説明

気体浄化用中空糸膜カートリッジ

【課題】フィルターの耐圧性、塵芥の捕集性および剥離性を向上し、塵芥によるフィルター圧損を軽減し、ユニットの大型化を抑え、且つ安定運転でフィルターの寿命を長くできる気体浄化用中空糸膜カートリッジを提供する。
【解決手段】
気体に含まれる塵芥を除去する気体浄化用中空糸膜カートリッジであって、
(a)中空糸膜束エレメントと前記中空糸膜束の外周部を保護するエレメントガードとを有する中空糸膜モジュールと、
(b)前記中空糸膜モジュールを内部に収納し、浄化すべき気体の導入口および浄化された気体の導出口を備えるハウジングと、
(c)前記ハウジングの内側底部に配置された、気体から分離された塵芥を集積するための塵芥集積容器と、を備える塵芥集積容器一体型の気体浄化用中空糸膜カートリッジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガス配管のような気体流路において、気体中の塵芥を除去して気体を浄化する気体浄化用中空糸膜カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガス配管のような気体流路において、老朽化した鉄製配管から発生する鉄錆や、ガス配管埋設工事で混入する土砂や溶接スラグなどの塵芥(ダスト)を除去するために、気体流路に目開きが60〜200メッシュの金属製のストレーナーを設け、そこにガス配管内の塵芥を捕集し、気体から塵芥を除去して気体を浄化することが知られている(特許文献1)。
また、気体中に含まれるダストを、フィルター体を用いて回収し、フィルター体に付着したダストを圧縮空気によりフィルター体から取り除くためのダスト回収装置が知られている(特許文献2)。
【0003】
特許文献3には、空気処理用の濾過器として、焼結合金、濾布等を濾材として用いた、いわゆる空気用フィルターの他、多数の中空糸を濾材として充填したカートリッジがクリーンルーム用濾過器に用いられていたことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−128930号公報
【特許文献2】特開平2005−205325号公報
【特許文献3】特開平6−114240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているダストサンプリング装置を内蔵したガスメーターでは、目開きが60〜200メッシュの金属製のストレーナーにより、比較的大きなダストしか捕捉できず、比較的微細なダストはガスメーター内部に流入して目詰まりを引き起こす問題や、ダスト捕集容積が小さいため、短周期でのメンテナンスが必要となる問題がある。
特許文献2に開示されているダクト回収装置では、フィルター体を備える装置ハウジングの他に、ダスト回収のための回収容器、装置ハウジングから回収容器へのバルブ、配管を必要とし、装置が大型化するという問題がある。
また、特許文献3に開示されている中空糸を濾材とする従来の濾過器では、捕捉された塵芥の中空糸からの剥離性や剥離された塵芥の捕集性に対する配慮がなされていなく、このため中空糸を用いる空気濾過器は広く普及するに至っていない。
【0006】
ガス流量を維持しつつ、微細な塵芥も捕集するために樹脂製のプリーツ型フィルターを用いて濾過すると、圧力損失が大きくなり、フィルターが頻繁に目詰りを起こすので、フィルターの圧力による破損を防止するために、微差圧計によりフィルターの一次側と二次側の微少差圧を常時監視する必要がある上に、フィルターを通過する気体流量よりもフィルター面積を大きくしなければならない。その結果、システムが複雑化および大型化してしまい、システム導入の初期費用が高くなる。また、フィルターが大型で、しかも寿命が短いために頻繁に新品と交換する必要があり、維持管理費用も高くなる。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、フィルターの塵芥捕集性および剥離性を向上し、塵芥によるフィルター圧損を軽減し、ユニットの大型化を抑え、且つ安定運転可能な気体浄化用中空糸膜カートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る気体浄化用中空糸膜カートリッジは、
(a)中空糸膜束エレメントと前記中空糸膜束の外周部を保護するエレメントガードとを有する中空糸膜モジュールと、
(b)前記中空糸膜モジュールを内部に収納し、浄化すべき気体の導入口および浄化された気体の導出口を備えるハウジングと、
(c)前記ハウジングの内側底部に配置された、気体から分離された塵芥を集積するための塵芥集積容器と、を備えており、塵芥集積容器を一体に備えることにより、気体に含まれる塵芥を有効に除去することができる。
【0009】
本発明においては、フィルターとして中空糸膜モジュールを用いているので、フィルターの耐圧性は向上し、フィルターの一次側と二次側の差圧を大きくして流量も増大させることができ、濾過面積は小さくて済み、その結果、ユニットを小型化することができる。
【0010】
本発明において、「塵芥」とは、ガス配管工事中に発生したゴミ、溶接屑、長期使用によるガス配管中に生じた鉄錆などに限らず、気体中の塵芥(塵、ほこり)、カビ、花粉などを含む用語として用いられている。
本発明において、「エレメント」とは、中空糸膜束と、中空糸膜束の少なくとも一方の端部を固定する樹脂層とを備えたものを意味する。中空糸膜は前記樹脂層を貫通してその外側に開口している。
本発明において、「エレメントガード」とは、中空糸膜同士の絡み合いや中空糸膜のたくれ上がりを防止し、エレメントの中空糸膜束の外周部を保護し、中空糸膜モジュールとしての取り扱い性も付与するものを意味する用語として用いられている。
【0011】
本発明に係る気体浄化用中空糸膜カートリッジを用いて気体浄化を行うプロセスには、浄化すべき気体を本発明に係るカートリッジに供給し、本発明のカートリッジに装着された中空糸膜により、気体に含まれる塵芥を分離除去して、塵芥を塵芥集積容器に集積させ、浄化された気体を気体導出口から排出する気体浄化工程だけでなく、所定時間気体の浄化を行った後に、中空糸膜に付着している塵芥を中空糸膜から分離するための逆洗洗浄工程をも含まれる。
【0012】
本発明において、塵芥集積容器は、浄化工程および逆流洗浄工程で発生する塵芥の集積効率に優れるだけでなく、集積した塵芥の巻き上げを防止する巻き上げ防止機構を設けていることが好ましい。塵芥集積容器を、塵芥を入れる機能だけの単なる容器形状とすると、浄化工程または逆流洗浄工程で塵芥集積容器に捕集した塵芥が巻き上がり、安定運転の継続が困難となる可能性があるが、塵芥集積容器内壁には、傾斜板などの塵芥集積容器底部には鉄錆や溶接スラグを磁力で集積する磁石などの巻き上げ防止機構を備えることにより、浄化工程および逆流洗浄工程で容器内に落下した塵芥の巻き上がりを防止することができ、運転の安全性を向上することが可能となる。
【0013】
本発明において、中空糸膜束エレメントは、中空糸膜束と中空糸膜束の少なくとも一方の端部を固定する樹脂層とを備えており、前記中空糸膜モジュールのエレメントガード内の中空糸膜を固定するエレメント樹脂層の横断面において、中空糸膜束が占める断面を除く空隙断面積比率は40%〜80%であることが好ましい。空隙断面積比率が40%未満と低すぎると、塵芥の捕集容積が小さく、エレメント1本あたりの捕集量が小さくなるため、エレメントが多本数必要となり、システムが大型化するおそれがある。また、空隙断面積比率が80%以上と高すぎると、塵芥の捕集容積は大きくなるが、中空糸膜同士が密集しすぎて、エレメント1本あたりの捕集量が大きくならず、エレメント内層部に付着した塵芥の剥離性も悪化することから、エレメント本数の低減は図れない。しかしながら、空隙断面積比率を40%〜80%とすると、エレメント1本あたりの捕集量が大きくなり、エレメントも少本数で済むため、システムの小型化が可能となり、システム導入の初期費用や維持管理費用の点でも有利となるので好ましい。
【0014】
本発明において、前記中空糸膜モジュールのエレメントは、ハウジング内で上下方向に延びる多本数の中空糸膜からなる中空糸膜束と、中空糸膜束の少なくとも一方の端部を固定する樹脂層とを備えているが、前記中空糸膜の一端、好ましくは、上端は開口状態で樹脂層に固定されており、前記中空糸膜束の他端、好ましくは、下端は樹脂層に固定されていない自由端であり、かつ、個々の中空糸膜の自由端は閉鎖されていることが好ましい。このことにより、浄化された気体は、中空糸膜の上端から排出され、中空糸膜表面で分離除去された塵芥は、中空糸膜下端が自由端であることにより中空糸膜下端の揺動により剥離して下方に落下しやすくなる。
【0015】
本発明において、前記中空糸膜束エレメントは、複数の中空糸膜束を備え、個々の中空糸膜束の上端が間隔を置いて一列に配置されて樹脂層に固定され、下方に垂下した櫛状分割形状を有していることが好ましい。この形状を有することにより、浄化すべき気体と中空糸膜束との接触がよくなり、塵芥の捕集性に有利であるとともに、中空糸膜束が適度な密度で分散していることにより、中空糸膜束下端の揺動により、捕集された塵芥が剥離して底部に落ちるため、中空糸膜モジュールの目詰りを防ぐ働きとなり、その結果、中空糸膜モジュールの寿命は長くなる。
【0016】
複数の中空糸膜束を備えた櫛状分割形状の中空糸膜束エレメントにおいて、櫛状分割形状は4〜8分割であることが好ましく、なかでも、6分割であることがさらに好ましい。エレメントの膜束形状を櫛状4〜8分割とすることが、気体の浄化工程での塵芥捕集性に優れ、圧力損失を低減することができ、中空糸膜モジュールの逆流洗浄工程での塵芥剥離性も優れ、その結果、中空糸膜モジュールの寿命が長くなり、更にエレメントの生産性にも影響がないという利点があるので好ましい。4分割未満の形状である場合には、浄化工程で中空糸膜の膜束が密集した形状となり、主に密集した膜束の最外表面以外での塵芥の捕集に不利となり、圧力損失が高まるのに加え、中空糸膜間に付着した塵芥の剥離性の点でも不利になる傾向にある。一方、エレメントの中空糸膜束の配置を櫛状8分割よりも多くすると、エレメントの製造技術が複雑となり、生産性の点で不利となり、エレメントの製造価格が高くなりやすい。
【0017】
本発明において、前記中空糸膜の孔径は1〜4μmであることが好ましい。1μm未満とすると、圧力損失が大きくなり、濾過面積が増大する傾向にあり、1μm以上とすれば、濾過面積を抑え、中空糸膜モジュールユニットを小型化しやすくなる。また、孔径が4μmより大きくなると、中空糸膜の孔径よりも微細な塵芥が浄化しにくくなり、塵芥がガス計量器内部のギアに付着して、目詰りを引き起こすおそれがある。
【0018】
本発明において、前記気体浄化用中空糸膜カートリッジは、前記中空糸膜モジュールに気体を導入して、前記中空糸膜モジュールを逆流洗浄する逆流洗浄手段を備えているのが好ましい。この構成によれば、逆流洗浄手段により、中空糸膜モジュールに付着した塵芥が取り除きやすくなり、中空糸膜モジュールの寿命を長くする可能性がある。
【0019】
本発明において、気体浄化用中空糸膜カートリッジに好適に装着される中空糸膜モジュールは、中空糸膜束エレメントと前記中空糸膜束の外周部を保護するエレメントガードとを有し、前記中空糸膜束エレメントは、中空糸膜束と中空糸膜束の一端の端部を固定する樹脂層とを備えており、
前記中空糸膜束の一端が開口状態で前記樹脂層に固定され、前記中空糸膜束の他端は前記樹脂層に固定されていない自由端であり、かつ、個々の中空糸膜の自由端は閉鎖されていることにより、気体浄化用中空糸膜カートリッジに適宜交換可能に構成されている。
【0020】
上記中空糸膜モジュールにおいて、前記エレメントガードは円筒形状を有し、前記エレメントガードの一端には前記エレメントが固定されて、円筒内部に前記中空糸膜束が収納されており、前記エレメントの他端は開放され、前記円筒の側面には、気体導入孔が設けられていることにより、中空糸膜は浄化すべき気体との接触がしやすいので好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の気体浄化用中空糸膜カートリッジによれば、気体に含まれる塵芥を除去するフィルターモジュールとして、中空糸膜モジュールを用いているので、フィルターの耐圧性は向上し、流量を増大させることで、濾過面積は小さくて済み、その結果、ユニットを小型化することができる。また、ハウジングの底部に、気体に含まれる塵芥を集積する塵芥集積容器を備えることにより、中空糸膜モジュールと塵芥集積容器とを一体化することで、ユニットを小型化することができ、このため、特許文献2に開示されているような従来のバルブおよび配管を介しての塵芥集積容器設置に比べて装置を小型化することができる。
【0022】
また、塵芥集積容器内壁に浄化工程および逆流洗浄工程で落下した塵芥を集積し、且つ塵芥の巻き上がりを防止する傾斜板を設けることや、塵芥集積容器底部に鉄錆や溶接スラグを磁力で集積する磁石を設けることで、塵芥集積容器に集積した塵芥の巻き上がりを防ぎ、安定運転が継続できるという利点を付加することができる。
【0023】
更に、中空糸膜モジュールのエレメントガード内の中空糸膜を固定するエレメント樹脂層の横断面において、中空糸膜束が占める断面を除く空隙断面積比率を40%以上とすることで、エレメント1本あたりの捕集量が大きくなり、エレメントも少本数で済むため、システムの小型化およびシステム導入の初期費用や維持管理費用を低減できるという利点を加えることができる。
【0024】
更に、中空糸膜の下端部を自由端とすることにより、浄化された異物が下に落ちやすくなり、中空糸膜の目詰りがしにくくなり、その結果、中空糸膜モジュールの寿命は長くなる傾向にある。また、エレメントにおける中空糸膜束の配置を櫛状6分割とすることにより、気体の浄化工程での塵芥捕集性が向上しやすく、圧力損失が低減しやすくなり、中空糸膜モジュールの逆流洗浄工程での塵芥剥離性も向上し、その結果、中空糸膜モジュールの寿命は長くなり、エレメントの生産性にも影響がないため、価格を低減することができるなどの利点を加えることができる。
【0025】
また、中空糸膜モジュールを逆流洗浄することで、中空糸膜モジュールに付着した塵芥を取り除きやすくなり、中空糸膜モジュールの寿命を長くすることに有効である。
【0026】
さらにまた、中空糸膜束をカバーするエレメントガードは、円筒状に形成されて中空糸束をカバーし、上端はエレメントに取り付けられ、下端は開放され、さらに、円筒側面には開口部を有することにより、浄化すべき気体との接触を有利にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の気体浄化用中空糸膜カートリッジを備える気体浄化装置の一例を簡略的に示す断面図である。
【図2】(a)〜(e)は、それぞれ本発明の気体浄化用中空糸膜カートリッジの塵芥集積容器の一例を簡略的に示す断面図である。
【図3】本発明の気体浄化用中空糸膜カートリッジの中空糸膜モジュールの一例を簡略的に示す断面図である。
【図4】(a)〜(f)は、それぞれ本発明の気体浄化用中空糸膜カートリッジのエレメントガード内における中空糸膜束の配置形状の一例を簡略的に示す断面図である。
【図5】本発明の気体浄化用中空糸膜カートリッジの中空糸膜の一例を簡略的に示す斜視図である。
【図6】本発明の気体浄化用中空糸膜カートリッジを備えるシステムの一例を簡略的に示す系統図である。
【図7】本発明の気体浄化用中空糸膜カートリッジを備えるシステムの他の一例を簡略的に示す系統図である。
【図8】本発明の気体浄化用中空糸膜カートリッジの中空糸膜の他の一例を簡略的に示す斜視図である。
【図9】本発明の気体浄化用中空糸膜カートリッジを備えるシステムの他の一例を簡略的に示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1は本発明に係る気体浄化用中空糸膜カートリッジの実施形態の一例を備える気体浄化装置を簡略的に示す断面図である。図1に示すように、気体浄化用中空糸膜カートリッジを備える気体浄化装置1は、気体に含まれる塵芥14(図5参照)を分離除去する気体浄化用中空糸膜カートリッジ2と、該カートリッジ2に塵芥14を含んだ浄化前気体(以下「原気体DG」という。)を導入する気体導入流路12と、該カートリッジ2で塵芥14が分離除去された浄化後気体(以下「浄化気体CG」という。)を導出する気体導出流路13を有している。気体導入流路12および気体導出流路13は配管からなり、気体導入流路12における気体浄化用中空糸膜カートリッジ2の近傍には第1の開閉弁V1、気体導出流路13における気体浄化用中空糸膜カートリッジ2の近傍には第2の開閉弁V2が設けられている。
【0029】
気体浄化用中空糸膜カートリッジ2は、複数の中空糸膜モジュール3を収容する円筒形状のハウジング4を備えており、ハウジング4には、原気体DGを導入するために、気体導入流路12と接続するための気体導入口10、浄化後気体CGを導出するために、気体導出流路13と接続するための気体導出口11が取り付けられ、気体導入口10から導入された原気体DGが中空糸膜の外面から内面に移行する過程において、気体に含まれる塵芥が中空糸膜表面で分離され、浄化された気体はハウジング4の上部に集められ、気体導出口11から浄化気体CGとして排出される。一方、分離除去された塵芥は、中空糸膜表面から分離されてハウジング4内下方に落下し、ハウジング4内に一体型で配置されている塵芥集積容器7に集められる。
【0030】
図1では、塵芥を除去するための中空糸膜モジュール3本が示されているが、本実施形態では円筒形状のハウジング4に7本の中空糸膜モジュール3が配置されている。なお、ハウジングに配置される中空糸膜モジュールの本数は、適宜選択される。ハウジング4は導電性材料、例えば鋼製であり、ハウジング4には、中空糸膜モジュール3を交換できるように、ハウジングキャップ5および中空糸膜モジュール3を取り付ける部材である管板6が設けられ、管板6には取り扱い性の向上を目的とした取っ手15が取り付けられている。
【0031】
(塵芥集積容器)
塵芥集積容器7は、中空糸膜で捕捉された塵芥が中空糸膜から分離されて落下し、落下した塵芥が収容されるように、上部が開放され、かつ、ハウジングの底部に収納可能な形状を有していることが好ましく、塵芥集積容器7に集積された塵芥を外部に廃棄、除去できるように、塵芥集積容器7は、ハウジングから着脱自在となっていることが好ましい。
【0032】
また、図1の実施形態では、塵芥集積容器7の側面形状をハウジング4と同様に、中空円筒形状としているが、本発明で使用される容器7の側面形状としては特に限定されず、加工性などの要求特性に応じて適宜選択することができる。例えば、側面形状としては、中空円筒形状、ロート状などの種々の形状から適宜選択採用することができる。
【0033】
塵芥集積容器7には、中空糸膜モジュール3による気体浄化工程および中空糸膜モジュール3の逆流洗浄工程で発生する塵芥14の集積効率の向上と、集積した塵芥14の巻き上げを防止するために、巻き上げ防止機構として、傾斜板8が設けられており、更に、巻き上げ防止機構として、塵芥集積容器7の底部には、塵芥14に含まれる鉄錆や溶接スラグを磁力で集積する磁石9が設けられている。
【0034】
また、図1に示す実施形態では、傾斜板8の素材はステンレスを用いているが、本発明で使用される傾斜板8の素材としては特に限定されず、形状や加工性などの要求特性に応じて適宜選択することができる。例えば、素材としては、ステンレス、鉄などの鋼材や、ポリオレフィン系やポリスルホン系などの樹脂材から適宜採用することができるが、塵芥集積容器7の底部に、塵芥14に含まれる鉄錆や溶接スラグを磁力で集積する磁石9を備えている場合には、傾斜板8の表面摩擦が低く、磁力が帯電しない素材であることが好ましい。
【0035】
図2(a)〜(e)は、それぞれ本発明の気体浄化用中空糸膜カートリッジに用いられる塵芥集積容器を簡略的に示している。図1に示される実施形態では、塵芥集積容器7の塵芥14の巻き上げ防止機構として、傾斜板8および磁石9が併用されているが、図2(a)〜(e)に示すように、本発明で使用される塵芥14の巻き上げ防止機構としては、傾斜板と磁石の併用(a)(d)、傾斜板のみ(b)(c)、磁石のみ(c)などの態様が挙げられ、いずれも本発明において使用可能であり、要求特性に応じて適宜選択することができる。
【0036】
(中空糸膜モジュール)
図3は、図1で用いられている中空糸膜モジュールを簡略的に示す断面図である。図3に示すように、中空糸膜モジュール3は、軸心が上下方向を向いた中空円筒形状のエレメントガード22内に上下方向に延びる多数の中空糸膜からなる束16を収納したものである。中空糸膜束16は櫛型6分割形状の膜束21から形成され(図4(a))、エレメントガード22に取り付けるために、中空糸膜束16の上端部は、開口状態で樹脂層により固定され、中空糸膜束16を固定した樹脂層は、図3に示されているようにエレメントガード22に挿入されるとともに、ハウジング4の管板6(図1)に取り付けられるようにシース26を形成している。図3に示されているように、シース26には、エレメントとエレメントガード22をハウジング4の管板6に取り付けるために、O―リングを取り付けるための溝27が形成されており、O−リング28を介して、中空糸膜束16が固定されたエレメントがエレメントガード22とともにハウジング4に取り付けられるように構成されている。
中空糸膜束16の上端部17は開口しており、中空糸膜壁面を通過した浄化気体CGは、ハウジング上部から気体導出口11を経て、流路13から排出される。
原気体DGは、エレメントガード22の下部の気体導入流路23またはエレメントガード22の周壁24に形成されたエレメントガード気体導入孔23から導入され、中空糸膜束16の個々の中空糸膜の外面から中空糸膜壁面を通って内面へと移行し、気体に含まれている塵芥は、中空糸膜外面において分離除去される。
中空糸膜束16の下端部18は、固定されていなく、揺動可能となっており、このことにより、中空糸外面20で分離された塵芥は、揺動により容易に落下し、集積容器7(図1)に集積される。
【0037】
(エレメントガード内における中空糸膜束の配置形状)
図4は、本発明において用いられる中空糸膜束のエレメントガード22内における配置の種々の態様を簡略的に示す断面図である。図1の実施形態では、図4(a)に示すように、中空糸膜16は櫛型6分割形状の膜束21としているが、本発明で使用される膜束の形状としては特に限定されず、素材の加工性などの要求特性に応じて、公知の方法から適宜選択した方法を採用することができる。例えば、膜束の形状としては、櫛型[図4(a)]、大円型(1束)[図4(b)]、小円型(複数束の環状配置)[図4(c)]、扇型[図4(d)]、星型[図4(e)]、十字型[図4(f)]などから適宜採用することができるが、気体の浄化工程での塵芥14捕集性を向上し、圧力損失を低減することができ、中空糸膜モジュール3の逆流洗浄工程での塵芥剥離性も向上し、且つ、エレメントの生産性にも影響がない膜束の断面形状(中空糸膜束の配置)であることが好ましく、上記の配列の中でも、通常、図4(a)、図4(c)の態様を選択するのが好ましい。
【0038】
(エレメントガード)
図1の実施形態では、エレメントガード22は樹脂製としているが、これに限定されない。エレメントガード22は、下端部が開放されて、エレメントガード気体導入流路23となっており、気体浄化用中空糸膜カートリッジ2の気体導入口10(図1)から供給された原気体DGが流入し、中空糸膜16に導入される。またエレメントガード周壁24には複数のエレメントガード気体導入孔25が形成され、ここからも原気体DGが内部の中空糸膜16に導入されるように構成するのが好ましい。
【0039】
(エレメント)
本発明において、中空糸膜16は、中空糸膜上端部17がエレメントガード22のシース26に固定された固定端を有し、中空糸膜下端部18がエレメントガード22に固定されない自由端を形成している。具体的には、中空糸膜16の中空糸膜上端部17において、400本以上の中空糸膜16を一括束にして、中空糸膜16と中空糸膜16の間隙をエポキシ樹脂やウレタン樹脂のような接着性樹脂が充填されて封止状態になるように樹脂層を形成して、中空糸膜束16と樹脂層からなるエレメントを形成し、このエレメントの樹脂層にさらに樹脂加工を施してシース26を形成し、このシース26がエレメントガード22の内周面に嵌合している。中空糸膜上端部17はエレメントを樹脂加工したシース26を貫通して上方に開口している。
【0040】
(中空糸膜下端部)
図5は、図1の実施形態の気体浄化用中空糸膜カートリッジの1本の中空糸膜を簡略的に示す斜視図である。図5に示すように、中空糸膜下端部18は、各中空糸膜16の中空糸膜中空部19の開口端が、エポキシ樹脂やウレタン樹脂のような接着性樹脂からなるシール部材29により閉塞されており、各中空糸膜16の中空糸膜下端部18と中空糸膜下端部18同士および中空糸膜下端部18とエレメントガード22とは互いに固定されていない。
したがって、原気体DGは、中空糸膜16の側面に供給され、気体に含まれる塵芥14は中空糸膜16の外表面18で捕捉分離され、中空糸膜16の上部17から、浄化気体CGとして排出される。
【0041】
(中空糸膜)
図1の実施形態では、中空糸膜16はポリビニルアルコール(PVA)をコーティングしたポリフッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)製であるが、本発明で使用される中空糸膜16の素材としては特に限定されず、形状、孔径などの要求特性に応じて適宜選択することができる。例えば有機高分子系素材としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリパーフルオロエチレン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられ、他成分を共重合したもの、他の素材をブレンドしたもの、親水化処理などの処理を施したものでもよい。また、中空糸膜16の製造方法は特に限定されることはなく、素材の特性および所望する分離膜の形状や性能に応じて、公知の方法から適宜選択した方法を採用することができる。
【0042】
図1の実施形態では、中空糸膜16は、外径30が1250μm、孔径31が2μmであるが、中空糸膜の外径30や中空糸膜の孔径31のいずれもこれに限定されない。中空糸膜の孔径31は、好ましくは1〜4μmであり、より好ましくは2〜3μmである。中空糸膜の孔径31が1μm未満であると、圧力損失が大きくなり、濾過面積が増大するので好ましくなく、中空糸膜の孔径31を2μm以上、具体的には2μmとしているので、濾過面積を抑え、気体浄化用中空糸膜カートリッジ2のユニットを小型化することができる。また、中空糸膜の孔径31が4μmより大きくなると、中空糸膜の孔径31よりも微細な塵芥14が浄化できないため、ガス計量器内部のギアに付着して、目詰りを引き起こしやすくなるので好ましくない。
【0043】
(外圧濾過方式)
本発明において採用されている濾過方式は、除去される塵芥が中空糸膜外側表面で捕捉されて、塵芥を取り除かれた気体のみが膜を通過して浄化されるので、外圧濾過方式となる。すなわち、ハウジング4の気体導入口10(図1)から、エレメントガード22の下端のエレメントガード気体導入流路23(図3)およびエレメントガード気体導入孔25を通って、エレメントガード22内に導入された原気体DGは、中空糸膜外表面20(図5)を通過して、中空糸膜の内部の中空部19に進入する。その際、中空糸膜の孔径31よりも大きな塵芥14は、中空糸膜外表面20を通過できず、中空糸膜外表面20に付着する。中空糸膜中空部19に進入した浄化気体CGは、中空糸膜上端部17へ向かって流れ、エレメントガード22の上端部に取り付けられたシース26部にある中空糸膜開口部を経由して、ハウジング4の気体導出口11(図1)から導出される。中空糸膜16の下端部18は閉塞されているのが好ましい。中空糸膜16の外表面20に付着した塵芥14は、塵芥14自体の自重および中空糸膜16の自由端18の揺動による自然落下によって落下して、ハウジング4の塵芥集積容器7に設けられた傾斜板8を滑り下りて、磁石9を配備する塵芥集積容器7に集積される。
【0044】
(モジュールの再生)
自然落下せずに、中空糸膜16に付着したままの塵芥14を取り除くには、図1の第1の開閉弁V1と第2の開閉弁V2を閉止し、気体浄化用中空糸膜カートリッジ2のハウジングキャップ5を取り外し、ハウジング4から管板6に嵌合した中空糸膜モジュール3を取り出して、中空糸膜モジュール3を軽く叩くなどして物理的な振動を与えることにより、塵芥14を中空糸膜16から取り除くことができる。その後、管板6に嵌合した中空糸膜モジュール3をハウジング4に取り付け、気体浄化用中空糸膜カートリッジ2のハウジングキャップ5を取り付け、第1の開閉弁V1と第2の開閉弁V2を開くことで再使用できる。このように、中空糸膜16を繰り返し使用することで、中空糸膜モジュール3の寿命を延ばすことができる。
【0045】
上記構成において、気体に含まれる塵芥14を浄化するフィルターモジュールとして、中空糸膜16を用いているので、耐圧性が向上するため、中空糸膜モジュール3の一次側と二次側の差圧を大きくして流量を増大させることで、濾過面積が小さくて済み、その結果、気体浄化用中空糸膜カートリッジ2のユニットを小型化することができる。さらに、中空糸膜16の中空糸膜下端部18を自由端になっているので、原気体DGの流れによって自由端が揺動することで、浄化された塵芥14が下に落ちやすく、中空糸膜モジュール3の目詰りを防ぐことができ、その結果、中空糸膜モジュール3の寿命を長くすることができるので好ましい。
【0046】
(システム)
図6は本発明の気体浄化用中空糸膜カートリッジを備えるシステムの一例を簡略的に示す系統図である。図6に示すシステムは、例えば都市ガスのように、気体の供給を止めることができないケースに用いられるもので、上述の気体浄化用中空糸膜カートリッジ2をA系とB系の2系列にして並列に配置し、気体導入流路12を2系列に分岐させ、A系列分岐導入流路32とB系列分岐導入流路33をそれぞれA系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2AとB系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2Bに接続し、A系列分岐導入流路32とB系列分岐導入流路33にそれぞれA系列第1の開閉弁V1AとB系列第1の開閉弁V1Bを設けている。また、A系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2AとB系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2BからのA系列分岐導出流路34とB系列分岐導出流路35に、それぞれA系列第2の開閉弁V2AとB系列第2の開閉弁V2Bを設けている。A系列分岐導出流路34とB系列分岐導出流路35は集合して気体導出流路13となる。
【0047】
図6のシステムによれば、A系列第1の開閉弁V1AとB系列第1の開閉弁V1BおよびA系列第2の開閉弁V2AとB系列第2の開閉弁V2Bを切り換えることで、A系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2AとB系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2Bで使用側と未使用側を選択できるので、例えば、未使用側のB系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2Bから中空糸膜モジュール3を取り出して、上述のように物理的な振動を与えることで、中空糸膜モジュール3に付着した塵芥14を取り除くことができる。これにより、中空糸膜モジュール3の寿命を延ばすことができる上、気体の供給を止めることなく、中空糸膜モジュール3の清掃または交換を行うことができる。
【0048】
上記の例では、気体浄化用中空糸膜カートリッジ2をA系とB系の2系列並列に配置することを説明したが、中空糸膜モジュール3を清掃または交換することだけを目的とする場合は、1系列のフィルターについては、本発明に係る気体浄化用中空糸膜カートリッジ2に限定されない。フィルターとして、中空糸膜モジュール、プリーツ型膜フィルター、平膜フィルター、樹脂微粒子の焼結体、金網、不織布、スポンジなど種々のフィルターを使用することができる。
【0049】
図7は、本発明の気体浄化用中空糸膜カートリッジ2を用いる他のシステムを簡略的に示す系統図である。図7のシステムでは、気体浄化用中空糸膜カートリッジ2に導入される洗浄前気体DG’で中空糸膜モジュール3を逆流洗浄している。原気体の供給を止めることができないケースでは洗浄前気体DG’として、原気体DGを用いて行われるが、原気体の供給を一時的に止めることが出来る場合には、洗浄に適した気体を用いて行うことができる。
図7のシステムでは、気体導入流路12における第1の開閉弁V1の上流側と、気体導出流路13における第2の開閉弁V2の上流側との間が、逆流洗浄用気体導入流路41により接続され、逆流洗浄用気体導入流路41における気体導入流路12および気体導出流路13の接続部付近に、それぞれ逆流洗浄切替の第1の開閉弁37および逆流洗浄切替の第2の開閉弁38が設けられている。また、気体導入流路12における第1の開閉弁V1の下流側と、気体導出流路13における第2の開閉弁V2の下流側との間が、逆流洗浄用気体導出流路42により接続され、逆流洗浄用気体導出流路42における気体導入流路12および気体導出流路13の接続部付近に、それぞれ逆流洗浄切替の第3の開閉弁39および逆流洗浄切替の第4の開閉弁40が設けられている。さらに、逆流洗浄用気体導出流路42における逆流洗浄切替の第3の開閉弁39と逆流洗浄切替の第4の開閉弁40との間に、逆流洗浄用フィルター36が設けられている。
【0050】
次に、図7に示すシステムの動作について説明する。通常の気体浄化時には、第1の開閉弁V1および第2の開閉弁V2を開き、逆流洗浄切替の第1〜4の開閉弁37〜40を閉じた状態で、原気体DGを浄化気体CGへ浄化する。逆流洗浄を行う際には、第1の開閉弁V1および第2の開閉弁V2を閉じ、逆流洗浄切替の第1〜4の開閉弁37〜40を開くことで、原気体DGは通常の気体浄化時とは逆方向に、中空糸膜モジュール3を流れる。
【0051】
図5に示されているように、気体浄化時に原気体DGから浄化された塵芥14は、中空糸膜16の中空糸膜外表面20に付着する。図8は逆流洗浄時の中空糸膜を簡略的に示す斜視図である。図8に示すように、逆流洗浄時には気体浄化時とは逆向き、すなわち中空糸膜16の中空部19から中空糸膜外表面20に向かって洗浄前気体DG’が流れるので、この洗浄前気体DG’の流れによって、中空糸膜外表面20に付着していた塵芥14が取り除かれ、洗浄前気体DG’の流れに乗って、中空糸膜モジュール3の下部から排出される。排出された塵芥14は、逆流洗浄用フィルター36により捕捉され、洗浄後気体CG’として気体導出流路13に導出される。逆流洗浄が完了したら、逆流洗浄切替の第1〜4の開閉弁37〜40を閉じ、第1の開閉弁V1および第2の開閉弁V2を開くことで、通常の気体浄化時の状態に戻して、原気体DGの中空糸膜モジュール3による浄化を継続することができる。逆流洗浄用フィルター36としては、中空糸膜モジュール、プリーツ型膜フィルター、平膜フィルター、樹脂微粒子の焼結体、金網、不織布、スポンジなど種々のフィルターを使用することができる。
【0052】
このシステムによれば、中空糸膜モジュール3の清掃を行うことができ、中空糸膜モジュール3を繰り返し使用することで、中空糸膜モジュール3の寿命を延ばすことができる。更に、逆流洗浄により清掃を行うので、気体浄化用中空糸膜カートリッジ2は1系列でもよく、しかも、清掃時に気体浄化用中空糸膜カートリッジ2のハウジング4からハウジングキャップ5および管板6を取り外して中空糸膜モジュール3を取り出す必要もないので、容易に中空糸膜モジュール3の清掃を行うことができる。
【0053】
また、逆流洗浄時には気体浄化時とは逆向き、すなわち中空糸膜16の中空部19から中空糸膜外表面20に向かって洗浄前気体DG’を流すことで、中空糸膜外表面20に付着した塵芥14を取り除き、洗浄前気体DG’の流れに乗って中空糸膜モジュール3の下部から排出することを上述で説明したが、逆流洗浄に用いる気体DG’として、原気体DG、原気体DGと同じ気体または同種の圧縮気体、更に、気体の供給が一時的に止められる場合には、空気、酸素、窒素など種々の圧縮気体を使用することができる。
【0054】
図9は、本発明の気体浄化用中空糸膜カートリッジを用いるシステムの他の一例を簡略的に示す系統図である。このシステムも図6、図7のシステムと同様に、気体の供給を止めることができないケースに用いられるものである。このシステムは、図6のシステムのように、A系列の気体浄化用中空糸膜カートリッジ2AとB系列の気体浄化用中空糸膜カートリッジ2Bを選択的に使用し、さらに、図7のシステムと同様に、A系列の気体浄化用中空糸膜カートリッジ2AとB系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2Bに導入される原気体DGで、中空糸膜モジュール3を逆流洗浄している。つまり、図7の気体導入流路12におけるA系列分岐導入流路32およびB系列分岐導入流路33よりも上流側に、逆流洗浄切替の第1の開閉弁37を設け、気体導入流路12における逆流洗浄切替の第1の開閉弁37の上流側と、A系列分岐導出流路34およびB系列分岐導出流路35におけるA系列第2の開閉弁V2AとB系列第2の開閉弁V2Bの上流側との間が、それぞれA系列逆流洗浄用気体導入流路43とB系列逆流洗浄用気体導入流路44によって接続されており、A系列逆流洗浄用気体導入流路43とB系列逆流洗浄用気体導入流路44にそれぞれ逆流洗浄切替の第2の開閉弁38と逆流洗浄切替の第3の開閉弁39が設けられている。本システムでは、A系列逆流洗浄用気体導入流路43とB系列逆流洗浄用気体導入流路44は、気体導入流路12に接続された共通部と、この共通部から分岐してA系列分岐導出流路34とB系列分岐導出流路35に接続される2つの分岐部とを有している。
【0055】
次に、気体浄化用中空糸膜カートリッジ2のシステムの動作について説明する。A系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2Aを用いて気体を浄化する時は、A系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2AのA系列第1の開閉弁V1AとA系列第2の開閉弁V2Aおよび逆流洗浄切替の第1の開閉弁37を開き、B系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2BのB系列第1の開閉弁V1BとB系列第2の開閉弁V2Bおよび逆流洗浄切替の第2の開閉弁38と逆流洗浄切替の第3の開閉弁39を閉じる。この状態で、原気体DGはA系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2Aにより浄化される。B系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2Bを用いて気体を浄化する時は、B系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2BのB系列第1の開閉弁V1BとB系列第2の開閉弁V2Bおよび逆流洗浄切替の第1の開閉弁37を開き、A系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2AのA系列第1の開閉弁V1AとA系列第2の開閉弁V2Aおよび逆流洗浄切替の第2の開閉弁38と逆流洗浄切替の第3の開閉弁39を閉じる。この状態で、原気体DGはB系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2Bにより浄化される。
【0056】
A系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2Aの逆流洗浄を行う際には、図9に示すように、逆流洗浄切替の第1の開閉弁37と、A系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2AのA系列第2の開閉弁V2Aを閉じ、逆流洗浄切替の第2の切換弁38と、B系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2BのB系列第1の開閉弁V1BとB系列第2の開閉弁V2Bと、A系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2AのA系列第1の開閉弁V1Aとを開いた状態にする。この状態で、原気体DGはA系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2Aの中空糸膜モジュール3内を気体浄化時とは逆方向に流れる。逆流洗浄時には、図8で説明したように、逆向きの気体の流れによって、中空糸膜16の中空糸膜外表面20に付着した塵芥14は膜外表面から剥離する。剥離した塵芥14は、気体の流れに乗って、図9のB系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2Bにより除去され、塵芥が除去された気体は浄化気体CGとして、B系列分岐導出流路35を経て気体導出流路13に導出される。逆流洗浄が完了した後、各弁を通常の気体浄化時の状態に戻して、気体の浄化を継続する。
【0057】
また、B系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2Bの逆流洗浄を行う際には、図9に示すように、逆流洗浄切替の第1の開閉弁37と逆流洗浄切替の第2の開閉弁38と、B系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2BのB系列第2の開閉弁V2Bを閉じ、逆流洗浄切替の第3の切換弁39と、A系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2AのA系列第1の開閉弁V1AとA系列第2の開閉弁V2Aと、B系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2BのB系列第1の開閉弁V1Bとを開いた状態にする。この状態で、原気体DGはB系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2Bの中空糸膜モジュール3内を気体浄化時とは逆方向に流れる。逆流洗浄時には、上述のように、逆向きの気体の流れによって、中空糸膜モジュール3に付着した塵芥14が剥離し、剥離した塵芥14は、気体の流れに乗って、A系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2Aにより取り除かれ、カートリッジ2Aの中空糸膜を通過した気体は浄化気体CGとして、A系列分岐導出流路34を経て気体導出流路13に導出される。逆流洗浄が完了した後、各弁を通常の気体浄化時の状態に戻して、気体の浄化を継続する。
【0058】
このシステムによれば、図6、図7のシステムと同様に、気体の供給を止めることなく、中空糸膜モジュール3の清掃を行うことができ、中空糸膜モジュール3を繰り返し使用することで、中空糸膜モジュール3の寿命を延ばすことができる。また、図7のシステムと同様に、清掃時にA系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2AおよびB系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2Bのハウジング4から、ハウジングキャップ5および管板6を取り外して中空糸膜モジュール3を取り出す必要もないので、容易に中空糸膜モジュール3の清掃を行うことができる。更に、気体浄化用中空糸膜カートリッジ2を2系列設けることにより、A系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2AまたはB系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ2Bの一方が故障した場合であっても、もう一方の気体浄化用中空糸膜カートリッジ2を用いて気体浄化機能を維持することができるので、システムの信頼性が向上する上に、一方の中空糸膜モジュール3から取り除いた塵芥14を、もう一方の中空糸膜モジュール3で浄化するように逆流洗浄を行うので、図7のシステムのような逆流洗浄用フィルター36を省略できる。
【0059】
(処理気体)
本発明の気体浄化用中空糸膜カートリッジにより処理される気体は、都市ガスだけに限定されることなく、塵芥を含む種々の気体に適用可能であり、例えば、LPガスなどの燃料用ガスや、空気、酸素、窒素などの工業用ガスなどの気体が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の気体浄化用中空糸膜カートリッジは、ガス配管中に集積する塵埃除去だけでなく、種々の気体中の塵埃を除去して気体の浄化を行うことができるので、ガス供給事業の分野だけでなく、産業排ガス浄化の分野においても有効であるので、広く産業上の利用性を有する。
【0061】
以上の通り、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。従って、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
DG:浄化前気体(原気体)
CG:浄化後気体(浄化気体)
DG’:洗浄前気体
CG’:洗浄後気体
1:気体浄化用中空糸膜カートリッジのシステム
2:気体浄化用中空糸膜カートリッジ
2A:A系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ
2B:B系列気体浄化用中空糸膜カートリッジ
3:中空糸膜モジュール
4:ハウジング
5:ハウジングキャップ
6:管板
7:塵芥集積容器
8:傾斜板
9:磁石
10:気体導入口
11:気体導出口
12:気体導入流路
13:気体導出流路
14:気体に含まれる塵芥
15:取っ手
16:中空糸膜
17:中空糸膜上端部
18:中空糸膜下端部
19:中空糸膜中空部
20:中空糸膜外表面
21:櫛型6分割形状の膜束
22:エレメントガード
23:エレメントガード気体導入流路
24:エレメントガード周壁
25:エレメントガード気体導入孔
26:シース
27:シール部材(Oリング)を固定する溝
28:シール部材(Oリング)
29:シール部材
30:中空糸膜の外径
31:中空糸膜の孔径
32:A系列分岐導入流路
33:B系列分岐導入流路
34:A系列分岐導出流路
35:B系列分岐導出流路
36:逆流洗浄用フィルター
37:逆流洗浄切替の第1の開閉弁
38:逆流洗浄切替の第2の開閉弁
39:逆流洗浄切替の第3の開閉弁
40:逆流洗浄切替の第4の開閉弁
41:逆流洗浄用気体導入流路
42:逆流洗浄用気体導出流路
43:A系列逆流洗浄用気体導入流路
44:B系列逆流洗浄用気体導入流路
V1:第1の開閉弁
V1A:A系列第1の開閉弁
V1B:B系列第1の開閉弁
V2:第2の開閉弁
V2A:A系列第2の開閉弁
V2B:B系列第2の開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体に含まれる塵芥を除去する気体浄化用中空糸膜カートリッジであって、
(a)中空糸膜束エレメントと前記中空糸膜束の外周部を保護するエレメントガードとを有する中空糸膜モジュールと、
(b)前記中空糸膜モジュールを内部に収納し、浄化すべき気体の導入口および浄化された気体の導出口を備えるハウジングと、
(c)前記ハウジングの内側底部に配置された、気体から分離された塵芥を集積するための塵芥集積容器と、を備える気体浄化用中空糸膜カートリッジ。
【請求項2】
請求項1において、さらに、前記塵芥集積容器に集積した塵芥の巻き上げを防止するための巻き上げ防止機構を設けることを特徴とする気体浄化用中空糸膜カートリッジ。
【請求項3】
請求項1または2において、前記中空糸膜束エレメントは、中空糸膜束と中空糸膜束の少なくとも一方の端部を固定する樹脂層とを備えており、前記中空糸膜モジュールのエレメントガード内の中空糸膜を固定するエレメメント樹脂層の横断面において、中空糸膜束が占める断面を除く空隙断面積比率が40%〜80%であることを特徴とする気体浄化用中空糸膜カートリッジ。
【請求項4】
請求項3において、前記中空糸膜束の一端が開口状態で前記樹脂層に固定され、前記中空糸膜束の他端は前記樹脂層に固定されていない自由端であり、かつ、個々の中空糸膜の自由端は閉鎖されていることを特徴とする気体浄化用中空糸膜カートリッジ。
【請求項5】
請求項4において、前記中空糸膜束エレメントは、複数の中空糸膜束を備え、個々の中空糸膜束の上端が間隔を置いて一列に配置されて樹脂層に固定されて下方に垂下した櫛状分割形状を有することを特徴とする気体浄化用中空糸膜カートリッジ。
【請求項6】
請求項5において、前記櫛状分割形状は、櫛状6分割形状であることを特徴とする気体浄化用中空糸膜カートリッジ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項において、前記中空糸膜の孔径が1〜4μmであることを特徴とする気体浄化用中空糸膜カートリッジ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項において、さらに、気体を導入して前記中空糸膜モジュールを逆流洗浄する逆流洗浄手段を備えることを特徴とする気体浄化用中空糸膜カートリッジ。
【請求項9】
気体に含まれる塵芥を除去するための中空糸膜モジュールであって、
前記モジュールは、中空糸膜束エレメントと前記中空糸膜束の外周部を保護するエレメントガードとを有し、
前記中空糸膜束エレメントは、中空糸膜束と中空糸膜束の一端の端部を固定する樹脂層とを備えており、
前記中空糸膜束の一端が開口状態で前記樹脂層に固定され、前記中空糸膜束の他端は前記樹脂層に固定されていない自由端であり、かつ、個々の中空糸膜の自由端は閉鎖されていることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【請求項10】
請求項9において、前記エレメントガードは円筒形状を有し、前記エレメントガードの一端には前記エレメントが固定されて、円筒内部に前記中空糸膜束が収納されており、前記エレメントの他端は開放され、前記円筒の側面には、気体導入孔が設けられていることを特徴とする中空糸膜モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−110861(P2012−110861A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263580(P2010−263580)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】