説明

殺虫剤のための浸透促進剤

本発明は、化学的植物保護の分野、特に殺虫剤の群からの農薬活性成分のための浸透促進剤としての具体的化合物の使用に関する。使用される化合物はトリブトキシエチルホスフェート(TBEP)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的作物保護の分野、特に、この化合物を含有する殺虫剤及び作物保護剤からなる群から選択される農薬活性物質に対する浸透促進剤としての具体的化合物の使用に関する。本化合物は、トリブトキシエチルホスフェート(CAS reg.no:78−51−3;以下でTBEPと呼ぶ。)である。
【背景技術】
【0002】
植物における殺虫剤の浸透促進は「浸透促進剤」によりもたらされる。「浸透促進剤」という用語は、植物への植物のクチクラを介した殺虫剤の取り込み(即ち取り込み速度)を加速し、及び/又は植物に吸収される活性物質の量を増加させ、このようにして有害生物によって植物が攻撃された後に殺虫剤を有効にすることができる化合物を意味するものと理解されたい。
【0003】
植物のクチクラを通じた殺虫剤の浸透を増加させる物質は、化学物質による作物保護において価値のある補助剤である。浸透促進剤として様々なクラスの物質が既に知られている(例えば、WO2005/104844Aを参照。)。DE3513889A1は、全般的に、殺生物剤に対する「活性化物質」としての浸透促進剤を考察しており、EP579052A2は、浸透促進剤としてのトリブチルホスフェート及びトリプロピルホスフェートなどのアルキルホスフェートからなる群から選択される化合物を記載している。それにもかかわらず、様々な観点から、より有利な特性を有するさらなる化合物が必要とされている。
【0004】
従って、本発明の目的は、農薬活性物質に対する浸透促進特性を有するさらなる有利な物質を提供することである。
【0005】
驚くべきことに、今回、溶媒TBEPが、多くのその他の溶媒とは異なり、ある一定の比較的低い施用量及び、活性化合物に対するある一定の混合比率で、植物のクチクラを通じた殺虫剤の浸透を向上させ、従って、作物保護剤の生物学的活性を高めるのに適していることが分かった。
【0006】
TBEPは、除草剤(例えばWO01/47356A1、EP1251736B1、WO00/56146A1、EP1164842B1を参照。)及び殺虫剤(例えばJP08291004A、US5674517Aを参照。)においてなど、作物保護において適切に高い施用量での溶媒として既に知られている。GB2022070Aは、枯葉剤としてTBEPを開示しており、これは、除草性活性物質に対して2:1から4:1の比率(TBEP:活性物質)で添加される。殺菌剤の分野において、浸透促進剤としてのTBEPの使用はまだ知られていないと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/104844号パンフレット
【特許文献2】独国特許第3513889号明細書
【特許文献3】欧州特許第579052号明細書
【特許文献4】国際公開第01/47356号パンフレット
【特許文献5】欧州特許第1251736号明細書
【特許文献6】国際公開第00/56146号パンフレット
【特許文献7】欧州特許第1164842号明細書
【特許文献8】特開平08−291004号公報
【特許文献9】米国特許第5674517号明細書
【特許文献10】英国特許第2022070号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明は、次の成分:
(A)殺虫剤からなる群から選択される1以上の活性物質と、
(B)2.5から150.0g/haの用量のトリブトキシエチルホスフェート(TBEP)と、及び
(C)場合によっては、10から17のHLB値を有するイオン性及び非イオン性乳化剤及びそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される1以上の乳化剤と、
が、有害生物により攻撃される植物に対して同時又は連続的に施用される、浸透を促進するための方法に関する。
【0009】
本発明はまた、成分が有害生物により攻撃される植物に対して同時又は連続的に施用される、本明細書中に記載の方法の使用にも関する。
【0010】
浸透促進剤としてのTBEPの作用機構は、使用される農薬活性物質のタイプとは原則として独立であるので、下記で有害生物と呼ばれる広義の昆虫に対する生物学的活性が作物植物への浸透上昇により向上し得る殺虫剤からなる群から選択される全ての活性物質が適切である。
【0011】
ダニ駆除剤、殺線虫剤、軟体動物駆除剤、殺鼠剤、忌避剤及びまた浸透性を有する植物栄養素及び組み合わせパートナーとして適切である接触剤も含め、殺虫剤からなる群から選択される活性物質に好ましくは言及し得る。以下で、殺虫剤という用語には、文脈からの明確な指示がない限り、殺虫剤及びダニ駆除剤の両者、殺線虫剤及び軟体動物駆除剤、殺鼠剤及び忌避剤が含まれる。
【0012】
また好ましくは、浸透性活性物質、即ち、葉を通じて又は根を介して植物が取り込み、、植物の輸送系である樹液の流れの中で輸送されるものも上述の群内である。特に好ましい活性物質はlogP値≦4(HPLC、勾配法、アセトニトリル/0.1%リン酸水溶液による、EEC Directive 79/831 Annex V.A8 に従い求められる。)であるもの、特に、0.1以上4以下のlogP値であるものである。
【0013】
ダニ駆除剤及び/又は殺線虫剤もまた含む殺虫剤からなる群から選択される個々の活性物質の例は以下のものである。
【0014】
アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤
カルバマート、
例えば、アラニカル
ブ、アルジカルブ、アルドキシカルブ、アリキシカルブ、アミノカルブ、ベンジオカルブ、ベンフラカルブ、ブフェンカルブ、ブタカルブ、ブトカルボキシム、ブトキシカルボキシム、カルバリル、カルボフラン、カルボスルファン、クロエトカルブ、ジメチラン、エチオフェンカルブ、フェノブカルブ、フェノチオカルブ、フォルメタナート、フラチオカルブ、イソプロカルブ、メタム−ナトリウム、メチオカルブ、メトミル、メトルカルブ、オキサミル、ピリミカルブ、プロメカルブ、プロポクスル、チオジカルブ、チオファノクス、トリメタカルブ、XMC、キシリルカルブ、トリアザマート
有機リン酸塩、
例えば、アセファート、アザメチホス、アジンホス(メチル、エチル)、ブロモホスエチル、ブロムフェンビンホス(メチル)、ブタチオホス、カズサホス、カルボフェノチオン、クロレトキシホス、クロルフェンビンホス、クロルメホス、クロルピリホス(メチル/エチル)、クマホス、シアノフェンホス、シアノホス、クロルフェンビンホス、デメトン−s−メチル、デメトン−s−メチルスルホン、ジアリホス、ダイアジノン、ジクロフェンチオン、ジクロルボス/DDVP、ジクロトホス、ジメトアート、ジメチルビンホス、ジオキサベンゾホス、ジスルホトン、EPN、エチオン、エトプロホス、エトリンホス、ファムフール、フェナミホス、フェニトロチオン、フェンスルホチオン、フェンチオン、フルピラゾホス、フォノホス、ホルモチオン、ホスメチラン、ホスチアザート、ヘプテノホス、ヨードフェンホス、イプロベンホス、イサゾホス、イソフェンホス、O−サリチル酸イソプロピル、イソキサチオン、マラチオン、メカルバム、メタクリホス、メタミドホス、メチダチオン、メビンホス、モノクロトホス、ナレド、オメトアート、オキシデメトン−メチル、パラチオン(メチル/エチル)、フェントアート、ホラート、ホサロン、ホスメット、ホスファミドン、ホスホカルブ、ホキシム、ピリミホス(メチル/エチル)、プロフェノホス、プロパホス、プロペタムホス、プロチオホス、プロトアート、ピラクロホス、ピリダフェンチオン、ピリダチオン、キナルホス、セブホス、スルホテプ、スルプロホス、テブピリムホス、テメホス、テルブホス、テトラクロルビンホス、チオメトン、トリアゾホス、トリクロルフォン、バミドチオン
ナトリウムチャンネル調節物質/電圧開口型ナトリウムチャンネル遮断剤
ピレトロイド、
例えば、アクリナトリン、アレトリン(d−シス−トランス、d−トランス)、β−シフルトリン、ビフェントリン、ビオアレトリン、ビオアレトリン−S−シクロペンチル異性体、ビオエタノメトリン、ビオペルメトリン、ビオレスメトリン、クロバポルトリン、シス−シペルメトリン、シス−レスメトリン、シス−ペルメトリン、クロシトリン、シクロプロトリン、シフルトリン、シハロトリン、シペルメトリン(アルファ−、ベータ−、シータ−、ゼータ−)、シフェノトリン、デルタメトリン、エムペントリン(1R−異性体)、エスフェンバレラート、エトフェンプロクス、フェンフルトリン、フェンプロパトリン、フェンピリトリン、フェンバレラート、フルブロシトリナート、フルシトリナート、フルフェンプロクス、フルメトリン、フルバリナート、フブフェンプロクス、γ−シハロトリン、イミプロトリン、カデトリン、λ−シハロトリン、メトフルトリン、ペルメトリン(シス−、トランス−)、フェノトリン(1R−トランス異性体)、プラレトリン、プロフルトリン、プロトリフェンビュート、ピレスメトリン、レスメトリン、RU15525、シラフルオフェン、τ−フルバリナート、テフルトリン、テラレトリン、テトラメトリン(−1R−異性体)、トラロシトリン、トラロメトリン、トランスフルトリン、ZXI8901、ピレトリン(ピレトラム)
DDT
オキサジアジン、
例えばインドキサカルブ
セミカルバゾン、
例えばメタフルミゾン(BAS3201)
アセチルコリン受容体アゴニスト/アンタゴニスト
クロロニコチニル、
例えば、アセトアミプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、イミダクロプリド、ニテンピラム、ニチアジン、チアクロプリド、チアメトキサム
ニコチン、ベンスルタップ、カルタップ
アセチルコリン受容体調節物質
スピノシン、
例えばスピノサド
GABA開口型塩化物チャンネルアンタゴニスト
有機塩素、
例えば、カムフェクロール、クロルダン、エンドスルファン、γ−HCH、HCH、ヘプタクロル、リンダン、メトキシクロル
フィプロール、
例えば、アセトプロール、エチプロール、フィプロニル、ピラフルプロール、ピリプロール、バニリプロール
塩化物チャンネル活性化物質
メクチン、
例えば、アバメクチン、エマメクチン、安息香酸エマメクチン、イベルメクチン、レピメクチン、ミルベマイシン
幼若ホルモン模倣物、
例えば、ジオフェノラン、エポフェノナン、フェノキシカルブ、ハイドロプレン、キノプレン、メトプレン、ピリプロキシフェン、トリプレン
エクジソンアゴニスト/撹乱物質
ジアシルヒドラジン、
例えば、クロマフェノジド、ハロフェノジド、メトキシフェノジド、テブフェノジド
キチン生合成の阻害剤
ベンゾイル尿素、
例えば、ビストリフルロン、クロフルアズロン、ジフルベンズロン、フルアズロン、フルシクロクスロン、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、ルフェヌロン、ノバルロン、ノビフルムロン、ペンフルロン、テフルベンズロン、トリフルムロン
ブプロフェジン
シロマジン
酸化的リン酸化の阻害剤、ATP撹乱物質
ジアフェンチウロン
有機スズ化合物、
例えば、アゾシクロチン、サイヘキサチン、フェンブタチン−オキサイド
Hプロトン勾配の破壊による酸化的リン酸化の脱カップリング剤
ピロール、
例えばクロルフェナピル
ジニトロフェノール、
例えば、ビナパクリル、ジノブトン、ジノカップ、DNOC
部位I電子伝達阻害剤
METI、
例えば、フェナザキン、フェンピロキシマート、ピリミジフェン、ピリダベン、テブフェンピラド、トルフェンピラド
ヒドラメチルノン
ジコホール
部位II電子伝達阻害剤
ロテノン
部位III電子伝達阻害剤
アセキノシル、フルアクリピリム
昆虫腸膜の微生物撹乱物質
バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)株
脂質合成の阻害剤
テトロン酸、
例えば、スピロジクロフェン、スピロメシフェン
テトラミン酸、
例えばスピロテトラマト
カルボキサミド、
例えばフロニカミド
オクトパミン作動性アゴニスト、
例えばアミトラズ
マグネシウム刺激されるATPアーゼの阻害剤
プロパルギット
ネレイソトキシン類似体、
例えば、チオシクラム水素オキサラート、チオスルタップ−ナトリウム
リアノジン受容体のアゴニスト
安息香酸ジカルボキサミド、
例えばフルベンジアミド
アントラニルアミド、
例えば、DPX E2Y45(3−ブロモ−N−{4−クロロ−2−メチル−6−[(メチルアミノ)カルボニル]フェニル}−1−(3−クロロピリジ−2−イル)−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド)
生物製剤、ホルモン又はフェロモン
アザジラクチン、バチルス種、ビューベリア種、コドルモン、メタリジウム種、ペシロマイセス種、チューリンゲンシン、ベルチシリウム種
未知又は不特定の作用機構を有する活性物質
摂食阻害剤、
例えば、氷晶石、フロニカミド、ピメトロジン、
ダニ増殖阻害剤、
例えば、クロフェンテジン、エトキサゾール、ヘキシチアゾクス、アミドフルメト、ベンクロチアズ、ベンゾキシマート、ビフェナザート、ブロモプロピラート、ブプロフェジン、キノメチオネート、クロルジメフォルム、クロロベンジラート、クロロピクリン、クロチアゾベン、シクロプレン、シフルメトフェン、ジシクラニル、フェノキサクリム、フェントリファニル、フルベンジミン、フルフェネリム、フルテンジン、ゴシプルーレ、ヒドラメチルノン、ジャポニルレ、メトキサジアゾン、石油、ピペロニルブトキシド、オレイン酸カリウム、ピリダリル、スルフルラミド、テトラジホン、テトラスル、トリアラテン、ベルブチン。
【0015】
上述の殺虫剤(ダニ駆除剤、殺線虫剤)は、例えば、「The Pesticide Manual」、第12版(2000)から第14版(2006)、The British Crop Protection Council又は個々の活性物質の後で言及される参考文献から知られる。
【0016】
好ましい殺虫剤は、アセチルコリン受容体アゴニスト/アンタゴニスト、好ましくは、クロロニコチニル(ネオニコチノイド)、例えばアセトアミプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、イミダクロプリド、ニテンピラム、ニチアジン、チアクロプリド、チアメトキサム、特にイミダクロプリド及びチアクロプリドからなる群からのものならびに、脂質合成の阻害剤、好ましくはテトラミン酸、例えばスピロテトラマトからなる群からのものである。
【0017】
本発明による方法において使用される作物保護剤は、通常、殺虫剤からなる群から選択される活性物質0.01から99重量%、特に0.1から95重量%を含有する。成分(A)の単位面積あたりの施用量は、一般に、10から2000g AS/haの間(AS=活性物質、即ち、活性物質に基づく施用量)、好ましくは50から300g AS/haの間である。
【0018】
成分(B)としてのトリブトキシエチルホスフェート(TBEP)のCAS reg.no.は78−51−3であり、技術文献におけるこの収録語下でそのさらなる特性が詳細に記載されている。
【0019】
本発明による方法において使用される作物保護剤におけるTBEP(B)の含量は、単位面積あたりの施用量、即ちヘクタール(ha)あたりに依存し、従って、適切に適応させなければならない。これはまた、本発明による方法を使用した、例えば噴霧濃縮液など、施用溶液の調製にも当てはまる。TBEP(B)に対する単位面積あたりの施用量は、0.5から150g/haの間、好ましくは1から50g/haの間、特に好ましくは5から20g/haの間であり、噴霧濃縮液の体積は通常100−1000L/haである。
【0020】
適切ならば、本発明による方法において使用される作物保護剤の調製において、成分(C)として1以上の乳化剤の添加が必要であり得、及び/又は、本発明による方法による施用は好ましくは噴霧濃縮液の形態である。適切な乳化剤は、10から17のHLB値を有するイオン性及び非イオン性乳化剤及びそれらの混合物(例えば乳化剤1371B)からなる群から選択される。直接及び/又は成分(A)及び/又は(B)の処方を通じての何れかで、これらを添加し得る。
【0021】
有機溶媒、消泡剤、成分(C)とは異なる乳化剤、分散剤、保存料、酸及び塩基、着色剤、増量剤及びまた水など、通例の全ての処方補助剤は、本発明による方法に従う好ましくは液体である処方物中に存在し得るさらなる補助剤及び添加物(成分D)として適切である。
【0022】
適切な有機溶媒は、使用される農薬活性物質を容易に溶解させる全ての通例の有機溶媒である。脂肪族及び芳香族、場合によってはハロゲン化炭化水素、例えばトルエン、キシレンなど、Solvesso(R)、植物油及び鉱物油、例えば、石油スピリット、石油、アルキルベンゼン及びスピンドル油及びさらにプロピレンカーボネート、テトラクロロメタン、クロロホルム、塩化メチレン及びジクロロメタン、及びさらにエステル、例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、及びさらにラクトン、例えば、ブチロラクトン、及びさらにラクタム、例えば、N−メチルピロリドン、N−オクチルピロリドン、N−ドデシルピロリドン、N−オクチルカプロラクタム及びN−メチルカプロラクタム、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、及びリン酸トリブチルを好ましくは挙げることができる。
【0023】
適切な消泡剤は、農薬活性物質の製剤中に存在する通例の消泡剤である。例として、シリコーン油、シリコーン油分散液、ステアリン酸マグネシウム、ホスフィン酸及びホスホン酸、特に、Fluowet PL80(R)を挙げることができる。
【0024】
成分(C)とは異なる適切な乳化剤は、農薬活性物質の処方物中に存在する通例の界面活性物質である。エトキシル化ノニルフェノール、直鎖アルコールのポリエチレングリコールエーテル、末端封止及び非末端封止アルコキシル化直鎖及び分枝鎖飽和及び不飽和アルコール、アルキルフェノールとエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとの反応生成物、エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックコポリマー、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール及びさらに脂肪酸エスエル、末端封止及び非末端封止アルコキシル化直鎖及び分枝鎖飽和及び不飽和脂肪酸、アルカンスルホネート、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、アリールサルフェート、エトキシル化アリールアルキルフェノール、例えば、1分子あたり平均で16のエチレンオキシド単位を有するトリスチリルフェノールエトキシレート、及びさらにエトキシル化及びプロポキシル化アリールアルキルフェノール及び硫酸化もしくはリン酸化アリールアルキルフェノールエトキシレート又は−エトキシ−及びプロポキシレートを例として挙げることができる。
【0025】
適切な分散剤は作物保護剤においてこの目的のために通常用いられる物質である。成分(C)とは異なる乳化剤下で上述の化合物に加えて、天然及び合成の水溶性ポリマー、例えば、ゼラチン、デンプン及びセルロース誘導体、特にセルロースエステル及びセルロースエーテル、及びさらにポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、リグニンスルホネート、ポリメタクリル酸及び(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとのコポリマー、及びまたメタクリル酸及びメタクリル酸エステルのコポリマー(このコポリマーは水酸化アルカリ金属で中和されている。)を好ましくは挙げることができる。
【0026】
適切な保存料は作物処理剤においてこの目的のために通常存在する全ての物質である。Preventol(R)及びProxel(R)を例として挙げることができる。
【0027】
適切な着色剤は、作物保護剤の調製に通常用いられる全ての無機又は有機着色剤である。二酸化チタン、カーボンブラック、酸化亜鉛及び青色顔料を例として挙げることができる。
【0028】
適切な充填剤は、作物保護剤においてこの目的のために通常用いられる全ての物質である。無機粒子、例えば、0.005から10μm、特に好ましくは、0.02から2μmの平均粒子径を有する炭酸塩、ケイ酸塩及び酸化物を好ましく挙げることができる。コロイド状シリカと呼ばれる二酸化ケイ素、シリカゲル及び天然及び合成ケイ酸塩及びアルミノケイ酸塩を例として挙げることができる。
【0029】
乳化安定化剤及び/又は結晶化阻害剤として作用する適切な化合物は、作物保護剤においてこの目的のために通常用いられる全ての物質である。
【0030】
本発明による方法において使用される作物保護剤中の個々の成分の含量及び本発明による方法を使用した場合の単位面積あたりの施用量は比較的広い範囲内で変動し得る。
【0031】
本発明による方法において使用される作物保護剤に適切であり、成分(A)及び(B)及び場合によっては成分(C)及び/又は(D)を含む製剤タイプには、原則的に、植物又は植物繁殖物質に施用される全ての処方物が含まれる。それらを調製するのに用いられるプロセスは一般に当業者に知られており、例えば、Winnacker−Kuchler、「Chemische Technologie[Chemical Technology]」第7巻、C.Hanser Verlag Munich、第4版、1986;J.W.van Valkenburg、「Pesticide Formulations」、Marcel Dekker N.Y.、1973;K.Martens、「Spray Drying Handbook」、第3版、1979、G.Goodwin Ltd.、London又はMollet、Grubenmann、「Formulierungstechnik[Formulation Technology]」、Wiley−VCH−Verlag、Weinheim、2000に記載されている。
【0032】
さらに、原則的に、全ての製剤タイプが、本発明による方法の個々の成分に対しても適切である。
【0033】
処方物のタイプの例は、「Manual on development and use of FAO and WHO specifications for pesticides」(FAO and WHO、2002、appendix E)(各々の場合において、GCPF処方物コードを英語の略語及び名称と共に使用)において言及されるもの:AL あらゆる他の液体;AP あらゆる他の粉末;CF 種子処理用のカプセル懸濁液;CG 封入顆粒;CL 接触液又はゲル;CP 接触粉末;CS カプセル懸濁液;DC 分散性濃縮剤;DP 粉剤;DS 乾燥種子処理用粉末;EC 乳剤;ED 荷電性液体;EG 乳化性顆粒;EO 油中水型エマルジョン;EP 乳化性粉末、ES 種子処理用エマルジョン;EW 水中油型エマルジョン;FG 細顆粒;FS 種子処理用フロアブル剤;GF 種子処理用ゲル;GG マクロ粒剤;GL 乳化性ゲル;GP 極微粒子少量散布方法のための粉剤(Flo−dust);GR 顆粒;GS グリース;GW 水溶性ゲル;HN 熱霧濃縮剤;KK コンビ・パック(Combi−pack)固体/液体;KL コンビ・パック液体/液体;KN 冷霧濃縮剤;KP コンビ・パック固体/固体;LA ラッカー;LS 種子処理用溶液;ME マイクロエマルジョン;MG 微小顆粒;OD 油分散体、OF 油混和性フロアブル剤/油混和性懸濁液;OL 油混和性液体;OP 油分散性粉末;PA ペースト;PC ゲル又はペースト濃縮剤;PO ポア・オン(Pour−on);PR 植物ロッドレット(Plant rodlet);PT ペレット;SA スポット・オン(Spot−on);SC 懸濁濃縮剤、SD 直接塗布用の懸濁濃縮剤、SE サスポ・エマルジョン(Suspo−emulsion);SG 水溶性顆粒;SL 可溶性濃縮剤;SO 延展性油;SP 水溶性粉末;SS 種子処理用水溶性粉末;ST 水溶性錠剤;SU 超低容量(ULV)懸濁液;TB 錠剤;TC 工業用素材(technical material);TK 工業用濃縮液(technical concentrate);UL 超低容量(ULV)液剤;WG 水分散性顆粒;WP 湿潤性粉末;WS スラリー種子処理用の水分散性粉末;WT 水分散性錠剤;XXその他、である。
【0034】
液剤タイプが好ましい。これらには、処方タイプOD 油分散体;DC(分散性濃縮剤に対するGCPF処方物コード);EC(エマルジョン濃縮剤に対するGCPF処方物コード);EW(水中油型エマルジョンのGCPF処方物コード);ES(種子処理用エマルジョンに対するGCPF処方物コード)、FS(種子処理用フロアブル剤に対するGCPF処方物コード)、EO(油中水型エマルジョンに対するGCPF処方物コード);ME(マイクロエマルジョンに対するGCPF処方物コード);SE(サスポ・エマルジョンに対するGCPF配合物コード);SL(水溶性濃縮剤に対するGCPF処方物コード);CS(カプセル懸濁液に対するGCPF処方物コード)及びAL(即時使用液剤、非希釈使用のための他の液体に対するGCPF処方物コード)が含まれる。
【0035】
油分散液(合成油分散液;処方物タイプOD)及びエマルジョン濃縮剤(処方物タイプEC)が特に好ましい。
【0036】
粉末スプレーにおいて、活性物質濃度は、例えば約10から90重量%であり、残り100重量%までがTBEP(B)及び通例の処方物構成成分(乳化剤、補助剤及び添加物)からなり、これは全ての処方物に当てはまる。乳剤の場合、活性物質濃度は、約1から90、好ましくは5から80重量%である。粉末様処方物は、活性物質1から30重量%を、好ましくは一般に活性物質5から20重量%を含有し、噴霧溶液は、活性物質約0.05から80、好ましくは2から50重量%を含有する。水分散性顆粒の場合、活性物質含量は、場合よっては、活性物質が液体又は固体形態で存在するか否かに依存し、造粒補助剤、充填剤などが使用される。水中で分散可能な顆粒の場合、活性物質の含量は、例えば、1から95重量%の間、好ましくは10から80重量%の間である。油分散液の場合、活性物質濃度は、約1から50、好ましくは3から30重量%であり得る。
【0037】
本発明はさらに、有害生物、好ましくは有害動物、好ましくは有害節足動物、例えば昆虫、クモ形類、蠕虫及び軟体動物、より好ましくは有害なクモ形類及び蠕虫などを駆除するための方法に関し、本発明による方法において使用される成分は、有害生物により影響を受ける植物に対して、好ましくは有効量で施用される。
【0038】
さらに、本発明はまた、少なくとも成分(A)及び(B)を含有する本発明による方法にも関し、好ましい実施形態において、これは、相加効果を上回る効果(相乗効果)を示す。本発明による方法によって有害生物の駆除が促進されるために、施用量を減少させ及び/又は安全域を広げることができる。両方とも、経済的かつ環境保護的に役立つ。使用されるべき成分(A)及び(B)の量及び成分(A):(B)の比率の選択はあらゆる種類の因子全てに依存する。
【0039】
本発明による方法において使用される作物保護剤の調製は、例えば、その成分が個々の所望の比率で互いに混合される手段により影響を受ける。農薬活性物質として下記で示される殺虫剤が固体物質である場合、これは通常、細かく粉砕された形態又は有機溶媒もしくは水中の溶液もしくは懸濁液の形態の何れかで使用される。農薬活性物質が液体である場合、有機溶媒の使用は無用であることが多い。融解形態で固体の農薬活性物質を使用することも可能である。
【0040】
この方法を実施する際、温度はある一定の範囲内で変動し得る。一般に、0℃から80℃の間、好ましくは10℃から60℃の間の温度を使用する。
【0041】
本発明による方法において使用される作物保護剤の調製に対して、通常、TBEP(B)が農薬活性物質(A)の1以上及び場合によっては乳化剤(C)及び補助剤及び添加物(D)と混合される手段を採用する。成分が互いに混合される順序は個々の処方物タイプに依存する。
【0042】
農薬処方物の調製に用いられる通例の装置は本調製プロセスを行うのに適切である。
【0043】
本発明による方法において使用される作物保護剤の使用に対して、及び本発明による方法を行うために、通常用いられるものとして当業者にとって公知である全ての方法を適切な施用形態として使用することができ、例として次のものを挙げ得る。噴霧、浸漬、ミストとしての施用及び植物全体又は部位(種子、根、走根、茎、幹、葉)の直接的な地下又は地上処理のための多くの特別な方法、例えば、樹木の場合、幹への注入、又は、多年生植物の場合、茎帯(stalk band)及び多くの特別な間接施用法。
【0044】
単位面積あたりの及び/又は有害生物を駆除するための本発明による方法において使用される非常に広い範囲の処方物タイプの作物保護剤及び本発明による方法の目的ごとの、個々の施用量は大幅に変動する。一般に、個々の使用分野で通常用いられるものとして当業者にとって公知である施用媒体が通例の量で、例えば、標準噴霧法の場合の1ヘクタールあたり水数百リットルから「超低容量」空中散布の場合の1ヘクタールあたり油数リットル、注入法の場合の生理学的溶液数ミリリットルまで、この目的のために使用される。従って、対応する施用媒体中で本発明による方法で使用される作物保護剤の濃度は広い範囲内で変動し、個々の使用分野に依存する。一般に、個々の使用分野に通常用いられるものとして当業者にとって公知である濃度が用いられる。好ましい濃度は0.01重量%から99重量%、特に好ましい濃度は0.1重量%から90重量%である。
【0045】
本発明による方法において使用される処方物タイプの非常に広い範囲の作物保護剤ならびに本発明による方法を行うのに必要な成分を、例えば液剤に対して通例のものである処方において、そのままで又は予め水で希釈した後の何れかで、即ち、例えば、エマルジョン、懸濁液又は溶液として施用することができる。この施用は通例の方法によって、即ち、例えば、噴霧、流し込み又は注入によって行われる。
【0046】
本発明による方法において使用される非常に広い範囲の処方物タイプの作物保護剤の施用量ならびに本発明による方法を行うのに必要な成分は、比較的広い範囲内で変動し得る。これは個々の殺虫剤及び処方物中のその含量に依存する。
【0047】
植物への活性物質の浸透を促進するための本発明による方法において、使用されるべきTBEP(B)は、通常、活性物質(A)と一緒に、又は直接連続して、好ましくは、本発明による量のTBEP(B)及び有効量の活性物質(A)及び場合によっては1以上の乳化剤(C)を含有する噴霧濃縮液の形態で、施用される。さらに、さらなる通例の補助剤及び添加物を添加し得る。この噴霧濃縮液は、好ましくは、水及び/又は油、例えば高沸点炭化水素(ケロセン又はパラフィンなど)に基づき調製される。本発明による方法のための成分は、タンク混合として、又は調製済み処方物(共配合(coformulation))を介しての何れかで実現され得る。
【0048】
有害動物の場合、これらの有害生物から保護しようとする植物への施用が好ましい。これには、ヒト及び動物における治療用途のための方法は含まれない。
【0049】
本発明により処理される植物は、全てのタイプの作物植物である。殺虫剤を施用することによる作物植物の保護に関して、経済的に重要な、例えばトランスジェニックを含む、有用作物及び鑑賞植物、例えば、穀物、例えば、コムギ、オオムギ、ライムギ、オートムギ、キビ、コメ、キャッサバ及びトウモロコシなど、又はラッカセイ、テンサイ、綿花、ダイズ、アブラナ、ジャガイモ、トマト、エンドウマメ及びその他の野菜の作物が好ましい。
【0050】
本発明による方法において使用される作物保護剤及び本発明による方法には多くの長所がある。従って、植物組織への活性物質の全般的浸透が実質的にTBEPにより向上する。このようにして、浸透開始が速くなる結果また、雨に対する耐性が向上する。同時に、比較的低温での浸透(例えば15℃未満)が促進される。作物植物耐性に関して、TBEPは、試験においてその他のアルキルエステル添加物よりも耐性が高いことが分かった。このようにして、全体的に、TBEPの使用により、使用する活性物質を節約できるようになる。さらに、TBEPは揮発性が低いので、環境汚染が少なくなる。
【0051】
本発明を限定することなく、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0052】
浸透試験
この試験において、リンゴ葉の酵素分離クチクラを通じた活性物質の浸透を測定した。クチクラとは、全ての緑色植物部位、例えば、葉身、葉柄、茎、幹、胚軸及び多くの果実など、を表す。
【0053】
ゴールデンデリシャス(Golden Delicious)品種のリンゴの木から十分に発達した状態で葉を切除して使用した。次のようにしてクチクラの分離を行った:
最初に、減圧浸潤法により、裏面に染料によるマークを付し打ち抜いた葉ディスク(leaf disk)にpH3から4のペクチナーゼ緩衝溶液(強度0.2から2重量%)を充填し、
次いで、アジ化ナトリウムを添加し、
このようにして処理した葉ディスクを元の葉の構造が崩壊して非細胞性クチクラが脱離するまで静置するという方法で分離した。
【0054】
その後、気孔及び毛のない、葉の表側のクチクラのみを用いた。これらを水及びpH7の緩衝溶液で交互に数回洗浄した。最後に、得られた清浄なクチクラを小型のテフロン(登録商標)プレートに塗布し、滑らかにし、弱い空気ジェットで乾燥させた。
【0055】
次の段階において、このようにして得られたクチクラ膜を膜輸送研究のためにステンレス鋼拡散セル(=輸送チャンバ)に入れた。この目的のために、ピンセットを用いて、シリコーングリースで被覆された拡散セルの端部上の中央にクチクラを置き、同様にグリースで被覆されたリングを用いて密封した。クチクラの形態学的な外側が外向きになる、即ち空気に面し、一方で元の内側が拡散セルの内側に面するように、配置を選択した。拡散セルに水又は水と溶媒との混合液を充填した。
【0056】
浸透を調べるために、各場合において、実施例において言及される組成物の噴霧濃縮液10μLをクチクラの外側に適用した。
【0057】
各場合において、下記表で挙げる溶媒(水道水又はアセトン20重量%と水道水80重量%との混合液)を噴霧濃縮液として用いた。
【0058】
噴霧混合液を適用した後、各場合において、溶媒を蒸発させ、次に各場合において、チャンバーを反転させて温度制御されたトレイに入れ、クチクラの外側に規定の温度及び湿度の空気を吹き付けた。これにより、60%の相対湿度及び20又は25℃の設定温度で初期吸収が起こった。放射標識活性物質を用いて活性物質の浸透を測定した。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
表1及び2で示される実施例から明らかなように、TBEPによって活性物質の取り込みが実質的に上昇する。
【0062】
【表3】

【0063】
表3で示される実施例から明らかなように、本発明によるTBEPによって、先行技術の浸透促進剤よりも活性物質の取り込みが有利に高く向上する。この結果は驚くべきことであり、先行技術の観点においては予想されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分:
(A)殺虫剤からなる群から選択される1以上の活性物質と、
(B)2.5から150.0g/haの用量のトリブトキシエチルホスフェート(TBEP)と、及び
(C)場合によっては、10から17のHLB値を有するイオン性及び非イオン性乳化剤及びそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される1以上の乳化剤と、
が、有害生物により攻撃される植物に対して同時又は連続的に施用される、浸透を促進するための方法。
【請求項2】
成分が有害生物により攻撃される植物に対して同時又は連続的に施用される、請求項1に記載の方法の使用。
【請求項3】
請求項1に記載の方法が有害生物により攻撃される植物に対して施用される、有害生物を駆除するための方法。

【公表番号】特表2010−513339(P2010−513339A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541817(P2009−541817)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010644
【国際公開番号】WO2008/074407
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(302063961)バイエル・クロツプサイエンス・アクチエンゲゼルシヤフト (524)
【Fターム(参考)】