説明

殺虫性毒素をコードする植物最適化遺伝子

【課題】有害生物、特に植物有害生物の制御に有用な材料および方法を提供する。
【解決手段】殺虫性毒素(完全長および切断型)をコードする植物における発現が最適化されたポリヌクレオチド配列および前記配列によってコードされるアミノ酸配列。
【効果】切断型ポリヌクレオチド配列は切断型毒素を産生するために、または融合(もしくはキメラ)遺伝子および蛋白質を産生するために用いることができる。また、野生型配列と比較して特定の改変を有し、このために植物における最適化された発現に特によく適合しており、植物に移入するのに用いることができる。さらに、切断型のコア毒素をコードする遺伝子と共に、C末端プロトキシン部位をコードする植物最適化ポリヌクレオチド配列を用いて、完全長の毒素を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
〔発明の詳細な説明〕
関連出願の相互参照
本出願は米国特許仮出願第60/065,215号(1997年11月12日提出)および米国特許仮出願第60/076,445号(1998年3月2日提出)に対する優先権を主張する。
【0002】
昆虫およびその他の有害生物のために、農家は年間10億ドルもの農作物の損失およびこれらの有害生物を制御するための出費を要する。農業生産環境において害虫によって引き起こされた損失には、農作物の収穫高の減少、農作物の品質の低下、および収穫にかかる費用の増加が含まれる。
【0003】
化学農薬により有害生物制御の有効な方法が提供された;が、公衆は食物、地下水、および環境に認められる可能性がある残留化学物質の量に懸念を示すようになった。したがって、環境に対して毒性を示す結果となる可能性があることから、合成化学農薬はますます詳細且つ正確に調査されている。合成化学農薬によって土壌および地下帯水層が毒素で汚染され、表面流去の結果として表面水が汚染され、非特異的に生態系が破壊されうる。合成化学制御物質はさらに、ペット、家畜動物または子供がそれらに接触する可能性がある領域に適用されると、公衆の安全を危険に曝すという短所を有する。それらはまた、特に、適切な施用法に従わない場合、施用者の健康にも害を及ぼす可能性がある。世界中の規制当局が多くの農薬、特に環境中に残存し、食物連鎖に入る合成化学農薬の使用を制限および/または禁止している。広く用いられる合成化学農薬の例には、有機塩素化合物、例えばDDT、マイレックス、ケポン、リンダン、アルドリン、クロルデン、アルジカルブ、およびジエルドリン;有機燐酸化合物、例えばクロルピリホス、パラチオン、マラチオン、およびダイアジノン;ならびにカルバミン酸塩が含まれる。農薬の使用に関して厳密な新しい制限を加えること、およびいくつかの有効な農薬を市場から追放することによって、費用のかかる害虫を制御する経済的かつ有効な選択肢が制限される可能性がある。
【0004】
合成化学農薬の使用に関連した問題のために、これらの物質の使用を制限することは明らかに必要であり、且つ代わりの制御物質を特定することが必要である。合成化学農薬を生物農薬に変更すれば、またはこれらの物質と生物農薬とを併用すれば、環境中の毒性化学物質のレベルを減少させることができると思われる。
【0005】
このところ評判がよい生物農薬は土壌微生物バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis、B.t.)である。土壌微生物バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis、B.t.)はグラム陽性の胞子形成性細菌である。B.t.のほとんどの株は殺虫活性を示さない。いくつかのB.t.株は、パラ胞子結晶蛋白質封入体を産生し、これらにより特徴づけられる。典型的に特異的殺虫活性を有するこれらの「δ-エンドトキシン」は、非特異的な宿主範囲を有するエキソトキシンとは異なる。これらの封入体はしばしば顕微鏡下で特徴的な形状の結晶として認められる。この蛋白質は有害生物に対して非常に毒性が強く、その毒素活性は特異的である。
【0006】
B. チューリンギエンシス(B. thuringiensis)亜種クルスタキ(kurstaki)の胞子製剤および結晶製剤は、何年ものあいだ鱗翅目害虫に対する市販の殺虫剤として用いられてきた。例えば、B. チューリンギエンシス(B. thuringiensis)変種クルスタキ(kurstaki)HD-1は、多くの鱗翅目昆虫の幼虫に対して毒性を示す結晶性δ-エンドトキシンを産生する。
【0007】
大腸菌におけるB.t.結晶蛋白質遺伝子のクローニングおよび発現は、15年以上前に発表された論文に記載された(シュネフ(Schnepf, H. E.)、ホワイトレー(H. R. Whiteley)[1981]Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2893〜2897;非特許文献1)。米国特許第4,448,885号(特許文献1)および米国特許第4,467,036号(特許文献2)はいずれも、大腸菌におけるB.t.結晶蛋白質の発現を開示している。組換え型DNAに基づくB.t.産物が産生されて、使用が承認されている。
【0008】
B.t.農薬の商業的使用は当初、鱗翅目(イモムシ)害虫の狭い範囲に制限されていた。しかし比較的最近、研究者らははるかに広い範囲の害虫に対する特異性を有するB.t.農薬を発見した。例えば、B.t.のその他の種、すなわちイスラエレンシス(israelensis)およびモリソーニ(Morrisoni)(a.k.a.テネブリオニス(tenebrionis)、a.k.a. B.t. M-7)はそれぞれ、双翅目および鞘翅目昆虫を制御するために商業的に用いられている(ガートナー(Gaertner, F. H.)[1989]「殺虫性蛋白質の細胞輸送システム:生存および非生存微生物(Cellular Delivery Systems for Insecticidal Proteins:Living and Non-Living Microorganisms)」(「農作物保護物質の調節輸送(Controlled Delivery of Crop Protection Agents)」)、ウィルキンス(R. M. Wilkins)編、テイラー&フランシス、ニューヨークおよびロンドン、1990、245〜255頁;非特許文献2)。
【0009】
B.t.の新規亜種が現在同定されており、活性なδ-エンドトキシン蛋白質の原因となる遺伝子が単離およびシークエンシングされている(ヘフテ(Hofte, H.)、ホワイトレー(Whiteley)[1989]Microbiological Reviews 52(2):242〜255;非特許文献3)。ヘフテ(Hofte, H.)&ホワイトレー(Whiteley)はB.t.結晶蛋白質遺伝子を4つの主なクラスに分類した。クラスはcryI(鱗翅目特異的)、cryII(鱗翅目および双翅目特異的)、cryIII(鞘翅目特異的)、およびcryIV(双翅目特異的)であった。その他の有害生物に対して特異的に毒性を示す株の発見が報告されている(ファーテルソン(Fertelson, J.S.)、ペイン(J. Payne)、キム(L. Kim)[1992] Bio/Technology 10:271〜275;非特許文献4)。例えば、線虫活性毒素の2つの新規グループに関してCryVおよびCryVIという名称が提案されている。
【0010】
多くのバチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)のδ-エンドトキシン結晶蛋白質分子は2つの機能的セグメントで構成される。これらの蛋白質に関して、プロテアーゼ抵抗性コア毒素が第一のセグメントであり、蛋白質分子の約半分に相当する。CryIIIA B.t.δ-エンドトキシンのコアセグメントの三次元構造が知られているが、関連する全ての毒素が同じ全体構造を有することが提唱されている(リ(Li, J.)、キャロル(J. Carroll)、エラー(D. J. Ellar)[1991] Nature 353:815〜821;非特許文献5)。分子のもう半分はしばしば「プロトキシン」部分と呼ばれる。プロトキシン部分は毒素の結晶形成に関与すると考えられている(アービドソン(Arvidson, I.I.)、ダン(P. E. Dunn)、ストランド(S. Strand)、アーロンソン(A. I. Aronson)[1989]Molecular Microbiology 3:1533〜1534;非特許文献6、チョマ(Choma, C. T.)、スレビクス(W. K. Surewicz)、カレイ(P. R. Carey)、ポズゲイ(M. Pozsgay)、レイノー(T. Raynor)、カプラン(H. Kaplan)[1990]Eur. J. Biochem. 189:523〜527;非特許文献7)。完全長の130 kDa毒素分子は典型的に、昆虫の消化管においてプロテアーゼによって耐性コア部分へと加工される。このように、プロトキシン部分は毒素分子のプロテアーゼ処理を減少させることによって(ハイダー(Haider, M. Z.)、ノウルス(B. H. Knowles)、エラー(D. J. Ellar)[1986]Eur. J. Biochem. 156:531〜540;非特許文献8)または毒素の溶解性を減少させることによって(アーロンソン(Aronson, A. I.)、ハン(E. S. Han)、メゴーギー(W. MeGaughey)、ジョンソン(D. Johnson)[1991] Appl. Environ. Microbiol. 57:981〜986;非特許文献9)、コアが昆虫に近づくことを制限することによって毒素に部分的な昆虫特異性を伝える可能性がある。
【0011】
ヘフテ(Hofte, H.)&ホワイトレー(Whiteley)の1989年の命名分類スキームは、毒素の推定アミノ酸配列および宿主範囲の双方に基づいている。このシステムを、5つの主要なクラスに分類される毒素遺伝子の異なる14タイプをカバーするように適合させた。シークエンシングされたバチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)結晶蛋白質遺伝子の数は現在50以上である。アミノ酸同一性のみに基づく命名スキームの改訂が提唱されている(クリックモア(Crickmore)ら[1996]無脊椎動物病理学会第29回総会、第三回バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)に関する国際討論、コルドバ大学、コルドバ、スペイン、1996年9月1〜6、抄録;非特許文献10)。コード「cry」は、異なるクラスであるcytAおよびcytB以外の全ての毒素遺伝子に関してそのまま用いられている。最初の位置のローマ数字をアラビア数字に変更し、3番目の位置の括弧を外した。数字は再分類したが、当初の名称の多くをそのまま使用した。
【0012】
遺伝子操作技術を用いて、昆虫に対する抵抗性が得られるようにB.t.毒素遺伝子によって遺伝子操作された植物を使用すること、および安定化した微生物細胞をB.t.毒素の輸送媒体として用いることを含む、B.t.毒素を農業環境に輸送する新しいアプローチが開発中である(ガートナー(Gaertner, F. H.)、キム(L. Kim)[1988]TIBTECH 6:S4〜S7;非特許文献11)。このように、単離B.t.内毒素遺伝子は商業的に重要となりつつある。
【0013】
B.t.毒素および/またはその遺伝子を改変することによって様々な改良がなされてきた。例えば、米国特許第5,380,831号(特許文献3)および第5,567,862号(特許文献4)は、植物における発現が改善した合成殺虫剤結晶蛋白質遺伝子の製造に関する。
【0014】
B.t.毒素の農業的使用の成功に対する障害となるものは、昆虫によるB.t.毒素に対する耐性の発現が含まれる。また、特定の昆虫はB.t.の作用に対して不応性となりうる。後者には、メキシコワタミゾウムシおよび黒ネキリムシのような昆虫と共に、これまでB.t.δ-エンドトキシンに対して明確な有意な感受性を示していないほとんどの種の成虫が含まれる。
【0015】
このように、B.t.植物技術における抵抗性管理対策は非常に重要となっており、新しい毒素遺伝子に対する必要性は依然として大きい。広範囲の研究および資源投資の結果として、新規B.t.単離菌、毒素、および遺伝子ならびにB.t.単離菌の新規使用に関する他の特許が公布された。参考のためにファイテルソン(Feitelson)ら、上記を参照のこと。さらなる例には以下が含まれる。

しかし、新規のB.t.単離菌の発見および既知のB.t.単離菌の新たな使用は依然として経験的で予測不可能な技術である。
【0016】
植物において、昆虫および他の有害生物の有効な制御が得られるように、適当なレベルで首尾よく発現される新規毒素遺伝子に対する必要性は依然として非常に大きい。
【特許文献1】米国特許第4,448,885号
【特許文献2】米国特許第4,467,036号
【特許文献3】米国特許第5,380,831号
【特許文献4】米国特許第5,567,862号
【非特許文献1】シュネフ(Schnepf, H. E.)、ホワイトレー(H. R. Whiteley)[1981]Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2893〜2897
【非特許文献2】ガートナー(Gaertner, F. H.)[1989]「殺虫性蛋白質の細胞輸送システム:生存および非生存微生物(Cellular Delivery Systems for Insecticidal Proteins:Living and Non-Living Microorganisms)」(「農作物保護物質の調節輸送(Controlled Delivery of Crop Protection Agents)」)、ウィルキンス(R. M. Wilkins)編、テイラー&フランシス、ニューヨークおよびロンドン、1990、245〜255頁
【非特許文献3】ヘフテ(Hofte, H.)、ホワイトレー(Whiteley)[1989]Microbiological Reviews 52(2):242〜255
【非特許文献4】ファーテルソン(Fertelson, J.S.)、ペイン(J. Payne)、キム(L. Kim)[1992] Bio/Technology 10:271〜275
【非特許文献5】リ(Li, J.)、キャロル(J. Carroll)、エラー(D. J. Ellar)[1991] Nature 353:815〜821
【非特許文献6】アービドソン(Arvidson, I.I.)、ダン(P. E. Dunn)、ストランド(S. Strand)、アーロンソン(A. I. Aronson)[1989]Molecular Microbiology 3:1533〜1534
【非特許文献7】チョマ(Choma, C. T.)、スレビクス(W. K. Surewicz)、カレイ(P. R. Carey)、ポズゲイ(M. Pozsgay)、レイノー(T. Raynor)、カプラン(H. Kaplan)[1990]Eur. J. Biochem. 189:523〜527
【非特許文献8】ハイダー(Haider, M. Z.)、ノウルス(B. H. Knowles)、エラー(D. J. Ellar)[1986]Eur. J. Biochem. 156:531〜540
【非特許文献9】アーロンソン(Aronson, A. I.)、ハン(E. S. Han)、メゴーギー(W. MeGaughey)、ジョンソン(D. Johnson)[1991] Appl. Environ. Microbiol. 57:981〜986
【非特許文献10】クリックモア(Crickmore)ら[1996]無脊椎動物病理学会第29回総会、第三回バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)に関する国際討論、コルドバ大学、コルドバ、スペイン、1996年9月1〜6、抄録
【非特許文献11】ガートナー(Gaertner, F. H.)、キム(L. Kim)[1988]TIBTECH 6:S4〜S7
【発明の開示】
【0017】
発明の簡単な概要
本発明は、有害生物、特に植物有害生物の制御に有用な材料および方法に関する。より詳しく述べると、本発明は、殺虫性毒素(完全長および切断型)をコードする植物最適化ポリヌクレオチド配列を提供する。切断型ポリヌクレオチド配列は、切断型毒素を製造するために、または融合(もしくはキメラ)遺伝子および蛋白質の製造に用いることができる。本発明のポリヌクレオチド配列は野生型配列と比較して特定の改変を有し、そのためにそれらは植物における最適化された発現に特に適している。当業者に公知の技術を用いて、本明細書に記述のポリヌクレオチド配列を、植物に害虫抵抗性を付与することを目的として植物を形質転換するために用いることができる。
【0018】
一つの好ましい態様において、本発明は鱗翅目昆虫に対して活性であるCry1F毒素をコードする植物最適化ポリヌクレオチド配列を提供する。これらのポリヌクレオチド配列には、1F1AB-PO、1F-T-PO、1F-7G-PO、および1F-7Z-POと命名された植物最適化遺伝子が含まれる。
【0019】
本発明はまた、有害生物に対して毒性を示す他の蛋白質をコードする他の植物最適化遺伝子を提供する。好ましい態様は、本明細書において、1AC1AB-N-PO、1AC1AB-PO、1AC1-AB-B-PO、1AC-T-PO、1AC-TB-PO、1AC-TBX-PO、1C-T-PO、1C1AB-PO、158C2c-PO、158C2c-T-PO、および31G1a-POと呼ばれる。
【0020】
本発明はさらに、完全長の毒素を産生するために、切断されたコア毒素をコードする遺伝子と共に用いることができる、C末端プロトキシン部分をコードする植物最適化ポリヌクレオチド配列を提供する。植物最適化プロトキシンの好ましい態様はPT-1AB-POおよびPT-1AB-2-POと呼ばれる。
【0021】
さらに、本発明は、殺虫性毒素に対して特有のアミノ酸配列を提供する。これらの毒素は1F1AB-PO、1F-T-PO、1F-7G-PO、および1F-7Z-PO;1AC1AB-N-PO、1AC1AB-PO、および1AC1AB-B-PO;1C1AB-PO;158C2c-PO;158C2c-T-PO;ならびに31G1a-T-POと呼ばれる遺伝子によってコードされる。さらに、本発明は、PT-1AB-POおよびPT-1AB-2-POと命名されるポリヌクレオチド配列によってコードされる(完全長のバチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)毒素の)プロトキシン部位に特有のC末端アミノ酸配列を提供する。
【0022】
配列の簡単な説明
配列番号:1は、1F1AB-POと命名される完全長の植物最適化cryIF/cryIA(b)ハイブリッド遺伝子のポリヌクレオチド配列である。
【0023】
配列番号:2は、完全長の植物最適化CryIF/CryIA(b)キメラ毒素のアミノ酸配列である。1F1AB-PO遺伝子はこの毒素をコードする。
【0024】
配列番号:3は、1F-T-POと命名される切断型植物最適化cryIF遺伝子のポリヌクレオチド配列である。
【0025】
配列番号:4は、切断型植物最適化CryIF毒素のアミノ酸配列である。1F-T-PO、1F-7G-PO、および1F-7Z-POと命名される遺伝子はこの毒素をコードする。
【0026】
配列番号:5は、81IA(cryIF)と命名される野生型、完全長のB.t.毒素遺伝子の本来のポリヌクレオチド配列である。
【0027】
配列番号:6は、81IA(cryIF)と命名される完全長の野生型B.t.毒素のアミノ酸配列である。
【0028】
配列番号:7は、ワタにおける発現が最適化された、1F-7G-POと命名される遺伝子のポリヌクレオチド配列である。
【0029】
配列番号:8は、トウモロコシにおける発現が最適化された、1F-7Z-POと命名される遺伝子のポリヌクレオチド配列である。
【0030】
配列番号:9は、植物における発現が最適化されたPT-1AB-POと命名されるポリヌクレオチド配列である。Cry1Abプロトキシン部位をコードするこの遺伝子を切断型遺伝子(切断されたコア毒素をコードする遺伝子)と結合させて、完全長の毒素を産生することができる。特に明記していない限り、本明細書に例示するキメラ遺伝子はこのポリヌクレオチド配列(PT-1AB-PO)と共に示す。
【0031】
配列番号:10は、ワタにおける発現が最適化された、PT-1AB-2-POと命名されるポリヌクレオチド配列である。このポリヌクレオチド配列はPT-1AB-POの代用であり(Cry1Abプロトキシン部位もコードする)、且つ切断型遺伝子(切断コア毒素をコードする遺伝子)と結合させて完全長の毒素を製造することもできる。PT-1AB-2-POは、エンドトキシントランスジーンの1つ以上のタイプによって形質転換される宿主において用いられることが好ましい。
【0032】
配列番号:11は、PT-1AB-POおよびPT-1AB-2-POと命名される遺伝子によってコードされるプロトキシン部位のアミノ酸配列である。
【0033】
配列番号:12は、植物における発現が最適化された1AC1AB-N-POと命名される遺伝子のポリヌクレオチド配列である。この遺伝子はキメラCry1Ac(N末端)/Cry1Ab(プロトキシン)毒素をコードする。
【0034】
配列番号:13は、植物における発現が最適化された1AC1AB-POと命名される遺伝子のポリヌクレオチド配列である。この遺伝子はキメラCry1Ac(N末端)/Cry1Ab(プロトキシン)毒素をコードする。
【0035】
配列番号:14は、植物における発現が最適化された1AC1AB-B-POと命名される遺伝子のポリヌクレオチド配列である。この遺伝子はキメラCry1Ac(N末端)/Cry1Ab(プロトキシン)毒素をコードする。
【0036】
配列番号:15は、1AC1AB-N-PO、1AC1AB-PO、および1AC1AB-B-POと命名される遺伝子によってコードされる毒素のアミノ酸配列である。
【0037】
配列番号:16は、植物における発現が最適化された1AC-T-POと命名される遺伝子のポリヌクレオチド配列である。この植物最適化遺伝子は、アダン(Adang)ら、GENBANK(アクセッション番号M11068)に記載されるCry1Ac毒素の切断型のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列であるコア毒素をコードする。
【0038】
配列番号:17は、植物における発現が最適化された1AC-TB-POと命名される遺伝子のポリヌクレオチド配列である。この植物最適化遺伝子は、アダン(Adang)ら、GENBANK(アクセッション番号M11068)に記載されるCry1Ac毒素の切断型のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列であるコア毒素をコードする。
【0039】
配列番号:18は、植物における発現が最適化された1AC-TBX-POと命名される遺伝子のもう一つのポリヌクレオチド配列である。この植物最適化遺伝子は、アダン(Adang)ら、GENBANK(アクセッション番号M11068)に記載されるCry1Ac毒素の切断型のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列であるコア毒素をコードする。
【0040】
配列番号:19は、双子葉植物における発現が最適化された、1C-T-POと命名される遺伝子のポリヌクレオチド配列であって、これは米国特許第5,246,852号において81IB2と命名されたCry1C毒素の切断型をコードする。
【0041】
配列番号:20は、植物における発現が最適化された1C1AB-POと命名される遺伝子のポリヌクレオチド配列である。この遺伝子はキメラCry1C(N末端)/Cry1Ab(プロトキシン)毒素をコードする。
【0042】
配列番号:21は、1C1AB-POと命名された遺伝子によってコードされる毒素のアミノ酸配列である。
【0043】
配列番号:22は、158C2c-POと命名された遺伝子のポリヌクレオチド配列である。
【0044】
配列番号:23は、158C2c-POと命名された遺伝子によってコードされる完全長の毒素のアミノ酸配列である。
【0045】
配列番号:24は、158C2c-T-POと命名された遺伝子のポリヌクレオチド配列である。
【0046】
配列番号:25は、158C2c-T-POと命名された遺伝子によってコードされた切断型毒素のアミノ酸配列である。
【0047】
配列番号:26は、トウモロコシにおける発現が最適化された31G1a-T-POと命名される遺伝子のポリヌクレオチド配列である。
【0048】
配列番号:27は、31G1a-T-POと命名された遺伝子によってコードされる切断型毒素のアミノ酸配列である。
【0049】
発明の詳細な開示
本発明は、有害生物、特に植物有害生物の制御に有用な材料および方法に関する。より詳しく述べると、本発明は、殺虫性毒素(完全長および切断型)をコードする植物最適化ポリヌクレオチド配列を提供する。切断型ポリヌクレオチド配列は、切断型毒素を製造するために、または融合(もしくはキメラ)遺伝子および蛋白質の製造のために用いることができる。本発明のポリヌクレオチド配列は野生型配列と比較して特定の改変を有し、そのためにそれらは植物における最適化された発現に特に適している。当業者に既知の技法を用いて、本明細書に記載のポリヌクレオチド配列は、植物に害虫抵抗性を付与することを目的として植物を形質転換するために用いることができる。
【0050】
一つの好ましい態様において、本発明は鱗翅目昆虫に対して活性であるCry1F毒素をコードする植物最適化ポリヌクレオチド配列を提供する。これらのポリヌクレオチド配列には、1F1AB-PO、1F-T-PO、1F-7G-PO、および1F-7Z-POと命名される植物最適化遺伝子が含まれる。
【0051】
本発明はまた、有害生物に対して毒性を示す他の蛋白質をコードする他の植物最適化遺伝子を提供する。好ましい態様は、本明細書において、1AC1AB-N-PO、1AC1AB-PO、1AC1AB-B-PO、1AC-T-PO、1AC-TB-PO、1AC-TBX-PO、1C-T-PO、1C1AB-PO、158C2c-PO、158C2c-T-PO、および31G1a-POとして示される。
【0052】
本発明はさらに、切断されたコア毒素をコードする遺伝子と共に用いて完全長の毒素を産生することができる、C末端プロトキシン部位をコードする植物最適化ポリヌクレオチド配列を提供する。植物最適化プロトキシンの好ましい態様はPT-1AB-POおよびPT-1AB-2-POと呼ばれる。
【0053】
さらに、本発明は、殺虫性毒素に関する特有のアミノ酸配列を提供する。これらの毒素は1F1AB-PO;1F-T-PO、1F-7G-PO、および1F-7Z-PO;1AC1AB-N-PO、1AC1AB-PO、および1AC1-AB-B-PO;1C1AB-PO;158C2c-PO;158C2c-T-PO;ならびに31G1a-T-POと命名される遺伝子によってコードされる。さらに、本発明の主題は、PT-1AB-POおよびPT-1AB-2-POと命名されるポリヌクレオチド配列によってコードされる(完全長のバチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)毒素の)プロトキシン部位に特有のC末端アミノ酸配列を提供する。
【0054】
一つの態様において、本発明は完全長のCryIF毒素と比較して切断型のCryIF毒素を発現する遺伝子を提供する。本発明の切断型の毒素は、典型的にプロトキシンセグメントの全てまたは一部が欠損している。同様に、本発明の切断型遺伝子は融合(またはキメラ)遺伝子および蛋白質の製造に用いることができる。一例では、ハイブリッド遺伝子がキメラ毒素をコードする、cryIF部位およびcryIA(b)部位を含む植物最適化遺伝子である。好ましい態様において、キメラ毒素のCryIF部位はそれ自身が殺虫活性を有する。
【0055】
より詳しく述べると、本発明のキメラDNA分子の一例が配列番号:1に示されており、これはDNA分子のcryIF 5'部位および3'cryIA(b)部位を有する。配列番号:1によってコードされるキメラ毒素を配列番号:2に示す。配列番号:1によってコードされるキメラ毒素は、ヌクレオチド約1〜約1815位によってコードされる最初のアミノ酸約605個を含むCry1Fコア毒素を含む。このキメラ遺伝子はまたcry1Abプロトキシン部位を含み、これはアミノ酸約606〜約1148位をコードする。Cry1Abプロトキシン部位は、ヌクレオチド約1816〜約3444位によってコードされる。
【0056】
本発明の好ましい切断型cryIF遺伝子(ヌクレオチド1815個)の配列を配列番号:3に示す。この切断型遺伝子は配列番号:1のキメラ遺伝子のヌクレオチド1〜1815位に相当する。例えば、プロトキシン部位を含まない切断型毒素を用いることが望ましい場合、TAAまたはTAGのような停止コドンをこの配列の1816〜1818位に加えることができる。本発明のその他のポリヌクレオチド配列および遺伝子も同様に、当業者によって認識されるように改変することができる。合成切断型Cry1F毒素(配列番号:3によってコードされる)を配列番号:4に示す。
【0057】
例えば配列番号:1および2を、配列番号:3および4と、ならびに配列番号:9および10と比較することからわかるように、本明細書において例示する「切断型遺伝子」の配列と「プロトキシン部位」の配列とのあいだには何らかのオーバーラップが存在しうる。
【0058】
PT-1AB-POは、完全長の毒素をコードするその他のハイブリッド遺伝子を形成するために、1C-T-PO遺伝子のような本発明の遺伝子のその他の切断型遺伝子と共に好ましい態様において用いることができる。PT-1AB-2-PO(プロトキシン部位をコードする代用のポリヌクレオチド配列)もまた、キメラまたはハイブリッド毒素をコードするために切断型遺伝子(切断型遺伝子によってコードされた蛋白質が殺虫活性を保持している限り、これは完全長の毒素遺伝子より小さい)と共に用いることができる。PT-1AB-2-POの好ましい使用は、上記の「配列の説明」と題する章に記述されている。
【0059】
コンピューター、またはソフトウェアによる配列アラインメントのような技術を用いて、野生型遺伝子またはこれまでに公知の遺伝子と比較すれば、本植物最適化遺伝子のヌクレオチド配列に相違点を認めることができる。例えば、配列番号:1または配列番号:3を、3522塩基対の野生型cryIF遺伝子である配列番号:5と比較することができる。同様に、本発明に特有のアミノ酸配列の相違点も、野生型毒素またはこれまでに既知の毒素と比較することにより認めることができる。
【0060】
本明細書に記載した遺伝子の配列が与えられれば、本発明の遺伝子が幾つかの手段によって得られることは当業者には明らかであるはずである。好ましい態様において、本遺伝子は、例えば遺伝子合成装置を用いて合成的に構築してもよい。本明細書に例示した特定の遺伝子はまた、下記に記載する培養物寄託所に寄託された特定の単離菌から、特定の野生型遺伝子を本発明の開示に従って改変することによって(例えば点突然変異技法によって)得ることができる。例えば、野生型cryIF遺伝子はB.t.単離菌PS81Iから得ることができる。同様に、本発明のハイブリッド遺伝子のcryIA(b)部位は、合成によって製造することができ、または野生型遺伝子を改変することによって得ることができる。CryIA(b)毒素および遺伝子は例えば、ヘフテ(Hofte)ら(1986)Eur. J. Biochem. 161:273;ガイサー(Geiser)ら(1986)Gene 48:109、およびハイダー(Haider)ら(1988)Nucleic Acids Res. 16:10927に記載されている。クローンおよびさらなる野生型単離菌は、上記の「発明の背景」の章および下記の表に、より詳細に記述している。
【0061】
本出願において記載された培養物は、アメリカ61604イリノイ州ピオリア、ノースユニバーシティストリート1815の農業研究サービス特許培養コレクション(NRRL)、北部地域研究センター(Northern Regional Research Center)に寄託されている。下記の寄託株は、上記の「発明の背景」と題する章において述べたように参考文献の特許において開示されている。

寄託物を利用できることにより、政府の権限によって与えられる特許権を侵害して本発明を実施する許可とはならないことを理解するべきである。
【0062】
遺伝子および毒素 本発明のポリヌクレオチドは所望の宿主細胞において蛋白質またはペプチドをコードするために完全な「遺伝子」を形成するために用いることができる。例えば、当業者は容易に認識するように、本発明のポリヌクレオチドは停止コドンなしで示される。同様に、本ポリヌクレオチドは当技術分野で容易に理解されるように、関心対象となる宿主においてプロモーターの制御下に適切に置くことができる。
【0063】
当業者は容易に認識するように、DNAは二本鎖の形で存在することができる。この配置では、1つの鎖はもう一つの鎖と相補的であり、および逆もまた同じである。「コード鎖」はしばしば当技術分野において、関係蛋白質またはペプチドを形成するためにオープンリーディングフレーム(ORF)として読むことができる一連のコドン(コドンとは3個同時に読むことができる3個のヌクレオチドであり、1つの特定のアミノ酸を生じる)を有する鎖を指すために用いられる。蛋白質をインビボで発現するために、DNAの鎖を典型的に蛋白質の鋳型として用いられるRNAの相補鎖に翻訳する。DNAは(例えば)植物において複製されるため、DNAのさらなる相補鎖が合成される。したがって、本発明は添付の配列表に示す一例としてのポリヌクレオチドまたは相補鎖のいずれかを使用することを含む。例示したDNAと機能的に同等であるRNAおよびPNA(ペプチド核酸)は本発明に含まれる。
【0064】
本発明に係る特定のDNA配列が本明細書において特に例示されている。これらの配列は本発明の一例である。本発明は、本明細書に特に例示した遺伝子および配列のみならず、本明細書に特に開示したものと比較して、植物における毒素の発現に関して同じまたは類似の特徴を示す、その同等物および変種(変異体、融合物、キメラ、切断型、断片およびより小さい遺伝子のような)も含むことは容易に明らかであると思われる。本明細書で用いるように、「変種」および「同等物」とは、植物において本遺伝子の発現および結果的に得られる殺虫活性に実質的に影響を及ぼさないヌクレオチド(もしくはアミノ酸)置換、欠失(内部および/または末端)、付加、または挿入を有する配列を意味する。殺虫活性を保持する断片もこの定義に含まれる。したがって、特に例示したものより小さいポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが殺虫性毒素をコードする限り、本発明に含まれる。
【0065】
遺伝子は改変することができ、標準的な技術を用いて遺伝子の変種を容易に構築できる。例えば、点突然変異を作成する技術は当技術分野で周知である。さらに、市販のエキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼを標準的な技法に従って用いることができ、Bal 31のような酵素または部位特異的変異変異誘発法を用いて、これらの遺伝子の末端からヌクレオチドを系統的に切断することができる。有用な遺伝子はまた、多様な制限酵素を用いて得ることができる。
【0066】
同等の遺伝子は、本遺伝子によってコードされる毒素と高いアミノ酸同一性または相同性を有する毒素をコードすることに注意すべきである。アミノ酸相同性は、生物活性の原因となる毒素の重要な領域において最高となるか、または最終的に生物活性の原因となる三次元構造の決定に関係している。この点において、これらの置換が活性にとって重要でない領域に存在する場合、または分子の三次元配置に影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換である場合には、特定の置換が容認され、予想することができる。例えば、アミノ酸は以下のクラスに分類してもよい:非極性、非荷電極性、塩基性および酸性。それによって一つのクラスのアミノ酸が同じタイプの別のアミノ酸に置換される保存的置換は、置換が化合物の生物活性を実質的に変化させない限り、本発明の範囲内に入る。表1に、各クラスに属するアミノ酸の例の一覧を示す。
【表1】

【0067】
幾つかの例において、非保存的置換を行うことができる。重要な要因は、これらの置換が植物の本DNA配列の発現能力または毒素の生物活性を有意に減損してはならないという点である。
【0068】
本明細書で用いるように、「単離」ポリヌクレオチドおよび/または「精製」毒素という用語は、それらが天然において認められ、植物において用いられることを含むその他の分子と会合していない場合のこれらの分子を意味する。したがって、「単離精製された」という用語は本明細書において記述するように「人の手」を含むことを意味する。
【0069】
組換え宿主 本発明の毒素コード遺伝子は多様な微生物または植物宿主に導入することができる。本発明の幾つかの態様において、形質転換された微生物宿主は前駆体、例えばそれらが本発明の遺伝子によってコードされた毒素を発現するように、好ましい態様において最終的に植物細胞および植物を形質転換するために用いられる前駆体を調製する予備段階において用いることができる。このようにして形質転換して用いられる微生物は本発明の範囲内である。組換え微生物は例えば、B.t.、大腸菌、またはシュードモナス(Pseudomonas)であってもよい。形質転換体は標準的な技術を用いて当業者によって行うことができる。これらの形質転換に必要な材料は、本明細書に開示されているか、または当業者に容易に入手できる。
【0070】
このように、好ましい態様において、毒素遺伝子の発現によって、直接または間接的に殺虫剤が細胞内で産生され維持される。形質転換された植物が有害生物によって摂取されると、有害生物は毒素を摂取すると考えられる。その結果有害生物が制御される。
【0071】
B.t.毒素遺伝子は宿主、好ましくは植物宿主の中に適したベクターによって導入することができる。トウモロコシ、コムギ、コメ、ワタ、大豆およびヒマワリのような関心のもたれる多くの農作物がある。本発明の遺伝子は形質転換植物において、ポリペプチド殺虫剤を発現する遺伝子の安定な維持および発現を提供するために、かつ望ましくは環境での分解および不活化からの殺虫剤保護の改善を提供するために特に適している。
【0072】
本発明は合成遺伝子に関する特定の態様を提供するが、本明細書において例示した遺伝子と機能的に同等なその他の遺伝子も、宿主、好ましくは植物宿主を形質転換するために用いることができる。合成遺伝子を産生するためのさらなる手引きは例えば、米国特許第5,380,831号に見ることができる。
【0073】
本明細書において引用した参考文献は全て、参照として本明細書に組み入れられる。
【0074】
以下は本発明の実施のための方法を説明する実施例である。本実施例を制限的に解釈してはならない。
【0075】
実施例1−毒素遺伝子の植物への挿入
本発明の1つの局面は、殺虫性毒素をコードする本ポリヌクレオチド配列によって植物を形質転換することである。形質転換された植物は標的有害生物による攻撃に対して抵抗性である。本発明の遺伝子は植物において用いられるように最適化される。
【0076】
明らかに、植物において遺伝子を発現することができるプロモーター領域が必要である。したがって、植物内で発現させるために、本発明のDNAを適当なプロモーター領域の制御下に置く。そのような構築物を用いて植物内で発現させるための技術は当技術分野で公知である。
【0077】
本明細書において開示するように、殺虫性毒素をコードする遺伝子は、当技術分野で周知である多様な技術を用いて植物細胞に挿入することができる。例えば、外来遺伝子を高等植物に挿入するための調製には、大腸菌の複製システムおよび形質転換した細胞の選択を可能にするマーカーを含む多数のクローニングベクターが利用できる。ベクターは、例えばpBR322、pUCシリーズ、M13 mpシリーズ、pACYC184等を含む。したがって、B.t.毒素をコードする配列は適した制限酵素部位でベクターに挿入することができる。得られたプラスミドを大腸菌の形質転換に用いる。大腸菌細胞を、適した栄養培地において培養し、回収して溶解する。プラスミドを回収する。解析法として、シークエンス解析、制限酵素解析、電気泳動、およびその他の生化学分子生物学的方法を一般的に行う。各操作後、用いたDNA配列を切断して、次のDNA配列と結合させる。それぞれのプラスミド配列は同じまたはその他のプラスミドにクローニングすることができる。
【0078】
植物に所望の遺伝子を挿入する方法に応じて、その他のDNA配列が必要となることがある。例えば、TiプラスミドまたはRiプラスミドを植物細胞の形質転換に用いる場合、TiプラスミドT-DNAまたはRiプラスミドT-DNAの少なくとも右境界領域、しばしば左右境界領域を、挿入すべき遺伝子の隣接領域として結合させなければならない。T-DNAを植物細胞の形質転換に用いることは広く研究されており、欧州特許第120 516号;ホーケマ(Hoekema)(1985)「バイナリー植物ベクターシステム(The Binary Plant Vector System)」、オフセットドルッケリ、カンタース(Kanters B. V.)アルブラッセルダム、第5章;フラレー(Fraley)ら、Crit. Rev. Plant. Sci. 4:1〜46;およびアン(An)ら(1985)EMBO J. 4:277〜287に詳しく記述されている。
【0079】
挿入したDNAがゲノムに組み入れられた後、これは比較的その場で安定であり、その結果、再度出てくることはない。通常これは、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、ヒグロマイシン、または中でもクロラムフェニコールのような殺生物剤もしくは抗生物質に対する抵抗性を形質転換した植物細胞に付与する選択マーカーを含む。したがって個々に用いられるマーカーは、挿入されたDNAを含まない細胞ではなくて形質転換された細胞の選択を可能にする。
【0080】
DNAを植物宿主細胞に挿入するために多くの技術を利用できる。それらの技術には、形質転換手段としてアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を用いたT-DNAによる形質転換法、融合法、インジェクション法、バイオリスティック(微粒子衝突)法、電気穿孔法、またはその他の可能性のある方法が含まれる。アグロバクテリアを形質転換に用いる場合には、挿入するDNAを特定のプラスミド、すなわち中間ベクターまたはバイナリベクターのいずれかにクローニングしなければならない。中間ベクターは、T-DNAにおける配列と相同である配列が存在するために、相同的組換えによってTiまたはRiプラスミドに組み込むことができる。TiプラスミドまたはRiプラスミドはまた、T-DNAの移入に必要なvir領域を含む。中間ベクターはアグロバクテリアの中でそれ自身複製することができない。中間ベクターは、ヘルパープラスミド(結合)によってアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に移入させることができる。バイナリベクターは大腸菌およびアグロバクテリアの双方においてそれ自身複製することができる。それらは選択マーカー遺伝子および左右T-DNA境界領域によって枠組みされるリンカーまたはポリリンカーを含む。それらはアグロバクテリアに直接形質転換することができる(ホルスターズ(Holsters)ら[1978]Mol. Gen. Genet. 163:181〜187)。宿主細胞として用いられるアグロバクテリアはvir領域を有するプラスミドを含む。vir領域は植物細胞へのT-DNAの移入に必要である。さらなるT-DNAを含んでもよい。そのように形質転換した細菌を植物細胞の形質転換に用いる。植物外植片は、植物細胞にDNAを移入するためにアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)と共に都合よく栽培することができる。次に植物全体を、感染した植物材料(例えば、葉片、茎片、根片だけでなく、プロトプラストまたは懸濁培養細胞など)から、選択のために抗生物質または殺生物剤を含んでもよい適した培地中で再生させることができる。その後そのようにして得られた植物を挿入したDNAの有無に関して調べることができる。インジェクション法および電気穿孔法を用いた場合にはプラスミドに特定の要求はない。例えばpUC誘導体のような通常のプラスミドを用いることが可能である。
【0081】
形質転換した細胞は通常どおりに植物内で増殖する。それらは生殖細胞を形成することができ、後代植物に形質転換された形質を伝達することができる。そのような植物は通常行われるように生育して、同じ形質転換された遺伝的要因またはその他の遺伝的要因を有する植物と交配させることができる。得られたハイブリッド個体は対応する表現型特性を有する。
【0082】
本明細書に記載の実施例および態様は説明だけを目的とするものであって、それらを鑑みてその様々な改変または変更が当業者に想起されること、およびそれらも本出願の意図および範囲ならびに添付の特許請求の範囲に含まれることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列がCry1F、Cry1Ac、Cry1C、158C2c、および31G1aからなる群より選択される殺虫性毒素をコードする、植物における発現が最適化されたポリヌクレオチド配列。
【請求項2】
配列番号:2、配列番号:4、配列番号:15、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25および配列番号:27からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする、請求項1記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項3】
Cry1Abプロトキシン部位を含む殺虫性毒素をコードする、植物における発現が最適化されたポリヌクレオチド配列。
【請求項4】
Cry1Abプロトキシン部分が配列番号:11に示すアミノ酸配列を含む、請求項3記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項5】
配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、および配列番号:26からなる群より選択される配列において示される、請求項1記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項6】
配列番号:9および配列番号:10からなる群より選択される配列を含む、請求項3記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項7】
配列番号:2、配列番号:4、配列番号:11、配列番号:15、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25、および配列番号:27からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む殺虫性毒素。
【請求項8】
配列がCry1F、Cry1Ac、Cry1C、158C2c、31G1a、およびCry1Abプロトキシン部位を含む毒素からなる群より選択される殺虫性毒素をコードする、植物における発現が最適化されたポリヌクレオチド配列を含む形質転換された宿主細胞。
【請求項9】
ポリヌクレオチド配列が配列番号:2、配列番号:4、配列番号:11、配列番号:15、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25、および配列番号:27からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む殺虫性毒素をコードする、請求項8記載の形質転換された宿主細胞。
【請求項10】
配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、および配列番号:26からなる群より選択される配列において示されるポリヌクレオチド配列を含む、請求項8記載の形質転換された宿主細胞。
【請求項11】
ポリヌクレオチド配列がプロモーター領域の調節下にあって、該ポリヌクレオチド配列がCry1F、Cry1Ac、Cry1C、158C2c、31G1a、およびCry1Abプロトキシン部位を含む毒素からなる群より選択される殺虫性毒素をコードする、植物細胞における発現を可能にするプロモーター領域および植物における発現が最適化されたポリヌクレオチド配列を含むDNA構築物。
【請求項12】
ポリヌクレオチド配列が配列番号:2、配列番号:4、配列番号:11、配列番号:15、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25、および配列番号:27からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む殺虫性毒素をコードする、請求項11記載のDNA構築物。
【請求項13】
配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、および配列番号:26からなる群より選択される配列において示されるポリヌクレオチド配列を含む、請求項11記載のDNA構築物。
【請求項14】
形質転換された宿主によって産生された毒素に害虫を接触させる段階を含む有害生物を制御する方法であって、該該形質転換された宿主が、植物における発現が最適化されたポリヌクレオチド配列を含み、該ポリヌクレオチド配列がCry1F、Cry1Ac、Cry1C、158C2c、31G1a、およびCry1Abプロトキシン部位を含む毒素からなる群より選択される殺虫性毒素をコードする方法。
【請求項15】
ポリヌクレオチドが配列番号:2、配列番号:4、配列番号:11、配列番号:14、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:31、および配列番号:35からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする配列を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
ポリヌクレオチドが配列番号:1、配列番号:3、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、および配列番号:26からなる群より選択される配列において示される配列を含む、請求項14記載の方法。

【公開番号】特開2009−131256(P2009−131256A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296427(P2008−296427)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【分割の表示】特願2000−520575(P2000−520575)の分割
【原出願日】平成10年11月4日(1998.11.4)
【出願人】(500048812)マイコジェン コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】