説明

比較的長鎖のポリアルキレングリコールジエーテルの製造方法

【課題】選択性が高くまた技術的に複雑でなく、経済的な比較的長鎖のアルキレングリコールジエーテル類の製造方法を提供する。
【解決手段】式(II)


[式中、R、Rおよびnは上記の意味を有する。]の化合物を液相中で170〜300℃の温度で、元素の周期律表の遷移元素群I、VIおよびVIIIの1種類以上の他の金属を触媒の総重量を基準として0.1〜50重量%含有するラネーニッケル触媒の存在下に上記アルキレングリコールジエーテルに転化する式(I)


[式中、R1 は水素原子またはC〜C−アルキル基であり、 R2 は水素原子、 −CH3 または −CH2−CH3 基でありそしてnは5〜500である。]のアルキレングリコールジエーテルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、少なくとも250g/モルの分子量を有する鎖状アルキレングリコールジエーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキレングリコールジエーテルは極性で、非プロトン性の不活性溶剤としてしばしば使用されてきた。高分子量アルキレングリコールジエーテルは特に電気化学の分野で高沸点溶剤としておよび相転移触媒において線状クラウンエーテルとして使用されている。
【0003】
このものを製造するためには、いわゆる間接法、例えばウイリアムソンのエーテル合成(Williamson Ether synthesis:K. Weissermel, H. J. Arpe “Industrielle Organische Chemie” [工業有機化学]、1998、第179頁) またはジグリコールエーテルホルマールの水素化(DE-A 24 34 057)が工業的に使用されているかまたは開示されている。しかしながら両方法には欠点がある。即ち、二段階のウイリアムソンのエーテル合成は化学量論量の塩素およびアルカリを消費しそして生じる反応水および塩化ナトリウムを除去するので、経済性の低いものである。型通りの水素化は、プラント建設で非常に多大な費用を必要とする高圧の下で行われそしてそれ故に比較的に少ない生産量の場合には適していない。
【0004】
いわゆる直接法においては、アルキレンオキサイドがBF3 (米国特許第4,146,736A号明細書,およびドイツ特許出願公開第3,128,962A号明細書に関連してのドイツ特許出願公開第2,640,505A号明細書)またはSnCl(ドイツ特許出願公開第3,025,434A号明細書)の様なルイス酸の存在下に鎖状エーテル中に導入される。これらの方法の欠点は、比較的に多量の環状副生成物、例えばジオキサンまたはジオキソランが生じるのを避けられないことである。更にこれらの方法は比較的に長鎖のポリアルキレングルコールエーテルに転用することができない(副生成物の割合が多くなる)。
【0005】
代替の合成手段はグリコール類およびメチルグリコール類の接触的脱蟻酸である:
【0006】
【化1】

【0007】
ドイツ特許出願公開第2,900,279号明細書にはこの合成ルートが初めて説明されており、この場合にはポリエチレングリコール類またはポリエチレングリコールモノメチルエーテルを気相で250〜500℃でパラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウム担持触媒および水素の存在下に反応させている。特開昭60−028,429号公報は、γ−アルミナにニッケル/レニウム触媒を担持した担持触媒を用いてC以上の鎖長のモノアルキルエーテルの反応を説明している。この方法でも水素は連続的に供給されている。第二水酸基を水素にて標準圧でニッケル触媒の使用して水素化することも同様に公知である(ドイツ特許出願公開第3,802,783号明細書)。この方法では、ラネーニッケルを使用した時に、合成は明らかに成功していない。
【0008】
米国特許第3,428,692号明細書からは、C〜C12−鎖モノアルキル−およびモノフェニル−エーテルをニッケルおよびコバルト触媒の存在下に200〜300℃に加熱することで、脱ホルミル化されておりかつメチル基でブロックされた相応するエトキシレート類を製造できることが公知である。しかしながらこの方法では、所望のメチルエーテルと不完全に転化されたエトキシレート類および20〜30%の不明のアルデヒド化合物との混合物が生じる。ヨーロッパ特許出願公開第0,043,420号明細書はAlまたはSiOに担持されたパラジウム、白金またはロジウム触媒を用いる類似の方法を説明している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
最新の従来技術で説明される全ての方法は選択性が低いかまたは技術的に非常に複雑であり、それ故に比較的長鎖のアルキレングリコールジエーテル類を製造するには不経済である。これらから生じる課題は、特許請求の範囲に記載の発明に従って解決される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、比較的長鎖のアルキレングリコール類およびアルキレングリコール−モノエーテル類は金属触媒によって簡単なスラリー法で所望のアルキレングリコールジエーテルに転化することができる。この合成は副生成物を生じることなく定量的(>99%)に成功する。反応の後に触媒は簡単な濾過段階で完全に除くことができる(<1ppmの金属)。
【0011】
それ故に本発明は、式(I)
【0012】
【化2】

【0013】
[式中、R1 は水素原子またはC〜C−アルキル基であり、 R2 は水素原子、
−CH3 または −CH2−CH3 基でありそしてnは5〜500である。]
で表されるアルキレングリコールジエーテルを製造する方法において、式(II)
【0014】
【化3】

【0015】
[式中、R、Rおよびnは上記の意味を有する。]
で表される化合物を液相中で170〜300℃の温度で、元素の周期律表の遷移元素群I、VIおよびVIIIから選択される1種類以上の他の金属を、元素状金属として算出した触媒の総金属含有量を基準として0.1〜50重量%含有するラネーニッケル触媒の存在下に上記アルキレングリコールジエーテルに転化することを特徴とする、上記方法に関する。
【0016】
触媒上での反応は200〜250℃で有利に行われる。この反応は一般に標準圧で行われるが、減圧または加圧下でも行うことができる。反応時間は一般に4〜10時間である。
【0017】
は好ましくはHまたはメチル基である。
【0018】
は好ましくは水素原子である。
【0019】
nは好ましくは15〜300である。
【0020】
ラネーニッケル触媒は元素の周期律表の遷移元素群I、VIおよびVIIIから選択される好ましくは0.2〜25重量%、特に好ましくは0.5〜10重量%の1種類以上の他の金属を含有している。元素の周期律表の遷移元素群I、VIおよびVIIIから選択される有利な金属は、パラジウム、鉄、モリブデン、銅、クロム、コバルト、白金、ロジウム、ルテニウムおよびイリジウムである。これらの金属はラネーニッケルと一緒に同じ担持材料に担持されているかまたは別々の担持材料上で触媒に添加されていてもよい。別々の担体上にある触媒の混合物の場合には、触媒という言葉はその混合物を意味する。触媒の金属含有量は、常に総金属含有量の百分率で示される。元素状金属として算出される触媒の総金属重量は常に100重量%に相当する。
【0021】
ここで、本発明の方法を幾つかの実施例を用いて更に詳細に説明する:
<例1(実施例)>
【0022】
約500g/モルの分子量を持つポリグリコールジメチルエーテルの合成:
250mLの三つ首フラスコで、361.7gのポリグリコールモノメチルエーテル(分子量:約500g/モル)、活性炭を担体とする12.3gのパラジウム担持触媒(パラジウム含有量0.6g)および19.4gの無水ラネーニッケル(ニッケル含有量9.7g)を保護ガス雰囲気で230℃で激しく攪拌する。8時間の反応時間の後に反応混合物をシリカゲルに通して80℃で濾過する。転化率は98.6%である。この生成物では、ニッケル(AASで)またはパラジウム(ICPOESで)は検出できない。
<例2(実施例)>
【0023】
約2000g/モルの分子量を持つポリグリコールジメチルエーテルの合成:
250mLの三つ首フラスコで、399.5gのポリグリコールモノメチルエーテル(分子量:約2000g/モル)、活性炭を担体とする19.7gのパラジウム担持触媒(パラジウム含有量0.98g)および31.0gの無水ラネーニッケル(ニッケル含有量15.5g)を保護ガス雰囲気で230℃で激しく攪拌する。6時間の反応時間の後に反応混合物をシリカゲルに通して80℃で濾過する。転化率は99.3%である。この生成物では、ニッケルまたはパラジウムは検出できない。
<例3(実施例)>
【0024】
約4000g/モルの分子量を持つポリグリコールジメチルエーテルの合成:
250mLの三つ首フラスコで、395.5gのポリグリコールモノメチルエーテル(分子量:約4000g/モル)、活性炭を担体とする19.4gのパラジウム担持触媒(パラジウム含有量0.97g)および30.6gの無水ラネーニッケル(ニッケル含有量15.3g)を保護ガス雰囲気で230℃で激しく攪拌する。8時間の反応時間の後に反応混合物をシリカゲルに通して80℃で濾過する。転化率は98.8%である。
【0025】
<例4(比較例)>
約10000g/モルの分子量を持つポリグリコールジメチルエーテルの合成:
250mLの三つ首フラスコで、331.5gのポリグリコールモノメチルエーテル(分子量:約10000g/モル)および18.7gの無水ラネーニッケル(ニッケル含有量9.4g)を保護ガス雰囲気で200℃で激しく攪拌する。8時間の反応時間の後に反応混合物をシリカゲルに通して80℃で濾過する。転化率は86.1%である。
<例5(実施例)>
【0026】
約10000g/モルの分子量を持つポリグリコールジメチルエーテルの合成:
250mLの三つ首フラスコで、332.4gのポリグリコールモノメチルエーテル(分子量:約10000g/モル)、活性炭を担体とする11.6gのパラジウム担持触媒(パラジウム含有量0.58g)および18.3gの無水ラネーニッケル(ニッケル含有量9.2g)を保護ガス雰囲気で230℃で激しく攪拌する。8時間の反応時間の後に反応混合物をシリカゲルで濾過する。転化率は99.0%である。
<例6(実施例)>
【0027】
約10000g/モルの分子量を持つポリグリコールジメチルエーテルの合成:
例5と同様に、332.4gのポリグリコールモノメチルエーテル(分子量:約10000g/モル)、18.3gのラネー銅(銅含有量9.2g)および18.3gのラネーニッケル(ニッケル含有量9.2g)を200℃で激しく攪拌する。8時間の反応時間の後に反応混合物をシリカゲルで濾過する。転化率は89.2%である。
<例7(実施例)>
【0028】
約10000g/モルの分子量を持つポリグリコールジメチルエーテルの合成:
例5と同様に、332.0gのポリグリコールモノメチルエーテル(分子量:約10000g/モル)、および3重量%のクロムおよび3重量%の鉄(触媒中の金属の総量を基準とする)をドープした18.2gのラネーニッケル(ニッケル含有量9.1g)を220℃で激しく攪拌する。8時間の反応時間の後に反応混合物をシリカゲルで濾過する。転化率は89.2%である。
<例8(実施例)>
【0029】
約10000g/モルの分子量を持つポリグリコールジメチルエーテルの合成:
例5と同様に、330.1gのポリグリコールモノメチルエーテル(分子量:約10000g/モル)、および8重量%の銅および3重量%のモリブデン(触媒中の金属の総量を基準とする)をドープした18.0gのラネーニッケル(ニッケル含有量9.0g)を220℃で激しく攪拌する。8時間の反応時間の後に反応混合物をシリカゲルで濾過する。転化率は93.4%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、R1 は水素原子またはC〜C−アルキル基であり、 R2 は水素原子、
−CH3 または −CH2−CH3 基でありそしてnは5〜500である。]
で表されるアルキレングリコールジエーテルを製造する方法において、式(II)
【化2】

[式中、R、Rおよびnは上記の意味を有する。]
で表される化合物を液相中で170〜300℃の温度で、元素の周期律表の遷移元素群I、VIおよびVIIIから選択される1種類以上の他の金属を触媒の総重量を基準として0.1〜50重量%含有するラネーニッケル触媒の存在下に上記アルキレングリコールジエーテルに転化することを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
1 が水素原子またはメチル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が水素原子である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
nが15〜300である、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
ラネーニッケル触媒が、元素の周期律表の遷移元素群I、VIおよびVIIIから選択される1種類以上の他の金属を触媒の総重量を基準として0.2〜25重量%含有する請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
元素の周期律表の遷移元素群I、VIおよびVIIIから選択される金属
がパラジウム、鉄、モリブデン、銅、クロム、コバルト、白金、ロジウム、ルテニウムおよびイリジウムの群から選択される、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
元素の周期律表の遷移元素群I、VIおよびVIIIから選択される金属
がラネーニッケルと一緒に同じ担持材料に担持されているかまたは別々の担持材料上の触媒に添加されている、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。

【公開番号】特開2007−238618(P2007−238618A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58349(P2007−58349)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(398025878)クラリアント・インターナシヨナル・リミテッド (74)
【Fターム(参考)】