説明

気中終端接続部

【課題】上部金具の外周のコロナシールドを不要にしつつ、高いインパルス電圧を印加しても、絶縁油とケーブル絶縁体と空気とが接するトリプルジャンクションによる絶縁破壊を防ぐことができ、性能が安定した気中終端接続部を提供すること。
【解決手段】ケーブル絶縁体141の外周面141aと碍管110の内周面110dと上部金具130の下端面130aとは、内部空間170を形成し、内部空間170には、上部に所定の空気層190を残すように絶縁油180が充填される。そして、気中終端接続部100は、上部金具130の下端面130aから内部空間170側に延出して取り付けられ、導体接続端子150の外周を覆う内部シールド200を備える。内部シールド200は、後端部が絶縁油180に所定深さ浸かることで、ケーブル絶縁体141と絶縁油180と空気層190とが接するトリプルジャンクションPを覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル用の気中終端接続部に係り、特に、絶縁油を用いた気中終端接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブル終端において架空線などの裸線、絶縁電線などと接続するために気中終端接続部が使用される。
【0003】
特許文献1には、碍管の頂部より突出する導体引出棒を導体固定金具により、碍管頂部に固定された碍管上部金具に取り付けた気中終端接続部が開示されている。
【0004】
図1は、従来の高圧電力ケーブル用の気中終端接続部の一部断面図である。
【0005】
図1に示すように、気中終端接続部1は、ケーブル2の端末が、碍管3の内部で立ち上がり、終端を形成している。ケーブル2は、その端末において絶縁体が剥がされて導体4が露出する。ケーブル2の導体4には、端子5とチューリップコンタクト6を介して導体引出棒7が電気的に接続されている。
【0006】
導体引出棒7の先端は、碍管3の頂部3aに設けられた導体固定金具8を貫通して外部に引き出されている。導体固定金具8は、碍管3の頂部3aに固定された碍管上部金具11にボルト12にて取り付けられ、導体固定金具8を覆うようにしてコロナシールド9が設けられている。
【0007】
一方、導体引出棒7を含む終端各部分は、ケーブル2に流れる電流や外気温の変化によって伸縮する。このとき、導体引出棒7と碍管3とは熱膨張係数が大きく異なり、そのために、この差を吸収し、碍管3の内部に収納された絶縁油10が、導体引出棒7と導体固定金具8との間、又、導体固定金具8と碍管上部金具11との間から漏出するのを防ぐ必要がある。
【0008】
そこで、従来、導体固定金具8にはその上部からワッシャー13が被せられ、ワッシャー13は、ビス14にて導体固定金具8に固定される。そして、ワッシャー13と導体固定金具8との間に、導体引出棒7を包囲してOリング15が配置される。更に、導体固定金具8の外周部においては、導体固定金具8と碍管上部金具11との合わせ面部にOリング16が配置されている。
【0009】
また、特許文献2には、ケーブルと機器の間の接続部あるいはケーブルの立ち上がり終端等に形成されるケーブル終端接続部が開示されている。
【0010】
特許文献2記載のケーブル終端接続部は、特許文献2の図2に示すように上部金具10や導体引出し棒8の周辺でコロナが発生するのを防止するため、筒状のコロナシールド15(特許文献2の図2参照)が前記上部金具10に支えられるように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−219549号公報
【特許文献2】特開平8−149674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このような従来の絶縁油を用いた気中終端接続部にあっては、高電圧化した場合、碍管の内部の上部空気層の影響により電気的性能が変わる。すなわち、気中終端接続部の碍管内を絶縁油中で絶縁する場合、高いインパルス電圧により、絶縁油とケーブル絶縁体と気体層としての空気とが接するトリプルジャンクション(三重接合点)において、絶縁破壊が生じ、気中終端接続部の内側から絶縁破壊が起こる可能性がある。
【0013】
これを避けるため、従来の気中終端接続部は、上部金具(図1の導体固定金具8に相当、特許文献2の図2の上部金具10に相当)の外周に大きなコロナシールド(図1のコロナシールド9に相当、特許文献2の図2のコロナシールド15に相当)を適用して対応してきた。しかし、このようなコロナシールドは、大きく、且つその製造も難しい欠点があった。また、大型のコロナシールドを配置するので、結果的に整列配置される気中終端接続部の設置面積が大きくなる。さらに、コロナシールドが必要であること及びコロナシールドの製造が難しいことは、部品点数の増大、組立て作業の時間の増大につながり、コスト低減が図れないという問題がある。
【0014】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、上部金具の外周のコロナシールドを不要にしつつ、高いインパルス電圧を印加しても、絶縁油とケーブル絶縁体と空気(気体層)とが接するトリプルジャンクションによる絶縁破壊を防ぐことができ、性能が安定した気中終端接続部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の気中終端接続部は、筒状の碍管本体の外周面に長手方向に離間して形成された襞部を有する碍管と、前記碍管の頂部を気密に覆う上部金具と、前記碍管の内部で立ち上がり、端部の段剥処理によりケーブル絶縁体及びケーブル導体が露出され終端部を形成するケーブルと、前記ケーブル導体に取り付けられた導体接続端子とを備え、前記碍管内部には上部に気体層を形成するように絶縁油が充填される気中終端接続部であって、前記上部金具の下端面には前記気体層側に延出して配設され、前記導体接続端子の外周を覆う内部シールドを備え、前記内部シールドは、後端部が絶縁油に浸かるように設けられる構成を採る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外部コロナシールドを不要にしつつ、高いインパルス電圧を印加しても、絶縁油とケーブル絶縁体と気体層とが接するトリプルジャンクションによる絶縁破壊を防ぐことができ、性能を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来の気中終端接続部の構成を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態に係る気中終端接続部の構造を示す断面図
【図3】上記実施の形態に係る気中終端接続部の上方部分を示す部分断面図
【図4】図3の気中終端接続部の内部シールド付近の等電位分布図
【図5】上記実施の形態に係る気中終端接続部から内部シールドを取り外した場合の部分断面図
【図6】図5の気中終端接続部の内部シールド付近の等電位分布図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(実施の形態)
図2は、本発明の実施の形態に係る気中終端接続部の構造を示す断面図である。図3は、図2の気中終端接続部の上方部分を示す部分断面図である。本実施の形態は、架空線などの裸線、絶縁電線などと接続する気中終端接続部に適用した例である。
【0020】
図2及び図3に示すように、気中終端接続部100は、円筒状の碍管本体110aの外周面に長手方向に離間して形成された襞部110bを有する碍管110と、碍管110の頂部110cを気密に覆う上部金具130と、上部金具130の上面の中心部に気密に固定される上部導体120とを備える。
【0021】
碍管110は、絶縁性を有する材料で作られ(例えば、陶器製、ゴムプラスチック製等)、円筒状の碍管本体110aの外周面に放射方向に張り出すように襞部110bを設けて形成されている。
【0022】
上部導体120は、上部金具130の上端面にボルト125により取付けられる。上部導体120は、上端部で、架空線や引込線など高電圧線に接続され、下端部で、上部金具130の上面の中心部に気密に固定される。
【0023】
上部金具130は、碍管110の頂部110cを気密に覆うように、碍管110の頂部110cの外周に固定された碍管上部金具131の上面にボルト132により取り付けられる。
【0024】
ケーブル140は、ケーブル導体142上に、順次ケーブル内部半導電層(不図示)、架橋ポリエチレン等からなるケーブル絶縁体141、ケーブル外部半導電層143、金属製のケーブル遮蔽層144及び塩化ビニルシース等からなるケーブルシース145が設けられたもので構成されている。このような構成のケーブル140の端部は、段剥処理することで、順次、ケーブル遮蔽層144、ケーブル外部半導電層143、ケーブル絶縁体141及びケーブル導体142が露出され、終端部140aを形成している。
【0025】
気中終端接続部100は、碍管110の内部で立ち上がり、終端部140aを形成するケーブル140と、ケーブル導体142に圧縮され、先端部が上部金具130を貫通して、上部導体120に電気的に接続する導体接続端子150と、導体接続端子150とケーブル絶縁体141先端の外周に跨って巻かれたテープ巻層160とを備える。
【0026】
導体接続端子150は、ケーブル140の終端部140aのケーブル導体142を上部導体120に電気的に接続する。
【0027】
テープ巻層160は、例えば、自己融着性クロロプレンゴムテープからなり、導体接続端子150とケーブル絶縁体141の外周に跨って形成される。
【0028】
ケーブル絶縁体141の外周面141aと碍管110の内周面110dと上部金具130の下端面130aとは、碍管110内部において密閉された内部空間170を形成している。
【0029】
内部空間170には、上部に所定の空気層190(気体層)を残すように絶縁油180が充填される。すなわち、内部空間170に充填される絶縁油180は、内部空間170を全部満たすような、いわゆる全面油ではなく、絶縁油180の油面180a上部に所定量の空気層190を残すように充填される。このため、油面180a位置は、絶縁油180と空気層190の量から決まることになる。空気層190は、通電時の絶縁油180の膨張に対して、碍管110の内部の圧力が所定以上上がらない量に決定される。本実施の形態では、絶縁油180の油面180aは、テープ巻層160にかからない位置である。
【0030】
なお、絶縁油180としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等の、性能の安定性が高く引火しにくいシリコーンオイルが挙げられる。
【0031】
気中終端接続部100は、碍管110内の導体接続端子150及びケーブル絶縁体141先端部の外周を覆う筒状の内部シールド200を備える。
【0032】
内部シールド200は、導電性のシールド筒本体200aと、フランジ部200bとを有し、フランジ部200bは上部金具130の下端面130aにねじ201によりねじ止めされる。シールド筒本体200aは、フランジ部200bが上部金具130の下端面130aに取り付けられて内部空間170側に延出し、後端部(図面では下側)が絶縁油180に十分に浸かる筒全長を有する。以下、シールド筒本体200aの筒全長を、内部シールド200の筒全長と呼ぶ。
【0033】
内部シールド200は、少なくともケーブル絶縁体141と絶縁油180と空気層190(気体層)とが接するトリプルジャンクションPを覆う。内部シールド200は、後端部が絶縁油180に十分に浸かる筒全長とすることで、上記トリプルジャンクションPを覆うことができる。
【0034】
上述したように、油面180a位置は、通電時の絶縁油180の膨張/収縮により、内部空間170を上下する。このため、ケーブル絶縁体141と絶縁油180と空気層190とが接するトリプルジャンクションPの位置についても、ケーブル140の軸方向に内部空間170を上下する。内部シールド200は、内部空間170を上下するトリプルジャンクションPの位置にかかわらず、常にトリプルジャンクションPを覆い、且つ油面180aより下方に所定深さが浸かる筒全長を有する。
【0035】
ここで、内部シールド200の筒全長と絶縁油180に浸かる内部シールド200の長さは、例えば1:(1/3)の比率である。以下、その理由について説明する。
【0036】
単純に電気的性能だけを考えると絶縁油180の量が大きい方が良い。しかし、絶縁油180の量が増えるとコストが上がるとともに、温度変化に耐えられない。よって、気中終端接続部100の設置状況によって、まず油面180a位置が決まる。内部シールド200の全長は、下記の技術要因により決定される。
【0037】
(1)内部シールド200の後端部(図3では、油面180a下側)が十分に絶縁油180に浸かっていること。
【0038】
内部シールド200を設けることにより、内部シールド200の後端部のR部分の電界が高くなる。よって、電界が高くなる後端部分は、空気層190より絶縁強度が高い絶縁油180に浸かっている必要がある。後端部分が絶縁油180に浸かることで電気的性能が安定する。
【0039】
(2)内部シールド200と接地側間の距離が十分に離れていること。
【0040】
内部シールド200の全長を必要以上に長くすると、接地側との距離が短くなることにつながり、内部シールド200後端部にかかる電界が高くなるため絶縁強度が下がる。よって、この点からも内部シールド200の後端部は、絶縁強度の高い絶縁油180で覆われる必要がある。
【0041】
本実施の形態では、絶縁油180の油面180aは、テープ巻層160の後端部160aにかからない位置である。
【0042】
また、円筒形状の内部シールド200の内径及び外径は、ケーブル絶縁体141の外周面141aと碍管110の内周面110dとの何れにも接しない寸法とされる。更に、図2、3では、テープ巻層160にも接しない内径とされる。より詳細には、内部シールド200の内径が、ケーブル絶縁体141の外周面141aと碍管110の内周面110dとの中間位置よりケーブル絶縁体141の外周面141aに近い位置で、かつケーブル絶縁体141の外周面141aに接しない位置に配置することにより、電界が内部シールド内のトリプルジャンクションPの位置に、より入り難くなるため、シールドの点からより好ましいことが判明した。
【0043】
図2に示すように、碍管110の底部110eには、環状の底部金具211がボルト212により取り付けられている。環状の底部金具211は、支持碍子(不図示)を介在させた状態で碍管110を支持架台(不図示)に取り付ける。
【0044】
ケーブル絶縁体141の外周には、ストレスコーン220が装着される。ストレスコーン220は、ケーブル絶縁体141の外周面141aと碍管110の内周面110dとの間の密閉された内部空間170内の下方位置にあって、ケーブル絶縁体141外周面141a及びケーブル外部半導電層143外周面に跨って配置される。
【0045】
図2のストレスコーン220は一実施例としての金具一体型ストレスコーンである。金具一体型ストレスコーン220は、ゴム製のストレスコーン本体221と、ストレスコーン本体221の後端側(図2では下側)に一体に設けられる金具222とを備えており、全体として円筒状を呈している。
【0046】
ストレスコーン本体221は、後端側(図では下側)に配置されるシリコーンゴム等のゴム状弾性から成る円筒状の半導電体部223と、半導電体部223の先端側(図では上側)に後端部が半導電体部223と同心状に連設され、半導電体部223を覆うように形成されるシリコーンゴム等のゴム状弾性体から成る円筒状の絶縁体部224とを備えている。ストレスコーン本体221は、金具222の先端側を覆うようにモールドにより一体化されている。また、半導電体部223の先端部は、ケーブル外部半導電層143先端部の電界緩和のため、半導電体部223の先端部近傍の内周部(立ち上がり部)から絶縁体部224の先端部の外周部に向かって緩やかに拡径するベルマウス状に湾曲した形状を有している。
【0047】
金具222は、先端側(図2では上側)でストレスコーン本体221の半導電体部223と電気的に接触するように設けられ、後端側(図2では下側)は、底部金具211上にボルトにより固定されたアダプタ金具225の上面に、ボルト212により固定される。底部金具211を接地電位とすることで、ストレスコーンの半導電体部223が接地電位となり、ケーブル外部半導電層143先端部の電界を緩和することができる。ストレスコーン220は、ケーブル外部半導電層143先端部の電界を緩和するために設けるものであるため、図2の金具222をストレスコーン本体221に一体化した構造に限定されず、発明の効果を奏する限り、金具222を有しない構造でもよい。
【0048】
以下、上述のように構成された気中終端接続部100の内部シールド200について説明する。
【0049】
図4は、図3の気中終端接続部100の内部シールド200付近の等電位分布図である。また、図5及び図6は、内部シールド200の機能を説明するための図であり、図5は、図3の気中終端接続部100から内部シールド200を取り外した場合の部分断面図、図6は、図5の等電位分布図である。
【0050】
図5は、内部シールド200を有しない従来の気中終端接続部の構造に対応し、図6はその等電位分布図である。
【0051】
図6に示すように、内部シールド200を有しない従来の気中終端接続部では、電界分布は、上部金具130及びケーブル140の軸方向に沿って放射状に等電位線が広がる形となる。特に、上部金具130の下端面130aを下側まで回り込んで電界が集中している(図6a参照)。この上部金具130の下方位置で電界が集中する場所は、図5に示す気中終端接続部の碍管110内の内部空間170における、絶縁油180とケーブル絶縁体141と空気層190のトリプルジャンクションPの付近である。
【0052】
すなわち、上部金具130の下方位置には、上記トリプルジャンクションPが存在し、且つこのトリプルジャンクションPに電界が集中する構造となっている。トリプルジャンクションPは、電界集中に対して脆弱であり、絶縁破壊が生じ易く、気中終端接続部の内側から絶縁破壊が起こる可能性がある。従来例では、上記トリプルジャンクションPに着目することなく、単に気中終端接続部の上部金具の外周をコロナシールド(図1のコロナシールド9、及び特許文献2の図2のコロナシールド15参照)で覆うことで気中放電の発生を防止していた。しかし、上部金具の外周のコロナシールドは、大きく、且つその製造も難しい欠点があった。
【0053】
本実施の形態では、気中終端接続部100は、上部金具130の下端面130aに、碍管110内の導体接続端子150及びケーブル絶縁体141の外周を覆う筒状の内部シールド200を取り付け、内部シールド200は、後端部が絶縁油180に所定深さ浸かることで、ケーブル絶縁体141と絶縁油180と空気層190とが接するトリプルジャンクションPを覆う。図4aに示すように、電界分布は、上部金具130から内部シールド200を経由してケーブル110の軸方向に沿って放射状に等電位線が広がる形となる。
【0054】
特に、上部金具130に取り付けた内部シールド200によって、等電位線が上部金具130の下端面130aにおいて下側まで回り込むことがない。すなわち、上部金具130の下方位置に存在する上記トリプルジャンクションPには電界がかからない。トリプルジャンクションPにおける電界集中がないため、コロナシールドを設けなくても性能が安定した気中終端接続部100を実現することができる。
【0055】
以上詳細に説明したように、本実施の形態の気中終端接続部100は、円筒状の碍管110の中心軸に配設され、頂部110cが碍管110より突出する上部導体120と、上部導体120を碍管頂部に固定する上部金具130と、碍管110の内部で立ち上がり、終端部を形成するケーブル140と、ケーブル導体142に導体接続子を介して上部導体120に電気的に接続する導体接続端子150と、導体接続端子150とケーブル絶縁体141の外周に跨って巻かれたテープ巻層160とを備える。ケーブル絶縁体141の外周面141aと碍管110の内周面110dと上部金具130の下端面130aとは、内部空間170を形成し、内部空間170には、上部に所定の空気層190を残すように絶縁油180が充填される。そして、気中終端接続部100は、上部金具130の下端面130aから内部空間170側に延出して取り付けられ、導体接続端子150の外周を覆う内部シールド200を備える。内部シールド200は、後端部が絶縁油180に所定深さ浸かることで、ケーブル絶縁体141と絶縁油180と空気層190とが接するトリプルジャンクションPを覆う。
【0056】
これにより、トリプルジャンクションPにおいて電界集中しないため、コロナシールドを設けなくても性能が安定した気中終端接続部を実現することができる。よって、コロナシールドを設けない場合、よりコンパクトな気中終端接続部を実現することができ、複数の気中終端接続部を整列して設置する場合、相互の相関距離を小さくすることができる。
【0057】
また、コロナシールドを設けなくてよいため、上部金具の構造が簡単となり、組立て作業時間の短縮と相俟ってコスト低減を図ることができる。
【0058】
なお、本実施の形態の気中終端接続部100の構成を採った上で、さらにコロナシールドを設けることも可能である。このように構成すれば、コロナシールドを用いた従来の気中終端接続部より、系統の電圧が高い適用電圧の気中終端接続部に適用することができる。
【0059】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。気中終端接続部のケーブル導体の導体接続端子150は、上記実施の形態では、内部シールド200は上部金具130の下面に取り付けた構造で説明したが、内部シールドは上部金具と一体構造でもよい。
【0060】
また、前述の実施の形態では、内部シールド200は導電性のものについて説明したが、図4のようなトリプルジャンクションに電界が入り込まないような等電位分布とするには、内部シールド200の少なくとも表面が導電性で、上部金具130と電気的に接触していればよく、例えば、内部シールド200を絶縁性の材料で形成して表面に導電性の塗料を上部金具130に電気的に接触するように設けてもよい。
【0061】
また、気体層は、空気層で説明したが、絶縁油と誘電率が異なるものであればよく、空気以外の気体(例えば、窒素ガスやSFガス等の絶縁気体)でもよい。但し、碍管110内の絶縁油180の油面180aの上部には、空気層190などの気体層が設けられること、また内部シールド200の後端部は、必ず絶縁油180に浸かることを条件とする。
【0062】
また、前述の実施の形態では、絶縁油180の油面180aがケーブル絶縁体141に接するため、ケーブル絶縁体141と絶縁油180と空気層(気体層)190とが接するトリプルジャンクションPに着目したが、絶縁油180の油面180aがテープ巻層160に接する位置まで絶縁油が充填されている場合、すなわちテープ巻層160と絶縁油180と空気層(気体層)190のトリプルジャンクションとなる場合も同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る気中終端接続部は、絶縁油を用いた気中終端接続部に適用することができ、電力ケーブル用の気中終端接続部として有用である。
【符号の説明】
【0064】
100 気中終端接続部
110 碍管
110a 碍管本体
110b 襞部
110c 頂部
110d 内周面
120 上部導体
130 上部金具
140 ケーブル
140a 終端部
141 ケーブル絶縁体
141a 外周面
142 ケーブル導体
150 導体接続端子
160 テープ巻層
160a 後端部
170 内部空間
180 絶縁油
180a 油面
190 空気層
200 内部シールド
200a シールド筒本体
200b フランジ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の碍管本体の外周面に長手方向に離間して形成された襞部を有する碍管と、
前記碍管の頂部を気密に覆う上部金具と、
前記碍管の内部で立ち上がり、端部の段剥処理によりケーブル絶縁体及びケーブル導体が露出され終端部を形成するケーブルと、
前記ケーブル導体に取り付けられた導体接続端子とを備え、前記碍管内部には上部に気体層を形成するように絶縁油が充填される気中終端接続部であって、
前記上部金具の下端面には前記気体層側に延出して配設され、前記導体接続端子の外周を覆う内部シールドを備え、
前記内部シールドは、後端部が絶縁油に浸かるように設けられる気中終端接続部。
【請求項2】
前記内部シールドは、筒状で、少なくとも表面が導電性であり、前記上部金具と電気的に接触している請求項1記載の気中終端接続部。
【請求項3】
前記気体層は、空気層を含む請求項1又は請求項2に記載の気中終端接続部。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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