説明

気分障害および自殺を誘発する、薬剤の潜在的なリスクの評価:専用プラットフォームの使用

本発明は、試験化合物の潜在的な毒性を決定するためのイン・ビトロの方法に関する。本発明は、また、セロトニン2C受容体(5−HTR2C)のADAR依存性A−to−I mRNA編集のmRNA編集メカニズムの変化に関連する病状の処置に有用な治療化合物を選択するためのイン・ビトロの方法を含んでなる。最後に、本発明は、これらの方法の実施のためのキットおよびツールに関する。本発明は、薬剤開発および/または医薬組成物における毒性の分析または化合物のスクリーニングのための医薬産業において特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、試験化合物の潜在的な毒性を決定するためのイン・ビトロの方法に関する。本発明は、また、セロトニン2C受容体(5HTR2C)のADAR依存性A−to−I mRNA編集のmRNA編集メカニズムの変化に関連する病状の処置に有用な治療化合物を選択するためのイン・ビトロの方法に関する。最後に、本発明は、これらの方法を実施するためのキットおよびツールに関する。本発明は、薬剤開発および/または医薬組成物における毒性の分析または化合物のスクリーニングのための医薬産業において特に有用である。
【0002】
毒性は、前臨床および臨床開発中の候補治療分子を断念する主要な理由である。確かに、現在は、ヒトにおける化合物の毒性を素早く決定する試験を提供することが必要である。一般的に、そのような試験は長くかかるものであり、高価であり、部分的にしか満足いかないものである。例えば、動物毒性は、ヒト毒性を少しも反映しない。さらに、臨床試験に参加する患者数が少ないことにより、小さい特異的な集団に付随する毒性を体系的に同定することができない。そのような試験の開発、完成および使用により、より上流で毒性化合物を同定し、開発工程から除くことが可能となる。この方法により、新薬をより早く、製薬会社のコストを、そして次々に、医療機関や消費者のコストを低減させて、市場に出すことができる。加えて、そのような試験は、また、現在のところ市販後にのみ明るみに出るいくつかの毒性を検出することを可能にする。
【0003】
遺伝子関連解析、ノックアウトマウスおよび死後分析により、精神神経性障害におけるセロトニン2C受容体(HTR2C)の関与が示唆されている。第一に、HTR2Cの対立遺伝子の機能多型(Cys23Ser)が、うつ病や双極性障害に関連している(Lerer et al., 2001, MoI. Psychiatry, 6: 579-585)。第二に、5−HT2Cセロトニン受容体欠損マウスが、自発的痙攣、認知障害および摂食行動の異常制御を示す(Tecott et al., 1995, Nature, 374:542-546)。これらの動物は、また、繰り返しストレスに対して過敏反応性である(Chou-green et al., 2003, Physiol. Behav., 79:217-226)。第三に、双極性障害または統合失調症に冒された患者の死後の脳において、5−HT2Cセロトニン受容体のRNA発現が下方制御されている(Iwamoto et al., 2004, MoI. Psychiatry, 9: 406-416; Castensson et al., 2003, Biol. Psychiatry, 54: 1212-1221)。HTR2CのRNA編集は、また、精神疾患の病態生理学および抗うつ剤の作用に関与していると考えられている(Seeburg, 2002, Neuron, 35: 17-20)。5−HT2Cセロトニン受容体の二番目の細胞内ループをコードする領域内において、(A、B、C、DおよびEまたはC’と命名された)5つのアデノシン残基が編集され、受容体配列の異なる3つの位置でアミノ酸の置換が生じうる。これらのアミノ酸残基の置換の組み合わせにより、様々なG共役効率を有する24の異なるHTR2Cタンパク質アイソフォームが生み出される(Price et al., 2001, J. Biol. Chem., 276: 44663-44668)。マウスでは、C57BL/6および129svの近交系の系統と比較した場合に、BALB/c系統は、ストレス応答における違いの基礎となる、前脳基底核新皮質の異なる5−HT2C プレmRNA編集パターンを見せる。さらに、BALB/cマウスは、自殺したうつ病の罹病者の脳で検出される変化に似た、5−HT2C プレmRNA編集のストレス誘発性の変化を見せる(Englander et al., 2005, J. Neurosci., 25: 648-651)。実際、死後の脳におけるHTR2CのRNA編集の変化が、統合失調症およびうつ病の患者ならびに自殺者において報告されている(Niswender et al., 2001, Neuropsychopharmacology, 24: 478-491; Sodhi et al., 2001, MoI. Psychiatry, 6:373-379; Gurevich et al., 2002, Neuron, 34: 349- 356; Dracheva S. et al. 2008, Molecular Psychiatry 13, 1011-10)。加えて、インターフェロンaがC型肝炎の処置に用いられ、しばしば、うつ病の兆候がこの分子の副作用として表われるが、Yangらは、この分子が5HT2C受容体の編集を強力に変化させることを明らかにした(Tohda et al., 2006, J. Pharmacol Sci, 100, 427-432の参照文献を参照)。
【0004】
5−HT2Cセロトニン受容体が、主に脳、特に脈絡叢、前頭前野皮質、辺縁系領域、大脳基底核および視床下部において発現していることが最近の研究で示されている(Tohda et al., 1996, Neurosci. Res., 24: 189-193; Julius et al., 1988, 241 : 558-564; Pasqualetti et al., 1999, Neuroscience, 92: 601-611)。この脳特異的な発現パターンが、HTR2CRNA編集と精神医学的状況との間に存在する潜在的なつながりの研究を検死の研究に制限する。
【0005】
最近、全組織RNAに由来する5−HT2CRの完全な編集プロフィールを、1回のアッセイで定量できる新しい方法が開発された(Poyau et al, 2007, Electrophoresis, 28, 2843-52)。それは、組織サンプル中に含まれる特異的なmRNA分画における編集および非編集アイソフォームの各々のパーセンテージを決定する。それは、マウス、ラットおよびヒトの特異的な脳領域における編集の変動の評価によく適合する。この種の技術により、初代培養神経細胞における編集プロフィールの分析に成功してきた(Chanrion B., et al., Molecular Pharmacol, 2008, 73, 748-57)。
【0006】
ADAR1イソ酵素が部位A、B並びに同様にCおよびEを編集し、ADAR2が部位DおよびCおよびEを編集するから、この評価における本発明者の主要な関心は、編集イソ酵素ADAR1a、1b、ADAR2の活性の指数をその特性から抽出することを可能にすることである。従って、部位Aおよび/またはBが編集されているアイソフォームは、D部位が編集されていない場合(編集されたアイソフォーム:A、AB、ABC、ABCE、ABE、AC、ACE、AE、B、BC、BCE、BE)には単独で働き、あるいは、アイソフォームが編集されたD部位を提示する場合(編集されたアイソフォーム:ABCD、ABCDE、ABD、ABDE、ACD、ACDE、AD、ADE、BCD、BCDE、BD、BDE、C、CE、E)にはADAR2と共に働くADAR1イソ酵素により変換されることが実際に認められる。
【0007】
部位Aおよび/またはBが編集されておらず、D部位が編集されたアイソフォームは、ADAR2単独の働きの結果であると考えられる。
【0008】
この5HT2CRの完全な編集プロフィールの分析と共に、本発明者らは相補的なアプローチとしてのADARイソ酵素の発現の評価が、特に、編集装置の調節不全の一般的編集状況の評価に良く適していることを明らかにした。それはADARイソ酵素の発現の量的および質的分析を含む(mRNA、すなわち、定量的RT−PCRにより、および/または、対応するコードされたタンパク質、すなわち、ウェスタンブロットにより)。
【0009】
てんかん薬に対する、抗うつ剤および抗精神病薬に対する自殺リスクに関する米国食品医薬品局(FD)の特別な警告の考慮。例えば、最近、抗肥満薬アコンプリア(商標)(リモナバン)が、一部の患者で自殺行動および他の心理学的副作用の引き金を引くことが明らかとなり、これらの公知の神経精神医学的副作用は、FDAおよび欧州医薬品庁がこの新薬の肯定的なリスク−ベネフィットの比率を理解することを困難にしており、最終的にその副作用のために市場から新薬を引き下げることが忠告された。
【0010】
上述のように、特に市販前に、ヒトにおける薬剤の毒性や潜在的な副作用の特性を迅速に決定できる試験を提供する必要がある。
【0011】
これが、例えば、前臨床の段階で、新しい治療分子の編集調節に対する潜在的な影響を評価しようとする専用プラットフォームを開発することを本発明者らが決意した理由であるが、それは、うつ病、精神病に苦しむ患者、または自殺した患者において編集が変化していることが既に見いだされていたからである。
【発明の概要】
【0012】
本発明者らは、
−編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2並びに5−HT2C受容体を発現する特定の哺乳類細胞株、特にヒト細胞株を用いて、および
−対照細胞および試験化合物で処理した細胞の間で、
a)これらの編集酵素の活性(細胞RNA抽出物中で測定された5−HT2CRmRNAの同定された各アイソフォームの平均比率を与える編集プロフィールの分析により得られる);および/または
b)これら編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的な発現(すなわち、Q−PCRによる、またはウェスタンブロットによる)
を比較することにより、
これらの化合物が5−HT情報伝達の慢性的な変化により精神状態が変わる起こり得るリスクを予想できることを明らかにした。
【0013】
ここで、本発明は、試験化合物の効率の潜在的な毒性を決定するための迅速かつ効果的な方法、ならびにそのような方法を実施するためのツールおよびキットを開示する。
【0014】
従って、本発明は、患者への試験化合物の投与後に起こりうる試験化合物の潜在的な毒性若しくは副作用の決定または予測のためのイン・ビトロの方法であって、
a)哺乳類細胞を含む生体サンプルを得る工程(ここで、前記哺乳類細胞は、編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2ならびにセロトニン2C受容体(5HTR2C)を発現する);
b)前記哺乳類細胞と試験化合物とを接触させる工程;
c)同一の細胞抽出物において、
−細胞RNA抽出物中で測定される5−HT2CR mRNAの同定された各アイソフォームの平均比率を与える編集プロフィール、および/または
−前記編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的発現
を決定する工程;
d)試験化合物で処理した前記細胞と、非処理の対照細胞または対照化合物に接触させた細胞との間で、工程c)において得られた結果を比較する工程
を含んでなる方法に関する。
【発明の具体的説明】
【0015】
本発明の文脈において、用語「毒性」とは、細胞または組織の代謝に対する化合物の有害な作用および/または副作用を指し、より一般的には、患者に対して化合物の有害な効果を引き起こす代謝の変化、特に、本発明の文脈では、気分障害および自殺を誘発する薬剤の潜在的なリスクを指す。
【0016】
用語「試験化合物」とは、一般的に、試験対象にさらす化合物を指す。典型的な試験化合物は、小有機分子であり、典型的には薬剤および/または期待される薬学上のリード化合物であるが、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、異種遺伝子(発現系における)、プラスミド、ポリヌクレオチド類似体、ペプチド類似体、脂質、炭化水素、ウイルス、ファージ、寄生生物などを包含する。
【0017】
用語「対照化合物」とは、試験化合物とは如何なる生理活性を共有することも知られていない化合物を指し、本発明の実施において、グループシグネチャとドラッグシグネチャ(Group Signatures and Drug Signatures)を得る際に、「活性」(試験)化合物と「不活性」(対照)化合物とを対比させるために用いられる。典型的な対照化合物としては、以下に限定されないが、試験化合物の適応症とは全く異なった障害の処置に用いる薬剤、賦形剤、試験作用剤の不活化版、既知の不活性化合物などが挙げられる。
【0018】
第二の側面では、本発明は、また、5−HTR2CのADAR依存性A−to−I mRNA編集のmRNA編集メカニズムの変化に関連する病状の処置に有用な治療薬を選択するイン・ビトロの方法であって、
a)哺乳類細胞を含む生体サンプルを得る工程(ここで、前記哺乳類細胞は、編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2並びに5−HT2C受容体を発現している);
b)前記哺乳類細胞と試験化合物とを接触させる工程;
c)同一の細胞抽出物において:
−細胞RNA抽出物において測定される5−HT2CR mRNAの同定された各アイソフォームの平均比率を与える編集プロフィール、および/または、
−前記編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的な発現
を決定する工程;
d)試験化合物で処理した前記細胞と未処理の対照細胞または対照化合物と接触させた細胞との間で、工程c)で得られた結果を比較する工程;
e)試験化合物が、得たいと望まれるHT2CR編集プロフィールおよび/または編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2活性に変化を示すか、示さないかで、試験化合物を選択する工程
を含んでなる方法に関する。
【0019】
好ましい態様では、本発明は、試験化合物の潜在的な毒性若しくは副作用を決定するための若しくは予測するための、または治療化合物を選択するためのイン・ビトロの方法であって、工程c)が同一細胞抽出物中で、
−細胞RNA抽出物中で測定される5−HT2CR mRNAの同定された各アイソフォームの平均比率を与える編集プロフィール、および、場合によって、
−前記編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的発現
を決定することを含んでなる、方法に関する。
【0020】
さらにより好ましい態様では、本発明は、試験化合物の潜在的な毒性若しくは副作用を決定するための若しくは予測するための、または治療化合物を選択するためのイン・ビトロの方法であって、工程c)が同一細胞抽出物中で、
−細胞RNA抽出物中で測定される5−HT2CR mRNAの同定された各アイソフォームの平均比率を与える編集プロフィール、および、
−前記編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的発現
を決定することを含んでなる、方法に関する。
【0021】
好ましい態様では、本発明の方法の工程a)において、前記哺乳細胞が、5HT2CR mRNAのかなりの数の編集アイソフォームを発現する能力を有し、これらの細胞において、これらのADAR1a、ADAR1bおよびADAR2酵素が受容体の様々な編集アイソフォームの産生を活発に制御することを示す。
【0022】
より好ましくは、これらの哺乳類細胞は、少なくとも編集を受けた部位A、B並びに同様にCおよびEを提示することができ、A、AB、ABC、ABCE、ABE、AC、ACE、AE、B、BC、BCE、BEの編集アイソフォームからなる群から選択される、少なくとも1、好ましくは、2、3、4、5、6、7、6、9、10、11および12の編集ADAR1アイソフォームを、編集アイソフォームABCD、ABCDE、ABD、ABDE、ACD、ACDE、AD、ADE、BCD、BCDE、BD、BDE、C、CE、Eの群から選択される編集されたD部位をも提示する、少なくとも1,好ましくは、2、3、4、5、6、7、6、9、10、11、12、13、14および15のアイソフォームと共に提示することができる哺乳類細胞がより好ましい。
【0023】
工程a)における本発明の方法の好ましい態様では、前記哺乳類細胞は細胞株、特にヒト、マウスまたはラット由来の細胞株である。
【0024】
工程a)における本発明の方法のより好ましい態様では、前記哺乳類細胞は5HT2CR、ADAR1およびADAR2酵素、好ましくは、ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2酵素の一定かつ構成的な発現を示す哺乳類細胞株、特にヒト、マウスまたはラット由来の哺乳類細胞株である。
【0025】
「5HT2CR、ADAR1およびADAR2酵素、好ましくは、ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2酵素の一定かつ構成的な発現を示す」特徴は、処理した細胞との信頼できる比較データを得るために細胞(対象細胞)を培養し、処理しないときに、5HT2CR、ADAR1およびADAR2酵素の内容の発現が一定であるという意味においてとても重要である。
【0026】
例えば、本発明者らは、驚くべきことに、HTB−14細胞(神経膠腫細胞株)が、一定かつ構成的な5HT2CRを十分に発現しないこと、および本発明の方法において哺乳類細胞株として用いることができないことを示している(実施例5 表5参照)。
【0027】
試験化合物の潜在的な毒性若しくは副作用を予想したり、若しくは本発明による治療化合物を選択したり、または、5HT2CR編集の変化に対する試験化合物の効果を比較して新しい基準化合物(インターフェロンアルファのような)を見つけ、これらの基準化合物(本発明の方法で用いられる哺乳類細胞株(神経芽細胞腫細胞株(すなわち、SH−SY5Y)などが挙げられ、潜在的な毒性または副作用が知られている)について、これらの基準化合物の既知の変化および毒性/副作用の観点から、5HT2CRの編集の変化に対する影響が研究されている基準化合物のパネル)の既知の変化および毒性/副作用の観点で潜在的な毒性若しくは副作用を予想したりするには、編集酵素ADAR単独の発現では不十分である。
【0028】
実際、ADARの定量的な発現は、5HT2Cの編集に対するそれらの組み合わされた効果を予測するには不十分である。ADARの定量アッセイは、活性のアッセイではなく、5HT2Cの編集が実際に変化する場合は、すべての5HT2Cアイソフォームの分布を決定することだけが重要であることを本発明者らは示している。これが、編集酵素の作用と関連したすべての5HT2Cアイソフォームの分布を決定することが好ましい理由である。
【0029】
工程a)における本発明の方法のさらにより好ましい態様では、前記哺乳類細胞は哺乳類細胞株、特にヒト、マウスまたはラット由来の哺乳類細胞株であって、以下の特徴を有する哺乳類細胞株である:
1)5HT2CR、ADAR1およびADAR2酵素、好ましくは、ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2酵素の一定かつ構成的な発現を有し、
2)前記哺乳類細胞が、5HT2CRの編集を変化させる能力を有する薬剤で処理されたときに、
−かなりの数の5HT2CRの編集アイソフォームを発現させる能力を有し、
−好ましくは、前記哺乳類細胞を5HT2CRの編集を変化させる能力を有する薬剤で処理したときに、少なくとも編集を受けた編集部位Aを示す少なくとも1種の5HT2CRアイソフォームを、少なくとも編集を受けた編集部位Bを示す少なくとも1種の5HT2CRアイソフォームを、少なくとも編集を受けた編集部位Cを示す少なくとも1種の5HT2CRアイソフォームを、少なくとも編集を受けた編集部位Dを示す少なくとも1種の5HT2CRアイソフォームを、および少なくとも編集を受けた編集部位Eを示す少なくとも1種の5HT2CRアイソフォームを、好ましくは、非編集の5HT2CRアイソフォームと共に発現する能力を有し、
−より好ましくは、すべての5HT2CRの編集および非編集アイソフォームを発現することができる。
【0030】
特定の態様では、5HT2CR薬の存在下で、5HT2CRの変化を示し、かつある5HT2CRを発現するその能力で、前記細胞株を試験し、選択しなければならないときに、5HT2CRの編集を変化させる能力を有する前記薬剤は、インターフェロンアルファである。
【0031】
工程a)における本発明の方法のより好ましい態様では、前記哺乳類細胞は、5HT2CR、ADAR1およびADAR2酵素、好ましくは、ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2酵素の一定かつ構成的な発現を示す哺乳類細胞株、特にヒト、マウスまたはラット由来の哺乳類細胞株である。
【0032】
工程a)における本発明の方法のさらにより好ましい態様では、前記哺乳類細胞は、哺乳類細胞株、特にヒト、マウスまたはラット由来の哺乳類細胞株であって、以下の特徴を有する哺乳類細胞株である:
a)5HT2CR、ADAR1およびADAR2酵素、好ましくは、ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2酵素の一定かつ構成的な発現を有し、
b)−前記哺乳類細胞を5HT2CRの編集を変化させる能力を有する薬剤で処理したときに、かなりの数の5HT2CR編集アイソフォーム、好ましくは、すべての5HT2CR編集アイソフォームを発現する能力を有する{ここで、5HT2CRの編集を変化させる能力を有する薬剤が、科学者の共同体および/または米国食品医薬局(FD)から、精神のまたは精神神経性の副作用などの、前記薬剤を与えられた一部の患者における副作用のリスクについての警告を呈する既知の薬剤であって、この変化がこの警告と関連しうる}。
【0033】
工程a)における本発明の方法のさらにより好ましい態様では、前記哺乳類細胞は、神経芽細胞腫細胞株由来であり、特にヒト神経芽細胞腫細胞株由来である。
【0034】
工程a)における本発明の方法の好ましい態様では、前記哺乳類細胞は、ヒト、マウスまたはラット由来であり、より好ましくは、前記哺乳類細胞は、神経芽細胞腫細胞株由来、特にヒト神経芽細胞腫細胞株由来の細胞である。
【0035】
工程a)における本発明の方法のより好ましい態様では、前記哺乳類細胞は、ヒト神経芽細胞腫SH−SY5Y細胞株由来、特に欧州細胞培養コレクション(European Collection of Cell Cultures)(ECACC)のSH−SY5Y細胞株番号EC94030304である。
【0036】
好ましい態様では、本発明の方法の工程c)では、5−HT2CR mRNAの同定された各アイソフォームの編集プロフィール、並びに前記編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的な発現は、同一の細胞抽出物中で決定される。
【0037】
工程c)における本発明の方法の好ましい態様では、5−HT2CR mRNAの同定された各アイソフォームの編集プロフィール、並びに前記編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的な発現を同一の細胞抽出物中で決定する場合には、それらは同一の全RNA細胞抽出物中で決定される。
【0038】
工程c)における本発明の方法の好ましい態様では、編集プロフィールの決定結果の分析により、これら編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の活性指数を得ることができる。
【0039】
より好ましい態様では、これら編集酵素の前記活性指数は以下の工程を含んでなる方法により算出される:
a)細胞RNAにおいて測定される5−HT2cR mRNAの同定された各アイソフォームの平均比率(%)、好ましくは±SEM(n≧3、4、5および6)、または、少なくとも、工程c)におけるシグネチャと関連して選ばれる編集部位(A、B、C、Dおよび/またはE編集部位)に対応するアイソフォームのセットの平均比率、または、少なくとも、対照および/または基準で処理したサンプルにおいて見いだされ、かつ、工程c)におけるシグネチャと関連して選ばれる編集部位(A、B、C、Dおよび/またはE編集部位)に対応する主要なアイソフォームの平均的比率を決定する工程;
b)場合によって、対照群および場合によって基準群、好ましくは基準の薬剤で処理した群と比較したときに、代数学的なデルタの関数においてこれらのアイソフォームを分類する工程;
c)編集酵素の活性に関連する重要なシグネチャを、好ましくは、酵素活性の産物の分類によって、より好ましくは、A、B、C、D、およびE編集部位から選択される少なくとも、2、好ましくは、3、または4の編集部位の編集のパーセンテージを算出し、関連づける方法によって、より好ましくは、そのシグネチャの各部において見いだされるそれぞれの編集部位の編集のパーセンテージを算出し、関連づける方法によって、決定する工程;並びに
d)場合によって、ADAR1の作用(ADAR I)またはADAR2(ADAR II)と関連した、すべてのアイソフォームまたは選択されたアイソフォームにより表される%を測定することによって、発現した活性を分類する工程。
【0040】
工程a)に関しては、それは、ある特定の編集作用だけを評価するため、例えば、部位CとEのみ、AとCのみ、AとBのみ、または、AとBとCのみが編集されていると分かっている、酵素活性の産物の比率を同定するために選ばれうる。非編集アイソフォーム(NE)もまた、重要であり、その結果、選ばれる。
【0041】
例えば、薬剤で処理された基準サンプルと比較したときに、対照サンプルと比較してこの処理により変化を受けると示された特定の編集作用(部位CとEのみ、または、AとCのみ、AとBのみ、AとBとCのみが変化すると分かっている酵素活性)のみを評価するため、および従って、これらの特異的な酵素の対応する産物の比率のみを同定するために選ばれる。
【0042】
なお一層より好ましい態様では、これらの編集酵素の前記活性指数は、少なくともADAR1単独の作用(ADAR1)およびADAR2の作用(ADAR2)による編集アイソフォームから算出される。
【0043】
さらにより好ましい態様では、これらの編集酵素の前記活性指数は、ADAR1単独の作用による編集アイソフォームから、並びに、ADAR1およびADAR2の組み合わさった作用(ADAR1+2)による編集アイソフォームから、および、ADAR2の排他的作用(ADAR2)から算出することができる。
【0044】
なお一層より好ましい態様では、これらの編集酵素の前記活性指数を算出する方法の工程a)は、試験化合物と接触させた後の細胞RNA抽出物中に存在し得る32種の5−HT2cR mRNAのすべてのアイソフォームの平均比率(%)、好ましくは±SEM(n≧3、4、5および6)を決定する工程を含んでなる。
【0045】
工程c)における本発明の方法の好ましい態様は、前記編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的な発現が、細胞抽出物中に発現する前記編集酵素のmRNA発現の測定により、または、前記編集酵素タンパク質の測定により決定される。
【0046】
本発明の方法の好ましい態様では、前記試験化合物の決定されるべき潜在的な毒性または副作用は、気分障害および自殺、特に精神障害、統合失調症、うつ病、うつ病による自殺または異常摂食行動を誘発する薬剤の潜在的なリスクである。
【0047】
本発明の有望な薬剤化合物をスクリーニング、および/または選択する方法の好ましい態様では、投与後に5−HTR2CのmRNA編集の変化に関連する病状を処置するために、病状は、精神疾患、統合失調症、うつ病、うつ病による自殺または異常摂食行動から選択される。
【0048】
工程b)における本発明の方法の好ましい態様では、前記哺乳類細胞は、前記哺乳類細胞の培養に適したまたは好都合の培地、より好ましくは、5−HTR2Cならびに編集酵素ADAR1(1aおよび1b)およびADAR2の発現に好都合な培地で試験化合物の存在下で培養される。
【0049】
好ましくは、工程b)において、前記哺乳類細胞は、5HT2CRの編集アイソフォーム、および/またはADAR1a、ADAR1bおよびADAR2酵素が、試験化合物により修飾されるか否かによらず、それらの発現を変化させるために少なくとも十分な時間試験化合物の存在下で培養される。
【0050】
好ましくは、工程b)において、前記哺乳類細胞は、5−HT2CR mRNAの同定された各アイソフォームの編集プロフィールおよび/または前記編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的発現を同一細胞抽出物中で決定する工程c)の前に少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも5、10、16、24および48時間試験化合物の存在下で培養される。
【0051】
編集の定常状態を決定する方法は、細胞抽出物中に発現するADARアイソフォームの正確な分布を決定することを可能とするネステッドPCR(nested type PCR)を伴って、細胞RNA抽出物中で測定される5−HT2CR mRNAの同定された各アイソフォームのプロフィールを決定すること、並びに、同一の抽出物中で、編集酵素の発現の定常状態を推定することを含む。これらは2008年6月13日にPCT/EP2008057519として出願され、2008年12月18日に公開された(国際公開第2008/152146)、PCT特許出願「Peripherical tissue sample containing cells expressing the 5HTR2C and/or ADARs as markers of the alteration of the mechanism of the 5HTR2C mRNA editing and its applications」においても見いだすことができる。
【0052】
工程c)における本発明の方法の好ましい実施態様では、細胞RNA抽出物中で測定される5−HT2CRの同定された各アイソフォームの平均比率を与える編集プロフィールが、2段階のPCRを含んでなるネステッドPCRにより決定され、ここで、1段階目のPCRは以下のプライマーセットにより行われ:
マウスまたはラット哺乳類細胞株の場合:
順方向:5’−TGTCCCTAGCCATTGCTGATATGC−3’(配列番号1)、
逆方向:5’−GCAATCTTCATGATGGCCTTAGTC−3’(配列番号2);
ヒト細胞株の場合:
順方向:5’−TGTCCCTAGCCATTGCTGATATGC−3’(配列番号1)、
逆方向:5’−GCAATCTTCATGATGGCCTTAGTC−3’(配列番号2);
かつ、2段階目のPCRは以下のプライマーセットにより行われる:
マウスまたはラット哺乳類細胞株の場合:
順方向:5’−TTTGTGCCCCGTCTGGAT−3’(配列番号5)、
逆方向:5’−GCCTTAGTCCGCGAATTG−3’(配列番号6);
ヒト細胞株の場合:
順方向:5’−ATGTGCTATTTTCAACAGCGTCCATC−3’(配列番号3)、
逆方向:5’−GCAATCTTCATGATGGCCTTA−3’(配列番号4)。
【0053】
本発明による方法の好ましい態様では、前記5HTR2C mRNAの編集および非編集の各形態の編集比率が、以下の工程を含んでなる方法により決定される:
A)前記哺乳類細胞から全RNAを抽出する工程(適切な場合にはその後mRNAの精製を行う);
B)工程A)で抽出されたRNAを逆転写する工程;および
C)編集されうる編集部位を含む5HTR2C mRNA断片に特異的な少なくとも1対のプライマーであって、RNA抽出物中に存在しうるすべての編集形態および非編集形態を増幅できるように選択されたプライマーを用いて、工程B)で得られたcDNAをPCR増幅する工程。
【0054】
本発明による方法の好ましい態様では、前記5HTR2C mRNAの編集および非編集の各形態の編集比率が、以下の工程を含んでなる方法により決定される:
A)前記哺乳類細胞から全RNAを抽出する工程(適切な場合にはその後mRNAの精製を行う);
B)工程A)で抽出されたRNAを逆転写する工程;および
C)編集されうる編集部位を含む5HTR2C mRNA断片に特異的な少なくとも1対のプライマーであって、RNA抽出物中に存在しうるすべての編集形態および非編集形態を増幅できるように選択されたプライマーを用いて、工程B)で得られたcDNAをPCR増幅する工程
{ここで逆転写の工程B)は、5HTR2C遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて行われる}。
【0055】
本発明による方法の好ましい態様では、工程C)において、PCR増幅工程(ネステッドPCRの場合は2段階目)で用いられるプライマーは、標識されており、好ましくは、蛍光物質で標識されている。
【0056】
工程c)における本発明の方法の好ましい態様では、5−HT2CR mRNAの同定された各アイソフォームの平均比率を与える編集プロフィールは、前記mRNAの編集および非編集の個々の形態の各々に編集プロフィールを与える能力を有するCE−SSCP法により決定され、CE−SSCP法は、工程A)、B)およびC)の後に以下の工程を含んでなる:
D)適切な場合には、工程C)で得られたPCR産物を精製する工程;
E)適切な場合には、工程D)で得られたPCR産物を定量する工程;
F)二本鎖cDNAを、具体的には加熱およびその後の急激な冷却により、一本鎖cDNAに解離させる工程;
G)一本鎖cDNAをキャピラリー電気泳動により分離する工程;並びに
H)蛍光の読み取りにより編集プロフィールを得る工程、および適切な場合には、蛍光リーダーに付随したオペレーティングシステムを用いてプロフィールデータを取得する工程。
【0057】
工程c)における本発明の方法の好ましい態様では、ADAR mRNAのPCR増幅に特異的なプライマー対は、下記からなる群から選択される:
−ヒトADAR1−150アイソフォームmRNA増幅:
順方向:5’−GCCTCGCGGGCGCAATGAATCC−3’(配列番号7)、
逆方向:5’−CTTGCCCTTCTTTGCCAGGGAG−3’(配列番号8);
−ヒトADAR1−110アイソフォームmRNA増幅:
順方向:5’−CGAGCCATCATGGAGATGCCCTCC−3’(配列番号9)、
逆方向:5’−CATAGCTGCATCCTGCTTGGCCAC−3’(配列番号10);
−ヒトADAR2 mRNA増幅:
順方向:5’−GCTGCGCAGTCTGCCCTGGCCGC−3’(配列番号11)、
逆方向:5’−GTCATGACGACTCCAGCCAGCAC−3’(配列番号12);
−マウスADAR1−150アイソフォームmRNA増幅:
順方向:5’−GTCTCAAGGGTTCAGGGGACCC−3’(配列番号13)、
逆方向:5’−CTCCTCTAGGGAATTCCTGGATAC−3’(配列番号14);
−マウスADAR1−110アイソフォームmRNA増幅:
順方向:5’−TCACGAGTGGGCAGCGTCCGAGG−3’(配列番号15)、
逆方向:5’−CTCCTCTAGGGAATTCCTGGATAC−3’(配列番号14);および
−マウスADAR2 mRNA増幅:
順方向:5’−GCTGCACAGTCTGCCTTGGCTAC−3’(配列番号16)、
逆方向:5’−GCATAAAGAAACCTGAGCAGGGAC−3’(配列番号17)。
【0058】
本発明の方法の好ましい態様では、試験化合物は、同一の化合物を試験するに適した動物モデル、好ましくは、マウスまたはラットにイン・ビボで更に投与され、ここで、その動物モデルへの投与後のこの試験化合物の潜在的な毒性または副作用が、特に、全血液および皮膚サンプル、または脳に発現する5HTR2Cおよび/またはADARアイソフォームのmRNA編集の変化を評価することによって評価されうる(2008年6月13日にPCT/EP2008057519として出願され、2008年12月18日に国際公開第2008/152146号公報として公開されたPCT国際特許出願に開示されているように評価されうる)。
【0059】
もうひとつの側面では、本発明は、患者への試験化合物の投与後に試験化合物の潜在的な毒性若しくは副作用を決定するための、または5HTR2CのADAR依存性A−to−I mRNA編集のmRNA編集メカニズムの変化に関連する病状の処置に有用な治療化合物の選択のためのキットであって、
a)細胞株由来の哺乳類細胞であって、編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2並びにセロトニン2C受容体(5HTR2C)を発現する哺乳類細胞;並びに
b)前記哺乳類細胞のRNA抽出物中に存在しうる5−HT2CR mRNAの各アイソフォームを、2段階のPCRを含んでなるネステッドPCRを伴うCE−SSCP法により測定するための2セットのプライマー;および/または
c)編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的発現を、定量的Q−PCRにより測定するための1セットのプライマー
を含んでなるキットに関する。
【0060】
本発明のキットの好ましい態様では、前記哺乳類細胞は、これらのADAR1a、ADAR1bおよびADAR2酵素がこれらの細胞内で受容体の様々な編集アイソフォームの産生をアクティブに制御していることを示す、かなりの数の5HT2CR mRNAの編集アイソフォームを発現する能力を有する。
【0061】
より好ましくは、これらの哺乳類細胞は、少なくとも編集された部位A、B並びに同様にCおよびEを提示することができ、A、AB、ABC、ABCE、ABE、AC、ACE、AE、B、BC、BCE、BEの編集アイソフォームからなる群から選択される、少なくとも1、好ましくは、2、3、4、5、6、7、6、9、10、11および12の編集ADAR1アイソフォームを、編集アイソフォームABCD、ABCDE、ABD、ABDE、ACD、ACDE、AD、ADE、BCD、BCDE、BD、BDE、C、CE、Eの群から選択される編集されたD部位を提示する、少なくとも1,好ましくは、2、3、4、5、6、7、6、9、10、11、12、13、14および15のアイソフォームと共に提示する哺乳類細胞である。
【0062】
本発明のキットの好ましい態様では、前記哺乳類細胞は、ヒト、マウスまたはラット由来であり、より好ましくは、前記哺乳類細胞は、神経芽細胞腫細胞株由来の細胞、特にヒト神経芽細胞腫細胞株由来の細胞である。
【0063】
本発明のキットのより好ましい態様では、前記哺乳類細胞は、ヒト神経芽細胞腫SH−SY5Y細胞株由来である。
【0064】
特定の態様では、本発明は、特にHCV(C型肝炎ウイルス)に感染した患者のための、患者へのインターフェロンアルファ(IFNα)投与後のその処置の潜在的な毒性若しくは副作用を決定するための、または予測するためのイン・ビトロの方法であって、
a)前記処置患者由来の哺乳類白血球、好ましくは、白血球または単球細胞を含む生体サンプルを得る工程;
b)ヒト白血球を含む前記生体サンプルの細胞抽出物中で、各編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的な発現、並びに、場合によって、細胞RNA抽出物中に存在抽出物中で測定される5−HT2CR mRNAの同定された各アイソフォームの平均比率を与える編集プロフィールを決定する工程;
d)前記IFNα処理患者由来の前記細胞と、非処理対照細胞または対照化合物で処理した細胞との間で、工程b)で得られた結果を比較する工程(IFNα処理細胞は、事前にIFNα処理の最初にまたは最中に同一の患者から得た)
を含んでなる方法に関する。事前にIFNαで処理した細胞は、IFNα処置の初期の、または処置中の同一の患者から取得した。
【0065】
本発明は、試験化合物の潜在的な毒性を予測するための、またはセロトニン2C受容体(5HTR2C)のADAR依存性A−to−I mRNA編集のmRNA編集メカニズムの変化に関連する病状の処置に有用な治療化合物の選択のためのイン・ビトロの方法であって、
(a)哺乳類細胞株(好ましくは、本発明の方法のために描写された特徴を有するこれらの細胞株)、好ましくは、神経芽細胞細胞株、より好ましくは、SH−SY5Y細胞株上で、5HT2CRの編集を変化させるそれらの能力に基づいて、心理学的または神経心理学的な効果などの毒性若しくは副作用を有する、または有しないと知られている化合物をスクリーニングする工程;
(b)前記スクリーニングに基づいて、基準パネルのメンバーを選択する工程であって、前記パネルが、5HT2CRの編集を変化させるそれらの能力に関して異なっており、かつ、場合によって、それらの毒性または副作用に関して異なっていても良いメンバーを含んでなる、工程;
(c)前記5HT2CRの編集に関して未知の活性の試験化合物をスクリーニングし、5HT2CRの編集の変化に対するその影響を決定し、それにより前記試験化合物に対する5HT2CRの編集プロフィールと、場合によって、ADARの発現とを得る工程;
(d)前記試験化合物と前記基準パネルとに対する5HT2CRの編集プロフィールおよび、場合によって、ADARの発現を比較する工程;
(e)試験化合物により引き起こされる5HTR2Cの編集の変化が基準化合物の変化と同じであるとの推定に基づいて、試験化合物の潜在的な毒性を予測し、または5HTR2CのmRNA編集メカニズムの変化に関連する病状の処置に有用な有望な治療化合物として試験化合物を選択する工程であって、5HT2CRの編集プロフィールおよび場合によってADARの発現を変化させるそれらの能力に基づいて前記哺乳類細胞上でスクリーニングする工程が、請求項1〜15におけるような、上記の本発明の方法のために描写されたイン・ビトロの細胞ベースアッセイである点で同じである、工程
を含んでなる、方法にも関する。
【0066】
最後に、本発明は、本発明によるキットを含んでなり、前記キットは、上記方法の工程b)で選択される基準パネルおよび/または前記基準パネルに対する5HT2CRの編集プロフィールおよび、場合によってADARの発現を更に含んでなる。
【0067】
下記の実施例および下記の図面、説明文は、本発明を実施し用いることができるように、当業者に完全な記載を提供するために選ばれている。これらの実施例は、本発明者が発明であると考えるものの範囲を制限するためのものではなく、下記の実験のみが実施されることを示すことを意図したものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1Aおよび1Bは、SH−SY5Y細胞のADAR1a mRNA濃度に対する、24時間のヒトインターフェロンの使用の効果:EC50%の決定を示す図である。 SH−SY5Y細胞中のADAR1a RNAの発現(Q−PCR、Applied TaqManプローブ 参照番号:Hs01020780_m1)。 基準遺伝子:GAPDH。
【図2】図2A〜2Cは、INFαで処理したSH−SY5Y培養細胞における編集プロフィールの変化が、ADAR1aの発現の変化を反映していることを示す図である。 図2A.対照(n=8)に対する処理皿(n=8)のADAR1a mRNAのΔΔCTを、使用したIFNα濃度のLOG10に対してプロットした。最小二乗法により調整した双曲線関係の最適なフィッティングにより、最大効果とその平均±SD(n=40)として見積もられるIC50%とを算出することが可能となる。 図2B.同じ実験を5−HT2cR mRNAの増幅により行い、個別の各編集プロフィールの同定の後に、編集の変化の増加に続いてNEアイソフォームの顕著な減少がおこった。結果は、Aに関しては、個々の値(n=40)から算出した。 図2C.結果は、3種の編集アイソフォームAB、ABCおよびACの合計のプロフィールの分布により表される正の変動のパーセンテージの、INFα濃度に対する関係に関する。AおよびBにおけるような、最適なフィッティングにより、測定の個別の値(n=40)から最大効果とIC50%とを見積もった。IC50%は、培地のIU/mlとして表現される。対照に対して標準化されたΔΔCTとしてADAR1a mRNAに対して決定された最大効果は、対象の平均を標準化して1とした場合、10.56のQRの平均算出値を与える。図2Bおよび2Cにおいて、Y軸は、対照±SEMに対する絶対的な変動の平均値に対応する。最適なフィッティングの許容されるエラーは0.01%であった。
【図3】図3は、可能性のある精神医学的リスクを評価するための基礎としての細胞モデルを示す図である。 受容体(5−HT2cR)mRNA編集<シグネチャ>が、うつ病/自殺患者の3つの大脳辺縁系(背側前頭前野(DPFCx))、前帯状皮質(ACCx)および嗅内皮質(嗅内Cx)において評価された。このシグネチャは、平均値を対照群の患者における平均値と比べたときに、同定された各編集アイソフォームのそれぞれの比率の分布の変動に対応した(表7参照)。これらは、まず、個々のデルタの代数学的平均により分類され、その後、統計学的な成分分析により処理された。各成分は各アイソフォームの比率として定義され、その中では、例えばAおよびB部位、AおよびC部位またはA、BおよびC部位などが編集されていることが見いだされた。黒およびグレーの三角は、それぞれ、有意であると認定された場合(p<0.05)に、定義された成分の正のおよび負の平均変動を表す。
【図4】図4は、SH−SY5Y培養細胞における5−HT2cR mRNAの編集プロフィールの一定の統計学的な成分分析から検出される編集活性の変化を引き起こす薬剤のイン・ビトロのプロファイリングの典型例を示す図である。各試験分子に対して有意と判明したシグネチャの成分が黒(正の変動)およびグレー(負の変動)により表される。各成分に対して、変化は、シグネチャの正のおよび/または負の部分に影響し、その総計を変化させることが見いだされ得る。成分の選択は、図3で表される自殺患者とIFNαで処理したSH−SY5Y培養細胞とにおいて行われた分析の比較から直接的に得られる。*は、対応する分子が、処置の間、気分障害および自殺のリスクに対するFDAの精神医学的警告の対象であることを示す。
【図5】図5は、IFNαで処理したSH−SY5Y細胞におけるADAR1a mRNAおよびタンパク質の発現を示す図である。 タンパク質抽出物SDSは、ニトロセルロース膜に転写された。構成的(p110)および誘導性(p150)ADAR1アイソフォームの両方に対応するバンドは、矢印で示した。タンパク質スタンダードも同様に描かれている(MW250、150および100kD)。
【実施例】
【0069】
実施例1.細胞培養および薬物処理
10種の異なる細胞株から、下記の条件で用いたときに最も興味深いものとしてSH−SY5Yヒト神経芽細胞腫細胞株を選択した。
【0070】
SH−SY5Yヒト神経芽細胞腫細胞株は、ECACC(欧州細胞培養コレクション(ECACC)のEC94030304)から購入した。細胞株SH−SY5Yは、1978年に最初に報告され、元々はSK−N−SHから三回クローンした神経芽細胞腫である。SH−SYと呼ばれるSK−N−SHの神経芽細胞様サブクローンは、SH−SY5としてサブクローンされ、さらにSH−SY5Yとしてサブクローンされた(Biedler JL et al. Cancer Res. 1978; 38:3751-7)。10%透析FCS(PAA、参照番号:A15−507、ロット:A50708−0050)、2mMグルタミン(シグマ社製、G7513)および1×の抗生−抗真菌安定化(Antibiotic- Antimycotic Stabilized)(シグマ社製、参照番号:A5955)混合物を補填した高グルコースD−MEM培地(シグマ社製、参照番号:6546)で、5%COの加湿雰囲気下37℃で、細胞を培養した。薬剤またはhIFNα処理の前日に、SH−SY5Y細胞を6ウェルプレートに10細胞/ウェルの濃度で播種した。一つの6ウェルプレートを一つの実験条件で用いた(濃度または処理時間)。播種の翌日に、培地を取り除き、細胞を10μMの試験化合物溶液または1000IU/mlのhIFNα(PBLバイオメディカルラボラトリーズ社製)溶液で24時間インキュベートした。hIFNαの用量応答実験のために、細胞を1、10、100および1000IU/mlのhIFNα溶液でインキュベートした。hIFNαのタイムコース実験のために、細胞を1000IU/mlのhIFNα溶液で24、48および72時間処理した。様々な処理の後で、細胞をRLT溶解緩衝液内に直接溶解し、全RNAを製造者のプロトコルに従って精製した(キアゲン社製、RNeasy Plus miniキット、参照番号:74134)。その後、Thermoscript RT−PCRシステムPlusTaq(インビトロジェン社製、11146−032)で全RNAを逆転写し、得られたcDNAをCE−SSCPおよび定量的リアルタイムPCRに用いた。
【0071】
実施例2.mIFNαおよび薬剤処理用のイン・ビボ プロトコル
mIFNαの実験のために、8匹の雄(Balb/cJマウス、チャールズ・リバー社製)に10000IUのmIFNα(PBLバイオメディカルラボラトリーズ社製)を一度にi.p.経路で注射した。対照マウスは、滅菌リン酸緩衝生理食塩水で同じ経路で注射した。注射の8時間後に、動物を断頭し、全血液、腹側の皮膚および脳を回収した。全RNAを、血液の場合は、マウスRiboPure血液RNA単離キット(Ambion社製、参照番号:1951)で、皮膚の場合は、組織破壊後にTRIzol試薬(インビトロジェン社製、参照番号:15596−026)で、脳の場合は、RNeasy 脂質miniキット(キアゲン社製、参照番号:74804)を用いて精製した。その後、全RNAをThermoscriptRT−PCRシステムPlusTaq(インビトロジェン社製、11146−032)を用いて逆転写し、得られたcDNAをCE−SSCPおよび定量的リアルタイムPCRに用いた。SSCP決定に用いた方法は、マウスおよびヒトサンプルに関して既に記載されている(2008年6月13日に出願された特許PCT/EP2008/057519)。
【0072】
抗精神病薬、抗うつ薬および自殺警戒薬の場合は、様々な化合物を最初は溶媒(DMSO/エタノール/水:50%/15%/35%)に溶かして、継続的かつ均一なドラッグデリバリーのためにAlzetポンプ(Alzet社製、参照番号2002、チャールズ・リバー社、フランスから注文した)を用いて雄Balb/cJマウスに投与した。対照群では、8匹のマウスを溶媒単独で処理した。試験群では、8匹のマウスを3.5または7.0mg/kg/日で溶媒で即時に溶かした化合物で処理した。Alzetポンプでのドラッグデリバリーの15日の後に、動物を断頭した。上記のように全血液および皮膚のサンプル並びに脳を回収した。全RNAを精製し、上記のように逆転写した。
【0073】
実施例3.5−HT2cR mRNAの発現しているすべての編集および非編集アイソフォームの分布の全プロフィール;リアルタイムPCR分析による5−HT2cR(全体)とADAR mRNAの発現の定量
【0074】
3A)一本鎖高次構造多型による非変性キャピラリー電気泳動(CE−SSCP)による5−HT2cR mRNAの発現しているすべての編集および非編集アイソフォームの分布の全プロフィール(PCT国際特許出願 国際公開第2008/152146、実施例2および図1参照)
【0075】
a):脳組織の1サンプルからの完全な編集プロフィールの取得
製造者の説明書に従って、全RNAを組織または細胞抽出物から抽出し、精製した(キアゲン社製 RNeasy、Miniキット)。GeneQuant分光光度計(ファルマシアバイオテク社製)を用いて260nmでの吸光度および260/280nmの比率の両方を測定し、抽出したRNAの量と純度を評価した。ゲノムDNAによるコンタミネーションの可能性を排除するために、その後、8μlのRNA(88ng〜1.3μg)の各々を、1ユニットのDNaseI(インビトロジェン社製)で、最終容量10μlで室温で15分間処理した。反応は、1μlの25mM EDTAを添加することにより停止させ、その後、65℃で10分間加熱した。15ユニットのThermoScript逆転写酵素(ThermoScript RT−PCRシステム、インビトロジェン社製)および最終濃度2.5μMのオリコ(dT)プライマーを用いて、DNaseIで処理したRNA(10μl)の逆転写を行った。
【0076】
1段階目のPCR反応(最終容量25μl)は、1μlの逆転写反応産物と0.2ユニットのプラチナTaqDNAポリメラーゼ(ThermoScript RT−PCRシステム、インビトロジェン社製)、および、それぞれヒト5−HT2cR cDNAのエキソンIVおよびエキソンV上に設けられた特異的プライマー(順方向プライマー:5’−TGTCCCTAGCCATTGCTGATATGC−3’(配列番号1)および逆方向プライマー:5’−GCAATCTTCATGATGGCCTTAGTC−3’(配列番号2);最終濃度各0.2μM)とを用いて行われ、250bpの断片を得た。95℃で3分間の変性工程の後に、PCRを35サイクル(95℃で15秒;60℃で30秒;72℃で20秒)行い、最後に72℃で2分の伸長工程を行った。増幅産物の一定量を用いて、2%アガロース分析ゲル上で産物を確認した。
【0077】
b)2段階目のPCRおよびキャピラリー電気泳動(CE)による一本鎖DNA断片の分離
1μlの50分の1希釈のRT−1段階目PCR産物、または、ヒト5−HT2cR(若しくは5HT2CR)のアイソフォームの32種のスタンダードを持つプラスミドから増幅した250bpのcDNAを、追加のネステッドPCR用のテンプレートとして用いた。これら32のスタンダードは、ヒト5−HT2cRの非編集(NE)および編集アイソフォームに対応する。HPLC精製した蛍光プライマー(順方向プライマー:FAM−ATGTGCTATTTTCAACAGCGTCCATC−3’(配列番号3)、逆方向プライマー:VIC−GCAATCTTCATGATGGCCTTA−3’(配列番号4);最終濃度各0.2μM)および0.2ユニットのプラチナpfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)を用いて、最終容量20μlで増幅を行った。
【0078】
VIC標識逆方向プライマーは、ヒト、マウスおよびラットにおいて同一の5−HT2c受容体の相補配列にハイブリダイズする。一方で、ヒトサンプルで用いられたにも関わらず、FAM標識順方向プライマーの配列は、マウスの配列と可能な限り近づけてデザインされた。より正確には、ヒトオリゴヌクレオチド配列の5および6位のT残基(ヒト参照番号:U49516の1133および1134位)が、それぞれGおよびCへと変えられた。
【0079】
上記の2つのプライマーを用いて得られたPCR産物の両鎖の確率的な折りたたみ経路のシミュレーションは、Kinefoldサーバー(Kinefold.curie.fr)を用いて行った。これにより、順方向および逆方向の鎖に対して得られる最小の自由エネルギーの構造−ステム-ループ構造のループに埋め込まれ、ステムの折りたたみ後に全体の構造の他の場所に位置する相補的な配列とハイブリダイズすることができる編集領域−が、マウスサンプルで成功裏に用いられているマウスのネステッドPCR産物に対して算出された構造と非常に近いことが示された。このプライマーセットは、一本鎖高次構造多型による非変性キャピラリー電気泳動(CE−SSCP)によるヒト5HTR2C mRNA編集の高次構造分析に最適であることが示された。
【0080】
増幅断片は127bp長である。RT−PCRに関しては、94℃5分間の最初の変性工程の後に、増幅反応を35サイクル(94℃で15秒、55℃で30秒、68℃で20秒)行い、最後に68℃2分間の伸長工程を行った。3100 Avant Genetic Analyser(アプライドバイオシステムズ社製)での後の解析の前に、127bp長の増幅断片の質を、再度、2%アガロースゲル上で評価した。
【0081】
11μlの脱イオン化ホルムアミドに希釈したスタンダードアイソフォーム(DEPC処理水による100分の1希釈物の1μl)およびサンプル(30分の1希釈物の1μl)に対応する蛍光PCR産物を電気泳動図の保持時間のすべての範囲をカバーするROX標識泳動スタンダード(MWG−バイオテク社製、AG)(各5μl)の混合物に加えた。これらのROXスタンダードは、CEキャリブレーションに用いられ、続いてスタンダードとサンプルピークの正確な重ね合せ画像を得るために用いられる。95℃での2分間の変性の後に、サンプルを即座に氷上で冷却した。非変性CEは、ABI PRISM 3100−Avant Genetic Analyser(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、グリセロールを用いずに7%POP高次構造解析ポリマー(POP Conformational Analysis Polymer)(アプライドバイオシステムズ社製)および1×TBEで満たした80cm長のキャピラリーで行った。15kVで3分間プレランを行った後に、サンプルを2kVで15秒間注入し、20度の温度制御下で15kVで105分間電気泳動を行った。これらの条件下では、FAM標識またはVIC標識鎖のいずれかで得られた一本ssDNAの高次構造の結果として、可能性のある32のアイソフォームが明確に分離した。アイソフォームの明快な同定のために、様々な保持時間を用いた。
【0082】
c)各脳サンプルにおける各アイソフォームの同定と相対的定量
電気泳動シグナルは、その後、社内ソフトウェアを用いて処理した。最初に、各サンプルの電気泳動プロフィールの時間の基準を、泳動スタンダードであるROX標識スタンダードを用いて調整した。これにより、FAM−およびVIC標識鎖で、特有の時間の基準でスタンダードとサンプルのシグナルを正確に逆重畳積分することが可能となる。その後、バックグラウンドを調整し、差し引いて、各シグナルの下で全領域を標準化した。
【0083】
各アイソフォームの相対的な比率は、逆重畳積分され、かつ標準化された脳サンプルの各分析用シグナルの最適なフィッティングにより、処理した。それは、同様に逆重畳積分され、かつ標準化された32のスタンダード分析用シグナルにより表される統合シグナルの反復した調整により行われた。計算は、SSCPシグナルが、
【数1】

{ここで、i∈{1、...、N}を有するR(t)はスタンダードシグナルであり、gはシグナル中のそれらの各々の%である。}
であるとの仮定に基づいて行われた。最適なフィッティングは、エラー(SSE)
【数2】

による平方和を最小化し、最小二乗統計分析で正確さを確認した。この最適なフィッティングの結果は、
【数3】

{ここで、SSMは、
【数4】

などの平均に関する平方和(Sum of Square about Mean)である。}
で表されるr値の算出の後に統計的に評価された。最高の理論上最適なフィッティングであれば、r=1が得られる。
【0084】
すべての実験は、ブラインドテスト条件下で行われ、すべてのサンプルは、RT−PCRおよび2段階目のPCR反応に関しては、同一のバッチで分析評価した。最適なフィッティングの結果は、個々のサンプルそれぞれに対する特異的な編集プロフィールを生み出し、全分析用シグナルの編集および非編集の各形態のパーセンテージにより決定される。これらの初期値が、統計分析に用いられた。
【0085】
この方法により、抽出物中に存在する全5−HT2c受容体のパーセンテージとして表される発現した各mRNAアイソフォームの比率が得られる。
【0086】
3B)リアルタイムPCR分析による5−HT2CRおよびADAR mRNAの発現の定量
【0087】
SH−SY5Y細胞、またはBALB/cマウスの前頭前野皮質、全血液および皮膚における5−HT2CR、ADAR1およびADAR2 mRNAの発現レベルを定量するために、ファーストストランドcDNAを逆転写により合成し、TaqMan定量的リアルタイムPCR分析(アプライドバイオシステムズ社製)を行った。定量的PCRに用いたすべてのプローブおよびプライマーは、アプライドバイオシステムズ社製(Gene Expression Assay、Assay−On−Demand)から入手した(表1、アプライドバイオシステムズ社製プライマーおよびプローブを参照)。
【0088】
これらのプローブおよびプライマーは、5−HT2cR、ADAR1、構成的および誘導性アイソフォーム、並びにADARタンパク質をコードするヒトおよびマウス遺伝子の周知のかつ開示された核酸配列を考慮すれば、必要であろうとなかろうと、当業者によって簡単にデザインすることができるであろう。
【0089】
【表1】

【0090】
ヒトGAPDH(製品番号:4326317E;アプライドバイオシステムズ社製)またはマウスGAPDH(製品番号:4352339E;アプライドバイオシステムズ社製)が、各マルチプレックスPCRにインターナルコントロールとして含まれていた。リアルタイムPCRおよびその後の分析は、48ウェルブロックStepOne RT PCRシステム(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて行われた。すべてのサンプルにおける標的遺伝子の発現の定量は、等式Ct(標的)−Ct(GAPDH)=ΔCt{ここで、Ctはサイクル数の閾値である}により、GAPDHの発現に対して標準化した。非処理マウスまたは細胞からのサンプルのΔCtの平均値が決定され、処理された動物または細胞に対応するサンプルのための基準点として用いられた。個々の変動を含む、未処理と処理の動物または細胞との差異は、等式(ΔCt(処理された個々のサンプル)−ΔCt(未処理サンプルの平均)=ΔΔCt)により算出した。各サンプルにおける標的遺伝子の発現の変化(n倍)は、2−ΔΔCtにより算出され、平均と標準偏差(SD)はここから導出した。
【0091】
選択された細胞株の感度を改善し、編集過程の重大な変動を検出するために、その過程をヒトインターフェロンおよびFDAが警告枠を集中させる17の分子の評価に適用した。
【0092】
実施例4.ADAR1aの発現に対する、SH−SY5Y細胞に24時間暴露したヒトインターフェロンの濃度効果の関係(図1Aおよび1B参照)
【0093】
対照細胞とインターフェロン処理細胞における編集アイソフォームの分布のさらなる評価のために、1000UI/mlの濃度を選択した。結果は表2の通りであった。
【0094】
表2:1000IUのヒトインターフェロンαによる処理の24時間後に得られた編集プロフィールの分析
【0095】
この編集プロフィールから、細胞RNA中で測定された5−HT2cR mRNA(=100%)の同定された各アイソフォームの平均比率(%)±SEM(n=6)が得られる。これらのアイソフォームは、対照とINF処理群とを比較した場合に、代数学的なデルタの関数で分類される。得られたシグネチャは有意差検定を受け、その後、編集酵素の活性の多次元評価が、酵素活性の産物の分類によりなされる。最初の分類(編集部位)は、シグネチャの各部において見いだされる編集部位:A、B、C、DおよびEのそれぞれの編集のパーセンテージを算出する。全分布が用いられる場合は、「総計」中に与えられる結果は、実際に、プライマー伸長法により得ることができる結果と対応する。ADAR1単独の作用による(ADAR1)、ADAR1およびADAR2の組み合わさった作用による(ADAR1+2)編集アイソフォームから、ADAR2の排他的な作用から(ADAR2)、酵素指数が算出された。最後の分類は、ADAR1の作用(ADAR I)またはADAR2(ADAR II)が関連するすべてのアイソフォームにより表される%を測定することによる活性を表した。その他の分類は、いくつかの特異的な編集作用(例えば、部位CおよびE、AおよびC、AおよびB、または、AおよびBおよびCなどが編集されていることが判明した酵素活性の産物の比率を同定するため)の評価に対して可能である(ここでは示されない)。非編集アイソフォーム(NE)がまた、有意に減少していることは興味深い。
【0096】
【表2】

【0097】
INF処理が、予想通りにADAR1活性の重要な増加とADAR2活性の低下を示す編集プロフィールの強力かつ有意な変化を引き起こすことは明らかである。
【0098】
同一のサンプルにおいて、ADARの発現レベルが、QPCRにより測定され、結果は下記の表3に要約されており、編集プロフィールの評価の後に得られたものと比較された。
【0099】
表3:選択された細胞株のINF処理後のADAR1およびADAR2酵素の発現と活性指数の比較。結果は、対照(n=6)に対する変動の%により示される。アスタリスク(*)で目印を付けた領域および太字の数字は、有意な変動(P<.05)を示す。
【0100】
【表3】

【0101】
次の表は、長期にわたり用いられたときに、自殺を誘発するリスクを示すとしてFDAの警告により指摘されてきた17種の分子の10通りのマイクロモル濃度での24時間の使用の後に結果として生じた編集の変化を決定する同一のプロトコルを用いて同様の実験を行った後の結果を要約している。これらの分子は、いくつかの化合物および様々なファミリーに属している。しかし、それらは、5−HT2cRの編集の有意な変化を引き起こす。これら分子のうち11種は、編集酵素の発現の有意な変化を引き起こす。その他は、同一の細胞サンプルを用いて簡単に検出しうるこれらの酵素の活性に有意な変化を引き起こす(表4参照)。
【0102】
表4:FDAにより自殺リスクを示すとして指摘されている分子が、編集酵素の発現および/または5−HT2cR mRNAに対するその編集作用を有意に変化させる。このことは、専用の細胞株(SH−SY5Y)に対してこれらを適用することにより簡単に検出できる。
【0103】
【表4】

【0104】
これらのパラメータの迅速かつ完全な測定を可能とする技術一式で観察した場合に、この専用の細胞株が、5−HT伝達の長期にわたる変化による気分の変化を生ずるこれら分子の結果として生じるリスクの前臨床での評価のための新しいモデルを表すことが明らかとなる。
【0105】
実施例5.イン・ビトロにおける分子の予測的な効果のための細胞株の選択
a−選択の判断基準 分子のイン・ビトロでのスクリーニングに相応しいものとするために、細胞株を下記の主要な点で確認しなければならない:
−ヒト起源であること;
−対照の条件において、編集プロフィールの再現性のある評価を可能とする範囲で5−HT2cR受容体を発現すること;
−比較的定常状態において、ヒト脳における通常の皮質構造で見られるものと類似した編集酵素を発現すること。
【0106】
b−最善の選択のための提案
様々な10種の細胞株の中で、下記の条件で用いるときに最も興味深いものとしてSH−SY5Yヒト神経芽細胞腫細胞株を選択した。
【0107】
SH−SY5Yヒト神経芽細胞腫細胞株はECACCから購入した。細胞を10%透析済みFCS(PAA社製、参照番号:A15−507、ロットA50708−0050)、2mMグルタミン(シグマ社製、参照番号:G7513)および1×の抗生−抗真菌安定化(Antibiotic- Antimycotic Stabilized)(シグマ社製、参照番号:A5955)混合物を補填した高グルコースD−MEM培地(シグマ社製、参照番号:6546)で、5%COの加湿した雰囲気下37℃で、細胞を培養した。hIFNαまたは薬剤処理の前日に、SH−SY5Y細胞を5;7または9×10細胞/ウェルの密度で、それぞれ72、48または24時間の処理のために、6ウェルプレート(コーニング社製、マルチウェルプレート、6ウェル、Corning CellBIND Surface、参照番号:3335)に播種した。1実験条件(対照、濃度または処理時間)ごとに、6ウェルプレートの6または8ウェルを用いた。播種の翌日に、培地を取り除き、細胞を10μMの試験分子溶液または1000IU/mlのhIFNα溶液(PBLバイオメディカルラボラトリーズ社製)で、24または48時間処理した。hIFNαの用量応答実験のために、1、10、100、1000または10000IU/mlのhIFNα溶液で細胞を処理した。[hIFNαのタイムコース実験のために、1000IU/mlのhIFNα溶液で24、48または72時間細胞を処理した。72時間処理の場合には、培養の48時間後に対照およびhIFNα処理細胞の両方で培地を交換した。]その後、RLT溶解緩衝液内で細胞を直接溶解し、全RNAを製造者の説明書に従って精製した((キアゲン社製、RNeasy Plus Miniキット、参照番号:74134)。その後、全RNAをThermoScriptRT−PCRシステムPlusTaq(インビトロジェン社製、参照番号:11146−032)を用いて逆転写し、得られたcDNAをCE−SSCPおよび定量的リアルタイムPCRに用いた。
【0108】
可能な場合には、全タンパク質抽出物をウェスタンブロット用にも調製した。簡潔には、対照または処理手順に対応する8ウェルの細胞を、1mM PMSFおよびコンプリートミニプロテアーゼインヒビターカクテル(ロッシュ社製、参照番号:11836153001)を補充した600μlのRIPA緩衝液(150mM NaCl、10mM Tris−HCl pH8、5mM EDTA、1% Triton−X 100、0.1%デオキシコール酸ナトリウム)で溶解した。細胞溶解物は、氷上で3×15秒間の超音波処理を行い、少なくとも4℃で2時間保持した後に、4℃で10分間100gで遠心分離した。不溶性のペレットを、40μlの2×Laemmliローディングバッファーに再懸濁して、タンパク質濃度をQuant−IT Protein Assay kit(インビトロジェン社製、参照番号:Q33211)を用いて定量した。超音波処理と70℃5分間の変性の後に、Laemmli緩衝液中の75μgの不溶性タンパク質抽出物を、12%変性ポリアクリルアミドゲルにロードした。標準的な手順に従ってさらにタンパク質抽出物の泳動および電気的転写を行った。ADAR1タンパク質の検出(構成的および誘導性形態の両方)用に、ニトロセルロース膜をL−15アフィニティー精製済みヤギポリクローナル抗体(サンタクルーズ社製、参照番号:sc−19077)でブロットした。
【0109】
c−対照の条件におけるSH−SY5Y中の編集酵素および4−HT2cRの発現の定常状態。これは表5に示される通りである。
【0110】
表5:SH−SY5Y神経芽細胞腫およびHTB−14星状細胞腫細胞株における、ならびにヒト脳の大脳皮質の全RNAプールにおける、ADAR1a、ADAR1b、ADAR2および5−HT2cRの相対的発現。細胞株は、ECACC(SH−SY5Y,参照番号:94030304)およびATCC(HTB−14、参照番号:HTB−14)から購入した。大脳皮質の全RNAはクロンテック社(参照番号:636561)から購入した。発現mRNAレベルの定量は、アプライドバイオシステムズ社製のStepOnePlus(商標)96ウェル装置(アプライドバイオシステムズ社製、参照番号:4376592)を用いたTaqMan定量的リアルタイムPCR分析により行った。Q−PCRに用いたすべてのプローブおよびプライマーは、アプライドバイオシステムズ社からのものであった(遺伝子発現アッセイ、Assay−On−Demand):5−HT2cR(Hs 00968672_ml)、ADAR1 p110構成的アイソフォーム(Hs 01017596_ml)、ADAR1 p150誘導性アイソフォーム(Hs 01020780_ml)、ADAR2(Hs 00210562_ml)。内部標準として、ヒトGAPDH(アプライドバイオシステムズ社製、参照番号:4326317E)を各マルチプレックスQ−PCRに含ませた。RQ(相対的定量)は、供給者により記載された通りに算出した。各組織または細胞株において、ADAR1a遺伝子の発現を基準として取得し、そのRQを1とした。
【0111】
【表5】

【0112】
重要なことに、ADAR1の誘導性アイソフォームであるADAR1aアイソフォーム(ここでは基準として用いる)と比較したときに、ADAR1のmRNAの構成的アイソフォーム(ADAR1b)は48倍多く発現し、ヒト大脳皮質においても同じ比率が見いだされた。ヒト大脳皮質の全RNAのように、SH−SY5Y細胞においても、5−HT2cRをコードする特異的mRNAの再現性のある量を同定することができる。このことは、受容体をコードするmRNAが定常的な発現を可能にする範囲で発現していないHTB14細胞には当てはまらなかった。
【0113】
もう一つのポイントは、選択的誘導の古典的モデルに応答するこれらの酵素の能力を検証すること、および複合体の協調的な活性を明らかにし、編集プロフィールの産物を生成することである。これらの判断基準は下記の2つの表で説明されている。
【0114】
表6:IFNα処理したSH−SY5Y細胞におけるADAR1 mRNAおよびタンパク質の発現。1000IU/mlの濃度のIFNαの存在下で、SH−SY5Y細胞を48時間培養した。処理後、全RNAおよびタンパク質の抽出物は、「材料と方法」に記載の通りに調製した。発現mRNAレベルの定量は、アプライドバイオシステムズ社製のStepOnePlus(商標)96ウェル装置(アプライドバイオシステムズ社製、参照番号:4376592)を用いたTaqMan定量的リアルタイムPCR分析により行った。Q−PCRに用いたすべてのプローブは、アプライドバイオシステムズ社からのものであった(遺伝子発現アッセイ、Assay−On−Demand):ADAR1 p110構成的アイソフォーム(Hs 01017596_ml)、ADAR1 p150誘導性アイソフォーム(Hs 01020780_ml)。内部標準として、ヒトGAPDH(アプライドバイオシステムズ社製、参照番号:4326317E)を各マルチプレックスQ−PCRに含ませた。RQ(相対的定量)は、供給者により記載された通りに算出した。各組織または細胞株において、ADAR1a遺伝子の発現を基準として取得し、そのRQを1とした。
タンパク質抽出物を、12%アクリルアミド変性ゲル上でSDS−PAGEにより分離し、PROTRAN BA85ニトロセルロース膜(ワットマン社製、参照番号:10 401 197)に転写した。ADAR1タンパク質の検出のために、ニトロセルロース膜をL−15アフィニティー精製済みヤギポリクローナル抗体(サンタクルーズ社製、参照番号:sc−19077)でブロットした。構成的(p110)および誘導性(p150)ADAR1アイソフォームの両方に対応するバンドを矢印で示す。タンパク質スタンダード(プレシジョンPlusタンパク質スタンダード、バイオラッド社製、参照番号:161−0363)が、同様に示されている。目的のタンパク質に対応するバンドは、Li−Cor Odissey装置によりスキャンし、MCIDソフトウェアを用いて更に定量した(図5参照)。各スキャンおよび各実験条件で得られた光学密度を括弧内に示す(表6参照)。変換により、未処理細胞におけるADAR1aアイソフォームのODを基準として取得し、1とした。
【0115】
【表6】

【0116】
この実験は、上記の培養条件において、INFαにより生じる誘導に応答する選択された上記細胞株が、mRNAの定量により予測されるものと同等の特異性および増幅比率を伴って酵素タンパク質レベルで観察することができることを明らかに示している。
【0117】
これらの編集酵素の産物の分布(それらの活性指数)の解析は、上記の実施例3Aにおいて記載されたSSCP−CE技術を用いて行われ、これにより、全RNAのサンプルから1回のアッセイで、5−HT2cR mRNAの発現したすべての編集および非編集アイソフォームの分布の全プロフィールを定量することができた。表8は、対照の条件における3種の大脳辺縁皮質構造およびSHSY5Y細胞株から得られた編集プロフィールの例を示す。
【0118】
表8:対照となる対象のヒト脳の3領域において、および対照条件下での培養されたSH−SY5Y細胞において、決定された5−HT2cRの編集プロフィールの比較。本発明者らは、個々の培養皿(n=8)から再現性のある編集プロフィールを得ることができることを示すことができる。本発明者らは、細胞株における編集アイソフォームの数は少ないが、≧1%の範囲のアイソフォームの平均比率は同様であり、このことから、定量に用いた分析手順が同様の効率であることが示されることを示す。影付きのセルは、NEアイソフォームの比率および1%の上限に満たないアイソフォーム群を示した。結果は、全特異的mRNAの平均%±SEM(n=6 対照ヒト対象、および8つの対照条件における培養皿)として表されている。
【0119】
【表7】

【0120】
【表8】

【0121】
これらの分布を迅速に測定する能力が、病理学的状況または分子の使用により生じうる編集酵素の活性の変更を正確に調査するための前提条件である。
【0122】
実施例6.インターフェロンモデル:特定の戦略を試験分子の比較に向けることの重要性
上記で示されたように、主にC型肝炎を処置するためのインターフェロンアルファの処置は、多くの患者(30〜50%)において深刻な気分の変化を引き起こしうる。従って、この分子はADAR1のADAR1a誘導性アイソフォームの強力な誘導剤であることが知られているので、本発明者らが選択した細胞株でINFαの効果を分析することは興味深い。
【0123】
第一の工程において、その特異的なmRNAのQPCRによるこの酵素の発現の度合いを測定することにより、濃度の範囲の効果を評価した。編集酵素活性の強力な指標と考えられる編集プロフィールに対する産物の効果を分析するために、追加実験を行った。結果は図1および表4に要約されている(表7も参照)。
【0124】
ADAR1aの誘導が選択的であり、主にAB、ABCおよびCアイソフォームに集中した編集プロフィールの重大な変化を引き起こすことがこれらの結果から明らかに示された。対照の条件において、これらのアイソフォームは全特異的5−HT2cRの7.5%に相当した(表7参照)。1000IU/mlが培地に48時間使用されたとき、この比率は26%であることが分かった。従って、ADAR1aの誘導が主にこれらアイソフォームの産生に影響することが明らかであった。
【0125】
これらのプロフィールの変化を統計学的に分析するために、および、比較が実際に標準化された分布の変化に限られるという事実を調べるために、本発明者らはまず、観察された発現アイソフォームの平均比率の変動を、その代数学的平均のデルタの関数で分類した。この分類は、観察された全体的な変更の「シグネチャ」として定義された。その後、このシグネチャの2つの部分の変動を分散分析により試験した。その後、分析は、比率の重要な変動が検出されたアイソフォームの群を考慮した成分分析により完了させた。
【0126】
この工程の例として、本発明者らは、対照の対象およびうつ病の自殺患者の編集プロフィールから得られたシグネチャの比較の分析から求められる重要な成分の群を基準として用いることを決定した。
【0127】
そのような分析の結果は、図3に示されている。
【0128】
この分析から4つの成分が3つのヒト脳構造において有意差を持ってはっきりと変化し、9つの成分が2つの前頭前野皮質においてはっきりした有意な変動を共有した。表の最後の列は、1000IU/mlの濃度でヒトINFαを48時間適用した後のSH−SY5Y培養細胞(ヒト起源)において行われた同一の分析の結果を示す。うつ病の自殺患者の3つの大脳皮質構造において変化していることがみいだされた成分と比較したときに、シグネチャの類似性に気づくことは興味深い。従って、INFα適用後に観察される5−HT2c編集mRNAの類似した変化を引き起こす能力を、それらのいくつかが有するかどうかを調べるために基準分子の編集プロフィールを作成した後で、同一の判断基準を用いることを適切に提案することが可能であった。
【0129】
実施例7.INFα処理後に見られるのと同様の編集プロフィールの変化を引き起こす基準分子を検出するためのイン・ビトロ プラットフォームの使用
本発明者らは、気分変化および自殺リスクに関するFDAの警告の対象となっている、またはなっていない様々なクラスの典型的な分子にこの種の成分分析を用いることを決定した。培養したSH−SY5Y細胞に対して、それらの各々を10μMの濃度で48時間適用した後に、編集プロフィールのイン・ビトロ スクリーニングを行った。5−HT2c mRNAの編集プロフィールの分析は、上記と同じ成分のセットを用いて行い、分析した(図3参照)。
【0130】
そのような分類の例が図4に示され、5−HT2cR mRNA編集の活性が同様に変化し、同様の副次的な精神医学的効果を誘発する潜在的リスクを潜在的に有する異なる治療的なクラスに属する様々な分子を同定することができる。リモナバン(Rimonabant)およびタラナバン(Taranabant)が、同じ抗うつ剤、抗精神剤および抗痙攣剤分子と共にこのファミリーに属することに注意。
【0131】
この種の編集プロフィールの分析により、特定の標的のmRNA編集の共通の変化を共有する分子を「イン・ビトロ」スクリーニングにより分類することを可能とする最も感度の良い判断基準が与えられる。成分の選択は制限されず、様々な判断基準に適用させてよい。このターゲット(ここでは5−HT2cR)が、気分、概日リズム、痛み、摂食行動などの制御に直接的に関与している場合、この評価は、前臨床試験のもとで新規分子の有害な副次的効果の予想されるリスクを試験するための有効なツールと考えられる。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図2C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験化合物の患者への投与の後に、試験化合物の潜在的な毒性または副作用を決定するためのイン・ビトロの方法であって、
a)哺乳類細胞を含む生体サンプルを取得する工程(ここで、前記哺乳類細胞が、編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2並びにセロトニン2C受容体(5HTR2C)を発現している)、
b)前記哺乳類細胞と試験化合物とを接触させる工程、
c)同一の細胞抽出物において:
−細胞RNA抽出物において測定される5−HT2CR mRNAの同定された各アイソフォームの平均比率を与える編集プロフィール、および/または、
−前記編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的な発現
を決定する工程、
d)試験化合物で処理した前記細胞と非処理の対照細胞との間で、工程c)で得られた結果を比較する工程
を含んでなる、方法。
【請求項2】
s5HTR2CのADAR依存性A−to−I mRNA編集のmRNA編集メカニズムの変化に関連する病状の処置に有用な治療化合物を選択するためのイン・ビトロの方法であって、
a)哺乳類細胞を含む生体サンプルを取得する工程(ここで、前記哺乳類細胞が、編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2並びに5−HT2C受容体を発現している)、
b)前記哺乳類細胞と試験化合物とを接触させる工程、
c)同一の細胞抽出物において:
−細胞RNA抽出物において測定される5−HT2CRのmRNAの同定された各アイソフォームの平均比率を与える編集プロフィール、および/または、
−前記編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的な発現
を決定する工程、
d)試験化合物で処理した前記細胞と未処理の対照細胞との間で、工程c)で得られた結果を比較する工程
を含んでなる、方法。
【請求項3】
工程c)において、5−HT2CR mRNAの同定された各アイソフォームの編集プロフィールと、前記編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的な発現とが、同一の細胞抽出物において決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程c)において、5−HT2CR mRNAの同定された各アイソフォームの編集プロフィールと、前記編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的な発現とが、同一の細胞抽出物において決定される場合に、それらが同一の全RNA細胞抽出物において決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程c)において、編集プロフィールの決定結果の分析により、これらの編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の活性指数の取得が可能になる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程c)において、前記編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的な発現が、前記編集酵素のmRNA発現の測定または細胞抽出物において発現する前記編集酵素タンパク質の測定により決定される、請求項1〜3または5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程a)において、前記哺乳類細胞が、細胞株、特に、ヒト、マウスまたはラット由来であって、5HT2CR、ADAR1およびADAR2酵素、好ましくは、ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2酵素、の一定かつ構成的な発現を示す細胞株である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程a)において、前記哺乳類細胞が、5HT2CRの編集を変化させる能力を有する薬剤で処理されたときに、少なくとも編集部位Aが編集された少なくとも1種の5HT2CRアイソフォーム、少なくとも編集部位Bが編集された少なくとも1種の5HT2CRアイソフォーム、少なくとも編集部位Cが編集された少なくとも1種の5HT2CRアイソフォーム、少なくとも編集部位Dが編集された少なくとも1種の5HT2CRアイソフォームおよび少なくとも編集部位Eが編集された少なくとも1種の5HT2CRアイソフォーム、好ましくは、編集された5TH2CRのすべてのアイソフォームを発現する能力を更に有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程a)において、前記哺乳類細胞が、神経芽細胞腫細胞株、好ましくは、ヒト神経芽細胞腫細胞株由来である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程a)において、前記哺乳類細胞が、ヒト神経芽細胞腫SH−SY5Y細胞株である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試験化合物の投与後の患者における潜在的な毒性若しくは副作用、またはs5HTR2CのmRNA編集の変化に関連する処置された病状が、精神疾患、統合失調症、うつ病、うつ病による自殺または異常摂食行動からなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程b)において、前記哺乳類細胞が、前記哺乳類細胞の培養に適した培地において試験化合物の存在下で培養される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程b)において、5−HT2CR mRNAの同定された各アイソフォームの編集プロフィールおよび/または前記編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的な発現を同一の細胞抽出物において決定する工程c)の前に、前記哺乳類細胞を試験化合物の存在下で、少なくとも1時間、好ましくは、少なくとも5、10、16、24時間培養する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程c)において、細胞RNA抽出物において測定される5−TH2CR mRNAの同定された各アイソフォームの平均比率を与える編集プロフィールが、2段階PCRを含んでなるネステッドPCRを伴うCE−SSCP法により測定され、かつ、1段階目のPCRが、
マウスまたはラット哺乳類細胞株の場合:
順方向:5’−TGTCCCTAGCCATTGCTGATATGC−3’、
逆方向:5’−GCAATCTTCATGATGGCCTTAGTC−3’
ヒト細胞株の場合:
順方向:5’−TGTCCCTAGCCATTGCTGATATGC−3’、
逆方向:5’−GCAATCTTCATGATGGCCTTAGTC−3’
のプライマーセットにより行われ、かつ、
2段階目のPCRが、
マウスまたはラット細胞株の場合:
順方向:5’−TTTGTGCCCCGTCTGGAT−3’、
逆方向:5’−GCCTTAGTCCGCGAATTG−3’;および
ヒト細胞株の場合:
順方向:5’−ATGTGCTATTTTCAACAGCGTCCATC−3’、
逆方向:5’−GCAATCTTCATGATGGCCTTA−3’
のプライマーセットで行われる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程c)において、ADAR mRNAのPCR増幅に特異的な1対のプライマーが、
−ヒトADAR1−150アイソフォームmRNAの増幅の場合:
順方向:5’−GCCTCGCGGGCGCAATGAATCC−3’
逆方向:5’−CTTGCCCTTCTTTGCCAGGGAG−3’
−ヒトADAR1−110アイソフォームmRNAの増幅の場合:
順方向:5’−CGAGCCATCATGGAGATGCCCTCC−3’
逆方向:5’−CATAGCTGCATCCTGCTTGGCCAC−3’
−ヒトADAR2 mRNAの増幅の場合:
順方向:5’−GCTGCGCAGTCTGCCCTGGCCGC−3’
逆方向:5’−GTCATGACGACTCCAGCCAGCAC−3’
−マウスADAR1−150アイソフォームmRNAの増幅の場合:
順方向:5’−GTCTCAAGGGTTCAGGGGACCC−3’
逆方向:5’−CTCCTCTAGGGAATTCCTGGATAC−3’
−マウスADAR1−110アイソフォームmRNAの増幅の場合:
順方向:5’−TCACGAGTGGGCAGCGTCCGAGG−3’
逆方向:5’−CTCCTCTAGGGAATTCCTGGATAC−3’および
−マウスADAR2 mRNAの増幅の場合:
順方向:5’−GCTGCACAGTCTGCCTTGGCTAC−3’
逆方向:5’−GCATAAAGAAACCTGAGCAGGGAC−3’
から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
試験化合物の潜在的な毒性を予測する、または、セロトニン2C受容体(5HTR2C)のADAR依存性A−to−I mRNA編集のmRNA編集メカニズムの変化に関連する病状の処置に有用な治療化合物を選択するためのイン・ビトロの方法であって、
(a)哺乳類細胞株(好ましくは、本発明の方法のために描写された特徴を有するこれらの細胞株)、好ましくは、神経芽細胞腫細胞株、より好ましくは、SH−SY5Y細胞株上で、5HT2CRの編集を変化させる能力に基づいて、化合物をスクリーニングする工程であって、これらの化合物が毒性若しくは副作用を有する、または有しないと知られている、工程;
(b)前記スクリーニングに基づいて、基準パネルのメンバーを選択する工程であって、前記パネルが、5HT2CRの編集を変化させるそれらの能力に関して異なっており、かつ、場合によって、それらの毒性または副作用に関して異なっていても良いメンバーを含んでなる、工程;
(c)前記5HT2CRの編集に関して未知の活性の試験化合物をスクリーニングして、5HT2CRの編集の変化についてその影響を決定し、それにより前記試験化合物に対する5HT2CRの編集プロフィールと、場合によって、ADARの発現とを得る工程;
(d)前記試験化合物と前記基準パネルとに対する5HT2CRの編集プロフィールおよび、場合によって、ADARの発現を比較する工程;
(e)試験化合物により引き起こされる5HTR2Cの編集の変化が基準化合物のそれと同じであるとの推定に基づいて、試験化合物の潜在的な毒性を予測し、または5HTR2CのmRNA編集メカニズムの変化に関連する病状の処置に有用な潜在的治療化合物として試験化合物を選択する工程
を含んでなり、
5HT2CRの編集プロフィールおよび場合によってADARの発現を変化させるそれらの能力に対して前記哺乳類細胞上でスクリーニングする工程が、請求項1〜15の工程c)に対応し、かつ、5−HT2CR mRNAの同定された各アイソフォームの編集プロフィールおよび前記編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的な発現が決定される、方法。
【請求項17】
化合物を試験するに適した動物モデル、好ましくはマウスまたはラットにイン・ビボでその試験化合物を更に投与し、かつ、全血液および/または皮膚サンプル、または脳における5HTR2CのmRNA編集、および/または、発現したADARアイソフォームの変化を決定することにより、この動物モデルにおけるその投与の後のこの試験化合物の潜在的な毒性または副作用を評価する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
患者への試験化合物の投与後に試験化合物の潜在的な毒性若しくは副作用を決定するための、または、5HTR2CのADAR依存性A−to−I mRNA編集のmRNA編集メカニズムの変化に関連する病状の処置に有用な治療化合物を選択するためのキットであって、
(a)編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2、ならびにセロトニン2C受容体(5HTR2C)を発現する、細胞株に由来する哺乳類細胞;および
(b)2段階PCRを含んでなるネステッドPCRを伴う定量的(Q)PCRにより、前記哺乳類細胞のRNA抽出物に存在する5−HT2CR mRNAの各アイソフォームを測定するための2セットのプライマー;ならびに、場合により、
(c)定量的Q−PCRにより、編集酵素ADAR1a、ADAR1bおよびADAR2の定量的発現を測定するための1セットのプライマー
を含んでなる、キット。
【請求項19】
前記哺乳類細胞が、神経芽細胞腫細胞株由来、好ましくは、ヒト神経芽細胞腫細胞株由来であり、より好ましくは、ヒト神経芽細胞腫SH−SY5Y細胞株である、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記哺乳類細胞が、神経芽細胞腫細胞株由来、好ましくは、ヒト神経芽細胞腫細胞株由来であり、より好ましくは、ヒト神経芽細胞腫SH−SY5Y細胞株である、請求項18に記載のキット。
【請求項21】
請求項16のb)において選択された基準パネルおよび/または前記基準パネルに対する5HT2CRの編集プロフィールならびに場合によりADARの発現を更に含んでなる、請求項18〜20のいずれか一項に記載のキット。

【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−511923(P2012−511923A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541457(P2011−541457)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067464
【国際公開番号】WO2010/070074
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(505031783)
【氏名又は名称原語表記】BIOCORTECH
【Fターム(参考)】