説明

気体供給装置を持つ溶融炉

【課題】 気体供給装置の設置構造を単純化して高温環境での耐久性を高めるとともに維持及び補修が容易である、気体供給装置を持つ低温溶融炉を提供する。
【解決手段】 溶融炉100の内側に突設され、溶融炉内に気体を供給する気体供給部を持つ溶融炉であって、前記気体供給部は、前記溶融炉100を貫いて内側に突設され、先端にノズル口111が形成される気体供給管110と;前記溶融炉100の壁体内で冷却流体が循環する第1冷却流路103と直接連通して冷却流体が流れるようになる第2冷却流路120を持つように前記気体供給管の外側に備えられる冷却流路管120とからなり、気体供給装置の高温環境に対する耐久性を高めるとともに、構造が簡単で故障発生を最小化し、維持補修の容易な効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体供給装置を持つ溶融炉に係り、特に放射性廃棄物のような有害な廃棄物をガラス化する溶融炉において、溶融物に気体、特にガラス溶融物の酸化還元状態(Redox state)を調節し溶融物を撹拌して処理容量を高めるために酸素などの気体を供給する気体供給装置を持つ溶融炉に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物、特に放射性廃棄物のような有害な廃棄物をより安定的に処理、保管、管理することは非常に重要な問題である。廃棄物の処理、保管方法の中でガラスを用いて廃棄物を処理することを廃棄物のガラス化(vitrification)という。これは、放射性廃棄物、スラッジ、汚染した土壌または産業廃棄物などをガラス構造で閉じこめ、周辺環境に浸出しないようにして永久的に隔離させる方式と言える。
【0003】
一般に、廃棄物ガラス化装置は、廃棄物のガラス化のために、溶融炉内でガラス形成剤と廃棄物を溶融させて廃棄物内の揮発性成分は排気体処理工程のために排気させ、放射性核種、重金属などの毒性物質はガラス網状構造の一部となるように熱を加えて均質の溶融ガラス混合体が形成されるまで滞留時間を提供した後、ガラス溶融物を排出させてガラス固化体状に作ることになる。
【0004】
溶融炉は、加熱方式によって多様な方式がある。その中で誘導加熱式の低温溶融炉(cold crucible induction
melter;CCIM)の主要構成は冷却水が循環する多数の金属セクターの間に電気的絶縁体が挿入される円筒状の溶融チャンバーと、この溶融チャンバーの外側に備えられた高周波誘導コイルとからなり、誘導コイルに印加された高周波電流によって溶融チャンバー内の物質(例えば、廃棄物とガラス)を溶融させることになる。例えば、特許文献1は、廃棄物、特に放射性廃棄物の焼却及びガラス化方法及び装置について開示している。
【0005】
具体的に、図1は一般的な誘導加熱式ガラス化装置の構成を示す図で、互いに電気的に絶縁された多数の金属セクターでなるチャンバー10は内部に冷却流路12が形成され、外部の冷却水循環システムに連結された配管12a、12bによって冷却水が冷却流路12を循環することによりチャンバー10の全体が適正温度に維持される。
【0006】
チャンバー10の外側に備えられた誘導コイル20に印加された高周波電流によってチャンバー内のガラスは溶融状態を維持し、廃棄物供給装置30から投入された廃棄物D中の燃焼ガスは排気部40を介して排気体処理処置に排出される。ガラス溶融物は、排出口51の下端に備えられた排出部50を通じて外部に排出される。
【0007】
チャンバー10の上端の廃棄物供給装置30の周辺に第1酸素供給装置60が備えられ、第1酸素供給装置60を通じて供給される酸素は投入される廃棄物の燃焼を最適化する。
【0008】
一方、低温溶融炉において、内部溶融物は溶融炉壁と底面の水冷却影響によってバブル(bubble)がない場合には、溶融物の内部に相当な温度勾配が存在する。この場合、溶融ガラスの粘度も多様な分布を持つようになり、このような粘度の差によって溶融ガラスの流れが邪魔されて、ガラス化のために投入される廃棄物が溶融ガラスの全域に伝達されることができなくなる。このような場合、均質な溶融ガラスを作りにくく、廃棄物処理率が低下することができる。特に、誘導加熱式低温溶融炉においては、チャンバーの下部で金属物質の形成による金属セクターのアーク(arc)発生などのような運営上の問題点が発生することができる。
【0009】
このために、チャンバー10の下部にはガラス溶融物内にバブルが生成するように酸素を供給するための第2酸素供給装置70が備えられる。
【0010】
図2は従来のガラス化装置に備えられる酸素供給装置を示す図である。この酸素供給装置70は、チャンバー10の下部を貫いて固定されるケーシング71と、このケーシング71の内部に備えられ、チャンバー10内に酸素を供給する酸素供給配管72と、冷却水の循環のための冷却水入水配管73と、出水配管74とからなる。
【0011】
酸素供給配管72の上端には排気ホール72aが形成されて、酸素供給配管72に供給された酸素は排気ホール72aを通じてチャンバー10内に投入されてガラス溶融物にバブルを作るようになる。
【0012】
しかし、このような従来の酸素供給装置は、酸素供給配管、冷却水の循環のための冷却水入水配管及び出水配管が別途のケーシングによってチャンバーに固定支持され、チャンバー10の壁体を冷却するための冷却水循環システムとは別に酸素供給配管を冷却するための冷却水配管を必要とするため、全体として構造が複雑になり、故障の発生時に補修が不利であり、維持管理に大きな不便さが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10−0501640号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は従来の問題点を解決するためになされたもので、気体供給装置を持つ低温溶融炉において、気体供給装置の設置構造を単純化して高温環境での耐久性を高めるとともに維持及び補修が容易な低温溶融炉を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、溶融炉の内側に突設されて溶融炉内に気体を供給する気体供給部を持つ溶融炉であって、前記気体供給部は、前記溶融炉を貫いて内側に突設され、先端にノズル口が形成される気体供給管と;前記溶融炉の壁体内で冷却流体が循環する第1冷却流路と直接連通して冷却流体が流れるようになる第2冷却流路を持つように前記気体供給管の外側に備えられる冷却流路管とを含む溶融炉を提供する。
【0016】
本発明による低温溶融炉において、前記気体供給管は、前記溶融炉を成す外側壁体と前記冷却流路管によって固定支持されることができる。
【0017】
また、本発明による低温溶融炉において、前記気体供給管の先端に形成されるノズル口は水平方向に固定されたノズル管であってもよく、前記冷却流路管は少なくとも前記ノズル管よりは高く形成されることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の気体供給装置を持つ低温溶融炉は、溶融炉の内部に気体を供給する気体供給部が溶融炉の下部と一体的に構成され、溶融炉冷却用冷却流体を共有して気体供給部を冷却することができるようにすることで、気体供給装置の高温環境に対する耐久性を高めるとともに構造が簡単で故障発生を最小化し、維持補修が容易な効果がある発明である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一般的な低温溶融炉の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の酸素供給装置を具体的に示す図である。
【図3】本発明の溶融炉における気体供給装置を示す図である。
【図4】図3のA−A線についての断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
本発明の低温溶融炉は、溶融炉100の内側に突設されて溶融炉内に気体を供給する気体供給部を持つ低温溶融炉であって、前記気体供給部は、前記溶融炉100を貫いて内側に突設され、先端にノズル口111aが形成される気体供給管110と;前記溶融炉100の壁体内で冷却流体が循環する第1冷却流路103と直接連通して冷却流体が流れる第2冷却流路121を持つように前記気体供給管の外側に備えられる冷却流路管120とを含む。
【0022】
本発明において、低温溶融炉100は壁体の冷却のために冷却流体が流れる第1冷却流路103を持つ二重壁体101、102でなり、従来技術で言及したように、それぞれの内部に冷却水が循環するように冷却流路を持つとともに電気的に絶縁された多数の金属セクターによって提供できる。一方、本発明において、溶融炉の加熱方式は誘導加熱式を含む特定の方式に限定される必要はない。
【0023】
気体供給部は、溶融炉100の内部に気体を供給する気体供給管110と;この気体供給管110を冷却させるための冷却流路管120とを含む。
【0024】
気体供給管110は二重壁体101、102でなる溶融炉100を貫いて内側に突設され、先端には気体が排出されるノズル口を持つ。
【0025】
本発明において、気体供給管110の先端に形成されるノズル口111aは水平方向に固定されたノズル管111によって提供されることができ、ノズル口の数及び方向は多様に変更可能である。
【0026】
気体供給管110の下端は溶融炉100の外側の外部壁体101に固定され、上端はノズル管111とともに冷却流路管120によって固定支持され、気体供給管110は別の固定用構造物の必要なしに溶融炉に堅く固定支持できる。
【0027】
冷却流路管120は気体供給管110の外側に位置して溶融炉100の内部壁体102に固定され、溶融炉100の二重壁体内で冷却流体が循環する第1冷却流路103と直接連通して冷却流体が流れる第2冷却流路121を持つ。
【0028】
気体供給管110より大きな直径を持つ冷却流路管120は気体供給管110と同心上に位置することが好ましい。
【0029】
また、本発明において、冷却流路管120の高さ(H)は少なくともノズル管111よりは高く形成され、冷却流路管120は最大面積で気体供給管110を取り囲んで気体供給管の冷却効率を高めることができる。
【0030】
本発明において、気体供給部の材質や形状は特定のものに限定されなく、好ましくは耐食性、耐熱性などに優れたステンレス鋼の継ぎ目なし鋼管(seamless
tube)が用いられることができる。
【0031】
このように構成された本発明の気体供給部を持つ低温溶融炉において、気体(酸素)は気体供給管110を通じてノズル管111に排出されて溶融炉100の内部に供給されてバブルを生成する。一方、溶融炉100の第1冷却流路103に沿って循環する冷却流体は冷却流路管120の第2冷却流路121に沿って循環しながら気体供給部を冷却させるようになり、よって高温環境で気体供給装置の耐久性を向上させることができる。
【0032】
このような本発明の気体供給装置は、低温溶融炉の底面に複数設置され、内部溶融物にバブル(bubble)を生成して均質な溶融物を作るようになる。
【0033】
また、本発明の気体供給装置は、内部溶融物に直接バブルを作るために溶融炉の下部に備えられる気体供給装置だけでなく、溶融炉の上端に備えられて溶融炉内に投入される廃棄物の燃焼を促進するための酸素供給装置にも同様に適用可能であって効果的な酸素供給装置の冷却が可能であるのは自明である。
【0034】
前記実施例は本発明の技術的思想を具体的に説明するための一例であるばかり、本発明の範囲は前記の図面及び実施例に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、放射性廃棄物のような有害な廃棄物をガラス化する溶融炉において、溶融物に気体、特にガラス溶融物の酸化還元状態を調節し溶融物を撹拌して処理容量を高めるために酸素などの気体を供給する、気体供給装置を持つ溶融炉に適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
100 溶融炉
110 気体供給管
111 ノズル管
120 冷却流路管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融炉の内側に突設されて溶融炉内に気体を供給する気体供給部を持つ溶融炉において、
前記気体供給部は、
前記溶融炉を貫いて内側に突設され、先端にノズル口が形成される気体供給管と;
前記溶融炉の壁体内で冷却流体が循環する第1冷却流路と直接連通して冷却流体が流れるようになる第2冷却流路を持つように前記気体供給管の外側に備えられる冷却流路管とを含むことを特徴とする、溶融炉。
【請求項2】
前記気体供給管は、前記溶融炉を成す外側壁体と前記冷却流路管によって固定支持されることを特徴とする、請求項1に記載の溶融炉。
【請求項3】
前記気体供給管の先端に形成されるノズル口は水平方向に固定されたノズル管であることを特徴とする、請求項1に記載の溶融炉。
【請求項4】
前記冷却流路管は少なくとも前記ノズル管よりは高く形成されることを特徴とする、請求項3に記載の溶融炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−64587(P2013−64587A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−86264(P2012−86264)
【出願日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【出願人】(512089461)韓国水力原子力株式会社 (2)
【氏名又は名称原語表記】KOREA HYDRO & NUCLEAR POWER CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】125 Hwarang−ro, Gyeongju−si, Gyeongsangbuk−do, 780−947 Korea
【Fターム(参考)】