(登録商標)MBSとして市販されている)
消泡剤:シリコーンベース、活性成分含有量20重量%(WackerからSilikonSRE−PFLとして市販されている)
キサンタン:粒状キサンタンガム、水含有量14重量%、粘度2,000mPas(0.3重量%の溶液、Brookfield法による)(RhodiaからRhodopol(登録商標)Gとして市販されている)
Alverde(登録商標):1.8〜2.5重量%のジオクチル硫酸ナトリウム、3.1〜3.9重量%のエトキシ化イソデシルアルコールと2.7〜3.3重量%のポリアリールフェノールエトキシレートを含むメタフルミゾンの水性懸濁液濃縮物であり、BASF SEから市販されている
Lupasol(登録商標)FG:約800g/mol(GPCにより決定される)の平均モル質量を有し、第一級対第二級対第三級アミン基の比が約1対0.9対0.5であり、水含有量が約1重量%であるポリエチレンイミンであり、BASF SEからLupasol(登録商標)FGとして市販されている
Tinuvin(登録商標)384−2:ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール(95%のベンゼンプロパン酸3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7−9−アルキルエステルと5%の1−メトキシ−2−プロピルアセテート)類のUV吸収剤であり、CIBA AGから市販されている
Tinuvin(登録商標)109:ヒドロキシフェニルトリアゾール(45〜55重量%のオクチル3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニルプロパノエートと45〜55重量%の2−エチルヘキシル3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルプロパノエートの混合物)類のUV吸収剤であり、CIBA AGから市販されている
Uvinul(登録商標)P25:p−アミノ安息香酸エトキシレート(45)(分子量約1,265g/mol、x+y+zの合計は約25である)はBASF SEからUvinul(登録商標)P25の名前で市販されている製品である。
【化8】

【0071】
実施例1A
3−(3−ベンゾトリアゾール−2−イル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸(2)の合成
【化9】

【0072】
化合物(1)(Tinuvin(登録商標)384−2)361g(0.8mol)を75%エタノール1.28Lに懸濁化した後、50%濃度の水酸化ナトリウム水溶液128g(1.6mol)と混合した。混合物を20℃で一晩攪拌した。その後、溶液を32%濃度の塩酸183g(1.6mol)と混合した。懸濁液を吸引濾別し、それぞれ水2Lで3度洗浄した。乾燥すると、白色粉末(2)251gが得られた(収率92%)。
【0073】
実施例1B
メチル3−(3−ベンゾトリアゾール−2−イル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(3)の合成
【化10】

【0074】
メタノール1.6L中の化合物(2)70g(0.21mol)の懸濁液に98%濃度の硫酸5mlを加え、6時間還流下で攪拌した。懸濁液を20℃で濾過し、生成物をそれぞれメタノール350mlで2度洗浄した。乾燥すると、白色粉末(3)69gが得られた(収率=93%)。
【0075】
実施例1C
3−(3−ベンゾトリアゾール−2−イル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸[Pluriol A350E]エステル(5)の合成
【化11】

【0076】
窒素を浸漬により全反応時間中通した。Pluriol(登録商標)A350E(4)59.7g(187mmol)を150℃で30分間攪拌した。その後、化合物(3)60.0g(170mmol)とチタン(IV)イソプロポキシド0.54g(2mmol)を加えた。反応混合物を155℃で18時間攪拌した。形成したメタノールを蒸留して取り除いた。混合物をトルエン100mlに溶解し、85%濃度のリン酸350mg(3mmol)を加え、溶液を20℃で24時間放置した。生成物をシリカゲル60のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。これに関し、溶液をフラッシュカラムに入れ、遊離体(educt)(3)をカラムからトルエンで溶出し、続いて生成物(5)をメタノールで溶出した。メタノール溶液をロータリーエバポレーターで濃縮乾燥して赤みを帯びたオレンジ色の粘性のある液体(6)106g(収率=99%)を得た。
【0077】
実施例1D
3−(3−ベンゾトリアゾール−2−イル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸[Pluriol A500E]エステル(7)の合成
【化12】

【0078】
窒素を浸漬により全反応時間中通した。Pluriol(登録商標)A500E(6)28.8g(62.3mmol)と化合物(3)20.0g(56.6mmol)を、20℃で最初に入れ、155℃で30分間攪拌した。その後、チタン(IV)イソプロポキシド0.54g(1.9mmol)を加え、反応混合物を155℃で52時間攪拌した。形成したメタノールを蒸留して取り除いた。混合物をトルエン100mlに溶解した。生成物をシリカゲル60 430gを有するフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。これに関し、溶液をフラッシュカラムに入れ、遊離体(3)をカラムからトルエンと酢酸エチル(容量%で15:2)の混合物で溶出し、続いて、生成物(7)をメタノールで溶出した。メタノール溶液をロータリーエバポレーターで濃縮乾燥して、赤みを帯びたオレンジ色の粘性のある液体(7)43g(収率=97%)を得た。
【0079】
実施例1E
3−(3−ベンゾトリアゾール−2−イル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸[トリデカノール−EO24]エステル(9)の合成
【化13】

【0080】
窒素を浸漬により全反応時間中通した。化合物(3)8.84g(25mmol)と化合物(8)31.17g(27.5mmol)を155℃で30分間攪拌した。その後、チタン(IV)イソプロポキシド0.07g(0.25mmol)を加えた。反応混合物を155℃で5時間攪拌した。さらに、チタン(IV)イソプロポキシド0.07g(0.25mmol)を加え、続いて、155℃でさらに17時間攪拌した。形成したメタノールを蒸留して取り除いた。生成物をシリカゲル60 0.15kgを有するカラムクロマトグラフィーにより精製した。これに関し、溶液をフラッシュカラムに入れ、遊離体(3)をカラムから酢酸エチルで溶出し、続いて、生成物(9)をメタノールで溶出した。メタノール溶液をロータリーエバポレーターで濃縮乾燥して、黄色の粘性のある液体(12)15.2g(収率=38.5%)を得た。
【0081】
実施例1F
3−(3−ベンゾトリアゾール−2−イル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸[トリデカノール−EO18]エステル(11)の合成
【化14】

【0082】
窒素を浸漬により全反応時間中通した。化合物(3)8.84g(25mmol)と化合物(10)23.55g(27.5mmol)を155℃で30分間攪拌した。その後、チタン(IV)イソプロポキシド0.07g(0.25mmol)を加えた。反応混合物を155℃で5時間攪拌した。さらに、チタン(IV)イソプロポキシド 0.07g(0.25mmol)を加え、続いて、155℃でさらに17時間攪拌した。形成したメタノールを蒸留して取り除いた。生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製した。これに関し、溶液をフラッシュカラムに入れ、遊離体(3)をカラムから酢酸エチルで溶出し、続いて、生成物(10)をメタノールで溶出した。メタノール溶液をロータリーエバポレーターで濃縮乾燥して、黄色の粘性のある液体(11)25g(収率=76.1%)を得た。
【0083】
実施例1G
2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸(13)の合成
【化15】

【0084】
Tinuvin(登録商標)109(12) 389g(0.8mol)を75%濃度のエタノール0.96lに懸濁化した後、50%濃度の水酸化ナトリウム水溶液128g(1.6mol)と混合した。混合物を20℃で一晩攪拌した。続いて、水6lで希釈し、32%濃度の塩酸183g(1.6mol)と混合した。懸濁液を吸引濾別し、固体をそれぞれ、水2lで3度洗浄した。乾燥すると、生成物(13)291gが白色粉末(収率97%)として得られた。
【0085】
実施例1H
2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸メチルエステル(14)の合成
【化16】

【0086】
メタノール0.75l中の化合物(13)37.4g(0.1mol)の懸濁液に98%濃度の硫酸5mlを加え、続いて、還流下で4時間攪拌した。懸濁液を濾過し、生成物をメタノールで洗浄し、乾燥して白色粉末(14)36g(収率=93%)を得た。
【0087】
実施例1J
2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸[Pluriol A350E]エステル(15)の合成
【化17】

【0088】
窒素を浸漬により全反応時間中通した。Pluriol A350E(4)33g(103mmol)を150℃で30分間攪拌した。その後、化合物(14)36.4g(93.8mmol)とチタン(IV)イソプロポキシド0.3g(1mmol)を加えた。
【0089】
反応混合物を155℃で21時間攪拌した。形成したメタノールを蒸留して取り除いた。混合物を塩化メチレン250mlに溶解し、85%濃度のリン酸173mg(1.5mmol)を加え、溶液を20℃で24時間放置した。生成物をシリカゲル60のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。これに関し、溶液をフラッシュカラムに入れ、遊離体(14)をカラムから塩化メチレンで溶出し、続いて生成物(15)をメタノールで溶出した。メタノール溶液をロータリーエバポレーターで濃縮乾燥して、赤色の粘性のある液体(15)52g(収率=83%)を得た。
【0090】
実施例1K
3−(3−ベンゾトリアゾール−2−イル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸Lupasol FGアミド(17)の合成
【化18】

【0091】
窒素を浸漬により全反応時間中通した。化合物(3)21.7g(61.3mmol;5mol%)とLupasol FG(16)(アミン価 16.34mmol/g)75g(1230mol)を90℃で混合し、110℃で5時間攪拌した。形成したエタノールを蒸留して取り除いてオレンジ色の粘性のある液体(17)91g(収率=96%)を得た。
【0092】
実施例1L
3−(3−ベンゾトリアゾール−2−イル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸Lupasol FGアミド(18)の合成
【化19】

【0093】
窒素を浸漬により全反応時間中通した。化合物(3)31.8g(90mmol;10mol%)とLupasol FG(16)55g(900mmol)を90℃で混合し、110℃で6時間攪拌した。形成したエタノールを蒸留して取り除いて粘性の高いオレンジ色の液体(18)78g(収率=93%)を得た。
【0094】
実施例2
懸濁液濃縮物の安定性
懸濁液濃縮物A18及びA19を、メタフルミゾン(95重量%の純度)105g、1,2−プロピレングリコール70g及びPluronic(登録商標)10500(量は表1を参照されたい)の湿式粉砕(1時間、3000rpm、Dispermat)により調製して、少なくとも90%の固体粒子が5μm未満の粒径を有し、かつ、D(4,3)が1.0μmである、均一で安定な懸濁液を得た。これらの懸濁液を、それぞれ、UV吸収剤5又は7(試験C1を除いて表31を参照されたい)40g、WetolD1 20g、消泡剤5.0g、キサンタン3.0g及び殺バクテリア剤2.0gと激しく攪拌しながら混合し、水で1.0lにした。
【0095】
54℃で2週間保存した後、活性成分の粒径及び粒子分布は変化しないことが見出された。
【0096】
全試験からのサンプルを、いずれの場合にもCIPAC water D(Ca/Mgイオン342ppmを含む)で活性成分が0.1及び1重量%の濃度の懸濁液に希釈した。6時間保存後、活性成分の沈殿は実質的に見られなかった。
【表1】

【0097】
本試験は、本発明によるUV吸収剤の添加により懸濁液濃縮物の安定性が減少しないことを示す。さらに、Pluronic(登録商標)10500分散剤の低い濃度においても高い安定性が達成された。
【0098】
実施例3
懸濁液濃縮物の安定性
懸濁液濃縮物A32及びA33を、Pluronic10500の濃度を222g/lとし、UV吸収剤の濃度を80g/lとしたことを除いて実施例2と同様に調製した(表2)。
【0099】
54℃で2週間保存した後、粒径及び粒子分布は変化しないことが見出された。
【0100】
全試験からのサンプルを、いずれの場合にもCIPAC water D(Ca/Mgイオン342ppmを含む)で0.1及び1重量%の濃度の懸濁液に希釈した。6時間保存後、活性成分の沈殿は実質的に見られなかった。
【表2】

【0101】
本試験は本発明によるUV吸収剤の添加により、懸濁液濃縮物の安定性が減少しないことを示す。
【0102】
実施例4A
UV安定化効果
メタフルミゾン100g/l及びUV吸収剤40g/lを含む製剤を実施例2と同様に調製した。製剤を10g/l(表3)又は1g/l(表4)の活性成分含有量となるように水で希釈した。
【0103】
分析:
上記のように調製された製剤約20mgを顕微鏡スライドに載せ、30分間乾燥させた後、光(light)に1日又は7日間連続的に暴露させた(Atlas Suntest CRT plus、「アウトドア」設定、照射は夏の日中の通常の日光と同じスペクトル及び強度に対応する)。暴露後、サンプルをジメチルスルホキシドに溶解した。メタフルミゾンの残存レベルを定量的UPLC(カラム:BEHC18 1.7μm 2.1×100;5/95〜95/5の勾配のアセトニトリル/0.1%H3PO4による溶出)により測定した。比較のため、それぞれの暴露シリーズをUV吸収剤なしのサンプル(対照)で行った。評価:2つのサンプルを乾燥後、光へ暴露させずにすぐに再溶解し、メタフルミゾン含有量を測定することにより、ブランクサンプルとして処理した。得られた平均を100%に設定し、残りのサンプルをそれに対して標準化した。結果を表3と4にまとめる。
【表3】

【表4】

【0104】
実施例4B
UV安定化効果
メタフルミゾン240g/lを含むメタフルミゾンの市販の製剤(Alverde(登録商標))を水で活性成分含有量10g/lに希釈した。種々のUV吸収剤を加え(表5)、実施例4Aと同様に分析した。結果を表5にまとめる。
【表5】

【0105】
実施例4A及び4Bから得られたデータは、UV吸収剤なしと比較して、本発明によるUV吸収剤で、殺有害生物剤の分解がより少なくなることを示した。さらに、本発明によるUV吸収剤の存在下では、Tinuvin1130の存在下よりも殺有害生物剤の分解がより少なくなることも示した。
【0106】
実施例3
生物学的試験
生育箱中の植物(ライマメ、ファセオルス・ルナトゥス(Phaseolus lunatus))に26℃で1日24時間常に紫外線を照射した。紫外線領域300〜400nmにおける照射強度を測定すると、39ワット/mであった。
【0107】
植物を2枚の葉の段階(two−leaf stage)で実施例2〜3から得られた懸濁液濃縮物(SC)A17〜A33又はC1を含む水性スプレー溶液でメタフルミゾン10g/haの施用量で処理した。処理後日数(DAT)7日間及び10日間で、残存する活性化合物の活性をスポドプテラ・エリダニア(Spodoptera eridania)(南部ヨトウムシ(southern armyworm))の幼虫に対するバイオアッセイにより測定した。これに関し、幼虫を植物に接触させ、死亡率を3日後に測定した(表3)。
【0108】
本試験は、試験されたUV吸収剤を含む製剤中の殺虫剤はUV吸収剤を含まない製剤中のものよりも紫外線に対してより安定であることを示す。
【表6】

【0109】
実施例4
表面張力の測定
UV吸収剤1C及び1Fの表面張力(ST)を25℃で、UV吸収剤の濃度約1mg/l〜5,000mg/lで測定した(表4)。ちなみに、空気に対する水のSTは72.4mN/mであり、市販の界面活性剤のSTは約30〜35mN/mである。この結果は、本発明によるUV吸収剤は著しく表面張力を低下させることができる(すなわち、それらは界面活性である)ことを示す。さらに、本発明によるUV吸収剤は市販のUV吸収剤よりも表面張力を大幅に減少させることができることも示す。さらに、本発明によるUV吸収剤は、市販の界面活性剤と同様の界面活性であることも示された。
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺有害生物剤及びUV吸収剤を含む農薬組成物であって、UV吸収剤が式I
【化1】

[式中、X:NH又はO;
:−[C−Cアルコキシ]−(C−C18アルキル)又は−[CHCHNH]−H;
:H又はCl;
:H又はC−Cアルキル;
n:3〜50]
に対応する前記農薬組成物。
【請求項2】
殺有害生物剤がUV感応性である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
殺有害生物剤対UV吸収剤の重量比が30:1〜1:3である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
nが3〜15を表す請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
殺有害生物剤がピレスロイドである請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
式III
【化2】

[式中、Y:NH又はO;
:H又はCl;
:H又はC−Cアルキル;
n:3〜50]
のUV吸収剤。
【請求項7】
nが3〜15を表す請求項6に記載のUV吸収剤。
【請求項8】
YがNHを表す請求項6又は7に記載のUV吸収剤。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のUV吸収剤の農薬組成物における使用。
【請求項10】
植物病原性菌類及び/又は望ましくない植物成長及び/又は望ましくない昆虫若しくはダニの侵入を防除する、並びに/又は植物成長を調節する方法であって、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物を特定の有害生物、その生息地又は特定の有害生物から保護すべき植物、土壌及び/又は望ましくない植物及び/又は作物及び/又はその生息地に作用させる、前記方法。

【公表番号】特表2012−520259(P2012−520259A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553435(P2011−553435)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053003
【国際公開番号】WO2010/103021
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】