説明

気体圧送管のサンドブラスト保護構造及び保護方法

【課題】単に水道管及び気体圧送管を埋設する場合に比べても工数を増やすことのない簡便なサンドブラスト対策を実現することを目的とする。
【解決手段】土中に、水道管2と気体圧送管3とが隣接して埋設されて成る気体圧送管3の埋設構造であって、水道管2と気体圧送管3との間及び気体圧送管3の周部に、セメントベントナイトから成るセメントベントナイト固化保護層4を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土中に、水道管と気体圧送管とが隣接して埋設される気体圧送管の埋設構造において、前記気体圧送管に対する前記水道管の漏水によるサンドブラスト現象を防止する気体圧送管のサンドブラスト保護構造及び保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土中に埋設された水道管が腐食や破損等で管体に孔が開いて漏水した場合、当該水道管から出水した漏水が水道管周辺の土砂を巻き込みながら泥水状態となって、水道管に近接して埋設されたガス管等の気体圧送管に当たり、やがて気体圧送管に孔を開けるサンドブラスト現象が発生する。
【0003】
サンドブラスト現象により、ガス管に孔が開いた場合、ガス漏えい修繕を行なう必要があるが、復旧のためには、道路掘削を行う必要があり、至急に修繕処置ができない。また、中圧ガス管のような輸送導管でこのような事態が発生した場合は、市中のガス導管網を部分的に閉鎖する等、社会的にも多大な影響を及ぼす恐れがある。
【0004】
このような問題に対し、従来技術として、特許文献1及び2に示されるように、水道管本体の外表面に外装部材を配設することで、サンドブラスト現象を防止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−120977号公報
【特許文献2】特開2000−120978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの従来技術では、単に水道管及び気体圧送管を埋設する場合に比べ、埋設作業時に外装部材を配設する必要があるため、手間がかかるとともに、別途外装部材を作成するためのコストがかかってしまう。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑み、従来技術のように別途外装部材を必要とせず、さらに
単に水道管及び気体圧送管を埋設する場合とほぼ同等な工数で、良好にサンドブラスト現象の発生を抑制できる保護構造及び保護方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る土中に、水道管と気体圧送管とが隣接して埋設されて成る気体圧送管のサンドブラスト保護構造の特徴構成は、前記水道管と前記気体圧送管との間及び前記気体圧送管の周部に、セメントベントナイトから成るセメントベントナイト固化保護層を備えて成る点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、水道管に孔が開いて漏水した場合でも、漏水によってまずセメントベントナイト保護層が破砕され、セメントベントナイト保護層内に水みちが形成される。この水みちは、漏水の発生部から気体圧送管を迂回して、セメントベントナイト保護層の土壌との境界面に到るみちとなる。このような水みちが形成できるのは、セメントベントナイト保護層が、金属管、PE管等からなる気体圧送管に対して柔らかく、容易に水みちが形成されるためである。ここで、本願におけるセメントベントナイト保護層は、そのスラグ成分としてはベントナイト(粘土)のみを含み、砂利等の骨材は含まない。本願に係るサンドブラスト保護構造では、以上の原理から漏水がこの水みちを通って流れるようになるので、漏水により気体圧送管に損傷を与えるおそれを軽減できる。一般には、サンドブラスト現象は、土壌中にある土砂が漏水噴流に巻き込まれて、気体圧送管に当ることで、表面を削る現象であるが、本願のように、気体圧送管をセメントベントナイトのみで囲っておいた場合、上記のように気体圧送管を迂回する形態で水みちが良好に形成されるとともに、サンドブラスト現象の主な要因となる比較的大粒の土砂成分が、水道管と気体圧送管との間及び気体圧送管の周部に存在しないため、サンドブラストが発生しえないものと考えられる。即ち、本願構造を採ることで、サンドブラスト対策を実現できるとともに、このような構造であれば埋設時に土に代えてセメントベントナイト固化保護層を形成するだけで済むので、サンドブラスト対策のために新たに工数が増えることもない。すなわち、簡便なサンドブラスト対策を実現することが出来る。
【0010】
また、前記セメントベントナイト固化保護層に、酸性中和剤を含むと好適である。
【0011】
この構成によれば、土壌や地下水への悪影響を抑制できるとともに、防食処置のされていない水道管の場合でも、水道管においてマクロセル腐食により管体腐食が進行することを抑制出来る。
【0012】
また、前記セメントベントナイト固化保護層が、前記酸性中和剤と水とからなる第一混合液と、高炉セメントと前記水と強度調整剤とからなる第二混合液との攪拌混合物を、前記水道管と前記気体圧送管との間及び前記気体圧送管との周部に投入し、固化されて成ると好適である。
【0013】
この構成によれば、セメントベントナイト固化保護層の流動性を良好に出来るので、水道管及び気体圧送管埋設時の作業性を良好にすることが出来る。
【0014】
本発明に係る土中に、水道管と気体圧送管とが隣接して埋設される気体圧送管の埋設構造において、前記気体圧送管に対する前記水道管の漏水によるサンドブラスト現象を防止する気体圧送管の保護方法の特徴構成は、前記水道管と前記気体圧送管との間及び前記気体圧送管の周部に、セメントベントナイトから成るセメントベントナイト固化保護層を設け、漏水時に、前記セメントベントナイト固化保護層内から固化保護層外に連通する漏水流通路を形成させて、前記気体圧送管に対する漏水によるサンドブラスト現象を防止する点にある。
【0015】
この手法を採用することで、先に説明した原理に基づいて、容易にサンドブラスト対策を施すことが出来る。
【0016】
また、前記セメントベントナイト固化保護層の形成材料中に、酸性中和剤を含ませると好適である。
【0017】
この構成によれば、先にも示したように、土壌や地下水への悪影響を抑制できるとともに、防食処置のされていない水道管の場合でも、水道管においてマクロセル腐食により管体腐食が進行することを抑制出来る。
【0018】
また、前記セメントベントナイト固化保護層の形成に当り、前記酸性中和剤と水とからなる第一混合液と、高炉セメントと前記水と強度調整剤とからなる第二混合液との攪拌混合物を得て、当該攪拌混合物を前記水道管と前記気体圧送管との間及び前記気体圧送管との周部に投入し、固化させて、前記セメントベントナイト固化保護層を形成すると好適である。
【0019】
この構成によれば、セメントベントナイト固化保護層の流動性を良好に出来るので、水道管及び気体圧送管埋設時の作業性を良好にすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る気体圧送管の埋設構造概略図
【図2】セメントベントナイト固化保護層を用いた実験結果概略図
【図3】2液混合方式での配合試験に用いた配合比一覧
【図4】1液混合方式での配合試験に用いた配合比一覧
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、土中に、水道管2と気体圧送管とが隣接して埋設されて成る気体圧送管のサンドブラスト保護構造であって、水道管2と気体圧送管との間及び気体圧送管との周部に、セメントベントナイトから成るセメントベントナイト固化保護層4を備えて成る保護構造を示している。ここで、本実施形態においては、気体圧送管は住宅などにガスを供給するためのガス管3である。また、セメントベントナイト固化保護層4は、本実施形態においては、JIS規格R5211に定義されている高炉セメントB種と、水と、セメントベントナイト固化保護層4の強度を調整するための強度調整剤と、酸性中和剤とから成っている。
【0022】
本実施形態においては、セメントベントナイト固化保護層4は、高炉セメントを用いて作成している。一般的にセメントとしてよく用いられているポルトランドセメントには周辺の在来土1に悪影響を及ぼす恐れのある六価クロムが多く含まれている。ここで、高炉セメントは、高炉スラグとポルトランドセメントとが混合した混合セメントである。高炉セメントの場合、高炉セメントに含まれるスラグの硫黄分が六価クロムの還元剤として働き、高炉セメントに含まれる六価クロムを化学的に安定な三価クロムに還元するので、ポルトランドセメント単体のみの場合と比較して、比較的六価クロムが土中に溶出しづらく、周辺の在来土1に悪影響を及ぼす可能性が低い。よって、本発明では高炉セメントを用いている。
【0023】
また、本実施形態においては、強度調整剤として、水酸化マグネシウムを主剤とするものを用いている。強度調整剤は、セメントベントナイト固化保護層4のフロー値を高くするために使用される。加えて、本実施形態においては、セメントベントナイト固化保護層4の形成材料中には、酸性中和剤を含んでいる。具体的には、酸性中和剤として、硫酸バンドを主剤とするものを用いている。これは、セメントが一般的に強アルカリ性であり、そのまま用いると、周辺の在来土1に悪影響を及ぼす危険性がある他、水道管2の防食処置がされていない場合には、マクロセル腐食により管体腐食を進行させる危険性がある為である。
【0024】
図2は、セメントベントナイト固化保護層4を用いた場合の効果を実証する為に行った実験の模式図である。
【0025】
この実験では、図2左に示すように、水槽5内に水道管2及びガス管3を埋設したセメントベントナイト固化保護層4を作成した。具体的には、セメントベントナイト固化保護層4に対し、紙面垂直方向に向けてガス管3を埋設した。さらに、水道管2からの漏水を擬似的に再現する為、水槽5内においてガス管3の紙面左側方向に、ガス管3に対して垂直な方向からガス管3に向けて水を噴射する噴射ノズル6の口を配置した。
【0026】
次に、噴射ノズル6から7時間水を噴射し、その後の様子を観察した。このとき、ガス管3の減肉は観察されなかった。観察した結果を図2右に示す。図2右から分かるように、セメントベントナイト固化保護層4を用いた場合、ガス管3に噴射された水によりガス管3上部のセメントベントナイト固化保護層4が持ち上がり、セメントベントナイト固化保護層4中に水みち7が生成されていた。この結果、噴射ノズル6から噴射された水が、この水みち7を通って流れ、ガス管3へ直接衝突しなくなり、サンドブラスト現象が防止されたと考えられる。
【0027】
本実施形態においては、液体の酸性中和剤と水とからなる第一混合液と、高炉セメントと水と強度調整剤とからなる第二混合液との2液を、水道管2及びガス管3が露出状態にある現場で混合する2液混合方式による攪拌混合物を用いてセメントベントナイト固化保護層4を作成している。ここで、水道管2及びガス管3の埋設の際に、充填を行い易い攪拌混合物を作成する為に、水酸化マグネシウムを主剤とする強度調整剤及び高炉セメントの量を変えて配合試験を行った。図3に、2液混合方式による配合試験において試した配合比を示す。配合(1)〜(4)で形成されたセメントベントナイト固化保護層4を比較した結果、配合(1)が、強度発現の速度、及び体積変化の点に関して比較的良く、セメントベントナイト固化保護層4を作成するのに最も適していることがわかった。なお、配合(2)〜(4)で作成した攪拌混合物は、形成されるセメントベントナイト固化保護層4の強度が低く、適していないことがわかった。
【0028】
また、充填量及び施工性を考慮し、粉末の酸性中和剤と高炉セメントと強度調整剤と水とを一度に混ぜる一液混合方式で作成した攪拌混合物を用いてセメントベントナイト固化保護層4の作成を試みた。図4に、一液混合方式での配合試験において試した配合比を示す。配合試験の結果、一液混合方式では、配合(5)〜(7)のいずれの場合でも、流動性は2液混合方式には及ばないものの、セメントベントナイト固化保護層4の形成が可能であることがわかった。なお、配合(5)及び(6)に用いた酸性中和剤は、当該酸性中和剤に含まれる主剤の量が、配合(1)〜(4)の酸性中和剤に含まれる主剤の量とほぼ同量となるように配合した。
【0029】
以上の実験結果より、セメントベントナイト固化保護層4を作成するにあたっては、酸性中和剤と水とからなる第一混合液と、高炉セメントと水と強度調整剤とからなる第二混合液との攪拌混合物を用いるのが好適であることがわかった。また、第二混合液500lのうち、高炉セメントを100kgに対し、強度調整剤を150kg配合すると、流動性の面でより好適であることがわかった。
【0030】
〔その他の実施形態〕
1.本実施形態においては、セメントベントナイト固化保護層に、高炉セメントを用いたが、高炉セメントに代えてポルトランドセメントやその他のセメントを用いても良い。
2.本実施形態においては、セメントベントナイト固化保護層に、酸性中和剤を加えたが、加えない構成としても良い。
3.本実施形態においては、セメントベントナイト固化保護層を、酸性中和剤を含む第一混合液と、高炉セメント及び強度調整剤を含む第二混合液とに分けて作成し、2液を攪拌混合して作成したが、セメントベントナイト固化保護層を、酸性中和剤、高炉セメント、強度調整剤、水を1液に混合して作成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0031】
土中に、水道管と気体圧送管とが隣接して埋設される気体圧送管の埋設構造において、前記気体圧送管に対する前記水道管の漏水によるサンドブラスト現象を防止する気体圧送管の保護方法として用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
1:在来土(土)
2:水道管
3:ガス管(気体圧送管)
4:セメントベントナイト固化保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土中に、水道管と気体圧送管とが隣接して埋設されて成る気体圧送管のサンドブラスト保護構造であって、前記水道管と前記気体圧送管との間及び前記気体圧送管の周部に、セメントベントナイトから成るセメントベントナイト固化保護層を備えて成る気体圧送管のサンドブラスト保護構造。
【請求項2】
前記セメントベントナイト固化保護層に、酸性中和剤を含む請求項1に記載の気体圧送管のサンドブラスト保護構造。
【請求項3】
前記セメントベントナイト固化保護層が、
前記酸性中和剤と水とからなる第一混合液と、高炉セメントと前記水と強度調整剤とからなる第二混合液との攪拌混合物を、前記水道管と前記気体圧送管との間及び前記気体圧送管との周部に投入し、固化されて成る請求項2に記載の気体圧送管のサンドブラスト保護構造。
【請求項4】
土中に、水道管と気体圧送管とが隣接して埋設される気体圧送管の埋設構造において、前記気体圧送管に対する前記水道管の漏水によるサンドブラスト現象を防止する気体圧送管の保護方法であって、
前記水道管と前記気体圧送管との間及び前記気体圧送管の周部に、セメントベントナイトから成るセメントベントナイト固化保護層を設け、漏水時に、前記セメントベントナイト固化保護層内から固化保護層外に連通する漏水流通路を形成させて、前記気体圧送管に対する漏水によるサンドブラスト現象を防止する気体圧送管の保護方法。
【請求項5】
前記セメントベントナイト固化保護層の形成材料中に、酸性中和剤を含ませる請求項4に記載の気体圧送管の保護方法。
【請求項6】
前記セメントベントナイト固化保護層の形成に当り、
前記酸性中和剤と水とからなる第一混合液と、高炉セメントと前記水と強度調整剤とからなる第二混合液との攪拌混合物を得て、当該攪拌混合物を前記水道管と前記気体圧送管との間及び前記気体圧送管との周部に投入し、固化させて、前記セメントベントナイト固化保護層を形成する請求項5に記載の気体圧送管の保護方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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