説明

比重分別装置、ならびにそれを用いた分別回収方法、比重分別方法、および廃棄物処理システム、再生プラスチック原料ならびに再生プラスチック成形体

【課題】比重分離法によるプラスチック廃材の分別精度をあげた小型の比重分別装置を提供する。
【解決手段】被選別物を比重の差によって低比重の被選別物と高比重の被選別物を分別回収する比重分別装置において、(a)比重分離液を蓄えた分別槽と、(b)該分別槽に被選別物を供給する供給手段と、(c)前記比重分離液に実質的に水平方向の液流を発生させる液流発生手段と、(d)前記液流方向に低比重の被選別物を移動する第1搬送手段と、(e)前記液流と逆方向に、比重分離液の下方に沈降した高比重の被選別物を移動する第2搬送手段を備えた前記比重分別装置を提供する。
また、前記第2搬送手段は、比重分離液の下方に沈降した低比重の被選別物を再浮上させる機能を有する前記比重分別装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック廃材などの被選別物を分別回収する比重分別装置、比重分別方法に関する。また本発明は、上記比重分別装置を用いて分別回収する方法、およびその方法を組み込んだ廃棄物処理システムに関する。また、本発明は、再生プラスチック原料または再生プラスチック成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、わが国では、所得水準の向上に伴い、一般家庭に、エアコンディショナ(以下の説明において「エアコン」とも呼称する)、テレビジョン受信機(以下の説明において「テレビ」とも呼称する)、冷蔵庫、もしくは洗濯機などの家電製品、パーソナルコンピュータもしくはワードプロセッサなどの情報機器、プリンタもしくはファックスなどの事務用機器、その他各種の家具、文具、および玩具などが、高い普及率で備えられるようになっている。上述した各種の物資が一般家庭に備えられることで、家庭生活における利便性は飛躍的に向上しつつある。
【0003】
上述した各種の物資が一般家庭に備えられるので、それら各種の物資の廃棄量も年々増加する傾向にある。従来、それら各種の物資の再資源化は、鉄くずの回収ルートを通して行なわれる場合が多かった。
【0004】
それら各種の物資の構成材料のうち、鉄をはじめとする金属の割合が減少し、プラスチック組成物(「プラスチック部材」ともいう)の割合が増加する傾向にある。プラスチック部材は、鉄をはじめとする金属よりもデザインの自由度が大きい、構成成分の調製や添加剤の使用などにより金属では実現の難しい種々の特性を付与することができる、軽量である、耐久性が高いなどといった多くの利点を有するためである。
【0005】
ただし、プラスチック部材は、有価性が低い。また、プラスチック部材の処理は、従来の方法である限り多大の手間と経費とがかかる。従来の鉄くずの回収ルートではこのような廃棄物を再資源化しても採算が取れない。次に述べる観点から、これらのプラスチック部材を含む製品(以下の説明において「プラスチック製品」と呼称する)の廃棄物の再資源化が重要かつ緊急の課題となりつつある。第1の観点は、資源の有効活用を図るという観点である。プラスチック部材には、原油などの化石燃料を基礎原料とするものが多いためである。第2の観点は、地球温暖化や酸性雨といった環境破壊を防止する観点である。地球温暖化や酸性雨がプラスチック部材の燃焼に起因するためである。第3の観点は、ダイオキシンの生成および飛散といった環境汚染を防止する観点である。ダイオキシンの生成および飛散が塩素化合物を含むプラスチック部材の焼却に起因するためである。第4の観点は、ゴミ埋立処理場の不足といった問題を抑制するという観点である。プラスチック製品の廃棄物は嵩が大きいので、プラスチック製品の廃棄物が増加すると、ゴミ埋立処理場が不足することとなる。
【0006】
上述した課題を解決するため、2001年4月に家電リサイクル法が施行された。家電リサイクル法は、エアコン、テレビ、冷蔵庫、および洗濯機の再生が義務付けられている。家電リサイクル法は、それらの製品の再商品化率として、エアコン60%以上、テレビ55%以上、冷蔵庫50%以上、および洗濯機50%以上の法定基準値を定めている。前述した「再商品化」という語は、次の2種類の行為のいずれかを指す。第1の行為は、上述した家電製品の廃棄物から部品および材料を分離し、自らこれを製品の部品または原材料として利用する行為である。第2の行為は、上述した家電製品の廃棄物から部品および材料を分離し、これを製品の部品または原材料として利用する者に有償または無償で譲渡し得る状態にする行為である。
【0007】
その中で、プラスチック廃材の再資源化時に比重の異なる複数種のプラスチックで構成された混合物をプラスチック組成物の系統ごとに分離する方法として、混合物の比重差を利用し、液体中でプラスチック組成物の系統ごとに分離する方法が、広く用いられてきた。
【0008】
特に、水に沈む、比重1.0より重いプラスチックを比重1.1の液体で分離することにより例えば、ABS樹脂(比重:1.05)、ポリスチレン(比重:1.05)、ポリウレタン樹脂(比重:1.2)、ポリ塩化ビニル(比重:1.3)、ポリ塩化ビニリデン(比重:1.7)などが混合している材料から、ABS樹脂(比重:1.05)、ポリスチレン(比重:1.05)を分離でき、マテリアルリサイクルやサーマルリサイクルが可能となる。
【0009】
このような比重が1より大きなプラスチックを種類別に分離回収する従来技術として、比重水を水以外のものを使い分離回収する方法が、特許文献1に開示されている。
【0010】
一方、扱いの容易な水を使って分離するものも提案されている。特許文献2、特許文献3には、一定の水流を作成し、沈降する速度差により、分離回収する比重選別装置が開示されている。
【0011】
しかしながら、特許文献2や特許文献3に開示された比重選別装置においては、沈降した被選別物を別々に回収するために複数の受け箱を設ける必要があり、この受け箱内の被選別物を搬出する沈降物搬出装置とともに、比重選別装置自体が複雑になり大型化する。
【0012】
さらに、選別槽の水流に対して横方向に回収槽を設け、横方向に被選別物を搬出する沈降物搬出装置を設けているために、回収槽と隣接する受け箱は、被選別物を搬送する距離が短く、選別時間が短くなり選別精度が低下する。
【0013】
そのため、特許文献3においては、選別槽の水流に対して横方向に設けられた回収槽と、選別槽とを仕切る仕切り板に非選別防止装置を設け、選別が不十分なまま搬送される被選別物を選別槽に押し戻すことで再度選別を行っている。
【0014】
しかしながら、上述した非選別防止装置は、選別槽と回収槽とを仕切る仕切り板に設けられているため、選別が不十分なまま搬送される被選別物を選別槽に押し戻すための作業領域が狭く、また、押し戻すための作業距離が短い。このため、選別が不十分な被選別物が被選別防止装置を通過した場合には、選別槽に押し戻すことが出来なくなり、結果として選別精度が低下することになる。
【0015】
また、上述した非選別防止装置を複数個設けた場合には、比重分別装置自体が更に複雑化する。
【特許文献1】特開2003−225646号公報
【特許文献2】特開平9−57146号公報
【特許文献3】特開平9−108590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、簡易な構成で、混合プラスチック部材をプラスチック組成物の系統ごとに、高精度に分離することができる比重分別装置、比重分別方法を提供することである。
【0017】
また、該プラスチック組成物からマテリアルリサイクルによりプラスチック原料または再生プラスチック成形体を製造することができる、効率的かつ低コストにプラスチック廃材を再資源化し得る小型の比重分別装置を提供することである。
【0018】
また、本発明の別な目的は、市場から回収されたプラスチック廃材などを、前記比重分別装置で分別回収する廃棄物処理システムを確立し、マテリアルリサイクルにより得られる、再生プラスチック原料または再生プラスチック成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、被選別物を比重の差によって低比重の被選別物と高比重の被選別物を分別回収する比重分別装置において、(a)比重分離液を蓄えた分別槽と、(b)該分別槽に被選別物を供給する供給手段と、(c)前記比重分離液に実質的に水平方向の液流を発生させる液流発生手段と、(d)前記液流方向に低比重の被選別物を移動する第1搬送手段と、(e)前記液流と逆方向に、比重分離液の下方に沈降した高比重の被選別物を移動する第2搬送手段を備えた前記比重分別装置を提供する。
【0020】
また、本発明は、前記第2搬送手段は、比重分離液の下方に沈降した低比重の被選別物を再浮上させる機能を有する前記比重分別装置が好ましい。
【0021】
また、本発明は、前記被選別物が、比重の異なる複数種のプラスチック廃材および/または金属廃材の破砕物である前記比重分別装置が好ましい。
【0022】
また、本発明は、前記被選別物がエアコン、テレビ、冷蔵庫および洗濯機からなる群から選ばれる家電製品の廃棄物の粉砕物である前記比重分別装置が好ましい。
【0023】
また、本発明は、前記被選別物の比重が1.0以上である前記比重分別装置が好ましい。
【0024】
また、本発明は、前記液流は前記分別槽に付設された排出口の負圧により発生する前記比重分別装置が好ましい。
【0025】
また、本発明は、前記液流は、前記分別槽内に実質的に水平方向に設けられたトンネル型のガイド内に発生させる前記比重分別装置が好ましい。
【0026】
また、本発明は、第2搬送装置が、スクリューコンベアである前記比重分別装置が好ましい。
【0027】
また、本発明は、前記スクリューコンベアのスクリューが、リボン状羽根を螺旋状に巻いた前記比重分別装置が好ましい。
【0028】
また、本発明は、前記スクリューと同期し、スクリューガイド内周面に沿って回転する攪拌板を1つ以上設けた前記比重分別装置が好ましい。
【0029】
また、本発明は、前記攪拌板の回転軸から先端までの長さが、スクリュー羽根の外周円の半径より長い前記比重分別装置が好ましい。
【0030】
また、本発明は、回収した前記比重分別物を脱水するための脱水機を組み込んだ前記比重分別装置が好ましい。
【0031】
また、本発明は、前記比重分別装置を用いた被選別物の分物回収方法を提供する。
また、本発明は、被選別物を比重の差によって低比重の被選別物と高比重の被選別物を分別回収する比重分別方法において、比重分離液の一方から他方に流れる液流に前記被選別を供給する供給ステップと、前記液流により前記他方まで移動する前記被選別物中の低比重の被選別物を搬送する第1搬送ステップと、前記比重分離液の下方に沈降した前記被選別物中の高比重の被選別物を、前記液流の流れと逆方向に搬送する第2搬送ステップとを有する比重分別方法を提供する。
【0032】
また、本発明は、比重分別方法の第2搬送ステップにおいて、沈降した前記被選別物に含まれる低比重の被選別物を前記液流まで再浮上させるのが好ましい。
【0033】
また、本発明は、前記分別回収方法を組み込んでなる廃棄物処理システムを提供する。
また、本発明は、廃棄物処理システムで回収されたプラスチックからなる再生プラスチック原料と再生プラスチック成形体を提供する。
【発明の効果】
【0034】
混合プラスチック部材などからなるプラスチック廃材を、プラスチック組成物の系統ごとに簡易な構成で高精度に分離することができる。
【0035】
また、高効率に、かつ小型の設備で比重分離することができる比重分別装置を提供することができる。
【0036】
また、本発明の比重分別装置は、比重分離液中に沈降した被選別物を数回再浮上させる小型の手段を設けることができ、沈降した被選別物を再浮上させる回数を増やすことで、比重分別の精度を高めることができる。
【0037】
また、比重分別装置を廃棄物処理システムに利用し、マテリアルリサイクルにより得られる、再生プラスチック原料または再生プラスチック成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
<比重分別装置>
図1は、本発明の好ましい比重分別装置の一例を示す図である。以下、図1に基づいて、本発明の比重分別装置の構造について説明する。
【0039】
本比重分別装置は、比重分離液2を蓄えた分別槽1の中にプラスチック廃材および/または金属廃材を破砕した被選別物5を投入し、比重分離手段によって比重分離液2を基準に低比重、高比重の被選別物を分離させ、別々に次々と搬送手段によって回収する装置である。分別槽1には、被選別物5を供給する供給手段として投入口7が設けられており、投入口7より被選別物5を投入する。また、分別槽1には、水平方向に液流を発生させる液流発生手段が設けられており、低比重の被選別物を、該水平方向の水流方向に搬送する第1搬送手段と、比重分離液2の下方に沈降した高比重の被選別物を、分別槽1の下方に備え付けられたスクリューコンベア10などによって該液流と逆方向に搬送する第2搬送手段を具備している。
【0040】
また、本比重分別装置は、比重分離液2より比重が大きい被選別物において、所定の比重より小さく、比重分離液2の比重寄りである低比重の被選別物と、所定の比重より大きい高比重の被選別物とを分離させ、別々に回収することができる。
【0041】
すなわち、分別槽1には、被選別物5を供給する供給手段として投入口7が設けられており、投入口7より被選別物5を投入する。分別槽1内には、水平方向に液流を発生させる液流発生手段が設けられており、これにより発生した液流により、比重分離液2より大きい比重の被選別物ほど速く沈降するが、この沈降の時間差を利用して沈みきらない被選別物を搬送する第1搬送手段を備える。
【0042】
ただし、沈降の時間差だけでは所望の範囲の比重を有する被選別物の回収率に限界がある。
【0043】
そこで、沈降した被選別物のうち、比重の軽いものを再浮上させることで、再浮上した被選別物を上記液流に再度乗せるとともに、確実に沈降した被選別物を搬送する第2搬送手段を具備している。
【0044】
なお、第1搬送手段と第2搬送手段の被選別物の搬送方向が互いに逆方向となっており、また、互いの搬送経路は上下に重なっている。
【0045】
この構成により、沈降速度の速い比重の大きい被選別物ほど第2搬送手段で速やかに搬送・回収されるので再浮上する機会が少なくなる。逆に、沈降速度の遅い比重の小さい被選別物は、沈降した場合でも第2搬送手段の搬送経路上において充分に再浮上される機会があり、第2搬送手段の上方に位置する第1搬送手段により搬送されることになる。
【0046】
比重分離液2は、特に限定はされないが水を使うのが好ましく、他に、例えば塩水などを用いることも可能であるが、比重の異なる被選別物からなる被選別対象に対して、分別したい被選別物と被選別物の間となる比重の液体が好ましい。
【0047】
または、全ての被選別物の比重より小さく、かつ、第1搬送手段で搬送したい被選別物との比重差が小さい液体であれば良く、この場合の比重差は、0.00〜2程度の差が好ましい。
【0048】
≪液流発生手段≫
図1に基づいて以下説明する。液流発生手段とは、分別槽1中の比重分離液2に実質的に水平方向の液流を発生させる手段のことをいう。図1において、分別槽1内の比重分離液2は、排液口6に向かって流れていくが、この液流は図に示す矢印方向に起こっている流れを意味しており、スクリューコンベア上端より所定の高さの範囲内、例えば、ガイド3内の高さHの範囲内で一方から他方(水平方向)に向かう流れを意味し、液流の流速が他に比べて速いのが好ましい。
【0049】
比重分離液2を蓄えた分別槽1内は、トンネル型のガイド3で仕切られ、その内部を一定速度の水が流れるようになっていることが好ましい。これは、分別槽1の内部全体で液流を起こした場合、水の入り口部で乱流が発生するためである。そして、ガイド3の天面をくり抜き、その部分に筒状の投入口7が形成されている。またガイド3の排液口6付近は、テーパー構造をなし、急激な液流の変化により、渦が発生しないようになっている。トンネル型のガイド3を使用することにより、一度、分別槽1内に比重分離液2を入れ、安定した状態で、ガイド3内に比重分離液2を送りこむため、ガイド3内では、乱流の発生を最小に抑えることができる。
【0050】
ここで、液流はポンプ等を排液口6につなぎ負圧を作り出すことによって、渦の少ない流れを作ることができる。しかし、被選別物によっては、長いものが存在し、ポンプ内に長い被選別物が詰まり、ポンプが動作しなくなることがあるため、ポンプを使わずに、排液口6から、上記分別槽1内のガイド3より、水面が下にある水槽4と大径のパイプ16でつなぎ比重分離液2の位置エネルギーを利用して、液流を作り出す方法が好ましい。
【0051】
液流発生手段としては、上述した液流を発生させるためのポンプまたは位置エネルギーを利用した排液経路で構成されるが、上記ガイド3もその構成に含めても良い。
【0052】
また、比重分離液2の液面に浮く被選別物5を回収するために、投入口7の下流方向に、ガイド3の天面がくり抜かれ、その周りを被選別物5が、分別槽1のガイド3以外の場所に逃げないように、液面より高くまで突き出した筒状のガイトで囲まれた、PP(ポリプロピレン)ガイド15をつけてもよい。
【0053】
また、ガイド3内での比重分離液2の流速の最適値は、被選別物5の大きさと、投入口7から排液口6の入り口までの図1に示すLの距離、ガイド3の天面と底までのHの高さによって変化する。前記Lと前記Hの関係は、例えば、Lを長くするほど選別精度が上がり、また流速を早くする必要がある。またHを大きくするほど選別精度が上がり、また流速を遅くする必要がある。以上のことを考慮して、排出される被選別物の比重精度が高く、かつ、沈降した被選別物の最小比重が1.0〜1.1のある値になるように流速が選ばれる。具体的には100〜300mm/sec程度の範囲の速さが好ましい。
【0054】
また、循環効率等の観点からガイド3内の比重分離液2の体積に対して、被選別物5は0.1〜5%の体積で循環させることが好ましい。
【0055】
≪第1搬送手段≫
第1搬送手段は、前記液流方向に低比重の被選別物を比重差による沈降速度を利用して排液口6へ押し流すことで、低比重の被選別物を移動・回収する手段である。
【0056】
前述の液流で、低比重の被選別物を搬送する。排液口6より流れ出た前記低比重の被選別物を含む比重分離液2は、一度水槽4で蓄積される。その後、該低比重の被選別物は、ストレーナ8等で比重分別液2と分離され、その後、遠心型などの脱水機9に送られ、脱水される。
【0057】
一方上記ストレーナ8および脱水機9でプラスチックと分離された比重分離液2は、ポンプ等で分別槽1に戻される。そのことにより、比重分離液2は循環する。
【0058】
第1搬送手段は、液流発生手段で発生させた液流で構成されるが、液流とともに被選別物を搬送するパイプ16などの搬送経路および/または、被選別物と比重分離液2を分離するストレーナ8もその構成に含めても良い。
【0059】
≪第2搬送手段≫
第2搬送手段は、液流と逆方向に比重分離液2の下方に沈降した高比重の被選別物を移動させ、回収する手段である。
【0060】
比重がその比重分離液2よりも重たいものは、その比重よりも軽いもの、または、比重分離液より重たくても、沈降する時間差により液流で押し流されるもの、すなわち、上述した第1搬送手段で搬送されるものとは別に回収される必要がある。よって、本発明においては、分離対象となる被選別物において、低比重の被選別物が搬送される方向(第1搬送手段としての液流の方向)と、逆向きに高比重の被選別物を搬送する。逆向きに搬送するためには、沈降物の再浮上機構作成の容易さやメンテ周期の長さの理由から横型のスクリューコンベア10であることが好ましい。
【0061】
さらに横型のスクリューコンベア10は、液流をみださないように、リボン型であることが好ましい。また、スクリューピッチと幅は、高比重の被選別物を十分に搬送でき、かつ後述する攪拌板13を挿入できる大きさであることが好ましい。具体的には、幅10〜40mm、ピッチ50〜300mm、外径100〜200mmのリボン型スクリューコンベア10が好ましい。
【0062】
ここから以下、図1におけるII−IIの断面図である図2に基づいて説明する。
図2に示すように、駆動モータを有する横型のスクリューコンベア10は、分離槽1の底部に設けられた半円凹状のくぼみに配置されており、ガイド3の下方に配置されている。スクリューコンベア10の回転軸は、ガイド3の横幅の略中心に位置し、ガイド3の長手方向と平行となるように配置されている。
【0063】
また、図1に示すように、スクリューコンベア10の上部と、ガイド3の下部は、互いの開口部分が長手方向に沿って対向するように各々が構成されている。すなわち、ガイド3の一端から排液口6に至る他端に向かって流れる液流(第1搬送手段)とスクリューコンベア10(第2搬送手段)とは互いの搬送経路が上下に重なるように位置する。
【0064】
これにより、沈降した被選別物が再度浮上することで低比重の被選別物と高比重の被選別物を繰り返し選別するのに充分な距離を確保することができる。また、ガイド3の長手方向の長さと略同じ長さに渡って被選別物を再浮上することができるので比重分別装置の小型化が可能となる。
【0065】
高比重の被選別物は、駆動モータを有する横型のスクリューコンベア10などで、液流と逆方向に移動する。その後、高比重の被選別物は、横型のスクリューコンベア10の排出口の真下にある縦型のスクリューコンベア11の投入口に落下する。このとき、図2に示すように、横型のスクリューコンベア10の排出口と駆動モータを有する縦型のスクリューコンベア11の投入口は、水が漏れないように、両サイドがシールされた筒状のもので、つながれている必要がある。
【0066】
次に、高比重の被選別物は、縦型のスクリューコンベア11により水切りされて、排出口12より排出される。このとき、スクリューコンベア11は水平方向に対して、30〜80度縦方向に傾けることが好ましい。
【0067】
なお、縦型のスクリューコンベア11の代わりにはサン付きコンベアなどを用いても良い。
【0068】
≪沈降した被選別物を再浮上させる機能≫
ここで、第2搬送手段は、液流方向に対して逆向きに高比重の被選別物を搬送する際に、沈降した低比重の被選別物の再浮上を同時に行なうことが好ましい。
<例1>
被選別対象物として比重分離液2の比重より小さい低比重の被選別物と、比重分離液2の比重より大きい比重の高比重の被選別物が混在しているプラスチック廃材から低比重の被選別物を分離する場合を説明する。
【0069】
例えば、プラスチック廃材は、ポリプロピレン(比重:0.9)、ポリエチレン(比重:0.9)、ABS樹脂(比重:1.05)、ポリスチレン(比重:1.05)、ポリウレタン樹脂(比重:1.12)、ポリ塩化ビニル(比重:1.3)、ポリ塩化ビニリデン(比重:1.7)などの異種プラスチックの混合物であり、この中からポリプロピレンとポロエチレンを分離する場合、比重分離液2に水を用いる。液流の流速は、1mm以上100mm未満/secが好ましい。
【0070】
水より比重の小さいポリプロピレンとポリエチレンは第1搬送手段によって排液口6へ押し流されて搬送される。その他は沈降して、第2搬送手段で搬送される。
【0071】
しかしながら、プラスチック廃材を分別槽1に投入すると、比重の異なるプラスチック同士が付着しあうことがある。
【0072】
また、水の比重1より小さい低比重の被選別物(ポリプロピレン、ポリエチレン)と比重1より大きい高比重の被選別物(銅線など)が付着してしまうと低比重の被選別物が沈降してしまう。このような場合でも、第2搬送手段によって、付着しあった被選別物を再浮上させることで互いが離れて、低比重の被選別物を第1搬送手段で搬送することができる。
<例2>
被選別対象物として比重分離液2より比重の大きいプラスチック廃材から低比重の被選別物を分離する場合を説明する。
【0073】
例えば、例1において、第2搬送手段で分離したプラスチック廃材を用いて説明する。このプラスチック廃材は、ABS樹脂(比重:1.05)、ポリスチレン(比重:1.05)、ポリウレタン樹脂(比重:1.12)、ポリ塩化ビニル(比重:1.3)、ポリ塩化ビニリデン(比重:1.7)などの異種プラスチックの混合物であり、この中から、低比重の被選別物として、ABS樹脂とポリスチレンを分離する。比重分離液2に水を用いる。液流の流速は、100mm以上300mm以下/secとするのが好ましい。
【0074】
沈降の時間差によって、水の比重に近いABS樹脂やポリスチレンなどの低比重の被選別物は第1搬送手段によって排液口6へ押し流されて搬送されるが、一部が沈降してしまう。このような場合でも、第2搬送手段によって、低比重の被選別物を再浮上させることで、第1搬送手段で搬送することができる。その他は沈降して、第2搬送手段で搬送される。
【0075】
このように、液流の速度を変えることで、比重分離液2の比重より小さい低比重の被選別物と、比重分離液2の比重より大きい比重の高比重の被選別物とに分別することができる。さらに、比重分離液2より比重の大きい被選別対象物を低比重の被選別物と高比重の被選別物に分別することもできる。
【0076】
上述した通り、比重分離液2に沈降した被選別物には、高比重のものばかりではなく、低比重のものも含まれる。
【0077】
特に、例2に示したプラスチック廃材を選別対象とした場合において、1回目の沈降した被選別物つまり、再浮上を一度も行なわないで排出口12から回収した被選別物には、比重1.0〜1.1の被選別物を30〜60%含んでいるため、液流と逆方向に移動する間に、再浮上させ、比重1.0〜1.1の被選別物を回収し、その回収率を上げる必要がある。
【0078】
そこで本発明では、沈降した高比重の被選別物の搬送と、沈降した低比重の被選別物の再浮上による分別を同時に数回行なう。比重分離の効率は上昇し、同時に沈降した被選別物を取り出すことも可能で全体としても効率が良いからである。再浮上は、上記スクリューコンベア10に取り付けた攪拌板13によって行なうことが好ましい。
【0079】
以下、第2搬送手段の詳細な構成について、図2におけるスクリューコンベア10を拡大した図3に基づいて説明する。本発明では、再浮上を上記スクリューコンベア10に取り付けた攪拌板13によって行なうことが好ましい。
【0080】
攪拌板13は、金属などのような、弾性のある部材で構成される。図3に示すように90度の位置でガイドに取り付けられているリブ14により、攪拌板13が水平になった時点で、攪拌板13の先端が止められる。そこで攪拌板13はたわみ、その後の軸が少し回転したところで、先端がリブ14より開放され、先端は高速で回転する。なお、攪拌板13の回転軸から先端までの長さは、スクリュー羽根の外周円の半径より長くしているため、リブ14はスクリューに干渉せず攪拌板13のみに影響を及ぼす。また、リブ14の高さは、攪拌板13を一時とめることが出来ればよく、例えば、2〜5mmのステンレスの角棒を使用することができる。また、攪拌板13は、厚さ 0.1〜0.5mm、幅20〜100mmのステンレス板を使用することができる。
【0081】
沈降した被選別物は、ガイド3のなかで液流のある部分まで上昇させられ、低比重の被選別物は、液流に乗って、排液口6から排出させる。一方、高比重の被選別物は、再浮上し、少しだけ液流に乗って液流の下流方向に流され、再び沈降する。高比重の被選別物は、再浮上しても低比重の被選別物より速く沈降するため、スクリューによって徐々に液流とは逆方向に移動するため、両者の分別が進む。
【0082】
前記再浮上を繰り返すことにより、沈降した被選別物の比重分別の精度が向上していく。なお、再浮上回数が20回を超えると、該精度は、ほぼ飽和するため、再浮上回数は20回程度がよい。
【0083】
ここで、20回程度再浮上させることは、攪拌板13と、送り方向側のスクリューとの隙間を被選別物5の大きさの1.5〜3倍程度にし、被選別物5の一部をそのまま通過させ、排出量をコントロールし、また攪拌板13を45〜70度ピッチに配置することにより達成できる。
【0084】
また、攪拌板13によって高比重の被選別物が、上昇してまた下流方向に流され、沈降するまでの間に攪拌板13によって再度浮上させられ、排液口6から流れ出ることを防ぐために、攪拌板13は、投入口7より液流の下流側で一定以上の距離を開けて設置される必要がある。液流が100〜300mm/secのとき100〜200mm以上間隔をあけることで、比重の重い物が排液口6から流れ出ることを防ぐことができる。
【0085】
また軸の回転速度は、上記リボンスクリュー羽根が、選別部の液流を大きく乱すことなく動作するには20rpm以下がよく、また、沈降した高比重の被選別物の排出量を確保するために、10rpm以上が必要である。
【0086】
なお、該再浮上は、前記スクリューコンベアとは別に分別槽1の下方に泡を発生する手段を設置することで行なっても良い。また、分別槽1の下方から垂直方向にエアを注入することで液流を発生させることで再浮上させても良い。
<比重分別装置で分別される被選別物>
本発明の比重分別装置における被選別物は、比重の異なる複数種のプラスチック廃材および/または金属廃材である。プラスチック廃材とは様々な種類のプラスチックの混合物である。このプラスチック廃材は、ポリプロピレン(比重:0.9)およびポリエチレン(比重:0.9)以外に、ABS樹脂(比重:1.05)、ポリスチレン(比重:1.05)、アクリル樹脂(比重1.19)、ポリカーボネ-ト樹脂(比重:1.20)、ポリウレタン樹脂(比重:1.12)、ポリ塩化ビニル(比重:1.3)、POM(ポリオキシメチレン、比重:1.41)、ポリ塩化ビニリデン(比重:1.7)などの異種プラスチックであり、金属廃材としては若干の銅線(比重:9)、ステンレス鋼製ビス(比重:8)、アルミニウム(比重:2.7)などが挙げられる。
【0087】
また、被選別物は、家電4品目のエアコン、テレビ、冷蔵庫、および洗濯機から選ばれる家電製品の廃棄物の破砕物であることが好ましい。
【0088】
本発明の比重分別装置に投入される被選別物は、上述した各プラスチック、各金属廃材のいずれか2つ以上が混合したものであり、破砕された廃棄物の内容によって、被選別物の内容も変化する。
【0089】
上記静比重分離工程でポリオレフィン系のプラスチックを回収された、被選別物5は、投入口7より、一定の液流が作られているガイド3に投入される。投入された被選別物5は、液流に乗って、下流方向の排液口6に運ばれる。
【0090】
この時高比重の被選別物は、浮力の差により沈み、低比重の被選別物は、底にまで沈むことなく、排液口6より、比重分離液2と共に流れでる。
【0091】
投入される被選別物5は、比重1.0以上が好ましく、低比重の被選別物には、比重1.1未満のABS樹脂(比重:1.05)、ポリスチレン(比重:1.05)などのいずれかが挙げられる。また、高比重の被選別物には、比重1.1以上のアクリル樹脂(比重1.19)、ポリカーボネ-ト樹脂(比重:1.20)、ポリウレタン樹脂(比重:1.12)、ポリ塩化ビニル(比重:1.3)、POM(ポリオキシメチレン、比重:1.41)、ポリ塩化ビニリデン(比重:1.7)などのプラスチック類および銅線、ステンレス鋼製ビス、アルミニウムのいずれかが含まれている。
<廃棄物処理システム>
図4は、本発明の廃棄物処理システムの好ましい一例を示す工程図である。廃棄物処理システムとは、前記比重分別装置による分別回収を組み込み統一された廃棄物処理の一連の流れである。
【0092】
本装置を家電4品目の廃棄物から、PS(ポリスチレン)、ABS樹脂を回収する場合に使用した1例を示す。なお、ステップ107を経た混合物が、本発明でいう図1における「被選別物5」に相当する。
【0093】
この具体例においては、まず、図4に示すように、家庭などから廃棄された使用済みの家電4品目などを回収する(ステップ101)。そして、該家電の廃棄物を解体して、コンプレッサ、熱交換器などの大型の金属部品や、洗濯機の水槽、冷蔵庫の野菜ケースなどの大型プラスチック成形品を部品ごとに回収する(ステップ102)。本発明では、このステップ102の解体において、プラスチック廃材を選択的に回収し得ることが好ましい。
【0094】
次に、大型金属部材などが回収された家電4品目の廃棄物の残りの部材を、たとえば衝式破砕装置やせん断式破砕装置などの大型破砕機で粗破砕する(ステップ103)。ステップ103における破砕物の粒径は、特に制限されるものではないが、10mm以上であるのが好ましく、40mm以上であることがより好ましい。また、破砕物の粒径は80mm以下であることが好ましく、60mm以下であることがより好ましい。破砕物の粒径が10mm未満または80mmを超える場合には、次工程での金属の選別精度が低下するという傾向があり、さらに粒径が10mm未満の場合には、破砕に長時間を要するため、プラスチックが溶融あるいは熱酸化劣化を起こすという傾向があり、また、粒径が80mmを超えると、嵩比重が小さくなり以後の工程での作業性に悪影響を及ぼすという傾向がある。具体的には、粒径が60mm程度となるように破砕するのが特に好ましい。なお、コンプレッサ、熱交換器をはじめとする大型の金属部材などの破砕が困難な部材は、予め分解してプラスチック部材を含む廃棄物から取り外しておいてもよい。
【0095】
続いて、該家電の廃棄物の破砕物を、鉄、銅、アルミニウムなどで形成された金属系破砕物とプラスチック系破砕物に分別する(ステップ104)。当該ステップにおける破砕された廃棄物を金属系破砕物とプラスチック系破砕物との分別には、たとえば、鉄の分別に適した磁力を用いた分別装置、アルミニウムや銅の選別に適した渦電流を用いた分別装置、粒度を均一にしてふるいにかけるトロンメル装置などを好適に用いることができる。
【0096】
次に、金属系破砕物を分別(ステップ104)した後のプラスチック系破砕物より、低嵩比重破砕物をさらに分別することが好ましい(ステップ105)。ここで、低嵩比重破砕物とは、嵩比重が0.3以下の破砕物を意味する。低嵩比重破砕物の具体例としては、ポリウレタン系断熱材の破砕物や発泡スチロール系の破砕物などが挙げられる。この低嵩比重破砕物は、特に限定はされないが、風力による選別を行なうことが好ましい。したがって、風力分別装置を用いられることが好ましい。他の用いることができる装置としては振動ふるい装置などが挙げられる。なお、破砕された廃棄物を金属系破砕物とプラスチック系破砕物と低嵩比重破砕物とに選別する際に、風力による選別、磁力による選別、渦電流による分別を行なう場合には、その順序は特に特に制限するものではないが、分別の効率の観点からは、まず磁力により鉄系金属破砕物を分離し、次いで渦電流によりアルミニウム系金属や銅系金属の破砕物を分別し、続いて風力により低嵩比重破砕物を分別し、残った混合プラスチック系の破砕物を、以下のステップに供することが好ましい。
【0097】
前記で得られた混合プラスチック系の破砕物は、微破砕工程(ステップ106)に供される。この微破砕は、たとえば、せん断式破砕装置を用いて行なうことができる(微破砕後のものを、以下「微破砕物」と呼ぶ。)。微破砕物の大きさに特に制限はないが、5mm以上であることが好ましく、特に8mm以上であることがより好ましい。また、この粒径は30mm以下であることが好ましく、特に20mm以下であることが好ましい。この粒径が5mm未満の場合には、破砕に長時間を要するためプラスチックが溶融あるいは熱酸化劣化を起こすという傾向があり、この粒径が30mmを超えると、加熱成形工程での作業性に悪影響を及ぼすという傾向があるためである。
【0098】
なお、本発明の比重分別方法においては、手解体(ステップ102)により回収された水槽、冷蔵庫の野菜ケースなど大型のプラスチック成形品を、上述したステップ103〜ステップ105のステップを経ることなく、そのまま微破砕工程(ステップ106)に供するようにしてもよい。
【0099】
次に、この混合物の被選別物を比重分離に供するために湿式比重分離を行なう(ステップ107)。この湿式比重分離の方法は、特に限定されず、公知の技術を用いても良い。また、本発明の比重分別装置の比重分離液に例えば、灯油などのような比重1.0以下の液体を用いることで実施されてもよい。このステップでは、比重が1.0以下のポリオレフィン系のプラスチック組成物(ポリプロピレンおよびポリエチレン)を回収する。あるいは、上述した例1のように本発明の比重分別装置を用いても良い。
【0100】
次に、ポリオレフィン系のプラスチック組成物を回収した残りの被選別物(ポリプロピレン(比重:0.9)およびポリエチレン(比重:0.9)以外のプラスチック廃材で、ABS樹脂(比重:1.05)、ポリスチレン(比重:1.05)、アクリル樹脂(比重1.19)、ポリカーボネ-ト樹脂(比重:1.20)、ポリウレタン樹脂(比重:1.12)、ポリ塩化ビニル(比重:1.3)、POM(ポリオキシメチレン、比重:1.41)、ポリ塩化ビニリデン(比重:1.7)などの異種プラスチックであり、金属廃材としては若干の銅線(比重:9)、ステンレス鋼製ビス(比重:8)、アルミニウム(比重:2.7)から、ポリスチレン系のプラスチック組成物(ABS樹脂、ポリスチレン)を、本発明の比重分別装置で分別回収する。
【0101】
液流発生手段を有し、比重分離液として水(比重1)を蓄えた分別槽に、残りの被選別物を供給手段により投入し、比重1.0〜1.1にあるPS(ポリスチレン)、ABS樹脂など比重分離液1の比重に近い低比重の被選別物を第1搬送手段で搬送し、回収する。比重1.1より大きな高比重の被選別物は、第2搬送手段によって搬送し、回収する。比重分離液の下方に沈降した比重1.0〜1.1にある被選別物は、第2搬送手段により数回再浮上させて比重分別を繰り返し行ない、比重精度をあげることができる(ステップ108)。
【0102】
また、本発明の比重分別方法は、図3に示した各ステップの全てを備える必要はなく、また、図3に示されていないステップが必要により付加、あるいは削除されていても構わない。また、被選別物は、上述した各プラスチック廃材や各金属廃材をすべて含む必要はない。
【0103】
なお、本発明の比重分離装置における液流の流速を大きくすることで、上述したポリオレフィン系のプラスチック組成物および、ポリスチレン系のプラスチック組成物(ABS樹脂、ポリスチレン)を回収した残りの被選別物から金属を回収することも可能である。ここでは、本発明の比重分別装置を使用し、液流の流速を例えば400〜600mm/sec程度にすると、残ったプラスチック廃材(アクリル樹脂、ポリカーボネ-ト樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル、POM(ポリオキシメチレン)、ポリ塩化ビニリデン)を第1搬送手段により搬送し、銅などの金属を高比重選別物として第2搬送手段により搬送し、60%の純度で回収することができる。回収物の残りは銅線などを被服する樹脂(ポリ塩化ビニル)などである。
【0104】
また、本発明の比重分別方法の異なる実施形態として、本発明の比重分別装置を用いて、比重の異なる複数種のプラスチック廃材および/または金属廃材からなる第1の廃材(ポリオレフィン系のプラスチック組成物(ポリプロピレン、ポリエチレンなどのいずれかひとつ以上)、ポリスチレン系のプラスチック組成物(ABS樹脂、ポリスチレンなどのいずれかひとつ以上)、その他のプラスチック組成物(アクリル樹脂、ポリカーボネ-ト樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル、POM(ポリオキシメチレン)、ポリ塩化ビニリデンなどのいずれかひとつ以上))、金属廃材(銅線、ステンレス鋼製ビス、アルミニウムなどのいずれかひとつ以上)に対して、比重分離液(例えば、水)に第1の流速(例えば、1mm以上100mm未満/sec)の液流を発生させることにより、上記ポリオレフィン系のプラスチック組成物を第1の搬送手段で搬送・回収することができる。(第1の回収ステップ)
次に、上記ポリオレフィン系のプラスチック組成物が分離・回収された第2の廃材に対して、同じ比重分離液(例えば、水)を用いて、第1の流速より速い第2の流速(例えば、100mm以上300mm以下/sec)の液流を発生させることにより、上記ポリスチレン系のプラスチック組成物を第1の搬送手段で搬送・回収することができる。(第2の回収ステップ)
次に、上記ポリスチレン系のプラスチック組成物が分離・回収された第3の廃材に対して、同じ比重分離液(例えば、水)を用いて、第2の流速より速い第3の流速(例えば、400〜600mm/sec)の液流を発生させることにより、金属廃材を第2の搬送手段で搬送・回収することができる。(第3の回収ステップ)
上記比重分別方法は、上記各ステップを単独で構成しても良いし、連続させて構成しても良い。また、本発明の比重分別装置をひとつ用いて上記各ステップのいずれかを実施しても良いし、順番に実施しても良い。また、複数の比重分別装置の搬送経路(第1または第2の搬送手段)のいずれかと各比重分別装置の投入口をつなげて、連続的に実施しても良い。
【0105】
以上のことから、本発明の比重分別装置または比重分別方法によれば、同一の比重分離液を用いて、その液流を異ならせることにより、比重の異なる複数種のプラスチック廃材および/または金属廃材からなる廃材から、プラスチック組成物の系統毎に、および/または金属に分離することができる。
【0106】
よって、簡易な構成により、再商品化用途の原材料としての有価物(例えば、ポリオレフィン系のプラスチック組成物、ポリスチレン系のプラスチック組成物、金属)を、高精度で分離・回収することができる。
【0107】
≪再生プラスチック原料/成形体≫
本発明は、廃棄物処理システムによる回収物(プラスチック)から製造された再生プラスチック原料、再生プラスチック成形体を提供することができる。
【0108】
再生プラスチック原料は、ペレット状であることが好ましい。このとき、このペレットの粒径は1mm以上であることが好ましく、特に2mm以上であることがより好ましい。また、このペレットの粒径は8mm以下であることが好ましく、特に5mm以下であることがより好ましい。このペレットの粒径が1mm未満の場合には、浮遊するため作業性が低下するという傾向があり、このペレットの粒径が8mmを超えると、成形機のシリンダー内で十分に溶融しないため均一混練されないという傾向があるためである。
【0109】
なお、ペレット状の再生プラスチック原料を成形する場合、押出成形した後に、シートカット、ストランドカット、ホットエアカット、アンダーウォーターカットなどのいずれの方法により造粒してもよい。これらの造粒方法の中でも、後に射出成形により特定の形状に成形する場合には、樹脂原料の供給が円滑に行なえ、大量処理にも対応できるアンダーウォーターカットが特に好ましい。
【0110】
なお、本発明の再生プラスチック原料の形状としては、ペレット状に特に限定されるものではなく、たとえばシート状、フィルム状、パイプ状などいずれの形態であってもよく、押出成形機の種類、使用の態様あるいは求められる特性などから適宜決定すればよい。
【0111】
さらに、本発明の再生プラスチック原料には、熱安定剤や光安定剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー、銅害防止剤、抗菌剤、着色剤などの添加剤を、必要により、本発明の効果を害しない範囲の量で添加してもよい。
【0112】
再生プラスチック成形体は、プラスチックからなる部材(プラスチック部材)であってもよい。この場合、このプラスチック部材は、エアコン、テレビ、冷蔵庫および洗濯機よりなる群から選ばれる製品に用いられることが好ましい。
【0113】
前記プラスチック部材は、上記の再生プラスチック原料から、射出成形などの方法を用いて成形することができる。このとき用いる射出成形機としては、特に限定するものではないが、たとえばスクリューインライン式射出成形機、プランジャ式射出成形機などが挙げられる。
【0114】
また、このプラスチック部材の成形のステップをより簡略化するために、ペレット状などの形状を有する再生プラスチック原料を作製することなく、破砕したプラスチックを射出成形機にそのまま投入し、プラスチックからなる部材を直接作製しても構わない。
【0115】
さらに、このプラスチックからなる部材は、熱安定剤や光安定剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー、銅害防止剤、抗菌剤、着色剤などの添加剤を、必要により、本発明の効果を害しない範囲の量で添加した上で成形して作製してもよい。これらの添加剤を添加するステップとしては、押出成形機または射出成形機への上記の再生プラスチック原料または破砕したプラスチックの投入時が好ましい。
【実施例】
【0116】
<実施例1>
図1に基づいて以下の実施例を説明する。
【0117】
粒径14mm以下の混合プラスチック系の破砕物を被選別物5として、本発明の比重分別装置で分別を行なった。被選別物は、ABS樹脂(比重:1.05)、ポリスチレン(比重:1.05)、ポリウレタン樹脂(比重:1.12)、ポリ塩化ビニル(比重:1.3)、ポリ塩化ビニリデン(比重:1.7)などの異種プラスチックがおよび若干の銅線、ステンレス鋼製ビス、アルミニウムが含まれていた。比重分離液2は水(比重:1)を用いた。
【0118】
投入口7から排液口6の入り口までのLの距離は、330mmとし、またガイド3のHの高さは130mmとしたところ、流速は、251mm/secが最適値となった。
【0119】
このとき1度も沈むことなく排液口6から排出される破砕片は、比重1.0〜1.1であるプラスチックの総量の55%であり、またその比重精度は、98%であった。
【0120】
したがって、1回目の沈降した被選別物、つまり、排出口12から回収した被選別物は、比重1.0〜1.1の破砕片を45%含んでいるため、液流と逆方向に移動する間に、再浮上させ、比重1.0〜1.1の破砕片を回収し回収率を上げた。
【0121】
横型のスクリューコンベア10にはここでは、幅30mm、ピッチ150mm、外径200mmのリボン型のものを使用した。
【0122】
ここで、再浮上は、上記スクリューコンベア10に取り付けた攪拌板13によって行なった。攪拌板13はスクリューコンベア10の軸に取り付けた。攪拌板13と、送り方向側のスクリューとの隙間を破砕片の大きさの2倍程度にし、破砕片の一部をそのまま通過させ、排出量をコントロールし、また攪拌板13の枚数を8枚、60度ピッチに配置することにより、沈降した被選別物を効率よく20回再浮上させることができた。
【0123】
また、攪拌板13によって高比重の被選別物が、上昇してまた下流方向に流され、沈降するまでの間に攪拌板13によって再度浮上させられ、排液口6から流れ出ることを防ぐために、攪拌板13は、投入口より下流側で150mm以上間隔の距離を開けて設置した。
【0124】
また、軸の回転速度は、上記リボンスクリュー羽根が、液流を大きく乱すことなく動作し、かつ、沈降した高比重の被選別物の排出量を確保するために、15rpmにした。
【0125】
また、攪拌板13は、厚さ0.3mm、幅40mmのステンレス板を用い、前記リブには3mmのステンレスの角棒を使用した。
【0126】
上記条件で比重分別装置を使用することにより、比重1.0〜1.1にあるプラスチック(ABS樹脂、ポリスチレン)を排液口6から排出させて、比重精度98%、回収率85%で回収することができた。
【0127】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の比重分別装置によれば、小規模な再浮上手段で、沈降した被選別物を再浮上する回数を増やすことが可能となり、省エネルギーで省スペースかつ高精度な比重分別が可能となる。また、扱いが容易な水を使うことができるため、低コストな装置を供給できる。
【0129】
また、上記比重分別装置を用いることで市場から回収されたプラスチック廃材からマテリアルリサイクルにより得られる、高精度な再生プラスチック原料または再生プラスチック成形体を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の一実施形態である比重分別装置の断面図である。
【図2】図1におけるII−II断面図である。
【図3】図2におけるスクリューコンベア10を拡大した図である。
【図4】本発明の比重分別方法の一実施形態を示す工程図である。
【符号の説明】
【0131】
1 分別槽、2 比重分離液、3 ガイド、4 水槽、5 被選別物、6 排液口、7 投入口、8 ストレーナ、9 脱水機、10,11 スクリューコンベア、12 排出口、13 攪拌板、14 リブ、15 PPガイド、16 パイプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被選別物を比重の差によって低比重の被選別物と高比重の被選別物を分別回収する比重分別装置において、
(a)比重分離液を蓄えた分別槽と、
(b)該分別槽に被選別物を供給する供給手段と、
(c)前記比重分離液に実質的に水平方向の液流を発生させる液流発生手段と、
(d)前記液流方向に低比重の被選別物を移動する第1搬送手段と、
(e)前記液流と逆方向に、比重分離液の下方に沈降した高比重の被選別物を移動する第2搬送手段
を備えた比重分別装置。
【請求項2】
比重分離液の下方に沈降した低比重の被選別物を再浮上させる機能を有する請求項1に記載の比重分別装置。
【請求項3】
前記被選別物が、比重の異なる複数種のプラスチック廃材および/または金属廃材の破砕物である請求項1に記載の比重分別装置。
【請求項4】
前記被選別物がエアコン、テレビ、冷蔵庫および洗濯機からなる群から選ばれる家電製品の廃棄物の粉砕物である請求項1に記載の比重分別装置。
【請求項5】
前記比重分離液と前記低比重の被選別物と前記高比重の被選別物の各比重差は、
低比重の被選別物<比重分離液<高比重の被選別物、または、比重分離液<低比重の被選別物<高比重の被選別物である請求項1に記載の比重分別装置。
【請求項6】
前記液流は、前記分別層に付設された排出口の負圧により発生させる請求項1に記載の比重分別装置。
【請求項7】
前記液流は、前記分別槽内に実質的に水平方向に設けられたトンネル型のガイド内に発生させる請求項1に記載の比重分別装置。
【請求項8】
前記第2搬送手段が、スクリューコンベアである請求項1または2に記載の比重分別装置。
【請求項9】
前記スクリューコンベアのスクリューが、リボン状羽根を螺旋状に巻いたものである請求項8に記載の比重分別装置。
【請求項10】
前記スクリューと同期し、スクリューガイド内周面に沿って回転する攪拌板を1つ以上設ける請求項9に記載の比重分別装置。
【請求項11】
前記攪拌板の回転軸から先端までの長さが、スクリュー羽根の外周円の半径より長い請求項10に記載の比重分別装置。
【請求項12】
回収した前記被選別物を脱水するための脱水機を組み込んだ請求項1に記載の比重分別装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の比重分別装置を用いた被選別物の分別回収方法。
【請求項14】
被選別物を比重の差によって低比重の被選別物と高比重の被選別物を分別回収する比重分別方法において、
比重分離液の一方から他方に流れる液流に前記被選別を供給する供給ステップと、
前記液流により前記他方まで移動する前記被選別物中の低比重の被選別物を搬送する第1搬送ステップと、
前記比重分離液の下方に沈降した前記被選別物中の高比重の被選別物を、前記液流の流れと逆方向に搬送する第2搬送ステップとを有する比重分別方法。
【請求項15】
前記第2搬送ステップにおいて、沈降した前記被選別物に含まれる低比重の被選別物を前記液流まで再浮上させる請求項14に記載の比重分別方法。
【請求項16】
請求項1に記載の比重分別装置を組み込んでなる廃棄物処理システム。
【請求項17】
請求項16に記載の比重分別装置を組み込んでなる廃棄物処理システムにおいて、
被選別物を風力にて選別を行った後、請求項1に記載の比重分別装置を組み込むことを特徴とする分別回収方法。
【請求項18】
請求項16に記載の比重分別装置を組み込んでなる廃棄物処理システムにおいて、
被選別物を別の湿式比重選別を行った後、請求項1に記載の比重分別装置を組み込むことを特徴とする分別回収方法。
【請求項19】
請求項16に記載の廃棄物処理システムで回収されたプラスチックからなる再生プラスチック原料。
【請求項20】
請求項16に記載の廃棄物処理システムで回収されたプラスチックからなる再生プラスチック成形体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−244945(P2007−244945A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68889(P2006−68889)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】