説明

気体アルカンを液体炭化水素へと変換するためのプロセス

アルカンを含む気体供給原料を乾燥臭素蒸気と熱的に反応させて、臭化アルキルおよび臭化水素を生成させる、気体アルカンをオレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物に変換する方法。臭化アルキルに存在する多臭素化アルカンを適切な触媒上でメタンとさらに反応させて、一臭素化種を生成させる。次いで、臭化アルキルおよび臭化水素の混合物を、適切な触媒上で、オレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物および臭化水素を生成するのに十分な温度で反応させる。本方法に用いるために臭化水素から臭素を得るため、および臭素化段階において一臭素化アルカンを選択的に生成するために、臭化水素を高分子量炭化水素から除去するための様々な方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願への参照)
本願は、2008年6月13日に出願された同時係属の、「Processes for Converting Gaseous Alkanes to Liquid Hydrocarbons」と題された米国特許出願第12/138,877号の一部継続出願であり、この米国特許出願第12/138,877号は、2008年4月30日に出願された同時継続の、「Process for Converting Gaseous Alkanes to Olefins」と題された米国特許出願第12/112,926号の一部継続出願であり、米国特許出願第12/112,926号は、2005年10月19日に出願された「Process for Converting Gaseous Alkanes to Olefins and Liquid Hydrocarbons」と題された米国特許出願第11/254,438号の継続出願であり、米国特許出願第11/254,438号は、2008年3月25日に発行され、「Process for Converting Gaseous Alkanes to Liquid Hydrocarbons」と題された米国特許第7,348,464号の一部継続出願であり、米国特許第7,348,464号は、2007年7月17日に発行され、「Process for Converting Gaseous Alkanes to Liquid Hydrocarbons」と題された米国特許第7,244,867号の一部継続出願である。
【0002】
本願は以下の同時係属特許出願と関連する:2007年6月16日に出願され、「Process for Converting Gaseous Alkanes to Liquid Hydrocarbons」と題された米国特許出願第11/778,479号;2007年12月14日に出願され、「Process for Converting Gaseous Alkanes to Liquid Hydrocarbons」と題された米国特許出願第11/957,261号;2008年5月20日に出願され、「Process for Converting Gaseous Alkanes to Liquid Hydrocarbons」と題された米国特許出願第12/123,924号;および2008年6月13日に出願され、「Hydrogenation of Multi−Brominated Alkanes」と題された米国特許出願第12/139,135号。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
本発明は、低分子量アルカンを、燃料としてまたは燃料もしくは潤滑油および燃料添加剤などの化学物質の製造におけるモノマーおよび中間体として有用である可能性があるオレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物に変換する方法に関し、より詳細には、1つまたは複数の実施形態において、低分子量アルカンを含むガスを臭素と反応させて、後の工程段階で耐えることができるレベルまで多臭素化種の生成を効果的に減少させるように臭化アルキルおよび臭化水素酸を生成させる方法に関する。
【0004】
主としてメタンおよび他の軽質アルカンからなる天然ガスは、世界中で大量に発見されている。天然ガスが発見された場所の多くは、重要なガスパイプライン基幹設備や天然ガスの市場需要のある人口集中地域から遠い。天然ガスの密度が低いため、例えば、パイプラインによる気体でのまたは容器内圧縮ガスとしてのその輸送は、費用がかかる。したがって、天然ガスをその気体の形で輸送し得る距離に関して実用上および経済上の制約が存在する。天然ガスの極低温液化(しばしば「LNG」と呼ばれる)は、天然ガスを長距離にわたりより経済的に輸送するのにしばしば用いられている。しかし、このLNG法は、費用がかかり、LNGを輸入するために装備された限定的な再ガス化設備は少数の国に存在するにすぎない。
【0005】
メタンの他の用途は、メタノールの製造の工程への供給原料としてである。メタノールは、高温(例えば、約1000℃)でのメタンの合成ガス(COおよびH)(しばしば「syn−gas」と言われる)への変換の後の高圧(約100気圧)での合成により商業的に製造することができる。メタンからの合成ガスの製造に関しては、数種類の技術が存在する。これらのうちの主なものは、水蒸気メタン改質(SMR)、部分酸化(POX)、自己熱改質(ATR)、ガス加熱改質(GHR)およびそれらの様々な組合せである。それぞれに関連する利点と欠点がある。例えば、SMRおよびGHRは、高圧および一般的に600℃を超える温度で通常実施され、吸熱反応であり、したがって、高価な改質触媒を充填した特殊な耐熱性かつ耐食性合金製の伝熱管を含む高価な炉または反応器およびしばしばSMRで用いられているような天然ガスの燃焼によるような外部熱源から反応器に供給される高温の熱を必要とする。POXおよびATR法は、通常高圧および一般的に1000℃を超えるより高い温度で通常実施され、炭化水素供給原料のかなりの割合がCOに変換される発熱反応を利用するものであり、大量の高温廃熱を排出するか、または回収しなければならず、したがって、複雑かつ費用のかかる耐火物内張り反応器および合成ガス流出物を急冷および冷却するための高圧廃熱ボイラーが必要である。また、これらの高圧法に対しては、かなりの資本費用と酸素または空気の圧縮のための大量の電力が必要である。したがって、高い温度および圧力が必要であるため、合成ガス技術は、費用がかかり、高価格のメタノール製品をもたらすものと一般的に考えられている。このような価格は、化学原料や溶媒用などのメタノールの高価値での使用を制限する可能性がある。さらに、合成ガスの製造は、当方法の炭素変換効率を低くする、大過剰の廃熱と不要の二酸化炭素を生じ得るという点で、熱力学的にも化学的にも非効率なものとなり得ると一般的に考えられている。フィッシャー−トロプシュガス液化油(GTL)技術も合成ガスをより重質の液体炭化水素に変換するのに用いることができるが、この時点では、この方法の投資費用は他の種類の方法より高い。各場合に、合成ガスの製造は、これらのメタン変換法の資本費用の大きい割合を占め、これらの方法が達成できる最大炭素効率を制限するものとなっている。
【0006】
メタノールまたはより高い分子量の炭化水素への経路としての合成ガスの従来の製造法の多くの代替法が提案された。しかし、現在までのところ、これらの代替法のいずれも、様々な理由のために商業的状態に到達していない。以前の代替従来技術の方法のいくつかは、メタンのような低級アルカンを金属ハロゲン化物と反応させて、酸化マグネシウムと反応させて対応するアルカノールを生成させることができる、ハロゲン化アルキルおよびハロゲン化水素を生成させることを指向している。ハロゲンとしての塩素を用いたメタンのハロゲン化は、通常、ハロゲン化モノメチル(CHCl)への不十分な選択性をもたらすが、それどころかCHClおよびCHClなどの望ましくない副生成物を生成させる。これらは、変換することが困難であるか、または1回通過当たりの変換の厳しい制限およびひいては非常に高いリサイクル率を必要とする。
【0007】
他の既存の方法は、合成ガス(COおよびH)の生成の代替としてのメタンの触媒的塩素化または臭素化を提案するものである。メタノールの製造のための総合的工程におけるメタンハロゲン化段階の選択性を改善するために、1つの方法は、臭化メチルなどのモノハロゲン化中間体への選択性の改善をもたらす、過剰なアルカンの存在下でアルカンを臭素化するために、金属臭化物の熱分解により生成する臭素を使用することを教示している。運動固体の流動層を利用することの欠点を避けるために、該方法は、金属塩化物水和物および金属臭化物の循環液体混合物を用いる。他の方法も、臭素化を用いることによりモノハロゲン化中間体へのより高い選択性を達成することができる。臭化メチルなどの得られた臭化アルキル中間体を、運動固体の循環層中での金属酸化物との反応により、対応するアルコールおよびエーテルにさらに変換する。そのような方法の他の実施形態は、4段階で周期的に操作される金属臭化物/酸化物固体の固定層を含むゾーン型反応器を用いることによって移動層の欠点を回避する。ジメチルエーテル(DME)などの特定のエーテルは有望なディーゼルエンジン燃料候補代替物であるが、まだ今のところ、DMEの実質的な市場は現存せず、したがって、DMEを現在市場性のある製品に変換するための費用のかかる追加の触媒工程変換段階が必要であろう。メタンを超強酸触媒を用いた触媒的縮合によりガソリン範囲の炭化水素に触媒的に縮合させる、Olahへの米国特許第4,467,130号(特許文献1)などの合成ガスの生成の必要を回避する他の方法が提案された。しかし、これらの初期の代替アプローチのいずれも商業的方法をもたらさなかった。
【0008】
いくつかの事例において、置換アルカン、特にメタノールは、ゼオライトとしても公知の様々な結晶性アルミノケイ酸塩上でオレフィンおよびガソリン沸点範囲の炭化水素に変換することができる。メタノールガソリン化(MTG)法において、形状選択性ゼオライト触媒ZSM−5を用いてメタノールをガソリンに変換する。したがって、石炭またはメタンガスを従来技術を用いてメタノールに変換し、その後ガソリンに変換することができる。しかし、メタノールの製造費用およびガソリンの現在または予定価格が高いため、MTG法は、経済的に実現可能であるとみなされていない。したがって、様々なガス原料中に認められるメタンおよび他のアルカンを、高い価値を有し、より経済的に輸送され、それにより遠隔地の天然ガス埋蔵の開発を著しく促進するオレフィン、より高い分子量の炭化水素またはその混合物に変換するための経済的方法の必要性が存在する。生成する望ましくない多ハロゲン化アルカンの量を最小限にすると同時に、天然ガスなどの様々なガス原料中に存在するアルカンを一臭素化アルカンに臭素化する効率の高い方法のさらなる必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,467,130号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
前述および他の目的を達成するため、また具体化され、本明細書で広く記述した本発明の目的に従って、本発明の1つの特徴は、臭化アルキルを含む臭素化生成物を生成するのに十分な第1の温度で、臭素をメタンを含む気体アルカンと接触させ、触媒の存在下で、臭化アルキル中に存在する多臭素化アルカンの少なくとも一部を一臭素化アルカンに変換するのに十分な第2の温度で、臭化アルキルをメタンの一部と反応させることを含む方法である。
【0011】
本明細書に組み込まれ、その一部をなしている、添付の図面は、本発明の実施形態を説明し、そして本明細書の記載と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の方法の簡略化したブロック流れ図である。
【図2】図2は、本発明の方法の一実施形態の概略図である。
【図3】図3は、本発明の方法の他の実施形態の概略図である。
【図4A】図4Aは、本発明の方法の他の実施形態の概略図である。
【図4B】図4Bは、酸化段階において空気の代わりに酸素を使用する場合に用いることができる代替処理スキームを示す図4Aに例示した本発明の方法の実施形態の概略図である。
【図5A】図5Aは、金属酸化物層を通る流れが逆転している図4Aに例示した本発明の方法の実施形態の概略図である。
【図5B】図5Bは、酸化段階において空気の代わりに酸素を使用する場合に用いることができる代替処理スキームを示す図5Aに例示した本発明の方法の実施形態の概略図である。
【図6A】図6Aは、本発明の方法の他の実施形態の概略図である。
【図6B】図6Bは、酸化段階において空気の代わりに酸素を使用する場合に用いることができる代替処理スキームを示す図6Aに例示した本発明の方法の実施形態の概略図である。
【図7】図7は、本発明の方法の他の実施形態の概略図である。
【図8】図8は、金属酸化物層を通る流れが逆転している図7に例示した本発明の方法の実施形態の概略図である。
【図9】図9は、本発明の方法の他の実施形態の概略図である。
【図10】図10は、多臭素化アルカンの生成を低減するように本発明の一実施形態に従って構成した本発明の方法の簡略化したブロック流れ図である。
【図11】図11は、多臭素化アルカンの生成を低減するように本発明の他の実施形態に従って構成した本発明の方法の簡略化したブロック流れ図である。
【図12】図12は、図7および8に例示し、シフト反応器を直列配置で組み込むように図10のブロック流れ図に従ってさらに構成した本発明の方法の実施形態の概略図である。
【図13】図13は、図7および8に例示し、シフト反応器を並列配置で組み込むように図10のブロック流れ図に従ってさらに構成した本発明の方法の実施形態の概略図である。
【図14】図14は、本発明の臭素化段階で用いる各種メタン対臭素モル比における一臭素化選択性のグラフである。
【図15】図15は、本発明の臭素化段階で用いる各種メタン対臭素モル比における一臭素化選択性対平均滞留時間のグラフである。
【図16】図16は、多臭素化アルカンの生成を低減するために触媒シフト反応器を直列配置で組み込むように本発明の実施形態に従って構成した本発明の方法の概略図である。
【図17】図17は、多臭素化アルカンの生成を低減するために触媒シフト反応器を直列配置で組み込むように本発明の他の実施形態に従って構成した本発明の方法の概略図である。
【図18】図18は、多臭素化アルカンの生成を低減するために触媒シフト反応器を並列配置で組み込むように本発明のさらなる実施形態に従って構成した本発明の方法の概略図である。
【図19】図19は、多臭素化アルカンの生成を低減するために触媒シフト反応器を並列配置で組み込むように本発明のさらなる実施形態に従って構成した本発明の方法の概略図である。
【図20】図20は、本発明の方法の実施形態の臭素化段階における各種メタンの炭素効率および一臭素化選択性対時間のグラフである。
【図21】図21は、本発明の方法の実施形態の臭素化段階に用いる各種温度における炭素効率および一臭素化選択性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で用いる「高分子量炭化水素」という用語は、C鎖およびより長い炭化水素鎖を含む炭化水素を意味する。いくつかの実施形態において、より高い分子量の炭化水素は、製品(例えば、LPG、自動車燃料等)として直接用いることができる。他の事例において、より高い分子量の炭化水素の流れは、中間製品として、あるいはさらなる処理のための原料として用いることができる。他の事例において、高分子量炭化水素は、例えば、ガソリン等級燃料、ディーゼル等級燃料および燃料添加剤を製造するためにさらに処理することができる。いくつかの実施形態において、本発明の方法により得られる高分子量炭化水素は、実質的な芳香族含量を有する自動車ガソリン燃料として、燃料混合ストックとして、あるいはポリスチレンもしくは関連ポリマーなどの芳香族ポリマーを製造する工程への芳香族原料またはポリオレフィンを製造する工程へのオレフィン原料などのさらなる処理のための原料として直接用いることができる。本明細書で用いる「オレフィン」という用語は、2個〜6個の炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む炭化水素を意味する。オレフィンは、所望の場合、さらに処理することができる。例えば、いくつかの事例において、本発明の方法により製造されるオレフィンは、プラスチックまたは合成潤滑油などの多くの最終生成物に有用であり得るポリオレフィンを製造するために、重合反応(例えば、メタロセン触媒を用いた反応)でさらに反応させることができる。
【0014】
高分子量炭化水素、オレフィンまたはその混合物の最終用途は、下で述べる方法のオリゴマー化部分に用いる個々の触媒ならびに方法で用いる操作パラメーターに依存する可能性がある。他の用途は、本開示の恩典により当業者に明らかであろう。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明は、供給ガス流を適切な臭素源からの臭素と反応させて、臭化アルキルを生成する段階を含む。本明細書で用いる「臭化アルキル」という用語は、一、二および三臭素化アルカンおよびこれらの組合せを意味する。多臭素化アルカンは、二臭素化アルカン、三臭素化アルカンおよびその混合物を含む。これらの臭化アルキルは、オレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物を生成するように適切な触媒上で反応させることができる。
【0016】
低分子量アルカンは、本明細書で述べる方法の原料として用いることができる。低分子量アルカンの適切な源は、天然ガスであり得る。この説明を通して用いる「低分子量アルカン」という用語は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンまたはこれらの個々のアルカンの2つ以上の混合物を意味する。低分子量アルカンは、あらゆる適切な源、例えば、天然であるかまたは合成により生成するかに無関係に、低分子量アルカンを供給するガスのあらゆる源からのものであってよい。本発明の方法に用いる低分子量アルカンの源の例は、天然ガス、炭床メタン、再ガス化液化天然ガス、ガスハイドレートおよび/またはクラスレート由来のガス、有機物またはバイオマスの嫌気的分解により得られるガス、タールサンドの処理で得られるガス、ならびに合成により生成する天然ガスまたはアルカンを含むが、これらに限定されない。これらの組合せは、いくつかの実施形態においても適切であり得る。いくつかの実施形態において、硫黄化合物および二酸化炭素などの望ましくない化合物を除去するために原料ガスを処理することが望ましいことがある。いずれにしても、少量の二酸化炭素、例えば、約2モル%未満は本発明の方法に対する供給原料ガス中で耐えることができることに注意することは重要である。
【0017】
本発明の様々な実施形態において用いることができる臭素の適切な源は、元素状臭素、臭素塩、水性臭化水素酸、金属臭化物塩などを含むが、これらに限定されない。組合せが適切である可能性があるが、当業者によって認識されているように、複数の源を用いることは、さらなる複雑な状態をもたらす可能性がある。本発明の方法の特定の実施形態を以下に述べる。該方法に含まれる主要な化学反応であると考えられるものの主要な態様をそれらが起こることが考えられるときに詳細に述べるが、副反応が起こり得ることを理解すべきである。本明細書で個々の副反応を述べないことが当該反応が起こらないことを意味すると推測すべきではない。逆に、述べられているものは、網羅的または限定的であるとみなすべきでない。さらに、本発明の方法の特定の態様を概略的に示す図を示すが、これらの図は、本発明の特定の方法に限定されるとみなすべきではない。
【0018】
本発明の方法を一般的に叙述するブロック流れ図は、図1に例示したが、本発明の方法の特定の実施形態のいくつかの態様を示す。図1に例示した本発明の方法の一般的叙述によれば、低分子量アルカンを含むガス流は、供給原料ガスとリサイクルされたガス流の混合物からなり、乾燥臭素蒸気がアルキル臭素化段階において反応して、臭化アルキルおよび臭化水素を生成する。得られた臭化アルキルは、臭化アルキル変換段階において臭化水素の存在下で適切な触媒上で反応して、オレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物を生成する。生成する個々のオレフィンおよび高分子量炭化水素は、臭化アルキル変換段階に用いる触媒、この段階で導入される臭化アルキルの組成およびこの段階で用いる正確な操作パラメーターに依存するであろう。臭化水素およびオレフォン、高分子量炭化水素またはその混合物の混合物を臭化水素(HBr)除去段階において水溶液と接触させて、オレフィンおよび高分子量炭化水素から臭化水素を除去する。溶解した臭化水素酸を有する得られた水溶液は、このHBr除去段階において原料ガスとも接触させて、水溶液から残存炭化水素を除去する。
【0019】
原料ガス、残存炭化水素およびオレフォン、高分子量炭化水素またはその混合物は、脱水および生成物回収ユニットに運ばれ、水が残りの成分から除去される。供給原料ガスならびに主としてメタンおよびエタン炭化水素がオレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物から分離され、本発明のアルカン臭素化段階に運ばれる。残りのオレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物は、燃料、燃料混合物として使用するために、あるいはさらなる石油化学または燃料処理のために脱水および生成物回収段階から除去される。
【0020】
図1でさらに一般的に例示するように、臭化水素酸を含む水溶液は、臭化物酸化段階に運ばれる。オレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物を接触させるのに用いる水溶液は、水、溶存臭化水素を含む水であってよく、あるいは部分酸化金属臭化物塩を含んでいてよい。溶存臭化水素を含む水溶液の場合、この溶液を蒸発し、本方法の臭化物酸化段階における部分酸化金属臭化物塩の層に通すことができる。部分酸化金属臭化物塩を含む水溶液の場合、水溶液に溶解している臭化水素を部分酸化金属臭化物塩により中和して、金属臭化物塩と水を生成させる。得られた金属臭化物塩は、次に本発明の臭化物酸化段階において酸素または空気と接触させて、乾燥臭素蒸気としてアルカン臭素化段階にリサイクルさせることができる元素状臭素と、本方法により生成したオレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物を接触させるのに用いる水溶液からの臭化水素を中和し、除去するのに用いることができる部分酸化金属臭化物塩とを生成させる。流出水もこの段階から除去することができる。
【0021】
図2を参照すると、約1バール〜約75バールの範囲の圧力の低分子量アルカンを含むガス流(いくつかの実施形態において、供給原料ガスとリサイクルガス流の混合物を含んでいてよい)を管路、管または導管62により輸送または運び、管路25およびポンプ24により輸送された乾燥臭素液と混合し、熱交換器26に通し、熱交換器内で液体臭素を蒸発させることができる。次に低分子量アルカンおよび乾燥臭素蒸気の混合物を反応器30に供給することができる。好ましくは、反応器30に導入される混合物中の低分子量アルカンと乾燥臭素蒸気のモル比は、約2.5:1を超えるものであり、より好ましくは約4:1を超え、最も好ましくは約7:1を超えるものである。反応器30は、混合物を約250℃〜約400℃の範囲の反応開始温度に加熱することができる入口予熱帯28を有していてよい。
【0022】
第1の反応器30中で、約250℃〜約600℃の範囲の温度および約1バール〜約80バール、より好ましくは約1バール〜30バールの範囲の圧力で、低分子量アルカンを乾燥臭素蒸気と発熱的に反応させて、気体臭化アルキルおよび臭化水素酸蒸気を生成させることができる。本開示により当業者に明らかなように、第1の反応器30中の臭素化反応は、発熱反応または触媒反応であってよい。第1の反応器30中で用いることができる適切な触媒の非限定的な例としては、Olahら、J. Am. Chem. Soc.、1985年、107巻、7097〜7105頁に記載されているように、白金、パラジウム、またはFeOBrもしくはFeOClなどの担持非量論的金属オキシハロゲン化物またはTaOF、NbOF、ZrOF、SbOFなどの担持金属オキシハロゲン化物などがある。操作温度範囲の上限は、供給混合物が臭素化反応の発熱性のために加熱される反応開始温度の上限より高い可能性があると考えられる。メタンの場合、臭化メチルの生成は以下の一般的総括反応により起こると考えられる。
【0023】
CH(g)+Br(g)→CHBr(g)+HBr(g)
気相臭素化反応のフリーラジカルメカニズムのため、ジブロモメタンおよび多少のトリブロモメタンならびに他の臭化アルキルも生成する。しかし、本発明の方法によるこの反応は、第1の反応器30で用いるアルカン対臭素比のため、臭化メチルへの比較的に高度な選択性でしばしば起こる。例えば、メタンの臭素化の場合、約6:1のメタン対臭素比が、滞留時間、温度および乱流混合などの反応条件によって、一ハロゲン化臭化メチルへの選択性を平均約88%に増加させると考えられる。これらの条件では、多少のジブロモメタンおよび検出可能限度に近い極めて少量のトリブロモメタンも臭素化反応において生成する可能性がある。2.6対1というより低いメタン対臭素比を用いる場合、一ハロゲン化臭化メチルへの選択性は、他の反応条件によって約65〜75%の範囲に低下する可能性がある。約2.5対1よりかなり低いメタン対臭素比では、臭化メチルへの許容できない低い選択性が発生し、さらに、望ましくないジブロモメタン、トリブロモメタンおよび炭素すすのかなりの生成が認められる。一ハロゲン化臭化メチルへのそのような選択性を達成するのに必要な第1の反応器30中の反応物の滞留時間は、比較的短く、断熱反応条件下では1〜5秒と短くてよい。エタン、プロパンおよびブタンなどのより高級なアルカンも臭素化することができ、結果として臭化エチル、臭化プロピルおよび臭化ブチルなどの一および多臭素化種が生ずる。さらに、いくつかの実施形態において、第1の反応器30に供給される乾燥臭素蒸気は、実質的に水を含まなくてよい。出願人は、少なくともいくつかの事例において、第1の反応器30中の臭素化段階から実質的にすべての水蒸気を排除することによって望ましくない二酸化炭素の生成が実質的になくなると思われるため、これが好ましい可能性があることを発見した。これが臭化アルキルへのアルカン臭素化の選択性を増加させる可能性があり、それにより、アルカンからの二酸化炭素の生成で発生する大量の廃熱がおそらくなくなる。
【0024】
臭化アルキルおよび臭化水素を含む流出物は、管路31により第1の反応器から抜き出すことができる。この流出物は、第2の反応器34に流れる前に熱交換器32で部分的に冷却することができる。流出物が熱交換器34で部分的に冷却される温度は、第2の反応器34中で臭化アルキルを高分子量炭化水素に変換することが望まれる場合には約150℃〜約390℃の範囲であり、あるいは、第2の反応器34中で臭化アルキルをオレフィンに変換することが望まれる場合には約150℃〜約450℃の範囲である。第2の反応器34は、オレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物を含む生成物を生成するようにアルキル単位をオリゴマー化すると考えられる。第2の反応器34中で、約150℃〜約450℃の温度範囲および約1〜80バールの範囲の圧力で、適切な触媒上で臭化アルキルを発熱的に反応させて、所望の生成物(例えば、オレフィンおよび高分子量炭化水素)を生成させる。
【0025】
反応器34で用いる触媒は、炭化水素を生成する臭素化アルカンの変換を触媒するための様々な適切な物質であってよい。特定の実施形態において、第2の反応器34は、触媒の固定層33を含んでいてよい。合成触媒の流動層も特定の状況、特により大規模な応用で用いることができ、コークスの絶え間ない除去および生成物組成の安定した選択性などの特定の利点を有する可能性がある。適切な触媒の例は、酸性イオン交換体であるという共通の機能性を有し、合成結晶性アルミノケイ酸塩酸化物骨格も含むかなり広範囲の物質を含む。特定の実施形態において、結晶性アルミノケイ酸塩酸化物骨格におけるアルミニウムの一部は、マグネシウム、ホウ素、ガリウムおよび/またはチタンで置換されていてよい。特定の実施形態において、結晶性アルミノケイ酸塩酸化物骨格におけるケイ素の一部は、リンで場合によって置換されていてよい。結晶性アルミノケイ酸塩触媒は、結晶性アルミノケイ酸塩酸化物骨格構造内のかなりの陰性電荷を一般的に有することがあり、これは、例えば、H、Li、Na、KもしくはCs族またはMg、Ca、SrもしくはBa族またはLaまたはCe族から選択される元素の陽イオンによって均衡が保たれていることがある。ゼオライト触媒は一般的にナトリウム形で得られるが、プロトンまたは水素形(水酸化アンモニウムによるイオン交換およびその後の焼成による)が好ましく、あるいは、プロトン/ナトリウム混合形も用いることができる。ゼオライトは、Li、KまたはCsなどの他のアルカリ金属陽イオン、Mg、Ca、SrまたはBaなどのアルカリ土類金属陽イオンあるいはFe、Ni、Cu、Mn、V、Wなどの遷移金属陽イオンあるいは希土類金属陽イオンLaまたはCeとのイオン交換により修飾することもできる。そのような後のイオン交換は、電荷均衡対イオンを置換する可能性があるが、酸化物骨格におけるイオンをさらに部分的に置換して、結晶構成および酸化物骨格の構造の変化をもたらす可能性がある。結晶性アルミノケイ酸塩または置換結晶性アルミノケイ酸塩は、ミクロ細孔またはメソ細孔結晶性アルミノケイ酸塩を含んでいてよいが、特定の実施形態において、合成ミクロ細孔結晶性ゼオライトおよび例えば、ZSM−5などのMFI構造であるものを含んでいてよい。さらに、結晶性アルミノケイ酸塩または置換結晶性アルミノケイ酸塩は、特定の実施形態において、後にMg、Ca、Sr、Ba、LaまたはCe塩の水溶液で含浸してもよい。特定の実施形態において、塩は、MgBr2、CeBr3などの臭化物塩などのハロゲン化物塩あるいは塩基性結晶性アルミノケイ酸塩または置換アルミノケイ酸塩触媒の不活性化率を減少させることが発見されたルイス酸機能性を有する他の固体化合物であってよい。場合によって、結晶性アルミノケイ酸塩または置換結晶性アルミノケイ酸塩は、金属状態の約0.1〜約1重量%のPt、約0.1〜5重量%のPdまたは約0.1〜約5重量%のNiを含んでいてもよい。そのような物質は主として最初は結晶性であるが、一部の結晶性触媒は、初期のイオン交換もしくは含浸により、あるいは反応条件でのまたは再生時の操作により、結晶性のある程度の喪失を受け、したがって、かなりの非晶質の特性も含む可能性があり、依然としてかなりの、またいくつかの事例において改善された活性を保持することに注意すべきである。
【0026】
第2の反応器34に用いる個々の触媒は、例えば、望まれる特定の炭化水素生成物に依存する。例えば、炭化水素生成物が主としてC3、C4およびC5ガソリン範囲芳香族化合物ならびにより重質の炭化水素画分を有する炭化水素生成物が望まれる場合、ZSM−5ゼオライト触媒を用いることができる。オレフィンおよびC5+生成物の混合物を含む炭化水素生成物を生成させることが望まれる場合、X型もしくはY型ゼオライト触媒またはSAPOゼオライト触媒を用いることができる。異なる細孔径および酸性度を有する他のゼオライトを本発明の実施形態において用いることができるが、適切なゼオライトの例としては、10−XなどのX型またはY型ゼオライトなどがある。
【0027】
触媒に加えて、第2の反応器34を稼動させる温度が、所望の特定の生成物への反応の選択性および変換率を決定付ける重要なパラメーターである。例えば、X型またはY型ゼオライト触媒を用い、オレフィンを生成させることが望まれる場合、第2の反応器34を約250℃〜500℃の範囲内の温度で稼動させることが望ましい場合がある。あるいは、約250℃〜450℃のわずかに低温度範囲で作用するZSM−5ゼオライト触媒を必要とする実施形態において、C7+画分が主として置換芳香族化合物を含み、また主としてC〜C5+範囲の軽質アルカンも含むような環化反応が第2の反応器で起こる。驚くべきことに、非常にわずかなエタンまたはC、Cオレフィン成分が生成物中に認められる。
【0028】
約100〜2000時間−1の範囲のGHSV、400℃に近い漸増温度でZSM−5触媒上で反応する臭化メチルを含むガス混合物の例において、臭化メチルの変換率は、約90%〜98%またはそれ以上の範囲に増加するが、C5+炭化水素への選択性は低下し、本方法のより軽質の生成物への選択性が特に増加する。550℃を超える温度では、メタンおよび炭素質コークスへの臭化メチルの高い変換が起こり得ると考えられる。約350℃から450℃までの好ましい操作温度範囲では、反応の副生成物として、より少ない量のコークスが操作中に時間の経過とともに触媒上に蓄積することがある。コークスの蓄積は、反応条件および供給原料ガスの組成によって数時間から数百時間の範囲にわたり触媒活性の低下をもたらし得るので問題となり得る。メタンの生成を伴う約400℃を上回るより高い反応温度は、臭化アルキルの熱分解および炭素またはコークスの生成、ひいては触媒の不活性化速度の増加に有利に働くと考えられる。逆に、該範囲の下限温度、特に約350℃以下の温度も、触媒からのより重質な生成物の脱着の速度の低下に起因する不活性化に寄与する可能性がある。したがって、第2の反応器34における約350℃〜約450℃の範囲、好ましくは約375℃〜約425℃の範囲内の操作温度は、所望のC5+炭化水素の高い選択性および触媒上の炭素質コークスの生成または重質生成物の蓄積の低下によるより低い不活性化速度と、必要とする触媒の量、リサイクル率および装置のサイズを最小限にする1回通過当たりのより高い変換率とを釣り合わせるものである。
【0029】
いくつかの実施形態において、触媒は、そのままで定期的に再生することができる。触媒を再生する1つの適切な方法は、通常の工程流から反応器34を分離し、管路70を介して約1〜約5バールの範囲の圧力、約400℃〜約650℃の範囲の高温の不活性ガスで反応器をパージすることである。これにより、実際的な範囲で触媒上に吸着した未反応臭化アルキルおよびより重質の炭化水素生成物が除去されるはずである。場合によって、触媒は、約1バール〜約5バールの範囲の圧力、約400℃〜約650℃の範囲の高温の空気または不活性ガス希釈酸素を管路70を経て反応器34に加えることによってその後酸化することができる。再生期間中に二酸化炭素および残存空気または不活性ガスを管路75を経て反応器34から排出することができる。ほとんどの場合に、触媒上に吸着したHBrまたは臭化アルキルの酸化によって生ずる微量の臭素が回収され、工程内で再使用できるように、工程の酸化部分への管路75を介しての反応器34からの再生排気の経路を定めることが好ましい(示さず)。
【0030】
臭化水素およびオレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物を含む反応器34からの流出物は、管路35を経て第2の反応器34から抜き出すことができる。所望の場合、流出物は0℃〜約100℃の範囲の温度に冷却することができる(例えば、交換器36で)。それは、供給原料ガスと炭化水素ストリッパー47において供給原料ガスとの接触によりストリッピングした残存炭化水素を含む炭化水素ストリッパー47からの管路12における蒸気流出物と合わせることができる。合わせた蒸気混合物は、次にスクラバー38に通し、適切な手段(ポンプ42など)により管路41を経てスクラバー38に輸送することができる金属水酸化物、金属酸化物、金属オキシ臭化物種またはこれらの物質の混合物を含む濃縮水性部分酸化金属臭化物塩溶液と接触させることができる。好ましい臭化物塩は、さほど高価でなく、ガラスライニングまたはフルオロポリマーライニングした装置を有利なことに使用することができる約120℃〜約180℃の範囲のより低い温度で容易に酸化するので、Fe(III)、Cu(II)もしくはZn(II)塩またはその混合物である。しかし、当業者により認識されているように、易酸化性臭素化塩を形成することができるCo(II)、Ni(II)、Mn(II)、V(II)、Cr(II)または他の遷移金属も本発明の方法に適切である可能性がある。あるいは、Ca(II)またはMg(II)などの酸化性臭素化塩も形成するアルカリ土類金属も適切である可能性がある。場合によって、スクラバー38で凝縮した液体炭化水素をすくい取り、管路37で回収し、次に、管路54における生成物回収ユニット52を出る液体炭化水素に加えることができる。臭化水素は、水溶液に溶解し、次に金属水酸化物、金属酸化物、金属オキシ臭素化物またはこれらの種の混合物により中和させて、溶液中の金属臭化物塩および水を得るべきである。これは、スクラバー38から管路44を経て除去することができる。
【0031】
オレフィンおよび高分子量炭化水素などの生成物を回収するために天然ガスまたは精製ガス流を処理するのに用いられる脱水および液体回収の適切な方法、例えば、固層乾燥剤吸着の後の冷凍凝縮、低温膨張または循環吸収油または他の溶媒を本発明の方法に用いることができる。いくつかの実施形態において、スクラバー38から流出物として除去されるオレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物を含む残存蒸気流は、管路39を経て脱水装置50に送って、蒸気流から管路53を経て実質的にすべての水を除去することができる。水は、脱水装置50から管路53を経て除去することができる。オレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物を含む乾燥蒸気流は、生成物回収ユニット52にさらに通して(例えば、管路51を介して)、管路54でオレフィン、C5+ガソリン範囲炭化水素画分またはその混合物を液体生成物として回収することができる。生成物回収ユニット52からの残存蒸気流出物は、工程用の燃料として用いることができるパージ流57と圧縮機58により圧縮することができるリサイクル残存蒸気とに分割することができる。圧縮機58から放出されたリサイクル残存蒸気は、少なくとも2つの画分に分割することができる。所望の場合、第1の画分(供給原料ガスのモル容積の少なくとも2.5倍に等しくてよい)は、管路62を経て輸送し、ポンプ24により運ばれる乾燥液体臭素と合わせ、交換器26で加熱して、臭素を蒸発させ、第1の反応器30に供給することができる。第2の画分は、反応器34への臭化アルキル濃度を希釈し、好ましくは約350℃〜約450℃の範囲の選択される操作温度に反応器34を維持するように反応熱を吸収するのに十分な速度で管路62から管路63を経て抜き出すことができる(制御弁60により調節することができる)。ほとんどの事例において、この温度範囲は、変換率対選択性を最大にし、炭素の沈着に起因する触媒の不活性化の速度を最小にすると思われる。したがって、リサイクル蒸気流出物によってもたらされる希釈は、第2の反応器34における温度を調節することに加えて、第1の反応器30における臭素化の選択性が制御されることを可能にする。
【0032】
場合によって、スクラバー38から管路44を経て除去される溶液中の金属臭化物塩を含む水を炭化水素ストリッパー47に通し、例えば、管路11を介して輸送される、入ってくる供給原料ガスと接触させることによって、残存溶解炭化水素を水相からストリッピングすることができる。ストリッピング工程の後に、ストリッピング済みの水溶液を炭化水素ストリッパー47から管路65を経て熱交換器(例えば、熱交換器46)に輸送して約0℃〜約70℃の範囲の温度に冷却することができる。ストリッピング済みの水溶液を冷却することは、水溶液の臭化水素蒸気圧を抑え、酸化排出流67への臭化水素の損失を最小限にするか、または実質的になくすため、望ましいと言える。冷却したストリッピング済みの水溶液を次に吸収装置48に通し、残存臭素を管路67における排出流から回収することができる。この回収された臭素は、リサイクルし、本方法に再び使用することができる。
【0033】
スクラバー48からの水溶液流出物は、管路49を経て熱交換器40に輸送して、蒸発させ、かつ/または約100℃〜約600℃の範囲、最も好ましくは約120℃〜約180℃の範囲の温度に予熱し、第3の反応器16に通すことができる。管路10を経て酸素または空気を送風機または圧縮機13によってほぼ環境大気圧から約5バールまでの範囲の圧力で底部加熱式臭素ストリッパー14に供給して、水から残存臭素をストリッピングすることができる。水は、ストリッパー14から管路64で除去し、脱水装置50からの水流53と合わせて、管路56における水流出流を形成させ、工程から除去する。臭素ストリッパー14から出る酸素または空気は、金属臭化物塩水溶液を酸化して、元素状臭素および金属水酸化物、金属酸化物、金属オキシ臭化物またはこれらの種の混合物を生成するように、ほぼ環境大気圧から約5バールまでの範囲の圧力、約100℃〜約600℃の範囲であるが、最も好ましくは約120℃〜約180℃の範囲の温度で稼動する反応器16に管路15を介して供給する。上述のように、酸化性臭化物塩は、単独または他の臭化物塩と組み合わせて用いることができるが、臭化物塩の好ましい金属は、さほど高価でなく、ガラスライニングまたはフルオロポリマーライニングした装置を使用することができる約120℃〜約180℃の範囲のより低い温度で容易に酸化するので、Fe(III)、Cu(II)もしくはZn(II)またはその混合物である。あるいは、Ca(II)またはMg(II)などの酸化性臭素化塩も形成するアルカリ土類金属も用いることができよう。
【0034】
臭化水素は、そのように生成した金属水酸化物、金属酸化物、金属オキシ臭化物またはこれらの種の混合物と反応して、再び金属臭化物塩および水を生成する。反応器16中の熱交換器18は、始動時に溶液を予熱するために熱を供給し、反応熱を補うために熱を供給して、水を蒸発させ、反応器16から臭素をストリッピングすることができる。したがって、総括反応は、触媒サイクルで作用する金属臭化物/金属酸化物または金属水酸化物によって触媒される、第1の反応器30および第2の反応器34で生成した臭化水素の液相中の元素状臭素および水への正味の酸化をもたらす。金属臭化物がFe(III)Br3である場合、反応は以下のとおりであると考えられる。
【0035】
1)Fe(+3a)+6Br(−a)+3H(+a)+3/2O2(g)=3Br2(g)+Fe(OH)3
2)3HBr(g)+HO=3H(+a)+3Br(−a)+H
3)3H(+a)+3Br(−a)+Fe(OH)3=Fe(+3a)+3Br(−a)+3H
管路19を経て第3の反応器16の出口から蒸気として出てくる元素状臭素および水および残存酸素または窒素(空気を酸化剤として用いる場合)を冷却器20で約0℃〜約70℃の範囲の温度およびほぼ環境大気圧から5バールまでの範囲の圧力で冷却して、臭素および水を凝縮させ、3相分離器22に通す。3相分離器22において、液体の水は、約3重量%程度の臭素に対する限られた溶解度を有するので、凝縮するさらなる臭素は、独立したより高密度の液体臭素相を形成する。しかし、液体臭素相は、0.1%未満程度の水に対する著しくより低い溶解度を有する。したがって、実質的に乾燥した臭素蒸気は、液体臭素および水を凝縮させ、単純な物理的分離によって水を傾斜し、その後、液体臭素を再蒸発させることによって容易に得ることができる。
【0036】
液体臭素は、ポンプ24により3相分離器22から蒸気流62と混合するのに十分な圧力まで管路25に送出される。このように、臭素は、回収され、工程内でリサイクルされる。残存酸素または窒素および凝縮しない残存臭素蒸気は、3相分離器22から出て、管路23を経て臭素スクラバー48に入り、その中で残存臭素が溶液により、および金属臭化物水溶液流65中の還元金属臭化物との反応により回収される。水は、分離器22から管路27を経て除去され、ストリッパー14に導入される。
【0037】
本発明の他の実施形態において、図3を参照すると、約1バール〜約30バールの範囲の圧力の供給原料ガスとリサイクルガス流との混合物からなる低分子量アルカンを含むガス流を管路、管または導管162により輸送または運び、ポンプ124により輸送された乾燥臭素液と混合し、熱交換器126に通し、熱交換器内で液体臭素を蒸発させる。低分子量アルカンおよび乾燥臭素蒸気の混合物を反応器130に供給することができる。好ましくは、反応器130に導入された混合物中の低分子量アルカンと乾燥臭素蒸気とのモル比は、約2.5:1を超え、より好ましくは約4:1を超え、最も好ましくは約7:1を超える。場合によって、反応器130は、混合物を約250℃〜約400℃の範囲の反応開始温度に加熱することができる入口予熱帯128を有する。
【0038】
第1の反応器130中で、約250℃〜約600℃の範囲の比較的に低い温度および約1バール〜約30バールの範囲の圧力で、低分子量アルカンを乾燥臭素蒸気と発熱的に反応させて、気体臭化アルキルおよび臭化水素酸蒸気を生成させる。本開示により当業者に明らかなように、第1の反応器30中の臭素化反応は、均一ガス相反応または不均一触媒反応であってよい。第1の反応器30中で用いることができる適切な触媒の非限定的な例としては、Olahら、J. Am. Chem. Soc.、1985年、107巻、7097〜7105頁に記載されているように、白金、パラジウム、またはFeOBrもしくはFeOClなどの担持非量論的金属オキシハロゲン化物またはTaOF、NbOF、ZrOF、SbOFなどの担持金属オキシハロゲン化物などがある。操作温度範囲の上限は、供給混合物が臭素化反応の発熱性のために加熱される反応開始温度範囲の上限より高い。メタンの場合、臭化メチルの生成は以下の一般的反応により起こると考えられる。
【0039】
CH(g)+Br(g)→CHBr(g)+HBr(g)
気相臭素化反応のフリーラジカルメカニズムにより、ジブロモメタンおよび多少のトリブロモメタンならびに他の臭化アルキルも生成される。しかし、本発明の方法によるこの反応は、第1の反応器130で用いるアルカン対臭素比のため、臭化メチルへの比較的に高度な選択性でしばしば起こる。例えば、メタンの臭素化の場合、約6:1のメタン対臭素比が、滞留時間、温度および乱流混合などの反応条件によって、一ハロゲン化臭化メチルへの選択性を平均約88%に増加させると考えられる。これらの条件では、多少のジブロモメタンおよび検出可能限度に近い極めて少量のトリブロモメタンも臭素化反応において生成する可能性がある。約2.6対1というより低いメタン対臭素比を用いる場合、一ハロゲン化臭化メチルへの選択性は、他の反応条件によって約65〜75%の範囲に低下する可能性がある。約2.5対1よりかなり低いメタン対臭素比では、臭化メチルへの許容できない低い選択性が発生し、さらに、望ましくないジブロモメタン、トリブロモメタンおよび炭素すすのかなりの生成が認められる可能性がある。一ハロゲン化臭化メチルへのそのような選択性を達成するのに必要な第1の反応器130中の反応物の滞留時間は、比較的短く、断熱反応条件下では1〜5秒と短くてよい。エタン、プロパンおよびブタンなどのより高級なアルカンも臭素化することができ、結果として臭化エチル、臭化プロピルおよび臭化ブチルなどの一および多臭素化種が生ずる。さらに、いくつかの実施形態において、第1の反応器130に供給される乾燥臭素蒸気は、実質的に水を含まなくてよい。出願人は、少なくともいくつかの事例において、第1の反応器130中の臭素化段階から実質的にすべての水蒸気を排除することによって望ましくない二酸化炭素の生成が実質的になくなると思われるため、これが好ましい可能性があることを発見した。これが臭化アルキルへのアルカン臭素化の選択性を増加させる可能性があり、それにより、アルカンからの二酸化炭素の生成で発生する大量の廃熱がおそらくなくなる。
【0040】
臭化アルキルおよび臭化水素酸を含む流出物は、管路131により第1の反応器130から抜き出すことができる。いくつかの実施形態において、この流出物は、第2の反応器134に流れる前に熱交換器132で約150℃〜500℃の範囲の温度に部分的に冷却することができる。流出物が熱交換器132で部分的に冷却される温度は、第2の反応器134中で臭化アルキルを高分子量炭化水素に変換することが望まれる場合には約150℃〜約400℃の範囲であり、あるいは、第2の反応器134中で臭化アルキルをオレフォンに変換することが望まれる場合には約150℃〜約450℃の範囲である。第2の反応器134は、オレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物を含む生成物を生成するように、脱ハロゲン化水素し、得られるアルキル部分をオリゴマー化すると考えられる。第2の反応器134で用いる触媒および反応器134を稼動させる温度は、反応器34に関して上で述べたように所望の炭化水素生成物が得られるように選択することができる。特定の実施形態において、第2の反応器134は、触媒の固定層133を含んでいてよい。合成触媒の流動層も特定の状況、特により大規模な適用で用いることができ、コークスの絶え間ない除去および生成物組成の安定した選択性などの特定の利点を有する可能性がある。
【0041】
触媒は、通常の工程流から反応器134を分離し、管路170を介して約1バール〜約5バールの範囲の圧力、400℃〜650℃の範囲の高温の不活性ガスで反応器をパージして、実際的な範囲で触媒上に吸着した未反応物質を除去し、その後、約1〜約5バールの範囲の圧力、400℃〜650℃の範囲の高温の空気または不活性ガス希釈酸素を管路170を経て反応器134に加えることにより沈着した炭素をCOに酸化することによって、そのままで定期的に再生することができる。再生期間中に二酸化炭素および残存空気または不活性ガスを管路175を経て反応器134から排出させる。ほとんどの場合に、触媒上に吸着したHBrまたは臭化アルキルの酸化によって生ずる微量の臭素が回収され、工程内で再使用できるように、工程の酸化部分への管路175を介しての反応器134からの再生排気の経路を定めることが好ましい(示さず)。
【0042】
臭化水素、および高分子量炭化水素、オレフィンまたはその混合物を含む流出物を第2の反応器134から管路135を経て抜き出し、交換器136で約0℃〜約100℃の範囲の温度に冷却し、炭化水素ストリッパー147からの管路112における蒸気流出物と合わせる。混合物は、次にスクラバー138に通し、ポンプ143などの適切な手段により管路164でスクラバー138に輸送されるストリッピング済みの再循環水と接触させ、熱交換器155で約0℃〜約50℃の範囲の温度に冷却する。スクラバー138で凝縮した液体炭化水素生成物をすくい取り、流れ137として回収し、液体炭化水素生成物154に加える。臭化水素は、スクラバー138中で水溶液に溶解し、管路144を介してスクラバー138から除去し、炭化水素ストリッパー147に通し、水溶液中に溶解している残存炭化水素を供給原料ガス111と接触させることによりストリッピングアウトする。炭化水素ストリッパー147からのストリッピング済みの水相流出物を熱交換器146で約0℃〜約50℃の範囲の温度に冷却し、次に、管路165を経て吸収装置148に通し、残存臭素を排出流167から回収する。
【0043】
オレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物を含む残存蒸気相をスクラバー138から流出物として除去し、管路139を経て脱水装置150に送って、ガス流から実質的にすべての水を除去して、生成物回収ユニット152における液体の水の形成、凍結または水和物の形成を予防する。水は、脱水装置150から管路153を経て除去することができる。オレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物を含む乾燥ガス流を管路151を経て生成物回収ユニット152にさらに通して、オレフィン、高分子量炭化水素画分またはその混合物を管路154で液体生成物として回収する。当業者に公知であるような天然ガスまたは精製ガス流を処理し、オレフィン系炭化水素を回収するのに用いられるような、固層乾燥剤吸着の後の例えば、冷凍凝縮、低温膨張または循環吸収油または他の溶媒などの脱水および液体回収の従来の方法を本発明の実施において用いることができる。生成物回収ユニット152からの残存蒸気流出物を、工程用の燃料として用いることができるパージ流157と圧縮機158により圧縮されるリサイクル残存蒸気とに分割する。圧縮機158から放出されたリサイクル残存蒸気を、2つの画分に分割する。供給原料ガスの体積の少なくとも2.5倍に等しい第1の画分を、管路162を経て輸送し、管路125で運ばれる液体臭素と合わせて、熱交換器126に通して、液体臭素を蒸発させ、第1の反応器130に供給する。管路162から管路163を経て抜き出す第2の画分を、変換率対選択性を最大にし、炭素の沈着に起因する触媒の不活性化の速度を最小にするために、反応器134への臭化アルキル濃度を希釈し、好ましくは約350℃〜約450℃の範囲の選択される操作温度に反応器134を維持するように反応熱を吸収するのに十分な速度で制御弁160により調節する。したがって、リサイクル蒸気流出物によってもたらされる希釈は、第2の反応器134における温度を調節することに加えて、第1の反応器130における臭素化の選択性が制御されることを可能にする。
【0044】
酸素、酸素富化空気または空気110は、ほぼ環境大気圧〜約5バールの範囲の圧力で適切な装置または方法(例えば、圧縮機113により)により臭素ストリッパー114に加えることができる。これは、水から残存臭素をストリッピングすることが有利である場合に望ましい。ストリッピング済みの水は、管路164を経てストリッパー114から流出し、少なくとも2つの部分に分割することができる。ストリッピング済みの水の第1の部分は、管路164を経てリサイクルし、熱交換器155で約20℃〜約50℃の範囲の温度に冷却し、ポンプ143などの適切な手段によってスクラバー138に入るのに十分な圧力に維持することができる。リサイクルする水の部分は、交換器141および予熱器119で蒸発させなければならない水の量を最小限にし、得られる酸と比べてHBrの蒸気圧を最小限にするために管路144を経てスクラバー138から除去される臭化水素酸溶液が約10%〜約50%(重量)の範囲の臭化水素酸、より好ましくは約30%〜約48%(重量)の範囲の濃度を有するように選択される。ストリッパー114からの水の第2の部分は、管路156を経て管路164および工程から除去する。
【0045】
スクラバー148からの水溶液流出物に含まれている溶存臭化水素は、管路115を経て臭素ストリッパー114から出てくる酸素、酸素富化空気または空気と混合することができる。この混合物は、例えば、熱交換器141および予熱器119により蒸発させ、約120℃〜約600℃の範囲、最も好ましくは約150℃〜約250℃の範囲の温度に予熱することができる。蒸発し、予熱されたならば、混合物を金属臭化物塩または金属酸化物を含む第3の反応器117に加えることができる。適切な臭化物塩または臭化物塩の組合せを用いることができる。臭化物塩または金属酸化物の好ましい金属は、Fe(III)、Cu(II)もしくはZn(II)またはその混合物である。酸化反応器117中の金属臭化物塩は、濃水溶液として用いることができ、あるいは好ましくは、濃塩水溶液をシリカゲルなどの多孔性の低〜中表面積の耐酸性不活性担体に吸収させることができる。より好ましくは、10〜20重量%の範囲の酸化物の形の金属を5〜200m2/gの範囲の比表面積を有するアルミナなどの不活性担体上に沈着させる。酸化反応器117は、ほぼ環境大気圧〜約5バールの範囲の圧力および約100℃〜600℃の範囲、最も好ましくは約130℃〜350℃の範囲の温度で稼動し、反応器中で、金属臭化物は酸素により酸化され、水が主として蒸気として存在するより高い温度およびより低い圧力で作用させる担持金属臭化物塩または金属酸化物の場合、元素状臭素および金属水酸化物、金属酸化物または金属オキシ臭化物種、あるいは金属酸化物が生ずる。いずれの場合にも、臭化水素が金属水酸化物、金属オキシ臭化物または金属酸化物種と反応し、中和されて、金属臭化物塩が再生され、水が生ずる。したがって、総括反応は、触媒サイクルで作用する金属臭化物/金属水酸化物または金属酸化物によって触媒される、第1の反応器130および第2の反応器134で生成した臭化水素の元素状臭素および水蒸気への正味の酸化をもたらす。金属臭化物が、水溶液中のFe(III)Brであり、水が液体として存在し得る圧力および温度範囲で作用する場合、反応は以下のとおりであると考えられる。
【0046】
1)Fe(+3a)+6Br(−a)+3H(+a)+3/2O(g)=3Br(g)+Fe(OH)3
2)3HBr(g)+HO=3H(+a)+3Br(−a)+H
3)3H(+a)+3Br(−a)+Fe(OH)3=Fe(+3a)+3Br(−a)+3H
金属臭化物が、不活性担体上に担持されたCu(II)Br2であり、水が主として蒸気として存在するより高い温度およびより低い圧力条件で作用する場合、反応は以下のとおりであると考えられる。
【0047】
1)2Cu(II)Br2=2Cu(I)Br+Br2(g)
2)2Cu(I)Br+O(g)=Br2(g)+2Cu(II)O
3)2HBr(g)+Cu(II)O=Cu(II)Br+HO(g)
第3の反応器117の出口から蒸気として出てくる元素状臭素および水および残存酸素または窒素(空気または酸素富化空気を酸化剤として用いる場合)を管路127を経て輸送し、交換器141の二次側および冷却器120で約0℃〜約70℃の範囲の温度に冷却して、臭素および水を凝縮させ、3相分離器122に通す。3相分離器122において、液体の水は、約3重量%程度の臭素に対する限られた溶解度を有するので、凝縮するさらなる臭素は、独立したより高密度の液体臭素相を形成する。しかし、液体臭素相は、0.1%未満程度の水に対する著しくより低い溶解度を有する。したがって、実質的に乾燥した臭素蒸気は、液体臭素および水を凝縮させ、単純な物理的分離によって水を傾斜し、その後、液体臭素を再蒸発させることによって容易に得ることができる。HBrは、水相中の臭素の混和性を増大させ、十分に高濃度では、単一3元液相を生じさせるので、凝縮した液体臭素および水中の有意な残存HBrを避けるように、HBrのほぼ完全な反応をもたらす条件で操作することが重要である。
【0048】
場合によって、液体臭素は、3相分離器122から蒸気流162と混合するのに十分な圧力までポンプ124により送出され得る。このように、これらの実施形態において、臭素を回収し、工程内でリサイクルすることができ、これは有用であり得る。残存空気、酸素富化空気または酸素および凝縮しない残存臭素蒸気は、3相分離器122から出て、臭素スクラバー148に入るので、残存臭素は、管路165を経てスクラバー148に運ばれる臭化水素酸溶液流中への溶解により回収することができる。水は、3相分離器122から管路129を経て除去され、ストリッパー114に導入され得る。
【0049】
したがって、本発明の方法の特定の実施形態において、金属臭化物/金属水酸化物、金属オキシ臭化物または金属酸化物は、触媒サイクルにおいて作用し、工程内での再使用のために臭素がリサイクルされることを可能にする。金属臭化物は、水相または蒸気相中で約100℃〜約600℃の範囲、最も好ましくは約120℃〜約350℃の範囲の温度で酸素、酸素富化空気または空気により容易に酸化されて、元素状臭素蒸気および金属水酸化物、金属オキシ臭化物または金属酸化物を生ずる。約180℃を下回る温度での操作は、有利であり、それにより、低価格の耐食性フルオロポリマーライニング装置の使用が可能となる。臭化水素は、金属水酸化物または金属酸化物との反応により中和され、水蒸気および金属臭化物が生ずる。
【0050】
元素状臭素蒸気および水蒸気は、凝縮させ、単純な物理的分離により液相で容易に分離され、その後に乾燥臭素が得られる。有意な水が存在しないことは、COの生成を伴わないアルカンの選択的な臭素化ならびにその後の実質的な分枝アルカン、置換芳香族化合物またはその混合物を含む主として高分子量炭化水素への臭化アルキルの効率的かつ選択的反応が可能になる。臭素化反応および反応器134におけるその後の反応からの副生成物臭化水素蒸気は、水相に容易に溶解し、金属臭化物の酸化により生ずる金属水酸化物または金属酸化物種により中和される。
【0051】
図4Aに例示する本発明の方法の他の実施形態によれば、アルキル臭素化および臭化アルキル変換段階は、上で図2および3に関して述べた対応する段階と実質的に同様な方法で稼動させる。より詳細には、約1バール〜約30バールの範囲の圧力の供給原料ガスとリサイクルガス流との混合物からなる低分子量アルカンを含むガス流をそれぞれ管路、管または導管262および211により輸送または運び、管路225において乾燥臭素液と混合する。得られた混合物をポンプ224により輸送し、熱交換器226に通し、熱交換器内で液体臭素を蒸発させる。低分子量アルカンおよび乾燥臭素蒸気の混合物を反応器230に供給する。好ましくは、反応器230に導入された混合物中の低分子量アルカンと乾燥臭素蒸気とのモル比は、約2.5:1を超え、より好ましくは約4:1を超え、最も好ましくは約7:1を超える。反応器230は、混合物を250℃〜400℃の範囲の反応開始温度に加熱する入口予熱帯228を有する。
【0052】
第1の反応器230中で、約250℃〜約600℃の範囲の比較的に低い温度および約1バール〜約30バールの範囲の圧力で、低分子量アルカンを乾燥臭素蒸気と発熱的に反応させて、気体臭化アルキルおよび臭化水素酸蒸気を生成させる。本開示により当業者に明らかなように、第1の反応器30中の臭素化反応は、放熱反応または触媒反応であってよい。第1の反応器30中で用いることができる適切な触媒の非限定的な例としては、Olahら、J. Am. Chem. Soc.、1985年、107巻、7097〜7105頁に記載されているように、白金、パラジウム、またはFeOBrもしくはFeOClなどの担持非量論的金属オキシハロゲン化物またはTaOF、NbOF、ZrOF、SbOFなどの担持金属オキシハロゲン化物などがある。操作温度範囲の上限は、供給混合物が臭素化反応の発熱性のために加熱される反応開始温度範囲の上限より高い。メタンの場合、臭化メチルの生成は以下の一般的反応により起こる。
【0053】
CH(g)+Br(g)→CHBr(g)+HBr(g)
気相臭素化反応のフリーラジカルメカニズムのため、ジブロモメタンおよび多少のトリブロモメタンならびに他の臭化アルキルも生成する。しかし、本発明の方法によるこの反応は、第1の反応器230で用いるアルカン対臭素比のため、臭化メチルへの比較的に高度な選択性でしばしば起こる。例えば、メタンの臭素化の場合、約6:1のメタン対臭素比が、滞留時間、温度および乱流混合などの反応条件によって、一ハロゲン化臭化メチルへの選択性を平均約80%に増加させると考えられる。これらの条件では、多少のジブロモメタンおよび検出可能限度に近い極めて少量のトリブロモメタンも臭素化反応において生成する可能性がある。約2.6対1というより低いメタン対臭素比を用いる場合、一ハロゲン化臭化メチルへの選択性は、他の反応条件によって約65〜75%の範囲に低下する可能性がある。約2.5対1よりかなり低いメタン対臭素比では、臭化メチルへの許容できない低い選択性が発生し、さらに、望ましくないジブロモメタン、トリブロモメタンおよび炭素すすのかなりの生成が認められる可能性がある。一ハロゲン化臭化メチルへのそのような選択性を達成するのに必要な第1の反応器230中の反応物の滞留時間は、比較的短く、断熱反応条件下では1〜5秒と短くてよい。エタン、プロパンおよびブタンなどのより高級なアルカンも臭素化することができ、結果として臭化エチル、臭化プロピルおよび臭化ブチルなどの一および多臭素化種が生ずる。さらに、いくつかの実施形態において、第1の反応器230に供給される乾燥臭素蒸気は、実質的に水を含まなくてよい。出願人は、少なくともいくつかの事例において、第1の反応器230中の臭素化段階から実質的にすべての水蒸気を排除することによって望ましくない二酸化炭素の生成が実質的になくなると思われるため、これが好ましい可能性があることを発見した。これが臭化アルキルへのアルカン臭素化の選択性を増加させ、それにより、アルカンからの二酸化炭素の生成で発生する大量の廃熱がおそらくなくなる可能性がある。
【0054】
臭化アルキルおよび臭化水素を含む流出物は、管路231により第1の反応器230から抜き出される。いくつかの実施形態において、この流出物は、第2の反応器234に流れる前に熱交換器232で部分的に冷却することができる。流出物が熱交換器232で部分的に冷却される温度は、第2の反応器234中で臭化アルキルを高分子量炭化水素に変換することが望まれる場合には約150℃〜約390℃の範囲であり、あるいは、第2の反応器234中で臭化アルキルをオレフィンに変換することが望まれる場合には約150℃〜約450℃の範囲である。第2の反応器234は、オレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物を含む生成物を生成するように、脱ハロゲン化水素し、得られるアルキル部分をオリゴマー化すると考えられる。第2の反応器234で用いる触媒および反応器234を稼動させる温度は、反応器34に関して上で述べたように所望の炭化水素生成物が得られるように選択することができる。特定の実施形態において、第2の反応器234は、触媒の固定層233を含んでいてよい。合成触媒の流動層も特定の状況、特により大規模な適用で用いることができ、コークスの絶え間ない除去および生成物組成の安定した選択性などの特定の利点を有する可能性がある。
【0055】
触媒は、通常の工程流から反応器234を分離し、管路270を介して約1バール〜約5バールの範囲の圧力、約400℃〜約650℃の範囲の高温の不活性ガスでパージして、実際的な範囲で触媒上に吸着した未反応物質を除去し、その後、約1〜約5バールの範囲の圧力、約400℃〜約650℃の範囲の高温の空気または不活性ガス希釈酸素を管路270を経て反応器234に加えることにより沈着した炭素をCOに酸化することによって、そのままで定期的に再生することができる。再生期間中に二酸化炭素および残存空気または不活性ガスを管路275を経て反応器234から排出させる。ほとんどの場合に、触媒上に吸着したHBrまたは臭化アルキルの酸化によって生ずる微量の臭素が回収され、工程内で再使用できるように、工程の酸化部分への管路275を介しての反応器234からの再生排気の経路を定めることが好ましい(示さず)。
【0056】
臭化水素、および高分子量炭化水素、オレフィンまたはその混合物を含む流出物を第2の反応器234から管路235を経て抜き出し、交換器236で約100℃〜約600℃の範囲の温度に冷却する。図4Aに例示するように、冷却した流出物を、弁238を開位置とし、弁239および243を閉位置として管路235および241を経て輸送し、固相金属酸化物の層298を含む容器または反応器240に導入する。金属酸化物の金属は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Sn)またはスズ(Sn)から選択される。金属は、所望の操作温度に関連してその物理的および熱力学的特性の影響に関して、また環境上および健康上の影響の有無ならびに費用にも関して選択する。好ましくは、マグネシウム、ニッケル、銅、鉄またはその混合物を金属(単数または複数)として用い、マグネシウム、ニッケルまたはその混合物が最も好ましい。これらの金属は、酸化物を形成するだけでなく、臭化物塩も形成するという特性を有し、その反応は、約500℃未満の温度範囲では可逆的である。固体金属酸化物は、適切な耐摩耗性担体、例えば、Davison Catalysts of Columbia、Marylandにより製造されたDavicat Grade 57などの合成非晶質シリカ上に固定化することが好ましい。あるいはより好ましくは、約5〜400m2/gの範囲の比表面積を有するシリカまたはアルミナ担体上に固定化する。反応器240中で、臭化水素酸を約600℃以下、好ましくは約100℃〜約550℃の温度で以下の一般反応(Mは金属を表す)により金属酸化物と反応させる。
【0057】
2HBr+MO→MBr+H
この反応によって生ずる水蒸気は、高分子炭化水素とともに管路244、218および216で開放弁219を経て熱交換器220に輸送し、熱交換器内で混合物が約0℃〜約70℃の範囲の温度に冷却する。この冷却した混合物を脱水装置250に送って、ガス流から実質的にすべての水を除去する。次いで、脱水装置250から管路253を経て水を除去する。オレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物を含む乾燥ガス流を管路251を経て生成物回収ユニット252にさらに通して、オレフィン、C5+画分またはその混合物を液体生成物として管路254に回収する。当業者に公知であるような天然ガスまたは精製ガス流を処理し、オレフィン系炭化水素を回収するのに用いられるような、固層乾燥剤吸着の後の例えば、冷凍凝縮、低温膨張または循環吸収油または他の溶媒などの脱水および液体回収の従来の方法を本発明の実施において用いることができる。生成物回収ユニット252からの残存蒸気流出物は、工程用の燃料として用いることができるパージ流257と圧縮機258により圧縮されるリサイクル残存蒸気とに分割する。圧縮機258から放出されたリサイクル残存蒸気は、2つの画分に分割する。供給原料ガスの容積の少なくとも1.5倍に等しい第1の画分を、管路262を経て輸送し、管路225で運ばれる液体臭素および供給原料ガスと合わせて、熱交換器226に通して、液体臭素を蒸発させ、上述のような方法で第1の反応器230に供給する。管路262から管路263を経て抜き出す第2の画分を、変換率対選択性を最大にし、炭素の沈着に起因する触媒の不活性化の速度を最小にするために、反応器234への臭化アルキル濃度を希釈し、好ましくは約300℃〜約450℃の範囲の選択される操作温度に反応器234を維持するように反応熱を吸収するのに十分な率で制御弁260により調節する。したがって、リサイクル蒸気流出物によってもたらされる希釈は、第2の反応器234における温度を調節することに加えて、第1の反応器230における臭素化の選択性が制御されることを可能にする。
【0058】
酸素、酸素富化空気または空気210を、送風機または圧縮機213によりほぼ環境大気圧〜約10バールの範囲の圧力で、酸素、酸素富化空気または空気が約30℃〜約600℃、より好ましくは100℃〜約500℃の範囲の温度に予熱される熱交換器215を介して管路214、管路215および弁249を経て、固相金属臭化物の層299を含む第2の容器または反応器246に供給する。酸素は、以下の一般反応(Mは金属を表す)により金属臭化物と反応する。
【0059】
MBr+1/2O→MO+Br
このように、実質的にHBrを含まない乾燥臭素蒸気が生成し、それにより、液体臭素から水および臭化水素を後に分離する必要がなくなる。反応器246は、600℃以下、より好ましくは約300℃〜約500℃で稼動させる。得られた臭素蒸気は、反応器246から管路247、弁248および管路242を経て熱交換器または冷却器221に輸送し、臭素を液体に凝縮させる。液体臭素を管路242を経て分離器222に輸送し、ポンプ224などの適切な手段により、液体臭素を管路225を経て除去し、管路225を経て熱交換器226および第1の反応器230に輸送する。残存空気または未反応酸素は、分離器222から管路227を経て、当業者により選択されるような適切な溶媒または適切な固体吸着剤を含むベンチュリスクラビングシステムなどのスクラビングユニット223に輸送し、残りの臭素を捕捉する。捕捉された臭素は、加熱または他の適切な手段によりスクラビング溶媒または吸着剤から脱離させ、そのように回収された臭素を管路212を経て管路225に輸送する。スクラビング済みの空気または酸素を、管路229を経て排出する。このように、窒素および他の実質的に非反応性成分は、本発明のシステムから除去され、それにより、当工程の炭化水素を含む部分に入ることが可能でない。また、周囲の環境への臭素の損失も避けられる。
【0060】
単純な物理的溶解性によるのではなく、本実施形態による化学反応によりHBrを除去することの1つの利点は、より高い工程温度でHBrを低レベルまで実質的に完全に除去することである。他の明確な利点は、除去される臭素に水がないことであり、それにより、臭素相と水相の分離および水相からの残存臭素のストリップングの必要がなくなることである。
【0061】
反応器240および246は、サイクル式で操作することができる。図4Aに例示するように、弁238および219は、臭化水素酸が第2の反応器240から抜き出される流出物から除去できるように開放状態で操作し、一方、弁248および249は、空気、酸素富化空気または酸素が反応器246中に流れて、反応器内に含まれている固体金属臭化物を酸化することができるように開放状態で操作する。反応器240および246中の金属酸化物および金属臭化物の大幅な変換がそれぞれ起こったならば、これらの弁を閉止する。この時点では、反応器246内の層299は、実質的に固体金属酸化物であり、一方、反応器240内の層298は、実質的に固体金属臭化物である。
【0062】
当業者に明らかなように、反応器240および246の間のサイクリングフローの段階の間に、サイクルにおける後の段階への炭化水素および臭素の損失を抑制するために不活性ガス源を用いて、最初に反応器240中に残存する残存炭化水素をパージし、また反応器246中に残存する残存臭素をパージすることが好ましい。サイクルの段階の間に層の間をパージすることにより、より高分子量の生成物炭化水素の可能な損失および/または臭素化が抑制される。
【0063】
図5Aに例示するように、弁245および243は、酸素、酸素富化空気または空気が反応器240中に流れて、反応器内に含まれている固体金属臭化物を酸化することができるように後に開放し、一方、弁239および217は、第2の反応器234から抜き出される高分子量炭化水素および臭化水素を含む流出物が管路237を経て反応器246に導入されるように開放する。反応器は、それぞれ反応器246および240中の金属酸化物および金属臭化物の大幅な変換が起こるまでこのように稼動させ、次に、前述のように弁を開放および閉止することにより、図4Aに例示するフロー概略図にサイクルを戻す。
【0064】
また当業者に明らかなように、固体不活性担体上に沈着させたMgO/MgBr2などの活性金属酸化物/金属臭化物の量(不活性固体担体上の原子状金属としての金属の担持重量パーセントとして表すことができる)は、固体層298および299中に発生する反応熱と固体不活性担体の熱容量との比に関係するので、反応器240および246の全域で起こる温度変化に影響を及ぼす。不活性担体の量に対する金属の担持量を増加させることは、規定のHBr除去能力に必要な容器のサイズが減少することになるので、望ましいが、反応熱と不活性担体の熱容量との比が比較的大きくなるため、発生する熱の増加も大きくなる。結果として生ずる温度上昇は過度になり、高分子量炭化水素生成物の酸化もしくは熱分解または金属臭化物の揮発性をもたらす可能性がある。したがって、許容できる温度上昇は、あるいはサイクル時間を制限し、または固体層298および299の有用なHBr除去能力を実質的に制限する可能性がある。送風機または圧縮機による外部熱交換器を介しての流出ガスリサイクルの使用(示さず)は、当業者により反応器240および246の全域の温度上昇を制限する、また反応器240および246のサイクリングの間における固体層298および299の冷却を達成する手段とみなされる可能性がある。2つの反応器240および246は本発明の概念を例示することが示されているが、連続工程操作を可能にし、HBr除去段階からBr2生成段階への反応器の切替えの間のパージおよび冷却も可能にする実際的手段として、2つを超える反応器、すなわち、3つ(またはそれ以上)を特定の実施形態における本発明の実施に利用することができることは、当業者に明らかであるはずである。
【0065】
酸素を、管路210を経て反応器に含まれる固体金属臭化物を酸化するのに用いる反応器に輸送する酸化気体として用いる場合、反応器246(図4B)または240(図5B)から生成された臭素蒸気が管路242および225を経て第1の反応器230に直接輸送されるように、図Aおよび5Aに示される本発明の方法の実施形態を修正することができる。酸素は反応性であり、反応器246および240は、流出Br2蒸気中の酸素の実質的な存在を避けるために酸素の制御された限定的供給により稼動させることができるので、窒素などの非反応性成分から臭素蒸気を分離するために臭素蒸気を液体に凝縮させる必要が未然に防がれる。市販の空気分離ユニット(ASU)などの実質的にすべての市販の酸素源は管路210に必要な圧力で酸素を供給するので、圧縮機213は、図4Bおよび5Bに示さない。そうでない場合、当業者に明らかなように、そのような圧力を得るために圧縮機213を用いることができるであろう。
【0066】
図6Aに例示する本発明の実施形態において、それぞれ反応器240および246に含まれる固体金属酸化物粒子および固体金属臭化物粒子を流動化し、下で述べるように接続して、各反応器に出入する流れの方向を変化させるための弁などの装置を備える必要なしに層の連続操作を可能にする。この実施形態によれば、高分子量炭化水素および臭化水素酸を含む流出物を第2の反応器234から管路235を経て抜き出し、交換器236で約100℃〜約500℃の範囲の温度に冷却し、固体金属酸化物粒子の層298を含む反応器240の底部に導入する。この導入された流体の流れは、臭化水素が図4Aに関して上で述べたように金属酸化物と反応しているときに、反応器240内の層298の粒子の上方への運動を生じさせる。層298の上部またはその近くにおいては、反応器240中の臭化水素と固体金属酸化物との実質的に完全な反応のため、耐摩耗性担体上に実質的に固体金属臭化物を含む粒子を堰またはサイクロンまたは固体/ガス分離の他の従来の手段により抜き出し、重力により管路259を流下させ、反応器246内の固体金属臭化物粒子の層299の底部またはその近くに導入する。図6Aに例示する実施形態において、酸素、酸素富化空気または空気210を送風機または圧縮機213によりほぼ環境大気圧〜約10バールの範囲の圧力で供給し、管路214を経て熱交換器215に輸送し、熱交換器中で酸素、酸素富化空気または空気を約30℃〜約600℃、より好ましくは100℃〜約500℃の範囲の温度に予熱し、第2の容器または反応器246の固相金属臭化物の層299の下に導入する。酸素は、図4Aに関して上で述べたように金属臭化物と反応して、乾燥した、実質的にHBrを含まない臭素蒸気を生成する。酸素が金属臭化物と反応しているときに、この導入されたガスの流れが層299における粒子を反応器246内で上方に流れさせる。層298の上部またはその近くにおいては、反応器246中の酸素と固体金属臭化物との実質的に完全な反応のため、耐摩耗性担体上に実質的な量の固体金属酸化物を含む粒子を堰またはサイクロンまたは固体/ガス分離の他の従来の手段により抜き出し、重力により管路264を流下させ、反応器240内の固体金属酸化物粒子の層298の底部またはその近くに導入する。このように、反応器240および246は、操作のパラメーターを変更せずに連続的に操作することができる。
【0067】
当業者には公知であるように、選択される金属酸化物または金属臭化物の選択によって、発熱反応の場合には熱を除去するための、あるいは吸熱反応の場合には熱を加えるために固体298および299の移動層内に設置した熱交換器を使用することは有利である可能性がある。好ましいMgO/MgBr2を用いる場合、両反応は発熱である。
【0068】
図6Bに例示する実施形態において、酸素を酸化気体として使用し、管路210を経て反応器246に輸送する。したがって、図6Aに例示する本発明の方法の実施形態は、反応器246から生成される臭素蒸気が管路242および225を経て第1の反応器230に直接輸送されるように修正される。酸素は反応性であり、反応器246は、流出臭素蒸気中の酸素の実質的な存在を避けるために酸素の制御された限定的供給により稼動させることができるので、窒素などの非反応性成分から臭素蒸気を分離するために臭素蒸気を液体に凝縮させる必要が未然に防がれる。市販の空気分離ユニットなどの実質的にすべての市販の酸素源は管路210に必要な圧力で酸素を供給するので、圧縮機213は、図6Bに示さない。そうでない場合、当業者に明らかなように、そのような圧力を得るために圧縮機213を用いることができるであろう。
【0069】
図7に例示する本発明の方法の他の実施形態によれば、アルキル臭素化および臭化アルキル変換段階は、下記を除いて、図4Aに関して詳細に述べた対応する段階と実質的に同様な方法で操作する。しかし、この実施形態においては、反応器246からの流出物中に実質的な未反応酸素が存在することを防ぐように、制御された限定的な量の酸化気体を用いて反応器246を稼動させることが重要である。反応器246を出てくる残存窒素および臭素蒸気を管路247、弁248および管路242および弁300を経て熱交換器または冷却器221に輸送し、臭素含有気体を約30℃〜約300℃の範囲の温度に冷却する。次に、臭素含有蒸気を管路242を経て低い原子価状態の固相金属臭化物の層322を含む容器または反応器320に輸送する。低い原子価状態の金属臭化物の金属は、銅(Cu)、鉄(Fe)またはモリブデン(Mo)から選択される。金属を、所望の操作温度に関連してその物理的および熱力学的特性の影響に関して、また環境上および健康上の影響の有無ならびに費用に関しても選択する。好ましくは、銅または鉄を金属として用い、鉄が最も好ましい。固体金属臭化物は、適切な耐摩耗性担体、例えば、Davison Catalysts of Columbia、Marylandにより製造されたDavicat Grade 57などの合成非晶質シリカ上に固定化することが好ましい。より好ましくは、金属を約5〜400m2/gの範囲の比表面積を有するアルミナ担体上に約10〜20重量%の範囲で酸化物の形で沈着させる。反応器320中で、臭素蒸気を約300℃以下、好ましくは選択する金属臭化物によって約30℃〜約200℃の温度で以下の一般反応(Mは金属を表す)により、好ましくは適切な耐摩耗性担体上に保持された固相金属臭化物と反応させる。
【0070】
2MBr+Br→2MBrn+1
このように、臭素を反応器320中で第2の金属臭化物、すなわち、2MBrn+1として保存されるが、残存空気または酸素を含む得られた蒸気は、反応器320から管路324、弁326および管路318を経て排出される。
【0071】
供給原料ガス(管路211)およびリサイクルガス流の混合物からなる低分子量アルカンを含むガス流は、管路262を経て熱交換器352に輸送または運ばれ、約150℃〜約600℃の範囲の温度に予熱され、弁304および管路302を経て、酸化原子価状態の固相金属臭化物の層312を含む第2の容器または反応器310に輸送される。酸化原子価状態の金属臭化物の金属は、銅(Cu)、鉄(Fe)またはモリブデン(Mo)から選択される。金属を、所望の操作温度に関連してその物理的および熱力学的特性の影響に関して、また環境上および健康上の影響の有無ならびに費用に関しても選択する。好ましくは、銅または鉄を金属として用い、鉄が最も好ましい。酸化状態の固体金属臭化物は、適切な耐摩耗性担体、例えば、Davison Catalysts of Columbia、Marylandにより製造されたDavicat Grade 57などの合成非晶質シリカ上に固定化することが好ましい。より好ましくは、金属を約5〜200m2/gの範囲の比表面積を有するアルミナ担体上に担持された10〜20重量%の範囲で酸化物の形で沈着させる。ガス流の温度は、約150℃〜約600℃であり、好ましくは約150℃〜約300℃である。第2の反応器310において、ガス流の温度は、以下の一般反応(Mは金属を表す)により、酸化原子価状態の固相金属臭化物を熱分解して、元素状臭素蒸気および還元状態の固体金属臭化物を生じさせる。
【0072】
2MBrn+1→2MBr+Br
さらに、約200℃以上の温度で、ガス流に含まれる低分子量アルカンは、以下の一般反応(Mは金属を表す)により、酸化状態の固体金属臭化物の加熱された層上で反応して、気体臭化アルキル、臭化水素酸蒸気および還元状態の固体金属臭化物を生成する。
【0073】
CH(g)+2MBrn+1→CHBr(g)+HBr(g)+MBr
ガス流の温度およびしたがって酸化原子価状態の固相金属臭化物の層312の温度を制御することにより、第2の容器または反応器310中で臭素が遊離し、低分子量アルカンが臭素化される程度を制御することができる。低分子量アルカンが酸化状態の固体金属臭化物の加熱層上で反応して気体臭化アルキルを生成する正確なメカニズムは完全には理解されていないが、臭素化が金属臭化物の担体の固体表面上で起こり、それにより、反応が低温、例えば約200℃〜約300℃で進行することが可能になり、それにより、フリーラジカル気相臭素化が抑制され、多臭素化アルカンの生成が最小限になるということが出願人の確信である。
【0074】
得られた臭素蒸気、臭化アルキルおよび臭化水素酸は、アルキル臭素化反応器230に導入される前に管路314、315、弁317、管路330、熱交換器226を経て低分子量アルカンを含むガス流により輸送される。かなりの量の低分子量気体アルカンが第2の容器または反応器310中で臭素化される場合、熱交換器226および臭素化反応器230は、工程概略図から除去することができ、ガス流は、交換器232を経て第2の反応器234に直接輸送することができる。これは、ガス流を加熱せずにガス流を熱交換器226および反応器230に通すことを伴うか、あるいは、当業者に明らかであるように、これらの成分の両方を除去またはバイパスすることにより達成することができる。
【0075】
反応器310および320は、サイクル式で操作することができる。図7に例示するように、弁304は、低分子量アルカンを含むガス流を第2の反応器310に輸送することができるように開放状態で操作し、一方、弁317は、上記のようにかなりの量の低分子量気体アルカンが第2の反応器310中で臭素化される場合、反応器310中で生成する臭素蒸気、臭化アルキルおよび臭化水素酸を含むこのガス流を熱交換器232を経てアルキル臭素化反応器230または反応器234に輸送することができるように開放状態で操作する。同様に、弁306は、反応器246からの臭素蒸気を管路307を経て反応器320に輸送することができるように開放状態で操作し、一方、弁326は、残存空気または酸素を反応器320から管路307を経て排出することができるように開放状態で操作する。それぞれ反応器320および310中の還元金属臭化物および酸化金属臭化物の対応する酸化および還元状態への大幅な変換が起こったならば、これらの弁は、図8に例示するように閉止する。この時点では、反応器320中の層322は、実質的に酸化状態の金属臭化物の層であり、一方、反応器310中の層312は、実質的に還元状態の金属臭化物である。図8に例示するように、低分子量アルカンを含むガス流が管路262、熱交換器352(好ましい鉄臭化物または銅臭化物を用いる場合には熱交換器中でガス流を約150℃〜約600℃の範囲または好ましくは約150℃〜約300℃の範囲に加熱する)を経て、弁308および管路309を経て反応器320に輸送または運ばれて、酸化原子価状態の固相金属臭化物を熱分解して、元素状臭素蒸気および還元状態の固体金属臭化物を生じさせることができるように、弁308および332は開放されており、その時、弁304、317、306および326は閉止されている。約250℃以上で操作する場合、得られる臭素蒸気は、酸化状態の固体金属臭化物の加熱された層上でガス流に含まれる低分子量アルカンと反応して、気体アルキル臭化物および臭化水素を生成する可能性もある。得られた臭素蒸気、ならびに低分子量アルカンとの反応により生成したアルキル臭化物および臭化水素は、アルキル臭素化反応器230に(または上記のようにかなりの量の低分子量気体アルカンが第2の反応器310中で臭素化される場合には、熱交換器232を経て反応器234に)導入する前に、管路324および330ならびに熱交換器226を経て低分子量アルカンを含むガス流により輸送される。当業者には明らかなように、反応器内に残存している低分子量炭化水素、臭素、並び臭化アルキルおよび臭化水素は、層をサイクリングする前に炭化水素および臭素の損失を抑えるために不活性ガスの流れ(示さず)でパージすることが好ましい。次に、弁300を開けて、反応器246から出てくる臭素蒸気を管路242を経て、交換器221を通して反応器310中に輸送し、反応器中で還元原子価状態の固相金属臭化物が臭素と反応して、臭素を金属臭化物として効率的に貯蔵する。さらに、弁316も開けて、臭素に実質的に欠けている得られたガスを管路314および318を経て排出させる。それぞれ反応器310および320中の還元金属臭化物および酸化金属臭化物の層の対応する酸化および還元状態への大幅な変換が起こるまで、反応器をこのように操作し、次いで、弁を前述のように開放および閉止することによって反応器のサイクルを図7に例示するフロー概略図に戻す。
【0076】
また当業者に明らかなように、固体不活性担体上に沈着させたFeBr2/FeBr3などの活性金属臭化物の量(不活性固体担体上の原子状金属としての金属の担持重量パーセントとして表すことができる)は、固体層312および322中に発生する反応熱と固体不活性担体の熱容量との比に関係するので、反応器312および320の全域で起こる温度変化に影響を及ぼす。不活性担体の量に対する金属の担持量を増加させることは、規定の臭素貯蔵能力に必要な容器のサイズが減少することになるので、望ましいが、反応熱と不活性担体の熱容量との比が比較的大きくなるため、発生する熱の増加も大きくなる。結果として生ずる温度上昇は過度になり、平衡に温度依存性があるため、還元金属臭化物の平衡臭素貯蔵能力が制限される可能性がある。したがって、許容できる温度上昇は、あるいはサイクル時間を制限し、または固体層312および322の有用な臭素貯蔵能力を実質的に制限する可能性がある。送風機または圧縮機による外部熱交換器を介しての流出ガスリサイクルの使用(示さず)は、当業者により臭素貯蔵段階中の反応器310および320の全域の温度上昇を制限する、また反応器312および320のサイクリング段階の間における固体層312および322の冷却および加熱を達成する手段とみなされる可能性がある。2つの反応器310および320は本発明の概念を例示することが示されているが、連続工程操作を可能にし、また、臭素の貯蔵および臭素発生段階の間のパージ、冷却および加熱も可能にする実際的手段として、2つを超える反応器、すなわち、3つ(またはそれ以上)を特定の実施形態における本発明の実施に利用することができることは、当業者に明らかであるはずである。
【0077】
図9に例示する本発明の実施形態において、それぞれ反応器310および320に含まれる層312および322を流動化し、下で述べるように接続して、各反応器に出入する流れの方向を変化させるための弁などの装置を備える必要なしに層の連続操作を可能にする。この実施形態によれば、管路242を経て反応器246から抜き出した臭素含有ガスを交換器370および372で、選択した金属臭化物によって約30℃〜約300℃の範囲の温度に冷却し、流動化状態の移動固体層322を含む反応器320の底部に導入する。この導入された流体の流れは、臭素蒸気が図7に関して上で述べたように層322の底部に入った還元金属臭化物と反応しているときに、反応器320内の層322の粒子を上方に流れさせる。層322の上部またはその近くにおいては、反応器320中の臭素蒸気と還元金属臭化物との実質的に完全な反応のため、耐摩耗性担体上に実質な量の酸化金属臭化物を含む粒子を堰、サイクロンまたは固体/ガス分離の他の従来の手段により抜き出し、重力により管路359を流下させ、反応器310内の層312の底部またはその近くに導入する。
【0078】
当業者には公知であるように、温度依存性平衡反応の程度を増大させ、それにより、固体の所与の質量流れにおける臭素貯蔵能力を増加させるために、反応器320中で起こる発熱反応により発生する熱を除去するために固体の移動層322内に設置した熱交換器を使用することは有利である可能性がある。実質的に臭素に欠ける得られたガスは、管路350を経て排出される。図9に例示する実施形態において、供給原料ガス(管路211)およびリサイクルガス流の混合物からなる低分子量アルカンを含むガス流は、管路262を経て熱交換器352に輸送または運ばれ、好ましい鉄臭化物または銅臭化物を用いる場合、ガス流は約150℃〜約600℃の範囲、または好ましくは約150℃〜約300℃の範囲に加熱され、反応器310に導入される。加熱ガス流は、層312の底部またはその近くに入る存在する酸化原子価状態の固相金属臭化物を熱分解して、元素状臭素蒸気および還元状態の固体金属臭化物を生じさせ、またガス流に含まれる低分子量アルカンも酸化状態の固体金属臭化物の加熱された層上で反応して、気体臭化アルキルおよび臭化水素を生成する可能性がある。この導入されたガスの流れは、酸化金属臭化物が熱分解されているときに、反応器310内の層312中の粒子を上方に流れさせる。層312の上部またはその近くにおいて、反応器310中の熱分解のため、耐摩耗性担体上に実質な量の還元固体金属臭化物を含む粒子を堰、サイクロンまたは固体/ガス分離の他の従来の手段により抜き出し、重力により管路364を流下させ、反応器310内の層322の底部またはその近くに導入する。当業者には明らかなように、温度依存性平衡反応の程度を増大させ、それにより、固体の所与の質量流れにおける臭素発生能力を増加させるために、反応器310中で起こる吸熱反応に熱を供給するために固体の移動層312内に設置した熱交換器を使用することは有利である可能性がある。
【0079】
得られた臭素蒸気、臭化アルキルおよび臭化水素酸は、管路354および熱交換器355を経て低分子量アルカンを含むガス流により輸送され、アルキル臭素化反応器230に導入されるか、あるいは、上記のように、かなりの量の低分子量気体アルカンが第2の反応器310中で臭素化される場合には、熱交換器232を経て反応器234に導入される。このように、反応器310および320は、操作のパラメーターを変更せずに連続的に操作することができる。
【0080】
本発明の方法を一般的に叙述するブロック流れ図は、図10に例示したが、本発明の方法の特定の実施形態のいくつかの態様を示す。図10に例示した本発明の方法の一般的叙述によれば、低分子量アルカンを含む供給ガス流は、臭素蒸気と合わせ、臭素化反応器に運ぶ前に、C2+成分および特にC3+成分を除去するために前処理することができる。臭素化反応器に導入された供給ガス流中のC成分の濃度は、約0.1モル%〜約10.0モル%、より好ましくは約0.5モル%〜約5.0モル%、最も好ましくは約1モル%〜約5モル%であってよい。ある程度のC3+炭化水素は臭素化反応器中で許容できるが、そのより高い濃度は、臭素化反応器中の付着物および閉塞ならびに下流成分をもたらす、炭素含有コークス様固体の速やかな形成をもたらす可能性がある。臭素化反応器に導入された供給ガス流中のC3+成分の濃度は、約0.01〜0.2モル%、好ましくは約0.01〜0.1モル%、最も好ましくは約0.01〜0.05モル%であってよい。図10に例示するように、供給原料ガスを合成反応器からの流出物と合わせ、前処理して、供給原料ガスに含まれている、および本方法の高分子量生成物からも、C2+成分および特にC3+成分を選択的に除去することができる。より具体的には、供給原料ガス、残存炭化水素およびオレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物を脱水および生成物回収ユニットに運び、ユニット中で水を残りの成分から除去することができる。オレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物ならびにC2+成分を次にガスから分離することができる。主としてメタンと上記のような許容できる濃度のC2+低分子アルカン成分である生成物回収ユニットからの残存ガスは、次に臭素と合わせ、本発明の方法のアルカン臭素化段階に運ぶ。残りのC2+成分およびオレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物は、C2+成分を液体炭化水素生成物から除去する、生成物スタビライザーカラムに運んでもよい。C2+成分は、下文で述べるような方法でシフト反応器とともに用いることができ、一方、液体炭化水素生成物は、使用のためにまたはさらなる石油化学的もしくは燃料処理のために生成物スタビライザーカラムから除去することができる。
【0081】
前記のような本発明の方法によれば、主としてメタンおよび許容できる量のC2+低分子量アルカン成分を含む供給原料ガスは、約250℃〜約600℃の範囲の比較的低い温度および約1バール〜約30バールの範囲の圧力で乾燥臭素蒸気との臭素化反応において発熱的に反応して、気体臭化アルキルおよび臭化水素を生成する。操作温度範囲の上限は、臭素化反応の発熱性のために供給混合物が加熱される反応開始温度範囲の上限より高い。メタンの場合、臭化メチルの生成は以下の一般反応により起こると考えられる。
【0082】
CH(g)+Br(g)→CHBr(g)+HBr(g)
気相臭素化反応のフリーラジカルメカニズムのため、ジブロモメタンおよび多少のトリブロモメタンならびに他の臭化アルキルも生成され得る。用いるアルカン対臭素比のため、臭素化反応における臭素化は、臭化メチルへの比較的に高度な選択性でしばしば起こる。例えば、メタンの臭素化の場合、約6:1のメタン対臭素比が、滞留時間、温度および乱流混合などの反応条件によって、一ハロゲン化臭化メチルへの選択性を平均約88%に増加させると考えられる。これらの条件では、多少のジブロモメタンおよび検出可能限度に近い極めて少量のトリブロモメタンも臭素化反応において生成する可能性がある。約2.6対1というより低いメタン対臭素比を用いる場合、一ハロゲン化臭化メチルへの選択性は、他の反応条件によって約65〜75%の範囲に低下する可能性がある。約2.5対1よりかなり低いメタン対臭素比では、臭化メチルへの許容できない低い選択性が発生し、さらに、望ましくないジブロモメタン、トリブロモメタンおよび炭素すすのかなりの生成が認められる可能性がある。臭素化反応器で用いる比較的に高いメタン対臭素比は、臭素が臭素化反応器で実質的に消費されることも保証するものであり、それにより、元素状臭素が存在するため、本発明の方法の後の段階におけるフリーラジカル臭素化の後の発生を効果的に抑制するものである。一ハロゲン化臭化メチルへのそのような選択性を達成するのに必要な臭素化反応器中の反応物の滞留時間は、比較的短く、断熱反応条件下では1〜5秒と短くてよい。エタン、プロパンおよびブタンなどのより高級なアルカンも臭素化することができ、結果として臭化エチル、臭化プロピルおよび臭化ブチルなどの一および多臭素化種が生ずる。さらに、いくつかの実施形態において、臭素化反応器に供給される乾燥臭素蒸気は、実質的に水を含まなくてよい。出願人は、少なくともいくつかの事例において、臭素化段階から実質的にすべての水蒸気を排除することによって望ましくない二酸化炭素の生成が実質的になくなると思われるため、これが好ましい可能性があることを発見した。これが臭化アルキルへのアルカン臭素化の選択性を増加させ、それにより、アルカンからの二酸化炭素の生成で発生する大量の廃熱がおそらくなくなる可能性がある。
【0083】
生成物スタビライザーカラム中の液体炭化水素生成物から除去したC2+低分子量アルカン成分は、臭化アルキルおよび臭化水素を含む臭素化反応器から抜き出した流出物と合わせて、シフト反応器に導入することができる。[臭素化反応器で反応しないおよび臭素化反応器からの流出物中に存在する可能性がある少量の未反応臭素は、シフト反応器への導入の前またはその際にC2+炭化水素との熱臭素化反応により容易に消費される。]シフト反応器中で、臭素化反応器からの流出物に含まれる臭化アルキル中に存在する可能性がある二および三臭素化アルカンのかなりの部分は、C2+成分との反応により一臭素化アルカンに選択的に変換される可能性がある。例として、Cおよびジブロモメタンが反応物である場合、変換は以下の一般反応により起こると考えられる。
【0084】
+CHBr→CHBr+CBr
この反応は触媒なしに熱的に進行し得るが、そのような熱反応は、シフト反応器内の受け入れ難いほど長い滞留時間を必要とし、一臭素化アルカンへの十分な変換率を達成しないと判断された。したがって、シフト反応器は、VIII族金属、VIB族金属、IB族金属、アルミニウム、亜鉛、バナジウム、マグネシウム、カルシウム、チタン、イットリウム、ランタンまたはセリウムおよびそれらの混合物から選択される適切な触媒の層を含むことが好ましい。VIII族金属は、鉄、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムまたはそれらの2つ以上の混合物などである。VIB族金属は、タングステン、モリブデンまたはクロムなどである。IB族金属は、銅または銀などである。好ましくは、本発明のこの実施形態で用いるVIII族金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムまたはそれらの2つ以上の混合物から選択される貴金属であり、より好ましくはVIII族金属は、白金である。最も好ましくは、VIII族金属は、金属臭化物、金属酸化物または非化学量論的金属オキシ臭化物として用いられる鉄である。好ましくは、VIB族金属は、モリブデンまたはタングステンである。好ましくは、IB族金属は、金属臭化物、金属酸化物または金属オキシ臭化物として用いられる銅である。本発明の方法に用いられるような複数の熱的に可逆性の臭化物塩を形成する可能性がある上記の適切な金属触媒の非限定的な例は、鉄、モリブデン、タングステン、銅、バナジウム、クロムまたはそれらの2つ以上の混合物である。本発明の方法に用いられるような単一臭化物塩を形成する可能性がある上記の適切な触媒の非限定的な例は、コバルト、ニッケル、銀、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、チタン、アルミニウム、ランタン、セリウムまたはそれらの2つ以上の混合物である。複数の熱的に可逆性の臭化物塩または単一臭化物塩を形成するこれらの金属は、シフト反応器において用いられる条件下では臭化水素酸との反応により臭化物塩に変換されるため、シフト反応器中で臭化物として存在し、機能すると思われるので、本発明の方法に最初に臭化物塩または酸化物として用いることができる。多臭素化アルカンの熱分解およびクラッキングを抑制するために比較的低い酸性度を有し、担体上の多臭素化アルカンの吸着を抑制するために比較的低い表面積を有するように、適切な担体が選択される。シフト反応器中で触媒とともに用いる適切な担体の非限定的な例は、好ましくは約50m2/g未満の比表面積を有する、シリカ、チタニア、ジルコニアまたは低表面積アルミナである。
【0085】
触媒は、当業者に明らかなように、費用対効果の大きい方法で高い活性を得るために適切な担体上に担持し、分散させる。例えば、白金を触媒としてシフト反応器中で用いる場合には約0.1重量%〜約1重量%、より好ましくは約0.3重量%〜約0.5重量%の担持率を用いることが好ましく、一方、パラジウムを触媒として用いる場合には約1重量%〜約10重量%、より好ましくは3重量%〜約10重量%の担持率を用いる。鉄、モリブデンまたはその混合物などの好ましい非貴金属の場合、約10%〜約20%またはそれ以上の範囲のより高い担持率(金属酸化物として)が費用対効果が高い。シフト反応器中で触媒を用いる場合、約200℃〜約500℃、より好ましくは約400℃〜約500℃で反応器を操作することが好ましい。一臭素化アルカンへの所望の選択性を達成するのに必要なシフト反応器中の反応物の滞留時間は、比較的短く、2〜8秒程度でよい。
【0086】
かなり高い比率の一臭素化アルカンと多臭素化アルカン、すなわち、二または三臭素化アルカンとを含むシフト反応器410からの流出物は、合成反応器に輸送し、臭化水素の存在下で適切な触媒(反応器34に関連して上述したような)上で反応させて、オレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物を生成させることができる。生成する特定のオレフィン、高分子量炭化水素またはその混合物は、合成に用いる触媒、この反応器に導入される臭化アルキルの組成およびこの反応器に用いる正確な操作パラメーターに依存する。
【0087】
臭化水素は、臭化水素(HBr)除去段階においてオレフィン、高分子量炭化水素または混合物から除去することができ、臭素回収段階に運び、臭化水素を部分酸化金属臭化物塩により中和して、金属臭化物塩を生成することができる。得られた金属臭化物塩は、本発明の臭素回収段階において酸素または空気と接触させて、乾燥臭素蒸気としてアルカン臭素化段階にリサイクルすることができる元素状臭素ならびに本方法により生成したオレフィンおよび高分子量炭化水素から除去したさらなる臭化水素を中和し、除去するのに用いることができる部分酸化金属臭化物塩を得ることができる。
【0088】
本発明の方法を一般的に叙述するブロック流れ図を図11に示すが、本発明の方法の特定の実施形態のいくつかの態様を示す。図11に例示した本発明の方法の一般的叙述によれば、多臭素化アルカンからの流出物は周囲冷却(ambient cooling)によりこの流れから凝縮させることができることを除いて、図10に関連して述べた方法と同様の方法でシフト反応器を用い、工程を操作する。C2+低分子量炭化水素成分を、後に蒸発させることができる分離された多臭素化アルカンと混合し、シフト反応器に輸送して、上述のように多臭素化アルカンを変換することができる。合成反応器に輸送される流れの多臭素化アルカン部分のみをシフト反応器中で処理することが必要であるので、図11の実施形態は、有利なことに、一臭素化アルカンへの多臭素化アルカンの同じ変換を達成するのにより小さいシフト反応器を必要とする。
【0089】
上で述べ、図10および11に一般的に例示する本発明の方法の実施形態によれば、低分子量アルカンの従来の臭素化時に一般的に生成する望ましくない多臭素化アルカン、例えば二および三臭素化アルカンは、有害でないレベルに効果的に減少させることができる。臭素化反応器への供給原料ガス中のC2+低分子量炭化水素の濃度は、必要であれば、例えば、臭素化される供給原料ガス中90モル%以上の比較的高い濃度のメタンを得るために、減少させることができる。さらに、臭素化反応器中のメタン対臭素比は、一臭素化選択性をさらに保証するために少なくとも約2.5:1であるように選択する。本発明の方法による臭素化の後に生成する可能性があるどんなに少量の多臭素化アルカンもシフト反応器中で適切な触媒上で一臭素化アルカンに容易に変換することができる。本発明の方法における臭素化およびシフト両反応器中の非常に短い滞留時間は、多臭素化アルカンの大幅な変換、例えば、約80%〜約100%の変換、最も好ましくは約90%を超える変換を得るために小さい反応器の容器サイズを使用することを可能にするものである。さらに、出願人は、蒸気相中の副生成物である臭化水素(臭素化反応の結果として生成する)の比較的高い濃度、すなわち、約30モル%より高い濃度が、特定の合成触媒上の酸部位上の臭化水素の平衡吸着に起因すると考えられる、脱ハロゲン化水素/オリゴマー化反応の変換率に対する有意な抑制効果を有する可能性があることを発見した。臭化水素の非常に高い濃度、すなわち、約50モル%では、脱ハロゲン化水素/オリゴマー化触媒の活性は、有意に抑制されると考えられ、低い変換をもたらすと思われる。したがって、有害な量の多臭素化アルカンの生成を最小限にする目的のために約2.5を超えるアルカン対臭素モル比で臭素化反応を起こさせることに加えて、より高いモル比および過剰なアルカンの存在により、臭素化反応器の流出物中の臭化水素濃度が約30モル%未満に減少する。
【0090】
図10に一般的に例示した本発明の方法の特定の実施形態を例示するために、本発明の方法の実施形態を図12に例示する。これは、上記図7および8で述べた実施形態と操作が類似しているが、操作および機能を下で述べる、とりわけ追加の装置であるシフト反応器410を含む。一般的に、この実施形態は、第2の反応器中に導入される臭化アルキル中に存在する多臭素化アルカン、例えば二および三臭素化アルカンの濃度を効果的に低下させることに関する。
【0091】
この実施形態によれば、低分子量アルカンを含むガス流を管路、管または導管211により輸送または運び、管路216において水蒸気および高分子炭化水素と混合し、脱水装置250に運んで、ガス流から実質的にすべての水を除去することができる。次いで水は、脱水装置250から管路253を経て除去することができる。高分子量炭化水素を含む乾燥ガス流は、管路251を経て生成物回収ユニット252に輸送し、所望の通りにCおよびCを、ただし主としてC5+画分を管路254に回収する。当業者に公知である、天然ガスまたは精製ガス流を処理するのに用いられるような固体層乾燥剤吸着の後の例えば、冷凍凝縮、低温膨張または循環吸収油または他の溶媒などの脱水および液体回収の従来の方法を本発明の実施に用いることができる。本発明のこの実施形態によれば、管路254における流れは、スタビライザーカラム450の底部を出る高分子量炭化水素から残存C〜C炭化水素をストリッピングするための蒸気を生ずるスタビライザーリボイラー456に管路452を経てスタビライザー450から輸送される残りの高分子量炭化水素から気相中C〜C炭化水素の少なくとも一部を除去するのに十分な条件で操作されるスタビライザーカラムに運ぶことができる。高分子量炭化水素は、燃料製品、混合物として、またはさらなる処理のために工程454から除去することができる。C〜C炭化水素は、スタビライザーカラム450から気相として管路460で除去し、下文で述べるように工程でさらに使用するために圧縮機462で加圧することができる。C〜C炭化水素はスタビライザーカラム450から除去し、供給原料とともにシフト反応器410に導入することができるが、スタビライザーカラムは、この炭化水素流のC含量を最大化する条件で操作することが好ましい。さらに、工程でさらに使用するためにリサイクルせずに生成物としてCを回収することが好ましい。
【0092】
低分子量アルカンを含む生成物回収ユニット252からの蒸気流出物は、工程用の燃料として用いることができるパージ流257と圧縮機258により圧縮される供給原料ガスとに分割することができる。圧縮機258から排出されるガスは、2つの画分に分割することができる。第1の画分は、管路262を経て熱交換器352に輸送し、ここで当ガス流を約150℃〜約600℃の範囲の温度に予熱することができる。加熱ガス流は、次に弁304および管路302を経て酸化原子価状態の固相金属臭化物の層312を含む第2の容器または反応器310に通すことができ、反応器中でガス流の温度が酸化原子価状態の固相金属臭化物を熱分解して、元素状臭素蒸気および還元状態の固体金属臭化物を生じさせる。さらに、ガス流に含まれる低分子量アルカンは、酸化状態の固体金属臭化物の加熱された層312上で反応して、気体臭化アルキル、臭化水素および還元状態の固体金属臭化物を生成することができる。ガス流の温度およびしたがって、酸化原子価状態の固相金属臭化物の層312の温度を制御することにより、第2の容器または反応器310中で臭素が遊離し、低分子量アルカンが臭素化される程度を制御することができる。得られた臭素蒸気、臭化アルキルおよび臭化水素は、ガス流に含まれる低分子量アルカンのさらなる臭素化のためにアルキル臭素化反応器230に導入する前に、低分子量アルカンを含むガス流により管路314、弁317、管路330、熱交換器226および管路225を経て輸送することができる。かなりの量の低分子量気体アルカンが第2の容器または反応器310中で臭素化される場合、熱交換器226および臭素化反応器230は工程から除去することができる。ある程度のC、例えば、約0.1〜約10モル%は、臭素化反応器中で許容できるが、少量のCは許容でき、例えば、反応器230中の約0.2モル%を超える濃度は、反応器230、410および234中の付着物および閉塞をもたらす、炭素含有コークス様固体の速やかな形成をもたらす。Cおよび特にC3+炭化水素のかなりの部分が生成物回収ユニット252中で第1の反応器230に最終的に供給される蒸気流出物から除去することができるので、この有害な状態は、図10に例示する工程では実質的に抑制される。
【0093】
臭化アルキルおよび臭化水素を含む流出物は、第1の反応器230(または反応器中で達成される臭素化の程度によって第2の容器もしくは反応器310)から管路402を経て抜き出すことができる。生成物回収ユニット252からの第2の画分の蒸気流出物は、管路263を経て管路262から取り出し、管路402における第1の反応器230からの流出物に導入し、制御弁260により調節する。第2の画分を管路402における第1の反応器流出物に導入することができる速度は、反応器410および反応器234を選択される操作温度に維持することができるように、反応器410および反応器234に供給される臭化アルキルの濃度を希釈し、反応熱を吸収するのに十分なものである。したがって、蒸気流出物の第2の画分によってもたらされる希釈は、シフト反応器410および第2の反応器234における温度を適度にすることに加えて、第1の反応器230における臭素化の選択性が制御されることを可能にする。図10に例示する実施形態によれば、管路460におけるC〜C炭化水素を含むガスは、管路402に含まれる第1の反応器流出物と蒸気流出物の第2の画分の混合物中にも導入することができ、得られた混合物を熱交換器404に通し、熱交換器中で管路406を経てシフト反応器410に導入する前に、混合物を約250℃〜約450℃、より好ましくは約300℃〜約400℃、最も好ましくは約350℃〜約400℃の温度に加熱する。
【0094】
シフト反応器410中で、第1の反応器230からの流出物に含まれている臭化アルキル中に存在する二および三臭素化アルカンのかなりの部分をC〜C炭化水素との反応により一臭素化アルカンに選択的に変換することができる。例として、Cおよびジブロモメタンが反応物である場合、変換は以下の一般反応により起こると考えられる。
【0095】
+CHBr→CHBr+CBr
この反応は触媒なしに熱的に進行し得るが、そのような熱反応は、シフト反応器410内の受け入れ難いほど長い滞留時間を必要とし、十分な変換を達成しないと判断され、したがって、シフト反応器410は、図10について上で述べたように選択した適切な触媒の層412を含むことが好ましい。シフト反応器410中で触媒を用いる場合、約250℃〜約570℃、より好ましくは約300℃〜約400℃で反応器を操作することが好ましい。熱交換器404は、この範囲内の所望の点へのシフト反応器410への熱投入量に応じて操作することができる。一臭素化アルカンと二または三臭素化アルカンとの著しく高い比率を含むシフト反応器410からの流出物は、管路231を経て抜き出し、第2の反応器234に流入する前に熱交換器232で約150℃〜450℃の範囲の温度に部分的に冷却する。第2の反応器234中で、臭化アルキルを適切な触媒の固定層233上で約250℃〜約500℃の範囲の温度および約1バール〜30バールの範囲の圧力で発熱的に反応させて、高分子量炭化水素およびさらなる臭化水素の混合物を得ることができる。本発明のこの実施形態において、反応器240および246は、図4および5に関して上述したようにサイクル式に操作することができ、反応器310および320は、図7および8に関して上述したようにサイクル式に操作することができる。
【0096】
二および三臭素化アルカンの存在は、第3の反応器234で用いる触媒の不活性化を著しく加速するナフタレン、他の多環式芳香族化合物などの重質炭化水素およびコークスの望ましくない生成をもたらすため、図12の実施形態による第2の反応器234に導入される流れ中の一臭素化アルカンへの高い選択性は非常に望ましい。第2の反応器中の一臭素化アルカンおよび特に臭化プロピルの量の増加は、反応器234中で生成するイソオクタンを含むC〜C炭化水素の望ましい増加ももたらす。
【0097】
図12の実施形態は、シフト反応器410への供給原料との導入の前にスタビライザーカラム450において高分子量炭化水素から分離されるC〜C流および好ましくはCに富む流れを用いると述べたが、このC〜C流および好ましくはCに富む流れは、当業者には明らかなように、適切な源から、例えば、市販の天然ガスまたはプロパンから得ることができる。
【0098】
図13に例示する本発明の方法の他の実施形態は、第1の反応器230(または反応器中で達成される臭素化の程度によって第2の容器または反応器310)から抜き出される臭化アルキルおよび臭化水素を含む流出物および管路402に含まれる生成物回収ユニット252からの蒸気流出物の第2の画分を冷却器480に運ぶことができ、冷却器中で二および三臭素化アルカンが周囲冷却によりこの流れから凝縮され、管路402を経て輸送されることを除いて、図12に例示し、上で述べたものと設計および操作が類似している。管路460におけるC〜C炭化水素は、管路402における分離された二および三臭素化アルカンと混合し、シフト反応器410に輸送して、上で述べた方法で二および三臭素化アルカンを変換することができる。シフト反応器410は、好ましくは図10の実施形態に関して上で述べたような触媒を含む。シフト反応器410からの流出物は、図10に関して上で述べたように、管路420を経て抜き出し、反応器234への導入の前に管路482における残りの流れと合わせることができる。反応器234に輸送される流れの二および三臭素化アルカン部分のみをシフト反応器410で前処理することが必要であるので、図13の実施形態は、二および三臭素化アルカンの一臭素化アルカンへの同じ変換を達成するのに有利なことにより小さい反応器410を必要とする。
【0099】
シフト反応器は図7および8に例示した本発明の方法の実施形態に含まれているように上で述べ、図12および13に例示したが、シフト反応器は、本開示により当業者に明らかなように、本発明の方法のいずれにおいても用いることができる。さらに、シフト反応器と臭素化反応器との併用は、多臭素化アルカンの存在による後の使用または処理における有害な影響を効果的に抑制するために、アルカンを臭素化して、化学プロセスにおける適切な中間体である一臭素化アルカンを生成するプロセスへの広い応用を有する。
【0100】
図16に一般的に例示する本発明の方法の実施形態によれば、臭素液体をメタン(CH)含有供給原料ガスと合わせる。液体臭素は、最初に気体供給原料と混合し、混合物を加熱して、臭素の蒸発を達成するか、あるいはガスを最初に過熱し、液体を熱ガス中に導入し、蒸発させてもよい。低分子量アルカンを含む供給原料ガスは、臭素化する主としてメタンを含む供給原料ガス中のメタンの比較的に高い濃度、例えば90モル%以上を得るように供給原料ガス中のC2+低分子量炭化水素の濃度を低下させるために、必要な場合、天然ガス処理工場、石油精製所等で通常用いられる冷凍凝縮、低温膨張、循環溶媒または他の分離手段により処理することが好ましい。ある程度のC炭化水素は、例えば、約0.1モル%〜約10モル%の範囲の濃度では臭素化反応器中で許容できるが、約0.2%を超えるC3+炭化水素の濃度は、臭素化反応器中の付着物および閉塞をもたらす炭素含有コークス様固体ならびに下流成分の速やかな形成をもたらす可能性がある。いくつかの実施形態において、硫黄化合物および二酸化炭素などの望ましくない化合物を除去するために供給原料ガスを処理することが望ましいと思われる。いずれにしても、例えば約2モル%未満の少量の二酸化炭素は本発明の方法への供給原料ガスにおいて許容できることに注意することは重要である。
【0101】
熱臭素化反応器への供給原料に用いることができるメタン対臭素の比は、供給原料のC2+含量ならびに温度の関数である。供給原料中のより低いC2+含量およびより低い温度での操作では、より低いメタン対臭素比での操作ができる。さらに、本発明の触媒シフト反応器を熱臭素化の下流で稼動させる場合のように、熱臭素化段階で起こる臭素のすべての完全反応の制約が必要でない場合、これは、より低温での操作およびひいては、前述した実施形態について述べた2.5対1の最小の比を実質的に下回るメタン対臭素での操作を促進する可能性がある。
【0102】
したがって、触媒シフト反応器の追加および供給原料ガスのC2+含量の適切な制御により、熱臭素化反応への供給原料中メタン対臭素のモル比は、約7対1未満であるが約1.25対1超、好ましくは約4対1未満から約1.5対1超、より好ましくは約3対1未満から約1.67対1超である。供給原料ガスおよび液体臭素混合物は、熱交換器に運ぶことができ、ここで混合物を約300℃〜約550℃、しかし、より好ましくは約450℃〜約500℃の範囲の温度に加熱し、液体臭素を蒸発させる。
【0103】
さらに、いくつかの実施形態において、熱臭素化反応器中に供給された混合物中の乾燥臭素蒸気は、実質的に水を含まなくてよい。出願者は、少なくともいくつかの事例において、臭素化段階から実質的にすべての水蒸気を排除することによって望ましくない二酸化炭素の生成が実質的になくなると思われるため、これが好ましい可能性があることを発見した。これが臭化アルキルへのアルカン臭素化の選択性を増加させ、それにより、アルカンからの二酸化炭素の生成で発生する大量の廃熱がおそらくなくなる可能性がある。
【0104】
主としてメタンおよび許容できる量のC2+低分子量アルカン成分を含む加熱供給原料ガスならびに臭素蒸気混合物を最初にC1+熱臭素化反応器に輸送することができ、ここで供給原料ガス中に存在する低分子量アルカン(主としてメタン)および低分子量アルカンを熱的に臭素化する。必要な場合、熱臭素化反応器は、混合物が約300℃〜約500℃の範囲の反応開始温度に加熱された状態を維持することを保証するために入口予熱帯(上述の帯28、128および228と同様)を含んでいてよい。メタンの場合、臭化メチルの生成は以下の一般反応により起こると考えられる。
【0105】
CH(g)+Br(g)→CHBr(g)+HBr(g)
臭化アルキル、臭化水素、未反応臭素(bromne)および未反応アルカン(主としてメタン)を含む供給原料ガスの得られた混合物は、熱臭素化反応器から除去し、触媒シフト反応器に輸送することができる。触媒シフト反応器へのこの供給原料の温度は、約350℃〜約570℃、より好ましくは500℃〜約570℃、最も好ましくは530℃〜約570℃の範囲であってよい。熱臭素化反応は発熱的であるので、熱臭素化反応器に導入する供給原料ガスおよび臭素は、当業者に明らかなように、熱臭素化反応器の反応器操作条件を考慮して、熱臭素化反応器からの流出物が触媒シフト反応器に導入するための所望の範囲内にあることを保証するために、約300℃〜約500℃の範囲内の温度に加熱することができる。あるいは、熱臭素化反応器からの流出物混合物は、当業者に明らかな適切な手段により、触媒シフト反応器に用いる触媒と接触する前に約350℃〜約570℃の範囲内の温度に加熱または冷却することができる。
【0106】
図16に一般的に例示する本発明の方法の実施形態における触媒シフト反応器における有用な触媒は、金属ハロゲン化物または金属オキシハロゲン化物の両方またはそれらの混合物を形成することができる金属元素であってよく、Fe、Mo、La、Ce、W、Cr、Co、Ni、Cu、Ag、Zn、Mn、V、Nb、Ta、Ti、Y、Zr、MgおよびCaなどである。触媒活性を示す金属ハロゲン化物または金属オキシハロゲン化物の生成に有用であり得るハロゲンは、Br、ClおよびFであり、Brが好ましい。
【0107】
触媒は、触媒担体上に分散した金属臭化物として最初に調製することができるが、金属硝酸塩溶液前駆体を用いた初期湿潤技術(incipient wetness technique)に続く、乾燥および空気または他の酸化ガス混合物中高温での焼成により金属酸化物を分散させることがより一般的である。さらに、多くの金属臭化物塩は吸湿性であるので、取扱い、貯蔵および輸送には特殊な手段が必要であると思われる。したがって、シフト反応器に用いる触媒は、金属酸化物の状態でのみ最も実際的に商業的に入手できる可能性がある。そのような金属酸化物触媒は、臭化水素、臭化メチル、ジブロモメタンまたは他の臭化アルキルとのその反応により時間の経過とともに金属臭化物もしくは金属オキシ臭化物またはその混合物に変換されるので、図16の触媒シフト反応器に最初に用いることができる。しかし、触媒シフト反応器中の金属酸化物触媒の活性は、金属臭化物または金属オキシ臭化物の活性よりかなり低く、変換が完了するまで炭素損失またはコーキングが増加するので、触媒シフト反応器に供給原料を導入する前に、臭化水素およびキャリヤーガス、例えばメタンまたは窒素との反応によるなどの適切な手段により最初の金属酸化物触媒を金属臭化物もしくは金属オキシ臭化物またはその混合物にその場で変換することが望ましいと思われる。
【0108】
触媒シフト反応器中で、熱臭素化反応器からの流出物に含まれている臭化アルキル中に存在する可能性がある二および三臭素化アルカンのかなりの部分は、供給原料中に存在する未反応アルカン成分(主としてメタン)との反応により一臭素化アルカンに選択的に変換され得る。例として、Cおよびジブロモメタンが反応物である場合、変換は以下の一般反応により起こると考えられる。
【0109】
CH+CHBr→2CHBr
熱および触媒両反応器中の高温のため、元素状臭素は本質的に完全に変換される可能性がある。触媒シフト反応器に用いる触媒は、臭素(触媒表面上のジブロモメタンの解離吸着により供給される)とメタンとの選択的触媒反応により臭化メチルを生成するジブロモメタンとメタンとの選択的反応を促進すると考えられる。
【0110】
一臭素化アルカンと二または三臭素化アルカンとの著しく高い比率を含む触媒シフト反応器からの流出物は、図1〜9に例示し、上で詳細に述べた本発明の方法の実施形態により、合成反応器などにさらに処理するために輸送することができる。
【0111】
本方法により生成した、またはC1+熱臭素化への供給原料が許容できる量のC2+および特にC3+を含むように除去される供給原料ガスに含まれているC2+成分は、液体臭素供給原料の画分を用いてC2+熱臭素化反応器で処理することができる。C2+熱臭素化反応器は、約4対1〜約1.25対1の範囲、好ましくは約2対1〜約1.5対1の範囲のアルカン対臭素比および約250℃〜550℃の範囲の温度で稼動する。種々の臭化アルキルおよび臭化水素を含むC2+熱臭素化からの流出物は、例えば、触媒シフト反応器からの流出物と混合し、混合物を触媒合成反応器に輸送することによってさらに処理することができ、触媒合成反応器中で、混合物中の種々の臭化アルキルが脱ハロゲン化水素/オリゴマー化反応を受けて、より高分子量の炭化水素生成物およびさらなる臭化水素が生成する。
【0112】
図17に一般的に例示する本発明の方法の実施形態は、液体臭素を蒸発させる熱交換器に輸送する前に臭素液体をメタン(CH4)含有供給原料ガスと合わせる(あるいはガスを最初に過熱し、液体を熱ガス中に導入し、蒸発させてもよい)が、臭素液体の別の流れも、噴霧、または不活性充填材料の表面からの液体臭素の蒸発などの他の適切な手段によって臭素化反応器に直接導入することを除いて、図16に例示し、上で述べたものと類似している。熱臭素化は発熱的に進行するので、臭素化反応の熱は、反応器に直接注入される液体臭素を蒸発させるのに十分であり、それにより、熱負荷および熱交換要求ならびにそれに関連する費用が最小になる。反応器に直接注入される液体臭素の量は、選択されるメタン対臭素比および熱臭素化反応器からの所望の流出物温度によって決定される。例えば、臭素化の最小開始温度が維持され、反応が停止しない限り、総メタン対臭素比が高いほど、反応器に直接注入することができる液体臭素の割合は大きくなる。逆に、特定の固定されたメタン対臭素比では、最小反応温度が維持されている限り、反応器に直接注入される液体臭素の割合が増加すると、熱臭素化反応器の全域で起こる温度上昇が少なくなる。
【0113】
図18に一般的に例示する本発明の方法の実施形態は、供給原料ガスおよび臭素蒸気の加熱混合物を図18に例示するような適切な触媒を含む反応器に直接輸送することができ、反応器中で熱および触媒臭素化を実質的に直列で進行させることを除いて、図16に例示し、上で述べられたものと類似している。反応器は(主としてメタン)および許容できる量のC2+低分子量アルカン成分を含む供給原料ガスならびに臭素蒸気の加熱混合物が熱的に臭素化される、熱臭素化帯を定めるための触媒層上の十分なヘッドスペースを有するようにサイズを調整することができる。必要な場合、熱臭素化帯は、混合物が約300℃〜約530℃の範囲の反応開始温度に加熱された状態を維持することを保証するために入口予熱帯(上述の帯28、128および228と同様)を含んでいてよい。メタンの場合、臭化メチルの生成は以下の一般反応により起こると考えられる。
【0114】
CH(g)+Br(g)→CHBr(g)+HBr(g)
臭化アルキル、臭化水素、未反応臭素および未反応アルカン(主としてメタン)を含む供給原料ガスの得られた混合物は、触媒シフト反応帯に流入する。
【0115】
触媒シフト反応帯へのこの供給原料の温度は、約350℃〜約570℃、より好ましくは500℃〜約570℃、最も好ましくは530℃〜約570℃の範囲であってよい。熱臭素化反応は発熱的であるので、熱臭素化帯に導入する供給原料ガスおよび臭素は、当業者に明らかなように、熱臭素化帯における反応器操作条件を考慮して、熱臭素化帯からの流出物が触媒シフト反応帯に導入するための所望の範囲内にあることを保証するために、約300℃〜約500℃の範囲内の温度に加熱しなければならない。あるいは、熱臭素化帯からの流出物混合物は、当業者に明らかな適切な手段により、触媒シフト反応帯に用いる触媒と接触する前に加熱または冷却することができる。
【0116】
図18に一般的に例示する本発明の方法の実施形態における触媒シフト反応帯における有用な触媒は、金属ハロゲン化物または金属オキシハロゲン化物の両方またはそれらの混合物を形成することができる金属元素であってよく、Fe、Mo、La、Ce、W、Cr、Co、Ni、Cu、Ag、Zn、Mn、V、Nb、Ta、Ti、Y、Zr、MgおよびCaなどである。触媒活性を示す金属ハロゲン化物または金属オキシハロゲン化物の生成に有用であり得るハロゲンは、Br、ClおよびFであり、Brが好ましい。触媒は、触媒担体上に分散した金属臭化物として最初に調製することができるが、金属硝酸塩溶液前駆体を用いた初期湿潤技術に続く、乾燥および空気または他の酸化ガス混合物中高温での焼成により金属酸化物を分散させることがより一般的である。さらに、多くの金属臭化物塩は吸湿性であるので、取扱い、貯蔵および輸送には特殊な手段が必要であると思われる。したがって、シフト反応器に用いる触媒は、金属酸化物の状態でのみ最も実際的に商業的に入手できる可能性がある。そのような金属酸化物触媒は、臭素化反応流出物中に存在する臭化水素、臭化メチルとのその反応により時間の経過とともに金属臭化物もしくは金属オキシ臭化物またはその混合物に変換されるので、図18に例示する反応器の触媒シフト反応帯に最初に用いることができる。しかし、触媒シフト反応帯中の金属酸化物触媒の活性は、金属臭化物または金属オキシ臭化物の活性よりかなり低く、変換が完了するまで炭素損失またはコーキングが増加するので、触媒シフト反応帯に供給原料を導入する前に、臭化水素酸およびキャリヤーガス、例えばメタンまたは窒素との反応によるなどの適切な手段により最初の金属酸化物触媒を金属臭化物もしくは金属オキシ臭化物またはその混合物に変換することが望ましいと思われる。
【0117】
図18に例示する反応器中の触媒シフト反応帯中で、熱臭素化帯からの流出物に含まれている臭化アルキル中に存在する可能性がある多臭素化アルカン、例えば、二および三臭素化アルカンのかなりの部分は、この帯への供給原料中に存在する未反応アルカン成分(主としてメタン)との反応により一臭素化アルカンに選択的に変換され得る。例として、Cおよびジブロモメタンが反応物である場合、変換は以下の一般反応により起こると考えられる。
【0118】
CH+CHBr→2CHBr
熱および触媒両反応器中の高温のため、臭素は本質的に完全に変換される。触媒シフト反応器に用いる触媒は、臭素(触媒表面上のジブロモメタンの解離吸着により供給される)とメタンとの選択的触媒反応により臭化メチルを生成するジブロモメタンとメタンとの選択的反応を促進すると考えられる。
【0119】
フリーラジカル熱臭素化反応が熱臭素化帯における自由気相中で完全に起こる可能性があるが、フリーラジカル臭素化の少なくとも一部は、触媒シフト反応帯における触媒反応器層の浅部領域に存在する空隙内で起こり、実質的に完結する可能性があり、さらに触媒シフト反応帯の出口でモノブロモメタンへの所望の選択性が達成される。
【0120】
一臭素化アルカンと二または三臭素化アルカンとの著しく高い比率を含む触媒シフト反応帯からの流出物は、図1〜9に例示し、上で詳細に述べた本発明の方法の実施形態により、合成反応器などにさらに処理するために輸送する。図16および17における実施形態と同様に、本方法により生成した、またはC1+熱臭素化への供給原料が許容できる量のC2+および特にC3+を含むように除去される供給原料ガスに含まれているC2+成分は、液体臭素供給原料の画分を用いて図16および17に例示するようにC2+熱臭素化反応器で処理し、流出物をさらに処理することができる。
【0121】
図19に一般的に例示する本発明の方法の実施形態によれば、臭素液体をメタン(CH4)含有供給原料ガスと合わせる。液体臭素は、最初に気体供給原料と混合し、混合物を加熱して、臭素の蒸発を達成してもよく、あるいはガスを最初に過熱し、液体を熱ガス中に導入してもよく、熱ガス中で液体は蒸発させられる。低分子量アルカンを含む供給原料ガスは、臭素化する主としてメタンを含む供給原料ガス中のメタンの比較的に高い濃度、例えば90モル%以上を得るように供給原料ガス中のC2+低分子量炭化水素の濃度を低下させるために、必要な場合、低分子量アルカンを含む供給原料を処理することが好ましい。ある程度のC2+炭化水素は、臭素化反応器中で許容できるが、そのより高い濃度および特に、C3+炭化水素のより高い濃度は、臭素化反応器中の付着物および閉塞をもたらす炭素含有コークス様固体ならびに下流成分の速やかな形成をもたらす可能性がある。いくつかの実施形態において、硫黄化合物および二酸化炭素などの望ましくない化合物を除去するために供給原料ガスを処理することが望ましいと思われる。いずれにしても、例えば約2モル%未満の少量の二酸化炭素は本発明の方法への供給原料ガスにおいて許容できることに注意することは重要である。
【0122】
熱臭素化反応器への供給原料に用いることができるメタン対臭素の比は、供給原料のC2+含量ならびに温度の関数である。供給原料中のより低いC2+含量およびより低い温度での操作では、より低いメタン対臭素比での操作ができる。さらに、本発明の触媒シフト反応器を熱臭素化の下流で稼動させる場合のように、熱臭素化段階で起こる臭素のすべての完全反応の制約が必要でない場合、これは、より低温での操作およびひいては、2.5対1の以前には好ましかった最小の比を実質的に下回るメタン対臭素での操作を促進する可能性がある。したがって、触媒シフト反応器の追加および供給原料ガスのC2+含量の適切な制御により、熱臭素化反応への供給原料ガス中メタン対臭素のモル比は、約7対1未満であるが、約1.25対1超、好ましくは約4対1未満から約1.5対1超、より好ましくは約3対1未満から約1.67対1超である。供給原料ガスを、約300℃〜約550℃、しかし、より好ましくは約350℃〜約500℃の範囲の熱交換器に通し、熱交換器中で液体臭素を蒸発させる。
【0123】
加熱供給原料ガスを反応器に導入し、反応器中で(主としてメタン)および許容できる量のC2+低分子量アルカン成分を含む供給原料ガス中に存在する低分子量アルカンの臭素化を熱的に進行させることができる。必要な場合、熱臭素化反応器は、混合物が約300℃〜約550℃の範囲の反応開始温度に加熱された状態を維持することを保証するために入口予熱帯(上述の帯28、128および228と同様)を含んでいてよい。メタンの場合、臭化メチルの生成は以下の一般反応により起こると考えられる。
【0124】
CH(g)+Br(g)→CHBr(g)+HBr(g)
未反応臭素、臭化アルキル、臭化水素、および未反応アルカン(主としてメタン)を含む供給原料ガスの得られた混合物は、その後、冷却し、分留塔に輸送することができ、分留塔中で多臭素化アルカン、例えば、二および三臭素化アルカンをこの混合物から除去する。そのような多臭素化アルカンを含む分留塔底液を、液中の重質の多臭素化アルカンから残存軽質モノブロモメタンをストリッピングする液の留分を蒸発させる、分留塔リボイラーに通す。これらの蒸気は、分留塔にリサイクルされる。次いで多臭素化アルカンを主としてメタンを含む供給原料ガスと合わせ、蒸発させ、約450℃〜約500℃の温度に予熱し、触媒シフト反応器に導入して、この反応器中で多臭素化アルカンをメタンと反応させて、主として一臭素化アルカンおよび臭化水素をさらに生成させる。臭化アルキルおよび臭化水素は、図1〜9に例示し、上で詳細に述べた本発明の方法の実施形態により、さらに処理するために触媒シフト反応器から合成反応器などに輸送することができる。分留塔内で多臭素化アルカンから分離された分留塔オーバーヘッド蒸気中の成分は、冷却器に送られてもよく、冷却器中で残存多臭素化アルカンが凝縮し、分留塔に還流されてもよい。主として臭化アルキルおよび臭化水素を含む残りの流れも図1〜9に例示し、上で詳細に述べた本発明の方法の実施形態により、さらに処理するために合成反応器などに輸送することができる。
【0125】
本方法により生成した、またはC1+熱臭素化への供給原料が許容できる量のC2+および特にC3+を含むように除去される供給原料ガスに含まれているC2+成分は、供給液体臭素の画分を用いてC2+熱臭素化反応器で処理することができる。C2+熱臭素化反応器は、約4対1〜約1.25対1の範囲、好ましくは約2対1〜約1.5対1の範囲のアルカン対臭素比および約250℃〜550℃の範囲の温度で稼動する。種々の臭化アルキルおよび臭化水素を含むC2+熱臭素化反応からの流出物は、例えば、触媒シフト反応器からの流出物と混合し、混合物を触媒合成反応器に通すことによってさらに処理することができ、触媒合成反応器中で、混合物中の種々の臭化アルキルが脱ハロゲン化水素/オリゴマー化反応を受けて、より高分子量の炭化水素生成物およびさらなる臭化水素が生成する。
【0126】
図19に一般的に例示する本発明の方法の実施形態における触媒シフト反応器における有用な触媒は、金属ハロゲン化物または金属オキシハロゲン化物の両方またはそれらの混合物を形成することができる金属元素であってよく、Fe、Mo、La、Ce、W、Cr、Co、Ni、Cu、Ag、Zn、Mn、V、Nb、Ta、Ti、Y、Zr、MgおよびCaなどである。触媒活性を示す金属ハロゲン化物または金属オキシハロゲン化物の生成に有用であり得るハロゲンは、Br、ClおよびFであり、Brが好ましい。触媒は、触媒担体上に分散した金属臭化物として最初に調製することができるが、金属硝酸塩溶液前駆体を用いた初期湿潤技術に続く、乾燥および空気または他の酸化ガス混合物中高温での焼成により金属酸化物を分散させることがより一般的である。さらに、多くの金属臭化物塩は吸湿性であるので、取扱い、貯蔵および輸送には特殊な手段が必要であると思われる。したがって、シフト反応器に用いる触媒は、金属酸化物の状態でのみ最も実際的に商業的に入手できる可能性がある。そのような金属酸化物触媒は、熱臭素化反応からの流出物中の臭化水素、臭化メチル、ジブロモメタンまたは他の臭化アルキルとのその反応により時間の経過とともに金属臭化物もしくは金属オキシ臭化物またはその混合物に変換されるので、図16の触媒シフト反応器に最初に用いることができる。しかし、触媒シフト反応器中の金属酸化物触媒の活性は、金属臭化物または金属オキシ臭化物の活性よりかなり低く、変換が完了するまで炭素損失またはコーキングが増加するので、触媒シフト反応器に供給原料を導入する前に、臭化水素酸およびキャリヤーガス、例えばメタンまたは窒素との反応によるなどの適切な手段により金属酸化物触媒を金属臭化物もしくは金属オキシ臭化物またはその混合物に変換することが望ましい場合がある。
【0127】
触媒シフト反応器中で、熱臭素化反応器からの流出物に含まれている臭化アルキル中に存在する可能性がある二および三臭素化アルカンのかなりの部分は、供給原料中に存在する未反応アルカン成分(主としてメタン)との反応により一臭素化アルカンに選択的に変換され得る。例として、Cおよびジブロモメタンが反応物である場合、変換は以下の一般反応により起こると考えられる。
【0128】
CH+CHBr→2CHBr
熱および触媒両反応器中の高温のため、臭素は本質的に完全に変換される。触媒シフト反応器に用いる触媒は、臭素(触媒表面上のジブロモメタンの解離吸着により供給される)とメタンとの選択的触媒反応により臭化メチルを生成するジブロモメタンとメタンとの選択的反応を促進すると考えられる。
【0129】
図16〜19に例示し、上で述べた臭素化反応器(単数または複数)を含む触媒臭素化工程概略図は、図2〜13に例示し、上で述べた本発明の方法の実施形態のいずれかにおける反応器30、130および230を含む臭素化工程概略図の代わりに用いることができる。図16〜19に一般的に例示したような本発明の方法の触媒臭素化実施形態のいずれかによる臭素化は、他の臭素化概略図により達成されたものと比べてはるかに低いメタン対臭素比で炭素効率の増加をもたらすと考えられる。これは、より高い生成物収率、より長いサイクル長、容器の容積およびガスリサイクル、生成物回収および公共料金(utility)の必要の減少をもたらし、それにより、工程の全体的な経済的側面を劇的に改善する可能性がある。
【0130】
図16、17および19に例示し、上で述べた本発明の方法の実施形態は、臭素化反応器に導入するための臭素蒸気および適切な供給原料ガスの混合物を得るための液体臭素を蒸発させる異なる方法を開示しているが、これらの実施形態において述べた臭素化反応器は、臭素が商業的に入手可能であるか、または蒸気の形で工程流として得られる場合に、適切な供給原料ガスおよび臭素蒸気の混合物を単に供給することによって操作することができることは、当業者には明らかであろう。さらに、図18に例示し、上で述べた本発明の方法の実施形態は、臭素化反応器に導入する前に適切な供給原料ガスおよび臭素蒸気の混合物を加熱することを開示しているが、臭素液体は、臭素が商業的に入手可能であるか、または蒸気の形で工程流として得られる場合に、この実施形態において述べた臭素化反応器に導入する前に図16、17または19の実施形態により蒸発させることができることは、当業者には明らかであろう。
【0131】
供給原料ガス、臭素混合物を熱臭素化を開始するのに十分な温度に加熱する手段を単純な外部加熱熱交換器として図16〜19に例示するが、この混合物を加熱する他の方法は、当業者には明らかであろう。例えば、他の熱工程流との交差交換(cross−exchange)、熱不活性物質の注入、電磁放射線、電離放射線、放電および口火による加熱は、供給原料ガスおよび臭素蒸気の混合物を熱臭素化を開始するのに十分な温度に加熱するのに用いることができる。これらの方法は、熱臭素化反応器もしくは帯または両方において、熱臭素化反応器もしくは帯に混合物を導入する前に実施することができる。
【0132】
本発明のさらなる理解を促進するために、いくつかの実施形態の特定の態様の以下の実施例を示す。以下の実施例は、本発明の全範囲を限定または定義する仕方で読むまたは解釈すべきではない。
【実施例】
【0133】
(実施例1)
種々の混合物比率のメタンおよび蒸発臭素の混合物を、電熱素子を用いて3帯域において外部加熱されている非充填管型反応器を通して上方に垂直に流す。上部(出口)帯域は約494℃の平均温度に維持し、中間帯域は約450℃の平均温度に維持し、入口(予熱)帯域は約150℃〜約300℃の範囲にわたる種々の温度で操作する。反応滞留時間は、約2.0〜4.5秒の範囲であった。図14に示すように、臭素化反応器に導入したメタンと臭素とのモル比を2.5以上に増加させると、約70%の一臭素化選択性の有意な増加がもたらされる。約5のメタンと臭素とのモル比では、一臭素化選択性は平均約80%であるが、約10のメタンと臭素とのモル比では、一臭素化選択性は80%を超える。図15にさらに示すように、2.5以上のメタンと臭素との比でのこの高い一臭素化選択性は、4.8の比では約3.25秒、約5.2の比では約2秒という短い滞留時間で達成される。約2.5の好ましい最小比を下回る約2.1の低いメタンと臭素との比で測定したデータポイントの例の組では、反応器流出物中のCH3Br濃度は平均約16.8モル%であり、CH2Br2濃度は平均約6.8モル%であり、HBr濃度は好ましくないほど高く、平均約33.7モル%である。約2.5の好ましい最小比を少し上回る約2.6のメタンと臭素との比では、反応器流出物中のCH3Br濃度は平均約15.4モル%であり、CH2Br2濃度は平均約5モル%であり、HBr濃度は平均約26.4モル%である。約4.8のより好ましいメタンと臭素との比では、反応器流出物中のCH3Br濃度は平均約10.7モル%であり、CH2Br2濃度は平均約3.1モル%であり、HBr濃度は平均約16.8モル%である。
【0134】
(実施例2)
外部加熱式開管型(公称直径3/8インチ)実験室規模熱臭素化反応器(R−1a)を、本発明により約490℃および約650°h−1のGHSVで操作する公称直径1インチの触媒シフト反応器(R−1b)と直列で上流で操作する。メタン、臭素および窒素の流量は、第1の開管型熱臭素化反応器に対して3:1または2:1の標的供給原料CH:Br比に制御する。2つの標的CH4:Br2供給原料比混合物のそれぞれについて、第1の開管型熱臭素化反応器を加熱し(底部入口から425℃、450℃および470℃の上部出口までの3つの帯域温度プロファイルを有する)、開管型熱反応器中の熱気相フリーラジカル臭素化反応を開始させる。触媒シフト反応器の入口および出口ガスの試料の組成を、2種の標的メタン−臭素混合物について下の表に示す。熱臭素化を触媒シフト反応器の上流で開始させる場合、触媒シフト反応器への供給原料は、モノブロモメタン(MeBrまたはCHBr)への比較的低い選択性およびジブロモメタン(DBMまたはCHBr)への比較的高い選択性を有するにもかかわらず、熱臭素化反応器中で生成したCHBrが触媒シフト反応器中の触媒上で過剰の未反応アルカン(メタン)と反応して、CHBrをCHBrに変換し、モノブロモメタンのへ高い最終出口選択性が得られる(表1および2における結果を参照)。
【0135】
【表1】

【0136】
【表2】

(実施例3)
外部加熱式実験室規模触媒シフト反応器(公称直径1インチ)を本発明により約490℃および約650h−1のGHSVで操作する。メタン、臭素および窒素の流量は、3:1の標的供給原料CH:Br比に制御し、第1の開管型熱臭素化反応器(R−1a)において約175℃に予熱し、触媒シフト反応器(R−1b)に供給する。
【0137】
触媒は最初は、湿式前駆体含浸/後焼成法を用いて調製したシリカ担体上に分散した酸化鉄および酸化モリブデンの混合物からなっていた。各試験の前に、触媒を約490℃の温度に維持し、触媒が最初の酸化物の形にあったことを保証するために酸素および窒素の混合物を用いて数時間焼成/再生し、次いで、メタン−臭素反応物の導入の前にN2でパージした。図20に示すように、CHBr(MeBr)の量はほぼ最初の30時間にわたり時間とともに増加し、CHBr(DBM)の量は約60時間にわたりより遅い速度で増加する。同様に、炭素効率(反応するCH4の量と比較した反応器中で観測される(CHBr+CHBr)の量のパーセントと定義)は、ほぼ最初の40時間にわたって増加し、その後は100時間を過ぎるまでほぼ100%に維持されている。これは、最初に酸化状態にある触媒は活性がより低く、CHBrおよびCHBrの一部が最初にコークスの生成または触媒上の炭素質の沈着へと失われることを示すものである。運転を通して、触媒がより活性になり、コーキングの率が減少することがわかり、触媒上に存在する金属酸化物(単数または複数)の少なくとも一部が、金属酸化物(単数または複数)とフリーラジカル臭素化反応の副生成物の、また臭化アルキル(CHBrおよび/またはCHBr)のおそらく一部からの臭化水素(HBr)との反応により金属臭化物またはオキシ臭化物に変換されると推測することができる。さらに、酸素−窒素混合物中での焼成により最初に酸化物の状態である触媒を、メタンおよび臭素反応物の導入の前に、長時間にわたり触媒上にHBrおよびNの混合物を通すことにより前処理する対照実験を行った(図20に示さず)とき、ほぼ100%の初期の観測炭素効率が認められ、その高い効率が試験運転を通して持続している。
【0138】
したがって、最も活性で、安定な状態の触媒の所望の機能は、金属臭化物および/または金属オキシ臭化物の存在を必要とする。これは、不活性担体上の適切な金属臭化物の最初の沈着によって得ることができる。好ましくは、これらの安定な活性種は、最初に酸化物状態の適切な金属または金属の混合物を含む触媒から出発して反応条件下でその場で得ることができるが、より好ましくは、臭化水素を用いた金属臭化物または金属オキシ臭化物状態への最初の金属酸化物(単数または複数)のその場での前変換/前活性化によって得ることができる。
【0139】
(実施例4)
外部加熱式実験室規模触媒シフト反応器(公称直径1インチ)を本発明により種々の温度で、約650h−1のGHSVで操作する。メタン、臭素および窒素の流量は、3:1の標的供給原料CH:Br比に制御し、第1の開管型熱臭素化反応器(R−1a)において約175℃に予熱し、最初に490℃で操作する触媒シフト反応器(R−1b)に供給し、約125時間の期間にわたって安定化させる。プロットからわかるように、炭素効率はほぼ100%であり、490℃の初期操作温度でのCHBr(MeBr)選択性は約80%である。約140時間において、触媒シフト反応器(R−1b)の温度は510℃に上昇し、これによりCHBr選択性が約85%に増加し、ほぼ100%の炭素効率が維持されている。約155時間において、触媒シフト反応器(R−1b)の温度は520℃に上昇し、これによりCHBr選択性が約88%に増加し、ほぼ100%の炭素効率が維持されている。約188時間において、触媒シフト反応器(R−1b)の温度は530℃に上昇し、これによりCH3Br選択性が約90%に増加し、ほぼ100%の炭素効率が維持されている。その後、約200時間後には、触媒シフト反応器(R−1b)の温度は約10℃きざみで上昇し、これによりCH3Br選択性が徐々に約570℃での約93%の最大値まで増加し、ほぼ100%の炭素効率が維持されている。約220時間後には、触媒シフト反応器(R−1b)の温度は580℃に上昇し、これによりCHBr選択性のさらなる増加はもたらされないが、炭素効率のかなりの低下が認められ、好ましい触媒上の効率のよい反応のための最適温度は約580℃未満であることがわかる。
【0140】
本発明の方法は、約1バール〜30バールの範囲の低い圧力で、気相については約20℃〜約600℃、液相については好ましくは約20℃〜約180℃の範囲の比較的低い温度で操作するので、本発明の方法は、従来の方法より費用がかからない。これらの操作条件は、高温気相反応器および関連装置については容易に入手可能な合金、ガラスライニング、断熱材/セラミックライニング装置および液相を含む装置についてはポリマーライニングまたはガラスライニング容器、配管およびポンプから構成されている比較的に単純な設計のさほど高価でない装置を使用することを可能にするものである。本発明の方法はまた、操作により少ないエネルギーが必要であり、望ましくない副生成物としての過度な二酸化炭素の生成が最小限であるため、より効率的である。本発明の方法に用いられる反応器および工程装置は、当業者に明らかなように任意の適切な設計によるものであってよい。
【0141】
本発明の方法は、液化石油ガス(LPG)における様々な分子量成分を含むより高分子量の炭化水素、オレフィンおよび実質的な芳香族含量を有し、それによりガソリン範囲燃料成分のオクタン価を著しく増加させる自動車ガソリン燃料範囲のものを直接製造することができる。これらのより高分子量の炭化水素は、本方法に用いる個々の触媒および本方法の操作パラメーターによって、製品として、さらなる処理のための中間生成物および/または原料として用いることができる。例えば、本発明の方法により得られるより高分子量の炭化水素は、実質的な芳香族含量を有する自動車ガソリン燃料として、燃料調合剤としてまたはさらなる処理のための原料として直接用いることができる。
【0142】
オレフィンを本発明の方法により製造する場合、そのようなオレフィンは、ポリオレフィンを製造するための工程への供給原料として用いることができる。
【0143】
本発明の前述の好ましい実施形態を記述し、示したが、示唆されるような代替および修正ならびにその他は、それに加えて行うことができ、本発明の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約2.5:1のメタン対臭素モル比で臭素を気相アルカンと接触させて、臭化アルキルを含む臭素化生成物を生成させる段階、および
前記臭化アルキルを触媒の存在下でC2+炭化水素と反応させて、該臭化アルキル中に存在する二臭素化アルカンおよび三臭素化アルカンの少なくとも一部を一臭素化アルカンに変換する段階、
を含む、方法。
【請求項2】
前記メタン対臭素モル比が少なくとも約4:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メタン対臭素モル比が少なくとも約6:1である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記C2+炭化水素が、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンまたはその混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒が、VIII族金属、VIB族金属、IB族金属、アルミニウム、亜鉛、バナジウム、マグネシウム、カルシウム、チタンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒が、鉄、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるVIII族金属である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記VIII族金属が白金である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒が、複数の熱的に可逆性の臭化物塩を形成する金属であり、鉄、モリブデン、タングステン、銅、バナジウム、クロムおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が、単一臭化物塩を形成する金属であり、コバルト、ニッケル、銀、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、チタン、アルミニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒が担体上に分散している、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記担体がシリカである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記気体アルカンが少なくとも90モル%のメタンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記C2+炭化水素を、前記接触させる段階の前に前記気体アルカンから除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
低分子量アルカンからC2+アルカンを除去して、少なくとも約90モル%のメタンを含む供給原料ガスを得る段階、
該供給原料ガスを少なくとも約2.5:1のメタン対臭素モル比で臭素と反応させて、臭化アルキルを含む臭素化生成物を生成させる段階、および
該臭化アルキルを触媒の存在下でC2+炭化水素と反応させて、前記臭化アルキル中に存在する二臭素化アルカンおよび三臭素化アルカンの少なくとも一部を一臭素化アルカンに変換する段階、
を含む、方法。
【請求項15】
前記臭化アルキルと反応させる前記C2+炭化水素が、前記低分子量アルカンから除去されたC2+アルカンの少なくとも一部である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記メタン対臭素モル比が少なくとも約4:1である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記メタン対臭素モル比が少なくとも約6:1である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記C2+炭化水素が、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンまたはその混合物である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒が、VIII族金属、VIB族金属、IB族金属、アルミニウム、亜鉛、バナジウム、マグネシウム、カルシウム、チタンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記触媒が、鉄、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるVIII族金属である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記VIII族金属が白金である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記触媒が、複数の熱的に可逆性の臭化物塩を形成する金属であり、鉄、モリブデン、タングステン、銅、バナジウム、クロムおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記触媒が、単一臭化物塩を形成する金属であり、コバルト、ニッケル、銀、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、チタン、アルミニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記触媒が担体上に分散している、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記担体がシリカである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
臭素を第1の反応器中で約5秒未満の滞留時間で気体アルカンと反応させて、臭化アルキルを含む臭素化生成物を生成させる段階、および
該臭化アルキルを第2の反応器中で触媒の存在下でC2+炭化水素と反応させて、該臭化アルキル中に存在する二臭素化アルカンおよび三臭素化アルカンの少なくとも一部を一臭素化アルカンに変換する段階、
を含む、方法。
【請求項27】
前記気体アルカンが少なくとも90モル%のメタンを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記臭素と前記気体アルカンとを前記第1の反応器中で少なくとも約2.5:1のメタン対臭素モル比で反応させる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の反応器中の前記滞留時間が約5秒未満である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記メタン対臭素モル比が少なくとも約4:1である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記メタン対臭素モル比が少なくとも約6:1である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記C2+炭化水素が、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンまたはその混合物である、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記触媒が、VIII族金属、VIB族金属、IB族金属、アルミニウム、亜鉛、バナジウム、マグネシウム、カルシウム、チタンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記触媒が、鉄、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるVIII族金属である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記VIII族金属が白金である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記触媒が、複数の熱的に可逆性の臭化物塩を形成する金属であり、鉄、モリブデン、タングステン、銅、バナジウム、クロムおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記触媒が、単一臭化物塩を形成する金属であり、コバルト、ニッケル、銀、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、チタン、アルミニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記触媒が担体上に分散している、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
少なくとも90モル%のメタンを含む低分子量アルカンを炭化水素生成物から除去する段階、
該低分子量アルカンを少なくとも約2.5:1のメタン対臭素モル比で臭素と反応させて、臭化アルキルを含む臭素化生成物を生成させる段階、
該臭化アルキルを第1の触媒の存在下でC2+炭化水素と反応させて、該臭化アルキル中に存在する二臭素化アルカンおよび三臭素化アルカンの少なくとも一部を一臭素化アルカンに変換する段階、および
反応後の該臭化アルキルを第2の触媒の存在下で該C2+炭化水素と反応させて、該炭化水素生成物を生成させる段階、
を含む、方法。
【請求項40】
前記低分子量アルカンを前記炭化水素生成物から除去した後に、前記C2+炭化水素を前記炭化水素生成物から除去する段階
をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記炭化水素生成物から除去されたC2+炭化水素を、前記臭化アルキルと反応させる前記段階に送る、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記メタン対臭素モル比が少なくとも約4:1である、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記メタン対臭素モル比が少なくとも約6:1である、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記C2+炭化水素が、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンまたはその混合物である、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記第1の触媒が、VIII族金属、VIB族金属、IB族金属、アルミニウム、亜鉛、バナジウム、マグネシウム、カルシウム、チタンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記第1の触媒が、鉄、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるVIII族金属である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記VIII族金属が白金である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記第1の触媒が、複数の熱的に可逆性の臭化物塩を形成する金属であり、鉄、モリブデン、タングステン、銅、バナジウム、クロムおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記触媒が、単一臭化物塩を形成する金属であり、コバルト、ニッケル、銀、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、チタン、アルミニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記第1の触媒が担体上に分散している、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記第2の触媒が結晶性アルミノケイ酸塩触媒である、請求項39に記載の方法。
【請求項52】
前記臭素化生成物が約30モル%未満の臭化水素酸をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記臭素化生成物が約30モル%未満の臭化水素酸をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項54】
前記臭素化生成物が約30モル%未満の臭化水素酸をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項55】
前記臭素化生成物が約30モル%未満の臭化水素酸をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項56】
臭素を、臭化アルキルを含む臭素化生成物を生成するのに十分な第1の温度で、メタンを含む気体アルカンと反応させる段階、
該臭化アルキルを、触媒の存在下で、該臭化アルキル中に存在する多臭素化アルカンの少なくとも一部を一臭素化アルカンに変換するのに十分な第2の温度で、該メタンの一部と反応させる段階、
を含む、方法。
【請求項57】
接触段階における前記メタン対臭素モル比が、約1.25:1を超えるが、7:1未満である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
接触段階における前記メタン対臭素モル比が、約1.5:1を超えるが、4:1未満である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
接触段階における前記メタン対臭素モル比が、約1.67:1を超えるが、3:1未満である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記第1の温度が約300℃〜約600℃である、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記第2の温度が約350℃〜約570℃である、請求項56に記載の方法。
【請求項62】
前記第2の温度が約500℃〜約570℃である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記第2の温度が約530℃〜約570℃である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記触媒が金属ハロゲン化物、金属オキシハロゲン化物またはその混合物である、請求項56に記載の方法。
【請求項65】
前記金属がFe、Mo、La、Ce、W、Cr、Co、Ni、Cu、Ag、Zn、Mn、V、Nb、Ta、Ti、Y、Zr、Mg、Caまたはその混合物から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記ハロゲン化物がBr、ClおよびFから選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記触媒が最初に金属酸化物として用いられるが、金属ハロゲン化物または金属オキシハロゲン化物に変換される、請求項56に記載の方法。
【請求項68】
接触および反応段階が別々の反応器中で実施される、請求項56に記載の方法。
【請求項69】
接触および反応段階が1つの反応器中で実施される、請求項56に記載の方法。
【請求項70】
前記気体アルカンが少なくとも90モル%のメタンを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項71】
前記気体アルカンが約0.1モル%〜約10モル%のC2+炭化水素を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項72】
前記気体アルカンが約0.2モル%未満のC3+炭化水素を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項73】
前記気体アルカンが、天然ガス、炭床メタン、再ガス化液化天然ガス、ガスハイドレートおよび/またはクラスレート由来のガス、有機物またはバイオマスの嫌気的分解により得られるガス、タールサンドの処理で得られるガス、合成により生成される天然ガスまたはアルカン、あるいはこれらの源の混合物を源とするものである、請求項56に記載の方法。
【請求項74】
前記気体アルカンが合成により生成されるアルカンを源とするものである、請求項56に記載の方法。
【請求項75】
前記気体アルカンが合成により生成される天然ガスを源とするものである、請求項56に記載の方法。
【請求項76】
前記気体アルカンがタールサンドの処理で得られるガスを源とするものである、請求項56に記載の方法。
【請求項77】
前記臭化アルキル中に存在する多臭素化アルカンの少なくとも一部の一臭素化アルカンへの変換の後に前記臭化アルキルを第2の触媒の存在下で反応させて、臭化アルキルを生成させる段階
をさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項78】
臭素を、メタンを含む気体アルカンと接触させる段階、
該臭素と該気体アルカンとを、臭化アルキルを含む臭素化生成物を生成するのに十分な第1の温度で反応させる段階、および
該臭化アルキルを、触媒の存在下で、該臭化アルキルに存在する多臭素化アルカンの少なくとも一部を一臭素化アルカンに変換するのに十分な第2の温度で、該メタンの一部と反応させる段階
を含む方法。
【請求項79】
前記臭素の少なくとも一部を前記気体アルカンとの接触時に蒸発させる、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記臭素および前記気体アルカンを、前記臭素と前記気体アルカンとを反応させる前記段階の前に、前記臭素の少なくとも一部を蒸発させるのに十分な温度に加熱する、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記臭素の少なくとも一部を、前記臭素と前記気体アルカンとを反応させる前記段階中に蒸発させる、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
供給原料ガスを前処理して、少なくとも90モル%のメタンを含む気体アルカンを得る段階、
臭素を、臭化アルキルを含む臭素化生成物を生成するのに十分な第1の温度で、該気体アルカンと反応させる段階、および
該臭化アルキルを、触媒の存在下で、該臭化アルキルに存在する多臭素化アルカンの少なくとも一部を一臭素化アルカンに変換するのに十分な第2の温度で、該メタンの一部と反応させる段階
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2011−522899(P2011−522899A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513716(P2011−513716)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/047149
【国際公開番号】WO2009/152403
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(509158819)マラソン ジーティーエフ テクノロジー, リミテッド (6)
【Fターム(参考)】