説明

毛髪処理方法

【課題】 毛髪の処理方法であって、毛髪の増大効果と持続性を高めるようにし、さらに毛髪のキューティクルのキメを簡便に整えて修復する。
【解決手段】 洗髪した毛髪を乾燥させ、毛髪に蛋白質と毛髪還元性薬剤を主成分とする第1処理剤を塗布し、毛髪を櫛やコーム等で梳いて毛髪に第1処理剤を馴染ませる。つぎに、毛髪全体にナノ化したスチームを噴霧したのちに、毛髪に蛋白質と毛髪酸化性薬剤を主成分とする第2処理剤を塗布し、毛髪を櫛等で梳いて毛髪に第2処理剤を馴染ませる。つぎに、ナノ化したスチームを毛髪全体に噴霧したのちに、毛髪に塗布した第1処理剤と第2処理剤を洗い流して、これを乾燥させる。第1処理剤と第2処理剤に含有される蛋白質を、加水分解ケラチン及び/または加水分解シルク蛋白質とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細くなった毛髪を太くしてハリやコシを与えるにあたり、毛径の増大効果とハリやコシの持続性がある毛髪にすること、また傷んだ毛髪においてはキューティクルのキメを整えて修復する毛髪の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に頭髪の脱毛により、頭皮が透けて見えるような人の毛髪は細く柔らかくハリやコシがない場合が多く、頭部の薄毛状態が第三者から視認され易い。この様な状態を隠蔽するために、頭髪に人工毛髪などを直接結びつける方法が開示されている(特許文献1)。
【0003】
一方、毛髪にハリやコシを持たせて頭髪全体のボリュームアップさせることも行われている。毛髪のハリ・コシを持たせる手段として、毛髪表面に皮膜を形成する方法や、蛋白質などを塗布する方法、毛髪内部に無機物質や蛋白質などを含浸させる方法が知られている。
【0004】
毛髪表面に皮膜を形成する方法としては、増毛成分液剤と耐水性樹脂の被膜部材を毛髪に塗布したのちにドライヤで乾燥して定着させる(特許文献2)。蛋白質を塗布する方法としては、加水分解ケラチンなどを化粧品に含有させたものを塗布して乾燥する(特許文献3)。毛髪内部に無機物質や蛋白質などを含浸させる方法として、金属イオンと塩を形成する成分を毛髪に含浸したのちに反応させて金属塩として毛髪内部にとどめる(特許文献4)、パーマネントウェーブ処理の際に毛髪にケラチン蛋白質の加水分解物を使用する(特許文献5)。
【特許文献1】特許第3191071号公報
【特許文献2】特開2005−194210号公報
【特許文献3】特開2006−70019号公報
【特許文献4】特開平1−233208号公報
【特許文献5】特開平11−139941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらこれら特許文献2〜5の方法は、一時的には毛髪にハリやコシを与えるが、毛髪とハリ・コシ発現物質との結合関係が介在していないので、毛髪に付着あるいは含浸させた物質の脱離や流出が起こり易く、例えば1回の洗髪で元の状態に戻ってしまう可能性が高い。
また、毛髪に付着あるいは含浸している処理剤の絶対量が少ないので、毛髪の太さには殆ど変化がなく処理後の実感も薄く、毛髪の増大効果は少ない。さらにこれらの方法で所望の太さやボリューム感を得ようとすれば、毛髪に大量の処理剤を付着あるいは含浸させる必要があり、その結果、毛髪の風合いや表面光沢が変化して、処理をすることで不自然になってしまう。
一方、例えばパーマネントウェーブ処理や毛染めなどの毛髪の加工においては、毛髪の太さやパーマネントウェーブ処理、毛染めの履歴などの損傷状態に応じて使用薬剤の選定、処理温度及び時間を調節することが一般的に行われている。しかしながら、所望の仕上がりにするためには、適正な使用薬剤の選定、処理温度並びに時間の調節にはかなりの熟練度が要求される。
【0006】
そこで本発明は、毛髪の太さやダメージの程度に拘わらず、毛髪増大効果の発現物質となる蛋白質との間で結合を介在させて、毛髪の増大効果と持続性を容易に高めることができ、また毛髪のキューティクルのキメを簡便に整えて修復することのできる毛髪の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を達成するため、本発明の毛髪の処理方法は、洗髪した毛髪を乾燥させ、該毛髪に蛋白質と毛髪還元性薬剤とを主成分とする第1処理剤を塗布して、毛髪を櫛やコーム等で梳いて第1処理剤を毛髪に馴染ませ、該毛髪の全体にナノ化したスチームを噴霧したのち、前記毛髪に蛋白質と毛髪酸化性薬剤とを主成分とする第2処理剤を塗布して、毛髪を櫛等で梳いて第2処理剤を毛髪に馴染ませ、該毛髪の全体にナノ化したスチームを噴霧したのち、前記毛髪に塗布した第1処理剤と第2処理剤とを洗い流して、これを乾燥させるとともに、前記第1処理剤と第2処理剤に含有される蛋白質を、加水分解ケラチン及び/または加水分解シルク蛋白質としたことを特徴としている。
【0008】
第1処理剤の塗布から該第1処理剤の塗布直後のナノ化したスチームの噴霧が終了するまでの時間と、第2処理剤の塗布から該第2処理剤の塗布直後のナノ化したスチームの噴霧が終了するまでの時間を、それぞれ20〜30分間とすることが好ましい。さらに本発明の加水分解シルク蛋白質として加水分解セリシンが適当である。
また、ナノ化したスチームの粒子径を0.2〜2nmの範囲で混在させること、ナノ化したスチームを毛髪に噴霧する段階において、スチーム噴霧時の毛髪表面上の温度を40〜60℃とすること、ナノ化したスチームを毛髪に噴霧する噴霧時間を、第1処理剤と第2処理剤塗布後のいずれも7〜13分とすることがより好ましい。
【0009】
さらに、第1処理剤または第2処理剤を毛髪に塗布して馴染ませる段階において、所望のへアスタイルを作りながら櫛を梳かすこと、洗髪に用いるシャンプーのPHを5〜8.5とすること、がより好ましい。
【0010】
本発明の毛髪増大処理に使用する第1処理剤は、蛋白質と毛髪還元性薬剤とを主成分とし、同じく本発明の毛髪増大処理に使用する第2処理剤は、蛋白質と毛髪酸化性薬剤とを主成分としている。第1処理剤の毛髪還元性薬剤としては、チオグリコール酸またはその塩、システインまたはその塩、システアミン、アセチルシステイン、チオ乳酸等が用いられ、第2処理剤の毛髪酸化性薬剤としては、過酸化水素、臭素酸塩等が用いられる。 さらに第1処理剤及び第2処理剤に含まれる蛋白質は、平均分子量が200〜30,000の加水分解ケラチンと、平均分子量が5,000〜30,000の加水分解セリシンが1〜70%重量程度配合されることが適当である。
【0011】
第1処理剤に毛髪還元性薬剤を配合することで毛髪が還元され、第1処理剤に含まれる加水分解ケラチン及び/または加水分解セリシンが毛髪に吸着し易くなる。さらに第2処理剤に毛髪酸化性薬剤を配合することで、第2処理剤の塗布で毛髪に吸着した加水分解ケラチン及び/または加水分解セリシンが結合すること、第2処理剤に含まれる加水分解ケラチン及び/または加水分解セリシンが毛髪に吸着し易くなることで、増大効果が向上する。また、第1及び第2処理剤に加水分解セリシンを配合させるのは、セリシンには他の蛋白質との吸着性が優れているために毛髪に吸着し易く、且つ第1及び第2処理剤に配合されている加水分解ケラチンを引き付け易く、毛髪とより強固な結合を作り易いので増大及びその持続性効果が効率良く現れる。
【0012】
また、本発明の方法で最初に行う毛髪の洗髪では、PH5〜8.5の弱酸性から弱アルカリ性のシャンプーを用いるとよい。シャンプーがPH8.5以上の強アルカリ性であると、毛髪のキューティクルが過度に開いてしまい、後の工程で浸透させる蛋白質の流出が大きくなって毛髪の増大効果が得られにくくなる。逆にシャンプーがPH5未満の酸性であると、毛髪のキューティクルの開きが少なくなるので、後の工程で浸透させる蛋白質が浸透しづらくなり、さらに毛髪にきしみが起こり毛髪同士が絡み合い、ひどい場合には団子状に固まってしまい、スムーズに処理作業ができなくなるので、毛髪の増大効果が得られにくくなる。
【0013】
また、毛髪に塗布した第1処理剤及び第2処理剤を洗い流した後の洗髪においても、最初に行う毛髪の洗髪と同様にPH5〜8.5の弱酸性から弱アルカリ性のシャンプーを用いるとよい。シャンプーがPH8.5以上の強アルカリ性であると、毛髪のキューティクルが過度に開いてしまい、この段階では毛髪と加水分解ケラチン及び/または加水分解セリシンとの結合が不安定であり、シャンプー成分によってこの結合が切断されて流出が起きる。逆にシャンプーがPH5未満の酸性であると、毛髪にきしみが起こり毛髪同士が絡み合い、ひどい場合には団子状に固まってしまい、充分に洗髪をすることが出来なくなる。したがって、洗髪に用いるシャンプーは、PH5〜8.5の弱酸性から弱アルカリ性であることが好ましい。
【0014】
ナノ化したスチームのサイズは0.2〜2nmの範囲で混在していることが好ましい。スチームの粒子径が2nm以上では毛髪内部へ充分に浸透せずに、毛髪の膨潤状態が拡大しないので処理剤を塗布した時に毛髪への吸着量が増量せず、また粒子径が0.2nm未満であまり小さいと、毛髪に塗布したそれぞれの処理剤が乾いてしまい、毛髪内部への浸透や処理剤の活性化が阻害される。またナノ化したスチームのサイズが0.2〜2nmの範囲で、粒子径が単一の場合であると、毛髪内部への浸透及び膨潤状態が拡大する時間が掛かるため、ある一定の時間内においては毛髪の膨潤状態が拡大しないので処理剤を塗布した時に毛髪への吸着量が増量しないことから、0.2〜2nmの範囲の粒子径が混在していることが適当である。
【0015】
ナノ化したスチームを噴霧している間の毛髪の表面温度は40〜60℃が適当である。毛髪の表面温度が40℃未満では処理剤の活性化および浸透が充分に起こらず、また60℃以上にすると処理剤の活性化は促進するが、処理剤が乾燥し易くなって毛髪内部への浸透が阻害されること、温度を高くすることによってそれぞれの処理剤成分が短時間で分解してしまい毛髪の損傷を拡大する。したがって、ナノ化スチームを噴霧している間の毛髪の表面温度は40〜60℃が適当であり、この範囲での処理剤を加熱することで充分に活性化して処理が促進され、増大効果の持続性が向上し、さらに傷んだ毛髪を処理した場合には、キューティクルのキメを揃える効果も発揮される。
【0016】
ナノ化したスチームの噴霧時間は、第1処理剤塗布後と第2処理剤塗布後のいずれも7〜13分とすることがより望ましい。噴霧時間が7分未満であると、それぞれの処理剤の浸透が不足して毛髪表面付近だけに処理剤が作用することで、充分な増大効果や持続性が得られない。また噴霧時間が13分以上だと、それぞれの処理剤の活性化や毛髪への浸透は充分進行するが、処理剤成分である還元剤又は酸化剤によって、毛髪が必要以上に還元又は酸化さて劣化してしまい、処理剤の蛋白質に結合した毛髪蛋白質自身が切断して充分な増大効果が得られない。
したがって、第1処理剤塗布後と第2処理剤塗布後のスチームの噴霧時間を7〜13分とすることにより、増大効果の得られる適度な毛髪の膨潤とそれに伴う処理剤の浸透が進行して、より好ましい結果が得られる。
【0017】
本発明の処理方法において、第1処理剤の塗布から該第1処理剤の塗布直後のナノ化したスチームの噴霧が終了するまでの時間と、第2処理剤の塗布から該第2処理剤の塗布直後のナノ化したスチームの噴霧が終了するまでの時間を、それぞれ20〜30分間とすることが好ましい。つまり、前述のようにナノ化したスチームの噴霧時間を7〜13分とすると、それぞれの処理剤の塗布開始からナノ化したスチームの噴霧開始までの時間を7〜23分とするのが好ましい。それぞれの処理剤の塗布開始からナノ化したスチームの噴霧開始までの時間を7分未満にすると、処理剤の毛髪への浸透及び活性化が不十分となり、ナノ化したスチームを所定時間噴霧しても毛髪と結合する処理剤の蛋白質の重量が少なくなり、十分な増大効果は得られない。また、それぞれの処理剤の塗布開始からナノ化したスチームの噴霧開始までの時間を23分以上にすると、毛髪の膨潤が進み、さらに処理剤成分の還元剤又は酸化剤が毛髪を必要以上に劣化させてしまい、処理後の損傷が大きくなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の毛髪を増大させる処理方法によれば、第1,第2処理剤に含まれる加水分解ケラチン及び/または加水分解シルク蛋白質がハリ・コシ発現物質となって毛髪と結合するので、熟練者の手によらずとも、毛髪の太さや損傷程度に拘わらず、ハリやコシを与えつつ毛径を簡便に増大できるようになり、しかもこの増大効果を長期間よく維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一形態例を図面に基づいて説明する。
図1のフローチャートに示す通り、本形態例の毛髪の処理方法は、ステップS1で洗髪した毛髪をステップS2で乾燥させ、ステップS3で蛋白質と毛髪還元性薬剤とを主成分とする第1処理剤を毛髪に塗布したのち、第1処理剤を櫛やコーム等で梳いて毛髪に馴染ませる。第1処理剤に含まれる蛋白質は、加水分解ケラチン及び/または加水分解シルク蛋白質であり、好ましくは加水分解シルク蛋白質を加水分解セリシンとする。
【0020】
ステップS4では、毛髪にナノ化したスチームを毛髪全体に噴霧することにより毛髪に対する第1処理剤の吸着性と結着性を高める。ステップS5では、毛髪に蛋白質と毛髪酸化性薬剤とを主成分とする第2処理剤を塗布したのち、該第2処理剤を櫛やコーム等で梳いて毛髪に馴染ませる。第2処理剤に含まれる蛋白質は、第1処理剤と同様に加水分解ケラチン及び/または加水分解シルク蛋白質であり、好ましくは加水分解シルク蛋白質を加水分解セリシンとする。
【0021】
ステップS6では、毛髪にナノ化したスチームを毛髪全体に噴霧することにより毛髪に対する第2処理剤の吸着性と結着性を高める。ステップS7で毛髪に塗布した第1処理剤と第2処理剤とを洗い流し、ステップS8でこれを乾燥させる。
【0022】
次に、上記の形態例に基づいて行った実験例と比較例1〜比較例13を説明する。なお、本実験例を比較例1〜比較例13と対比させる必要から、本実験例のステップSの内容が上記の形態例のものとは若干の異なるものとなっている。
【0023】
本実施例に基づく実験例と比較例1〜比較例13に使用する処理剤は、蛋白質及び毛髪還元性薬剤を主成分とした第1処理剤、蛋白質及び毛髪酸化性薬剤を主成分とした第2処理剤の2種類が使用される。第1処理剤に含まれる毛髪還元性薬剤は、チオグリコール酸またはその塩、システインまたはその塩、システアミン、アセチルシステイン、チオ乳酸などが用いられる。第2処理剤に含まれる毛髪酸化性薬剤は、過酸化水素、臭素酸塩が用いられる。さらに第1処理剤及び第2処理剤に含まれる蛋白質は、平均分子量が200〜30,000の加水分解ケラチンが10%及び平均分子量が5,000〜30,000の加水分解セリシンが40%重量程度配合されている。
【0024】
(本形態例に基づく実験例)
毛髪への処理は、図1に示すステップに従って行なった。あわせて、表1には比較例1〜13のうち主だった事例として、比較例1〜比較例7のステップをそれぞれ示した。
【0025】
【表1】

【0026】
まずステップS1で、PH8のシャンプーを使用して洗髪をしたのちに濯ぎ洗いをし、ステップS2で、軽くタオルドライしたのちに遠赤外線とマイナスイオン機能付きドライヤ(1200W)で毛髪を完全乾燥し、同時に所望のへアスタイルにセットした。ステップS3では、第1処理剤をコームに付けて毛髪の根元から3mm離れた位置にコームを入れて、毛髪を梳かしながら塗布した。ステップS4は、粒子径0.2〜2nmのスチーム発生可能なスチーマを使用してナノ化したスチームを毛髪全体に10分間万遍なく噴霧した。この時の毛髪表面温度は43℃であった。また、ステップ3及びステップ4の処理剤の塗布開始からナノ化したスチームの噴霧終了までに要した時間は26分であった。
【0027】
つぎに、ステップS5では、第2処理剤をコームに付けて上記ステップS3と同様に毛髪を梳かしながら塗布した。ステップS6では、粒子径0.2〜2nmのスチーム発生可能なスチーマを使用してナノ化したスチームを毛髪全体に10分間万遍なく噴霧した。この時の毛髪表面温度は43℃であった。また、ステップ5及びステップ6の処理剤の塗布開始からナノ化したスチームの噴霧終了までに要した時間は27分であった。
【0028】
つづくステップS7では、毛髪に付着した第1及び第2処理剤を濯いだのち、ステップS1で使用した物と同様のPH8のシャンプー、リンスを使用して洗髪をした。ステップS8では、軽くタオルドライしたのちに遠赤外線とマイナスイオン機能付きドライヤ(1200W)で毛髪を完全乾燥して同時に所望のへアスタイルにセットした。
【0029】
(比較例1)
本実験例のステップS2の毛髪の乾燥を行なわずに、第1処理剤を塗布した以外は本実験例と同様に処理した。
(比較例2)
本実験例のステップS4とステップS6のナノ化したスチーム噴霧に代えて、粒子径1μmの単一粒子径のスチーム噴霧した以外は本実験例と同様に処理をした。この時のスチーマの温度を50℃に設定した。
(比較例3)
本実験例のステップS4のナノ化したスチーム噴霧に代えて、ドライヤで加熱した以外は本実験例と同様に処理をした。ドライヤは遠赤外線とマイナスイオン機能付き(1200W)のものを使用した。この時の毛髪表面温度は50℃であった。
(比較例4)
本実験例のステップS4のナノ化したスチーム噴霧に代えて、へアアイロンで加熱した以外は本実験例と同様に処理をした。へアアイロンの温度を60℃に設定した。
(比較例5)
本実験例のステップS4及びステップS6の処理剤塗布後ナノ化したスチーム噴霧を行わず、自然放置をそれぞれ10分ずつ行った以外は本実験例と同様に処理をした。
(比較例6)
本実験例のステップS6である第2処理剤塗布後のナノ化したスチーム噴霧を行わず、自然放置を10分間行なった以外は本実験例と同様に処理をした。
(比較例7)
本実験例のステップS4である第1処理剤を塗布したのちのナノ化したスチーム噴霧を行わず、自然放置を10分間行なった以外は本実験例と同様に処理をした。
【0030】
(比較例8)
第1処理剤及び第2処理剤の塗布後のナノ化したスチーム噴霧のステップS4、S6において、ナノ化したスチーム噴霧時の毛髪表面上の温度が30℃になるようにして噴霧した以外は本実験例と同様に処理した。
(比較例9)
第1処理剤及び第2処理剤の塗布後のナノ化したスチーム噴霧のステップS4、S6において、ナノ化したスチーム噴霧時の毛髪表面上の温度が70℃になるようにして噴霧した以外は本実験例と同様に処理した。
(比較例10)
第1処理剤及び第2処理剤の塗布後のナノ化したスチーム噴霧のステップS4、S6において、ナノ化したスチーム噴霧時間を5分とした以外は本実験例と同様に処理した。
(比較例11)
第1処理剤及び第2処理剤の塗布後のナノ化したスチーム噴霧のステップS4、S6において、ナノ化したスチーム噴霧時間を20分とした以外は本実験例と同様に処理した。
(比較例12)
第1処理剤及び第2処理剤の塗布からナノ化したスチームの噴霧終了までの時間を13分とした以外は本実験例と同様に処理した。
(比較例13)
第1処理剤及び第2処理剤の塗布からナノ化したスチームの噴霧終了までの時間を40分とした以外は本実験例と同様に処理した。
【0031】
(結果)
本実験例と比較例1〜13をそれぞれ上述のように処理したのち、これらの増大効果と持続性について、処理直後,1日経過,7日経過,14日経過,21日経過時の毛髪をそれぞれ任意に10本ずつ選択し、ダイヤルゲージを用いて測定した。
その比較結果を、表2の数値表に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
本実験例においては、処理後の毛髪に毛径が太くなる増大効果が認められ、毛髪1本ずつにハリやコシがあった。また、処理後21日経過後でも処理直後と比較して太さの減少が僅かで済み、持続性(耐久性)にも優れていることが認められた。
比較例1は、増大率は本実験例と比較して多少劣るが、耐久性は認められる。毛髪が濡れた状態で第1処理剤を塗布しているので、毛髪同士がくっついて均一に塗布されていないので仕上がりにムラがあった。比較例2は、処理直後の増大率は本実験例よりも高くはあったが、4〜5日経過で毛径が著しく細くなり、21日経過後では処理の効果が若干残る程度であったが、ナノ化していないスチームでも処理剤の毛髪内部への浸透効果は多少認められた。比較例3,比較例4は、処理直後の増大率も低く、且つ持続性も乏しく処理1日経過後には殆どの蛋白質が流出しており、7日経過で処理前の状態に戻っている。ドライヤやヘアアイロンの使用では、毛髪表面付近のみで処理が進行して、毛髪内部には処理剤が浸透していない。
【0034】
比較例5は、本実験例と比較して、処理剤の毛髪への浸透、処理剤の活性化、毛髪と処理剤含有の蛋白質との結合が不充分であり処理後の増大率、持続性とも劣る。比較例6は、第2処理剤塗布後に自然放置しただけなので、処理剤の活性化や毛髪内部への浸透が不充分であり、増大効果、持続性とも本実験例よりも劣る。比較例7は、第1処理剤塗布後に加熱をせずに自然放置しただけなので、処理剤の毛髪への浸透、処理剤の活性化が十分に起きず、その後の第2処理剤塗布後にナノ化したスチームを噴霧しても満足いく増大効果やその持続性は得られなく、比較例6よりも劣った。比較例8は、処理直後の増大効果は見られるが、スチーム噴霧時の毛髪表面温度が低いために処理剤の毛髪への浸透や処理剤の活性化も不充分であることから、日数の経過と共に増大効果が失われてしまい持続性もなくなる。
【0035】
比較例9は、増大及びその持続性の効果は表れているが、スチーム噴霧時の毛髪表面上の温度が高過ぎるので、処理剤の毛髪への浸透及び活性化は促進されるが、毛髪の損傷が拡大して、毛髪に結合した処理剤成分の蛋白質に結合した毛髪蛋白質自身が切断されてしまい、効果は本実験例と比較して劣る。比較例10は、スチーム噴霧時間が短いので、処理剤の毛髪への浸透や処理剤の活性化も不充分であり、比較例8と同様に処理直後の増大効果は見られるが、日数の経過と共に増大効果が失われてしまい持続性もなくなる。
比較例11は、スチーム噴霧時間が長いので、処理剤の毛髪への浸透及び活性化は促進されており、処理直後はある程度の増大効果が見られるが、日数の経過と共に増大率が比例的に減少して持続性が認められなくなった。
比較例12は、それぞれの処理剤の塗布から塗布直後のナノ化したスチームの噴霧が終了するまでの時間が短いために、毛髪への浸透及び処理剤の活性化が不充分であり、毛髪と処理剤成分の蛋白質の結合が弱く時間の経過と共に蛋白質が流出していまい、本実験例と比較して増大及び持続性の効果が劣る。比較例13は、それぞれの処理剤の塗布から塗布直後のナノ化したスチームの噴霧が終了するまでの時間が長いために、処理剤の毛髪への浸透が及び処理剤の活性化が進行しているので、高い増大効果や持続性が認められるが、放置時間が長い分だけ処理剤が毛髪に付着している時間が長くなった分だけ毛髪の損傷が起こり本実験例よりも効果が劣る結果になった。
【0036】
次に、太さ(毛径)と損傷度合いが異なる4種類の毛髪を、本実験例に基づく処理方法によって毛髪の増大率及び増大効果の持続性調べた結果を表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
表3によれば、毛径の太いものと細いものとでは、太いものの方が断面積増減率が低くなる傾向にあるが、比較例1〜13のそれよりも高い数値であった。また、増大効果の持続性については、毛径に拘わらず高い結果であった。一方、毛髪の損傷度合いによる差については、処理直後の増大率は大差ないが、増大効果の持続性は損傷している毛髪の方が劣るが、比較例1〜13のそれよりも高い数値であった。この結果より、毛径や損傷度合いの違いによる増大率及び増大効果の持続性の差は見られるが、いずれも比較例1〜13の数値を上回っていることから、本実験例のステップを行うことで、処理する毛髪の状態に拘わらず一定の効果があることが認められた。
【0039】
次に、本実験例の処理後と比較例1〜13の処理後における毛髪の含水率を表4に示す。毛髪の損傷程度の相対評価法として含水率があり、毛髪には損傷程度によって保水可能な水分重量が異なり、毛髪の損傷が大きくなるにつれて毛髪内部に浸透した水が結合し易くなることで含水量が増加し且つ、この結合した水は遠心分離の操作によっても容易に脱離しない性質を利用した方法であり、表4では以下の条件で測定した。
1.温度20℃、湿度65±5%の環境下で一昼夜放置した毛髪の重量を測
定する ‥ W1
2.毛髪を25℃の水に浸漬して5分間放置する
3.毛髪を9000rpmの回転数の遠心脱水機で1分脱水する
4.脱水後の毛髪の重量を測定する ‥ W2
含水率=(W2−W1 / W1)× 100
【0040】
【表4】

【0041】
上記表4によれば、本実験例並びに比較例1〜13ともに、第1処理剤及び第2処理剤成分の影響で処理後の含水率が上昇しており、毛髪の損傷が見られた。また、処理の各ステップにおいて温度を高くしたり、時間を長くした場合の含水率が上昇しており、毛髪の損傷が拡大していることがわかった。
【0042】
比較例12のように、処理剤が毛髪に触れている時間を短くしても、含水率は本実験例と差がなかった。また、比較例4のようにアイロンで加熱した場合には、含水率が大きくなっている。これは、毛髪に塗布した処理剤が浸透しない分だけ毛髪表面付近に高濃度でとどまっていたために、損傷が局所的に進行したものと思われる。
一方、比較例11では、毛髪にそれぞれの処理剤を塗布した後のナノ化したスチームの噴霧時間を長くしているので、高い増大効果及び持続性が認められるが、処理後の含水率は高く損傷が拡大している。
このことから、処理方法によって毛髪の増大率及び増大効果の持続性と損傷のバランスが大きく変わってしまう結果となった。
【0043】
図2〜図13は、本形態例に基づく実験例と比較例の主だったものとの処理前と処理後のキューティクルの違いを電子顕微鏡で撮影した像を示しており、図2,3では健常毛髪に対する本実験例の処理前と処理後の様子を、図4,5では傷んだ毛髪に対する本実験例の処理前と処理後の様子を、図6,7では特に傷んだ毛髪に対する本実験例の処理前と処理後の様子をそれぞれ示しており、また、図8,9では健常毛髪に対する比較例9の処理前と処理後の様子を、図10,11では健常毛髪に対する比較例4の処理前と処理後の様子を、図12,13では健常毛髪に対する比較例13の処理前と処理後の様子をそれぞれ示している。なお、これら図2〜図13の電子顕微鏡撮影像図は、加速電圧15KVの二次電子像を200倍で撮影したものであり、図2〜図7の本実験例と図8〜図13の比較例9,4,13とで毛径が異なるのは、図面の取り込みサイズが若干異なるためである。
【0044】
図2〜図7に示す通り、本実験例の処理を施した健常毛ではキューティクルに変化は見られず、同じく本実験例の処理を施した傷んだ毛髪と特に傷んだ毛髪では、処理後にキューティクルのキメが揃い、処理前のキューティクルのめくれも解消された。このように本実験例は、持続性のある増大効果だけでなく、毛髪の修復効果も見られた。
【0045】
一方、図8〜図13に示す比較例9,4,13では、処理を施すことによって全体的に毛髪が損傷して特に比較例4ではキューティクルが脱落してしまい、処理前よりもむしろ処理後のほうがキューティクルのキメがなくなる。
【0046】
このように、本発明に基づく処理方法によれば、毛髪にハリやコシを与えつつ毛径を増大するようになり、しかもこの増大効果を長期間よく維持することができる。なお本発明は、上述の形態に限定されるものではなく、請求項に記載される範囲であればいずれを用いてもよい。例えば、増大処理効果により発現するハリ・コシ以上に毛髪の立ち上がりを望む場合には、処理剤を塗布した後に、所定の位置に1〜3秒程度部分的にアイロンを当てたのち、通常のステップであるスチームの噴霧工程を行っても問題はない。また、本発明の一連の処理工程を終了した後に、例えば本発明の処理剤に配合されている加水分解ケラチン及び/または加水分解シルク蛋白質と同様の蛋白質から成るパック剤を塗布してもよく、この方法で行った試験結果でも、増大効果や持続性及び風合いに変化はなかった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一形態例を示す毛髪を増大する処理方法のフローチャートである。
【図2】本実験例を処理する前の健常毛髪を電子顕微鏡で撮影した図である。
【図3】図2の健常毛髪に本実験例を処理した後を電子顕微鏡で撮影した図である。
【図4】本実験例を処理する前の傷んだ毛髪を電子顕微鏡で撮影した図である。
【図5】図4の傷んだ毛髪に本実験例を処理した後を電子顕微鏡で撮影した図である。
【図6】本実験例を処理する前の特に傷んだ毛髪を電子顕微鏡で撮影した図である。
【図7】図6の特に傷んだ毛髪に本実験例を処理した後を電子顕微鏡で撮影した図である。
【図8】比較例9を処理する前の健常毛髪を電子顕微鏡で撮影した図である。
【図9】図8の健常毛髪に比較例9で処理した後を電子顕微鏡で撮影した図である。
【図10】比較例4を処理する前の健常毛髪を電子顕微鏡で撮影した図である。
【図11】図10の健常毛髪に比較例4で処理した後を電子顕微鏡で撮影した図である。
【図12】比較例13を処理する前の健常毛髪を電子顕微鏡で撮影した図である。
【図13】図12の健常毛髪に比較例13で処理した後を電子顕微鏡で撮影した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗髪した毛髪を乾燥させ、
該毛髪に蛋白質と毛髪還元性薬剤とを主成分とする第1処理剤を塗布して、毛髪を櫛やコーム等で梳いて第1処理剤を毛髪に馴染ませ、
該毛髪の全体にナノ化したスチームを噴霧したのち、前記毛髪に蛋白質と毛髪酸化性薬剤とを主成分とする第2処理剤を塗布して、毛髪を櫛等で梳いて第2処理剤を毛髪に馴染ませ、
該毛髪の全体にナノ化したスチームを噴霧したのち、前記毛髪に塗布した第1処理剤と第2処理剤とを洗い流して、これを乾燥させるとともに、
前記第1処理剤と第2処理剤に含有される蛋白質を、加水分解ケラチン及び/または加水分解シルク蛋白質とした
ことを特徴とする毛髪処理方法。
【請求項2】
前記第1処理剤の塗布から該第1処理剤の塗布直後のナノ化したスチームの噴霧が終了するまでの時間と、
前記第2処理剤の塗布から該第2処理剤の塗布直後のナノ化したスチームの噴霧が終了するまでの時間を、
それぞれ20〜30分間とした
ことを特徴とする請求項1に記載の毛髪処理方法。
【請求項3】
前記加水分解シルク蛋白質が加水分解セリシンである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の毛髪を増大する処理方法。
【請求項4】
前記噴霧するナノ化したスチームは、該粒子径が0.2〜2nmの範囲で混在している
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪を増大する処理方法。
【請求項5】
前記ナノ化したスチームをそれぞれ噴霧する段階において、スチームを噴霧した時の毛髪表面の温度が40〜60℃である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の毛髪を増大する処理方法。
【請求項6】
前記ナノ化したスチームを毛髪に噴霧する噴霧時間を、前記第1処理剤塗布後と第2処理剤塗布後のいずれも7〜13分とした
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の毛髪を増大する処理方法。
【請求項7】
前記第1処理剤または第2処理剤を毛髪に塗布して馴染ませる段階において、所望のへアスタイルを作りながら櫛を梳かす
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の毛髪を増大する処理方法。
【請求項8】
前記洗髪に用いるシャンプーのPHが5〜8.5である
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の毛髪を増大する処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−266235(P2008−266235A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113193(P2007−113193)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000126676)株式会社アデランスホールディングス (49)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】