説明

気体吸着材および気体吸着デバイス

【課題】取り扱い性に優れた気体吸着材を有する気体吸着デバイスを提供する。
【解決手段】熱可塑性の容器2は仕切り5により少なくとも2つ以上の空間に仕切られており、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと流動化材とからなる気体吸着材4と水分吸着材3はそれぞれ容器2の異なる空間に収容されている。容器2には応力を加える部材6により応力が加えられ、容器2内部の応力を加える部材6付近には支持体7が設置されている。応力を加える部材6の先端は鋭利であり、支持体7には微細な孔が開いており、応力を加える部材6の先端付近にある。容器2の温度が上昇して所定の温度に達すると、容器2に貫通孔8が生じ、水分を含む気体は、貫通孔を通して容器2に侵入した後、気体に含まれる水分が水分吸着材3により吸着され、水分を含まない気体のみが仕切り5を通り気体吸着材4に到達し、気体吸着材4は効率よく気体を吸着することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体吸着材および気体吸着デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
気体吸着材料は、真空保持、希ガス中の微量ガスの除去、蛍光灯中のガスの除去等様々な分野で用いられている。
【0003】
半導体製造工業で用いられている希ガスは、希ガス中の窒素、炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素、水素、水蒸気などを除去し、高純度に精製することが望まれている。特に、その中でも安定な分子である窒素を室温付近で除去することが極めて困難である。
【0004】
例えば、希ガス中の窒素、あるいは炭化水素などを除去するものとしては、ジルコニウム、バナジウム及びタングステンからなる三元合金のゲッター材がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上記三元合金は、100〜600℃の温度で、微量の不純物を含む希ガスと接触させることにより、希ガスから窒素等の不純物を除去するものである。
【0006】
また、窒素に対して高ガス吸着効率を備える無蒸発ゲッター合金としては、ジルコニウム、鉄、マンガン、イットリウム、ランタンと、希土類元素の1種の元素を含む合金がある(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
上記の窒素に対して高ガス吸着効率を備える無蒸発ゲッター合金は、300〜500℃の間の温度で10〜20分間活性化処理を行うことにより、水素、炭化水素、窒素等の吸着に対して、室温でも作用することができるものである。
【0008】
また、低温で窒素を除去する合金としては、Ba−Li合金がある(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
Ba−Li合金は、乾燥材と一緒に、断熱ジャケット内の真空を維持するためのデバイスとして使用され、室温においても窒素等のガスに対して反応性を示す。
【0010】
また、精製対象ガスから窒素などの不純物ガスを除去するものとしては、銅イオン交換したZSM−5型ゼオライトからなる吸着材がある(例えば、特許文献4参照)。
【0011】
これは、従来既存のイオン交換方法によって、ZSM−5型ゼオライトに銅イオンを導入し、熱処理を行うことによって、窒素吸着活性を付与するものである。
【特許文献1】特開平6−135707号公報
【特許文献2】特表2003−535218号公報
【特許文献3】特表平9−512088号公報
【特許文献4】特開2003―311148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の吸着材では、300〜500℃で加熱し続けることが必要であり、高温での加熱であるため、エネルギーコストが大きく環境にも悪く、また、低温でのガス吸着を望む場合は使用できない。
【0013】
また、特許文献2に記載の吸着材では、300〜500℃の前処理が必要であり、高温での前処理が困難な場合のガス除去、例えばプラスチック袋中のガスを常温下で除去することは困難である。
【0014】
また、特許文献3に記載の吸着材では、活性化のための熱処理を必要とせず、常温での窒素吸着が可能であるが、そのため、取り扱い時に空気中の水分、窒素などと反応してしまうという問題がある。そして、一旦反応すると不可逆反応であるために、必要時までいかに活性を保持するか、取り扱い性が課題である。また、窒素吸着に対するさらなる大容量化が望まれていると共に、BaはPRTR指定物質であるため、工業的に使用するには環境や人体に対して問題のないものが望まれている。
【0015】
また、特許文献4に記載の吸着材では、銅の可溶性塩の水溶液にてイオン交換し、その後、熱処理を行うことにより、銅イオンを1価へ還元し、窒素吸着活性を付与するものであるが、粉体状のZSM−5型ゼオライトに熱処理を施すため、絶乾状態の微粉末は非常に強く帯電し、その静電気により団粒を形成する。さらに、気体吸着材として使用するために加工を施す必要があるが、静電気のために流動性が低く、取り扱い性が非常に悪い。
【0016】
常温領域で気体吸着可能な環境負荷の無い、高吸着活性の気体吸着材を工業的に生産するため技術が必要である。
【0017】
本発明は、上記従来の課題に鑑み、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを含み、取り扱い性に優れた気体吸着材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の気体吸着材は、少なくとも銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと流動化材とを含むことを特徴とするものである。
【0019】
これにより、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを含み、取り扱い性に優れた気体吸着材となる。
【0020】
なお、流動化材にシリカを用いることが好ましく、また、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと流動化材とは混合され熱処理が施されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の気体吸着材は、少なくとも銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと流動化材とを含むことを特徴とするものであり、本構成により帯電したZSM−5型ゼオライト粉体の団粒化を抑制し、生産装置への付着、粉体供給装置の目詰まりなどの課題を解決できる。
【0022】
また、流動化材にシリカを用いた場合は、一定量のシリカを添加することにより、簡便に流動性を得ることができる。
【0023】
さらには、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと流動化材とを混合して熱処理を施した場合は、流動化材が含有する水分が熱処理時に除去されるため、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの吸着能力を阻害することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の請求項1に記載の気体吸着材の発明は、少なくとも銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと流動化材とを含むことを特徴とするものである。
【0025】
従来から、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトが、窒素を化学吸着可能であることは知られており、ZSM−5型ゼオライトを、塩化銅水溶液やアンミン酸銅水溶液、酢酸銅水溶液など、銅の可溶性塩の水溶液にてイオン交換し、その後、熱処理を行うことにより、銅イオンを1価へ還元し、気体吸着活性を付与するものである。
【0026】
この気体吸着活性を有する銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは、大気と接触することにより、大気中の窒素や酸素、水分などを吸着するため、使用時まで大気と非接触に保管する必要がある。そのため、通常は非吸着性気体であるアルゴンを充填したグローブボックス内で、空気非接触型のデバイスに封入する作業を行い、大気中で保管できる形態とする。
【0027】
ここで問題となるのは、ZSM−5型ゼオライトは微粉体であり、さらに熱処理を行うことにより水分を奪われ絶乾状態となった銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは、非常に帯電しやすくなっていることである。すなわち、このデバイス化の際、静電気を帯びた銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト粉体は、計量時には粉体同士で団粒を形成したり、デバイス容器に封入する工程では装置やデバイスに付着したりする。
【0028】
その結果、正確な計量が不可能となるだけではなく、デバイスの封止口に銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト粉体が付着し、使用時までに空気中で保管した際、その箇所から空気が侵入し、気体吸着活性が低下してしまう。
【0029】
そこで、一定量の流動化材を加えることにより、静電気を帯びていても粉体の流動性を確保し、計量やデバイス容器への充填をスムーズに行い、容器への付着を抑制するものである。
【0030】
ここで、流動化材とは、帯電した微粉体の流動性を向上させるものであれば良く、湿式シリカや乾式シリカ、その他帯電防止剤など流動性向上効果が得られるものであれば利用できる。
【0031】
また、本発明においては、流動性は、安息角・圧縮度・スパチュラ角・凝集度の4要素に対して流動性指数表より流動指数を割り出し、その指標によって流動性を評価する一般的な手法を基準とし、流動化材が添加されることにより、流動性指数が70以上100以下となるものが対象である。より望ましくは、80以上100以下である。
【0032】
また、特に指定するものではないが、気体吸着材に流動化材が含まれていることを確認するためには、ふるい分級や、風力分級などで流動化材と銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを分離した後、適切な分析により確認することが可能である。分析手段として、ICP発光分光分析法や蛍光分析法などによる流動化材に含まれる元素分析などを用いても良い。
【0033】
また、本発明の気体吸着材は、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと流動化材とに加え、水分吸着材や酸素吸着材などがともに存在していて吸着材を形成していてもよい。
【0034】
請求項2に記載の気体吸着材の発明は、請求項1記載の発明において、流動化材が、シリカであることを特徴とするである。
【0035】
流動化材としてシリカを用いると、簡易に帯電し団粒化した銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの流動性を向上し、計量やデバイス容器への充填をスムーズに行うことが可能となった。
【0036】
ここでシリカとは、湿式シリカでも乾式シリカでもよく、より望ましくは湿式シリカである。優れた流動性向上効果が得られ、乾式シリカよりも安価であるためである。
【0037】
また添加量は1%以上にて効果があり、上限は特に定めるものではないが、20%から10%程度が適当である。
【0038】
請求項3に記載の気体吸着材の発明は、請求項1または2記載の発明において、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと流動化材とは混合され熱処理が施されていることを特徴とするものである。
【0039】
帯電し団粒化した銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの流動性を向上するためには、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト粉体間に流動化材が存在することが望ましく、そのためには乾式で混合することが簡便で効果的である。
【0040】
混合方法は特に指定するものではないが、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト粉体に所定量の流動化材を加え、ミキサーなどで攪拌混合する方法などが可能である。
【0041】
また、物質は通常、水分を一定量含有しているものであるが、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと流動化材とを共に熱処理することにより、流動化材が含有している水分をも除去可能であるため、熱処理後にそれぞれを混合するよりも、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの水分による気体吸着活性の劣化を抑制可能である。さらに、流動化材と共に熱処理を施すことにより、熱処理炉からの取り出し時の流動性も改善される。
【0042】
請求項4に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項1から3のいずれか一項記載の気体吸着材を含むことを特徴とするものである。
【0043】
帯電した銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの流動性を向上するために流動化材を加えた気体吸着材を封入した気体吸着デバイスは、気体吸着材の正確な計量が可能となり、また、デバイスの封止口への銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト粉体の付着もないため、気体吸着性能に優れた、経時劣化のないものが提供できる。
【0044】
ここで、気体吸着デバイスとは、気体吸着活性を有する銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを使用時まで大気と非接触に保管するものであり、特に形状など指定するものではないが、気体難透過性の容器やフィルムに密閉されたものが望ましい。
【0045】
請求項5に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項4記載の発明において、気体吸着デバイスが、少なくとも銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと流動化材とからなる気体吸着材と、水分吸着材と、気体難透過性素材からなる容器とからなり、前記容器は通気性を制御可能な仕切りにより少なくとも2つ以上の空間に仕切られており、前記気体吸着材と前記水分吸着材はそれぞれ前記容器の異なる空間に収容されていることを特徴とするものである。
【0046】
銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを特定の気体吸着を目的で使用する際にも、その吸着気体の他に水分が含まれていることが多い。銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは、水分に対しても非常に活性が高いため、気体中に水分が含まれている場合は優先的に水分を吸着してしまう。この結果、目的の気体吸着の前に活性が失活してしまう恐れがある。
【0047】
銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと水分吸着材が混在している場合は、水分吸着材が水分を吸着するため、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトが吸着する水分は減少するが、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの失活を完全に抑えることは困難である。
【0048】
そこで、以下のように容器内の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと水分吸着材の位置関係を適切化するものである。
【0049】
銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと水分吸着材をそれぞれ独立した空間に収容する。また、独立した空間どうしは適切な通気性を確保する。さらに、気体吸着デバイス外の気体を吸着する際、気体は水分吸着材を収容した空間を通り、含まれる水分は吸着され、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを収容した空間には水分が少ない気体となって到達する。
【0050】
この際、空間どうしの通気性が大きすぎる場合は、水分吸着材が水分を吸着しきれず、水分を多く含む気体が気体吸着材に到達する。一方、空間どうしの通気性が小さすぎる場合は、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトに到達する気体が少なく、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの吸着性能が十分に発現できない。従って、空間どうしの通気性を制御することにより、上記の目的が達成される。
【0051】
なお、気体が、まず水分吸着材を収容した空間を通り、含まれる水分が吸着された後、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを収容した空間には水分が少ない気体となって到達するためには、容器の水分吸着材側に外部空間との貫通孔を生じる必要がある。その手法として、気体吸着デバイスの適用箇所が外部より応力を加えられる箇所であれば、釘打ちなどにより外部より貫通させることは容易に達成可能であるが、そうではない場合、遠隔操作により貫通孔を生じる手段が必要となる。
【0052】
以上の構成により水分が侵入した際においても、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの吸着能力を維持することにより長期間優れた性能を維持することが可能な気体吸着デバイスを得ることができる。
【0053】
ここで水分吸着材とは、気体中に含まれる水分を吸着できるものであり、特に指定するものではないが、活性炭、シリカゲル、酸化カルシウム等がある。
【0054】
気体難透過性素材とは、ガス透過度が104[cm3/m2・day・atm]以下の素材であり、より望ましくは103[cm3/m2・day・atm]以下となるものである。
【0055】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって、この発明が限定されるものではない。
【0056】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における気体吸着材の製造方法を示すフローチャートである。
【0057】
本実施の形態における気体吸着材の製造は、銅イオンを含むイオン交換溶液を用いたイオン交換工程(STEP1)と、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを洗浄する洗浄工程(STEP2)と、乾燥工程(STEP3)と、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと流動化材とを混合する混合工程(STEP4)と、銅イオンを還元するための熱処理工程(STEP5)とからなるものである。
【0058】
銅イオンを交換する前の原料であるZSM−5型ゼオライトは、市販の材料を使用することができるが、シリカ対アルミナ比は、2.6以上50以下であることが望ましい。この範囲を望ましいとしたのは、シリカ対アルミナ比が50を超えると、銅イオン交換量が少なく、すなわち窒素吸着活性が減少するからであり、シリカ対アルミナ比が2.6未満のZSM−5型ゼオライトは理論的に合成が不可能であるという理由からである。
【0059】
イオン交換工程(STEP1)では、銅イオンを含む溶液として、酢酸銅、プロピオン酸銅など、従来の既存の化合物の水溶液が利用可能である。中でも、気体吸着量の増大を実現するためには、銅イオンがカルボキシラトを含む化合物から生じたものであることが好ましく、酢酸イオン、プロピオン酸イオンなどを生じる酢酸銅、プロピオン酸銅などが好ましい。
【0060】
イオン交換回数や銅イオン溶液の濃度、イオン交換時間などは、特に限定するものではない。
【0061】
なお、洗浄工程(STEP2)では、蒸留水を用いて洗浄することが望ましい。また、乾燥工程(STEP3)では、100℃未満の条件で乾燥することが望ましく、室温での減圧乾燥でも良い。
【0062】
また、混合工程(STEP4)では、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと流動化材とをミキサーなどで混合することができる。流動化材の添加量は特に指定するものではないが、1%以上から効果が現れる。上限も規定するものではないが、気体吸着能力を考慮すると、20%から10%程度が望ましい。
【0063】
また、熱処理工程(STEP5)では、減圧下、望ましくは10-5Pa未満の条件下で、500℃以上800℃以下の温度で熱処理することが望ましい。熱処理時間は、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの量によるが、銅イオンを2価から1価へ還元可能な十分な時間が必要である。なお、500℃以上800℃以下の温度での熱処理が望ましいとしたのは、500℃未満では、1価への還元が不十分になる恐れがあり、800℃を超えると、ゼオライトの構造が破壊される恐れがあるという理由からである。
【0064】
なお、この混合工程(STEP4)と熱処理工程(STEP5)とは、互いに入れ替えても流動性の向上には支障はないが、流動化材が水分を含有している場合、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの吸着活性を低下させる恐れがあるため、入れ替えない方が望ましい。
【0065】
このようにして製造した銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは、優れた気体吸着活性を有すると共に、流動化材によって流動性が改善され、量産が容易な粉体特性をも併せ持つものである。
【0066】
(実施の形態2)
図2(a)は、本発明の実施の形態2における加熱前の気体吸着デバイスを長手方向に平行な平面で切断した場合の断面図、図2(b)は、同実施の形態の加熱前の気体吸着デバイスを長手方向に垂直な平面で切断した場合の断面図である。
【0067】
図2に示すように、本実施の形態の気体吸着デバイス1は、熱可塑性プラスチックからなる筒状の容器2内部に、粉末状の水分吸着材3と、気体吸着材4として銅イオン交換されたZSM−5と流動化材とが封入されている。
【0068】
また、水分吸着材3と気体吸着材4の間は、連通ウレタンフォーム製の仕切り5で仕切られている。容器2には応力を加える部材6により応力が加えられている。また、容器2内部の応力を加える部材6付近には支持体7が設置されている。ここで、応力を加える部材6の先端は鋭利になっている。さらに、支持体7には微細な孔が開いており、応力を加える部材6の先端付近にある。
【0069】
図3(a)は、同実施の形態の加熱後の気体吸着デバイスを長手方向に平行な平面で切断した場合の断面図、図3(b)は、同実施の形態の加熱後の気体吸着デバイスを長手方向に垂直な平面で切断した場合の断面図である。
【0070】
気体吸着デバイス1は、筒状の容器2内部に封入されているため、保存時における劣化は少ない。
【0071】
気体吸着デバイス1を、気体吸着材4を要する空間に設置後、外部より加熱することにより容器2の温度が上昇する。容器2は熱可塑性樹脂であるため、温度の上昇により軟化する。容器2には予め応力を加える部材6により応力が加えられているため、所定の温度に達すると容器2の強度を、応力を加える部材6による応力が上回る。
【0072】
容器2は軟化しているため応力を加える部材6の形状に追従するため容易には貫通孔が生じないが、応力を加える部材6の先端付近には支持体7の孔があるため、この付近の変形率は著しく大きくなり、容器2には貫通孔8が生じる。気体吸着材4は貫通孔8を通して気体を吸着することが可能になる。
【0073】
ここで、貫通孔8を生じさせる部分は、仕切り5とで分割される容器内の空隙のうち、水分吸着材3を含む側であり、望ましくは仕切り5までの距離がより遠い部分である。
【0074】
本構成により、水分を含む気体が侵入して来た場合にも、水分を含む気体は貫通孔8を通して容器2に侵入した後、粉末状の水分吸着材3付近に所定の時間留まるため、気体に含まれる水分は水分吸着材3により吸着され、水分を含まない気体のみが仕切り5を通り気体吸着材4に到達し、気体吸着材4は効率よく気体を吸着することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明にかかる気体吸着材は、帯電したZSM−5型ゼオライト粉体の団粒化を抑制し、生産装置への付着、粉体供給装置の目詰まりなどの課題を解決一方で、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの吸着能力を阻害することはないため、気体吸着能力に優れ、かつ量産性のよい気体吸着材を提供できる。よって、窒素、酸素、水素、一酸化炭素などを吸着する用途、特に窒素に対する吸着性能が高いため、蛍光灯中のガスの除去、希ガス中の微量ガスの除去、気体分離等様々な分野で用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態1における気体吸着材の製造方法を示すフローチャート
【図2】(a)本発明の実施の形態2における加熱前の気体吸着デバイスを長手方向に平行な平面で切断した場合の断面図(b)同実施の形態の加熱前の気体吸着デバイスを長手方向に垂直な平面で切断した場合の断面図
【図3】(a)同実施の形態の加熱後の気体吸着デバイスを長手方向に平行な平面で切断した場合の断面図(b)同実施の形態の加熱後の気体吸着デバイスを長手方向に垂直な平面で切断した場合の断面図
【符号の説明】
【0077】
1 気体吸着デバイス
2 容器
3 水分吸着材
4 気体吸着材
5 仕切り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと流動化材とを含むことを特徴とする気体吸着材。
【請求項2】
流動化材が、シリカであることを特徴とする請求項1記載の気体吸着材。
【請求項3】
銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと流動化材とは混合され熱処理が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の気体吸着材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項記載の気体吸着材を含むことを特徴とする気体吸着デバイス。
【請求項5】
少なくとも銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと流動化材とからなる気体吸着材と、水分吸着材と、気体難透過性素材からなる容器とからなり、前記容器は通気性を制御可能な仕切りにより少なくとも2つ以上の空間に仕切られており、前記気体吸着材と前記水分吸着材はそれぞれ前記容器の異なる空間に収容されていることを特徴とする請求項4に記載の気体吸着デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−51915(P2010−51915A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221399(P2008−221399)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】