説明

殺生物性アクロレイン組成物

本発明は、少なくとも90%の粒子が30ミクロン以下の大きさであるポリアクロレインを含む微粒子を含む殺生物性組成物に関する。少なくとも90%の粒子が5ミクロン以下の大きさであるのが好ましく、少なくとも90%の粒子が1ミクロン以下の大きさであるのがより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮出願第60/929961号(2007年7月19日出願)の利益を請求するものであり、該出願は、参照することにより本発明に援用される
本発明は、殺生物性アクロレイン組成物、殺生物性アクロレイン組成物の製造方法および該組成物を用いる微生物増殖の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアクロレインの殺生物特性が、米国特許第5290894号で議論されている。水中においてポリアクロレイン組成物の物理的安定性が悪いことが、その処方を困難にしている。これらの問題は、親水性コモノマーを包含することによって克服されると報告されている。米国特許第6723336号は、動物の胃腸疾患の治療に有用な水溶性ポリアクロレインを開示する。我々の米国特許第6803356号および第6410040号もまた、酸基を含むようにポリマーを修飾し、さらに任意に、アセタール基を形成するように該ポリペプチドを反応させることによる、ポリアクロレインの溶液安定性および抗菌活性の改善方法を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
概要
我々は、今や、30ミクロン以下、好ましくは5ミクロン以下およびさらに好ましくは1ミクロン以下の大きさの微細粒子の形態のポリアクロレインが、水中で安定な分散を形成し、高レベルの殺生物活性を有することを見出している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、我々は、少なくとも90重量%の粒子が30ミクロン以下の大きさであるポリアクロレインを含む微粒子を含む殺生物性組成物を提供する。少なくとも90重量%の粒子が5ミクロン以下の大きさであるのが好ましく、少なくとも90%の粒子が1ミクロン以下の大きさであるのがより好ましい。
【0005】
1つの実施態様において、本発明組成物は、上記で言及した粒径のポリアクロレインを含む懸濁粒子を含む水性懸濁液の形態である。
【0006】
さらなる態様において、本発明は、粒子状水溶性物質を含む水分散性粒子とともに、少なくとも90重量%の粒子が30ミクロン以下の大きさであるポリアクロレインを含む殺生物性粒子を含む殺生物性組成物を提供する。少なくとも90重量%の粒子が5ミクロン以下の大きさであるのが好ましく、少なくとも90重量%の粒子が1ミクロン以下の大きさであるのがより好ましい。
【0007】
本発明はさらに、上記定義した組成物にしたがってポリアクロレインを含む粒子状殺生物剤の製造方法であって:
(i)少なくとも一部が水溶性である溶媒中のポリアクロレインの溶液を形成すること;および
(ii)ポリアクロレインの該溶液を水性組成物と混合して、該水性組成物中のポリアクロレイン粒子の微細懸濁液を提供すること;
を含む方法を提供する。
【0008】
本発明はさらに、ポリアクロレインを粉砕して、少なくとも90%の粒子が30ミクロン以下の大きさであるように粒径を小さくすることを含む、粒子状ポリアクロレイン殺生物性組成物の製造方法を提供する。少なくとも90%の粒子が5ミクロン以下の大きさであるのが好ましく、少なくとも90%の粒子が1ミクロン以下の大きさであるのがより好ましい。
【0009】
詳細な解説
本発明ポリアクロレイン粒子は、30ミクロン以下の大きさである少なくとも90重量%の粒子を含む。少なくとも90重量%の粒子が5ミクロン以下の大きさであるのが好ましく、少なくとも90重量%の粒子が1ミクロン以下の大きさであるのがより好ましい。ポリアクロレイン粒子は、典型的には、少なくとも5nmの大きさであり、少なくとも10nmであるのがより好ましく、少なくとも20nmであるのが最も好ましい。最適粒径は、組成物が使用されることになっている適用の程度に応じて変わるが、典型的には、活性評価の点から、より好ましい大きさは、200nm以下の大きさであり、150nm以下の大きさが最も好ましい。我々は、ナノ粒子レンジ(1000nmまで)、より好ましくは200nm以下、特に150nm以下における粒子の活性が有意に改善されることを見出している。
【0010】
ポリアクロレインは、ホモポリマーまたは、たとえば、15重量%まで、好ましくは10重量%以下のアクロレイン以外のモノマーを含むコポリマーであってよい。ポリアクロレインがアクロレインホモポリマーであるのが最も好ましい。
【0011】
ポリアクロレインは、ラジカル重合、アニオン重合または塩基触媒重合によって形成されてもよい。我々は、塩基触媒によって形成されたポリアクロレインを含むポリアクロレイン粒子が、ラジカル重合によって製造されたポリアクロレインと比べて優れた活性を示すことを見出している。
【0012】
ポリマーを修飾して、0.5〜5モルカルボン酸基/ポリマーkgなどの酸基の選択された割合を包含するように、ポリアクロレイン粒子が酸化されてもよい。空気または他の酸素源中の固体の酸化による酸基の組み込みは、たとえば、我々の米国特許第6723336号の実施例1bに記載されている。
【0013】
1つの態様において、本発明は、上記粒子状ポリアクロレイン殺生物性組成物の製造方法であって:
(i)少なくとも一部が水溶性である溶媒中のポリアクロレインの溶液を形成すること;および
(ii)ポリアクロレインの該溶液を水性組成物と混合して、該水性組成物中のポリアクロレイン粒子の微細懸濁液を提供すること;
を含む方法を提供する。該方法は、ナノ懸濁液の形態で粒子状ポリアクロレインを提供する。ナノ粒子は、要すれば、ナノ懸濁液から集めてもよいが、一般的に言えば、水性ナノ懸濁液のためのこの態様において、所望の適用のための適当な賦形剤および補助剤を任意に含む殺生物剤の製剤において用いられるのが好ましい。溶媒は、少なくとも一部が水溶性であるのが好ましい。典型的には、20℃にて少なくとも1%の水への溶解度を有する。適当な溶媒の例として、脂肪族および芳香族アルコールおよびエーテルならびにその2つ以上の混合物が挙げられるが、ここで、溶媒組成物は、必要な溶解度を有する。特定の例として、C1〜C4アルカノール、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのポリオールならびにテトラヒドロフランなどのエーテルが挙げられる。
【0014】
本発明はさらに、ポリアクロレインを含む固体を粉砕して、少なくとも90%の粒子が30ミクロン以下の大きさであるように粒径を小さくすることを含む、粒子状ポリアクロレイン殺生物性組成物の製造方法を提供する。少なくとも90%の粒子が5ミクロン以下の大きさであるのが好ましく、少なくとも90%の粒子が1ミクロン以下の大きさであるのがより好ましい。
【0015】
粉砕は、ボールミル、アトリッションミル、流体エネルギーミルなどの様々な既知の装置を用いて行うことができる。流体エネルギーミルが特に好ましい。粉砕は、固体または水などの(固体が不溶である)適当な液体または適当な油中の固体の分散液において行ってもよい。
【0016】
ポリアクロレインは、典型的に、5ミクロン以上、好ましくは50ミクロン以上および、最も好ましくは100ミクロン以上の粒径を有する組成物から粉砕されて、少なくとも90%の粒子が5ミクロン以下の大きさであり、より好ましくは少なくとも90%の粒子が1ミクロン以下の大きさである粒径を提供する。
【0017】
本発明の特に好ましい態様において、粒子状殺生物剤は、水分散性顆粒または水分散性粉末製剤として製剤される。このような製剤は、分散剤、界面活性剤、クレーおよび金属塩などの充填剤、水溶性物質、増粘剤などの添加剤を包含してもよい。1つの態様において、粒子状ポリアクロレインは、好ましくは糖類、糖アルコールおよび塩化ナトリウムなどの水溶性塩などから選ばれる水溶性粒子状担体である担体に吸着される。糖および糖アルコール担体の特定の例として、ラクトース、マンノース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールが挙げられる。粒子状ラクトースが特に好ましい。典型的には、粒子状ポリアクロレインのための固体粒子状担体は、ポリアクロレイン粒子より実質的に大きい粒径を有する。水溶性粒子状担体は、たとえば、30〜2000ミクロン、より好ましくは50〜500ミクロンの範囲の粒径を有してもよい。
【0018】
ポリアクロレインは、典型的に、粒子状殺生物剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは50重量%、および最も好ましくは少なくとも80重量%のポリアクロレインを含む。粒子状殺生物剤組成物は、水分散性組成物の一部であってよく、その場合、典型的に、総水分散性組成物の1〜99重量%および、好ましくは1〜20重量%の範囲を較正する。
【0019】
本発明組成物は、多くの抗菌性用途を有する。該組成物は、(a)胃腸疾患を治療するかまたは胃腸疾患の発生率を低下させるための動物飼料 ;(b)防腐および消毒製剤;(c)木材、土壌、建築材料または植物における真菌感染を治療または予防するための抗真菌薬;(d)化粧品および医薬品における保存剤;および(e)注水口、水冷却塔、水質改善および家庭または工業用上水道の処理のための水処理製剤において有用である。
【0020】
本発明を以下の実施例を参照して記載する。これらの実施例は、本発明の説明のために提供されるものであり、本発明の反応工程式にを限定するものではないことを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施例
粒径分析は、レーザー回折を備えたDynamic Light Scatteringを用いて行ったが、この方法においては、水中の固体の希釈懸濁液の粒径を0.02〜2000 umの間で測定する。
【実施例1】
【0022】
パート(a)
本実施例は、水溶性液体中のポリアクロレインの溶液を水性組成物に加えるという本発明の1つの態様である方法による、本発明の別の態様である粒子状ポリアクロレインの製造に関する。
【0023】
米国特許第6723336号の実施例1bにしたがって、本実施例に用いるポリアクロレインを調製し、0.5〜5モルの範囲のカルボキシル基/ポリアクロレインkgを含む酸化粒子状ポリ(2-プロペナール,2-プロペン酸)の形態で得た。
【0024】
粒子状出発物質は、水中に約10〜2000ミクロンの大きさの粒子を含んだ。
【0025】
65℃にて混合物を撹拌することによって、ベンジルアルコール中のポリ(2-プロペナール,2-プロペン酸)の20 w/w %溶液を調製し、撹拌した混合物を室温に冷却して、透明な粘稠溶液を得た。少量のエタノールを加え、混合物を激しく撹拌した大量の水にゆっくりと加えた。得られる組成物は、水性混合物中に分散したポリ(2-プロペナール,2-プロペン酸)のナノ粒子の形態であり、乳状の外観の透明な混合物として出現した。
【0026】
パート(b)
本実施例は、ポリ(2-プロペナール,2-プロペン酸)のナノ粒子状分散物の殺生物性特性を試験する。
【0027】
ベンジルアルコール(97.98 mg)中のポリ(2-プロペナール,2-プロペン酸)の20%溶液を無水エタノール(500 μL)と混合し、混合物をガラスバイアル中の撹拌水(6.9g)に加えた。得られる懸濁液を逆洗した。最終重量を水で9.979g(すなわち、2000 ppm有効)にした。
【0028】
コントロールサンプルとして、ベンジルアルコール(82.4 ml)およびエタノール(500 μL)を合わせ、水(74g)に移し、水で10 gにした。活性サンプルおよびコントロールサンプルの両方を抗菌試験に付した。
【0029】

【実施例2】
【0030】
パート(a)
流体エネルギーミルを用いて、粒径約10〜2000ミクロンのサンプルポリ(2-プロペナール,2-プロペン酸)を粉砕して、1ミクロン以下の粒径を有するサンプル重量の大部分とともに、5ミクロン以下の粒径を得た。流体エネルギーミルまたはジェットミルは、粒子と加工材料の間の高速衝突の結果として大きさを減少させる。チャンバーの内部は、大きすぎる粒子を再循環させる。
【0031】
パート(b):配合飼料の調製
タンブルミキサーまたは乱流ミキサーを用いて、パート(a)に記載の方法にしたがって製造した微細粒子状ポリ(2-プロペナール,2-プロペン酸)を顆粒ブタ飼料と混合した。粒子状ポリ(2-プロペナール,2-プロペン酸)は、動物飼料顆粒の表面に急速に分配された。追加の抗菌活性有りのブタ飼料と無しのブタ飼料のと間で見かけの差異はほとんど無かった。
【0032】
パート(c):水溶性担体への吸収
以下の成分および方法を用いて、パート(a)に記載の方法にしたがって製造した微粒化ポリ(2-プロペナール,2-プロペン酸)を水溶性固相担体に吸収させた。
【0033】

【0034】
カラギーナン(海藻から抽出された硫酸化多糖)および塩化ナトリウムを乳鉢にて一緒にトリチュレートして、微粉化し(約<100μm)、次いで、撹拌しながら(スピード5)、70 mlの3%グリセリン溶液に徐々に加えた。45分間撹拌した後、塊を含まない微細粒子分散液を得た。(見かけは透明であった:わずかに乳白色)
【0035】
また、微粒化ポリ(2-プロペナール,2-プロペン酸)およびラクトースを別の乳鉢にて一緒にトリチュレートし、撹拌しながら(スピード7)、上記分散液に加えた。添加完了後、上記分散液に加える20 mlの3%グリセリン溶液で乳鉢を洗浄した。
【0036】
3%グリセリン溶液の残りの10 mlを用いて、添加中に飛び散った主容器の縁に付着した微細粉末を洗浄した。
【0037】
さらに2時間撹拌を継続して、完全に混合した。
【0038】
最後に、本明細書に概略した本発明の精神から逸脱することなく様々な他の修正および/または変更をなしうることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも90重量%の粒子が、30ミクロン以下の大きさであるポリアクロレインを含む微粒子を含む殺生物性組成物。
【請求項2】
少なくとも90重量%の粒子が、5ミクロン以下の大きさである請求項1に記載の殺生物性組成物。
【請求項3】
組成物が、微粒子のポリアクロレインを含む懸濁粒子を含む水性懸濁液の形態である請求項1に記載の殺生物性組成物。
【請求項4】
粒子が固体粒子であり、10ミクロン以上の粒径から粉砕によって大きさを小さくした粒子である請求項1に記載の殺生物性組成物。
【請求項5】
粒子状水溶性物質を含む水分散性粒子とともに、少なくとも90重量%の粒子が30ミクロン以下の大きさであるポリアクロレインを含む殺生物性粒子を含む殺生物性組成物。
【請求項6】
90重量%の殺生物性粒子が200nm以下、最も好ましくは150nm以下の大きさである前記請求項のいずれか1つに記載の殺生物性組成物。
【請求項7】
ポリアクロレインが、アクロレインホモポリマーおよび10重量%以下のアクロレイン以外のモノマーを含むコポリマーから選ばれる前記請求項のいずれか1つに記載の殺生物性組成物。
【請求項8】
ポリマーを修飾して、0.5〜5モルカルボン酸基/ポリマーkgの酸基を包含するように、ポリアクロレイン粒子が酸化される前記請求項のいずれか1つに記載の殺生物性組成物。
【請求項9】
粒子状殺生物剤組成物が、粒子状殺生物剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも25重量%のポリアクロレインを含む前記請求項のいずれか1つに記載の殺生物性組成物。
【請求項10】
粒子状殺生物剤のための固体粒子状担体が、ポリアクロレインを含む殺生物性粒子よりも実質的に大きい粒径を有する請求項5に記載の殺生物性組成物。
【請求項11】
粒子状担体が、30〜2000ミクロンの粒径を有する請求項10に記載の殺生物性組成物。
【請求項12】
製剤が、分散剤、界面活性剤、クレーおよび金属塩などの充填剤、水溶性物質、増粘剤などから選ばれる1種以上の添加剤を包含する請求項5および11のいずれか1つに記載の殺生物性組成物。
【請求項13】
ポリアクロレインを含む粒子状殺生物剤が、好ましくは水溶性粒子状担体、より好ましくは糖、糖アルコールおよび水溶性塩から選ばれるである担体上に吸着される前記請求項のいずれか1つに記載の殺生物性組成物。
【請求項14】
ポリアクロレインを含む固体を粉砕して、少なくとも90重量%の粒子が30ミクロン以下の大きさであるように粒径を小さくすることを含む、粒子状ポリアクロレイン殺生物性組成物の製造方法。
【請求項15】
固体が粉砕されて、少なくとも90重量%の粒子が5ミクロン以下の大きさである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
粉砕が、固体において、または粒子状ポリアクロレインが不溶である液体中の固体の分散物においてで行われる請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
ポリアクロレインを含む殺生物剤が、50ミクロン以上の粒径を有する組成物から粉砕されて、少なくとも90重量%の粒子が5ミクロン以下の大きさである粒径を提供する請求項14〜16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1または2に記載のポリアクロレインを含む粒子状殺生物剤の製造方法であって:
(i)少なくとも一部が水溶性である溶媒中のポリアクロレインの溶液を形成すること;および
(ii)ポリアクロレインの該溶液を水性組成物と混合して、該水性組成物中のポリアクロレイン粒子の微細懸濁液を提供すること;
を含む方法。

【公表番号】特表2010−533654(P2010−533654A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516327(P2010−516327)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001032
【国際公開番号】WO2009/009828
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(501022262)ケメック・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】