説明

殺虫活性の高いポリエニルシクロプロパンカルボン酸エステル

構造式(I)
【化1】


を有する新規な殺虫剤:式中、nは1および2から選ばれ、ならびにRは−H、−CH、C、−OCH、−OCおよび−CH−OCHから選ばれる、それらの製造方法、それらを含む殺虫性組成物、および害虫のノック・ダウンでのそれらの使用について記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は菊酸に由来する殺虫剤の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
2,2−ジメチル−3−(2−メチルプロペニル)シクロプロパンカルボン酸(菊酸)は、アリ、クモ、カ、ハエおよび他の不要な昆虫を制御するための家庭分野および農業において広く使用される、多くのピレスロイド殺虫剤の合成のための出発物質である。前記酸のエステルおよびシクロプロパン環の3位についてのそれらの誘導体は、特に興味をもたれている。それらには、2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコール(トランスフルトリン(transfluthrin))および(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシ−メチル)ベンジル−2,2−ジメチル−3−プロプ−1−エニルシクロプロパンカルボキシラート(メトフルトリン(metofluthrin))でエステル化された3−ジクロロビニル誘導体が挙げられる;メトフルトリンおよび他の類似の化合物は、特許文献1に記載されている。フリルまたはチエニルアルコールでエステル化された他の3−ビニル−2,2,ジメチルシクロプロパンカルボキシル誘導体は、特許文献2により知られている。特許文献3において、シクロプロパンカルボン酸のフェノキシベンジルエステル、モノ/ポリ−ハロゲン化ジエン置換基を3位に含むものが記載されている。非特許文献1は、5−ベンジル−3−フランメタノールでカルボキシル基がエステル化されている、3−アルカジエニルシクロプロパンカルボン酸誘導体を記載する。類似の誘導体は、特許文献4により知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第939073号明細書
【特許文献2】独国特許第2113124号明細書
【特許文献3】欧州特許第31041号明細書
【特許文献4】独国特許第2231436号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Pestic.Sci.,1976,7,p.499−502
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した種々の殺虫剤が導入されているにもかかわらず、新たな強度がより高い殺虫性化合物についての必要性が感じられており、そのような殺虫性化合物は広範な活性スペクトルを有し、かつ、ヒトおよび動物に対してよく許容されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
構造式(I)
【化1】


(式中、nは1および2から選ばれ、ならびにRは−H、−CH、C、−OCH、−OCおよび−CH−OCHから選ばれる)
の化合物は期待し得ないほどの高い殺虫活性を示すことがここで見出されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】立体化学指標を有する本発明の例1〜3の化合物の構造。
【図2】立体化学指標を有する本発明の例4および8の化合物および例7の比較化合物の構造。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る好ましい化合物は、RがHまたは−CH−OCHである式(I)を有するものである。特に好ましいのは、次の化合物である:
【0009】
2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−(1RS,3RS)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラート;
2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−(1R,3R)−3−((E)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラート;
2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−(1R,3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラート;
2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−(1R,3R)−3−(ヘキサ−1,3(E)−5(E/Z)−1,3,5−トリエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラート;
2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル(1R、3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラート。
【0010】
式(I)の化合物は、他の一般的に使用される、トランスフルトリンおよびメトフルトリンなどの、2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸誘導体の2,3,5,6−テトラフルオロベンジルエステルと比較して、驚くほどより活性であることがわかる。活性スペクトルは広範であり、かつ、一般的な飛行性および這う昆虫を含む;飛行性昆虫で好ましいのは蚊であり;這う昆虫で好ましいのは、節足動物、たとえば、チャバネゴキブリ科である。
【0011】
本発明は、式(I)の前記化合物の合成のための方法を含む。それらは、式(III)のアルコールとの式(II)の酸のエステル化により製造され得るが、前記式において、nとRは前記の意味を有する。
【化2】

【0012】
エステル化は、好ましくは、化合物(II)のCOOH基の活性化の後に起こる。活性化方法はカルボキシル基のハロゲン化アシルへの変換のような、化学文献により知られている;この後のものは、たとえば、溶媒としてのアセトニトリルの中で、N−メチルイミダゾールのような適切なアミンがある状態で、トシルクロリドのようなアシルクロリドと化合物(II)を反応させることにより、容易に得られる。アルカリ性触媒作用がある状態で、活性化されたカルボキシル基は、アルコール(III)と高収率で反応し、所望の化合物(I)をもたらす。
【0013】
式(III)の前駆化合物は市販されており、または文献に記載の方法によって製造され得る。
【0014】
式(IIa)の前駆化合物(つまり、n=1を有する式(II)の化合物)は、R’がC−Cアルキル、好ましくはエチル基である、次の反応スキームに基づいて入手可能である。
【0015】
【化3】

【0016】
工程1は、オゾン分解反応であり、化学文献(P.J. Dijkstra et al. JOC 1987,52,2433−2442)から分かる条件下で達成可能である。工程2.aはウィッティヒ反応であり、当業者に知られている条件下でアリルトリフェニルホスホニウムハリドを用いて実施される(参照 J.Chem.Soc. (C), 1970, p.1076; Vedejs E. JOC 1984,49,210−212)。該反応はまた、ジエチルアリルホスホネートを用いて実施することが可能である(Wang J.et al. in Synthesis 2002,99−103)(ホーナー・エモンズ反応)。
【0017】
工程3は標準条件下で実施されるアルカリ性触媒作用を用いた加水分解である。
式(IIb)の化合物(つまり、n=2である式(II)の化合物)は、次の反応スキームに基づいて入手可能であり、ただしR’はC1−C3アルキル、好ましくはエチル基である。
【0018】
【化4】

【0019】
このスキームはポイント2.bでは、2つの付加反応を実施する点で前のものと異なる:第1にフォルミルメチルトリフェニルホスホニウムハリドを用い(この反応は典型的に、環境温度にて、トリエチルアミンがある状態で、ベンゼンのように芳香族溶媒中で起こる);得られた生成物を、次いで、アリルトリフェニルホスホニウムハリドと、この試薬に対する所定の条件下で、反応させる。
【0020】
式(IV)の前駆化合物(菊酸のエステル)は市販されており、または、たとえば、ワカスギら(Wakasugi et al., Adv.Synth.Catal. 2003,345,1209−1214)によって報告されているような文献に記載されている方法によって製造できる。
【0021】
高い収率および純度を有する、n=2である式(I)の化合物を得るための特に有効な合成経路は、Rが式(I)に規定される意味を有する、式(VII)のアルデヒドエステルの形成を含む。
【0022】
【化5】

【0023】
化合物(VII)の−CHO基をアリル基に変換することによって、n=2である、式(I)の所望の化合物が得られる。この試薬について前記の条件下で、アリルトリフェニルホスホニウムハリドで化合物(VII)を処理することによりアリル基中への変換物が得られる。
【0024】
式(VII)の中間体は新規なものであり、そういうものとして本発明の別の態様を構成する。それらは、フォルミルメチルトリフェニルホスホニウムハリドで式(VIII)の化合物を処理することにより合成されるものであり、ただし、Rは以前に規定された意味を有する。
【化6】

【0025】
フォルミルメチルトリフェニルホスホニウムハリドとの化合物(VIII)の反応はこの試薬について所定の条件下で起こる。
【0026】
式(IX)を有する対応する菊酸のエステルから出発するオゾン分解によって、化合物(VIII)自体を得ることが可能である。
【化7】

【0027】
適当な2,3,5,6テトラフルオロベンジルアルコールとの菊酸のエステル化によって、容易に化合物(IX)が得られる(Wakasugi et al., Adv.Synth.Catal. 2003,345,1209−1214)。
【0028】
本発明の式(I)の化合物はキラルであり、不斉中心を含み、光学活性である:それらは、n=1に対して8個の立体異性型が存在し、および、n=2に対して16個の立体異性型が存在することができ、異なる幾何学的および光学的イソメリー(isomery)によって特徴づけられ、およびそれぞれの混合物で存在し得る。したがって、本発明は、任意の割合で式(I)を有する個々の光学および幾何異性体、およびそれらの混合物にまで及ぶ。
【0029】
特異的な光学および幾何学形態を有する、式(IV)、(V)、(VIa/b)、(IIa/b)の誘導体についての前記方法を適用することにより、前記光学および幾何異性体が得られる;前記形態は最終化合物(I)の中で再生される。特に、化合物(I)の1R,3R立体異性体を得るために、対応する中間体(IV)、(V)、(VIa/b)、(IIa/b)の1R,3R立体異性体が使用される。化合物(I)の1S,3S立体異性体を得るために、対応する中間体(IV)、(V)、(VIa/b)、(IIa/b)の1S,3S立体異性体が使用される。
【0030】
前記の前駆中間体のエナンチオマー混合物(ラセミ体または鏡像異性体が豊富である)と作用することによって、対応する混合物において式(I)の化合物が得られる。
【0031】
同様に、ジアステレオ異性体の形態(Z)または(E)を有する式(I)の化合物は、同じ形態を有する中間体(VI)および(II)から出発して得られ、それら自体はジエチルアリルホスホネートとのホーナー・エモンズ反応による適当な形態にある式(V)のアルデヒドから入手可能である。
【0032】
前記の前駆中間体の対応するジアステレオ異性体の混合物から出発して、式(I)の化合物のE/Zジアステレオ異性体の混合物が得られる。
【0033】
本願の別の態様は、以前に規定されている式(I)の1つ以上の化合物を含む殺虫性組成物である。場合によって、活性スペクトルを補償および/または増加させるために、前記組成物は、式(I)の化合物に加えて、一般に入手可能なものから選ばれ、および、選択された処理についてより示される、殺虫性化合物をさらに含むことが可能である。相乗効果性化合物、つまり、それら自体の殺虫剤ではないが、式(I)の化合物の活性を増加させることに寄与するものは、該組成物に含まれ得る;相乗効果性化合物、たとえば、ベルブチン(Verbutin)として知られる1−(3,4−ジメトキシフェニル)エチル2−ブチン−1−イルエーテルやピペロニルブトキシドなどは、殺虫剤の分野でよく知られている。
【0034】
当業界で知られている技術を用いて、固体(たとえば、粉体、顆粒体)または液体(溶液、懸濁液、エマルジョン、マイクロエマルジョン)で、殺虫性組成物を生産できる。調整された時間に対する放出を達成するためにその処方物をカプセルに入れることが可能である。本殺虫性組成物において、式(I)の化合物は、w/w%で0.001%〜95%、好ましくは0.001%〜50%、およびより好ましくは0.001%〜5%で含まれる。式(I)の2つ以上の化合物を使用する場合、前記の質量%は該組成物にある式(I)の化合物の全合計を指すであろう。前記の有効成分に加えて、殺虫性組成物において一般的に使用されるものから選ばれるアジュバントが存在し得る。これらは、殺虫活性について特異的ではないが、特定の用途に有用である、乳化剤、紫外線安定剤、酸化防止剤および他の添加剤を含む。乳化剤の例は、ドデシルベンゼンスルホネート、リグノスルホネート、リン脂質、ポリエチレングリコールである。紫外線安定剤の例は、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタオキシ−ベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンセベケートである。酸化防止剤の一例は、2,6−ジ−ターシャリ−ブチル−1−ヒドロキシ−トルエンである。
【0035】
本願の別の態様は、以前に規定されている式(I)の1つ以上の化合物を、殺虫性処方に有用な1つ以上の賦形剤、および場合によっては殺虫活性を有する他の有効成分、および相乗効果性化合物と混合することを含む、前記の殺虫性組成物を製造する方法である。
【0036】
本発明はまた、式(I)の前に規定された適切に処方された化合物の1つ以上と前記昆虫を含む生息環境を接触させることにより特徴づけられる、昆虫を除去する方法を含む;生息環境は、閉鎖系環境(家屋、学校、事務所および他の公共施設、など)または開放系環境(庭園、公園、農業的使用の外見、など)であり得る;生息環境は品目、たとえば、除去されるべき昆虫を含むカーペット、マットレス、織物であり得る;生息環境は、前記環境の一つ、または、前記環境を含む外見の一つに存在する大気であり得る;生息環境はまた、昆虫によって汚染された動物の外見であり得る;この後の場合では、獣医学の使用に適した賦形剤を用いて適切に処方化した後に該動物上に式(I)の化合物を直接適用できる。処理されるべき環境の容積およびその侵襲の程度に基づいて決定された量および時間で式(I)の化合物を投薬する。式(I)の化合物はヒトおよび動物にとって毒性が低い状態にあり、および、したがって、広範な安全域で使用され得る。
【0037】
下記の非制限的な例は、本発明を例証する役目を担う。
【実施例】
【0038】
例1:2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−(1RS,3RS)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラート
【0039】
a.(1RS,3RS)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボン酸の合成
【0040】
(1RS,3RS)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボン酸は、対応するエチル(1RS,3RS)−3−カルボキシアルデヒド−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラートから製造され、ラセミ体80:20トランス/シス菊酸エチルエステルのオゾン分解によって得られる;次いで、オゾン分解生成物をJ.Chem. Soc. (C),1076,(1970)において記載されているアリルトリフェニルホスホニウムブロミドとのウィッティヒ反応に供し、溶出剤として100/1(v/v)石油エーテル/エチルエーテルを有するシリカゲルカラムでの精製後、エステルのアルカリ加水分解を実施する。生じた酸は、対応する塩の酸性化によって得られ、その後の反応に対して粗形態で使用される。
【0041】
b.2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−(1RS,3RS)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラートの合成
【0042】
3.4ml(43mmol)のN−メチルイミダゾール、CHCN(43ml)および最後に2.38g(14.3mmol)の(1RS、3RS)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボン酸を、窒素雰囲気下で、フラスコへ導入する。該混合物を0℃に冷却し、および、19mlのCHCNに溶解した3.26g(17.2mmol)のトシルクロリドの溶液を加える。添加の終わりに、45分間の環境温度で該混合物を放置し、次いで0℃に再び冷却し、および16mlのCHCNに溶解させた2.6ml(14.3mmol)の2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールを加える。該混合物は4時間、環境温度で攪拌し、水で希釈し、および分液漏斗へ転送される。該反応混合物をエチルエーテルで3回抽出し、および有機相を水および飽和NaCl溶液で洗浄する。エーテル相を分離し、NaSO上で乾燥させ、およびろ過する。21mbar/30℃での蒸発に続いて、100/1(v/v)石油エーテル/エチルエーテル中で粗反応生成物を処理し、同じ溶出剤を使用して、シリカゲルクロマトグラフィーカラムで精製する。溶媒の蒸発によって、97.0%に相当する純度を有する4.61gの油性生成物が得られる。
【0043】
IR (CDCl,cm−1)3200,3086,2925,1725,1178.
H NMR(CDCl)δ7.13−7.04(m,1H,CHAr),6.75−6.65(m,1H,CH=(Z)),6.33−6.08(m,4ビニルCH(E)+(Z)),5.45−5.39(m,1H,ビニルCH(Z)),5.26−5.10+4.99−4.97(m,8H,2ビニル−CH+2CHO(E)+(Z)),2.36−2.32(m,1H,CH−シクロプロパン(Z)),2.10−2.07.(m,1H,CH−シクロプロパン(E)),1.58(d,1H,J=7.5Hz,CH−シクロプロパン(Z)),1.54(d,1H,J=5.2Hz,CH−シクロプロパン(E)),1.28(s,3H,Me,(Z)),1.26(s,3H,Me,(E)),1.1(s,6H,2Me,(Z)+(E)).
13C NMR(CDCl)δ171.16,171.07,147.12−146.84(m,芳香族C−F),146.56−146.37(m,芳香族C−F),144.65−144.37(m,芳香族C−F),144.07−143.84(m,芳香族C−F),136.44,133.15,132.23,131.77,130.95,128.32,118.16,115.75,115.37(t,J=18Hz,芳香族−C),106.61(t,J=22Hz,芳香族−CH),53.59,36.62,35.04,34.03,32.43,29.81,29.68,22.0,21.91,20.26,20.23
【0044】
例2:2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−(1R,3R)−3−((E)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラート
【0045】
a.(1R,3R)−3−((E)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボン酸の合成
(1R,3R)−3−((E)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボン酸を対応するエチル(1R,3R)−3−カルボキシアルデヒド−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラートから調製し、次の反応スキームによるジエチルアリルホスホネートとの反応により(1R、3R)菊酸エチルエステルのオゾン分解によって得られる:
【0046】
5.02ml(28.8mmol)のジエチルアリルホスホナートを窒素雰囲気下でフラスコ内で43mlの無水テトラヒドロフランに溶解する。混合物を−78℃に冷却し、および18mlの1.6M ブチルリチウム−nヘキサン溶液をゆっくりと加える。混合物を−78℃、1時間の攪拌下におき、次いで30mlのヘキサメチルホスホトリアミドを加え、次いで3.5g(20.6mmol)のエチル(1R,3R)−3−カルボキシアルデヒド−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラートを加える。混合物を、環境温度にて12時間攪拌し、次いで45mlの飽和塩化アンモニウム溶液を加える。次いで、50mlのエチルエーテルで抽出を3度実施する。無水硫酸ナトリウム上での乾燥後、溶液を真空下(21mbar/30℃)で蒸発させ、粗生成物を、95/5(v/v)石油エーテル/エチルエーテルを溶離剤として用いてシリカゲルカラムで精製し、97/3のE/Z比で油性生成物を得る。
【0047】
b.2,3,5,6−テトラフルオロベンジル(1R,3R)−3−((E)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラートの合成
例1のbで述べられていたのと同様の方法で、2.38g(14.3mmol)の(1R,3R)−3−((E)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボン酸を、43mlのCHCNに溶解されている3.4ml(43mmol)のN−メチルイミダゾールとともに加え、および19mlのCHCNに溶解させた3.26g(17.2mmol)のトシルクロリドと反応させ、次いで16mlのCHCNに溶解させた2.6ml(14.3mmol)の2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールと反応させた。溶離剤として100/1(v/v)石油エーテル/エチルエーテルを用いたシリカゲルカラムでの精製後、96.1%に相当する純度および97/3のE/Z比の4.58gの油性生成物を得る。
【0048】
IR(CDCl,cm−1)3201,3085,2930,1725,1176.
H NMR(CDCl)δ7.15−7.07(m,1H,CHAr),6.37−6.18(m,2H,2CH=),5.38−5.45(m,1H,ビニルCH),5.28−5.20(m,2H,CHO),5.18(dd,J=2Hz,J=12Hz,CH=),4.98(dd,J=2Hz,J=12Hz,CH=),2.16−2.07(m,1H,CH−シクロプロパン),1.58(d,1H,J=7.5Hz,CH−シクロプロパン),1.36(s,3H,Me),1.18(s,3H,Me).
13C NMR(CDCl)δ171.05,147.11−146.36(m,2芳香族−F),144.6−143.88(m,2芳香族C−F),136.44,136.43,133.15,130.93,115.72,115.68(t,J=18Hz,芳香族−C),106.59(t,J=22Hz,芳香族−CH),53.55,36.61,34.02,29.79,21.89,20.21.
【0049】
例3:2,3,5,6−テトラフルオロベンジル(1R、3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラート
【0050】
a.(1R,3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボン酸の合成
例1のaで述べられていたのと同様の方法で、(1R,3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボン酸を、対応するエチル(1R,3R)−3−カルボキシアルデヒド−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラートから調製し、(1R,3R)菊酸メチルエステルのオゾン分解によって得る;次いで、オゾン分解生成物を、J.Chem. Soc. (C),1076, (1970)に記載されているようなアリルトリフェニルホスホニウムブロミドを用いたウィッティヒ反応に供し、溶離剤として100/1(v/v)石油エーテル/エチルエーテルを用いたシリカゲルカラム上での精製後、エステルのアルカリ加水分解に供する。対応する塩の酸性化によって得られる酸を、後の反応のために、粗形態で使用する。
【0051】
b.2,3,5,6−テトラフルオロベンジル(1R,3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラートの合成
例1のbに述べられていたのと同様の方法で、2.38g(14.3mmol)の(1R,3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボン酸を、43mlのCHCNに溶解させた3.4ml(43mmol)のN−メチルイミダゾールとともに加え、19mlのCHCNに溶解させた3.26g(17.2mmol)のトシルクロリドと反応させ、次いで、16mlのCHCNに溶解させた2.6ml(14.3mmol)の2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールと反応させた。溶離剤として100/1(v/v)石油エーテル/エチルエーテルを用いたシリカゲルカラムでの精製後、94%に相当する純度の4.64gの油性生成物が得られる。
【0052】
IR(CDCl,cm−1)3200,3086,2925,1725,1178.
H NMR(CDCl)δ7.13−7.04(m,1H,CHAr),6.80−6.65(m,1H,CH=(Z)),6.33−6.08(m,4ビニルCH(E)+(Z)),5.45−5.39(m,1H,ビニルCH(Z)),5.26−5.10+4.99−4.97(m,8H,2ビニル−CH+2CHO(E)+(Z)),2.36−2.32(m,1H,CH−シクロプロパン(Z)),2.10−2.07.(m,1H,CH−シクロプロパン(E)),1.58(d,1H,J=7.5Hz,CH−シクロプロパン(Z)),1.54(d,1H,J=5.2Hz,CH−シクロプロパン(E)),1.28(s,3H,Me,(Z)),1.26(s,3H,Me,(E)),1.1(s,6H,2Me,(Z)+(E)).
13C NMR(CDCl)δ171.16,171.07,147.12−146.84(m,芳香族C−F),146.56−146.37(m,芳香族C−F),144.65−144.37(m,芳香族C−F),144.07−143.84(m,芳香族C−F),136.44,133.15,132.23,131.77,130.95,128.32,118.16,115.75,115.37(t,J=18Hz,芳香族−C),106.61(t,J=22Hz,芳香族−CH),53.59,36.62,35.04,34.03,32.43,29.81,29.68,22.0,21.91,20.26,20.23.
【0053】
例4:2,3,5,6−テトラフルオロベンジル(1R,3R)−3−(ヘキサ−1,3(E)−5(E/Z)−トリエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラート
該化合物を、2,3,5,6テトラフルオロベンジルアルコールの(1R,3R)−3−カルボキシアルデヒド−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラートから調製し、対応する菊酸エステルのオゾン分解によって得る。次いで、30.4g(100mmol)のアルデヒドを、28時間環境温度にて15.15g(150mmol)のトリエチルアミンがある状態の、500mlのベンゼン中の40.9g(120mmol)のフォルミルメチルトリフェニルホスホニウムクロリドと、窒素雰囲気下で反応させる。このように得られる2,3,5,6テトラフルオロベンジルアルコールの粗(1R,3R)−3−(3(E)−オキソプロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラートを、溶離剤として2/1(v/v)石油エーテル/酢酸エチルを用いたシリカゲルクロマトグラフィーカラムで25℃/21mbarにて溶媒を蒸発させた後に精製し、26.7gの生成物を得る。
【0054】
H NMR(CDCl)δ9.40(d,1H,J=8Hz,CHO),7.11−7.03(m,1H,CHAr),6.49−6.42(m,1H,ビニル−CH),6.24−6.17(m,1H,ビニルCH),5.24−5.16(m,2H,CHO),2.25(q,1H,J=4.8Hz,CH),1.86(d,1H,J=5.6Hz,CH),1.27(s,3H,Me),1.22(s,3H,Me).
13C NMR(CDCl)δ192.5,169.8,154.9,147.1−146.3(m,芳香族C−F),144.6−143.8(m,芳香族C−F),134.0,114.9(t,J=16.6Hz,芳香族−C),106.8(t,J=22Hz,芳香族−CH),60.2,53.9,36.0,35.8,31.5,21.9,20.2,14.1.
【0055】
得られた生成物を、あらかじめ0℃に冷却された、300mlの無水エチルエーテル中の45.7g(118mmol)のアリルトリフェニルホスホニウムブロミドのエーテル溶液(エチルエーテル)に0℃でゆっくりと加え、11.1mlのn−ヘキサン中の1.6M ブチルリチウム溶液に加える。添加の終わりに、混合物を0℃で1時間放置し、次いで環境温度にて3時間放置する。次いで、溶液をろ過し、20℃/21mbarにて濃縮し、溶離剤として100/1の石油エーテル/エチルエーテルを用いたシリカゲルカラムで精製して、油性物を得る。96%の純度の27.2gの油性生成物を得る。
【0056】
IR(CDCl3,cm−1)3203,3083,2919,2530,1721,1172.
H NMR(CDCl3) δ7.11−7.07(m,1H,CHAr),6.34−6.16(m,4H,ビニルCH),5.49−5.41(m,1H,ビニルCH),5.23−5.05(m,4H,2ビニル−CH+2CH2O),2.13−2.01(m,1H,CH−シクロプロパン),1.63−1.56(m,1H,CH−シクロプロパン),1.27(s,3H,Me),1.12(s,3H,Me).
13C NMR(CDCl3)δ171.88,171.08,137.0,136.93,132.8,132.6,132.4,131.9,131.7,131.3,129.6,129.2,117.0,116.8,106.6(t,J=22Hz,芳香族−CH),64.3,38.3,38.1,34.8,33.5,29.7,28.8,21.9,21.4.
【0057】
例5:ネッタイシマカおよびネッタイイエカ種の蚊に対する気相中の殺虫剤の有効性
大きさ20cm×10cmの紙支持体からなる試験ユニットを、各化合物(純粋物)につき5.00mg/ユニットの量で、例3の化合物および比較目的のために、対照化合物であるトランスフルトリンおよびメトフルトリンを染み込ませた。
【0058】
共通の研究室スタンドを用いて、試験ユニットを、20mの部屋(L3.00m×D2.49m×H2.69m)の1側面に沿って地面から高さ約30cmで置いた。部屋内の殺虫性大気を均質化するために、ユニットから約50cmの距離の最も近い隅に、ユニットの表面に対して対角面の床に小さな扇風機を置いた。それぞれ性別を混合させた20 3−4日齢の個体を含む、すべての蚊類に対して3つの金属ケージ(L8.4cm×θ8.0cm×メッシュ1.0mm)を、地面から高さ1.80m、それぞれの壁から0.45mの距離に、部屋の他の3側面に沿って置いた。試験の間、部屋を閉じたままにし、温度と湿度を制御した(T 23〜26℃、RH 49〜61%)。
【0059】
ファンのスイッチを入れて、8時間連続して放置した。10%、50%および90%の昆虫のノック・ダウン(それぞれ、KT10、KT50およびKT90)に達する所要時間を記録した。
【0060】
2時間ごと、および、ファンのスイッチを入れて6時間後まで、昆虫を含む新しいケージを導入した(各種につき3つのケージのセット)。
【0061】
8時間の終わりに、すべてのケージ中のノック・ダウンした昆虫のパーセンテージを測定し、次いで、昆虫を部屋から取り除き、および砂糖溶液を含む、閉口容器内の非汚染大気へ移した。試験の開始から24時間のパーセンテージ死亡率を記録した。
【0062】
得られた結果を表1および2に要約する。また、データは3つのケージの平均である。
【0063】
表1
【表1】

【0064】
表2
【表2】

【0065】
例6:ブラテラ・ゲルマニカ種のゴキブリに対する表面に残った殺虫剤の有効性
50mg/mに相当する純粋な化合物の適用量を得るために、適当なガラス噴霧器によって滑らかなタイル(オストラ(Ostara)モデル、15×15cm=225cm)上に12cmの距離から、アセトン中の例3の化合物、および比較のために対照化合物トランスフルトリンおよびメトフルトリンの溶液を適用した。処理後、そのタイルを閉鎖試験室に移し、制御された温度および湿度(24〜25℃、RH 50〜60%)で維持した。ガラス環(H 5.5cm×θ 9.5cm)は、タルクで処理された内部表面を有し、かつ、それぞれ5匹のゴキブリを含むものを、処理後24時間、3、7、10および14日間の各評価時間に対して該タイルの中心に配置した。
【0066】
評価日毎に、昆虫を、24時間表面上に維持し、および100%ノック・ダウンし、次いで死に至るのに必要な時(時間、分)、または24時間の終わりのノック・ダウンのパーセンテージを記録した。得られた結果を表3に要約する:
【0067】
表3
【表3】


(*)最初の照射から24時間以内に回復した5個体のうちの1個体。
【0068】
表1〜3に示される活性データは、本発明の式(I)に従う例3の化合物について、試験に供した異なる種に対するノック・ダウン時間の顕著な減少を示す。特に、ブラテラ・ゲルマニカ(節足動物)を用いて、対照殺虫剤と比較して活性の非常に顕著な増加が観察される。この点で、表3は、本発明の化合物について、照射15分以内の全てのノック・ダウン(100%)を示す;逆に、対照殺虫剤、トランスフルトリンおよびメトフルトリンは、照射後24時間で、わずかな部分的なノック・ダウン、つまり60〜80%に達した。したがって、本発明の化合物は、明らかに優れた強度を実証する;活性が見出される種の多様性は、さらに活性の広いスペクトルを確認する。
【0069】
例7:(2−ベンジル−4−ヒドロキシメチルフリル)(1R、3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラート(比較)
【0070】
a.(1R,3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボン酸の合成
例1のaに述べられていたのと同様の方法で、(1R,3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボン酸を、対応するエチル(1R,3R)−3−カルボキシアルデヒド−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラートから調製し、(1R,3R)菊酸メチルエステルのオゾン分解によって得る;次いで,オゾン分解生成物を、J.Chem. Soc.(C),1076,(1970)に記載されているようなアリルトリフェニルホスホニウムブロミドを用いたウィッティヒ反応に供し、溶離剤として100/1(v/v)石油エーテル/エチルエーテルを用いたシリカゲルカラムでの精製後、エステルのアルカリ加水分解に供する。対応する塩の酸性化によって得られる酸を、後の反応のために、粗形態で使用する。
【0071】
b.(2−ベンジル−4−ヒドロキシメチルフリル)(1R,3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラートの合成
例1のbに述べられていたのと同様の方法で、4.76g(28.6mmol)の(1R,3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボン酸を、86mlのCHCNに溶解させた6.8ml(86mmol)のN−メチルイミダゾールとともに加え、および38mlのCHCNに溶解させた6.52g(34.4mmol)のトシルクロリドと反応させ、次いで、32mlのCHCNに溶解させた5.38g(28.6mmol)の2−ベンジル−4−ヒドロキシメチル−フランと反応させる。溶離剤として100/1(v/v)石油エーテル/エチルエーテルを用いたシリカゲルカラムでの精製後に、96%に相当する純度の9.1gの油性生成物を得る。
【0072】
IR(CDCl,cm−1)3200,3086,2925,1725,1178.
H NMR(CDCl400MHz)δ7.39−7.20(m,12H,(E+Z),Arom−CH+CH=(フラン))6.80−6.68(m,1H,CH=;Z),6.39−6.05(m,4H(E+Z),4CH=),6.02(s,1H,CH=(フラン);E),5.50−5.40(m,1H,CH=;E),5.30−5.05(m,4H(E+Z),CH=),5.02−4.81(m,5H,(E+Z),2CH+CH=),3.95(s,2H,CH(E));2.38−2.32(m,1H(Z),CHシクロプロパン);2.11−2.03(m,1H(E),CHシクロプロパン);1.60(d,1H(E),J=7.1Hz,CH),1.58(d,1H(Z),J=7.2Hz,CH),1.31(s,3H(Z),CH)1.29(s,3H(E),CH),1.19(s,6H(E+Z)CH).
13C NMR(CDCl,100MHz)δ(E+Z)171.74,171.67,155.58,140.35,137.70,136.52,132.35,131.52,131.34,128.72,128.51,126.57,121.21,117.00,115.57,107.27,77.21,65.83,57.97,57.94,36.28,35.43,34.53,34.42,34.10,32.09,29.45,29.33,22.60,22.32,22.10,22.01,20.32,20.28,15.26,14.04.
【0073】
例8:2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル(1R,3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラート
【0074】
a.(1R,3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボン酸の合成
例1のaで述べられていたのと同様の方法で、(1R,3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボン酸を、対応するエチル(1R,3R)−3−カルボキシアルデヒド−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラートから調製し、(1R,3R)菊酸メチルエステルのオゾン分解によって得る;次いで、オゾン分解生成物を、J.Chem.Soc.(C),1076,(1970)に記載されているようなアリルトリフェニルホスホニウムブロミドを用いたウィッティヒ反応に供し、溶離剤として100/1(v/v)石油エーテル/エチルエーテルを用いたシリカゲルカラムでの精製後、エステルのアルカリ加水分解に供する。対応する塩の酸性化によって得られる酸を、後の反応のために、粗形態で使用する。
【0075】
b.2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル(1R,3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラートの合成
例1のbに述べられていたのと同様の方法で、4.76g(28.6mmol)の(1R,3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボン酸を、86mlのCHCNに溶解させた6.8ml(86mmol)のN−メチルイミダゾールとともに加え、および38mlのCHCNに溶解させた6.52g(34.4mmol)のトシルクロリドと反応させ、次いで、32mlのCHCNに溶解させた6.41g(28.6mmol)の2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジルアルコールと反応させる。溶離剤として100/1(v/v)石油エーテル/エチルエーテルを用いたシリカゲルカラムでの精製後に、96%に相当する純度の9.5gの油性生成物を得る。
【0076】
IR(CDCl,cm−1)3200,3095,2932,1732,1178.
H NMR(CDCl400MHz)δ6.78−6.63(m,1H,CH=)6.38−6.16(m,3H,CH=;Z+E),5.38−5.46(m,1HCH=,E),4.95−5.25(m,9H,5CH=+2CH=;E+Z),4.58(m,4H,(E+Z),2CH),3.41(s,6H(E+Z),OCH),2.38−2.31(m,1H(Z),CHシクロプロパン),2.15−2.05(m,1H(E)CHシクロプロパン);1.58(d,1H(E),J=7.3Hz,CH);1.55(d,1H(Z),J=7.2Hz,CH);1.50(s,3H(Z),CH),1.47(s,3H(Z),CH),1.18(s,6H,2CH).
13C NMR(CDCl,100MHz)δ(E+Z)171.10,171.02,146.45,146.39,146.31,146.27,146.23,146.17,143.99,143.93,143.87,143.79,143.75,143.69,136.42,133.14,132.22,131.74,130.92,128.30,118.12,117.01,116.83,116.66,115.71,114.99,114.82,114.65,65.78,61.35,59.43,53.48,36.60,35.02,34.02,32.40,9.77,29.65,21.97,21.88,20.25,20.22,15.21.
【0077】
例9:ネッタイシマカおよびネッタイイエカ種の蚊に対する気相中の殺虫剤の有効性
【0078】
大きさ20cm×10cmの紙支持体からなる試験ユニットを、各化合物(純粋物)につき5.00mg/ユニットの量で、例3、7および8の化合物および比較目的のために、対照化合物であるトランスフルトリンおよびメトフルトリンを染み込ませた。共通の研究室スタンドを用いて、試験ユニットを、20mの部屋(L3.00m×D2.49m×H2.69m)の1側面に沿って地面から高さ約30cmで置いた。部屋内の殺虫性大気を均質化するために、ユニットから約50cmの距離の最も近い隅に、ユニットの表面に対して対角面の床に小さな扇風機を置いた。それぞれ性別を混合させた20 3−4日齢の個体を含む、すべての蚊類に対して3つの金属ケージ(L8.4cm×θ8.0cm×メッシュ1.0mm)を、地面から高さ1.80m、それぞれの壁から0.45mの距離に、部屋の他の3側面に沿って置いた。試験の間、部屋を閉じたままにし、温度と湿度を制御した(T 23〜26℃、RH 49〜61%)。ファンのスイッチを入れて、8時間連続して放置した。10%、50%および90%の昆虫のノック・ダウン(それぞれ、KT10、KT50およびKT90)に達する所要時間を記録した。
【0079】
2時間ごと、および、ファンのスイッチを入れて6時間後まで、昆虫を含む新しいケージを導入した(各種につき3つのケージのセット)。
【0080】
8時間の終わりに、すべてのケージ中でノック・ダウンした昆虫のパーセンテージを測定し、次いで、昆虫を部屋から取り除き、および砂糖溶液を含む、閉口容器内の非汚染大気へ移した。試験の開始から24時間でパーセンテージ死亡率を記録した。
【0081】
得られた結果を表1および2に要約する。また、データは3つのケージの平均である。
【0082】
表1
【表4】

【0083】
表2
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】


(式中、nは1および2から選ばれ、ならびにRは−H、−CH、C、−OCH、−OCおよび−CH−OCHから選ばれる)
の化合物、それらの鏡像体およびジアステレオ異性体、ならびにそれらの混合物。
【請求項2】
2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−(1RS,3RS)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラート;
2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−(1R,3R)−3−((E)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラート;
2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−(1R,3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラート;
2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−(1R,3R)−3−(ヘキサ−1,3(E)−5(E/Z)−1,3,5−トリエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラート;
2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル(1R、3R)−3−((E/Z)−ブタ−1,3−ジエニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラートから選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
殺虫剤として使用するための請求項1〜2で規定されている式(I)の化合物。
【請求項4】
家庭環境およびそれらの外見、公共施設およびそれらの外見、公園、庭の昆虫汚染除去、ならびに農業外見に対して使用するための、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
昆虫除去を必要とする生息環境から昆虫を除去するための方法であって、前記生息環境を請求項1〜2で規定されている式(I)の1つ以上の化合物の有効量と接触させることにより特徴づけられる、前記方法。
【請求項6】
前記生息環境は、家庭環境またはその外見、公共施設またはその外見、公園、庭、農業外見である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
殺虫活性を有する獣医学的生成物の製造において、請求項1〜2で規定されている式(I)の1つ以上の化合物の使用。
【請求項8】
殺虫性組成物のための賦形剤と組み合わせて、請求項1〜2で規定されている式(I)の1つ以上の化合物を含むことにより特徴づけられる殺虫性組成物。
【請求項9】
0.001〜95%である化合物(I)のw/w%を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
0.001〜50%である化合物(I)のw/w%を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
0.001〜5%である化合物(I)のw/w%を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
式(I)の化合物と相乗効果および/または殺虫活性を有する化合物をさらに含む、請求項8〜11に記載の組成物。
【請求項13】
式(I)
【化2】


(式中、nは1および2から選ばれ、ならびにRは−H、−CH、C、−OCH、−OCおよび−CH−OCHから選ばれる)
の化合物、それらの鏡像体およびジアステレオ異性体、ならびにそれらの混合物を合成する方法であって、式(II)の化合物、任意に−COOH基にて活性化されたものを、式(III)のアルコールと反応させることを含み、
【化3】


式(II)および(III)において、nおよびRは式(I)について記載されている意味を有する、前記方法。
【請求項14】
−COOH基は、対応するハロゲン化アシルの形成によって活性化される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
式(I)
【化4】


(式中、nは2であり、ならびにRは−H、−CH、C、−OCH、−OCおよび−CH−OCHから選ばれる)
の化合物、それらの鏡像体およびジアステレオ異性体、ならびにそれらの混合物を合成する方法であって、式(VII)
【化5】


の化合物のアリルトリフェニルホスホニウムハリドとの処理を含む、前記方法。
【請求項16】
式(VII)
【化6】


(式中、nは2であり、ならびにRは−H、−CH、C、−OCH、−OCおよび−CH−OCHから選ばれる)
の化合物、それらの鏡像体およびジアステレオ異性体、ならびにそれらの混合物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−539140(P2010−539140A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524520(P2010−524520)
【出願日】平成20年9月15日(2008.9.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062257
【国際公開番号】WO2009/037228
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(507277457)エンデュラ ソシエタ ペル アチオニ (5)
【Fターム(参考)】