説明

殺菌強度測定出力システム

【課題】飲料の品質が保障できるレベルであるか否かを正確かつ迅速に確認することができる殺菌強度測定出力システムを提供することを目的とする。
【解決手段】情報処理部50が、充填液殺菌部13にて加熱された液体がホールディングチューブ23に貯留される貯留期間や充填液殺菌部13にて加熱された液体の温度を示す殺菌温度などにもとづいて殺菌強度を算出し、その算出結果を含む殺菌強度履歴情報を情報出力部51に画面表示する。よって、アウトプットされた殺菌強度履歴情報により、液体の品質が保障できるレベルであるか否かを正確かつ迅速に確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を送液する送液ライン上の液体を加熱して殺菌したときの殺菌強度を測定し出力する殺菌強度測定出力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲料液などの液体を製造するための飲料製造ラインを送液される製品液を加熱により殺菌するシステム(特許文献1)や、その殺菌値(F値)を測定するシステム(特許文献2−3)が提案されている。
【0003】
特許文献1には、飲料製造ラインにおいて、クッションタンクから送液された製品液を加熱殺菌することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、容器に充填した粒状固形食品を直接加圧蒸煮し、殺菌及び調理する加圧蒸煮釜に枝管を取付け、該枝管内に粒状固形食品と同様なダミー粒子を充填したダミー容器を装填し、該ダミー容器内に充填したダミー粒子の高さ方向の異なる位置に複数の温度センサを装填し、各温度センサにより温度を殺菌値として求めることが記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、殺菌済の液体を製造する装置において、装置の動作パラメータのうちの少なくとも1つにもとづいて殺菌値を表すパラメータを計算し、その計算値をしきい値と比較し、液体に対する殺菌処理を確認することが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−72189号公報
【特許文献2】特開平9−187260号公報
【特許文献3】特表2002−539893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述した従来の飲料製造ラインを含む飲料製造システムでは、単に殺菌値として温度などを基準にして飲料の品質を判定しているだけであるため、飲料の品質が保障できるレベルであるか否かを正確かつ迅速に確認することができないという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は、飲料の品質が保障できるレベルであるか否かを正確かつ迅速に確認することができる殺菌強度測定出力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による殺菌強度測定出力システムは、液体を送液する送液ラインを有し、該送液ライン上を送液される液体を加熱する加熱部と、該加熱部にて加熱された液体を貯留する加熱液体貯留部と、該貯留部から流出した液体を冷却する冷却部と、該冷却部で冷却された液体を液体容器に充填する充填部とを備えた殺菌強度測定出力システムであって、前記加熱部にて加熱された液体が前記加熱液体貯留部に貯留される貯留期間と、前記加熱部にて加熱された液体の温度を示す殺菌温度とにもとづいて、殺菌強度を算出する殺菌強度算出手段と、該殺菌強度算出手段の算出結果を含む殺菌強度履歴情報を出力する殺菌強度履歴情報出力手段とを含むことを特徴とする。このような構成により、アウトプットされた殺菌強度履歴情報により、液体の品質が保障できるレベルであるか否かを正確かつ迅速に確認することができる。
【0010】
充填部は、冷却部で冷却された液体を貯留する冷却液体貯留部と、該冷却液体貯留部に貯留された液体の貯留量を計測する貯留量計測部とを有し、該貯留量計測部が計測した貯留量に応じて、送液ラインに流出させる液体の量を制御する液体量制御手段を備えていてもよい。
【0011】
液体量制御手段は、貯留量計測部が計測した貯留量と、殺菌強度算出手段が算出した殺菌強度とにもとづいて、送液ラインに流出させる液体の量を制御する構成とされていてもよい。
【0012】
殺菌強度算出手段が算出した殺菌強度が所定値以下であったときに、該殺菌強度算出手段の算出結果と、殺菌強度の算出時刻と、殺菌強度が所定値以下である旨とを含む殺菌強度履歴情報を生成する殺菌強度履歴情報生成手段と、充填部が各液体容器に液体を充填した時刻を保存する充填時刻保存手段と、冷却部で冷却された液体を前記充填部に向けて送液する充填ラインと、前記冷却部で冷却された液体を回収するための回収ラインとを切り換えるライン切換手段と、前記ライン切換手段が使用ラインを前記回収ラインに切り換えている回収ライン切換期間を保存する回収ライン切換期間保存手段とを備え、前記ライン切換手段は、前記殺菌強度算出手段が算出した殺菌強度が所定値以下となったことに応じて、使用ラインを前記充填ラインから前記回収ラインに切り換え、殺菌強度履歴情報出力手段は、前記殺菌強度履歴情報生成手段が生成した殺菌強度履歴情報と、前記充填時刻保存手段が保存した各液体容器への充填時刻と、前記回収ライン切換期間保存手段が保存した回収ライン切換期間とを出力する構成とされていてもよい。
【0013】
殺菌強度履歴情報出力手段は、例えば、表示画面に情報出力する。また、殺菌強度履歴情報出力手段は、例えば、紙面に情報出力する。さらに、殺菌強度履歴情報出力手段は、例えば、所定期間毎に情報出力する。
【0014】
殺菌強度算出手段は、加熱部にて加熱された液体が加熱液体貯留部に貯留される貯留期間「V/l」と、前記加熱部にて加熱された液体の温度を示す殺菌温度「Ti」と、あらかじめ決定される殺菌適性温度「T」及び固定値「Z」とにもとづいて、例えば式1を用いて殺菌強度「F」を算出する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アウトプットされた殺菌強度履歴情報により、液体の品質が保障できるレベルであるか否かを正確かつ迅速に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る殺菌強度測定出力システムの構成例を示すブロック図である。図1に示すように、殺菌強度測定出力システムは、UHT10と、バランスタンク21と、INV(インバーターロータリーポンプ)22と、ホールディングチューブ23と、充填機24と、F値の算出など各種の情報処理を行う情報処理部50と、F値などの各種の情報を出力する情報出力部51とを含む。なお、図1には表れていないが、情報処理部50は、殺菌強度測定出力システムの各部と信号線により接続されており、本例における情報処理のために必要なデータを取得するものとする。
【0017】
殺菌強度測定出力システムは、調合タンクから充填機24まで処理対象の液体を送液する送液ラインと、充填機24に流入される前に送液ラインから回収した回収液(リターン液)をバランスタンク21に戻すための回収液ラインとを含む。送液ラインと回収液ラインは、例えばそれぞれパイプなどによって構成される。
【0018】
殺菌強度測定出力システムは、送液ライン上に、液面指示警報計31と、電磁流量計32と、殺菌温度指示調節計33と、ホールディング出口殺菌温度記録計34と、充填機送液温度記録計35と、充填機送液温度調節計36と、背圧弁37と、充填送液バルブ38とを備えている。
【0019】
また、殺菌強度測定出力システムは、回収液ライン上に、リターンバルブ41と、充填リターン温度警報計42と、冷却プレート出口温度調整計43と、背圧弁44と、回収用バルブ45とを備えている。
【0020】
UHT10は、リターン液を冷却するリターン液冷却部11と、充填液を冷却する充填液冷却部12と、殺菌のために充填液を加熱する充填液殺菌部13とを含む。
【0021】
次に、殺菌強度測定出力システムの動作について説明する。
殺菌強度測定出力システムでは、調合タンクからの液体がバランスタンク21に貯留され、その貯留された液体がバランスタンク21からインバーターロータリーポンプ22側に送液される。液面指示警報計31は、バランスタンク21から送液されている液体の流量を監視し、その流量を一定範囲に保つために、調合タンクからバランスタンク21に送液するための送液ポンプのオン/オフ制御を行う。液面指示警報計31によって調整される流量は、液体が充填されるボトルのサイズ毎にあらかじめ用意されているスナップスイッチの選択によって決定される。なお、スナップスイッチの選択に応じて、液面指示警報計31によって調整される流量(すなわち調合タンクの送液ポンプの出力)が変化する。
【0022】
インバーターロータリーポンプ22は、自動運転中は常にオン状態とされており、バランスタンク21から送液されてきた液体を、UHT10の充填液殺菌部13に向けて送液する。インバーターロータリーポンプ22から充填液殺菌部13に向けて送液されている液体の流量は、電磁流量計32によって測定され、その測定値は情報処理部50に通知される。
【0023】
充填液殺菌部13は、インバーターロータリーポンプ22側から流入してきた液体がホールディングチューブ23側に通過していくまでの間に、その液体を加熱する。そして、加熱された液体が、ホールディングチューブ23に流入していく。殺菌温度指示調節計33は、ホールディングチューブ23の入口での液体の温度を測定する温度センサであり、その測定値を情報処理部50に出力する。殺菌温度指示調節計33は、測定した温度に応じて、殺菌温度の制御(充填液殺菌部13における加熱用の蒸気量を制御)を行う。また、殺菌温度指示調節計33は、測定した温度が規定範囲内であるか否かに応じて、リターンバルブ41と充填送液バルブ38とを制御する。さらに、殺菌温度指示調節計33は、測定した温度が規定範囲外となったときに、その旨を報知するための警報を発する。
【0024】
ホールディングチューブ23は、処理対象の液体の殺菌を行うために、充填液殺菌部13にて加熱された液体を所定期間貯留するチューブである。従って、ホールディングチューブ23は、液体の殺菌のために所定期間貯留しておくことが可能な容量とされている。
【0025】
ホールディングチューブ23から流出した液体は、ホールディング出口殺菌温度記録計34によって温度計測され、その測定値は情報処理部50に出力される。ホールディング出口殺菌温度記録計34は、ホールディングチューブ23の出口での液体の温度を測定する温度センサである。
【0026】
処理対象の液体は、ホールディング出口殺菌温度記録計34によって温度計測されたあと、充填液冷却部12にて冷却される。充填液冷却部12を流出すると、処理対象の液体は、充填機送液温度記録計35によって温度計測される。なお、充填機送液温度記録計35によって計測された温度の測定値が所定範囲外となっていた場合には、充填機送液温度調節計36により充填液温度の制御(充填液冷却部12における冷却用の蒸気量を制御)を行う。また、充填機送液温度調節計36は、測定した温度が規定範囲外となったときに、その旨を報知するための警報を発する。
【0027】
充填液冷却部12を流出した液体は、背圧弁37を通過し、正常運転である場合には充填送液バルブ38を通過して、充填機24に流入する。充填機24は、貯留している液体をペットボトル等の液体容器に充填する。なお、正常運転であるときは、リターンバルブ41と充填送液バルブ38とが充填側になっている。
【0028】
リターンバルブ41と充填送液バルブ38とが充填側になる条件は、充填機24が液体の送液を要求しており(液面制御により充填機24内の液体量が上限値以下である場合)、かつ殺菌温度指示調節計33による指示温度が設定温度内にある場合である。
【0029】
一方、リターンバルブ41と充填送液バルブ38がリターン側になる条件は、充填機24が送液を拒否しているとき(液面制御により充填機24内の液体量が上限値以上(満杯)である場合)、または殺菌温度指示調節計33による指示温度が設定温度外にある場合である。
【0030】
リターンバルブ41と充填送液バルブ38がリターン側になっていれば、背圧弁37を通過した液体は、リターンバルブ41を通過して、リターン液冷却部11に送液される。なお、リターンバルブ41を通過したリターン液は、充填リターン温度警報計42によって温度計測される。充填リターン温度警報計42は、測定した温度が規定温度外であった場合には、その旨を報知するための警報を発する。
【0031】
リターン液冷却部11にて冷却されたリターン液は、冷却プレート出口温度調整計43によって計測されたあと、背圧弁44と回収用バルブ45とを通過し、バランスタンク21に戻される。冷却プレート出口温度調整計43は、測定した温度に応じて、冷却温度の制御(リターン液冷却部11における冷却水を制御)を行う。また、冷却プレート出口温度調整計43は、測定した温度が規定範囲外となったときに、その旨を報知するための警報を発する。
【0032】
次に、殺菌強度測定出力システムにおける情報処理部50のF値出力処理について説明する。
図2は、F値出力処理の例を示すフローチャートである。F値出力処理は、殺菌強度測定出力システムが稼働状態であるときに、一定時間毎(例えば1秒毎、10秒毎、1分毎など)に繰り返し実行される。
【0033】
値出力処理において、情報処理部50は、飲料水製造システムに含まれる各計測センサの計測値を取得し(ステップS11)、取得した計測値にもとづいてF値を算出する(ステップS12)。なお、F値は、次式によって与えられる。
【0034】
【数1】

【0035】
式1において、Fは殺菌強度(F値)であり、「V」はホールディングチューブ23の容量(L)であり、「L」は流速(L/min)であり、「T」は殺菌基準温度であり、「Ti」は殺菌温度であり、「Z」は殺菌基準温度やホールディング適正時間(殺菌基準時間)により決定される定数(Z値)である。このZ値は、特定の細菌の加熱致死時間を1/10に減少させるために必要な温度を意味する。
【0036】
一般に、先ず処理対象液体のpH値に応じてFの範囲を決定し、Z値を決定する。次いで設備上のホールディング容量等により最低温度を算出し、殺菌器(ホールディングチューブ23)における殺菌効果のバラツキを考慮に入れて殺菌基準温度「T」を決定する。すなわち、適正なFの範囲を確保可能なZ値及び殺菌基準温度「T」をあらかじめ決定しておく。
【0037】
具体的には、例えば処理対象液体が清涼飲料水でありpH値が4以上であるとすると、先ずはFを4以上と設定し、これによりZ値が10に決定される。次いで、ホールディングチューブ容量「V」が100(L)、充填スピードが400(bpm)、商品内容量が500(ml)であるとすると、100/(0.5・400)=0.5分=30秒となる。そして、30秒でF=4を確保できる最低温度を算出するための所定の温度計算式(殺菌工学による一般的な計算式であるため明示はしない)により、例えば最低温度が130.2度(摂氏(以下同じ))に決定されたものとする。なお、このとき、F=4.064となる。そして、殺菌器での殺菌効果のバラツキが±1.5度であるとすると、殺菌基準温度「T」は「131.7±1.5」度に決定される。なお、食品衛生法に、処理対象液体のpH値に応じたZ値の値と、Z値をその値とした場合における殺菌基準温度と殺菌基準時間との関係が定められているため、その関係にもとづいて各値を固定するようにすればよい。
【0038】
上記の様にして、例えば、Z値を「10」とした場合には、式1は次式のようになる。なお、Z値が「10」のときは、殺菌基準温度「T」は121.1度(具体的には「121.1±1.1」度:最低温度が120度、殺菌器での殺菌効果のバラツキが±1.1度)に決定される。この場合、殺菌基準時間は、4分またはこれと同等以上とされる。
【0039】
【数2】

【0040】
本例では、Z値を「10」とするようにしているが、処理対象液体のpH値が4.0未満であった場合には、Z値は「5」とされる。この場合、殺菌基準温度「T」が65度、殺菌基準時間が10分またはこれと同等以上で殺菌することとされる。また、処理対象液体のpH値が4.0〜4.6未満であった場合には、Z値は「8」とされる。この場合、殺菌基準温度「T」が85度、殺菌基準時間が30分またはこれと同等以上で殺菌することとされる。
【0041】
ステップS12では、情報処理部50は、ホールディング出口殺菌温度記録計34によって温度計測された殺菌温度「Ti」と、液面指示警報計31によって計測されたバランスタンク21から送液されている液体の流量にもとづいて算出した流速「L」と、あらかじめ登録されている固定値である容量「V」とを上記の式2に代入することによって、殺菌強度「F」を算出する。なお、本例では、情報処理部50は、流量「V/L」を算出したあと式2に代入する。
【0042】
殺菌強度「F」を算出すると、情報処理部50は、算出したF値と、ホールディング出口殺菌温度記録計34によって温度計測された殺菌温度「Ti」と、算出した流量「V/L」と、現在の時刻とを対応付けした殺菌強度情報を生成する(ステップS13)。
【0043】
次いで、情報処理部50は、ステップS12にて算出した殺菌強度「F」が、液体の品質を保証できる所定の値以上でなければ(ステップS14のN)、ステップS13にて生成した殺菌強度情報に、殺菌強度が品質保証可能な値に不足していることを示す殺菌強度不足情報を付加する(ステップS15)。
【0044】
ステップS12にて算出した殺菌強度「F」が液体の品質を保証できる所定の値以上であれば(ステップS14のY)、あるいはステップS15にて殺菌強度不足情報を付加した場合には、情報処理部50は、殺菌強度情報などを含む殺菌強度履歴情報を蓄積する(ステップS16)。なお、ステップS15にて殺菌強度不足情報を付加した場合には、その殺菌強度不足情報が殺菌強度履歴情報に含まれる。
【0045】
そして、情報処理部50は、例えば図3に示すように、蓄積した殺菌強度履歴情報を情報出力部51の表示画面に画面表示する(ステップS17)。ここでは、例えば過去の所定期間中に蓄積された殺菌強度履歴情報が画面表示される。
【0046】
図3に示すように、出力される殺菌強度履歴情報には、テップS12にて算出した殺菌強度「F」、殺菌強度「F」を算出した時刻(測定時刻)、殺菌強度「F」の算出に使用した温度(測定温度)、殺菌強度「F」の算出に使用した流量(測定流量)、殺菌強度不足情報が含まれる。例えば、情報出力部51の表示画面には、殺菌強度履歴情報が常時画面表示されており、殺菌強度「F」が算出される度に新規な履歴情報が追加表示されていく。
【0047】
なお、殺菌強度履歴情報のアウトプットの方法は、画面表示でなくてもよく、例えば紙面に出力(印字)するようにしてもよい。また、上記の例では所定期間毎に殺菌強度履歴情報を更新して出力するようにしているが、システム監視者などによる指示操作があったことに応じて殺菌強度履歴情報を出力するようにしてもよい。
【0048】
また、殺菌強度履歴情報の出力形式は、図3に示すような表形式のものに限らず、例えば図4に示すようなグラフ形式のものであってもよい。図4では、横軸に測定時刻、縦軸に殺菌強度「F」の算出値がとられており、殺菌強度「F」が算出される度に新規な履歴情報(測定時刻と殺菌強度とが示す点)が追加表示されていく。図4に示す表示形式とすれば、殺菌強度「F」が品質保証不能な値をとっている時刻を即座に知ることができるようになる。
【0049】
なお、殺菌強度不足情報は、他の情報に付加するものでなくてもよく、図4に示すようにグラフによって表すようにしてもよいし、例えば対応するF値の表示色や大きさなどを変化させることによって認識可能とするようにしてもよい。
【0050】
以上のように、上述した実施の形態によれば、充填液殺菌部13にて加熱された液体がホールディングチューブ23に貯留される貯留期間(容量「L」)と、充填液殺菌部13にて加熱された液体の温度を示す殺菌温度とにもとづいて殺菌強度を算出し、算出結果を含む殺菌強度履歴情報を出力する構成としたので、アウトプットされた殺菌強度履歴情報により、液体の品質が保障できるレベルであるか否かを正確かつ迅速に確認することができる。
【0051】
また、上述した実施の形態では特に言及していないが、充填機24が、充填液冷却部12で冷却された液体を貯留する液体容器と、その液体容器に貯留された液体の貯留量を計測するために液面に浮かばされるフィラーボールとを有し、フィラーボールの浮遊状態に応じて計測した貯留量に応じて、バランスタンク21から送液ラインに流出させる液体の量を制御(例えば調合タンクからバランスタンク21に送液するポンプ出力を制御)する構成としてもよい。このように構成すれば、充填機24に貯留されている液体が満杯になって溢れたり、まだ空になったりすることを防止することができる。
【0052】
また、上述した実施の形態では特に言及していないが、フィラーボールの浮遊状態に応じて計測した貯留量と、情報処理部50が算出した殺菌強度とにもとづいて、送液ラインに流出させる液体の量を制御(例えば調合タンクからバランスタンク21に送液するポンプ出力を制御)する構成としてもよい。このように構成すれば、充填機24に貯留されている液体が満杯になって溢れたり、まだ空になったりすることを防止することができ、さらに、殺菌強度を品質保証可能な所望の値(品質保証可能であるが、高過ぎない値)に維持することができるようになる。よって、無駄な加熱処理を行うことを防止することができる。
【0053】
また、上述した実施の形態では特に言及していないが、情報処理部50が、充填液冷却部12で冷却された液体を充填機24に向けて送液する充填ラインと充填液冷却部12で冷却された液体を回収する回収ラインとを切り換えるライン切換部(充填送液バルブ38、リターンバルブ41)が、使用ラインを回収ラインに切り換えている回収ライン切換期間を保存しておくようにしてもよい。この場合、情報処理部50が、充填送液バルブ38及びリターンバルブ41から使用ラインの切換状況の通知を受けるようにすればよい。
【0054】
また、情報処理部50が、充填器24が各液体容器に液体を充填した時刻を保存するようにしてもよい。この場合、情報処理部50が、充填器24から液体を充填した時刻と、充填先の容器に印字した容器コードとの通知を受けるようにすればよい。
【0055】
上記のように、情報処理部50が、使用ラインの切換状況と充填器24が各液体容器に液体を充填した時刻等を保存する構成とした場合に、ライン切換部が、情報処理部50が算出した殺菌強度が品質保証可能な所定値未満となったことに応じて、使用ラインを充填ラインから回収ラインに切り換えることとし、情報処理部50が、算出した殺菌強度と、殺菌強度の算出時刻と、殺菌強度が所定値未満である旨と、各液体容器への充填時刻と、充填先の容器に印字した容器コードと、回収ライン切換期間とを含む殺菌強度履歴情報を出力する構成とするようにしてもよい。このように構成すれば、品質保証不能な液体が充填されている容器を容易に特定することができ、容器の回収を容易に行うことができる。また、システムの有効稼働率を容易に導き出すことができるようにもなる。
【0056】
なお、上述した実施の形態では特に言及していないが、処理対象となる液体は、飲料水などの各種の飲料が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、殺菌強度履歴情報をアウトプットし、液体の品質が保障できるレベルであるか否かを正確かつ迅速に確認するために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る殺菌強度測定出力システムの例を示すブロック図である。
【図2】F値出力処理の例を示すフローチャートである。
【図3】殺菌強度履歴情報の出力状態の例を示す説明図である。
【図4】殺菌強度履歴情報の出力状態の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0059】
10 UHT
11 リターン液冷却部
12 充填液冷却部
13 充填液殺菌部
21 バランスタンク
22 INV(インバーターロータリーポンプ)
23 ホールディングチューブ
24 充填機
31 液面指示警報計
32 電磁流量計
33 殺菌温度指示調節計
34 ホールディング出口殺菌温度記録計
35 充填機送液温度記録計
36 充填機送液温度調節計
37 背圧弁
38 充填送液バルブ
41 リターンバルブ
42 充填リターン温度警報計
43 冷却プレート出口温度調整計
44 背圧弁
45 回収用バルブ
50 情報処理部
51 情報出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を送液する送液ラインを有し、該送液ライン上を送液される液体を加熱する加熱部と、該加熱部にて加熱された液体を貯留する加熱液体貯留部と、該貯留部から流出した液体を冷却する冷却部と、該冷却部で冷却された液体を液体容器に充填する充填部とを備えた殺菌強度測定出力システムであって、
前記加熱部にて加熱された液体が前記加熱液体貯留部に貯留される貯留期間と、前記加熱部にて加熱された液体の温度を示す殺菌温度とにもとづいて、殺菌強度を算出する殺菌強度算出手段と、
該殺菌強度算出手段の算出結果を含む殺菌強度履歴情報を出力する殺菌強度履歴情報出力手段とを含む
ことを特徴とする殺菌強度測定出力システム。
【請求項2】
充填部は、冷却部で冷却された液体を貯留する冷却液体貯留部と、該冷却液体貯留部に貯留された液体の貯留量を計測する貯留量計測部とを有し、
該貯留量計測部が計測した貯留量に応じて、送液ラインに流出させる液体の量を制御する液体量制御手段を備えた
請求項1記載の殺菌強度測定出力システム。
【請求項3】
液体量制御手段は、貯留量計測部が計測した貯留量と、殺菌強度算出手段が算出した殺菌強度とにもとづいて、送液ラインに流出させる液体の量を制御する
請求項2記載の殺菌強度測定出力システム。
【請求項4】
殺菌強度算出手段が算出した殺菌強度が所定値以下であったときに、該殺菌強度算出手段の算出結果と、殺菌強度の算出時刻と、殺菌強度が所定値以下である旨とを含む殺菌強度履歴情報を生成する殺菌強度履歴情報生成手段と、
充填部が各液体容器に液体を充填した時刻を保存する充填時刻保存手段と、
冷却部で冷却された液体を前記充填部に向けて送液する充填ラインと、前記冷却部で冷却された液体を回収するための回収ラインとを切り換えるライン切換手段と、
前記ライン切換手段が使用ラインを前記回収ラインに切り換えている回収ライン切換期間を保存する回収ライン切換期間保存手段とを備え、
前記ライン切換手段は、前記殺菌強度算出手段が算出した殺菌強度が所定値以下となったことに応じて、使用ラインを前記充填ラインから前記回収ラインに切り換え、
殺菌強度履歴情報出力手段は、前記殺菌強度履歴情報生成手段が生成した殺菌強度履歴情報と、前記充填時刻保存手段が保存した各液体容器への充填時刻と、前記回収ライン切換期間保存手段が保存した回収ライン切換期間とを出力する
請求項1から請求項3のうち何れかに記載の殺菌強度測定出力システム。
【請求項5】
殺菌強度算出手段は、加熱部にて加熱された液体が加熱液体貯留部に貯留される貯留期間「V/l」と、前記加熱部にて加熱された液体の温度を示す殺菌温度「Ti」と、あらかじめ決定される殺菌適性温度「T」及び固定値「Z」とにもとづいて、次式を用いて殺菌強度「F」を算出する

請求項1から請求項4のうち何れかに記載の殺菌強度測定出力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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