説明

毛管エアロゾル発生器のためのヒートキャパシタ

毛管エアロゾル発生器、そのための構成要素、及びエアロゾルを発生させる方法を提供する。毛管エアロゾル発生器のためのヒートキャパシタは、毛管エアロゾル発生器の毛管通路(10)において液体材料を揮発させるのに十分な温度にほぼ等しい温度で相変化する相変化材料(40)を含む。相変化材料は熱を蓄え、これは、所定時間にわたって連続的又は断続的にエアロゾルを発生させるために使用することができる。時間と共にエアロゾルを発生させるために相変化材料に蓄えられた熱を使用すると、大きなエネルギ源から離れた毛管エアロゾル発生器の作動が可能になる。毛管エアロゾル発生器とエアロゾルを発生させる方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛管エアロゾル発生器、そのための構成要素、及びエアロゾルを発生させる方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】US−A−5、743、251
【特許文献2】US−A−2005/0235991
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一実施形態によれば、毛管エアロゾル発生器のためのヒートキャパシタは、毛管エアロゾル発生器の毛管通路において液体材料を揮発させるのに十分な温度にほぼ等しい温度で相変化する相変化材料を含む。
別の実施形態によれば、エアロゾルを発生させる方法は、ヒートキャパシタを含む毛管エアロゾル発生器を使用し、本方法は、相変化材料に相変化させるために相変化材料に十分なエネルギを供給する段階と、毛管通路に液体材料を供給する段階とを含む。相変化材料は、毛管通路を通じて液体材料に十分な熱を供給し、毛管通路において液体材料を揮発させる。
更に別の実施形態では、毛管エアロゾル発生器は、毛管通路と、毛管通路において液体材料を揮発させるのに十分な温度にほぼ等しい温度で相変化する相変化材料を含むヒートキャパシタとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】ヒートキャパシタとしての機能を果たす相変化材料を含む毛管エアロゾル発生器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
相変化材料を含んで毛管エアロゾル発生器と共に使用するヒートキャパシタを本明細書において開示する。本明細書で使用する場合、「毛管エアロゾル発生器」という表現は、本明細書においてその全開示内容が引用により組み込まれているUS−A−5、743、251に説明されるような毛管エアロゾル技術のことを意味する。必要に応じて、毛管は、本明細書においてその全開示内容が引用により組み込まれているUS−A−2005/0235991に説明されるような出口端において狭窄部を含むことができる。
【0006】
具体的には、毛管エアロゾル発生器は、入口及び出口を有する毛管通路を含む。相変化材料は、毛管通路の少なくとも一部分に隣接してではあるが、好ましくは、加熱区域を通して均一に熱移送を最大にするように毛管通路の周辺に加熱区域をもたらす方法で位置決めされる。例えば、相変化材料は、好ましくは、毛管通路の少なくとも一部分を取り囲む。相変化材料は、好ましくは、管状ハウジング内に収容されている。管状ハウジングは、好ましくは、相変化材料、特にそれが液相である時の相変化材料と毛管通路との間で接触を保つような大きさにされる。管状ハウジングは、好ましくは、絶縁することができて導線が接続された加熱ワイヤで包まれる。導線は、電源、好ましくは、バッテリのような直流電源に接続され、又は電源ソケットのような交流電源に接続することができる。好ましい相変化材料は、例えば、錫及び/又は銀及び/又はアンチモン及び/又は銅及び/又はビスマスの様々な濃度による錫ベースの半田を含む。
【0007】
電力は、電源ソケットから供給することができるが、電源はまた、交換可能及び充電可能にすることができ、コンデンサ又はより好ましくはバッテリのような装置を含むこともできる。携帯式用途の場合、電源は、1つ又はそれよりも多くの電池のような交換可能充電可能バッテリ、例えば、全無負荷電圧がほぼ4.8Vから5.6Vで直列に接続したリチウム又はニッケルカドミウムバッテリ電池とすることができる。しかし、電源に必要な特性は、毛管エアロゾル発生器の他の構成要素の特性を考慮して選択される。
【0008】
作動中に、導線が電源から管状ハウジングの周辺に包まれた加熱ワイヤまで電力を移送し、それによって相変化材料を加熱して、相変化材料を例えば固相から液相に変える。従って、形成された液相は、液相が固相に戻る時に放出されるべきエネルギを蓄えている。加熱された時に、相変化材料は、毛管通路のその部分に熱を移送するので、加熱された毛管通路に取り入れられた液体材料を揮発させるのに十分な温度まで毛管通路のその部分を加熱する。加熱された毛管通路に取り入れられた液体材料は、揮発して毛管通路の出口から追い出される。揮発した材料は、毛管通路外の外気と混合し、凝縮エアロゾル又はそうでないこともあるエアロゾルを形成する。
【0009】
毛管エアロゾル発生器の構成要素次第で変わることがある加熱ワイヤは、それが周囲を包んでいる管状ハウジングを適切に加熱するような特性を有する。例えば、加熱ワイヤは、絶縁され、及び/又は0.2mm(0.008インチ)の外径、43Ω/m(13.1オーム/フィート)の抵抗、及び460J/kg/K(0.110BTU/1b−°F)の比熱を有することができる。加熱ワイヤの組成は、例えば、71.7%鉄、23%クロム、及び5.3%アルミニウムとすることができる。そのような加熱ワイヤは、コネチカット州ベーテル所在の「Kantha1 Furnace Products」から入手可能である。
【0010】
毛管通路は、好ましくは、0.05mmと0.53mmの間の内径を有する。毛管通路の特に好ましい内径は、約0.1mmである。毛管通路は、石英ガラス又はケイ酸アルミニウムセラミックで構成することができる一方、反復加熱サイクル及び発生圧力に耐えることができ、かつ適切な熱伝導特性を有する他の実質的に非反応性の材料も使用することができる。望ましい場合又は必要に応じて、毛管通路の壁に材料が貼り付いて詰まりをもたらすことがある傾向を弱めるために、毛管通路の内壁にコーティングを設けることができる。毛管通路は、好ましくは、ステンレス鋼又はガラスで構成することができる。
【0011】
液体材料は、好ましくは、液体材料の供給源に接続した毛管通路の入口を通して毛管通路の中に取り入れられる。揮発した材料は、毛管通路の出口を通して毛管通路から追い出される。
作動中に、相変化材料は、豊富なエネルギ源から相転移温度まで加熱される。従って、相変化材料は、熱を蓄え(すなわち、相変化材料が固相から液相に変わる時に、液相に蓄えられた熱は、液相が固相に戻る時に放出される)、その熱は、時間と共に、例えば、約10秒よりも長く、好ましくは、少なくとも約1分、より好ましくは、約5分又はそれよりも長い時間にわたってエアロゾルを発生させるために使用される。時間と共にエアロゾルを発生させるために相変化材料に蓄えられた熱を使用すると、大きなエネルギ源から離れた毛管エアロゾル発生器の作動が可能になる。小さなエネルギ源、例えば、小さなバッテリを使用して、エアロゾルを発生させる際に失われたエネルギ又は使用されたエネルギを補充し、好ましくは、相変化材料を液相に維持するために相変化材料に補助エネルギを供給することができる。補助エネルギは、例えば、管状ハウジング周辺に包まれた加熱ワイヤを通して少量の電気エネルギをパルス駆動で送ることにより供給することができる。
【0012】
相変化材料は、好ましくは、毛管エアロゾル発生器の毛管通路において液体材料を揮発させるのに十分な温度にほぼ等しい温度で相変化する。特に、本明細書で使用する場合、「ほぼ等しい」は、好ましくは、液体材料を揮発させるのに十分な温度に対して液体材料を揮発させるのに十分な温度よりも30℃高い温度範囲、より好ましくは、液体材料を揮発させるのに十分な温度に対して液体材料を揮発させるのに十分な温度よりも20℃度高い温度範囲、更に好ましくは、液体材料を揮発させるのに十分な温度に対して液体材料を揮発させるのに十分な温度よりも10℃高い温度範囲を意味する。
【0013】
図を参照すると、毛管エアロゾル発生器の毛管通路10は、上述のように入口30と出口20を有する。毛管通路10は、相変化材料40によって取り囲まれている。相変化材料40の温度は、熱電対50の使用によってモニタすることができる。相変化材料40は、好ましくは、管状又は管のようなハウジング60内に収容されている。管状ハウジング60は、好ましくは、加熱ワイヤに包まれている。導線70が、好ましくは、加熱ワイヤに取り付けられる。好ましくは、管状ハウジング60は、絶縁シース80によって取り囲まれる。
【0014】
実施例
以下の実施例は、例示として示すが制限するものではない。
【0015】
〔実施例1〕
プロピレングリコールは、ほぼ190℃で気化/沸騰するので、融点がほぼ230℃に等しい相変化材料は、プロピレングリコールをエアロゾル化するのに十分なエネルギを供給すると考えられる。98%錫−2%銀の合金から得られる示差走査熱量測定法は、融解熱が55J/gで融点が221℃であることを明らかにした。従って、98%錫−2%銀半田が、図の管状ハウジング内に置かれた。毛管通路は、ステンレス鋼管であった。半田は、加熱ワイヤを通じて導線を通して管状ハウジングに16ワットの電力を供給することにより、熱電対による測定で237℃の温度に加熱された。半田が237℃の温度に10秒間保持された後に、管状ハウジングに対する電力が切られた。ポンプは、毛管に0.1ミリリットル/分の率でプロピレングリコールを供給した。エアロゾルは、能動加熱器ではなく半田に蓄えられた熱により1分にわたって発生した。
【0016】
〔実施例2−5〕
記録された重量の半田が、図の管状ハウジングに置かれた。半田は、半田が毛管周辺で均一に流れ、かつ冷却されて固体状になった時に毛管と密接な接触を続けるように、その融点よりも高い温度に加熱された。半田は、管状ハウジングの周辺に包まれている加熱ワイヤに電流を通すことによって加熱された。半田の温度がその融点に達すると、半田及び結果的にステンレス鋼管の温度は、半田の全てが溶融するまでかなり一定に保たれた。半田の全てが溶融した状態で、加熱の継続は、半田の温度をその融点温度を超えて加熱器の温度まで上昇させるであろう。従って、半田の温度が上昇し始めて完全な液状化を示すと、電流が切られて一定質量流量で毛管にプロピレングリコールを供給するポンプが始動された。時間、半田の温度、及び目視で観察されたエアロゾル品質がモニタされた。結果は、表1及び表2に見ることができる。
【0017】
(表1)

【0018】
(表2)

【0019】
実施例4では、半田は、その融点を十分に超えて加熱された。半田の融解熱から理論的に利用可能なエネルギは、約235J(61J/gx3.858g)であった。しかし、観察された131秒にわたるプロピレングリコールの揮発のために必要なエネルギは、235Jを上回り、より具体的には270Jであった。従って、プロピレングリコールが揮発する間に観察された131秒は、予期した値(すなわち、235J/1.2J/mg/1.72mg/s=114s)よりも長かった。いかなる理論にも束縛されるのは望まないが、プロピレングリコールの全ては、その期間中に揮発したものと考えられるので、半田から利用可能エネルギが61J/gのその融解熱を超えたと更に考えられる。実施例4でエネルギ損失がないと仮定すれば、半田は、プロピレングリコールの全てを揮発させるために70J/g(270J/3.858g)を提供すべきであり、従って、半田は、恐らく70J/gよりも多くを提供したであろう。従って、融解熱の列挙した値は、半田によって供給されたエネルギの最小値を提供する。融点を超えた半田の加熱は、不満足なエアロゾル形成をもたらすことがあり、それは、目視観察又はプロピレングリコールの分解による臭いによって識別することができる。
【0020】
上述の管状ハウジング構成において所定質量の既知の半田を使用して、電力損失、すなわち、プロピレングリコールに移送されなかった電力を判断するために、プロピレングリコール流量のない(すなわち、液体が毛管に供給されない)実施例5が行われた。半田が加熱され、半田の温度がその融点に達すると、半田の全てが溶融するまで半田の温度はかなり一定に保たれた。半田の温度が上昇し始めて完全な液状化を示すと、電流が切られてタイマが始動された。半田の温度が上昇し始めた時に電流が切られたので、半田は、その融点を超えて加熱されなかったはずであり、半田から利用可能なエネルギは、その融解熱61J/gに等しいと考えられる。タイマは、半田が再度その融点に等しい温度に達した時に止められた。従って、実施例5の場合、1.4Wの電力損失を計算することができる。従って、理論電力要件は、同じ管状ハウジング構成の既知の半田の同じ質量を使用して、プロピレングリコールの所定質量を揮発させる計算電力要件に計算電力損失を加えることによって計算することができる。
【0021】
以上の実施例は、ポリプロピレングリコールからのエアロゾル形成を開示するものであるが、毛管エアロゾル発生器の構成要素としてのヒートキャパシタの使用は、それに限定されず、上述のようにその使用が大きなエネルギ源から離れた毛管エアロゾル発生器の作動を可能にするので、様々なエアロゾル送出用途で有用であろう。例えば、ヒートキャパシタは、吸入器用途、例えば、薬剤送達に対して有用である場合がある。更に、ヒートキャパシタは、例えば、喫煙体験を模擬するのに使用することができる香味付けしたエアロゾルを発生させるために使用することができる。
様々な実施形態を開示したが、当業者には明らかなように変形及び修正に訴えることができることは理解されるものとする。そのような変形及び修正は、特許請求の範囲の要項及び範囲内であると見なすものとする。
【符号の説明】
【0022】
10 毛管通路
40 相変化材料
60 管状ハウジング
70 導線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛管エアロゾル発生器の構成要素であって、
毛管エアロゾル発生器の毛管通路において液体材料を揮発させるのに十分な温度にほぼ等しい温度で相変化する相変化材料を含むヒートキャパシタ、
を含むことを特徴とする構成要素。
【請求項2】
前記相変化材料は、錫、銀、アンチモン、ビスマス、銅、及びその組合せから成る群から選択された1つ又はそれよりも多くの金属を含む半田を含むことを特徴とする請求項1に記載の構成要素。
【請求項3】
前記半田は、98%錫−2%銀合金を含むことを特徴とする請求項2に記載の構成要素。
【請求項4】
前記相変化材料は、前記毛管通路を取り囲んでいることを特徴とする請求項1に記載の構成要素。
【請求項5】
前記相変化材料は、管のようなハウジング内に収容されていることを特徴とする請求項1に記載の構成要素。
【請求項6】
前記管状ハウジングは、導線が接続された加熱ワイヤで包まれていることを特徴とする請求項5に記載の構成要素。
【請求項7】
通路における液体材料がそこにある該液体材料の少なくとも一部を揮発させるために加熱された時に、エアロゾルを形成するようになった毛管通路と、
前記毛管通路と熱接触している相変化材料を含むヒートキャパシタと、
を含み、
前記相変化材料は、前記毛管通路において液体材料を揮発させるのに十分な温度にほぼ等しい温度で相変化する、
ことを特徴とする毛管エアロゾル発生器。
【請求項8】
前記相変化材料は、錫、銀、アンチモン、ビスマス、銅、及びその組合せから成る群から選択された1つ又はそれよりも多くの金属を含む半田を含むことを特徴とする請求項7に記載の毛管エアロゾル発生器。
【請求項9】
前記相変化材料は、固相から液相に変わり、前記毛管通路の少なくとも一部分を取り囲み、かつ導線が半田付けされた加熱ワイヤで包まれた管状ハウジング内に収容されていることを特徴とする請求項7に記載の毛管エアロゾル発生器。
【請求項10】
請求項1に記載のヒートキャパシタを含む毛管エアロゾル発生器を使用してエアロゾルを発生させる方法であって、
相変化材料を第1の相から第2の相に相変化させるために該相変化材料に十分なエネルギを供給する段階と、
毛管通路に液体材料を供給する段階と、
を含み、
前記相変化材料は、前記毛管通路において液体材料を揮発させるために、該毛管通路における該液体材料に十分な熱を供給し、
揮発した液体材料は、前記毛管通路から追い出されて外気と混合し、エアロゾルを形成する、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記相変化材料にエネルギを供給する段階は、該相変化材料を収容する管状ハウジングを加熱する段階を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記相変化材料は、固相から液相に変わることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記液相は、前記毛管通路に熱を移送することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記液相は、前記毛管通路において液体材料を揮発させるのに十分な温度におけるものであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記液相は、該液相の能動加熱なしに約10秒よりも長い時間にわたって前記毛管通路において液体材料を揮発させるのに十分な温度を維持することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記液相は、該液相の能動加熱なしに少なくとも約1分にわたって前記毛管通路において液体材料を揮発させるのに十分な温度を維持することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記相変化材料に補助エネルギを供給する段階を更に含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記相変化材料に補助エネルギを供給する段階は、前記液相を維持することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
熱電対で前記相変化材料の温度をモニタする段階を更に含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。

【公表番号】特表2010−504212(P2010−504212A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529795(P2009−529795)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【国際出願番号】PCT/IB2007/003701
【国際公開番号】WO2008/038144
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(596060424)フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム (222)
【Fターム(参考)】