説明

殺菌水生成装置

【課題】電解槽内で発生する水素に対する確実な安全性を確保することのできる殺菌水生成装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る殺菌水生成装置10は、陽極と陰極とからなる一対の電極18が配置された電解槽12と、電極18へ電圧を印加することにより、電解槽12内に貯留された水から殺菌水を生成する制御装置20と、電解槽12の水面上に浮遊し、水位の変化に対応して上下動を行うフロート22と、フロート22に設けられた磁石部材24と、電解槽12の上部に設けられ、磁石部材24の接近および離反に応じて電極18への電圧の印加および遮断を行うリードスイッチ26と、を備え、電解槽12の上面には孔30が設けられている。好ましくは、フロート22の上面には、該フロート22が上昇したときに孔30を封孔するための封孔部材28が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンク内に配設されたヒータを用いてタンク内の水を加熱する給湯器が知られている。この種の給湯器では、タンク内に水が無い状態でのヒータへの通電(いわゆる空焚き)を防ぐために、タンク内に配設された電極の通電状態に基づいて水量を判断することとしている。但し、タンク内の水に電圧を印加する上記従来の装置の構成では、タンク内の水の電気分解が行われ、水素ガスが発生するおそれがある。そこで、例えば、特開平2−176356号公報に開示された給湯器では、給水口に流量検知部を設け、該流量検知部の流量信号を水量に変換して積算することで、タンク内の水量を把握することしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−176356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、配管等の内部に付着している細菌を除去するための技術として、イオンを含有する殺菌水を生成する装置が知られている。この装置では、電解槽に貯留されている原水に電極から電圧を印加することで、原水をイオン化して殺菌水として使用することとしている。しかしながら、上述した従来の給湯器の場合と同様に、水に電圧を印加する装置では、水の電気分解による水素の発生が問題となる。具体的には、電気分解によって発生した水素が電解槽内に滞留している状況において万一電極での放電が発生すると、かかる水素ガスが爆発する危険性も少なからず存在する。このため、不足の事態が発生した場合であっても、発生した水素が爆発するようなことのないように、万全の安全対策を施すことが望まれる。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、電解槽内で発生する水素に対する確実な安全性を確保することのできる殺菌水生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る殺菌水生成装置は、陽極と陰極とからなる一対の電極が配置された電解槽と、電極へ電圧を印加することにより、電解槽内に貯留された水から殺菌水を生成する殺菌水生成手段と、電解槽の水位が所定水位以下となった場合に、電極への電圧の印加を遮断する電圧遮断装置と、を備え、電解槽の上面には孔が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電解槽内の電極の異常放電および水素の滞留を抑止することができるので、電解槽内で発生する水素に対する確実な安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1における殺菌水生成装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態2における殺菌水生成装置の構成図である。
【図3】本発明の実施の形態3における殺菌水生成装置の構成図である。
【図4】本発明の実施の形態4における殺菌水生成装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。また、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
実施の形態1.
[本実施の形態の構成]
図1は、本発明の実施の形態1における殺菌水生成装置の構成図である。図1に示す殺菌水生成装置10は殺菌水タンクとしての電解槽12を備えている。電解槽12には、給水口14と排水口16とが接続されている。給水口14からは水(原水)が導入され、電解槽12内へ貯留される。電解槽12内へ貯留された原水は、後述する動作によって殺菌水となった後に排水口16から殺菌対象へ向けて排水される。
【0011】
殺菌水生成装置10は、電解槽12の内部に配設された陰極と陽極とからなる一対の電極18と、この電極18の間に電圧を印加するための制御装置20(殺菌水生成手段)と、が設けられている。尚、本実施の形態1の殺菌水生成装置10では、対となる電極は陽極、陰極それぞれ一つずつ配置したものを示しているが、電極対は複数対配置してもよく、また、陽極一つに対して陰極二つという構成を一対の電極とし、これを複数対配置してもよい。また、電極は必ずしも対向させて配置する必要はない。
【0012】
また、電解槽12の内部には、該電解槽12内の原水(或いは殺菌水)に浮遊するフロート22が配設されている。フロート22の一端は電解槽12内部の上面に固定された支持部42に回動自在に接続され、他端には磁石部材24が配設されている。このような構成によれば、電解槽12内の水位変化に応じて他端側の磁石部材24が上下動する。また、該電解槽12の上面の外部空間側には、磁石部材24が該電解槽12の上面に接近した場合に対向する部位にリードスイッチ26が配設されている。リードスイッチ26は、電極18への電圧の印加・遮断を切替可能なスイッチであって、磁石部材24の接近・離反に応じて通電状態の切り替えを行う電圧遮断装置として機能する。
【0013】
更に、図1に示す殺菌水生成装置10には、フロート22の上面側(すなわち電解槽12の内部の上面と接触する側)に封孔材28が配設されている。また、電解槽12の上面において封孔材28と対向する部位には、孔30が設けられている。このような構成によれば、電解槽12の水位の上昇によって封孔材28が電解槽12の上面に密着し、孔30が封孔される。
【0014】
[本実施の形態の動作]
次に、図1を参照して、以上説明した構成を備える本実施形態の殺菌水生成装置の動作について説明する。先ず、排水口16を閉じた状態で給水口14が開かれると、電解槽12の内部に原水が流入する。電極18から電解槽12内の原水に電圧が印加されると、原水がイオン化されて殺菌水が生成される。生成された殺菌水は、排水口16を開くことによって、殺菌対象の配管等へ導入される。
【0015】
ここで、本実施の形態1の殺菌水生成装置10は、フロート22等による水位検知機能、およびリードスイッチ26等による通電制御機能を有している。具体的には、電解槽12内の水位が上昇してフロート22に配設された磁石部材24が該リードスイッチ26に接近すると、このリードスイッチ26は、電極18の通電状態を遮断状態から通電状態へ切り替えるための信号を制御装置20に送信する。この際の通電許可水位は、電極18が完全に水没する範囲の水位に調整することが好ましい。これにより、例えば電極18に保持不良が発生した場合であっても、異常放電が発生して電解槽12内の水素ガスが爆発する事態を有効に抑止することができる。
【0016】
また、本実施の形態1の殺菌水生成装置10では、電解槽12の上部に孔30が設けられている。水の電気分解によって電解槽12内で発生した水素ガスは、当該孔30から外部空間へ拡散する。このため、例えば、電極18に不慮の放電が発生したとしても、電解槽12内で水素爆発が発生する事態を有効に抑止することができる。尚、孔30は、電解槽12内の水位の上昇によって封孔材28で封孔される。このため、給水口14から原水を導入する際に、当該孔30から原水が外部へ流出する事態を有効に回避することができる。また、電極18への通電によって水の電気分解が進行すると、これに伴い水位が低下して孔30が開く。このため、この封孔機構が、発生した水素ガスを排出する際に何ら妨げになることはない。
【0017】
このように、本実施の形態の殺菌水生成装置10によれば、(1)水位検出機能或いは通電制御機能の異常によって、電極18が電解槽12内の大気中に晒された状態で通電される事態、(2)電極18の保持不良等による異常放電の発生、および(3)孔30の封孔機構の異常による電解槽12内の水素の滞留、という3つの不具合が偶発的に重ならない限り、水素爆発が発生するおそれはない。これにより、極めて安全性の高い殺菌水生成装置を得ることが可能となる。
【0018】
ところで、上述した実施の形態1の殺菌水生成装置10では、孔30の具体的構成について言及していないが、封孔材28によって封孔可能な範囲に設けられていれば、その孔径、位置、および数量等は特に限定しない。
【0019】
また、上述した実施の形態1の殺菌水生成装置10では、フロート22に取り付けられた磁石部材24、および当該磁石部材24の接近を検知するリードスイッチ26を用いて電解槽12の水位を検知することとしているが、他の公知の水位検出手段を用いることとしてもよい。
【0020】
実施の形態2.
[実施の形態2の特徴]
次に、図2を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態の殺菌水生成装置10は、図1に示す孔30および封孔部材28の構成に替えて、高分子膜を備えた点に特徴がある。すなわち、図2に示すとおり、本実施の形態の殺菌水生成装置10は、電解槽12の上面に高分子膜32を備えている。この高分子膜32は、水分子を通過させずに水素ガス分子を通過させる膜として機能する。このような構成によれば、水の電気分解によって発生した水素は外部へ拡散させつつ、電解槽12内の水が外部へ流出する事態を有効に抑止することができる。尚、高分子膜32の配置は、電解槽12の上面に配置されるのであれば特に限定されることはない。このため、本実施の形態の殺菌水生成装置10によれば、装置設計の自由度を有効に高めることができる。
【0021】
実施の形態3.
[実施の形態3の特徴]
次に、図3を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態の殺菌水生成装置10は、図1に示すフロート22の支持部42を電解槽12の外部へ配置した点に特徴がある。すなわち、図3に示すとおり、本実施の形態の殺菌水生成装置10では、電解槽12の上面の外部側に支持部42が配設されており、第1の部材40の一端が当該支持部42に回動自在に固定されている。また、第1の部材40の他端には、磁石部材24が取り付けられている。更に、フロート22には、鉛直上方に向かって第2の部材44の一端が取り付けられている。第2の部材44は、孔30を貫通して電解槽12の外部へ突出しており、その多端が該第1の部材40の途中に回動自在に固定されている。このような構成によれば、電解槽12の水位の上昇に伴って、磁石部材24が上昇する。リードスイッチ26は、電解槽12の水位が、所定の通電許可水位(すなわち電極18が水没する水位)となった場合に当該磁石部材24の接近を検知するように、その位置が調整されている。
【0022】
図3に示す殺菌水生成装置10によれば、支持部42等の回動部が電解槽12の外部に配置されているため、当該部位が水に晒される事態を回避することができる。これにより、支持部42の腐食や異物付着などによって動作不良が生じる事態を有効に抑止することができる。
【0023】
実施の形態4.
[実施の形態4の特徴]
次に、図4を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。本実施の形態の殺菌水生成装置10は、電解槽12の形状に特徴がある。すなわち、図4に示すとおり、本実施の形態の殺菌水生成装置10では、電解槽12において、鉛直下方側に位置する第1の空間部121と、第1の空間部の鉛直上方側に位置する第2の空間部122とを有し、第2の空間部122の水平方向の断面積は、第1の空間部121のそれよりも小さくなっている。また、フロート22は、第2の空間部122の内部を上下動可能な大きさに構成されている。
【0024】
このような構成によれば、電解槽12の水面が第2の空間部122にある場合に、水の減少に対する水位変化が大きくなる。このため、水位の検出精度を有効に高めることができるとともに、逸早く孔30を開いて水素を外部へ拡散させることができる。
【0025】
また、図4に示す殺菌水生成装置10では、第1の空間部121と第2の空間部122とを繋ぐ壁面123が、第2の空間部122へ向かって傾いている。これにより、電極18において発生した水素ガスを第2の空間部122へ有効に集めることができるとともに、孔30から外部へ逃がすことができる。
【0026】
ところで、上述した実施の形態4の殺菌水生成装置10では、図3に示す装置と同様に支持部42を電解槽12の外部に備える構成を備えることとしているが、図1に示す装置と同様に支持部42を電解槽12の内部に備える構成としてもよい。
【符号の説明】
【0027】
10 殺菌水生成装置
12 電解槽
18 電極
20 制御装置
22 フロート
24 磁石部材
26 リードスイッチ
28 封孔部材
30 孔
32 高分子膜
40 第1の部材
42 支持部
44 第2の部材
121 第1の空間部
122 第2の空間部
123 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極とからなる一対の電極が配置された電解槽と、
前記電極へ電圧を印加することにより、前記電解槽内に貯留された水から殺菌水を生成する殺菌水生成手段と、
前記電解槽の水位が所定水位以下となった場合に、前記電極への電圧の印加を遮断する電圧遮断装置と、を備え、
前記電解槽の上面には孔が設けられていることを特徴とする殺菌水生成装置。
【請求項2】
前記電圧遮断装置は、
前記電解槽の水面上に浮遊し、水位の変化に対応して上下動を行うフロートと、
前記フロートに設けられた磁石部材と、
前記電解槽の上部に設けられ、前記磁石部材の接近および離反に応じて前記電極への電圧の印加および遮断を行うリードスイッチと、
を含むことを特徴とする請求項1記載の殺菌水生成装置。
【請求項3】
前記フロートにおける前記電解槽の上面と対向する面に設けられた封孔部材を更に備え、
前記孔は、前記封孔部材と対向する部位に設けられていることを特徴とする請求項2記載の殺菌水生成装置。
【請求項4】
前記孔は、前記電解槽の上面に設けられた高分子膜の孔であることを特徴とする請求項1または2記載の殺菌水生成装置。
【請求項5】
前記電圧遮断装置は、
前記電解槽の水面上に浮遊し、水位の変化に対応して上下動を行うフロートと、
前記電解槽の上部に配置され、第1の部材の一端を回動自在に支持する支持部と、
前記第1の部材の他端に設けられた磁石部材と、
一端が前記フロートに接続され、他端が前記孔を通過して前記第1の部材の途中に回動自在に接合された第2の部材と、
前記電解槽の上部に設けられ、前記磁石部材の接近および離反に応じて前記電極への電圧の印加および遮断を行うリードスイッチと、
を含むことを特徴とする請求項1記載の殺菌水生成装置。
【請求項6】
前記電解槽は、第1の空間部と、前記第1の空間部の鉛直上方側に位置する第2の空間部と、を有し、前記第2の空間の水平方向の断面積は、前記第1の空間のそれに比して小さいことを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項記載の殺菌水生成装置。
【請求項7】
前記第1の空間部と前記第2の空間部とを繋ぐ壁面は、前記第2の空間部に向かって傾斜が設けられていることを特徴とする請求項6記載の殺菌水生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−115811(P2012−115811A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270491(P2010−270491)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】