説明

殺菌方法および装置

【課題】容器に残留する細菌を効率良く殺菌する。
【解決手段】容器が収容される密閉空間を減圧しながら加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、農作物を収納するフレキシブルコンテナやスチールコンテナ等の容器や農機具、さらには、家庭用具・台所用具、飲料水容器や薬品容器等の殺菌を要する被殺菌物を殺菌するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、農作物を収納するフレキシブルコンテナやスチールコンテナ等の容器には、農作物に付着した土砂に含まれる細菌が残留し、仮に、残留した細菌が農作物に対して悪影響を及ぼす病原菌である場合、当該病原菌が残留した容器に農作物を収納すると、農作物が病原菌に感染する可能性が有るため、容器を殺菌することが必要である。
容器の殺菌については、容器を過熱して殺菌する方法が既に周知である。(たとえば、特許文献1、2参照)
【特許文献1】 特開2003−146313号公報(請求項1、請求項3、請求項4参照)
【特許文献2】 特開2002−284121号公報(請求項1、請求項2、請求項4、請求項5参照)
【0003】
本願出願人は、小型の被殺菌物でも、たとえば農作物を収納する比較的大型の容器等でも効率よく殺菌するため、鋭意研究の結果本願発明に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、被殺菌物に残留する細菌を効率良く殺菌することを課題とし、この課題を解決する殺菌方法および装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記目的を達成するため、下記の技術的手段を採用した。
その技術的手段は、(第1発明)被殺菌物が収容される密閉空間を減圧しながら加熱する方法である。
また、(第2発明)被殺菌物が収容される密閉空間を減圧しながら加熱するとともに、熱源の熱の一部を被殺菌物に伝達する方法である。
また、(第3発明)被殺菌物が収容される密閉空間を減圧しながら加熱するとともに、熱源の熱を熱伝導手段を介して被殺菌物に伝達する方法である。
【0006】
前記第1発明の殺菌方法を実施する殺菌装置は、(第4発明)被殺菌物が収容される密閉空間と、密閉空間を加熱する熱源と、密閉空間を減圧する減圧手段とを含む殺菌装置にしたことである。
また、前記第2発明の殺菌方法を実施する殺菌装置は、(第5発明)被殺菌物が収容される密閉空間と、密閉空間を加熱するとともに、一部の熱を被殺菌物に伝達する熱源と、密閉空間を減圧する減圧手段とを含む殺菌装置にしたことである。
また、前記第3発明の殺菌方法を実施する殺菌装置は、(第6発明)被殺菌物が収容される密閉空間と、密閉空間を加熱する熱源と、密閉空間を減圧する減圧手段と、熱源の熱を被殺菌物に伝達する熱伝導手段を含む殺菌装置にしたことである。
本発明でいう減圧手段は、減圧ポンプや真空ポンプ等が挙げられる。
【0007】
前記第5発明を実施する構成として、(第7発明)前記熱源が密閉空間内に連設された複数の杆状体を含み、当該複数の杆状体は、杆状体の相互間に隙間を開けて並列状に設け、前記隙間に被殺菌物を挿入または杆状体上に被殺菌物を載置することによって、熱源の熱を被殺菌物に伝達する構成が挙げられる。
また、前記第6発明を実施する構成として、(第8発明)密閉空間内に連設された複数の杆状体を含む熱源と、前記杆状体の熱が接触により伝達され、伝達された熱を被殺菌物に伝達するとともに、被殺菌物を支持する熱伝導手段とを備え、前記複数の杆状体を、当該複数の杆状体の相互間に隙間を開けて並列状に設け、前記熱伝導手段を、被殺菌物を近接状または接触状に支持するとともに、前記隙間に挿入されて杆状体と接触するように構成することによって、熱源の熱を被殺菌物に伝達する構成が挙げられる。
【0008】
前記第8発明における熱伝導手段の具体的構成として、たとえば、(第9発明)前記隙間に挿入されて杆状体に接触する複数の縦杆を、当該複数の縦杆の相互間に隙間を開けて並列状に備え、当該複数の縦杆相互間で被殺菌物を挟持状に支持するようにした構成、(第10発明)前記隙間に挿入されて杆状体に接触する複数の縦杆を、当該複数の縦杆の相互間に隙間を開けて並列状に備え、当該複数の縦杆上に被殺菌物を吊り下げ支持する支持体を設け、当該支持体で吊り下げられる被殺菌物を前記複数の縦杆相互に挿入するようにした構成、(第11発明)前記隙間に挿入されて杆状体に接触する複数の縦杆を、当該複数の縦杆の相互間に隙間を開けて並列状に備え、当該複数の縦杆上に被殺菌物を載置するようにした構成、(第12発明)前記隙間に挿入されて杆状体に接触する複数の縦杆を、当該複数の縦杆の相互間に隙間を開けて並列状に備え、当該複数の縦杆上に被殺菌物を載置する載置板を設け、当該載置板上に被殺菌物を載置するようにした構成等が挙げられる。
【0009】
また、熱源の一部である杆状体の発熱形態としては、たとえば、(第13発明)前記複数の杆状体をパイプによって連通状に配管し、当該配管内に熱を通すことによって発熱させる形態、(第14発明)杆状体を電熱によって発熱させる形態等が挙げられる。
第13発明における配管内を通る熱は、蒸気、湯、温風等が挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、下記の優れた効果が期待できる。
第1発明によれば、密閉空間を減圧しながら加熱するので、加熱効率が向上するため、効率的な殺菌を行うことができる。
第2発明および第3発明によれば、密閉空間の加熱とともに、一部の熱を被殺菌物に伝達するので、さらに、効率的な殺菌を行うことができる。
第4発明によれば、第1発明を実施可能な殺菌装置を、第5発明によれば、第2発明を実施可能な殺菌装置を、第6発明によれば、第3発明を実施可能な殺菌装置を夫々提供することができる。
また、第7発明によれば、第5発明の殺菌装置を具体的に実施することができる。
また、第8発明によれば、第6発明の殺菌装置を具体的に実施することができる。
また、第9発明ないし第12発明によれば、第6発明および第8発明の殺菌装置をさらに具体的に実施することができる。
また、第13発明および第14発明によれば、杆状体の発熱構成を具体的に実施することができる。
したがって、被殺菌物に残留する細菌を効率良く殺菌する被殺菌物の殺菌方法および装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の殺菌方法及び殺菌装置を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
本形態では、被殺菌物を農作物収納用容器として例示する。
図1〜図4は、本発明の第1の形態を示し、図4〜図6は、本発明の第2の形態を示す。
なお、本発明の殺菌方法については、殺菌装置を説明することにより省略する。
【0012】
第1の形態の殺菌装置Aは、容器1が収容される密閉空間2と、当該密閉空間2を加熱するとともに、一部の熱を容器1に伝達する熱源3と、密閉空間2を減圧する減圧手段4と、熱源3の熱を容器1に伝達する熱伝導手段5とから構成されている。
なお、本形態で例示する容器1は、フレックスコンテナである。
【0013】
密閉空間2は、開閉扉21によって密閉および開放される開口部22を有する箱状体23内に確保されている。
前記密閉空間2内には、前記熱源3の一部を構成する複数の杆状体31と、減圧手段4の一部を構成する減圧パイプ41が配設されている。
前記箱状体23の外側には、前記熱源3の一部を構成し、前記杆状体31が配管されるボイラー32と、減圧手段4の一部を構成し、前記減圧パイプ41が配管される減圧ポンプ42が配設されている。
【0014】
前記複数の杆状体31は、杆状体31の相互間に隙間Sを開けて並列状に配列してなる。
前記隙間Sの間隔は、後述する縦杆51が2本挿入されるとともに、挿入された縦杆51が両側の杆状体31に接触する間隔である。
また、杆状体31は、熱伝導性に優れる金属製のパイプを用いて略U型状に形成され、その一端を密閉空間2の後方側で前記ボイラー32と配管された供給パイプ33に、他端を密閉空間2の後方側で前記ボイラー32と配管された回収パイプ34に夫々配管されている。
すなわち、ボイラー32で作られた蒸気または湯が供給パイプ34から各杆状体31へ供給されることによって各杆状体31が発熱して密閉空間2を加熱することができる。
また、供給された蒸気又は湯は、前記回収パイプ34からボイラー32に戻り、ボイラー32で再度加熱されて供給パイプ33から各杆状体31へ供給される。
このとき、前記減圧手段4により密閉空間2を減圧することによって、加熱効率を向上させることができる。
【0015】
熱伝導手段5は、前記隙間Sに挿入されて両側の杆状体31に接触するように並列状に配列された複数の上述した縦杆51と、当該縦杆51の上方に架設され前記容器1を吊り下げる支持体52と、縦杆51を支持する台座53とから構成されている。
前記縦杆51は、熱伝導性に優れる金属製の棒状体を用いて形成されている。
また、縦杆51は、前記隙間Sに2本ごとに挿入されるとともに、当該2本の縦杆51相互間に吊り下げられる容器1が縦杆51に近接または接触する程度の隙間S1を開けて配列されている。
このような熱伝導手段5は、前記開口部22から密閉空間2内に対してスライドにより出し入れされる。
そして、熱伝導手段5が密閉空間2内に入れられると、縦杆51が前記隙間Sに挿入され、前記杆状体31に接触し、縦杆51の相互間の隙間S1には、支持体52に吊り下げられた容器1が縦杆51に接触または近接して挿入される。
このとき、縦杆51は、前記杆状体31の熱が伝達されて発熱し、その縦杆51の熱を容器1に伝達することによって、前記密閉空間2の熱と縦杆51の熱とで容器を殺菌する。
【0016】
前記熱伝導手段の他の使用方法として、前記縦杆における隙間に容器を挟持して支持するものが挙げられ、具体的には、分解可能なスチールコンテナとする容器を構成する壁面部を前記隙間に挿入して挟持したり、前記で例示したフレキシブルコンテナを同様に挟持したりできる。(図示せず)
なお、このような使用方法のみを採用するものである際には、前記支持体を省略することができる。
【0017】
以下、本発明の殺菌装置Aの第2の形態を説明する。
なお、本形態の殺菌装置Aは、熱伝導手段5の構成が異なる以外は第1の形態と同様であるので、第1の形態と重複する部位についての説明は、同符号を付すことにより省略する。
また、本形態で例示する容器1は分解可能なスチールコンテナである。
【0018】
本形態の熱伝導手段5は、杆状体31における隙間Sに挿入されて両側の杆状体31に接触するように並列状に配列された複数の縦杆51と、縦杆51を支持する台座53と、縦杆51上に架設された載置板54とから構成されている。
前記載置板54は、熱伝導性に優れる金属製の板状体であり、平面において前記縦杆51のすべてを隠す大きさに形成されている。
前記縦杆51は、熱伝導性に優れる金属製の棒状体を用いて形成されている。
また、縦杆51は、前記隙間Sに2本ごとに挿入される間隔でもって配列され、その長さが杆状体の上面に前記載置板54が接触する長さにされている。
このような熱伝導手段5は、前記開口部から密閉空間内に対してスライドにより出し入れされる。
そして、熱伝導手段5が密閉空間内に入れられると、縦杆51が前記隙間Sに挿入され、縦杆51と載置板54が前記杆状体31に接触する。
このとき、縦杆51と載置板54は、前記杆状体31の熱が伝達されて発熱し、その縦杆51および載置板54の熱を、載置板54上に載置された容器1に伝達することによって、前記密閉空間2の熱と縦杆51および載置板54の熱とで容器1を殺菌する。
【0019】
なお、本形態では、前記容器1を前記載置板54に載置する形態として容器1を構成する壁面部11を多数重ねて載置させたものを例示しているが、容器を分解せずに載置してもよい良い。(図示せず)
また、前記載置板を金網状のものとすることもでき、(図示せず。)この場合、密閉空間の熱が回り易く、効率的な加熱という点で有効である。
【0020】
なお、本発明は、例示した実施の形態に限定するものでは無く、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
たとえば、前記で例示した熱伝導手段を使用せず、杆状体における隙間に直接容器を挿入して杆状体で容器を支持する形態、杆状体上に載置する形態も包含する(図示せず)。
また、杆状体を電熱によって発熱させる形態も包含する(図示せず)。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る殺菌方法を実施した殺菌装置の第1の形態の概略正面図で、(a)は密閉空間側を示し、(b)は熱伝導手段側を示す。
【図2】同、平面図で、(a)は密閉空間側を示し、(b)は熱伝導手段側を示す。
【図3】熱伝導手段を密閉空間に挿入した状態の要部拡大正面図。
【図4】図3の(4)−(4)線断面図。
【図5】本発明に係る殺菌方法を実施した殺菌装置の第2の形態の概略正面図で、熱伝導手段側を示す。
【図6】同、平面図で、熱伝導手段側を示す。
【図7】熱伝導手段を密閉空間に挿入した状態の要部拡大正面図。
【符号の説明】
【0022】
A:殺菌装置
1:容器(被殺菌物)
2:密閉空間
3:熱源
4:減圧手段
5:熱伝導手段
11:壁面部
31:杆状体
32:ボイラー
33:供給パイプ
34:回収パイプ
41:減圧パイプ
42:減圧ポンプ
51:縦杆
52:支持体
54:載置板
S:隙間
S1:隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被殺菌物が収容される密閉空間を減圧しながら加熱する殺菌方法。
【請求項2】
被殺菌物が収容される密閉空間を減圧しながら加熱するとともに、熱源の熱の一部を被殺菌物に伝達する殺菌方法。
【請求項3】
被殺菌物が収容される密閉空間を減圧しながら加熱するとともに、熱源の熱を熱伝導手段を介して被殺菌物に伝達する殺菌方法。
【請求項4】
被殺菌物が収容される密閉空間と、密閉空間を加熱する熱源と、密閉空間を減圧する減圧手段とを含む殺菌装置。
【請求項5】
被殺菌物が収容される密閉空間と、密閉空間を加熱するとともに、一部の熱を被殺菌物に伝達する熱源と、密閉空間を減圧する減圧手段とを含む殺菌装置。
【請求項6】
被殺菌物が収容される密閉空間と、密閉空間を加熱する熱源と、密閉空間を減圧する減圧手段と、熱源の熱を被殺菌物に伝達する熱伝導手段を含む殺菌装置。
【請求項7】
前記熱源が密閉空間内に連設された複数の杆状体を含み、当該複数の杆状体は、杆状体の相互間に隙間を開けて並列状に設け、前記隙間に被殺菌物を挿入または杆状体上に被殺菌物を載置することによって、熱源の熱を被殺菌物に伝達する請求項5に記載の殺菌装置。
【請求項8】
密閉空間内に連設された複数の杆状体を含む熱源と、前記杆状体の熱が接触により伝達され、伝達された熱を被殺菌物に伝達するとともに、被殺菌物を支持する熱伝導手段とを備え、前記複数の杆状体を、当該複数の杆状体の相互間に隙間を開けて並列状に設け、前記熱伝導手段を、被殺菌物を近接状または接触状に支持するとともに、前記隙間に挿入されて杆状体と接触するように構成することによって、熱源の熱を被殺菌物に伝達する請求項6に記載の殺菌装置。
【請求項9】
前記隙間に挿入されて杆状体に接触する複数の縦杆を、当該複数の縦杆の相互間に隙間を開けて並列状に備え、当該複数の縦杆相互間で被殺菌物を挟持状に支持するようにしている請求項8に記載の殺菌装置。
【請求項10】
前記隙間に挿入されて杆状体に接触する複数の縦杆を、当該複数の縦杆の相互間に隙間を開けて並列状に備え、当該複数の縦杆上に被殺菌物を吊り下げ支持する支持体を設け、当該支持体で吊り下げられる被殺菌物を前記複数の縦杆相互に挿入するようにしている殺菌装置。
【請求項11】
前記隙間に挿入されて杆状体に接触する複数の縦杆を、当該複数の縦杆の相互間に隙間を開けて並列状に備え、当該複数の縦杆上に被殺菌物を載置するようにしている請求項8に記載の殺菌装置。
【請求項12】
前記隙間に挿入されて杆状体に接触する複数の縦杆を、当該複数の縦杆の相互間に隙間を開けて並列状に備え、当該複数の縦杆上に被殺菌物を載置する載置板を設け、当該載置板上に被殺菌物を載置するようにしている請求項8に記載の殺菌装置。
【請求項13】
熱源の一部である杆状体は、複数の杆状体をパイプによって連通状に配管し、当該配管内に熱を通すことによって発熱するものである請求項7ないし請求項12いずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項14】
熱源の一部である杆状体は、電熱によって発熱するものである請求項7ないし請求項12いずれか1項に記載の殺菌装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−247318(P2006−247318A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109162(P2005−109162)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(503166115)株式会社ヒロシ工業 (13)
【Fターム(参考)】