説明

気密容器のための生分解性一方向ガス抜き弁

本発明は、弁体(2A)と、第1の位置と第2の位置との間で可動な一方向弁部材(4)とを有する、ガス放出製品を収容するための容器(1)のためのガス抜き弁に関し、前記弁部材(4)は、前記弁体(2A)に関連させられている。特に、弁体(2A)は生分解性材料から形成されており、前記可動な弁部材(4)は、少なくとも1つの生分解性材料と、少なくとも1つの非生分解性材料との組合せである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の、気密容器のための生分解性一方向ガス抜き弁に関する。
【0002】
特に、気密容器は、貯蔵中にガスを放出する容器製品、すなわち貯蔵中にガス発生する傾向がある製品のための使用に適しているが、これに限定されるわけではない。
【0003】
これらの製品の例は、芳香性の又は香り付きの製品、粉末製品、例えばコーヒー、洗剤、肥料であるが、液体製品、新鮮なパスタ又は同様のものでもある。
【0004】
前記形式のガス抜き弁は、例えば米国特許第3595467号明細書、欧州特許第0659657号明細書又は欧州特許第1213228号明細書から当該技術分野において公知であり、このような製品の容器において使用する目的のものである。
【0005】
特に、これらの弁は、一般的に、容器の壁部に関連させられており、容器内の製品から放出されたガスを排気させるように設計されている。この容器は、密封されており、弁は、容器内に過圧が生じて容器が膨張し、最終的に壊れてしまうのを防止するとともに、容器内への空気の進入をも防止する。この空気の進入は、製品品質に影響する。
【0006】
現在利用可能なガス抜き弁は、僅かな内部過圧が生ぜしめられるやいなや容器を開放させ、またこのような過圧が消滅したときに容器を閉鎖させることによってこの課題を達成することができる。
【0007】
従来技術のガス抜き弁は、ポリエチレンベースのポリマのような熱可塑性材料から形成されている。
【0008】
このような弁が関連させられる容器のラミネートを形成するためにも同様の材料が使用される。
【0009】
弁を容器に固定するための一般的な技術は、シーリングフィルムを容器の内側層に取り付けることである。通常はシーリングフィルムとしてポリオレフィンフィルムが使用される。
【0010】
弁と容器の組合せは、上記製品の貯蔵に適したパッケージを提供する。
【0011】
このように得られたパッケージは極めて有利であるが、パッケージを構成する材料により、未だ廃棄に関する欠点を有する。
【0012】
特に、弁及び/又は容器を形成するために使用される熱可塑性材料は、生分解性でも、堆肥化可能でもない。
【0013】
この問題を解決することを考慮して、そのラミネートが生分解性材料から形成された容器が導入されたが、これは、パッケージが全体的に生分解性であると言うには十分ではなかった。
【0014】
これは、生分解性材料から形成された一方向ガス抜き弁が現在は利用可能でないからである。
【0015】
したがって、パッケージが、生分解性材料から形成された容器を有するとしても、弁が生分解性でないので、未だパッケージを生分解性パッケージとして認めることはできない。
【0016】
上記従来技術を考慮して、本発明の目的は、生分解性材料から形成された密封された容器に関連した生分解性一方向ガス抜き弁を提供することである。
【0017】
特に、技術的課題は、生分解性であると認められるパッケージの提供である。
【0018】
別の技術的課題は、非生分解性材料から形成された弁と同じ技術的作動特徴を有する生分解性の弁の提供である。
【0019】
本発明によれば、この課題は、請求項1に記載された、芳香性又は香り付きの製品の容器のためのガス抜き弁によって達成される。
【0020】
この課題は、請求項14に記載された、ガス抜き弁を有する、香り付き又は芳香性のガスを放出する製品のための気密容器によっても達成される。
【0021】
つまり、本発明は、生分解性材料から形成された容器のための生分解性ガス抜き弁を提供する。
【0022】
例えば、本発明の弁の用途は、ガス放出製品の気密容器、又は容器内に生じた圧力を解放することが要求される容器である(例えば、コンクリートを入れた複数の気密のバッグが積み重ねられる場合、積み重ねられたバッグにより生じる機械的圧力がバッグ内に過圧を生ぜしめ、この過圧は、バッグが破裂することを防止するために解放されなければならない)。
【0023】
本発明は、現時点で利用可能な形式の非分解性材料から形成されたガス抜き弁と同じ機能的特徴及び特性(重量、開放圧力、閉鎖圧力、空気流、容器のラミネートに対するシール性等)を保証することができる、生分解性材料から形成された一方向ガス抜き弁を提供することである。
【0024】
有利には、ガス抜き弁及び容器の両方が、その特性がEN13421の規格又は同等の規格ISO14855−1;2005又は同等の規格ASTM D6400−04を満たすような生分解性材料を用いて形成される。
【0025】
規格EN13421によれば、この規格は、調和させられた基準(a harmonized standard)を示しており、パッケージング及びパッケージング廃棄物における欧州指令94/62ECとの一致の推定を提供するために欧州連合の公式ジャーナルに含まれていた。
【0026】
発明の特徴及び利点は、添付の図面に限定なく例示された、1つの実用的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明によるガス抜き弁を有する気密容器の概略的な斜視図である。
【図2】図1の容器に関連させられたときの、本発明の弁の第1の実施形態の概略的な断面図であり、容器の一部のみが示されている。
【図3A】本発明による図2の弁の一部材の平面図である。
【図3B】本発明による図2の弁の一部材の断面図である。
【図4】図1の容器に関連させられたときの、本発明の弁の第2の実施形態の概略的な断面図であり、容器の一部のみが示されている。
【図5】図1の容器に関連させられたときの、本発明の弁の第3の実施形態の概略的な断面図であり、容器の一部のみが示されている。
【図6】図1の容器に関連させられたときの、本発明の弁の第4の実施形態の概略的な断面図であり、容器の一部のみが示されている。
【図7A】本発明による図4から図6の弁の一部材の平面図である。
【図7B】本発明による図4から図6の弁の一部材の断面図である。
【0028】
この説明において、生分解性とは、一連の不可逆性の化学反応であって、この化学反応によって、自然界において、又は人工的な条件の下でさえも、物質の分解が生じるものを意味する。生分解性材料と認められるために達せられるべき生分解のレベルは、6ヶ月以内で少なくとも90%の生分解が達せられるレベルである。
【0029】
堆肥化とは、温度及び湿度の特定の条件において(いわゆるコンポスタにおいて)自然に生じるプロセスであって、このプロセスの最後には廃棄物が堆肥と呼ばれる物質に変換されている。規格EN13432の仕様に従って堆肥化可能と言われる廃棄物は、以下の判断基準を満たさなければならない。(a)6ヶ月以内で少なくとも90%が生分解可能である。(b)最終的な堆肥における崩壊、断片化及び可視性の損失。2mmよりも大きなサイズを有する廃棄物材料の残留物の質量が、初期質量の10%未満でなければならない。(c)重金属のレベルが低く、堆肥の品質に対する悪影響がない。(d)pH値、塩分、揮発性固体、N、P、Pg、Kの安定性。
【0030】
以下に説明されるガス抜き弁は、生分解性の弁であり、好適には堆肥化可能でもあるということは即座に留意されるべきである。
【0031】
添付の図面を参照すると、符号1は概して容器、例えばフレキシブルな又は半硬質(semirigid)の気密容器を示している。
【0032】
一方向ガス抜き弁2が容器1に設けられており、この一方向ガス抜き弁は、例えば容器1の壁部1Aに関連させられている(図1において、ガス抜き弁2は前壁に関連して示されている)。
【0033】
気密容器1の壁部1Aは、国際規格EN13432の技術仕様によれば、コーンスターチ、いも粉(potato flour)、セルロース、マタービー(Mater-Bi)及び/又はこれらのあらゆる組み合わせのような生分解性材料を含むグループから選択された生分解性材料から成るラミネートによって形成されていてよい。
【0034】
容器に入れられた製品の発酵により又は容器のラミネートに加えられる機械的圧力により容器1内に過圧が生じた場合にはいつでも、ガス抜き弁2がガスを容器から排出させ、容器1の完全性を保つ。
【0035】
この場合、過圧の制御された解放のために、容器壁部1のラミネート状材料には穴3が形成されている。
【0036】
好適には、一方向ガス抜き弁2は、ヒートシール(熱融着)又は超音波技術によってこのような穴3の下側に関連させられている。
【0037】
図2を参照すると、一方向ガス抜き弁2の第1の実施形態が示されており、この第1の実施形態は、特に、しかしこれに限定することなく、ガス発生製品を入れるために及び/又は容器に対する機械的圧力によって生ぜしめられる可能性がある過圧を解放するために適応させられた気密容器1において使用するのに適している。
【0038】
これはこの図2に明示されていないが、ガス抜き弁2は容器1のラミネート1Aによって被覆されるように設計されている。
【0039】
図2に例示された形式の弁2は、弁体2Aと、弁体2Aに関連させられた可動な弁部材4とを有している。
【0040】
特に、弁体2Aはベースプレート5とキャップ6とを有し、キャップ6は、ベースプレート5に閉鎖固定させられておりかつガス抜き穴6Aを有する。
【0041】
キャップ6は、末端部分に環状の溝7を有しており、この溝7は、ベースプレート5の対応位置に配置された、対応する環状の突出部8と係合している。平坦な環状の壁部9が、環状の突出部8の上側に設けられており、複数の穴11を有する中央ディスク10を包囲している。
【0042】
可動な弁部材4がキャップ6とベースプレート5との間に配置されている。この可動な弁部材4は膜として作用し、後でさらに説明するように、第1の閉鎖された位置と第2のガス抜き位置との間で可動である。
【0043】
ベースプレート5の底側は、有利には、ハウジング14を形成するように成形されていてよく、このハウジング14は、必要に応じて中央ディスク10の下側にフィルタ15を収容してよい。
【0044】
図示されていない択一的な実施形態において、フィルタ15は、弁体2Aに形成されたハウジング、すなわちプレート5に形成されたハウジングに含まれていてよい。
【0045】
可動な弁部材4の周縁部は、プレート5の環状の平坦な壁部9に対して当接しており、この当接部に、可動な弁部材4のよりよいシールを保証するために好適には粘性層12が設けられている。
【0046】
図2の実施形態において、可動な弁部材4は、対向突出部13によってベースプレート5に対して押し付けられており、この対向突出部13は、キャップ6の環状溝7を備えた壁部と反対の壁部に形成されている。
【0047】
図3A及び図3B、すなわち可動な弁部材4の平面図及び断面図も参照すると、可動な弁部材4はディスクとして示されている。
【0048】
ディスクは、好適には互いに反対向きに位置しかつ互いに平行な第1の面4A及び第2の面4Bと、厚さ"S"を有する接続壁部4Cとを有する。
【0049】
第1の面4A及び第2の面4Bの平面部分は円形であり、厚さ"S"は0.2〜1.2mmである。
【0050】
特に、可動な弁部材4の閉鎖された位置において、第1の面4Aはベースプレート5の平坦な壁部に接しているのに対し、第2の面4Bはラミネート1Aに面している。
【0051】
可動な弁部材4の面4Aは、中央ディスク10に設けられた穴11を被覆するように延びている。
【0052】
図2に示されたような弁2の作動によれば、第1のシールされた作動位置において、可動な弁部材4はプレート5の平坦な壁部9に対して当接しており、これにより、シールして、容器1からのガスの放出又は容器1内への空気の進入を防止している。
【0053】
容器1に過圧が生じた場合、可動な弁部材4が平坦な壁部9から持ち上がり、第2のガス抜き作動位置に移動する。この第2のガス抜き作動位置において、例えば容器に入れられた製品の発酵により放出された容器1内のガスをガス抜きすることができる。
【0054】
プレート5の平坦な壁部9からの可動な弁部材4の分離を防止するために、対向突出部13の存在が、保持手段として可動な弁部材4に作用する。
【0055】
特に、ガスは、穴11を通り、可動な弁部材4とプレート5との間に形成された空隙を通り、キャップ6に設けられた穴6Aを通って環境中へ流れる。
【0056】
過圧状態が緩和されるやいなや、可動な弁部材4は、第1の位置へ戻る、すなわち平坦な壁部9に当接するように下がり、これにより、上記の経路と逆の経路をたどって空気が容器に進入することを防止する。
【0057】
フィルタ15は、例えば容器1内の製品から放出された微細な粒子状物質による穴11の閉塞、又はこの粒子状物質による壁部9に対する可動な弁部材4の当接妨害を防止するために使用される。
【0058】
有利には、好適な実施形態において、ガス抜き弁2は、EN13432の技術仕様に従う形式の生分解性材料から形成されている。
【0059】
言い換えれば、弁本体2Aと、ベースプレート5と、キャップ6と、中央ディスク10とは、それぞれ、EN13432に従うように、少なくとも1つの生分解性材料によって形成されている。
【0060】
可動な弁部材4も、EN13432に従うように、少なくとも1つの生分解性材料から形成されている。
【0061】
生分解性材料とは、特に、EN13432に従う、コーンスターチ、いも粉又は合成生体高分子及び/又はこれらの材料のあらゆる組み合わせから選択された製品をいう。
【0062】
フィルタ15も、ろ紙、セルロース又は同様の材料のような生分解性材料から形成されていてよい。
【0063】
好適には、粘性の層12も、植物油、シリコーン油又は同様の材料のような生分解性材料から形成される。
【0064】
これにより、現在利用されているような生分解性でない材料から形成されたガス抜き弁と同じ機能的特徴又は特性を有する一方向ガス抜き弁2が生分解性材料から形成される。
【0065】
ここで図4を参照すると、図2を参照して説明された弁によって得ることができる圧力よりも低い圧力を目的とする形式の気密容器2に適応された一方向ガス抜き弁2の第2の実施形態が示されている。
【0066】
図4において上記エレメントは同じ符号によって示されており、弁2は、対向突出部13及びフィルタ15を有さずに示されている。
【0067】
事実、この第2の実施形態において、可動な弁部材4は、粘性層12の固有表面張力のみによって第1の閉鎖された作動位置に保持されている。
【0068】
これにより、粘性層12の表面張力は、第1の作動位置において可動な弁部材4が平坦な壁部9に当接することを保証し、これにより、容器1からのガスの放出及び環境からの空気の進入に対するシール作用を保証する。
【0069】
弁2の第2の実施形態において、ガス抜きの間に放出される不純物をろ過する作用は、ガス抜き穴11の特定の構造によって達成される。
【0070】
つまり、弁2の第2の実施形態において、穴11は円錐台形に形成されており、この場合、円錐の頂点が容器1の内部に向いており、円錐の底面が、可動の弁部材4に向いている。
【0071】
可動な弁部材4は、図7A及び図7Bも参照すると、この第2の実施形態において、薄いフィルムの形態である。
【0072】
フィルムにおいて、第1の面4A及び第2の面4Bは、好適には互いに反対向きでかつ平行であり、接続壁部4Cは、厚さ"S"よりも小さな厚さ"S1"を有する。
【0073】
第1の面4A及び第2の面4Bの平坦な部分は円形であり、厚さ"S1"は0.012〜0.2mmの範囲である。
【0074】
この第2の実施形態のガス抜き弁の要素を形成するために使用された生分解性材料は、EN13432の仕様に従うように選択されている。
【0075】
この第2の実施形態においても再び、可動な弁部材4は、EN13432に従うように、全体が生分解性材料から形成されていてよい。
【0076】
ここで図5を参照すると、一方向ガス抜き弁2の第3の実施形態が示されており、この一方向ガス抜き弁2は、特に、図2に関連して説明した弁によって得ることができる圧力よりも低い圧力を目的とするタイプの気密容器1に適応されているが、これに限定されるものではない。
【0077】
この図5において、上述の要素は同じ符号で示されており、図5は、弁2の第3の実施形態の可動な弁部材4が、キャップ6(図2及び図4に関して示されたガス抜き弁に設けられている)も、突出部13(図2のガス抜き弁に設けられている)も有さないことを示している。
【0078】
実際には、弁2は容器1のラミネート1Aによって閉鎖されている一方、可動な弁部材4は、プレート10に設けられた穴11を被覆して閉鎖している。
【0079】
この第3の実施形態において、可動な弁部材4は、単に粘性層12の固有の表面張力によって、第1の閉鎖された状態に保持されている。
【0080】
弁2の第3の実施形態においては、弁部材4は、図7A及び図7Bに関して説明される薄いフィルムの形態である。
【0081】
特に、フィルムの表面4Aが、平坦な環状の壁部9の表面の延在範囲と等しいか又はそれよりも大きい延在範囲を有する。
【0082】
弁2の第3の実施形態は、フィルタ15(図2のガス抜き弁に設けられている)も有さない。なぜならば、ろ過作用は、ガス抜き穴11の特定の構成によって達成されるからである。
【0083】
弁2の第3の実施形態における穴11の構成は、好適には、弁2の第2の実施形態のものと同様である。
【0084】
弁2のこの第3の実施形態においては再び、可動な弁部材4は、EN13432に従うように、全体が生分解性材料から形成されていてよい。
【0085】
また、この第3の実施形態において、一方向ガス抜き弁2の他の要素を形成するために使用された生分解材料は、EN13432に従うように選択されている。
【0086】
ここで図6を参照すると、弁2の第4の実施形態が示されており、この弁2は、特に、図2に関連して説明された弁によって得ることができる圧力よりも低い圧力を目的とする気密容器1に関するものとして適応されているが、これに限定されるものではない。
【0087】
図6において、上述の要素は同じ符号で示されており、図6は、弁体2Aの特定の構成を除いて、弁2の第4の実施形態が、図5に示されたものと極めて類似していることを示している。
【0088】
特に、弁2の第4の実施形態において、弁体2Aは、基準鉛直方向軸線Y−Yに沿って、他の実施形態の高さH′よりも小さな高さHを有するように設計されており、これは、小さな体積の貯蔵チャンバを有する容器により簡単に適合される、より小さなサイズの弁を提供する。
【0089】
好適には、ガス抜き弁2のこの第4の実施形態の高さHは、図2、図4及び図5に示されたガス抜き弁2の他の実施形態の高さH′よりも50%以上小さい。
【0090】
弁2のこの第4の実施形態においては再び、可動な弁部材4は、EN13432に従うように、全体が生分解性材料から形成されていてよい。
【0091】
また、この第4の実施形態において、一方向ガス抜き弁2の他の要素を形成するために使用された生分解性材料は、EN13432に従うように選択されている。
【0092】
ガス抜き弁2の信頼性及び性能を評価するために行われる試験の間、本発明者は、少なくとも1つの生分解性材料から可動な弁部材4を一体に形成することに関して予期せぬ問題を発見した。
【0093】
特に、上述のように、可動な弁部材4は、好適には、0.2〜1.2mmの範囲の厚さを有するディスク(図3A及び図3Bのディスク)、又は0.012〜0.2mmの範囲の厚さを有する薄いフィルム(図7A及び図7Bのフィルム)の形態を有する。
【0094】
上記試験は、可動な弁部材4を形成する生分解性材料が、時間の経過と共に性能の劣化を生じることを予期せず明らかにした。
【0095】
これにより、ディスク及び/又はフィルムの小さな厚さにより、可動な弁部材4は、容器1内への及び容器1内からの所要の気密条件を保証することができず、ひいては弁の適切な働きを保証することができないということが確認された。
【0096】
発明者は、この問題は、容器1内の製品から放出されるガスに曝されることにより、可動な弁部材4のディスク及び/又はフィルムが早期老化プロセスを生じることであると考える。
【0097】
これは恐らく、製品から放出されたガスにおける水分子の存在によって生ぜしめられ、この分子は、可動な弁部材4を形成するディスク及びフィルムによって吸収され、これにより、生分解性材料の劣化の望ましくないプロセスを開始する。
【0098】
この劣化プロセスは、僅かな内部過圧に応答して開放しかつこの過圧が終了すると即座に再閉鎖するという、可動な弁部材4の能力に影響する。
【0099】
この劣化プロセスの速さは、容器1内の製品のタイプに依存し、数時間から数ヶ月までの範囲である。
【0100】
したがって、ある場合には、可動な弁部材4は、生分解性材料から形成されているが、劣化プロセスによって影響されず(例えば、容器内にガス発生製品が存在しないからであり、弁2は、容器に加えられる機械的圧力に応答して弁作用を達成することが要求される)、別の場合には、同じ可動な弁部材4が、多かれ少なかれ急速な性能劣化を生じ、これにより、容器1の気密性に影響する。
【0101】
言い換えれば、製品が容器1内に貯蔵される時間が長いほど、可動な弁部材4を好適には形成する生分解性材料が、その性能の劣化をより生じるようになる。
【0102】
それにもかかわらず、この予期せぬ問題は、弁1の他の構成要素、すなわちプレート5、キャップ6、フィルタ15及び/又は粘性層12に影響しない。なぜならば、これらの構成要素は恐らく、可動な弁部材4のディスク及び/又はフィルムよりもはるかに厚いか又は放出されるガスに対して反応しないからである。
【0103】
この予期せぬ問題を排除することを考慮して、可動な弁部材4は少なくとも部分的に、生分解性材料から形成される。
【0104】
このような製品における非生分解性材料(例えば可動な弁部材4)の全重量が製品(すなわちガス抜き弁2の全体)の全重量の1%よりも高くない場合に限り、生分解性の製品(例えばガス抜き弁2の全体)が非生分解性材料を使用して形成される場合でさえも、EN13432への準拠が保証される。
【0105】
特に、可動な弁部材4は、少なくとも1つの生分解性材料と少なくとも1つの非生分解性材料との組合せを含む。
【0106】
少なくとも1つの生分解性材料と少なくとも1つの非生分解性材料との組合せとは、本発明の目的のために、可動な弁部材4が、
生分解性特性及び非生分解性特性を有する製品の混合物であるか、又は
生分解性特性及び非生分解性特性を有する製品を提供する反応物であるか、又は
非生分解性特性を有するコーティングを備える、生分解性特性を有する材料であってよいことを表す。
【0107】
前記実施形態の可動な弁部材4における少なくとも1つの生分解性材料と少なくとも1つの非生分解性材料との組合せは、
可動な弁部材4の重量に関して70質量%以上でかつ99質量%以下である生分解性材料の量、及び
可動な弁部材4の重量に関して30質量%以下でかつ1質量%以上である非生分解性材料の量を含む。
【0108】
好適には、生分解性材料の量は、可動な弁部材4の重量に関して80質量%であり、非生分解性材料の量は、可動な弁部材4の重量に関して20重量%である。
【0109】
言い換えれば、ディスク形態又はフィルム形態における可動な弁部材4の重量が分かっている又は決定可能であると仮定すると、生分解性材料と非生分解性材料との特定の混合、反応物及び/又は製品が得られ、これにより、可動な弁部材4は、時間の経過にしたがって性能の劣化を生じることがない。
【0110】
可動な弁部材4を形成する非生分解性材料とは、食品加工及び化学工業及び特に食品パッケージングにおける使用に適したあらゆるタイプのポリマ材料を指す。このポリマ材料は、容器内の製品によって放出されたガスと反応しないように及び/又は無反応であるように適応された非生分解性材料である。容器内の製品によって放出されたガスと反応しない又は無反応なこのような材料は、疎水性材料又は保護コーティング(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、及びフッ化ポリマ)であってよい。
【0111】
可動な弁部材4を形成する生分解性材料とは、コーンスターチ、いも粉、合成生体高分子及び/又はこれらのあらゆる組合せを含むグループから選択された材料のような、EN13432に示された技術使用に従うあらゆるタイプの生分解性材料を指す。
【0112】
好適な実施形態において、図3A、図3B、図7A及び図7Bを参照すると、可動な弁部材4を構成するディスク及び/又はフィルムは、上記のような生分解性材料によって形成されており、上記のような非生分解性材料のカバー層15によって少なくとも部分的に被覆されている。
【0113】
このカバー層15は厚さ"s"を有するように設計されている。
【0114】
したがって、面4A,4Bのうちの一方及び/又は可動な弁部材4の両方(すなわちディスク及び/又はフィルム)を、厚さ"s"を有する非生分解性材料のカバー層15によって少なくとも部分的に又は全体的に被覆することによって、性能、信頼性及び安全性の観点から、現在利用可能な非生分解性の弁に完全に匹敵するガス抜き弁2を得ることができる。
【0115】
可動な弁部材4の第1の面4A及び/又は第2の面4Bを被覆する層15の厚さ"s"は、0.5μm〜2.5μm、好適には1.5μmである。
【0116】
面4A、すなわち弁体2の中央ディスク10と接触した面に堆積された非生分解性材料のカバー層15の厚さ"s"は、面4Bに堆積された層の厚さよりも大きくてよい。なぜならば、面4Aに配置されたカバー層"s"は、容器内の製品によって放出されたガスと直接に接触する層だからである。
【0117】
図4、図5及び図6に関連して説明した上記実施形態における可動な弁エレメント4は、酸素、CO2又は低い沸点を有する化合物のような、貯蔵された製品によって生ぜしめられる有機ガス及び無機ガスが弁体を通って拡散することに対するバリヤ特性をも有してよい。
【0118】
そのために、可動な弁エレメント4のフィルムの本体には、表面コーティング又は埋設された層が設けられている。このような表面コーティングは、上記ガスの通過を阻止するのに適している。
【0119】
当業者は、以下の請求項に定義されるような発明の範囲から逸脱することなく、特定の必要性に合わせるように、これまでに説明された配列に多くの変更及び修正が加えられる場合があることを明確に認めるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密容器(1)のための生分解性一方向ガス抜き弁であって、
弁体(2A)と、
第1の作動位置と第2の作動位置との間で可動な一方向弁部材(4)とが設けられており、該一方向弁部材(4)が前記弁体(2A)に配設されている形式のものにおいて、
前記弁体(2A)が生分解性材料から形成されており、前記可動な一方向弁部材(4)が、少なくとも1つの生分解性材料と少なくとも1つの非生分解性材料との組合せを含むことを特徴とする、気密容器のための生分解性一方向ガス抜き弁。
【請求項2】
少なくとも1つの生分解性材料と、少なくとも1つの非生分解性材料との前記組合せが、
可動な一方向弁部材(4)の重量に関して70質量%以上でかつ99質量%以下の前記少なくとも1つの生分解性材料の量と、
可動な一方向弁部材(4)の重量に関して30質量%以下でかつ1質量%以上の前記少なくとも1つの非生分解性材料の量とを含む、請求項1記載の一方向ガス抜き弁。
【請求項3】
前記可動な一方向弁部材(4)を形成する前記少なくとも1つの生分解性材料の量が、前記可動な一方向弁部材(4)の重量に関して80質量%であり、前記少なくとも1つの非生分解性材料の量が、前記可動な一方向弁部材(4)の重量に関して20質量%である、請求項2記載の一方向ガス抜き弁。
【請求項4】
前記可動な一方向弁部材(4)が、厚さ(S,S1)を有しておりかつ第1の面(4A)及び第2の面(4B)を規定しており、前記第1の面(4A)及び/又は前記第2の面(4B)が、少なくとも1つの非生分解性材料によって形成されたカバー層(15)によって少なくとも部分的に被覆されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の一方向ガス抜き弁。
【請求項5】
少なくとも1つの非生分解性材料によって形成された前記カバー層(15)が、0.5μm〜2.5μm、好適には1.5μmの厚さ(s)を有する、請求項4記載の一方向ガス抜き弁。
【請求項6】
前記可動な一方向弁部材(4)が、生分解性材料のみで構成された組成を有する、請求項1記載の一方向ガス抜き弁。
【請求項7】
前記弁体(2A)が、穴(11)を有するベースプレート(5)を有し、前記可動な一方向弁部材(4)が、前記穴(11)を閉塞するために、前記第1の作動位置において前記ベースプレート(5)に当接する、請求項1から6までのいずれか1項記載の一方向ガス抜き弁。
【請求項8】
前記ベースプレート(5)と前記可動な一方向弁部材(4)との間に、別の生分解性材料から形成された粘性層(12)が配置されている、請求項7記載の一方向ガス抜き弁。
【請求項9】
前記ベースプレート(5)に閉鎖固定された、ガス抜き穴(6A)を有するキャップ(6)が設けられており、該キャップが生分解性材料から形成されている、請求項7記載の一方向ガス抜き弁。
【請求項10】
前記ベースプレート(5)が、フィルタ(15)を収容するためのハウジング(14)と、対向作用する突出部(13)とを有しており、前記可動な一方向弁部材(4)が、前記位置において、前記対向突出部(13)によって前記ベースプレート(5)に対して押し付けられており、前記対向突出部(13)及び前記フィルタ(15)が前記生分解性材料から形成されている、請求項7記載の一方向ガス抜き弁。
【請求項11】
前記弁体(2A)、前記可動な弁部材(4)、前記プレート(5)、前記キャップ(6)及び/又は前記対向突出部(13)を形成する前記生分解性材料が、コーンスターチ、いも粉又は合成生体高分子及び/又はこれらのあらゆる組合せのような、EN13432に従う生分解性材料を含むグループから選択されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の一方向ガス抜き弁。
【請求項12】
前記粘性層(12)を形成する生分解性材料が、植物油であり、前記フィルタを形成する生分解性材料が、ろ紙である、請求項8及び10に記載の一方向ガス抜き弁。
【請求項13】
前記非生分解性材料が、前記容器(1)内の製品から放出されたガスと反応しないように及び/又は無反応であるように適応されたあらゆるタイプのポリマ材料であり、前記カバー層(15)の前記非生分解性材料が、疎水性材料又は保護コーティングを含むグループから選択されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の一方向ガス抜き弁。
【請求項14】
一方向ガス抜き弁(2)を有しており、該一方向ガス抜き弁(2)が、請求項1から13までのいずれか1項記載の一方向ガス抜き弁であることを特徴とする、気密容器(1)。
【請求項15】
前記容器を形成する材料が、コーンスターチ、いも粉、セルロース、マタービー及び/又はこれらのあらゆる組合せのような、EN13432に従う生分解性材料のグループから選択されている、請求項14記載の気密容器(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2013−517999(P2013−517999A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550348(P2012−550348)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070498
【国際公開番号】WO2011/091924
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(512199151)ゴッリョ ソチエタ ペル アツィオーニ (1)
【氏名又は名称原語表記】Goglio S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via A. Solari 10, I−20144 Milano (MI), Italy
【Fターム(参考)】