説明

気密ケース入り熱電変換モジュール

【課題】大型の気密ケースに複数の熱電変換モジュールを封入可能とし、モジュールの実質的充填密度を向上させ、モジュール出力当たりの製造コストを低減する。
【解決手段】気密ケース13を加熱側ケース半体11と冷却側ケース半体12との二部材で構成すると共に、少なくとも一方のケース半体例えば加熱側ケース半体11が内方に収納する熱電変換モジュール5の受熱面と平行な底面11cと他方のケース半体例えば冷却側ケース半体12と接合される周縁11a及び底面11cと周縁11aとの間を繋ぐ側面11bとを有し、かつ側面11bが周方向に波形を成している可撓面32を有する可撓性のケース半体としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電半導体に加わる温度差を利用して発電する熱電変換モジュールに関する。さらに詳述すると、本発明は、熱電変換モジュールの大型化を可能とする気密ケース入りの熱電変換モジュールの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の量産規模の一般的構造の熱電変換素子は、複数対の熱電半導体の上下面に電極を備えることで電気回路を構成し、さらにそれぞれの電極の外側に電気絶縁性を備える板例えばセラミックス板あるいは電気絶縁膜を有する金属板を配置して挟み付けるように接着剤やろう材等の接合材で結合することによって組み立てられてモジュール化されている。
【0003】
この熱電変換モジュールは、高温の空気中などの酸化雰囲気であったり、ゴミ焼却炉の燃焼ガスのような腐食性雰囲気下に設置する場合、熱電半導体や電極部分が外気に晒される構造の熱電変換モジュールでは酸化または腐食の恐れが伴う。したがって、従来の熱電変換モジュールは、このような雰囲気下に剥き出しにして設置できないため、高温ガスをダクトや仕切壁で隔離して、間接的に熱電変換モジュールを加熱する方法が一般的である。しかし、このようなシステムは、ダクトや仕切壁などの構造物が新たに必要になるばかりか、間接加熱のために熱電半導体に加わる温度差が減少する分だけ熱電変換モジュールの発電性能が低下する欠点がある。
【0004】
そこで、本発明者等は、気密ケース入り熱電変換モジュールを提案した(特許文献1)。この気密ケース入り熱電変換モジュールは、気密ケースに複数対の熱電半導体を収容し、これら熱電半導体の高温熱源側の面に熱電半導体を電気的に直列に接続する熱源側電極部を設置すると共に、熱電半導体の低温熱源側の面に熱電半導体を電気的に直列に接続する放熱側電極部を設置し、ケース内部を減圧ないし真空にしたものである。ここで、気密ケースは、熱源側電極部を覆い高温熱源から熱を受ける加熱板と、放熱側電極部を覆い低温熱源へ熱を伝える冷却板と、冷却板と加熱板とを連結し滑り材を介して冷却板と加熱板との間で熱電半導体並びに電極部を挟んで一体化する連結板とで構成されている。そして、気密ケース内の少なくとも熱源側電極部と加熱板との間には加圧状態におけるこれらの間の相対的摺動を許容するように熱伝導性を有する滑り材が介在され、加熱板と冷却板との間に作用する加圧力により、滑り材が熱源側電極部に押圧されて熱源側電極部と一体に保持されるように設けられている。
【0005】
一方、熱電変換モジュールは、平面寸法が4cm角程度のものが一般的で、大きなものでも7cm角程度である。これ以上の大型化は、モジュールに負荷される温度差に起因する熱応力が温度差とモジュール寸法の積にほぼ比例するため、熱電半導体を挟みつける加熱板の熱膨張に起因するせん断力の発生が脆弱な熱電半導体を破壊したり、各部材間の接合面で剥離を生じる恐れがあることから、実現が難しいものとなっている。そこで、従来の気密ケース入り熱電変換モジュールは、4cm角〜7cm角程度の1個の熱電変換モジュールを気密ケースに封入した構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−49872
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、気密ケースには貫通電極を2個備える必要があり、またケース内部には貫通電極とモジュールをリード線で接続する必要があるため、1個の気密ケースに1個の熱電変換モジュールを封入する構造では、モジュールの実質的な充填密度(与えられた伝熱面積に対するモジュール設置面積の比率)が低くなる問題を有している。
【0008】
また、1個の気密ケースに1個の熱電変換モジュールを封入する構造では、モジュール本体に比べて貫通電極などを含む気密ケースのコストが相対的に大きくなり、気密ケース入り熱電変換モジュールの製造コストを押し上げてしまう問題がある。
【0009】
上述の問題を解決するには、1個の気密ケースに複数個の熱電変換モジュールを封入することが望まれる。しかしながら、気密ケース入り熱電変換モジュールにおいては、熱電変換モジュールの熱を受ける面(以下、受熱面と呼ぶ)とケースの受熱面(熱電変換モジュールの受熱面と平行な平面)との密着性が損なわれると、接触熱抵抗が増加して熱電変換モジュールに負荷される温度差が低減して出力低下を招く恐れがあるという問題を抱えている。そして、大型気密ケースに数百度の温度差が付加されると、ケースに熱変形(加熱面に近い方と冷却面に近い方の熱膨張差に起因するケースの面外変形)が生じ、モジュールとケース内面の密着性が損なわれて接触熱抵抗が増加しモジュールの出力低下を招く恐れがある。即ち、熱電変換モジュールを収容する容積を確保するため箱形となる気密ケースは、密着性を上げるために容器の肉厚を薄くして変形し易くしても、モノコック構造であるため構造物としての剛性が強く薄板でもケースが変形できずに密着できない問題がある。モノコック構造の特徴が熱電変換用モジュール用の気密ケースでは欠点となってしまう。このため、熱電変換モジュールの面外変形に対してケースの変形が追従できずに熱電変換モジュールとの間に隙間が発生する虞がある。
【0010】
また、ケースの熱変形によりケースには熱応力が発生する。この熱応力の大きさはケースの大きさおよび上下面の温度差の積に比例する。従って大型ケースほど大きな熱応力が発生し、また大きな温度差が付加されるケースほど大きな熱応力が発生する。その結果、最悪の場合、ケースが破損する恐れがある。即ち、気密ケースは、熱を良く受ける受熱面部分が最も伸びあるい収縮するのに対し、受熱面部分から離れ溶接される周縁部に近づくに従って熱の影響が少なくなりあるいは他方のケース半体からの熱の影響を受け、伸張あるいは収縮し難くなる。したがって、箱形のケースの場合、例えば受熱面が加熱されて膨張する(面積が増加する)と、周縁部と受熱面との間を繋ぐ側面のうち加熱面に近い部分が引っ張られることになる。即ち、側面の薄板には引っ張り応力と剪断応力とが作用する。しかし、薄板といえども箱形(モノコック)構造であるため、引っ張り応力や剪断応力に対する抵抗は強く、箱の一部を構成する側面が部分的に伸びるように変形することは容易ではない。よってケースに大きな応力が発生し、ケースの破損に至る虞がある。
【0011】
したがって、従来の気密ケース入り熱電変換モジュールのケース構造では、大型化することに無理があるのが現状である。特に大きな温度差を負荷される大型の気密ケース入り熱電変換モジュールにおいてこの問題は重要である。
【0012】
本発明は気密ケース入り熱電変換モジュールにおいて、大型の気密ケースに複数の熱電変換モジュールを封入可能とし、モジュールの実質的充填密度を向上させ、モジュール出力当たりの製造コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するため、本発明は、熱電変換モジュールを気密ケースに収容して内部を減圧または真空とする気密ケース入り熱電変換モジュールにおいて、気密ケースは加熱側ケース半体と冷却側ケース半体との二部材で構成されると共に、少なくとも一方のケース半体が内方に収納する前記熱電変換モジュールの受熱面と平行な底面と他方のケース半体と接合される周縁及び底面と周縁との間を繋ぐ側面とを有し、かつ側面が周方向に波形を成している可撓性のケース半体であることを特徴としている。
【0014】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の気密ケース入り熱電変換モジュールにおいて、気密ケースの内部に冷却パネルを設置し、該冷却パネルを気密ケースの外の外部熱媒体供給源から供給される冷却媒体で冷却して熱電変換モジュールの冷却側の受熱面を気密ケース内で直接冷却すると共に熱電モジュールの加熱側の受熱面を加熱側ケース半体を介して外部の熱源との間で熱の授受を行うようにしている。
【0015】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の気密ケース入り熱電変換モジュールにおいて、気密ケースの内部に加熱パネルを設置し、該加熱パネルを気密ケースの外の外部熱媒体供給源から供給される加熱媒体で加熱して熱電変換モジュールの加熱側の受熱面を気密ケース内で直接加熱すると共に熱電モジュールの冷却側の受熱面を冷却側ケース半体を介して外部の熱源との間で熱の授受を行うようにしている。
【0016】
ここで、冷却パネルあるいは加熱パネルは、熱電変換モジュールと気密ケース外部に導出する電極とを備える一方の室と、外部熱媒体供給源から熱媒体を導入し外部熱媒体供給源との間で循環させる流路を形成する他方の室との2室に気密ケースの内部を分画する仕切り板で構成されていることが好ましい。また、冷却パネルあるいは加熱パネルは、ケース半体とは分離された独立した容器から成り、気密ケースを貫通する冷却媒体出入り口配管と接続されて外部熱媒体供給源との間で熱媒体を循環させるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の気密ケース入り熱電変換モジュールによれば、少なくとも一方のケース半体の受熱面となる底面が加熱されて膨張(面積が増加)したり冷却されて収縮する(面積が減少する)と、底面に近い部分の波形の側面のピッチを広げたり狭めたりする変形を起こすことで、底面の膨張あるいは収縮に追従してケース全体を無理なく変形させてその健全性を維持するようにしている。即ち、気密ケースの側面を波形にすることにより、薄板の面方向のしなやかな曲がりで気密ケースの変形を可能にして、膨らみ易いあるいは縮み易い構造とできる。したがって、気密ケースの加熱側のケース半体の底面と冷却側のケース半体の底面との両面間に生ずる垂直方向の温度勾配に起因する熱応力緩和を実現することができる。
【0018】
即ち、ケース半体の側面の底面側寄りでは波の間隔が広がりあるいは縮まり、底面から離れた溶接部・周縁側寄りの側面では波の間隔があまり大きく変化せずに、側面の底面側寄りと溶接部・周縁側寄りとで変形量を異ならせることができる。これにより、気密ケースの受熱面となるケース半体の底面はモジュールの面外変形(平面だったモジュールが凸レンズのように平面ではなくなる変形)に追従するように面方向に伸縮しあるいは変形し、密着状態を維持することができる。したがって、熱電変換モジュールの受熱面とケース半体の底面との接触界面における接触熱抵抗を小さくして、熱電半導体に大きな温度差を与えることができるので、出力低下を招く恐れがない。
【0019】
さらに、本発明の気密ケース入り熱電変換モジュールによれば、1個の気密ケースに複数個の熱電変換モジュールを封入することができるので、モジュールの実質的充填密度(与えられた伝熱面積に対するモジュール設置面積の比率)を向上させ、出力密度(単位面積当たりの出力)を増大させることができる。また、モジュール本体に比べて貫通電極などを含む気密ケースのコストを相対的に下げることができるので、気密ケース入り熱電変換モジュールの製造コストを低減できる。さらに、大型の気密ケースでも大きな温度差での使用が可能になる。
【0020】
また、本発明の気密ケース入り熱電変換モジュールにおいて、外部熱媒体供給源から供給される冷却媒体を循環させる冷却パネルあるいは加熱媒体を循環させる加熱パネルを気密ケース内に内蔵して、熱電変換モジュールの一方の受熱面を気密ケース内で直接冷却あるいは加熱すると共に熱電モジュールの他方の受熱面をケース半体を介して外部の熱源との間で熱の授受を行うようにすれば、気密ケースの片面に加熱流体あるいは冷却流体を流すダクトを加圧接触させて熱の授受を行う場合にも、ダクトを気密ケースの片面に押し付けるだけで済み、加圧機構を簡素化できる。また、気密ケース入り熱電変換モジュールに対向する放射熱源からの放射伝熱あるいは気密ケース入り熱電変換モジュールの周りを流れる熱媒体による対流伝熱によって熱電変換モジュールの一方の受熱面が加熱あるいは冷却されると共に、気密ケース内の冷却パネルあるいは加熱パネルを介して熱電変換モジュールの他方の受熱面が冷却あるいは加熱されるので、加圧接触させる機構あるいは気密ケースと熱媒体を通すダクトとの間での熱伝導性グリースなどの粘性熱伝導物質の塗布を必要としない。依って、本発明にかかる気密ケース入り熱電変換モジュールはその用途において制限を受けることが少ない。このため、高温熱源からの放射熱下、例えば粉末冶金焼結炉や各種電気炉などの工業炉内で発生する被加熱物などから発生する廃熱を放射伝熱の熱源としたり、あるいは産業廃棄物焼却炉などの熱を伴う各種産業設備から排出される廃ガスや廃液などの高温流体を対流伝熱の熱源としたり、さらには固体熱源に接触させて熱伝導により得られる熱を熱源とするなど、あらゆる環境下において、気密ケース入り熱電変換モジュールを配置するだけで使用することができる。
【0021】
さらに、本発明の気密ケース入り熱電変換モジュールにおいて、冷却パネルあるいは加熱パネルを、熱電変換モジュールと気密ケース外部に導出する電極とを備える一方の室と、外部熱媒体供給源から熱媒体を導入し外部熱媒体供給源との間で循環させる流路を形成する他方の室との2室に気密ケースの内部を分画する仕切り板で構成する場合には、ケース半体をプレス加工などで成形する際に熱媒体を流す流路も同時に形成できるので、加工が容易である。しかも、熱電変換モジュールを収納する室と熱媒体が流れる室とを区画する仕切り板で密封するだけの簡単な構造のため液密性の高い構造となり、気密容器内を漏れなく熱媒体が流れて熱電変換モジュールの一面を冷却ないし加熱できる。
【0022】
また、冷却パネルあるいは加熱パネルをケース半体とは分離された独立した密閉容器で構成する場合には、比較的変形し難いケース半体側でも、側面が波形を成している可撓性のケース半体側でも、いずれのケース半体側にでも必要に応じて配置可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の気密ケース入り熱電変換モジュールの一実施形態を示す平面図である。
【図2】同気密ケース入り熱電変換モジュールの側面図である。
【図3】同気密ケース入り熱電変換モジュールのケース半体の側面の波形構造を示す断面図である。
【図4】同気密ケース入り熱電変換モジュールの2つのケース半体を接合の一例を示す断面図である。
【図5】気密ケース内部に9個の熱電変換モジュールを収容した場合の配置例の1つを示す概略平面説明図である。
【図6】可撓性のケース半体の一例を上ケースに適用した実施形態を示す図で、(A)は上から見た斜視図、(B)は下ケースの内部を下から見た斜視図である。
【図7】図1に示す形状の気密ケースに、冷却面(下面)のみにセラミック板を備える片面スケルトン・モジュールを封入した例を示す縦断面図である。
【図8】図1に示す形状の気密ケースに、加熱・冷却面(上下面)共にセラミック板を備える両面基板付きモジュールを封入した例を示す縦断面図である。
【図9】図1に示す形状の気密ケースに、加熱・冷却面(上下面)共にセラミック板を備えない両面スケルトン・モジュールを封入した例を示す縦断面図である。
【図10】図9の実施例において、加熱・冷却面を逆にした実施例を示す縦断面図である。
【図11】図1に示す形状の容器において、両面スケルトン・モジュールおよび冷却パネルを収容した例を示す縦断面図である。
【図12】図9の気密ケースの外観を示す図で、(A)は上からみた斜視図、(B)は下から見た斜視図である。
【図13】図9の実施例において、加熱・冷却面を逆にした実施例を示す縦断面図である。
【図14】加熱側に図1と同様にプレス成形した薄肉の可撓性容器を採用しているが、一方で冷却側には金属板を採用した実施例を示す縦断面図である。
【図15】図14の実施例において、加熱・冷却面を逆にした実施例である。
【図16】図14の実施例において、両面スケルトン・モジュールおよび冷却パネルを収容した実施例を示す縦断面図である。
【図17】図16の実施例において、加熱・冷却面を逆にした実施例を示す縦断面図である。
【図18】加熱側(上面側)に図1と同様にプレス成形した薄肉の可撓性容器を採用しているが、一方で冷却側(下側)には金属ケースを採用した実施例を示す縦断面図である。
【図19】図17の実施例において、加熱・冷却面を逆にした実施例を示す縦断面図である。
【図20】図19の気密ケースの外観を示す図で、(A)は上からみた斜視図、(B)は下から見た斜視図である。
【図21】図19の実施例において、両面スケルトン・モジュールおよび冷却パネルを収容した実施例を示す縦断面図である。
【図22】図21の実施例において、加熱・冷却面を逆にした実施例を示す縦断面図である。
【図23】本発明の熱電変換モジュールの実施の一形態を示す縦断面図である。
【図24】気密ケース内に設ける加熱・冷却パネルの他の実施形態を示すもので、ケース半体と一体に熱媒体の流路と電極用溝部とを形成した下ケースの内部を上から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1から図7に本発明の気密ケース入り熱電変換モジュールの実施の一形態を示す。この気密ケース入り熱電変換モジュール1は、気密性の容器(以下、気密ケースと呼ぶ)13に熱電変換モジュール5を密封して内部を減圧または真空としているものである。尚、熱電変換モジュール5は、図7に示すように、少なくとも一対の熱電半導体2と、熱電半導体2と電気的に接続されている一方の電極3及び他方の電極4から構成され、各電極3,4を直列に接続して端部のリード線8から一対の電極9a,9bに導通させる電気回路を構成している。ここで、一対の電極9a,9bは電気絶縁体18並びに気密シール21を気密ケース13の電極取り出し用孔10との間に介在させて気密ケース13の一隅から気密ケース13の外に貫通するように設けられている。これにより、気密ケース13の密封性を保ちつつ、熱電変換モジュール5が発電した電力を気密ケース13の外側へと取り出すことができるようにしている。熱電変換モジュール5は、例えば図5に示すように、複数モジュールが互いに直列に接続され、その両端部が貫通電極9a,9bに接続されている。これらを例えば9個まとめて一つのケースに収容した場合、ケース本体の価格は9倍とはならず割安になるため、熱電変換モジュールの出力当たりの設備単価を低減できる。また各モジュールを近接して並べることができるため、熱電変換モジュール5を1個毎に気密ケース13に収容する場合に比べて単位面積当たりの熱電変換モジュール設置密度を高くできる。因みに、熱電変換モジュール5が発生した電力は図示を省略する電力回収用ラインを介して蓄電装置や電力利用機器に供給される。
【0026】
気密ケース13は、本実施形態の場合、加熱側ケース半体11と冷却側ケース半体12との二部材で構成されており、熱電変換モジュール5を間に挟んだ状態で周縁11a,12aが接合されて1つの気密性の容器を構成するように設けられている。ここで、少なくとも一方のケース半体、本実施形態の場合には加熱側ケース半体11は、図6に示すように、内方に収納する熱電変換モジュール5の受熱面と平行な底面11cと他方のケース半体12と接合される周縁11a及び底面11cと周縁11aとの間を繋ぐ側面11bとを有し、かつ側面11cが周方向に波形を成して可撓面32を形成するようにした可撓性の容器に構成されている。本発明において、少なくとも一方のケース半体とは、熱電変換モジュール5に温度差を与え発電するときの主たる温度変化を負担する側の熱源と面するケース半体を主に指すものであり、一般には加熱側のケース半体11であるが、冷熱源を利用して温度差を得る場合には冷却側のケース半体12とすることもある。勿論、図示していないが、加熱側と冷却側の双方のケース半体11,12を曲げ変形が容易な肉厚でかつ側面11b,12bが波形となった可撓面32を構成する可撓性のケース半体としても良いことは言うまでもない。さらに、他方のケース半体は、室温に晒されるなど、一方のケース半体に比べて大きな熱負荷の変動(温度変化)を受けることが少なく、一方のケース半体よりも受ける熱応力が遙かに小さいので、可撓性の容器に構成する必要はない。したがって、他方のケース半体は、特定の構造に限定されず、図4あるいは図7から図13に示すような比較的肉厚が厚い(0.1 mm〜0.5 mm程度)薄肉容器構造としても良いし、さらには図18から図22に示すようなより厚肉の容器構造、場合によっては図14から図17に示すような平坦な金属板28であっても良い。
【0027】
図1〜図7に示す実施形態の場合には、加熱側ケース半体11にはプレス成形した薄肉の可撓性容器を採用し、冷却側ケース半体12にも薄肉容器を採用している。加熱側ケース半体11の可撓性容器は、例えば厚さ0.1 mm程度の薄肉の金属シートをプレス加工(深絞り加工)したものであり、その側面11bが周方向に波形を成すように形成された可撓面32を構成することにより、気密ケース13の上下の受熱面間の熱膨張差に対する熱応力緩和が容易な構造とされている。可撓性容器は、圧力差や熱変形によって破断しない程度の強度を維持できる範囲で可能な限り厚みを薄くすることが好ましい。他方、冷却側ケース半体12の薄肉容器は、例えば厚さ0.5 mm程度の薄肉の金属シートをプレス加工したものである。本実施形態では、気密ケース13を貫通する2つの電極9a,9bが少なくとも冷却側ケース半体12の底面12cに溶接される。さらには、必要に応じて冷却媒体または加熱媒体を気密ケース13内に導入して循環させるための出入り口配管19a,19bが冷却側ケース半体12の底面12cに溶接されている。これら貫通電極9a,9b、さらには出入り口配管19a,19bを冷却側ケース半体12に溶接するには、冷却側ケース半体12の厚さは0.5 mm以上あることが望ましい。この気密ケース13の構造では、加熱側ケース半体11および冷却側ケース半体12ともプレス加工品が使えるため、量産による大幅なコスト削減が期待できる。尚、可撓面32を構成する波形の大きさやピッチなどは特定の値に限定されず、熱電変換モジュールの面外変形に追従できる変形を実現できる材質に応じた曲率半径、高さ、ピッチで形成される。例えば、4cm角の4つの熱電変換モジュール5を組み込む気密ケース13を実施する場合、周縁の外寸が縦110mm、横130mm程度の矩形状を成すケース半体に、ピッチ約21mm、半径約7.25mmの波形で、側面が70°の斜面で形成されると共に5.6mmの高さに設定されることが好ましい。この実施形態の場合、厚み0.1mmの薄板で形成される。波形のピッチや半径などは上述の特定の値に限定されず、必要に応じて適宜値で設定される。
【0028】
ここで、加熱側及び冷却側ケース半体11,12は、熱伝導性に優れる材料の薄板で形成されている。例えば、熱電半導体2としてBiTeなどを用いる低温用熱電変換モジュール(ケースの加熱側温度250℃以下)を構成する場合、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ステンレス鋼(例えばSUS304,SUS316)などの使用が好ましい。また、熱電半導体2として例えばSiGeやFeSiなどを用いる高温用熱電変換モジュール(ケースの加熱側温度600℃程度)を構成する場合、例えばチタン(Ti)などの耐熱鋼の使用が好ましい。いずれも素材の厚さは0.1 mm〜0.5 mm程度が適するが、これに限定せずモジュールの大きさや差圧なども考慮して決定することが好ましい。勿論、使用環境に応じて耐熱性、耐蝕性、加工性などの観点から最も最適なものが、使用可能な材質として選定される。なお、1個の気密ケース13に収容できる熱電変換モジュール5の数に制約はないが、加熱側ケース半体11が各熱電変化モジュール5に均等に密着するためには、気密ケース13が正方形に近いことが望ましい。但し、ケース半体の材質は例示したものに限定されず、またプレス成形加工により一体成形されることには限定されない。
【0029】
これら加熱側ケース半体11と冷却側ケース半体12とは、本実施形態の場合、例えば熱電変換モジュール5並びに電極9a,9bなどの付帯装備を収容した後に真空雰囲気下で加熱側ケース半体11および冷却側ケース半体12の周縁11a,12aを重ねて周縁11a,12a部分を電子ビーム溶接で接合することによって、内部を減圧または真空状態として一体化されている。このとき、加熱側ケース半体11と冷却側ケース半体12との肉厚の差を解消するため、肉厚の薄いケース半体即ち加熱側ケース半体11の周縁11aに他方のケース半体即ち冷却側ケース半体12aとほぼ同じ厚さの補助リング23を宛がってビーム溶接によりへり継手24を形成するように溶接されている。尚、フランジ11a,12aの接合は電子ビーム溶接に限られず、ケース材料に適したその他の溶接法やろう材、接着剤などで接合することが可能である。また、フランジ11a,12aを設けずに直接突き合わされた加熱側ケース半体11と冷却側ケース半体12とを接合するようにしても良い。
【0030】
また、気密ケース13の内部即ち熱電変換モジュール収納室17の圧力は、たとえば、当該気密ケース13の外の圧力よりも低いものとして少なくとも運転時に0.4気圧以上の差圧が得られる減圧雰囲気又は真空とすることが好ましい。この差圧の存在により気密ケース13に外からかかる加圧力により、熱電変換モジュール5と加熱側ケース半体11並びに冷却パネルあるいは加熱パネル7とのそれぞれの接触界面において加圧・密着され、接触熱抵抗が低減される。因みに、本発明者等の実験によると(特許文献1参照)、例えば550℃、大気圧下で運転する気密ケース入り熱電変換モジュール1を想定すると、室温(27℃)での封入圧力(PRT)を−0.8気圧(ゲージ圧)とすると、550℃に加熱した際の内圧P550は絶対圧で0.55気圧、ゲージ圧で−0.45気圧となり、十分な温度差を与えるに十分な圧力を付与できることが判明した。この場合に容器7を外部から押しつける圧力は0.45kg/cm=4.5ton/mである。
【0031】
以上のように構成された気密ケースと熱電変換モジュールとの組み立てに際しては、溶接前の加熱側ケース半体11と冷却側ケース半体12との間で構成される気密ケース13の内部高さは、収納する熱電変換モジュール5およびカーボンシートなどの滑り材30やマイカシート27などの各種構成物の合計高さよりも0.2mm程度小さく設定されている。即ち、下側となる冷却側ケース半体12に熱電変換モジュール5および各種構成物を入れ、さらに上側となる加熱側ケース反対11を乗せると、加熱側ケース半体11と冷却側ケース半体12との間には0.2mm程度の隙間が生ずる。この隙間をケースの周囲から治具により押さえつけて真空下で電子ビーム溶接すると、上側の薄肉の可撓性容器たる加熱側ケース半体11と下側の薄肉容器たる冷却側ケース反対12とが変形する(膨らむ)ことにより密封される。電子ビーム溶接は真空チェンバーの中で行うため、容器内部は真空となっている。したがって、収納する熱電変換モジュール5および各種構成物は、波形の可撓面32付近が変形することにより上下のケース半体11,12が完全に密着した状態で1気圧(0.1 MPa=1 kg/cm2)の力で上下から押さえつけられるため、各種構成要素の接触面間に存在する接触熱抵抗が低減でき、熱電変換モジュール5に大きな温度差を与えることができる。
【0032】
本実施形態における熱電変換モジュール5は、図7に示すように電気絶縁性を有する基板6例えばセラミック基板によって支持されている片面スケルトンモジュールとしているが、これに特に限られるものでない。例えば図8に示すような両面を電気絶縁性基板6で支持した両面基板付きモジュールを組みこんだり、図9などに示すような両面を電気絶縁性基板6で支持せずにマイカシート27などの電気絶縁材料などを備えるだけの両面スケルトンモジュールを組み込むことも可能である。ここで、両面スケルトン・モジュールは非常に脆弱で曲げの力に対して弱く破損しやすいため、図9及び図10に示すように、熱電変換モジュール5の冷却側(または少なくとも片面)に例えば厚さ20μm程度のマイカ(雲母)・シート27および厚さ1 mm程度のバックアップ用金属板33を挿入することが好ましい。マイカ・シート27は主に電気絶縁のためであり、同程度の厚さの高分子シートまたはガラス板を用いるようにしても良い。また、バックアップ用金属板33はモジュール本体に曲げ力が作用することを防ぐためであり、熱伝導率の高い金属など(例えば銅板)が適し、剛性を得るに必要な厚さであればよい。このことから、図11及び図13に示すように、熱電変換モジュール5の一方の面に冷却パネル25(あるいは加熱パネル)を設置する場合、あるいは図14や図15に示すように他方のケース半体を厚さ数mmの平坦な金属板とする場合、あるいは図18や図19に示すように他方のケース半体をプレス成形品よりも厚肉の箱形の非可撓性の金属ケースとする場合には、これらが両面スケルトン・モジュールに曲げ力が作用することを防ぐためバックアップ用金属板33を組み込む必要はない。
【0033】
また、電気絶縁性を有する基板6としては、例えばアルミナの板に銅を電極の形状に蒸着した製品がDBC(Direct Bonding Copper)として入手することも可能であり、これを基板6および電極3あるいは4として利用することもできる。また、基板6としては、セラミック基板の他、電気絶縁性接合剤により電極3あるいは4が接合される構造の金属製基板を用いるようにしても良い。いずれにしても、基板6と加熱側ケース半体11の底面11cあるいは冷却側ケース半体12の底面12cとは、例えば接着剤やろう材による接合によって密着されるか、または熱伝導性グリースやカーボンシートなどの滑り材30を介して密着される。
【0034】
このパッケージ熱電変換システム1の加熱側ケース半体11の熱電変換モジュール5と対向する面と電極板3との間には、図7に示すように、熱伝導性を有する滑り材30を介在させることが好ましい。熱伝導性滑り材30の介在により加熱側ケース半体11と電極3との間の熱的連結が図られると共に、加熱側ケース半体11と電極3との間の相対的摺動即ちずれを容易ならしめる。ここで、滑り材30は、少なくとも熱伝導性と摺動性(滑り)を備えているものであるが、より好ましくは電気絶縁性を備えていることである。しかし、電極部3と滑り材30との間に電気絶縁材あるいは電気絶縁層が介在されれば、滑り材30そのものが電気絶縁性を備える必要はない。そこで、滑り材30としては、熱伝導性を有する低摩擦係数のシート材あるいはグリースのような粘性物の使用が好ましい。具体的には、シート材としては、カーボンシートあるいは高分子シートの使用が好ましい。カーボンシートは、摺動性に優れる上に熱伝導性並びに耐熱性にも優れるのでより高い最高使用温度の熱電半導体の使用を可能とすると共に、カーボンシートが介在する界面の熱抵抗をこれが存在しない場合の1/10以下に低減することができる。加えて、図7に示すように、マイカシート27との併用により電気絶縁を確実なものとした上に界面での熱の伝導と滑りを良好なものとすることができる。特に、気密ケース13に収めて使用する場合には、大気中で使用する場合よりも高温まで使用することができる。また、高分子シートは、摺動性に優れると共に電気絶縁性であることから、電極材にも直接接触させることができる。さらに、粘性物質であるグリースを滑り材として加熱側ケース半体11と電極3との間に介在させる場合には、せん断応力の発生を防ぐと共に、粘性物質であるために加熱板と電極部とを隙間なく密着させて当該界面における接触熱抵抗を小さくできる。これにより熱電半導体に大きな温度差を負荷できる。しかも、気密ケース13に密封されているため、熱酸化によるグリースの劣化やグリースの蒸発などの問題が無くなり、グリースを長期に安定して容器と熱源側電極部との間に保持できる。
【0035】
以上のように構成された気密ケース入り熱電変換モジュールによれば、気密ケース13は容器内外の差圧により外側から押圧力を受ける。この押圧力を利用して気密ケース13の加熱側ケース半体11の熱電変換モジュール5と対向する底面11cが熱電変換モジュール5に均一に押しつけられる。そして、気密ケースの加熱側ケース半体11に受ける熱が熱電変換モジュール5に均一に授受される。そして、加熱側ケース半体11の受熱面となる底面11cが加熱されることにより、膨張(面積が増加)を起こしても、側面11bの底面11cに近い部分では波形の可撓面32のピッチが広がるように曲げ変形を起こすことで、底面11cの膨張に追従してケース全体を無理なく変形させる。これにより、加熱側ケース半体11の底面11cは熱電変換モジュール5の面外変形に追従するように面方向に変形し、密着状態を維持することができる。したがって、熱電変換モジュールの受熱面とケース半体の底面との接触界面における接触熱抵抗を小さくして、熱電半導体に大きな温度差を与えることができるので、出力低下を招く恐れがない。
【0036】
また、加熱側ケース半体11の底面11cと電極3との間にマイカシート27と滑り材30を介在させているので、底面11cが熱膨張しても、底面11cを滑り材30の上で面方向に滑らせるので、熱電変換モジュール5には、大きなせん断応力は作用しない。したがって、気密ケース入り熱電変換モジュール1を大型化しても、脆弱な熱電半導体2を破壊したり、接合面で剥離を生じることはない。
【0037】
ここで、気密ケース13の加熱側ケース半体11と冷却側ケース半体12との配置は、図7に示す関係に特に限定されず、例えば図10に示すように、加熱側ケース半体11を下にして、冷却側ケース半体12を上に配置するようにしても良い。そして、可撓面32を有する可撓性容器としては、上述のように必ずしも反対側のケース半体よりも肉薄にする必要はない。可撓面32の波形を曲げ変形させ得る厚さであれば、0.1mmの厚さに限定されるものでなはく、それ以上の厚みを有していても問題はない。例えば、図10に示す実施形態で、可撓性容器としての冷却側ケース半体12には電極9a,9bを貫通させて溶接する必要があるため、厚さ0.5mm程度が望ましい。その反面、2個の貫通電極9a,9bを溶接しない加熱側ケース半体11の厚さは0.1 mm程度としても良い。
【0038】
また、本発明の気密ケース入り熱電変換モジュールは、気密ケース13の上下の受熱面(加熱側ケース半体11の底面11cと冷却側ケース半体12の底面12c)を介して外部から加熱されることに限られず、例えば、図11及び図13に示すように、気密ケース13の内部に冷却パネル25あるいは加熱パネルを配置して気密ケース13の外から導入する熱媒体を循環させてその熱で熱電変換モジュール5の一方の面を直接に冷却あるいは加熱するようにしても良い。ここで、冷却パネル(あるいは加熱パネル)25は、密閉された函体内に熱媒体を通過させる流路を形成したもので、例えばチューブを内蔵したり、あるいは図24に示すようにプレス成形によって底面に溝が形成された函体を蓋で封するようにしたものでも良い。図11の実施例の場合、図1に示す形状の気密ケース13の冷却側ケース半体12側に冷却パネル25を配置すると共にその上にマイカシート27を介して両面スケルトン・モジュール5を収容し、さらに両面スケルトン・モジュール5の上受熱面をマイカシート27とカーボンシート30を介して可撓性容器から成る加熱側ケース半体11の底面11cに接触させるようにしている。この場合、熱電変換モジュール5の下の受熱面は冷却パネル25の内部流路(図示省略)を流れる熱媒体の熱で効率良く冷却される。したがって、気密ケース入り熱電変換モジュール1に加圧機構を用いて外力を付与しなくとも、熱電変換モジュール5には適宜温度差が与えられる。尚、気密ケース13の下部の冷却側ケース半体12の底面12cには、2個の貫通電極9a,9bおよび2本の冷却配管19a,19bが溶接されている。この気密ケースの外観を図12に示す。
【0039】
また、冷却パネル25は他方のケース半体たる薄肉容器側に配置される場合に限られず、波形の可撓面32を有する可撓性容器側に配置するようにしても良い。例えば、図13に示す実施例のように、図11の実施例の気密ケース13の加熱・冷却面を逆にしたものにも適用可能である。この場合の加熱側(下面側)の容器は厚さ0.1 mm程度でよい。一方、冷却側(上面側)の可撓性容器は2個の貫通電極9a,9bおよび2本の冷却配管19a,19bを溶接する必要があるため、厚さ0.5mm程度が望ましい。
【0040】
以上のように気密ケース13の内部に冷却パネル25(あるいは加熱パネル)を配置した気密ケース入り熱電変換モジュール1によると、熱電変換モジュール5に温度差を与える他方の熱源として放射熱や対流熱、あるいはダクトを介した伝熱などを用いることができるので、様々な用途に使用できる。しかも、加熱ダクトまたは冷却ダクトを一方の熱源とする場合にも、気密ケース入り熱電変換モジュール1と加熱ダクトまたは冷却ダクトとを加圧接触させる必要はあるが、従来の熱電変換システムのように加熱ダクトと冷却ダクトの双方で気密ケース入り熱電変換モジュール1を挟んで加圧する方式に比べて、加圧機構を簡素化できる。他方、放射伝熱あるいは対流伝熱を利用する場合にも、気密ケース13内の冷却パネル(あるいは加熱パネル)を流れる冷却流体あるいは加熱流体によって熱電変換モジュール5の一方の受熱面が冷却あるいは加熱されるので、加圧接触させる機構を必要としない。このように、本発明の気密ケース入り熱電変換モジュール1は、気密ケース13内に冷却流体あるいは加熱流体を流すように設けられているので、あらゆる環境下において気密ケース入り熱電変換モジュール1を配置するだけで使用することができるものである。
【0041】
また、気密ケース13を構成する加熱側ケース半体11と冷却側ケース半体12との2部材は、必ずしも図1−図13に示すような、比較的薄肉のプレス成形品を重ね合わせるような構造のものに限られず、伝熱性材料の板とケース半体との組み合わせによって構成するようにしても良い。例えば、図14に示すように、加熱側ケース半体11に図1と同様にプレス成形した薄肉の可撓性容器を採用し、冷却側ケース半体として金属板28を採用するようにしても良い。この場合、金属板28としては、熱伝導率が高く、使用雰囲気における耐食性に優れ、かつ加熱側の可撓性容器と溶接可能なものであることが望まれる。金属板28の厚さはケースの大きさにも依存するが、数mmあればよい。ただし、腐食性雰囲気で使用する場合の腐食代を考慮する場合は、使用条件および耐用年数に応じた厚さとすることが望ましい。尚、この金属板28には2個の貫通電極9a,9bが溶接される。また、金属板28は冷却側に配置される場合に限られず、例えば、図15に示すように、図14の実施例とは反対に加熱側に金属板28を配置するようにしても良い。この場合の冷却側ケース半体(上面側)12を構成する可撓性容器は、2個の貫通電極9a,9bが溶接されるため、厚さ0.5mm程度が望ましい。
【0042】
さらに、冷却パネル25と金属板28とは併用するようにしても良い。例えば、図16に示すように、図14の実施例において、冷却側の金属板28の上に冷却パネル25を配置してからマイカシート27を介在させて両面スケルトン・モジュール5を収容するようにしても良い。この実施例の場合、冷却側ケース半体となる金属板28には、2個の貫通電極9a,9bおよび2本の冷却配管19a,19bが溶接可能となる。また、図17に示すように、金属板28を加熱面側として上方の冷却面側の可撓性容器即ち冷却側ケース半体12に冷却パネル25を配置するようにして、図16の実施例とは逆の配置関係としても良い。この場合の冷却側(上面側)の可撓性容器は2個の貫通電極9a,9bを溶接する必要があるため、厚さ0.5mm程度が望ましい。
【0043】
また、可撓性を必要としない他方のケース半体としては、プレス成形品よりも厚肉の非可撓性のケース半体を採用するようにしても良い。例えば、図18に示すように、加熱側(上面側)に図1と同様にプレス成形した薄肉の可撓性容器から成る加熱側ケース半体11を採用し、冷却側(下側)には非可撓性の金属ケースから成る冷却側ケース半体12を採用するようにしても良い。この場合、非可撓性の金属ケースから成る冷却側ケース半体12には2個の貫通電極9a,9bが溶接されている。また、図19に示すように、非可撓性の金属ケースを加熱面側として、上方の可撓性容器から成る冷却側ケース半体12から2個の貫通電極9a,9bを取り出すようにしても良い。この場合の冷却側(上面側)の可撓性容器は貫通電極9a,9bを溶接する必要があるため、厚さ0.5mm程度が望ましい。尚、図20に図19のケースの外観を示す。
【0044】
さらに、プレス成形品よりも厚肉の非可撓性のケース半体と冷却パネル25(あるいは加熱パネル)とを併用するようにしても良い。例えば、図21に示すように、図19の実施例において、非可撓性の金属ケースを冷却面側として、非可撓性の冷却側ケース半体12の上に冷却パネル25を配置してからマイカシート27を介在させて両面スケルトン・モジュール5を収容するようにしても良い。この実施例の場合、冷却側ケース半体12となる金属ケースには、2個の貫通電極9a,9bおよび2本の冷却配管19a,19bが溶接されている。また、図22に示すように、非可撓性の金属ケースを加熱面側(加熱側ケース半体11)として、上方の冷却面側の可撓性容器即ち冷却側ケース半体12に冷却パネル25を配置するようにして、図21の実施例とは逆の配置関係としても良い。この場合の冷却側(上面側)の可撓性容器は2個の貫通電極9a,9bを溶接する必要があるため、厚さ0.5mm程度が望ましい。
【0045】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述の実施形態では、冷却媒体あるいは加熱媒体を気密ケース13の中に導入して気密ケース13内で熱電変換モジュール5の一方の受熱面を直接冷却あるいは加熱するための手法として気密ケース13とは別体の冷却パネル25あるいは加熱パネル(図示省略)を内蔵する例を挙げて主に説明しているが、場合によっては図23及び図24に示すように、一方のケース半体例えば冷却側ケース半体12の底部に流路16を形成する凹凸を設けて仕切り板7で塞ぐことにより、熱電変換モジュールと気密ケース外部に導出する電極とを備える熱電変換モジュール収納室17と、外部熱媒体供給源から熱媒体を導入し外部熱媒体供給源との間で循環させる流路を形成する熱媒体循環室14との2室に気密ケースの内部を分画し、かつ仕切り板7を冷却パネルあるいは加熱パネルとして機能させることも可能である。
【0046】
この実施形態の気密ケース13では、冷却側ケース半体12の全域を熱媒体循環室14とせずに、一側に電極を取り出し配置するための電極用溝部22を設け、仕切り板7の上方の空間と連通して熱電変換モジュール収納室17の一部を構成させている。この熱媒体循環室14と電極用溝部22とは、堰20によって区切られており、熱媒体循環室14を包囲する堰20の上面に載置するように冷却パネルあるいは加熱パネル7を被せることによって冷却側ケース半体12の一部、即ち熱電変換モジュール5が配置される部分の下にのみ熱媒体が偏り無く均一に流れる流路16が設けられている。仕切り板7は、堰20の上面に段差を設けて形成された受座31に嵌合させて接合されることによって冷却側ケース半体12との間に液密の流路16を形成する。このとき、仕切り板7はその周囲を受座31で支えられると共に内側を複数の仕切り壁15によって支えられている。これにより、図示していない外部の熱媒体供給源から供給される熱媒体で直接仕切り板7を冷却ないし加熱し、熱電変換モジュール基板6を介して熱電変換モジュール5の一面に熱を効率的に与えることを実現できる。なお、熱媒体としては、特定の物質に限られるものではなく、通常には水あるいは油、冷媒などから適宜選択される。熱媒体が偏り無く均一に流れ、熱電変換モジュール5の一面に熱を効率的に与えることを実現できる。また、冷却側ケース半体12は、本実施形態の場合、熱媒体との共存性に優れた材料からなる薄板をプレスによる絞り加工によって図示形状に成形されている。さらに、仕切り板7および出入り口配管19a,19bの材質は、冷却または加熱流体との共存性に優れたものが好ましく、例えば水に対してはステンレス鋼が適する。
【0047】
熱媒体を流す流路16は、例えば図23及び24に示すように、冷却側ケース半体12の底面から仕切り板7へ向けて隆起しかつ互いに入り組むように交互に逆方向に突出する複数の仕切り壁15によって形成された幾重にも曲がりくねった1本の溝であり、その両端に熱媒体の出入り口となる入口管19aと出口管19bとがそれぞれ形成されている。熱媒体の入口管19aと出口管19bとは、冷却側ケース半体12の底面に開口された孔29にろう付けや溶接で接合された配管によって構成され、図示していない外部の熱媒体供給源と接続されている。これにより、熱媒体循環室14には、外部熱媒体供給源(図示省略)から熱媒体を導入し外部熱媒体供給源との間で循環させる流路16を形成し、仕切り板7を介在させて流路16内を循環する熱媒体で熱電半導体2の一方の面に熱授受を図るようにしている。
【0048】
電極9a,9bおよび熱媒体出入口配管19a,19bの一方または両方を気密ケース13の底面ではなく側面あるいは上面(加熱側ケース半体11の底面11c)に設置することもできる。電極9a,9bを冷却側ケース半体12の側面に設置する場合には、冷却側ケース半体12全体を仕切り板7で2層に分け、仕切り板7の上の層に熱電変換モジュール5と電極9a,9bが置かれる熱電変換モジュール収納室17が形成され、仕切り板7の下の層に冷却用または加熱用の熱媒体を流す流路16が全面的に形成することができる。
【0049】
また、上述の図11〜図22の各実施例においては、両面スケルトン・モジュールを封入したもので説明しているが、これに特に限られず、片面スケルトン・モジュールでも両面基板付きモジュールでも良い。
【実施例】
【0050】
(パネルおよび出入り口配管の材質・形状)
ケースの材質は、耐熱性、耐蝕性、加工性などの観点で選択する。例えば熱電半導体としてBiTeなどを用いる低温用モジュール(ケースの加熱側温度250℃以下)では、アルミニウム(Al)、銅(Cu) およびステンレス鋼(SUS304,SUS316など)などが使用できる。また熱電半導体としてSiGeなどを用いる高温用モジュール(ケースの加熱側温度600℃程度)では、チタン(Ti)などが使用できる。いずれも素材の厚さは0.1 mm〜0.5 mm程度が適するが、これに限定せずモジュールの大きさや差圧なども考慮して決定するべきである。冷却または加熱パネルおよび出入り口配管の材質は、冷却または加熱媒体との共存性に優れたものが好ましい。例えば水に対してはステンレス鋼などが適する。
(冷却または加熱媒体の流量)
ここで、冷却流体として水を使用する場合において、水の入り口温度が25℃で、出口温度を45℃とする場合の必要流量は、以下の手順で求められる。因みに、熱電変換モジュールの変換効率を10%、1個当たりの出力を10Wとすると、冷却水で除去すべき熱量は90Wである。
P = WCpΔT
ここに P :冷却水で除去すべき熱量 (=90 W=0.09 kW)
W :水の流量 (kg/s)
Cp :水の比熱 (=4.2 kWs/kgK)
ΔT :水の出入り口温度差 (=20 K)
W = P/(CpΔT) = 0.09/(4.2×20)
=0.0011(kg/s)= 1.1(g/s)
また、冷却パネル25の内部での水の流速は、次式で計算される。冷却パネル25内の流路の流路幅を7mm、流路高さを5mmとすると、流路断面積は0.35cmである。よって、
V=Q/A=1.1/0.35=3.1 (cm/s)
ここにV:冷却水流速(cm/s)
Q:冷却水流量(=1.1 cm3/s)
A:流路断面積(=0.35 cm2
前記流速3.1(cm/s)であれば、その流動圧損は極めて小さく問題とならない程度である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、高温熱源からの放射で加熱する熱電変換モジュール、例えば粉末冶金焼結炉や各種電気炉などの工業炉の内部において若しくは炉外部で被加熱部品から放射される廃熱を利用して発電する熱電変換モジュール、あるいは産業廃棄物焼却炉などの熱を利用あるいは伴う各種産業設備から排出される廃ガスや廃液などの高温流体の廃熱を対流伝熱により利用して発電する熱電変換モジュールや、さらには固体の加熱源あるいは冷却源に接触させて加熱あるいは冷却して発電する熱電変換モジュールに適するものであり、あらゆる環境下において気密ケース入り熱電変換モジュールを配置するだけで使用することができるものである。
【符号の説明】
【0052】
1 気密ケース入り熱電変換モジュール
5 熱電変換モジュール
7 仕切り板(冷却パネルあるいは加熱パネルとして機能する)
11 加熱側ケース半体
11a 周縁
11b 側面
11c 底面
12 冷却側ケース半体
12a 周縁
12b 側面
12c 底面
13 気密ケース
14 熱媒体循環室
16 熱媒体が循環する流路
17 熱電変換モジュール収納室
19a,19b 図示しない熱媒体供給源と接続される熱媒体出入り口(配管)
25 冷却パネル
28 他方のケース半体を構成する金属板
32 可撓面(波形の側面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電変換モジュールを気密ケースに収容して内部を減圧または真空とする気密ケース入り熱電変換モジュールにおいて、前記気密ケースは加熱側ケース半体と冷却側ケース半体との二部材で構成されると共に、少なくとも一方の前記ケース半体が内方に収納する前記熱電変換モジュールの受熱面と平行な底面と他方の前記ケース半体と接合される周縁及び前記底面と前記周縁との間を繋ぐ側面とを有し、かつ前記側面が周方向に波形を成している可撓性のケース半体であることを特徴とする気密ケース入り熱電変換モジュール。
【請求項2】
前記気密ケースの内部に冷却パネルを設置し、該冷却パネルを前記気密ケースの外の外部熱媒体供給源から供給される冷却媒体で冷却して前記熱電変換モジュールの冷却側の受熱面を前記気密ケース内で直接冷却すると共に前記熱電モジュールの加熱側の受熱面を前記加熱側ケース半体を介して外部の熱源との間で熱の授受を行うものである請求項1記載の気密ケース入り熱電変換モジュール。
【請求項3】
前記気密ケースの内部に加熱パネルを設置し、該加熱パネルを前記気密ケースの外の外部熱媒体供給源から供給される加熱媒体で加熱して前記熱電変換モジュールの加熱側の受熱面を前記気密ケース内で直接加熱すると共に前記熱電モジュールの冷却側の受熱面を前記冷却側ケース半体を介して外部の熱源との間で熱の授受を行うものである請求項1記載の気密ケース入り熱電変換モジュール。
【請求項4】
前記冷却パネルあるいは加熱パネルは、熱電変換モジュールと気密ケース外部に導出する電極とを備える一方の室と、外部熱媒体供給源から熱媒体を導入し外部熱媒体供給源との間で循環させる流路を形成する他方の室との2室に前記気密ケースの内部を分画する仕切り板で構成されているものである請求項2または3記載の気密ケース入り熱電変換モジュール。
【請求項5】
前記冷却パネルあるいは加熱パネルは、前記ケース半体とは分離された独立した容器から成り、前記気密ケースを貫通する冷却媒体出入り口配管と接続されて外部熱媒体供給源との間で熱媒体を循環させるものである請求項2または3記載の気密ケース入り熱電変換モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図12】
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【図20】
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【図23】
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【図24】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【図22】
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