説明

殺菌性ガス供給装置

【課題】殺菌性ガスを安全確実に持続的に供給できる簡素で小型の殺菌性ガス供給装置を提供する。
【解決手段】この殺菌性ガス供給装置1は、二酸化塩素の殺菌性ガスを発生する安定化二酸化塩素(例えば、ゲル状)の薬剤2と、薬剤2を収容するとともに、発生した殺菌性ガスを大気に放出する通気孔が薬剤容器蓋体32の底部32aに形成された薬剤容器3と、薬剤容器3に取り付けられ薬剤2に可視光(例えば、青、緑など)を照射して活性化する発光素子(例えば、発光ダイオード)と、を備え、連続的又は間欠的に薬剤2に可視光を照射して殺菌性ガスを発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌性ガス供給装置に関し、特に、簡素で小型の殺菌性ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、屋内や車両内などの空気中の雑菌を死滅させるべく殺菌性ガスを供給する殺菌性ガス供給装置が、単独の装置として或いは空調システムに組み込まれた形などで使用されている。
【0003】
二酸化塩素は他の殺菌性ガスに比較して優れた殺菌能力と人体に対する安全性を併せ持つため、二酸化塩素を持続的に発生させるようにした殺菌性ガス供給装置が提案されている。例えば、特許文献1には、安定化二酸化塩素の表面に紫外線を照射することによって活性化(化学反応を促進)し、二酸化塩素を発生(蒸散)させてファンにより所望方向に吐出させる殺菌性ガス供給装置が記載されている。この方法では、紫外線を照射することにより殺菌性ガスを確実に持続的に供給できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−202009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、殺菌性ガス供給装置が家庭用消臭剤や家庭用殺虫剤の装置並みに簡素化し小型化できれば、人の密集し易い場所に合わせて簡便に設置できて好ましいと思料した。その観点から、特許文献1の殺菌性ガス供給装置を検討してみると、紫外線照射手段(例えば、蛍光ケミカルランプ)やファンなどを必要とするので、安全性を確保した上での簡素化や小型化を実現するのは容易ではないものである。
【0006】
本発明は係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、殺菌性ガスを安全確実に持続的に供給できる簡素で小型の殺菌性ガス供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の殺菌性ガス供給装置は、殺菌性ガスを発生する薬剤と、該薬剤を収容するとともに、発生した殺菌性ガスを大気に放出する通気孔が形成された薬剤容器と、該薬剤容器に取り付けられ前記薬剤に可視光を照射する発光素子と、を備え、連続的又は間欠的に前記薬剤に可視光を照射して殺菌性ガスを発生させることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の殺菌性ガス供給装置は、請求項1に記載の殺菌性ガス供給装置において、前記薬剤は安定化二酸化塩素であって、前記殺菌性ガスは二酸化塩素であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薬剤を活性化するのに可視光を用いるので、簡素であり小型であって、しかも、安全確実に殺菌性ガスを持続的に供給可能な殺菌性ガス供給装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る殺菌性ガス供給装置1の外観を示す模式的な断面図である。
【図2】同上の殺菌性ガス供給装置1の外観を示す平面図である。
【図3】同上の殺菌性ガス供給装置1の回路図である。
【図4】同上の殺菌性ガス供給装置1の実験結果を示すグラフである。
【図5】同上の殺菌性ガス供給装置1の変形例の外観を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好ましい形態を図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る殺菌性ガス供給装置1は、図1〜2に示すように、殺菌性ガスを発生する薬剤2と、薬剤2を収容するとともに、発生した殺菌性ガスを大気に放出する通気孔3a、3a、・・・が形成された薬剤容器3と、薬剤容器3に取り付けられ薬剤2に可視光を照射する発光素子4と、を備えている。
【0012】
薬剤2は、安定化二酸化塩素であって、そのままでは爆発などの危険性がある二酸化塩素をアルカリ水溶液(炭酸ナトリウム水溶液)に溶存させて安定化させたものである。安定化二酸化塩素は市販されている。薬剤2として、液体状のものや粉末の固体状のものも適用可能であるが、大きな振動によって通気孔3a、3a、・・・から流出し難いことなどから、ゲル状のものが好ましい。
【0013】
薬剤容器3は、上方が開放された(上方を開口側とした)薬剤容器本体31と薬剤容器本体31の上方を塞ぐ薬剤容器蓋体32とから構成される。この実施形態では、図1〜2に示すように、薬剤容器本体31は、底部31aが大径であり上方に向うにしたがって小径となっている有底大略円筒状を成し、また、薬剤容器蓋体32の先端部が当接する段部31bを有し、段部31bからは外周面に一定直径の雄ねじを刻設した上方円筒部31cを有する形状としている。一方、薬剤容器蓋体32は、上方を底部32a、下方を開口側とした有底円筒状を成し、内周面に薬剤容器本体31の雄ねじに螺合する雌ねじを刻設してある。前述した通気孔3a、3a、・・・は薬剤容器蓋体32の底部32aに形成されている。従って、薬剤容器3は、薬剤容器本体31に薬剤容器蓋体32を螺合させることにより安定感のある形状でもって完成する。薬剤容器本体31と薬剤容器蓋体32は、外部からの可視光や紫外線をできるだけ通過させないような材質が好ましい。また、後述する発光素子4は、それが発する光が通気孔3a、3a、・・・などから外部に漏れることにより、点灯していることを判別できる場合が少なくないが、発光素子4の一部が外部から見えるように薬剤容器3に図1に示すような切欠き32bを設けるなどして、外部から光が見え易い構造にするのが好ましい。なお、通気孔3a、3a、・・・は、薬剤容器本体31の上方側部に形成することも場合によっては可能である。
【0014】
発光素子4は、可視光、すなわち、ピーク(最高の強度)が可視領域にある光を発するものである。具体的には、発光ダイオードが好適に用いられ、光の色は青、緑などが適用されるが限定はされない。発光素子4は、薬剤容器3の内壁、通常は、図1に示すように、薬剤容器蓋体32の底部32a内壁に取り付けられる。
【0015】
発光素子4は、図3に示すように、駆動回路5Aによって駆動されるが、駆動回路5Aは周知の回路で構わない。駆動回路5Aは、薬剤2に対し、光を連続して照射するように発光素子4を駆動してもよいし、光を間欠的に照射するように発光素子4を駆動してもよい。また、その駆動回路5Aの電源は、電池5B(例えば1.5V)からスイッチ5Cを介して供給すればよい。例えば、図1に示すように、駆動回路5Aと電池5Bは薬剤容器蓋体32の底部32a内壁に取り付けられ、スイッチ5Cは薬剤容器蓋体32の底部32a外壁に取り付けられる。
【0016】
このような構成の殺菌性ガス供給装置1は、連続的又は間欠的に薬剤2に可視光を照射して殺菌性ガスを発生させる。具体的には、スイッチ5Cをオンすることにより、発光素子4が点灯し、その光の照射により薬剤2の安定化二酸化塩素が活性化し、光の照射量と安定化二酸化塩素に溶存している二酸化塩素の濃度に応じて二酸化塩素の気体を発生する。なお、光の照射量は、発光素子4の光度により調整可能であり、また、間欠的な照射の場合は、照射の時間によっても調整可能である。
【0017】
図4に、発光素子4の青色(波長:470nm)の発光ダイオードを安定化二酸化塩素に照射したときに発生する二酸化塩素についての実験結果(図中の曲線A)を示す。安定化二酸化塩素は、二酸化塩素の濃度が5%、炭酸ナトリウムの濃度が3.65%のものを用いた。上方が開放された実験用容器中の約100mLの安定化二酸化塩素に約3cm離れたところから、光度約500mcdの1個の発光ダイオードの光を照射した。発生する二酸化塩素の気体は、約2時間半経過してから濃度が約20ppbと安定していた。図中の曲線Bは、比較のために行った実験結果であり、発光ダイオードの光を照射しない場合に周囲の温度などに応じて自然に発生する二酸化塩素の濃度である。これらの実験結果より、発光ダイオードの光によって、周囲の温度などに係わらず、二酸化塩素の気体を確実に持続的に発生できることが分かる。
【0018】
殺菌性ガス供給装置1は、簡素な構造であるので、家庭用消臭剤や家庭用殺虫剤の装置並みに小型化が可能である。発光素子4は、可視光を発するので安全であり、確実に持続的に殺菌性ガスの二酸化塩素を供給できる。また、発光素子4の光を外部から視認することで、スイッチ5Cがオンして動作していることを容易に判別することができる。また、電池5Bを電源にして動作可能であるので、据える場所が自由に選択できる。このような殺菌性ガス供給装置1は、人の密集し易い場所、すなわち、仕事場、会議室、エレベータ内外、スポーツクラブ、病室、居住空間、車両内などに簡便に設置でき、空気中の雑菌を死滅させることが可能になる。
【0019】
図5に示すのは、殺菌性ガス供給装置1の上述の薬剤容器3の構造を携帯用に変形したものである。この殺菌性ガス供給装置1’の薬剤容器3’は、天井部31a’の一部に通気孔3a’、3a’、・・・が形成された薬剤容器本体31’と、薬剤容器本体31’の天井部31a’を覆うことができるようにその側部上端の固定部31b’に回動自在に固定された薬剤容器蓋体32’と、から構成される。
【0020】
薬剤容器蓋体32’が薬剤容器本体31’の天井部31a’を覆ったとき(薬剤容器蓋体32’が閉まったとき)には、薬剤容器本体31’の通気孔3a’、3a’、・・・は薬剤容器蓋体32’に取り付けられた閉塞部材(図示せず)により閉塞される。薬剤容器蓋体32’が開いたときには、薬剤容器本体31’の通気孔3a’、3a’、・・・は開放される。薬剤2、発光素子4は先の実施形態のものと同様である。駆動回路5Aと電池5Bは先の実施形態のものと同様であるが、それらは薬剤容器本体31’と一体に設けられた取り付け用のスペースに取り付けられる。図5では、駆動回路5Aと電池5Bはスペースの有効利用のために天井部31a’の上方に取り付けられているが、天井部31a’の下方に取り付けることも可能である。また、駆動回路5Aと電池5Bは、薬剤容器蓋体32’との重量のバランスを考慮して水平位置を変えることも可能である。スイッチ5C(図5には図示せず)は薬剤容器本体31’又は薬剤容器蓋体32’の外壁に取り付けられてもよいし、薬剤容器蓋体32’の回動に連動してオンオフするようにしてもよい。このような殺菌性ガス供給装置1’は、それを携帯する人が必要を感じたときに、その人の周囲或いはその人に付着した雑菌を死滅させることが可能になる。
【0021】
以上、本発明の実施形態に係る殺菌性ガス供給装置について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、薬剤2は、発光素子4の光の照射によって活性化され殺菌性ガスを発生するものであれば、安定化二酸化塩素以外のものを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 殺菌性ガス供給装置
2 薬剤
3 薬剤容器
3a 通気孔
4 発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌性ガスを発生する薬剤と、
該薬剤を収容するとともに、発生した殺菌性ガスを大気に放出する通気孔が形成された薬剤容器と、
該薬剤容器に取り付けられ前記薬剤に可視光を照射する発光素子と、を備え、
連続的又は間欠的に前記薬剤に可視光を照射して殺菌性ガスを発生させることを特徴とする殺菌性ガス供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の殺菌性ガス供給装置において、
前記薬剤は安定化二酸化塩素であって、前記殺菌性ガスは二酸化塩素であることを特徴とする殺菌性ガス供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−67285(P2011−67285A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219634(P2009−219634)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000252506)和田金属工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】