説明

毛髪移植用具のためのニードル

【課題】 毛髪を含むドナーが内部に詰まることなく、スムーズにドナーの吸引を行うことができる毛髪移植用具のためのニードルを提供することを目的とする。
【解決手段】 ニードル22の円筒形の切込口21は、先端部から基端部へとテーパ状に拡開する尖鋭状部27が備えられる。さらに該尖鋭状部27における最先端部に管内壁側から管外壁側方向へ尖鋭状部と逆方向に最先端部に向けて拡開する逆テーパ部28が備えられる。また管内径は、先端に対し、基端部がD1からD2へと大径になるよう設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の頭皮のうち、毛髪がない領域あるいは毛髪が少ない領域に対し、その患者の他の領域にある比較的生命力の強い毛髪の毛根およびその周部領域を含む皮膚をドナーとして採取して移植する際に使用され、毛髪付きの皮膚をドナーとして採取し、吸引する毛髪移植用具のためのニードルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、かつらや人工毛植毛法に代わる薄毛に対する処置として、自毛植毛法が注目されている。自毛植毛法とは後頭部や側頭部など患者の毛髪のうち、比較的生命力の強い毛髪の毛根およびその周部領域を含む皮膚をドナーとして採取し、該ドナーを同じ患者の頭皮のうち毛髪の少ない領域や毛髪のない領域に移植する施術法に係る。自毛植毛は、かつらや人工毛植毛と異なり、患者自身の毛髪を脱毛部に移植して再生するものであることから、移植先での毛髪の生着率が高く、いわゆる拒否反応がほとんど見られないという利点がある。
【0003】
出願人は、こうした自毛植毛を行うための毛髪移植用具として、下記特許文献1に示す器具の開発を行った。
【特許文献1】特開2007−229330号公報
【0004】
この文献に示される毛髪移植用具は患者の頭皮のうち、毛髪がない領域あるいは毛髪が少ない領域に対し、その患者の他の領域にある比較的生命力の強い毛髪の毛根およびその周部領域を含む皮膚をドナーとして採取して移植する際に使用され、この中で図5に示す移植用具1は、ドナーとして採取する毛髪2を中心として、その周部の皮膚に穿刺され、その部分の皮膚を穿開して吸引し、採取するためのものである。
【0005】
すなわち、この毛髪移植用具1は、先端の内部にドナーとして採取する毛髪2を中心として、その周部の穿刺され、先端に円筒形の切込口3を備える全体管状のニードル4を備える。ニードル4は図7に示すように全体長尺状からなる直管状のものとされ、移植用具1の内部に交換可能に取付可能とされる。
【0006】
移植用具1には、先端の内部に取り付けられるニードル4の切込口3が対応する皮膚領域に穿刺された状態において、該ニードル4を軸回り(図5、図6のA方向)に回転可能とし、ドナー領域の皮膚を切込口3により穿開可能とする回転駆動手段としてのモータ5が備えられる。さらに移植用具1には、モータ5によるニードル4の軸回りの回転により穿開されて、切込口3内に留置されるドナー領域の皮膚を、吸引エアにより切込口3からニードル4の内部にドナーとして吸引し、さらにニードル4から該ニードル4に管路6を介して接続されるチューブ7により、採取容器8(ドナー貯留部)へと矢印C方向に搬送するための吸引手段としてのポンプ(不図示)が備えられる。
【0007】
すなわち、移植用具1によるドナーの採取は、モータ5を作動させてニードル4を軸回りに矢印A方向に回転させ、ニードル4の切込口3を数mm程度頭皮に対し法線方向(矢印B方向)に穿刺し、毛根を含むドナー9を切込口3内に保持させる。この状態で吸引手段としてのポンプの作動により、切込口3内の皮膚を矢印C方向に吸引し、ニードル4の内部に吸引する。
【0008】
ニードル4内に吸引されたドナー9は、管路6を介してチューブ7へと搬送され、さらに採取容器8へと搬送されて貯留される。採取容器8内にある程度の量のドナー9が捕集された状態において図8に示す容器8を開け、容器8内のネット10に捕集されたドナー9を採取して移植先の頭皮に移植するようにしていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、移植用具1に交換可能に取り付けられるニードル4は、図6に示すように先端側からモータ5を貫挿する状態で矢印C方向に挿入して接続され、このためニードル4には図7に示すようにモーター5の軸(内挿軸)に取付けるための支持体11A、11Bが外装されている。ニードル4は、図7に示すように直管状のものとされるため、先端7で毛髪2を含む皮膚に穿刺される状態において出血量が多くドナー9をニードル4内に吸引する際、血液がドナー9とともに吸引されてしまい、吸引された血液が内径φ1.0〜1.4mm程度の範囲で形成されるニードル4の内壁に付着し易くなる不具合が発生していた。こうした不具合が発生すると、吸引されたドナー9が血液の付着されたニードル4の内壁部分に付着し、さらに該部分に吸引されたドナー9が塊状に詰まる不具合が発生していた。こうしたドナー9が詰まる部分は、ニードル4の基端側に多く発生するものとされていた。
【0010】
こうした不具合を解消するため、本願の発明者は、ニードル内の詰まりを少なくするため、ニードルの先端の円筒形切込口の形状を、先端部から基端部へとテーパ状に拡開する尖鋭状のものとし、ニードルを毛髪2を中心とする皮膚に穿刺し、穿開する際の出血量を極力少量にする等の方法を試みる実験を行った。しかしながら、こうした先端を先鋭状の切込口としてニードルを形成した場合、確かに最初のうちは切込口を皮膚に穿刺し、穿開した際の出血量は少なくなるものの、先端が先鋭状とされる切込口が挫滅し易くなり、先端の先鋭部が内周方向に変形する不具合が多く発生した。すなわち、切込口にこうした変形が発生すると皮膚に穿刺し、穿開する際の出血量が多くなり、ニードルを交換する頻度は以前の直管状のニードル4に比して、大きく改善されなかった。
【0011】
本願の発明者はさらにこうした先端に尖鋭状部を形成するのに加え、様々な加工を加えた結果、内部にドナーが詰まることなく、スムーズにドナーの吸引を行うことができる毛髪移植用具のためのニードルを開発することができた。
【0012】
すなわち、本発明は、毛髪を含むドナーが内部に詰まることなく、スムーズにドナーの吸引を行うことができる毛髪移植用具のためのニードルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1は、患者の頭皮のうち、毛髪がない領域あるいは毛髪が少ない領域に対し、その患者の他の領域にある比較的生命力の強い毛髪の毛根およびその周部領域を含む皮膚をドナーとして採取して移植する際に使用され、ドナーとして採取する毛髪を中心として、その周部の皮膚に穿刺され、先端に円筒形の切込口を備える全体管状からなるニードルと、ニードルの切込口が対応する皮膚領域に穿刺された状態において該ニードルを軸回りに回転可能とし、ドナー領域の皮膚を切込口により穿開可能とする回転駆動手段と、回転駆動手段によるニードルの軸回りの回転により穿開されて、切込口内に留置されるドナー領域の皮膚を、吸引エアにより切込口からニードルの内部にドナーとして吸引し、さらにニードルから該ニードルに接続されるドナー貯留部へと吸引されたドナーを搬送可能とする吸引手段と、を備えてなる毛髪移植用具のためのニードルにおいて、前記円筒形の切込口は先端部から基端部へとテーパ状に拡開する尖鋭状部を備えることとし、さらに該尖鋭状部における最先端部に管内壁側から管外壁側方向へ尖鋭状部と逆方向に最先端部に向けて拡開する逆テーパー部を備えることとしている。
【0014】
また、本発明の請求公2は、上記目的を達成するため、患者の頭皮のうち、毛髪がない領域あるいは毛髪が少ない領域に対し、その患者の他の領域にある比較的生命力の強い毛髪の毛根およびその周部領域を含む皮膚をドナーとして採取して移植する際に使用され、ドナーとして採取する毛髪を中心として、その周部の皮膚に穿刺され、先端に円筒形の切込口を備える全体管状からなるニードルと、ニードルの切込口が対応する皮膚領域に穿刺された状態において該ニードルを軸回りに回転可能とし、ドナー領域の皮膚を切込口により穿開可能とする回転駆動手段と、回転駆動手段によるニードルの軸回りの回転により穿開されて、切込口内に留置されるドナー領域の皮膚を、吸引エアにより切込口からニードルの内部にドナーとして吸引し、さらにニードルから該ニードルに接続されるドナー貯留部へと吸引されたドナーを搬送可能とする吸引手段と、を備えてなる毛髪移植用具のためのニードルにおいて、前記円筒形の切込口は先端部から基端部へとテーパ状に拡開する尖鋭状部を備えることとし、さらに該尖鋭状部における最先端部に管内壁側から管外壁側方向へ尖鋭状部と逆方向に最先端部に向けて拡開する逆テーパー部を備えることとし、さらに尖鋭状部が形成される先端側の一定長さ領域に対し、基端側全体の長さ領域の管内径を大径に設定することとしている。
【0015】
また請求項3に記載の発明は、先端部から基端部へとテーパー状に拡開する尖鋭状部は、先端部を基端とする軸線方向の長さL1を0.3mmないし1.2mmの範囲として形成した請求項1または2に記載の毛髪移植用具のためのニードルとしている。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、管内壁側から管外壁側方向へ尖鋭状部と逆方向に最先端部に向けて拡開する逆テーパー部は、最先端部を基端とする軸線方向の長さL2を10ないし30μmの範囲として形成した請求項1または2に記載の毛髪移植用具のためのニードルとしている。
【0017】
さらに請求項5に記載の発明は、尖鋭状部が形成される先端側の一定長さ領域の先端部を基端とする軸線方向の長さを10mmないし15mmとし、かつその部分の内径をφ0.8mmないし1.2mmとし、一方上記先端側の長さ領域を軸線方向において120mmないし140mmとし、かつその部分の内径をφ1.2mmないし1.4mmとしたことを特徴とする請求項2に記載の毛髪移植用具のためのニードルとしている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、円筒形の切込口に、先端部から基端部へとテーパ状に拡開する尖鋭状部を備えることとし、さらに該尖鋭状部における最先端部に管内壁側から管外壁側方向へ尖鋭状部と逆方向に最先端部に向けて拡開する逆テーパー部を備えることとしたため、先端の尖鋭状部において挫滅による変形が少なく、出血量が少なく交換頻度の少ないニードルの提供が可能となる。この結果、毛髪を含むドナーが内部に詰まることなく、スムーズにドナーの吸引を行うことができる毛髪移植用具のためのニードルを提供することが可能となる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明によれば、円筒形の切込口に先端部から基端部へとテーパ状に拡開する尖鋭状部を備えることとし、さらに該尖鋭状部における最先端部に管内壁側から管外壁側方向へ尖鋭状部と逆方向に最先端部に向けて拡開する逆テーパー部を備えることとし、さらに該尖鋭状部における最先端部に管内壁側から管外壁側方向へ尖鋭状部と逆方向に最先端部に向けて拡開する逆テーパー部を備えることとし、さらに尖鋭状部が形成される先端側の一定長さ領域に対し、基端側全体の長さ領域の管内径を大径に設定することとしたため、先端の尖鋭状部において挫滅による変形が少なく、出血量が少なく交換頻度の少ないニードルの提供が可能となる。この結果、毛髪を含むドナーが内部に詰まることなく、スムーズにドナーの吸引を行うことができる毛髪移植用具のためのニードルを提供することが可能となる。また、ニードル内の基端部側において詰まりが発生する頻度も少なくなる。この結果毛髪を含むドナーが内部に詰まることなく、スムーズにドナーの吸引を行うことができる毛髪移植用具のためのニードルを提供することが可能となる。
【0020】
また請求項3に記載の発明によれば、先端部から基端部へとテーパー状に拡開する尖鋭状部は、先端部を基端とする軸線方向の長さL1を0.3mmないし1.2mmの範囲として形成した請求項1または2に記載の毛髪移植用具のためのニードルとしたため毛髪を含むドナーが内部に詰まることなく、スムーズにドナーの吸引を行うことができる毛髪移植用具のためのニードルを提供することが可能となる。
【0021】
また請求項4に記載の発明によれば、管内壁側から管外壁側方向へ尖鋭状部と逆方向に最先端部に向けて拡開する逆テーパー部は、最先端部を基端とする軸線方向の長さL2を10ないし30μmの範囲として形成した請求項1または2に記載の毛髪移植用具のためのニードルとしたため、毛髪を含むドナーが内部に詰まることなく、スムーズにドナーの吸引を行うことができる毛髪移植用具のためのニードルを提供することが可能となる。
【0022】
さらに請求項5に記載の発明によれば、尖鋭状部が形成される先端側の一定長さ領域の先端部を基端とする軸線方向の長さを10mmないし15mmとし、かつその部分の内径をφ0.8mmないし1.2mmとし、一方上記先端側の長さ領域を軸線方向において120mmないし140mmとし、かつその部分の内径をφ1.2mmないし1.4mmとしたことを特徴とする請求項2に記載の毛髪移植用具のためのニードルとしたため、毛髪を含むドナーが内部に詰まることなく、スムーズにドナーの吸引を行うことができる毛髪移植用具のためのニードルを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。先ず図2に示す毛髪移植用具20は患者の頭皮のうち、毛髪がない領域あるいは毛髪が少ない領域に対し、その患者の他の領域にある比較的生命力の強い毛髪の毛根およびその周部領域を含む皮膚をドナーとして採取して移植する際に使用され、ドナーとして採取する毛髪2を中心として、その周部の皮膚に穿刺され、その部分の皮膚を穿開して吸引し、採取するためのものである。
【0024】
この毛髪移植用具20は、先端の内部にドナーとして採取する毛髪2を中心として、その周部の穿刺され、先端に円筒形の切込口21を備える全体管状のニードル22を備える。ニードル22は図1に示すように全体長尺状からなる管状のものとされ、移植用具20の内部に交換可能に取付可能とされる。
【0025】
移植用具20には、先端の内部に取り付けられるニードル22の切込口21が対応する皮膚領域に穿刺された状態において、該ニードル22を軸回り(図2のA方向)に回転可能とし、ドナー領域の皮膚を切込口21により穿開可能とする回転駆動手段としてのモータ23が備えられる。さらに移植用具20には、モータ23によるニードル22の軸回りの回転により穿開されて、切込口21内に留置されるドナー領域の皮膚を、吸引エアにより切込口21からニードル22の内部にドナーとして吸引し、さらにニードル22から該ニードル22に管路24を介して接続されるチューブ25により、ドナー貯留部としての採取容器(不図示)へと矢印C方向に搬送するための吸引手段としてのポンプ(不図示)が備えられる。
【0026】
すなわち移植用具20によるドナーの採取は、モーター23を作動させてニードル22を軸回りに矢印A方向に回転させ、ニードル22の切込口21を数mm程度頭皮に対し法線方向(矢印B方向)に穿刺し、毛根を含むドナー9を切込口21内に保持させる。この状態で吸引手段としてのポンプの作動により、切込口21内の皮膚を矢印C方向に吸引し、ニードル22の内部に吸引する。
【0027】
ニードル22内に吸引されたドナー9は、管路24を介してチューブ25へと搬送され、さらに採取容器(不図示)へと搬送されて貯留される。採取容器内にある程度の量のドナー9が捕集された状態において該容器を開け、容器内のネットに捕集されたドナー9を採取して移植先の頭皮に移植するようにする。
【0028】
移植用具20に交換可能に取付けられるニードル22は、図2に示すように先端側からモータ23を貫挿する状態で矢印C方向に挿入して接続され、このためニードル22には図1に示すようにモータ23の軸に取付けるための支持体26A、26Bが外装されている。ニードル22は、先端の円筒形の切込口21が形成される部分において、先端部から基端部へ角度θ1をもってテーパ状に拡開する尖鋭状部27を備えてなる(図3参照)。
【0029】
拡開する尖鋭状部27のテーパ角度θ1は、10〜20度程度とされ、また尖鋭状部27のニードル22の先端部を基端とする軸線方向での長さL1(図4参照)は、0.3mmから1.2mm程度の範囲のものとされる。尖鋭状部27の形成は、中空針材の先端の外側をグラインダで研磨したり、溶解して行われる。
【0030】
ニードル22は、この尖鋭状部27が形成される先端側の長さ領域L3に対し、基端側の長さ領域L4の外径が大きくなるように設定して形成される。すなわち、ニードル22は、直管状の中空針材の先端側を絞り加工し、尖鋭状部27が形成される先端側の長さ領域L3においてその管内径D1を小さくし、基端側の長さ領域においてその管内径D2が大径になるよう設定して加工形成される。
【0031】
すなわちニードル22は、先端側の軸線方向での長さ領域L3を10mmないし15mm程度とし、その部分の管内径D1をφ0.8mm〜φ1.2mm程度になるよう形成している。一方先端側の長さ領域L3に対する基端側の軸線方向での長さ領域L4を120mmないし140mmとし、その部分の管内径をφ1.2mm〜φ1.4mm程度になるよう形成している。
【0032】
さらに尖鋭状部27が形成される切込口21の最先端部には、管内壁側から管外壁側から管外壁側方向へ前記尖鋭状部27と逆方向に最先端部に向けて角度θ2において拡開する逆テーパ部28が形成される(図4の拡大部分参照)。逆テーパ部28の拡開角度θ2は10〜20度程度とされ、また逆テーパ部28のニードル22の先端部の基端とする軸線方向での長さL2(図4の拡大部分参照)は、10〜30μmの範囲で形成される。逆テーパ部28の形成は図3に示すようにニードル22の先端の切込口21に斜歯状のグラインダ30を挿入し、研磨することにより形成される。
【0033】
こうして形成されるニードル22によると、先ず先端部から基端部へとテーパ状に拡開する尖鋭状部27を備えることとし、さらに該尖鋭状部27における最先端部に管内壁側から管外壁側方向へ尖鋭状部27と逆方向に最先端部に向けて拡開する逆テーパ部28を備えることとしたため、長い期間使用した場合においても切込口21における挫滅変形の発生が少なく、交換頻度を少なくすることが可能となる。
【0034】
また先端が尖鋭状とされるため、皮膚に穿刺し、穿開した場合における出血量が少なくなり、また速やかなドナー9の吸引が可能となるため、従来のように血液を吸引することにより発生していたドナー9のニードル内での詰まりを抑制することが可能となる。特に、本願の発明者が様々なサイズのニードルを形成する試行錯誤を繰り返す中、上記実施形態に示すように尖鋭状部27の長さL1を0.3mm〜1.2mmとし、テーパ角度θ1を10〜20度とするのが最も良好に詰まりを抑制することが可能となった。
【0035】
また逆テーパ部28の軸線方向での長さL2に関しても10〜30μmとし、かつテーパ角度θ2についても10〜20度程度とするのが最も良好に詰まりを抑制することが可能となった。
【0036】
さらに実施形態に係るニードル22によると、先端部から基端部へとテーパ状に拡開する尖鋭状部27を備えることとし、さらに該尖鋭状部27における最先端部に管内壁側から管外壁側方向へ尖鋭状部27と逆方向に最先端部に向けて拡開する逆テーパ部28を備えることに加えて、さらに尖鋭状部27が形成される先端側の長さ領域L3に対し、基端側全体の長さ領域L4の管内径をD1からD2と大径になるよう設定し、形成したため、ニードル22の基端部において吸引したドナー9が詰まることもない。こうした現象は、恐らくニードル22が先端から基端部に向けて拡開することにより、ニードル22内で乱流が発生し、しかも基端部が大径となるのでドナー9の血液が付着する割合が少なくなることに起因することによるものと推測される。
【0037】
以上の実施形態によれば、毛髪を含むドナーが内部に詰まることなく、スムーズにドナーの吸引を行うことができる毛髪移植用具のためのニードルを提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、毛髪移植手術において、ドナーとしての毛髪を採取する作業を円滑かつ短時間に行うことができ、その分毛髪の生着率の向上が図られることになる。よって自毛による頭髪の再生手術の信頼性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係るニードルを示す縦断面図である。
【図2】ニードルを取付けてなる毛髪移植用具の断面図である。
【図3】ニードル先端の尖鋭状部を示す縦断面図である。
【図4】尖鋭状部のさらに先端を示す拡大断面図である。
【図5】出願人の製造に係る従来の毛髪移植用具により、ドナーを採取する状態を示す断面図である。
【図6】図5に示す毛髪移植用具に取付られるニードルの縦断面図である。
【図7】ニードルが装着された毛髪移植用具の縦断面図である。
【図8】採取容器の縦断面図である。
【図9】採取容器から取り出し、ドナーを捕集したネットを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1,20 移植用具
2 毛髪
3,21 切込口
4,22 ニードル
5,23 モータ(回転駆動手段)
6,24 管路
7,25 チューブ
8 採取容器
9 ドナー
10 ネット
11A,11B,26A,26B 支持体
27 尖鋭状部
28 逆テーパ部
30 グラインダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の頭皮のうち、毛髪がない領域あるいは毛髪が少ない領域に対し、その患者の他の領域にある比較的生命力の強い毛髪の毛根およびその周部領域を含む皮膚をドナーとして採取して移植する際に使用され、ドナーとして採取する毛髪を中心として、その周部の皮膚に穿刺され、先端に円筒形の切込口を備える全体管状からなるニードルと、ニードルの切込口が対応する皮膚領域に穿刺された状態において該ニードルを軸回りに回転可能とし、ドナー領域の皮膚を切込口により穿開可能とする回転駆動手段と、回転駆動手段によるニードルの軸回りの回転により穿開されて、切込口内に留置されるドナー領域の皮膚を、吸引エアにより切込口からニードルの内部にドナーとして吸引し、さらにニードルから該ニードルに接続されるドナー貯留部へと吸引されたドナーを搬送可能とする吸引手段と、を備えてなる毛髪移植用具のためのニードルにおいて、前記円筒形の切込口は先端部から基端部へとテーパ状に拡開する尖鋭状部を備えることとし、さらに該尖鋭状部における最先端部に管内壁側から管外壁側方向へ尖鋭状部と逆方向に最先端部に向けて拡開する逆テーパー部を備えることを特徴とする毛髪移植用具のためのニードル。
【請求項2】
患者の頭皮のうち、毛髪がない領域あるいは毛髪が少ない領域に対し、その患者の他の領域にある比較的生命力の強い毛髪の毛根およびその周部領域を含む皮膚をドナーとして採取して移植する際に使用され、ドナーとして採取する毛髪を中心として、その周部の皮膚に穿刺され、先端に円筒形の切込口を備える全体管状からなるニードルと、ニードルの切込口が対応する皮膚領域に穿刺された状態において該ニードルを軸回りに回転可能とし、ドナー領域の皮膚を切込口により穿開可能とする回転駆動手段と、回転駆動手段によるニードルの軸回りの回転により穿開されて、切込口内に留置されるドナー領域の皮膚を、吸引エアにより切込口からニードルの内部にドナーとして吸引し、さらにニードルから該ニードルに接続されるドナー貯留部へと吸引されたドナーを搬送可能とする吸引手段と、を備えてなる毛髪移植用具のためのニードルにおいて、前記円筒形の切込口は先端部から基端部へとテーパ状に拡開する尖鋭状部を備えることとし、さらに該尖鋭状部における最先端部に管内壁側から管外壁側方向へ尖鋭状部と逆方向に最先端部に向けて拡開する逆テーパー部を備えることとし、さらに尖鋭状部が形成される先端側の一定長さ領域に対し、基端側全体の長さ領域の管内径を大径に設定することを特徴とする毛髪移植用具のためのニードル。
【請求項3】
先端部から基端部へとテーパー状に拡開する尖鋭状部は、先端部を基端とする軸線方向の長さL1を0.3mmないし1.2mmの範囲として形成した請求項1または2に記載の毛髪移植用具のためのニードル。
【請求項4】
管内壁側から管外壁側方向へ尖鋭状部と逆方向に最先端部に向けて拡開する逆テーパー部は、最先端部を基端とする軸線方向の長さL2を10ないし30μmの範囲として形成した請求項1または2に記載の毛髪移植用具のためのニードル。
【請求項5】
尖鋭状部が形成される先端側の一定長さ領域の先端部を基端とする軸線方向の長さを10mmないし15mmとし、かつその部分の内径をφ0.8mmないし1.2mmとし、一方上記先端側の長さ領域を軸線方向において120mmないし140mmとし、かつその部分の内径をφ1.2mmないし1.4mmとしたことを特徴とする請求項2に記載の毛髪移植用具のためのニードル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−104571(P2010−104571A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279653(P2008−279653)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(503468112)株式会社トシュカ (2)
【Fターム(参考)】