説明

気密容器、画像表示装置及びこれらの製造方法

【課題】第一及び第二の基板1,2を、両基板1,2間に密閉空間を規定する接合材で接合した気密容器30について、接合材がガラスフリットのような脆性材料であっても良好な接合強度と気密性が得られるようにすることを目的とする。
【解決手段】両基板1,2間に密閉空間を規定する第一の接合材41の両側に設けられた第二の接合材42が、両基板1,2間に挟み込まれて、第一の接合材41と共に両基板1,2を接合しており、しかも第一の接合材41の高さが第二の接合材42の高さより高く、両基板1,2が、少なくとも一方が弾性変形して第一の接合材41及び第二の接合材41で接合されていることにより、第一の接合材41の高さ方向に圧縮力が加えられている気密容器30とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隙間を開けて対向する第一の基板と第二の基板を、両基板間に挟み込まれ、隙間の周囲を囲んで内側に密閉空間を規定する接合材で接合した気密容器、この気密容器を外囲器とする画像表示装置及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機LEDディスプレイ(OLED)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)等のフラットパネル型の画像表示装置が知られている。これらの画像表示装置は、互いに対向するガラス板等の二枚の基板を気密接合することで製造される、内部空間が外部空間に対して仕切られた外囲器を備えている。フラットパネル型の画像表示装置の外囲器等の気密容器を製造するには、互いに対向する基板の間に、必要に応じて間隔規定部材及びそれを接合するための局所的な第二の接合材を配置し、周辺部に連続した枠状に第二の接合材を配置して、加熱接合を行う。第二の接合材の加熱方法としては、基板全体を加熱炉によってベークする方法や、局所加熱により第二の接合材周辺を選択的に加熱する方法が知られている。局所加熱は、加熱冷却時間、加熱に要するエネルギー、生産性、容器の熱変形防止、容器内部に配置された機能デバイスの熱劣化防止等の観点から、全体加熱より有利である。特に、局所加熱の手段としてレーザ光が知られている。局所加熱手段による気密容器の製造方法は、内部に機能デバイスを具備しない真空断熱ガラスの製造方法として適用可能であることも知られている。
【0003】
特許文献1には、有機LEDディスプレイ(OLED)の封止構造が開示されている。即ち、OLEDの封止構造として、第一の基板と第二の基板の間に、有機発光素子部を囲む二重のループパターンにガラスフリットを配置し、二重に接合して、一重に比して封止力を高めた構造が開示されている。また、特許文献2には、やはりOLEDの封止構造として、第一の基板と第二の基板の間に、有機発光素子部を囲んでガラスフリットを配置し、このガラスフリットの外側に接着剤を配置して、二枚の基板間の接合強度を補強した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開2009/0009063号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開2008/0143247号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、気密容器の温度変化は、全体に均一には生じないことが多い。特許文献1の内外のガラスフリットの熱膨張係数が同じでも、例えば内外のガラスフリット間に温度差を生じた場合、内外のガラスフリットの膨張量又は収縮量に差を生じる。そして、この膨張量又は収縮量の差によって低くなった方のガラスフリットに高さ方向の引っ張り力が作用することになる。また、内外のガラスフリットの一方又は両者の長さ方向に温度差を生じた場合、当該ガラスフリットの長さ方向に高低差を生じ、低い部分に高さ方向の引っ張り力が作用することになる。一方、特許文献2のガラスフリットと接着剤は、通常、熱膨張係数が相違する。しかし、この場合でも、ガラスフリットに比して接着剤が大きく膨張したり、接着剤に比してガラスフリットが大きく収縮すると、ガラスフリットに高さ方向の引っ張り力が作用する。また、ガラスフリットの長さ方向に温度差を生じると、ガラスフリットの長さ方向に高低差を生じ、低い部分に高さ方向の引っ張り力が作用することになる。
【0006】
ガラスフリットは脆性材料であり、引っ張り力に対する強度は、圧縮力に対する強度に比して極めて乏しい。このため、上記のように、ガラスフリットに対して、その高さ方向の引っ張り力が作用すると、ガラスフリットが破損し、気密性が損なわれやすい。前記特許文献1の封止構造の場合二重にガラスフリットを設けており、前記特許文献2の封止構造の場合ガラスフリットと接着剤を併用しているので、いずれもある程度の二枚の基板の接合強度の向上は得られる。しかし、上記の理由から、気密性についての信頼度が十分とはいえない問題がある。例えばOLEDの外囲器を構成する気密容器の気密性が損なわれると、外部雰囲気が有機発光素子部に入り、有機発光素子を劣化させてしまう問題を生じる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するもので、第一及び第二の基板を、両基板間に密閉空間を規定する接合材で接合した気密容器について、接合材がガラスフリットのような脆性材料であっても良好な接合強度と気密性が得られるようにすることを目的とする。また、本発明は、上記気密容器を外囲器とする画像表示装置の信頼度を向上させると共に、上記気密容器及びこの気密容器を外囲器とする画像表示装置の簡便な製造方法を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一は、隙間を開けて対向する第一の基板と第二の基板との間に、前記隙間の周囲を囲んで内側に密閉空間を規定すると共に、前記第一の基板と第二の基板とを接合する第一の接合材が挟み込まれた気密容器において、
前記第一の接合材の内側、外側又は両側に設けられた第二の接合材が、前記第一の基板と第二の基板との間に挟み込まれて、前記第一の接合材と共に前記第一の基板と第二の基板とを接合しており、しかも前記第一の接合材の高さが前記第二の接合材の高さより高く、前記第一の基板と第二の基板とが、少なくとも一方が弾性変形して前記第一の接合材及び第二の接合材で接合されていることにより、第一の接合材の高さ方向に圧縮力が加えられていることを特徴とする気密容器を提供するものである。
【0009】
本発明の第二は、上記気密容器を外囲器として備えていることを特徴とする画像表示装置を提供するものである。
【0010】
本発明の第三は、隙間を開けて対向する第一の基板と第二の基板との間に、前記隙間の周囲を囲んで内側に密閉空間を規定すると共に、前記第一の基板と第二の基板とを接合する第一の接合材を挟み込んだ気密容器の製造方法において、
前記第一の基板又は第二の基板に前記第一の接合材を配置する工程と、
前記第一の接合材を配置する工程の前、同時又は後の工程であって、前記第一の基板又は第二の基板に、前記第一の基板と第二の基板を対向させた時に前記第一の接合材の内側、外側又は両側に位置する第二の接合材を配置する工程と、
前記第一の基板と第二の基板とを、前記第一の接合材と第二の接合材を両者間に挟み込んで対向配置する工程と、
前記第一の接合材で前記第一の基板と第二の基板を前記第一の接合材で接合する工程と、
前記第一の基板と第二の基板の少なくとも一方を弾性変形させて、前記第二の接合材で前記第一の基板と第二の基板を前記第二の接合材で接合し、前記第一の接合材の高さが前記第二の接合材の高さより高く、しかも前記第一の基板と第二の基板とが、少なくとも一方が弾性変形して前記第一の接合材及び第二の接合材で接合されていることにより、第一の接合材の高さ方向に圧縮力が加えられた状態を構成する工程と
を有することを特徴とする気密容器の製造方法を提供するものである。
【0011】
本発明の第四は、隙間を開けて対向する第一の基板と第二の基板との間に、前記隙間の周囲を囲んで内側に密閉空間を規定すると共に、前記第一の基板と第二の基板とを接合する第一の接合材を挟み込んだ気密容器の製造方法において、
前記第一の基板又は第二の基板に前記第一の接合材を配置する工程と、
前記第一の接合材を配置する工程の前、同時又は後の工程であって、前記第一の基板又は第二の基板に、前記第一の基板と第二の基板を対向させた時に前記第一の接合材の内側、外側又は両側に位置する第二の接合材を配置する工程と、
前記第一の基板と第二の基板とを、前記第一の接合材と第二の接合材を両者間に挟み込んで対向配置する工程と、
前記第一の基板と第二の基板の少なくとも一方を弾性変形させて、前記第二の接合材で前記第一の基板と第二の基板を接合し、前記第一の接合材の高さが前記第二の接合材の高さより高く、しかも前記第一の基板と第二の基板とが、少なくとも一方が弾性変形して前記第二の接合材で接合されていることにより、第一の接合材の高さ方向に圧縮力が加えられた状態を構成する工程と
前記第一の接合材の高さ方向に圧縮力が加えられた状態を維持したまま、前記第一の接合材で前記第一の基板と第二の基板を接合する工程と
を有することを特徴とする気密容器の製造方法を提供するものである。
【0012】
本発明の第五は、隙間を開けて対向する第一の基板と第二の基板との間に、前記隙間の周囲を囲んで内側に密閉空間を規定すると共に、前記第一の基板と第二の基板とを接合する第一の接合材を挟み込んだ気密容器の製造方法において、
前記第一の基板又は第二の基板に前記第一の接合材を配置する工程と、
前記第一の基板と第二の基板とを、前記第一の接合材を両者間に挟み込んで対向配置する工程と、
前記第一の接合材で前記第一の基板と第二の基板を接合する工程と、
前記第一の接合材で接合された前記第一の基板と第二の基板との間の前記隙間の外周縁部に第二の接合材を注入する工程と、
前記第一の基板と第二の基板の少なくとも一方を弾性変形させて、前記第二の接合材で前記第一の基板と第二の基板を前記接合し、前記第一の接合材の高さが前記第二の接合材の高さより高く、しかも前記第一の基板と第二の基板とが、少なくとも一方が弾性変形して前記第一の接合材及び第二の接合材で接合されていることにより、第一の接合材の高さ方向に圧縮力が加えられた状態を構成する工程と
を有することを特徴とする気密容器の製造方法を提供するものである。
【0013】
本発明の第六は、上記本発明の気密容器の製造方法で製造された気密容器を外囲器として構成することを特徴とする画像表示装置の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の気密容器においては、第一の基板と第二の基板の少なくとも一方が弾性変形し、第一の接合材の高さ方向に継続的に圧縮力が作用している状態となっている。従って、気密容器に温度分布を生じても、第一の接合材の高さ方向に引っ張り力が作用しにくく、第一の接合材としてガラスフリットを用いても、気密性が維持しやすく、その信頼度が向上する。また、第一の基板と第二の基板が、第一の接合材だけでなく、第二の接合材によっても接合されているので、第一の接合材だけの場合に比して接合力を向上させることができる。
【0015】
本発明の画像表示装置によれば、上記気密性の確実な維持と接合強度の向上が得られるので、損傷しにくい信頼度の高い画像表示装置が得られる。
【0016】
更に本発明の気密容器の製造方法及び画像表示装置の製造方法によれば、上記気密容器及びこの気密容器を外囲器とする画像表示装置を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る気密容器の第一の例を示す模式図で、(a)は一部の断面模式図、(b)は第二の基板を透視した状態の一部の平面模式図、(c)は発光部周りの拡大断面模式図である。
【図2】第一の例に係る気密容器の製造方法の手順の一例を示す模式図である。
【図3】第一の例に係る気密容器の製造方法の手順の他の例を示す模式図である。
【図4】本発明に係る気密容器の第二の例を示す図で、(a)は一部の断面模式図、(b)は第二の基板を透視した状態の一部の平面模式図である。
【図5】第二の例に係る気密容器の製造方法の手順の一例を示す模式図である。
【図6】本発明に係る気密容器の第三の例を示す図で、(a)は一部の断面模式図、(b)は第二の基板を透視した状態の一部の平面模式図である。
【図7】第三の例に係る気密容器の製造方法の手順の一例を示す模式図である。
【図8】本発明の気密容器を使用した有機EL表示装置を製造する場合の説明図で、(a)は平面模式図、(b)は断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の気密容器は、内部空間が外部雰囲気から気密遮断されることが必要なデバイスを有するFED、OLED、PDP等の画像表示装置の外囲器として適用することができる。また、本発明の気密容器の製造方法は、この外囲器の製造方法として適用することができる。更に、本発明の気密容器及びその製造方法は、画像表示装置の外囲器及びその製造方法だけでなく、対向するガラス等の基板の周縁部に、気密性が要求される接合部を有する気密容器に広く適用することができる。例えば、本発明の気密容器及びその製造方法は、真空断熱ガラス及びその製造方法に適用することができる。
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明について説明する。なお、以下の説明において、特に図示又は記載されていない部分に関しては、当該技術分野における周知技術又は公知技術を適用することができる。また、以下に説明する事項は、あくまでも本発明の実施形態の一例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。更に、以下の説明で参照する図面において、同じ符号は同様の構成要素を示す。
【0020】
まず、本発明の気密容器の第一の例ついて図1に基づいて説明する。
【0021】
本例の気密容器30はOLEDの外囲器を構成するものとなっている。第一の基板1には、図1(c)に示されるように、TFT回路12、平坦化膜13及びコンタクトホール14と、発光部3を構成する下部電極31、有機EL層32、上部電極33及び保護層35が設けられている。第一の基板1の発光部3等の設置面側を内側にして、第一の基板1と第二の基板2が、両者間に隙間を開けて対向配置されている。第一の基板1と第二の基板2の間には、両者間の隙間の周囲を囲んで内側に発光部3を収容した密閉空間を規定する枠状に設けられた第一の接合材41が挟み込まれている。本例の気密容器30は、画像表示装置用の外囲器として適用する利用するものであることから、第一の接合材41は、略長方形の枠状になっている。しかし、第一の接合材41の設置形状は、気密容器30の用途に応じて、閉じた環状形状であれば、例えば正方形、長円形等、任意の形状とすることができる。
【0022】
第一の接合材41は、連続した周状に配置されており、第一の基板1と、第二の基板2とを接合し、それにより、第一の基板1、第二の基板2及び第一の接合材41で囲まれた密閉空間を形成している。第一の基板1と二の基板2を接合すると共に、内側の密閉空間に気密性を付与する第一の接合材41は、通常、高い遮蔽性が得られるガラスフリットが用いられる。しかし、密閉空間の圧力によっては、無機接着剤や有機接着剤を用いることもできる。ガラスフリットを用いる場合、粘度が負の温度係数(温度依存性)を有し、高温で軟化し、第一の基板1及び第二の基板2よりも軟化点が低いことが好ましい。第一の接合材41をガラスフリットとする場合、ガラスフリットのペーストを付設して焼成したものでも、シートフリットを付設したものでもよい。また、後述する局所加熱光51(図2参照)の波長に対して高い吸収性を示すことが好ましい。
【0023】
本例では、上記第一の接合材41の内側と外側の両側にそれぞれ第二の接合材42が配置されている。但し、後述するように、第二の接合材41は第一の接合材1の内側と外側のいずれか一方のみとすることもできる。第二の接合材42としては、例えば、第一の接合材41と同様のガラスフリットの他、無機接着剤、有機接着剤等を用いることができる。この第二の接合材42には、後述するように、高さ方向(第一の基板1と第二の基板2の対向方向)に引っ張り力が加わるので、第一の接合材41よりじん性の高い材料が好ましい。第二の接合材42は、連続した周状である必要はなく、線分状、破線状、点状とすることもできる。また、第二の接合材42として無機接着剤又は有機接着剤を用いる場合、高い真空度下ではガスを発生させやすいので、密閉空間の真空度に影響を与えないよう、第一の接合材1の外側のみに設けることが好ましい。
【0024】
第二の接合材42は、第一の基板1と第二の基板2の接合強度を高める上で、第一の接合材41に平行に沿って設けることが好ましい。第一の接合材41との間に空気を封じ込めてしまうと、この封じ込めた空気の膨張によって接合部に負荷が加わる場合がある。このため、内周側の第二の接合材42は、第一の接合材41と第二の接合材42との間の空間を第二の接合材42の内側の密閉空間と連通させる不連続部を有することが好ましい。また、外周側の第二の接合材42は、第一の接合材41と第二の接合材42との間の空間を外部空間と連通させる不連続部を有することが好ましい。本例においては、長方形状に設けられた第一の接合材41のコーナー部に対応する位置に不連続部が形成されている。前記した破線や点状に設けることでも不連続部を形成することができる。そして、第二の接合材42も、第一の基板1と第二の基板2の間に挟み込まれ、この両者を接合している。
【0025】
第一の接合材41の高さ(第一の基板1と第二の基板2の対向方向の間隔)は、第二の接合材42の高さよりも大きくなっている。このため、第一の基板1と第二の基板2は、第一の接合材41の幅方向中央を頂点とした凸形状に弾性変形している。この第一の基板1と第二の基板2の変形により、第一の接合材41にはその高さ方向に圧縮力が加えられている。また、第二の接合材42には高さ方向に引っ張り力が作用している。なお、本例においては第一の基板1と第二の基板2の両者が弾性変形したものとなっているが、いずれか一方のみが弾性変形したものでもよい。
【0026】
第一の接合材41の幅方向中央部の高さは、第一の接合材41の幅方向第二の第二の接合材側の端部の高さよりも大きくなっている。つまり、第一の接合材41の上面と下面は、それぞれ幅方向に山形になっている。このため、第一の基板1と第二の基板2の弾性変形部分における応力集中が生じにくくなっており、弾性変形部の破損を防止しやすくなっている。
【0027】
第一の基板1及び第二の基板2は、第一の接合材41に加えて第二の接合材42によっても接合されているため、第一の接合材41単独の場合に比して接合強度が向上する。従って、気密容器30の機械的強度が増し、機械的外乱(衝撃、振動、歪み)により気密容器30が破損することを防ぐことができる。特に本例のように、第二の接合材42を第一の接合材41の両側に設けると、第一の基板1と第二の基板2の一層高い接合強度が得やすい。また、第一の接合材41の高さ方向に継続的に圧縮力が加えられているので、第一の接合材41の高さ方向に引っ張り力が作用しにくく、第一の接合材41をガラスフリットとしても、気密性の維持が容易となり、信頼度を高めることができる。
【0028】
次に、第一の接合材41と第二の接合材42としてガラスフリットを用いた場合を例に、上記気密容器30の製造方法について説明する。
【0029】
まず、図2に示される製造方法について説明する。第一の基板1の発光部3を取り囲むように周状に第一の接合材41を配置する。第一の接合材41は印刷焼成にて形成することができる。但し、必ずしも第一の基板1に第一の接合材41を印刷焼成する必要はなく、第二の基板2に印刷焼成しても良い。また、第一の接合材41は、印刷焼成による形成ではなく、第一の基板1と第二の基板2との間にシートフリットを配置することで設置することもできる。
【0030】
上記第一の接合材41を配置する工程で配置する予定又は配置した第一の接合材41の内側及び外側に第二の接合材42を配置する。本例では第一の接合材41の内側及び外側の両側に配置しているが、後述するように、いずれか一方のみとすることもできる。第二の接合材42は、第一の基板1と第二の基板2のどちらに形成しても良い。第一の接合材41を設けた第一の基板1に形成する場合、第一の接合材41と並べて形成すればよい。第一の接合材41を設ける前の第一の基板又は第二の基板2に形成する場合、第一の基板1と第二の基板2を対向させた時に、第一の接合材41の内側と外側となる位置に形成すればよい。また、第二の第二の接合材42の形状、位置は、特に限定するものはないが、好適には、第一の接合材41に平行で不連続部を有する配置である。
【0031】
第二の接合材42も第一の接合材41と同様の材料を印刷焼成することで形成しても良いし、シートフリットを配置しても良い。以下の説明では、第一の接合材41と同様の材料を印刷焼成することで形成したものとする。本例においては、第二の接合材42は第一の接合材41より低く形成する。
【0032】
第二の接合材42を配置する工程は、第一の接合材41を配置する工程の前、同時又は後のいずれでもよい。第二の接合材42と第一の接合材41を同じガラスフリットとする場合、両者を一緒に印刷焼成することで、両者の配置と形成を同時に行うことができる。
【0033】
第一の接合材41及び第二の接合材42を形成し配置した後、周状の第一の接合材41を介して第一の基板1と第二の基板2とを合わせる。本例では、第一の接合材41は、第二の接合材42よりも高く形成しているため、第二の接合材42は、第一の基板1と第二の基板2の両方に接することはない。一方、第一の接合材41は第一の基板1と第二の基板2の両方に接する。
【0034】
次に、第一の基板1と第二の基板2に挟持された第一の接合材41の長さ方向に沿って局所加熱光51を走査する。光源としては半導体レーザが好適である。第一の接合材41を局所加熱する性能や、局所加熱光51の照射側となる第二の基板2の透過性等の観点から、赤外域に波長を有する加工用半導体レーザが好ましい。なお、図面では局所加熱光51を第二基板2側から照射しているが、第一の基板1側から照射することもできる。
【0035】
第一の接合材41は、局所加熱光51の照射によって、長さ方向に沿って順次加熱されて溶融して第二の基板2に密着し、その後軟化点以下まで冷却される。これにより、第一の基板1と第二の基板2が第一の接合材41を介して接合される。第一の接合材41の全てを封止し、接合工程が終了すると、第一の接合材41で囲まれた内部空間が気密な気密容器30が完成する。
【0036】
次に、第一の基板1と第二の基板2の一方又は両者を押圧して、第一の基板1と第二の基板2の少なくとも一方を弾性変形させて、第二の接合材42を第一の基板1と第二の基板2で挟圧する。この状態で第二の接合材42を局部加熱により溶融させた後、第二の接合材42を硬化させて、第二の接合材42によっても第一の基板1と第二の基板2を接合する。第一の基板1と第二の基板2の一方のみを押圧するより両者を押圧した方が、第二の接合材42を第一の基板1と第二の基板2の両者に圧接させやすい。第二の接合材42の溶融は、第一の接合材41と同様に、第二の接合材42の長さ方向に沿って局所加熱光51を走査させることで行うことができる。第二の接合材42は局所加熱光51の照射によって長さ方向に沿って順次加熱されて溶融し、その後軟化点以下まで冷却される。これにより、第一の基板1と第二の基板2が第二の接合材42によっても接合される。第二の接合材42の全てを接合して、第一の基板1及び第二の基板2の接合工程が終了する。
【0037】
なお、第一の接合材41、第二の接合材42による接合は、ガラスフリットを用いた場合には加熱して溶融させて行う。しかし、無機接着剤や有機接着剤等を用いる場合、加熱溶融ではなく、第一の基板1と第二の基板2を接合状態に保持し、そのまま硬化させることで接合することができる。また、無機接着剤や有機接着剤が紫外線硬化型である場合、挟圧状態下で紫外線の照射を行うことで硬化させて接合することができる。
【0038】
この状態で気密容器30の製造工程を終了してもよいが、更にこの状態で局部加熱により再度第一の接合材41を加熱し、第一の接合材41の高さ方向に圧縮力が加えられた状態を維持したまま軟化させることが好ましい。この再加熱を行うことにより、第一の接合材41の幅方向前記第二の接合材側の端部の高さを押し縮めて、第一の接合材41の幅方向中央部の高さを第一の接合材41の幅方向第二の接合材42側の端部の高さより高くすることができる。そして、これにより、第一の基板1と第二の基板2の弾性変形部分への応力集中を防止しやすくすることができる。上記再加熱は、例えば局所加熱光51で第一の接合材41を長さ方向に順次走査する局部加熱で行っても、加熱炉による全体加熱で行ってもよい。
【0039】
図1に示される第一の例に係る気密容器30は、図3に示される手順でも製造することができる。第一の接合材41及び第二の接合材42の配置及び形成は図2で説明した方法と同様である。但し、本例においては、第二の接合材42の高さは第一の接合材41の高さより低くても高くてもよい。
【0040】
まず、第二の接合材42の高さが第一の接合材41の高さより低い場合について説明する。この場合、第一の基板1と第二の基板2を対向配置した後、第一の基板1と第二の基板2の一方又は両者を押圧し、第一の基板1と第二の基板2の少なくとも一方を弾性変形させ、第二の接合材42を第一の基板1と第二の基板2で挟圧する。この挟圧した状態で、例えば局所加熱光51で第二の接合材42を長さ方向に順次走査する局部加熱により、第二の接合材42を溶融させた後に硬化させることで、第一の基板1と第二の基板2を第二の接合材42で接合する。これにより、第一の接合材41の高さが第二の接合材41の高さより高く、しかも第一の基板1と第二の基板2とが、少なくとも一方が弾性変形して第二の接合材42で接合され、第一の接合材41の高さ方向に圧縮力が加えられた状態が構成される。その後、第一の接合材41を局部加熱により溶融させた後に硬化させることで、第一の接合材41の高さ方向に圧縮力が加えられた状態を維持したまま、第一の基板1と第二の基板2を第一の接合材41で接合する。以上の工程により、図1の密閉容器30を製造することができる。この場合、第一の接合材41による第一の基板1と第二の基板2の接合が、第一の接合材41に圧縮力が加わった状態で行われる。このため、第一の接合材41による第一の基板1と第二の基板2の接合時に、第一の接合材41の幅方向第二の接合材42側の端部の高さを押し縮められる。つまり、再加熱することなく、第一の接合材41の幅方向中央部の高さを第一の接合材41の幅方向第二の接合材42側の端部の高さより高くすることができる。
【0041】
次に、第二の接合材42の高さが第一の接合材41の高さと同等又は第一の接合材41より高い場合について説明する。この場合、第一の基板1と第二の基板2を対向配置した後、第一の基板1と第二の基板2の一方又は両者を押圧し、第二の接合材42を第一の基板1と第二の基板2で挟圧した状態とする。そして、第一の基板1と第二の基板2の少なくとも一方を弾性変形させて、第二の接合材42を高さが第一の接合材41より低くなるまで押し縮める。第二の接合材42がガラスフリットである場合には、この挟圧時に第二の接合材を溶融させる。第二の接合材42の押し縮め後に第二の接合材42を硬化させ、第一の基板1と第二の基板2を第二の接合材42で接合する。これにより、第一の接合材41の高さが第二の接合材42の高さより高く、しかも第一の基板1と第二の基板2とが、少なくとも一方が弾性変形して第二の接合材42で接合され、第一の接合材41の高さ方向に圧縮力が加えられた状態が構成される。その後、第一の接合材41を局部加熱により溶融させた後に硬化させることで、第一の接合材41の高さ方向に圧縮力が加えられた状態を維持したまま、第一の基板1と第二の基板2を第一の接合材41で接合する。以上の工程により、図1の密閉容器30を製造することができる。この場合も、再加熱することなく、第一の接合材41の幅方向中央部の高さを第一の接合材41の幅方向第二の接合材42側の端部の高さより高くすることができる。
【0042】
図4に示される第二の例に係る気密容器30は、第二の接合材42が直列された点状に設けられており、しかも第一の接合材41の内側のみに設けられている。この気密容器30の製造手順は、図5に示されるように、基本的には図2の手順と同じである。
【0043】
図6に示される第三の例に係る気密容器30は、第二の接合材42が線分状に設けられており、しかも第一の接合材41の外側のみに設けられている。この気密容器30の製造は、図2の手順と同様にしても行うことができるが、図7に示されるように第二の接合材42を後から付設することでも製造することができる。即ち、第一の接合材41のみを配置し、第一の接合材41で第一の基板1と第二の基板2を接合した後、接合された第一の基板1と第二の基板2との間の隙間の外周縁部に第二の接合材42を注入してもよい。第二の接合材42の注入後は、第一の基板1と第二の基板2の一方又は両者を押圧し、第一の基板1と第二の基板2の一方又は両者を弾性変形させて、第二の接合材42を第一の基板1と第二の基板2で挟圧する。そして、この状態で第二の接合材42を硬化させることで、第一の基板1と第二の基板2を第二の接合材42で接合する。これにより、第一の接合材41の高さが第二の接合材42の高さより高く、第一の基板1と第二の基板2の少なくとも一方が弾性変形して第一の接合材41及び第二の接合材42で接合され、第一の接合材41の高さ方向に圧縮力が加えられた状態が構成される。
【0044】
本発明の気密容器を外囲器としたOLEDを製造する場合、図8に示されるように、複数の発光部3等を形成した大型の第一の基板1と、第二の基板2を対向させ、各発光部3の周囲に配置した第一の接合材41と第二の接合材で接合する。その後、発光部3を中心とした一単位毎に切断して、一度複数のOLEDを製造することもできる。切断は、第一の接合材41と第二の接合材42のいずれか一方による接合後に行うこともできる。なお、図8においては第二の接合材42を省略してある。図1〜7は、説明を分かりやすくするために、図8に示すような大判基板(マザーガラス)の端部を表す図としている。
【実施例】
【0045】
<実施例1>
本実施例では、図1で説明した、OLEDの外囲器を構成する気密容器30を、図2の手順で製造した。以下、気密容器30の製造方法を説明しながら、気密容器30の構造についても併せて説明する。
【0046】
まず、図1、図2(a)に示すように、第一の基板1及び第二の基板2を準備する。第一の基板1は、0.5mmの厚みのガラス板であり、その第一の基板1上には、TFT回路12、平坦化膜13及びコンタクトホール14と、発光部3を構成する下部電極31、有機EL層32、上部電極33及び保護層35が設けてある。
【0047】
次に、図2(b)に示すように、発光部3を取り囲むように周状に第一の接合材41をスクリーン印刷した。また、周状に配置した第一の接合材41の内側と外側の両方に第二の接合材42を配置した。第二の接合材42も第一の接合材41と同様の材料とし、スクリーン印刷にて形成した。第二の接合材42は、第一の接合材41に平行な直線線分配置とした。第一の接合材41及び第二の接合材42の構成材料は、転移点357℃、軟化点420℃のBi系鉛レスのガラスフリットを母材とし、バインダーとして有機物を分散混合したペーストである。スクリーン印刷後に第一の基板1と一緒に120℃で乾燥した。そして、有機物をバーンアウトするため460℃で加熱焼成し、第一の接合材41と第二の接合材42とした。なお、このガラスフリットは、粘度が負の温度係数(温度依存性)を有している。
【0048】
焼成後の第一の接合材41の寸法は、幅1mm、高さ100μmであり、発光部3を取り囲むように周状に形成されている。また、焼成後の第二の接合材42の寸法は、幅1mm、高さ80μmであり、周状に配置された第一の接合材41の内側と外側に、第一の接合材41と並行で且つ第一の接合材41から2mm離れた所に形成されていた。なお、第二の接合材42には、第一の接合材41のコーナー部に相当する箇所に不連続部を設けた。
【0049】
次に、図2(c)に示すように、周状の第一の接合材41を介して第一の基板1と第二の基板2とを対向して合わせた。第一の接合材41は、第二の接合材42よりも高く形成しているため、第二の接合材42は、第一の基板1と第二の基板2の両方に接することはない状態であった。
【0050】
次に、第一の基板1と第二の基板2に挟持された第一の接合材41の長さ方向に沿って局所加熱光51を走査させた。光源としては、第一の接合材41を局所的に加熱する性能やガラス基材の透過性等の観点から、赤外域に波長を有する加工用半導体レーザを用いた。また、局所加熱光51による接合を良好に行うために、第一の基板1及び第二の基板2で第一の接合材41を挟み付けた。
【0051】
局所加熱光51としてのレーザ光を第一の接合材41に沿うように走査しなから照射することで、第一の接合材41が長さ方向沿って順次加熱されて溶融し、その後軟化点以下まで冷却され、第一の基板1と第二の基板2とを局所的に接合した。なお、第一の接合材41は、局所加熱光51による接合により、高さが90μmとなった。このようにして、第一の基板1と第二の基板2を第一の接合材41で接合し、密閉された内部空間を有する気密容器30を形成した。
【0052】
局所加熱光51は、不図示の加工用半導体レーザ装置を2つ用意し、第一のレーザ光源と第二のレーザ光源との照射スポットが一直線上に整列するように配置した。第一のレーザ光源は、波長980nm、レーザパワー約250W、有効径2mmのレーザ光とし、1000mm/sの速度で走査した。第二のレーザ光源は、第一のレーザ光源に遅れて、0.05秒、即ち照射スポットとして50mmの距離だけ走査方向の後ろ側に配置し、走査する間もこの間隔を維持した。第二のレーザ光源からのレーザ光は、波長980nm、レーザパワー約250W、有効径2mmのレーザ光とした。
【0053】
次に、図2(d)に示すように、第一の基板1、第二の基板2を摘むように外力を加えて、第二の接合材42に第一の基板1と第二の基板2を介して圧力を加えた。この状態で、第一の基板1と第二の基板2に挟持された第二の接合材42の長さ方向に沿って局所加熱光51を走査した。光源や照射条件は、第一の接合材41の接合時と同じ条件とした。なお、第二の接合材42は、局所加熱光51による接合により、高さが70μmとなった。
【0054】
このようにして製造された気密容器30は、第一の接合材41の高さが第二の接合材42の高さよりも大きいために、第一の基板1、第二の基板2は、第一の接合材41を中央とした凸形状に変形している。第一の基板1及び第二の基板2の変形により、第一の接合材41の高さ方向に約10MPaの圧縮力を印加できた。
【0055】
また、図2(e)に示すように、この状態で、第一の接合材41を局所加熱光51により再加熱して軟化させることで、第一の接合材41の幅方向両縁部の高さを幅方向中央部の高さよりも小さくすることができた。これにより、第一の基板1及び第二の基板2は、なだらかなに変形することができ、この弾性屈曲部に大きな応力集中が生ずることを防止しやすい状態とすることができた。なお、この再加熱時の局所加熱光51の条件は、光源の波長980nm、レーザパワー約250W、有効径2mmのレーザ光とし、1000mm/sの速度で走査した。
【0056】
以上のようにして、第一の基板1と第二の基板2を接合した後、通常の方法に従って第一の基板1及び第二の基板2を切断し、m×n個の気密容器30(外囲器)を形成した。そして、駆動回路等を実装して、気密容器30を外囲器として備えたOLEDを完成させた。完成したOLEDを作動させたところ、長時間安定した画像表示が可能であり、OLEDに適用可能な程度の安定した気密性が確保されていることが確認された。
【0057】
<実施例2>
実施例2を、図3に基づいて説明する。実施例1と同様に第一の基板1及び第二の基板2を用意し、第一の接合材41及び第二の接合材42を配置した。この時、第二の接合材42は第一の接合材41と同等の高さとなるように形成した。
【0058】
次に、図3(c),(d)に示すように、第二の接合材42に局所加熱光51を照射して第一の基板1と第二の基板2を接合した。この時、第一の基板1及び第二の基板2を介して第二の接合材42に圧力を加えた。この局所加熱光51と圧力により、第二の接合材42は第一の接合材41よりも薄くなった。
【0059】
次に、図3(e)に示すように、第一の接合材41に局所加熱光51を照射して第一の基板1と第二の基板2を接合した。第一の接合材41は周状であるため、第一の接合材41の接合により気密容器30が形成された。この時、第一の接合材41は、接合直後において、その幅方向中央部の高さが第二の接合材42側の端部の高さより大きくなり、第一の基板1及び第二の基板2の弾性変形部をなだらかな変形とすることができた。
【0060】
以上のようにして、第一の基板1と第二の基板2を接合した後、通常の方法に従って第一の基板1及び第二の基板2を切断し、m×n個の気密容器30(外囲器)を形成した。そして、駆動回路等を実装して、気密容器30を備えたOLEDを完成させた。完成したOLEDを作動させたところ、長時間安定した画像表示が可能であり、OLEDに適用可能な程度の安定した気密性が確保されていることが確認された。
【0061】
<実施例3>
実施例3について図4、5に基づいて説明する。
【0062】
実施例1と同様に第一の基板1及び第二の基板2を準備する。
【0063】
次に、周状に配置した第一の接合材41の内側に第二の接合材42を配置した。第一の接合材41及び第二の接合材42は実施例1と同様のガラスフリットとし、スクリーン印刷にて形成した。第二の接合材42は、第一の接合材41と平行な連続する点配置とした。
【0064】
実施例1と同様に、第一の接合材41を局所加熱光51を使い接合した。その後、第一の基板1及び第二の基板2を撓ませて第二の接合材42を挟圧させ、局所加熱光51を使って接合した。
【0065】
更に、図5(e)に示すように、第一の接合材41を局所加熱光51により再加熱し、軟化させた。これにより、第一の接合材41の幅方向中央部の高さは、第一の接合材41の第二の接合材42側の縁部の高さよりも大きくなり、第一の基板1及び第二の基板2をなだらかに弾性変形させることができた。
【0066】
以上のようにして、第一の基板1と第二の基板2を接合した後、通常の方法に従って、第一の基板1及び第二の基板2を切断し、m×n個の気密容器30(外囲器)を形成した。そして、駆動回路等を実装して、気密容器30を外囲器として備えたOLEDを完成させた。完成したOLEDを作動させたところ、長時間安定した画像表示が可能であり、OLEDに適用可能な程度の安定した気密性が確保されていることが確認された。
【0067】
<実施例4>
実施例4について、図6、7に基づいて説明する。
【0068】
実施例1と同様に第一の基板1及び第二の基板2を準備する。
【0069】
第一の接合材41だけを実施例1と同様にして配置し、局所加熱光51を照射し、第一の基板1と第二の基板2を接合した。その後、通常の方法に従って、第一の基板1及び第二の基板2を切断し、第一の接合材41だけで接合された気密容器30をm×n個形成した。
【0070】
次に、得られた気密容器30の周縁部に開口する第一の基板1と第二の基板2間の隙間に、第二の接合材42として光硬化型接着剤をディスペンサーを使い注入した。そして、第一の基板1と第二の基板2の端部を潰すように変形させながら第二の接合材42にUV光52を照射して硬化させた。
【0071】
更に、図7(e)に示すように、第一の接合材41を局所加熱光51により再加熱し、軟化させた。これにより、第一の接合材41の高さは、その幅方向中央部の厚みが幅方向外側(第二の接合材42側)の端部の高さよりも大きくなり、第一の基板1及び第二の基板2の弾性変形部をなだらかな変形とすることができた。
【0072】
以上のようにして気密容器30(外囲器)を製造し、更に通常の方法に従って駆動回路等を実装して、気密容器30を外囲器として備えたOLEDを完成させた。完成したOLEDを作動させたところ、長時間安定した画像表示が可能であり、OLEDに適用可能な程度の安定した気密性が確保されていることが確認された。
【符号の説明】
【0073】
1:第一の基板、2:第二の基板、3:発光部、12:TFT回路、13:平坦化膜、14:コンタクトホール、30:気密容器、31:下部電極、32:有機EL層、33:上部電極、34:有機EL素子、35:保護層、41:第一の接合材、42:第二の接合材、51:局所加熱光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隙間を開けて対向する第一の基板と第二の基板との間に、前記隙間の周囲を囲んで内側に密閉空間を規定すると共に、前記第一の基板と第二の基板とを接合する第一の接合材が挟み込まれた気密容器において、
前記第一の接合材の内側、外側又は両側に設けられた第二の接合材が、前記第一の基板と第二の基板との間に挟み込まれて、前記第一の接合材と共に前記第一の基板と第二の基板とを接合しており、しかも前記第一の接合材の高さが前記第二の接合材の高さより高く、前記第一の基板と第二の基板とが、少なくとも一方が弾性変形して前記第一の接合材及び第二の接合材で接合されていることにより、第一の接合材の高さ方向に圧縮力が加えられていることを特徴とする気密容器。
【請求項2】
前記第一の接合材がガラスフリット、前記第二の接合材がガラスフリット、無機接着剤又は有機接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の気密容器。
【請求項3】
前記第一の接合材の幅方向中央部の高さが、前記第一の接合材の幅方向前記第二の接合材側の端部の高さよりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の気密容器。
【請求項4】
前記第二の接合材が不連続部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の気密容器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の気密容器を外囲器として備えていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
隙間を開けて対向する第一の基板と第二の基板との間に、前記隙間の周囲を囲んで内側に密閉空間を規定すると共に、前記第一の基板と第二の基板とを接合する第一の接合材を挟み込んだ気密容器の製造方法において、
前記第一の基板又は第二の基板に前記第一の接合材を配置する工程と、
前記第一の接合材を配置する工程の前、同時又は後の工程であって、前記第一の基板又は第二の基板に、前記第一の基板と第二の基板を対向させた時に前記第一の接合材の内側、外側又は両側に位置する第二の接合材を配置する工程と、
前記第一の基板と第二の基板とを、前記第一の接合材と第二の接合材を両者間に挟み込んで対向配置する工程と、
前記第一の接合材で前記第一の基板と第二の基板を前記第一の接合材で接合する工程と、
前記第一の基板と第二の基板の少なくとも一方を弾性変形させて、前記第二の接合材で前記第一の基板と第二の基板を前記第二の接合材で接合し、前記第一の接合材の高さが前記第二の接合材の高さより高く、しかも前記第一の基板と第二の基板とが、少なくとも一方が弾性変形して前記第一の接合材及び第二の接合材で接合されていることにより、第一の接合材の高さ方向に圧縮力が加えられた状態を構成する工程と
を有することを特徴とする気密容器の製造方法。
【請求項7】
前記第一の接合材がガラスフリット、前記第二の接合材がガラスフリット、無機接着剤又は有機接着剤で、前記第二の接合材による接合後に、前記第一の接合材を加熱し、前記第一の接合材の高さ方向に圧縮力が加えられた状態を維持したまま軟化させることを特徴とする請求項6に記載の気密容器の製造方法。
【請求項8】
隙間を開けて対向する第一の基板と第二の基板との間に、前記隙間の周囲を囲んで内側に密閉空間を規定すると共に、前記第一の基板と第二の基板とを接合する第一の接合材を挟み込んだ気密容器の製造方法において、
前記第一の基板又は第二の基板に前記第一の接合材を配置する工程と、
前記第一の接合材を配置する工程の前、同時又は後の工程であって、前記第一の基板又は第二の基板に、前記第一の基板と第二の基板を対向させた時に前記第一の接合材の内側、外側又は両側に位置する第二の接合材を配置する工程と、
前記第一の基板と第二の基板とを、前記第一の接合材と第二の接合材を両者間に挟み込んで対向配置する工程と、
前記第一の基板と第二の基板の少なくとも一方を弾性変形させて、前記第二の接合材で前記第一の基板と第二の基板を接合し、前記第一の接合材の高さが前記第二の接合材の高さより高く、しかも前記第一の基板と第二の基板とが、少なくとも一方が弾性変形して前記第二の接合材で接合されていることにより、第一の接合材の高さ方向に圧縮力が加えられた状態を構成する工程と
前記第一の接合材の高さ方向に圧縮力が加えられた状態を維持したまま、前記第一の接合材で前記第一の基板と第二の基板を接合する工程と
を有することを特徴とする気密容器の製造方法。
【請求項9】
隙間を開けて対向する第一の基板と第二の基板との間に、前記隙間の周囲を囲んで内側に密閉空間を規定すると共に、前記第一の基板と第二の基板とを接合する第一の接合材を挟み込んだ気密容器の製造方法において、
前記第一の基板又は第二の基板に前記第一の接合材を配置する工程と、
前記第一の基板と第二の基板とを、前記第一の接合材を両者間に挟み込んで対向配置する工程と、
前記第一の接合材で前記第一の基板と第二の基板を接合する工程と、
前記第一の接合材で接合された前記第一の基板と第二の基板との間の前記隙間の外周縁部に第二の接合材を注入する工程と、
前記第一の基板と第二の基板の少なくとも一方を弾性変形させて、前記第二の接合材で前記第一の基板と第二の基板を前記接合し、前記第一の接合材の高さが前記第二の接合材の高さより高く、しかも前記第一の基板と第二の基板とが、少なくとも一方が弾性変形して前記第一の接合材及び第二の接合材で接合されていることにより、第一の接合材の高さ方向に圧縮力が加えられた状態を構成する工程と
を有することを特徴とする気密容器の製造方法。
【請求項10】
前記第一の接合材がガラスフリット、前記第二の接合材がガラスフリット、無機接着剤又は有機接着剤であることを特徴とする請求項8又は9に記載の気密容器の製造方法。
【請求項11】
前記第二の接合材を配置する工程において、不連続部を有する第二の接合材を配置することを特徴とする請求項6乃至10のいずれか一項に記載の気密容器の製造方法。
【請求項12】
請求項6乃至10のいずれか一項で製造された気密容器を外囲器として構成することを特徴とする画像表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−209133(P2012−209133A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73901(P2011−73901)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】