説明

気体圧縮機

【目的】 アルミロータの強度向上を図るのに好適な気体圧縮機を提供する。
【構成】 アルミロータ2の端面2a側に補強部としてテーパ部11を設ける。テーパ部11はアルミロータ2の貫通穴2aの周縁に位置し、アルミロータ2と鉄シャフト3とを締結する塑性流動部Aと一体に形成し、この塑性流動部Aを補強する。またテーパ部11はアルミロータ2の端面2b側で拡がりが最大となるように設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はカーエアコン等に用いられる気体圧縮機に関し、特にアルミ製ロータの強度向上を図るのに好適なものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、この種の軽量型の気体圧縮機としては例えば図4に示す如く内周楕円状のシリンダ1内に断面円形状のアルミ製ロータ2(以下、アルミロータという。)を回転可能に収納したものが知られており、アルミロータ2にはその両端面を貫く貫通穴2aを介して鉄製シャフト3(以下、鉄シャフトという。)が一体に設けられている。
【0003】アルミロータ2と鉄シャフト3を一体化する際は、図6(a)に示すようにアルミロータ2の貫通穴2aに鉄製シャフト3を挿入した上で、アルミロータ2の端面2bをダイス100で加圧し、これによりアルミロータ2の一部を鉄シャフト3の外周溝部3aに塑性流動させ、この塑性流動部Aを介してアルミロータ2と鉄シャフト3とを締結する。
【0004】このため、アルミロータ2の端面2bと鉄シャフト3の外周溝部3aとの位置およびその形状は重要であり、塑性流動したアルミロータ2の一部を鉄シャフト3の外周溝部3a溝に充満させてアルミロータ2と鉄シャフト3の高い締結強度を得るにはアルミロータ2と鉄シャフト3の位置およびその形状を図6(a)に示すように設けるのが最適である。
【0005】また、上記の如くアルミロータ2と鉄シャフト3を締結した後、アルミロータ2は端面2bに切削加工および研削加工等の機械加工を施して図6(b)に示すような所望の形状に形成する。
【0006】なお、図4に示すように、シリンダ1は一対のサイドブロック4,4間に配設され、一対のサイドブロック4,4はシリンダ1の端面にそれぞれ取り付けられており、また鉄シャフト3はサイドブロック4,4の軸受部5,5により支持されている。
【0007】また、図5に示すように、アルミロータ2にはその径方向にベーン溝6,6…が形成され、ベーン溝6,6にはベーン7,7…が装着されており、ベーン7,7…はアルミロータ2の外周面からシリンダ1の内壁に向かって出没自在に設けられ、かつシリンダ1の内壁に付勢され、この種の付勢力はアルミロータ2の回転による遠心力、およびベーン溝6,6に供給される潤滑油の背圧により得られる。
【0008】このような気体圧縮機においては、鉄シャフト3が回転し、この回転トルクがアルミロータ2に伝達され、アルミロータ2が回転すると、シリンダ1、アルミロータ2、一対のサイドブロック4,4およびベーン7,7…により仕切られた圧縮作業室8,8…の容量が変化し、これにより吸入室9の冷媒ガスを圧縮して吐出室10に吐出する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような従来の気体圧縮機にあっては、アルミロータ2と鉄シャフト3を締結した後、アルミロータ2の端面2bに機械加工を施してアルミロータ2を図6(b)に示すような形状に形成すると、塑性流動部Aに極端な薄肉部ができるため、これによりアルミロータ2の強度が低下する等の問題点がある。
【0010】なお、鉄シャフト3における外周溝部3aの位置およびその形状については前述の通り塑性流動の面から一義的に決められており、塑性流動を無視してそれらを変更することはアルミロータ2と鉄シャフト3間の締結強度の低下を招くことから許されないため、塑性流動部Aに薄肉部ができない位置に外周溝部3aを設ける、あるいは塑性流動部Aに薄肉部ができない形状に外周溝部3aを形成することはできない。
【0011】この発明は上述の事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところはアルミロータの強度向上を図るのに好適な気体圧縮機を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、一対のサイドブロック、両サイドブロック間に配設したシリンダ、シリンダ内に回転可能に収納したロータ、ロータの外周面からシリンダの内壁に向かって出没自在なベーン、およびこれらにより仕切られた圧縮作業室を備え、ロータの回転による圧縮作業室の容量変化で冷媒ガスを圧縮する気体圧縮機において、上記ロータの端面側に、ロータとこれに回転トルクを伝達するためのシャフトとを締結する塑性流動部を形成するとともに、上記塑性流動部に、これを補強するための補強部を一体に設けたことを特徴とする。
【0013】請求項2記載の発明は補強部が、ロータの端面側で拡がりが最大のテーパ部からなることを特徴とする。
【0014】請求項3記載の発明は補強部が、ロータの端面側で拡がりが最大の円弧部からなることを特徴とする。
【0015】請求項4記載の発明は補強部が、ロータの端面より突出するように設けた段部からなることを特徴とする。
【0016】
【作用】この発明によれば、補強部により塑性流動部が補強されることから、特にこの種の塑性流動部を介し鉄シャフトとの締結を行うアルミロータの不具合、すなわち塑性流動部からアルミロータが破損するのを防止できる。
【0017】
【実施例】以下、この発明に係る気体圧縮機の実施例について図1ないし図3を基に詳細に説明する。
【0018】なお、気体圧縮機の基本的な構成、例えば一対のサイドブロック4,4、シリンダ1、アルミロータ2、およびベーン7,7…により仕切られた圧縮作業室8,8…を備えること、並びにロータ2の回転による圧縮作業室8,8…の容量変化で冷媒ガスを圧縮すること等は従来と同様なため、それと同一部材には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0019】この気体圧縮機は図1に示す如くアルミロータ2の端面2b側に補強部としてテーパ部11が設けられている。
【0020】テーパ部11はアルミロータ2の貫通穴2aの周縁に位置し、かつアルミロータ2と鉄シャフト3とを締結する塑性流動部Aに一体に形成され、この塑性流動部Aを補強する。
【0021】また、テーパ部11はアルミロータ2の端面2b側で拡がりが最大となるように設けられている。
【0022】上記のようなテーパ部11を形成するためには、先ずアルミロータ2の一部を鉄シャフト3の外周溝部3aに塑性流動させ、この塑性流動部Aを介してアルミロータ2と鉄シャフト3を締結する(図4(a)参照)。その後、アルミロータ2の端面2bに切削加工等の機械加工を施すとき、アルミロータ2の端面2bと鉄シャフト3との境、すなわち貫通穴2aの周縁をテーパ部11として残せばよい。
【0023】次に、上記の如く構成された気体圧縮機の動作を図1に基づき説明する。
【0024】この気体圧縮機によれば、従来と同様にアルミロータ2の回転による圧縮作業室8,8…の容量変化で冷媒ガスを圧縮する際、その圧縮力がアルミロータ2に加わるが、塑性流動部Aはテーパ部11により補強されているので、塑性流動部Aからアルミロータが破損するのを防止でき、アルミロータ2を使用した気体圧縮機の長期にわたる運転が可能となる。
【0025】したがって、上記実施例の気体圧縮機によれば、テーパ部11により塑性流動部Aを補強し、これにより塑性流動部Aからアルミロータ2が破損するのを防止したものであるため、アルミロータ2の強度が高く、耐久性に優れる。
【0026】なお、上記実施例では補強部をテーパ部11から構成したが、これに代えて補強部は図2に示すような円弧部12または図3に示すような段部13として構成してもよい。このとき円弧部12はテーパ部11と同じくアルミロータ2の端面側で拡がりが最大となるように設け、また段部13はアルミロータ2の端面より突出するように設ける。このような円弧部12および段部13からなる補強部にあっても、テーパ部11と同様な効果、すなわちアルミロータ2の耐久性向上を図れる。
【0027】
【発明の効果】この発明に係る気体圧縮機にあっては、上記の如くロータとこれに回転トルクを伝達するシャフトとを締結するロータ端面側の塑性流動部に、補強部を設けたため、補強部により塑性流動部が補強されるので、特にこの種の塑性流動部を介し鉄シャフトとの締結を行うアルミロータの不具合、すなわち塑性流動部からアルミロータが破損するのを防止でき、アルミロータの強度向上を図るのに好適である。
【0028】請求項2ないし4記載の発明にあっても上記と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る気体圧縮機の要部を示す断面図。
【図2】この発明の他の実施例を示す断面図。
【図3】この発明の他の実施例を示す断面図。
【図4】従来の気体圧縮機の断面図。
【図5】図2の III-III線断面図。
【図6】図2に示す気体圧縮機のロータとシャフトとの締結部分の説明図。
【符号の説明】
A 塑性流動部
1 シリンダ
2 ロータ
3 シャフト
4 サイドブロック
7 ベーン
8 圧縮作業室
11 テーパ部
12 円弧部
13 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対のサイドブロック、両サイドブロック間に配設したシリンダ、シリンダ内に回転可能に収納したロータ、ロータの外周面からシリンダの内壁に向かって出没自在なベーン、およびこれらにより仕切られた圧縮作業室を備え、ロータの回転による圧縮作業室の容量変化で冷媒ガスを圧縮する気体圧縮機において、上記ロータの端面側に、ロータとこれに回転トルクを伝達するためのシャフトとを締結する塑性流動部を形成するとともに、上記塑性流動部に、これを補強するための補強部を一体に設けたことを特徴とする気体圧縮機。
【請求項2】 補強部が、ロータの端面側で拡がりが最大のテーパ部からなることを特徴とする請求項1記載の気体圧縮機。
【請求項3】 補強部が、ロータの端面側で拡がりが最大の円弧部からなることを特徴とする請求項1記載の気体圧縮機。
【請求項4】 補強部が、ロータの端面より突出するように設けた段部からなることを特徴とする請求項1記載の気体圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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