説明

気化冷却装置

【課題】 被冷却物が過度に冷却されることがなく、温度ハンチングを防止することのできる気化冷却装置を提供する。
【解決手段】 反応釜1の外周にジャケット部2を取り付ける。ジャケット部2内に冷却流体管路6を配置する。冷却流体管路6に、温度応動部材で形成した冷却流体噴射口を配置する。
反応釜1を冷却する場合は、冷却流体管路6からジャケット部2内へ、所定温度まで上昇した冷却流体だけを噴射することによって、反応釜1が過度に冷却されることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却流体の蒸発潜熱によって冷却室で被冷却物を冷却する気化冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気化冷却装置は、複数の冷却流体噴射口を有する冷却流体管路を接続して、冷却流体噴射口から冷却流体を噴射すると共に、冷却室を吸引手段と接続したもので、被冷却物を気化冷却することができるものである。
【0003】
この気化冷却装置においては、冷却を行う初期段階に、冷却流体供給管内の冷却流体の温度が過度に冷却されすぎていることにより、被冷却物が過度に冷却され温度ハンチングを生じてしまう問題があった。
【特許文献1】特開2006−258316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、被冷却物が過度に冷却されることを防止して温度ハンチングを防ぐことのできる気化冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被冷却物を冷却する冷却室を形成して、当該冷却室に冷却流体を供給する冷却流体供給管を接続すると共に、冷却室を吸引手段と接続したものにおいて、冷却流体供給管の冷却室側端部を、温度応動部材で形成することにより、冷却流体の温度が低い場合は冷却流体が被冷却物側へ供給されることがなく、一方、冷却流体の温度が高い場合は冷却流体が被冷却物側へ供給されるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の気化冷却装置は、冷却流体供給管の冷却室側端部を、温度応動部材で形成したことによって、冷却流体の温度が低い場合は冷却流体が被冷却物側へ供給されることがないために、被冷却物が過度に冷却されることがなく、温度ハンチングを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、冷却流体供給管の冷却室側端部を温度応動部材で形成するものであるが、温度応動部材としては、バイメタルや形状記憶合金等の従来周知のものを使用することができる。
【実施例1】
【0008】
本実施例においては、冷却室として反応釜1のジャケット部2を用いた例を示す。反応釜1の内部に入れた図示しない被冷却物を、ジャケット部2に供給する冷却源としての冷却流体によって冷却するものである。
【0009】
反応釜1のほぼ全周にわたりジャケット部2を形成して、このジャケット部2に吸引手段としての組み合わせ真空ポンプ4と、冷却流体供給管5を接続する。冷却流体供給管5は、ジャケット部2内に配置した冷却流体管路6と接続する。
【0010】
冷却流体供給管5の下方部は、組み合わせ真空ポンプ4の循環路15の一部と接続すると共に、上方部を冷却流体管路6の一端部と接続する。冷却流体管路6は、ジャケット部2内に螺旋状に配置して、図示はしないが冷却流体管路6の反応釜1側に複数の冷却流体噴射口を設ける。
【0011】
本実施例においては、この冷却流体噴射口を温度応動部材としてのバイメタルで形成することにより、冷却流体の温度が所定値よりも低い場合は冷却流体が反応釜1側へ供給されることがなく、一方、冷却流体の温度が所定値よりも高くなるとバイメタルが変形して冷却流体を反応釜1側へ供給することができるものである。
【0012】
本実施例においては、ジャケット部2の左側上部に流量調節弁7を介在した蒸気供給管8を接続する。この蒸気供給管8から、所定圧力すなわち所定温度の加熱用蒸気を、ジャケット部2へ供給することによって、反応釜1内の被加熱物を加熱することもできるものである。
【0013】
ジャケット部2の右側下方に排出管9を接続して、組み合わせ真空ポンプ4のエゼクタ10と接続する。排出管9には、開閉弁11と気液分離器12をそれぞれ取り付ける。気液分離器12は、排出管9から流下してくる蒸気と液体をそれぞれ分離することができるものであり、分離された蒸気は蒸気エゼクタ3へ吸引され、一方、分離された液体は管路20を通って下方のエゼクタ10へ吸引される。
【0014】
蒸気エゼクタ3は、蒸気供給管8を分岐した分岐管21に入口側を接続し、出口側を管路22によって再度、蒸気供給管8の流量調節弁7の手前側に接続したもので、排出管9から流下してくるジャケット部2内の一部の蒸気を、蒸気エゼクタ3で吸引して再度、蒸気供給管8からジャケット部2へ供給することによって、ジャケット部2内の加熱用蒸気を強制的に循環させることができるものである。
【0015】
組み合わせ真空ポンプ4を、エゼクタ10とタンク13と循環ポンプ14を順次に循環路15で連通して形成する。タンク13の上部には、冷却流体としての冷却水を補給する冷却水補給管16を接続する。循環路15の一部を分岐して余剰水排出管17と、上述した冷却流体供給管5をそれぞれ接続する。冷却流体供給管5は、組み合わせ真空ポンプ4を循環する循環流体の一部を、ジャケット部2の冷却流体管路6へ供給することによって、反応釜1を気化冷却することができるものである。
【0016】
ジャケット部2の左側面に、管路23と開閉弁24を介在して組み合わせ真空ポンプ4のエゼクタ10と接続する。この管路23は、ジャケット部2内で発生した冷却流体の気化蒸気をエゼクタ10へ吸引するためのものである。
【0017】
反応釜1内の被冷却物を冷却する場合は、冷却流体供給管5から冷却流体を冷却流体管路6内へ供給して、冷却流体管路6内を冷却流体で満たすと同時に、図示しない冷却流体管路6の反応釜1側に設けた複数の冷却流体噴射口から反応釜1の外表面全体へ冷却流体を噴射する。
【0018】
一方、組み合わせ真空ポンプ4の循環ポンプ14を駆動して、エゼクタ10の発生する吸引力で排出管9または管路23を介してジャケット部2内を所定の圧力状態、例えば、大気圧以下の真空状態、とすることにより、反応釜1の外表面へ噴射される冷却流体が反応釜1内の被冷却物の熱を奪って蒸発気化することにより、その蒸発潜熱によって被冷却物を気化冷却することができる。
【0019】
ジャケット部2で被冷却物を冷却した冷却流体の気化蒸気及び気化しきれなかった冷却流体の一部は、排出管9または管路23を通ってエゼクタ10に吸引されタンク13に至る。
【0020】
エゼクタ10で発生することのできる吸引力は、エゼクタ10を流下する流体の温度によって決まるために、冷却水補給管16から適宜所定温度の冷却水をタンク13へ補給することによって、エゼクタ10を流下する流体温度を調節して、エゼクタ10の吸引力をコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の気化冷却装置の実施例を示す構成図。
【符号の説明】
【0022】
1 反応釜
2 ジャケット部
4 吸引手段
5 冷却流体供給管
6 冷却流体管路
9 排出管
10 エゼクタ
13 タンク
14 循環ポンプ
15 循環路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を冷却する冷却室を形成して、当該冷却室に冷却流体を供給する冷却流体供給管を接続すると共に、冷却室を吸引手段と接続したものにおいて、冷却流体供給管の冷却室側端部を、温度応動部材で形成することにより、冷却流体の温度が低い場合は冷却流体が被冷却物側へ供給されることがなく、一方、冷却流体の温度が高い場合は冷却流体が被冷却物側へ供給されることを特徴とする気化冷却装置。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−122040(P2008−122040A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309525(P2006−309525)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)
【Fターム(参考)】