説明

殺生物性活性を示すシリコーンエラストマー生成物

本発明は、シリコーンベースのシステムから得られる抗菌性生成物に関し、表面に殺生物性活性を示す。上記システムは、シリコーンエラストマーマトリックスと、シリカまたはアルミノシリケート、たとえばゼオライトまたはベントナイトの群から選択される無機フィラーの粒子とを含む。上記粒子は、上記マトリックス中に分散され、粒子の表面に結合され、少なくとも1つの第四級アンモニウム官能基を組み入れたアルキルシランタイプの分子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とくに食品用途のための抗菌性および生体親和性生成物の分野に関する。とくわけ、本発明は、シリコーンベースの有機ケイ素化合物システムから得られる、抗菌性の殺生物性活性を表面に示す生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の目的は、抗菌性活性を示すが、とくに食品の分野での使用と両立できる生成物を提供することである。上記生成物の使用の可能な例の1つは、コーヒー、フルーツジュース、スープなどの液体食品の輸送のためのチューブのとくに作製である。
【0003】
したがって、たとえば、液体食品を輸送するために使用されるチューブが分配装置で使用される場合、チューブのいずれかの抗菌性処理がないと、最初は内側の穴の表面で、次に汚れた液体の中で細菌のまたはカビのコロニーが成長することに関連する食品を有毒にするいずれかの危険性を回避するために、非常に頻繁にそれを交換する必要がある。そのような交換は非常に費用がかかり、わずかな見落としが非常に重大な健康の結果を招き得ることが容易に見かける。
【0004】
抗菌性食品チューブを作製するために種々のポリマーマトリックスを使用することがすでによく知られている。すなわち、種々の性質のマトリックス、たとえばPVC、TPE、TPUまたはシリコーンで得られた食品チューブがそのように認められる。一般に、人間の健康に対してもっとも危険な緑膿菌また大腸菌などの細菌のとくに成長を制限するために、これらのマトリックスの中に、抗菌性の作用を示す一般に銀塩ベースの作用物質を分散させることが現在一般的である。
【0005】
より最近、ちょうど同じくらい有効であり、しかし、より費用がかからない、抗菌性効果を有する他の分子で銀を置き換えることが可能であることが発見された。その殺生物性作用が、たとえば特許出願WO99/32157号パンフレットに説明されている第四級アンモニウム誘導体がとくに言及されている。
【0006】
さらにいっそう最近、また、上記タイプのポリマーマトリックスの中に浸透する網目構造により、重合可能なアルコキシアルキルシランタイプの末端を示す第四級アンモニウム塩の使用の記載が、特許出願US6572926B1号明細書に示されている。
【0007】
これらの解決策は、上記で述べた細菌のコロニーの成長を防止または少なくとも大きく制限する問題を解決することを可能にする。しかし、それらは、殺生物性分子の一部が、チューブの穴の中およびそれらの中を循環する液体の中に連続的に放出されるという大きな不利な点を示す。そのように放出される材料の量が非常に少ないことが立証された場合であっても、それは、液体食品の別の汚染物を構成し、その結果は、今日でさえ、十分知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、表面での細菌および他の微生物の成長を大いに制限することを可能とする殺生物性活性を有するが、外部環境との関係では不活性である、すなわち、その殺生物性成分が「にじみ出て」、材料の表面で、外部環境の中へ放出されるのを不可能にする、新規な材料から得られた生成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、本発明における発明の主題である生成物の使用のおかげでそのような目的は達成された。
【0010】
もっと具体的にいえば、本発明は、表面に殺生物性活性を示すシリコーンベースのシステムから得られる抗菌性生成物に関する。上記システムは、シリコーンエラストマーマトリックス、およびシリカ、ゼオライトまたはベントナイトの群から選択されるか、またはより一般的なアルミノシリケートの無機フィラーの粒子を含む。上記粒子は、上記マトリックス中に分散され、上記粒子の表面と接合した、少なくとも1つの第四級アンモニウム官能基を組み入れているアルキルシランタイプの分子を含む。
【0011】
好ましくは、接合されたアルキルシラン分子は、少なくとも1種のタイプ:
【化1】

前駆物質から得られる。
ここで、
− mは、1と10との間で変わる整数であり(1および10を含む)、
− nは、0、1または2と等しく、
− Rは、CH3−(CH2w−タイプのアルキル直鎖(wは0と5との間である)または上記直鎖の異性体の分枝した形態を表し、
− R1は、アルコールおよび/またはエーテル、エポキシまたはアリール官能基を所望により含む炭化水素鎖であり、
− R2基は、同じ前駆物質で同一であるかまたは異なっており、(CH2z−CH3タイプのアルキル直鎖(zは1と30との間である)または上記直鎖の異性体の分枝した形態をそれぞれ表し、
− R3は、アルキル直鎖CH3−(CH2w(wは0と5との間である)または上記直鎖の異性体の分枝した形態またはさらに別のアルキルシラン基である。
【0012】
m=1、n=0、w=0、1または2、R1は、(CH2yタイプの直線的なアルキル(yは、1と10との間であり、好ましくは1と5との間である)または上記直線的な形態の異性体の分枝した形態を表し、好ましくはR2基の少なくとも1つに関してzが15よりも大きいところの前駆物質が、本発明によればとくに好ましい。
【0013】
本発明によれば、上記で示した値に関して、値の広い範囲または好ましい範囲の中であろうとも、またその値自体でさえも、すべての組み合わせが可能であることが、明らかに理解される。とくに、m、n、w、R1、R2およびzの値のすべての組み合わせが構想され、本明細書を不必要に拡張しないために明白に記載されていない場合であっても、本明細書におけるこの簡単な参照に含まれるとして見なされるべきである。
【0014】
好ましい態様によれば、結合されたアルキルシラン分子は、一般式:
【化2】

の前駆物質から得られる。
【0015】
本発明によれば、無機フィラーを構成する粒子の平均粒径は、好都合には、0.01ミクロンと500ミクロンとの間であり、好ましくは、0.1ミクロンと200ミクロンとの間である。
【0016】
上記粒子は、非晶質材料、好ましくは非晶質シリカからとくに構成され得る。その比表面積は、10m2/gと1000m2/gとの間であり、好ましくは50m2/gと500m2/gとの間である。
【0017】
好ましい形態によれば、シリコーンエラストマーマトリックスに対するアルキルシランの重量比率は、3%未満、さらに2%未満である。本発明によれば、上記重量比率は、好ましくは0.01%よりも大きい。本発明の文脈から逸脱しない限り、タイプおよび外部環境の不純物の厳しさによって、重量比率は、0.05%よりも大きな値、さらに0.1%よりも大きな値になり得る。
【0018】
一方、作用物質が本発明によるフィラーの表面で結合された場合、0.005%オーダーの、さらにそれよりも少ない、非常に少ない量の殺生物性作用物質が、非常によく感知できる殺生物性活性をさらに引き起こすであろうことが出願人よって発見された。本発明の文脈に逸脱しない限り、上記量、たとえば、0.005%〜0.01%オーダーの、シリコーンエラストマーマトリックスに対するアルキルシランの重量比は、本発明の範囲内に至るものとして見なされるべきである。
【0019】
従来の食品の使用で適用可能な例によれば、重量比は、理想的には、0.01%と0.2%との間になり得る。
【0020】
シリコーンエラストマーマトリックスに対する無機フィラーの重量比率は、0.1%と50%との間、好ましくは、0.5%と20%との間になり得る。
【0021】
また、たとえば、コーヒー、フルーツジュース、スープまたは他の液体食品などの液体食品の輸送に関して上述したように、本発明は、シリコーンエラストマーチューブの使用に関する。
【0022】
本発明による生成物は、食品の分野で使用するものであるが、それに限定されないことは非常に明確である。バクテリアの存在が問題を構成するかもしれないところの、たとえば、シリコーンタッチキーの製造におけるシリコーンコンピューターキーボードの成分として、航空機の凝縮システム、より一般的には航空機の空気システムのガスの循環のためのパイプの製造における健康または産業の用途のシリコーンのリークをしっかりと塞ぐシールとして、この列挙が限定せずに、任意の食品または非食品の分野が、可能な使用分野としてとくに言及されている。
【0023】
本明細書の意味の中で、「生成物」は3次元の任意の形状を示すことができる対象物を意味すると理解される。例を通して、飾り板、シート、チューブまたはパイプ、中実または中空球、または任意の他の空間的概念が、上記生成物または対象物として言及され得る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
シリコーンエラストマーは、ポリジメチルシロキサン鎖を有する化合物の少なくとも50%を出発モノマーまたはポリマーとして有する3次元に重合可能な任意のシステムを意味すると理解される。例は、「過酸化物触媒」シリコーンエラストマー、「白金塩触媒」シリコーンエラストマー、加水分解基(例:メトキシ、エトキシ)を有するポリジメチルシロキサンのモノマーもしくはポリマーおよびこの分野で知られている他の架橋可能なシステムである。
【0025】
とくに、本発明によれば、区別することなく、周囲温度(「RTV」組成物)またはより高い温度(高温加硫またはHTV組成物)で、様々なタイプの触媒または他の架橋剤の効果の下で、架橋する組成物から得られるシリコーンエラストマーを使用してもよい。出発エラストマー組成物は、加熱またはUV放射もしくは近赤外放射などの放射の効果の下での架橋に選択され得る。本発明によれば、多かれ少なかれ、単成分、2成分または3成分の形態で提供される官能化されたシリコーンエラストマーが使用され得る。
【0026】
本発明により使用され得るシリコーンエラストマーは、たとえば、特許出願EP 1 115 364 A1号明細書に以前記載されたものである。
【0027】
とくに粘土、アルミノシリケートまたはシリカタイプの天然または合成無機化合物、補強剤、顔料、染料、または知られておりシリコーンエラストマーの製造で一般に使用されている他の添加剤をこれらのシリコーンエラストマーに組み入れ得る。
【0028】
殺生物性は、致死または非致死の作用によって、有害な有機体を撲滅して、寄せつけないようにしてまたは害にならないように変えて、その有機体の作用を妨げたり、またはそれらと戦ったりすることを意図したいずれかの効果を意味するものと理解される。
【0029】
また、例を通じて、総称、微生物または微生物作用物質の下では、本明細書に示される有害な有機体は、一般に、細菌、酵母菌および他のものなどの単細胞の有機体である。本発明によれば、特許US 6 572 926 B1号明細書に記載された殺生物剤をとくに使用してもよい。
【0030】
表面は、シリコーンエラストマーの外部環境と接触するいずれかの部分を意味するものと理解される。その外部環境は、気体、固体または液体であり得、とくに水である。
【0031】
本発明によれば、表面殺生物性特性を有するシリコーンエラストマーをベースとする生成物は、好都合なことに、好ましくはそれらの架橋の前に、上述した殺生物性特性を示す天然または合成無機フィラーをシリコーンエラストマーの中に組み入れることによって作製され得る。最終生成物は、従来の押し出し成形、型での成形、同時押し出し成形もしくは射出成形プロセスまたはこの分野で知られている他の任意のプロセスにより所望の3次元形状にしたがった、殺生物性活性を有する上記フィラーを組み入れた架橋されていないエラストマーを架橋することによって得られる。
【0032】
可能な実施の1つによれば、上述した上記フィラーを含む架橋されていないシリコーンエラストマーの押し出し成形により、架橋後、接触によって内側および外側の表面が殺生物性活性を示す中空チューブを得ることが可能になる。
【0033】
別の可能な実施によれば、上記フィラーを含む架橋されていないシリコーンエラストマーと、しかし上記フィラーを有さない別の架橋されていないシリコーンエラストマーとの同時押し出し成形は、使用される同時押し出し成形のタイプにしたがって、内側または外側のみの表面が殺生物性活性を示すチューブを得ることが可能になる。
【0034】
したがって、本発明によれば、殺生物性活性を示すフィラーは、エラストマーの統合された部分を形成し、とくに外部環境の中に放出されるための生成物の表面の移動ができない。したがって、上記特性により、不純物に敏感な産業または活動、とくに食品産業または活動で、それらを使用することができる。
【0035】
上述した生成物の有利な点を説明する目的で、本発明を限定しない以下の例が示される。
【0036】
例:
A−無機フィラーの合成
第1のステップで、様々なフィラーが合成された。:
a)Cab−O−Sil M5(登録商標)の表示の下、Cabot社から販売された非晶質二酸化ケイ素粒子のみから構成された参照フィラー。
b)以下の条件の下で得られたフィラー1。
30グラムの非晶質シリカCab−O−Sil M5(登録商標)が流動床の中に組み入れる。10グラムの(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライドEPA 34292−1−CAS 27668−52−6−EINECS 248−595−8(水溶液中に72重量%)が流動床の中に噴霧される。四官能性の(第四級の)アミン官能基を含むこのアルキルシランの拡張された一般式は以下のものである。:
【化3】

この生成物は、AEM 5772(登録商標)の表示の下で、Aegis Corp社から現在販売されている。シリカとアルキルシランとの間の完了した反応を得るために、得られた混合物は、周囲温度で、24時間放置される。
c)フィラー1と同じ条件下で、しかし、30グラムの非晶質シリカCab−O−Sil M5(登録商標)と5グラムの72%の(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド水溶液との流動床での反応により得られたフィラー2。
d)フィラー1と同じ条件下で、しかし、30グラムの非晶質シリカCab−O−Sil M5(登録商標)と3グラムの72%の(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド水溶液との流動床での反応により得られたフィラー3。
【0037】
B−殺生物性分子のレベルの測定
第2のステップでは、シリカフィラーと反応していない(そして、生成物の表面で潜在的に放出され得る)アルキルシランのレベルが、以下の実験の手順にしたがって測定された。:
分析されるべき5gの結合されたシリカが破砕機に組み入れられる。100グラムの蒸留水が組み入れられ、そして、組み合わせられた混合物が1時間攪拌され、静置で24時間放置され、その後、遠心分離器で分離される。
【0038】
浮遊物が回収され、0.2μmのミリポアフィルターを通して濾過された。
【0039】
10gの収集された濾液は、以下の実験手順にしたがって、ブロモフェノールブルーとの反応による589nmと595nmとにおける比色分析で分析される。:
【0040】
1−キャリブレーションカーブの設定:
アルキルシラン母溶液は、72重量%の前駆物質を含む100μlの濃縮された水溶液を100gの蒸留水に添加して混合することによって、最初に作製される。
【0041】
様々な溶液が、種々のレベルの濃度にしたがって、後に作製される。:
−9.975mlの蒸留水+25μlの母溶液、すなわち、0.0175mgの第四級アミンを含むアルキルシラン作用物質、
−9.950mlの蒸留水+50μlの母溶液、すなわち、0.0350mgのアルキルシラン作用物質、
−9.900mlの蒸留水+100μlの母溶液、すなわち、0.0750mgのアルキルシラン作用物質、
−9.750mlの蒸留水+250μlの母溶液、すなわち、0.1750mgのアルキルシラン作用物質、
−10mlの蒸留水+0μlの母溶液、すなわち、0mgのアルキルシラン作用物質。
【0042】
また、ブロモフェノールブルー溶液が以下の方法で作製される。:50mgのブロモフェノールブルーが150mlの蒸留水に溶解され、その溶液は24時間以内に使用される。
【0043】
ブロモフェノールブルー第四級アミン錯体の吸収波長による589nmおよび595nmでの吸収が、第四級アンモニウムクロライドの濃度の測定を可能にするキャリブレーションカーブを設定するために測定される(表1)。
【0044】
【表1】

【0045】
2−濾液の定量:
50μlのブロモフェノールブルー溶液を10gの分析すべき溶液に添加し、組み合わせた混合物を数分間攪拌して、比色計に導入する。得られた結果を表2にまとめる。
【0046】
【表2】

【0047】
したがって、アルキルシランが様々なシリカフィラー(フィラー1、2または3)に全体として結合されること、および、したがって、本発明によれば、殺生物性活性成分が生成物の表面で「放出され」得ないことが証明され得る。
【0048】
同じ実験手順を、しかし、ヘキサンでシリカフィラーを抽出して再び実行した。すなわち、蒸留水は、抽出の間、100gのn−ヘキサンで置き換えられた。その実験結果は、シリカに対する殺生物性アルキルシランの接合の同じ特性を示す。
【0049】
D−本発明に生成物よる作製
本発明によれば、フィラーは、シリコーンエラストマーマトリックス中に組み入れられた。Rhodorsil MF 960 Uの表示の下、Rhodia Silicone社から販売されているシリコーンベースをマトリックスとして使用して、様々な混合物が作製された。Perkadox PD 50s(登録商標)の表示の下で販売されている生成物の使用により、シリコーンベースは加硫される。その加硫剤は、ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)過酸化物である。
【0050】
実行された10個の実施例のために使用された様々な成分の重量の割合(シリコーンベースについて100を基準にする)は、以下の表3にまとめる。
【0051】
【表3】

【0052】
より具体的に言えば、使用された手順は以下のようなものである。:
1)垂直シリンダーに3回連続して通しながらシリコーンベースを加熱する。
2)フィラー(1、2または3)を導入する。
3)Perkadox PD 50s(登録商標)加硫システムを導入する。
4)飾り板に切断するために0.5cmの厚みに調節して、加硫する。
5)250バールで密閉した成形機の中で、100℃で、10分間加硫し、架橋されたシリコーン飾り板を得るために、その後、200℃で4時間熱処理する。
【0053】
E−殺生物性活性
実施例1〜9の殺生物性活性および対照生成物の殺生物性活性が、規格JIS Z 2801−2000にしたがって測定された。使用された細菌の種族は大腸菌である。
【0054】
この規格および従来の手順によれば、実施例1〜9による組成から得られた生成物の殺生物性活性が、24時間後の、処理された生成物上で成長した細菌のコロニーの数のLog10と、いずれの生成物なしで成長した細菌のコロニーの数のLog10との間の差異(その分野ではCFUとしてまた知られている)によって測定される。
【0055】
ブランク(生成物なし)および対照生成物(フィラーなし)と比較することによる実施例1〜9による生成物に関して得られた結果は、表4にまとめられる。
【0056】
【表4】

【0057】
本発明により得られた生成物は、およそ100%の割合で大腸菌の成長を減少させることを可能にするということがわかる。したがって、その生成物は、本発明によるシステムの非常に高い殺生物性活性を示す。驚くことに、また、第四級アミン官能基を含むアルキルシラン殺生物性作用物質の非常に高い割合の結果、生成物の抗菌活性の減少が容易に感知できるということがわかる。
【0058】
F−非常に低い濃度のアルキルシランでの殺生物性活性の研究
本発明による他の生成物は、上述の実施例1〜9モデルで作製された。しかし、試料は、上記と同じ方法によって、しかし、ここでは、水溶液で5重量%に希釈された(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライドの溶液をこのとき使用して、フィラー1’、2’および3’から得られた。
【0059】
より具体的には:
−フィラー1’が、30グラムの非晶質シリカCab−O−Sil M5(登録商標)と10グラムの希釈された溶液(水溶液中に5重量%)の(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライドとを流動床に噴霧することによって得られた。
−フィラー2’が、フィラー1’に関して同じ条件下で、しかし、30グラムの非晶質シリカCab−O−Sil M5(登録商標)と5グラムの5%の(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド水溶液との間の流動床での反応により得られた。
−フィラー3’が、フィラー1’に関して同じ条件下で、しかし、30グラムの非晶質シリカCab−O−Sil M5(登録商標)と3グラムの5%の(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド水溶液との間の流動床での反応により得られた。
【0060】
さもなければ、生成物を作製するための手順は、実施例1〜9との関係で上述されたものと同じままである。
【0061】
実行された10個の実施例のために使用された様々な成分の重量の割合(シリコーンベースに関して100を基準にする)が、以下の表5にまとめられる。
【0062】
【表5】

【0063】
実施例10〜17の殺生物性活性が、上述した規格JIS Z 2801−2000にしたがって測定された。上述と同じ方法にしたがって使用された細菌の種族は大腸菌であった。
【0064】
実施例10〜17による生成物について得られた、ブランク(生成物なし)および対照生成物(フィラーなし)と比較した結果,は、表6にまとめられる。
【0065】
【表6】

【0066】
表6に示された結果から、本発明によって得られたすべての生成物は、およそ100%の割合で大腸菌の成長を減少させることができ、したがって、殺生物性活性作用物質、すなわちアルキルシランの極めて少ない量に関してさえも、本発明によるシステムの非常に高い殺生物性活性を示すということがわかる。
【0067】
驚くことに、したがって、マトリックスに関連して、第四級アミン官能基を含むアルキルシラン殺生物性作用物質の、0.01%オーダーの、非常に低い割合、さらに低い割合によって、しかし生成物の抗菌活性は高いということがわかる。また、そのような特性は、生成物に導入される殺生物性作用物質の量を最小にすることを好都合なことに可能にする。その結果、最終的には、材料の表面および外部環境の中への時間の経過による上記作用物質の「しみ出し」の危険性が最小になる。
【0068】
G−比較例
また、他の比較例を通じて、本発明による生成物の優位性を示すことを試みた。
【0069】
次の比較例25〜27では、アルキルシランタイプの殺生物性作用物質は、キャリヤー材料を使用してマトリックスの中に導入された。このキャリヤー材料は、グリコールコポリマータイプのワックスによって得られる。
【0070】
より具体的には、比較試料は、以下の実験手順にしたがって得られた。
【0071】
第1のステップでは、残りがグリコールコポリマーであり、50/50の割合の、アルキルシランタイプの殺生物性作用物質の混合物から構成されるキャリヤー材料が合成される。
【0072】
その後に、Rhodorsil MF 960 Uの表示の下、Rhodia Silicone社から販売されているシリコーンエラストマーマトリックス中に、ワックスおよび殺生物性作用物質から構成される比較フィラーを組み入れることによって比較試料が合成された。前述の例に関して言えば、シリコーンベースは、Perkadox PD 50s(登録商標)の表示の下で販売されている生成物の使用により、加硫される。その加硫剤は、前述のパートDに記載された手順によれば、ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)過酸化物である。
【0073】
そのようにして得られた試料の特性は、上述した同じフィラー2’および1’を並行して使用して合成された本発明による試料の別のシリーズと比較することによって、以下の表7にまとめる。すべての試料の殺生物性活性(以下の例19〜27)が、パートEで上のように記載された原理および手順にしたがって評価された。
【0074】
【表7】

【0075】
比較例25〜27の殺生物性活性は、本発明による試料に関して上記で得られたものに比べて、マトリックス中の作用物質の濃度の同一のレベルで非常に低いということが本発明による例19〜24と比較することによってわかる。とくに、アルキルシランタイプの殺生物性作用物質がフィラーなしでマトリックスの中に導入される場合、マトリックスの中の0.1重量%よりも大きな殺生物性作用物質のレベルの場合のみ、最大の効果を得ることができる。それとは対照的に、本発明によるフィラーを使用することにより、10倍少ない、さらに15倍少ないマトリックス中の殺生物性作用物質の割合で最大の活性を得ることができる。
【0076】
そのような違いは、殺生物性作用物質の分子が結合されるシリカタイプの無機フィラーの重要性を示す。非常に意外なことに、上記実施により、最終生成物の最大活性を得るために必要な殺生物性作用物質のレベルを非常に減少させることができる。
【0077】
とくに、また、殺生物性作用物質の一部、最小の一部でさえも材料を通して「しみ出し」、外部環境、たとえば、食品チューブを通して循環する液体の中に排出される危険性を、上記の結合することによって非常に減少させることが可能である。
【0078】
また、シリカフィラー単体をマトリックスの中に組み入れ結果、以上のように得られた材料の殺生物性活性の任意の特定の改善が行われたのではないことが、他の追加の例を通じて、本発明の文脈では示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に殺生物性活性を示すシリコーンベースシステムから得られる抗菌性生成物であって、
前記システムは、シリコーンエラストマーマトリックスと、シリカまたはアルミノシリケート、たとえばゼオライトまたはベントナイトの群から選択される無機フィラーの粒子とを含み、
前記粒子は、前記マトリックスの中で分散され、少なくとも1つの第四級アンモニウム官能基を組み入れた、前記粒子の表面に結合されたアルキルシランタイプの分子を含む生成物。
【請求項2】
前記結合されたアルキルシラン分子は、タイプ:
【化1】

(ここで
− mは、1と10との間で変わる整数であり(1および10を含む)、
− nは、0、1または2と等しく、
− Rは、CH3−(CH2w−タイプのアルキル直鎖(wは0と5との間である)または該直鎖の異性体の分枝した形態を表し、
− R1は、アルコールおよび/またはエーテル官能基を所望により含む炭化水素鎖であり、
− R2基は、同じ前記前駆物質で同一であるかまたは異なっており、(CH2z−CH3タイプのアルキル直鎖(zは1と30との間である)または該直鎖の異性体の分枝した形態をそれぞれ表し、
− R3は、アルキル直鎖CH3−(CH2w(wは0と5との間である)または該直鎖の異性体の分枝した形態またはさらに別のアルキルシラン基である)の少なくとも1種の前駆物質から得られる請求項1に記載の生成物。
【請求項3】
m=1であり、
n=0であり、
w=0、1または2であり、
1は、(CH2yタイプの直線的なアルキル(yは、1と10との間であり、好ましくは1と5との間である)または該直線的な形態の異性体の分枝した形態を表し、
好ましくはR2基の少なくとも1つに関してzが15よりも大きい請求項2に記載の生成物。
【請求項4】
前記結合されたアルキルシラン分子が、一般式:
【化2】

の前駆物質から得られる請求項2に記載の生成物。
【請求項5】
前記無機フィラーを構成する前記粒子の平均粒径は、0.01ミクロンと500ミクロンとの間であり、好ましくは0.1ミクロンと200ミクロンとの間である請求項1〜4のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項6】
前記粒子が、非晶質材料、好ましくは非晶質シリカから構成され、前記粒子の比表面積は、10m2/gと1000m2/gとの間であり、好ましくは50m2/gと500m2/gとの間である請求項1〜5のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項7】
前記シリコーンエラストマーマトリックスに対する前記アルキルシランの重量比率が、3%未満である請求項1〜6のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項8】
前記シリコーンエラストマーマトリックスに対する前記アルキルシランの重量比率が0.01%よりも大きい請求項1〜7のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項9】
前記シリコーンエラストマーマトリックスに対する前記アルキルシランの重量比率が、0.01%と0.2%との間である請求項1〜8のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項10】
前記シリコーンエラストマーマトリックスに対する、アルキルシランと結合した無機フィラーの重量比率は、0.1%と50%との間であり、好ましくは0.5%と20%との間である請求項1〜9のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項11】
コーヒー、フルーツジュース、スープもしくは他の液体食品などの液体食品または非食品の輸送のための請求項1〜10のいずれか1項に記載のシリコーンエラストマーのチューブの使用。
【請求項12】
シリコーンタッチキーの製造におけるシリコーンコンピューターキーボードの成分としての、航空機の凝縮システム、より一般的には航空機の空気システムのガスの循環のためのパイプの製造における健康または産業の用途のシリコーンのリークをしっかりと塞ぐシールとしての、請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗菌性生成物の使用。

【公表番号】特表2011−525524(P2011−525524A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515550(P2011−515550)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051183
【国際公開番号】WO2010/007284
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(310023106)サン−ゴバン ペルフォルマンス プラスティク フランス (1)
【Fターム(参考)】