説明

気泡の可視化装置及び観測用液槽

【課題】透明円筒中を流れる液体中に存在する気泡を外側から観測する場合に、透明円筒のレンズ効果に係らず、気泡の位置を正確に観測できるようにする。
【解決手段】少なくとも観測側が曲面とされた透明な筒状体10内の液体12中に存在する気泡14を外側から観測する際に用いる気泡の可視化装置であって、前記筒状体10の少なくとも一部を収容する、少なくとも観測側が平面とされた透明な液槽20と、該液槽20内で筒状体10を完全に浸漬する高さまで充満された液体22と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡の可視化装置及び観測用液槽に係り、特に、透明円筒中を流れる液体中に存在する気泡を外側から観測する際に用いるのに好適な、気泡の可視化装置、及び、これを応用した観測用液槽に関する。
【背景技術】
【0002】
流れを可視化する方法として、(1)流れに目印(トレーサ)となる多数の微粒子を懸濁させ、その動きを適当な露出時間で撮影して流線又は流跡を得る懸濁法、(2)観察しようとする水流中に金属細線を陰極として張り、同じ水流中に陽極を置いて適当な電圧を印加することにより、金属細線に微小な水素の気泡を無数に発生させ、流れによって細線から離脱して下流に移動する気泡の動きを観察することで流れを可視化する水素気泡法、(3)水を電気分解するときに陽極近傍に生成する白色の沈殿物をトレーサとして利用する電解沈殿法、(4)pH指示薬を添加した電解液流中で電気分解したときに陰極近傍で発色した溶液をトレーサとして可視化する電解pH指示薬法、(5)ヨウ化カリと澱粉の水溶液中に置かれた電極に一定の電圧を加えて、陽極付近に青紫色の色素を発生させて流れを可視化する電解ヨウ素カリ澱粉法、(6)水流中でテルルTeを陰極として20V程度の電圧を加えて電気分解を行った際に発生する黒色雲状のコロイドをトレーサとして流れを可視化するテルル法、(7)流れの密度変化即ち屈折率の変化を利用する光学的可視化方法としての、気体あるいは液体の密度変化による光の影を直接スクリーン又はフィルム上に投影して観察するシャドーグラフ法、シュリーレン法、モアレ法など様々な方法が提案されている。
【0003】
具体的には、特許文献1には、円筒回転容器を透明部材で構成することによって、回転場における流体の挙動をその場で観測可能とし、流体に、この流体と異なる固体あるいは液体を流体の特性を変えない範囲で添加して、濁度や色調を変化させて流体の動的挙動を観測できるようにした回転流体試験装置が記載されている。
【0004】
又、特許文献2には、透明材料をもって中空体に製作された可視槽の内部に不織布フィルタを付設すると共に、前記可視槽の下流側に循環ポンプを接続し、流れ内部に生起される負圧によって視認可能な気泡を発生させる流れの可視化装置が記載されている。
【0005】
又、特許文献3には、鉱物油の内部に金属物体を設け、該物体に電圧を印加することにより、気泡を鉱物油内に存在させ、且つ崩壊させ、外部から識別可能な物質として煙状物質などを鉱物油内に析出又は発生させ、流れを可視化する、気泡崩壊を利用した流れの可視化の方法及び装置が記載されている。
【0006】
又、特許文献4には、硫化亜鉛粒子、又は硫化亜鉛を表面にコーティングした粒子をトレーサ粒子として用い、波長が250乃至400nmのレーザ光を前記トレーサ粒子に照射して、ルミネッセンスによる緑色の蛍光を上記トレーサ粒子から発生させるようにするとともに、レーザ光を照射後の適切なタイミングにおける電子シャッタを開閉するようにして、レーザ光を照射していないタイミングで前記トレーサ粒子からの蛍光のみを撮像することにより、可視化空間に存在する気泡からの散乱光の影響を受けないようにして、トレーサ粒子と気泡とを画像上で分離して液体場のみを可視化できるようにした、気液混相流れ場の液体場可視化方法技術が記載されている。
【0007】
一方、観測用液槽に関しては、特許文献5に、水槽の天板を、その中央部に向って僅かに凹レンズ状に凹ませた凹レンズ状曲面に形成し、天板上に、少なくとも天板の凹レンズ状曲面に略相対する部分に透明部を形成し、その他の部分を不透明に形成したテーブル板を載置することにより、テーブル上から見ると気泡等は全く見えず、内部に水の存在すら感じさせないように透き通った水槽内を魚が泳いでいるように見える、観賞魚等用密封型テーブル水槽が記載されている。
【0008】
又、特許文献6に、水槽に突状又は凸レンズ状の蓋を被せることにより、インテリア効果を高めたり、魚を拡大することが記載されている。
【0009】
又、特許文献7には、観賞用水槽の側面を凸レンズ状の円弧状曲面として、立体的に演出することが記載されている。
【0010】
又、特許文献8、9にも、水槽に拡大用凸レンズを付けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平06−241841号公報
【特許文献2】実開平05−40878号公報
【特許文献3】特開平09−288122号公報
【特許文献4】特開平07−63641号公報
【特許文献5】特開平05−211829号公報
【特許文献6】特開平10−23838号公報
【特許文献7】登録実用新案第3008935号公報
【特許文献8】特開平08−62513号公報
【特許文献9】特開平08−62514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら従来は、液体が流れる透明円柱のレンズ効果による誤差については検討されていなかった。
【0013】
即ち、図1に示す如く、液体12の流れる方向をX、前後方向をY、上下方向をZと定義した場合、図2に示す如く、透明円筒10中を流れる液体12中に存在する気泡14を、例えばカメラ18で上方から観測すると、空気16の屈折率n0と液体12の屈折率n1が異なる為、円筒10の壁の屈折率を無視できるとしても、液体12のレンズ効果により、気泡14は二点鎖線の方向に、中心より遠ざかって見える。即ち、気泡14からの光線は、実線矢印のようにカメラ18に入射し、気泡が正しい方向(破線の方向)には見えない。カメラ18として3D用カメラを用いて、円筒10内の気泡14の位置を立体的に観測しようとする場合にも、同様の問題が発生する。
【0014】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべく為されたもので、透明円筒中を流れる液体中に存在する気泡の位置を正確に観測可能な、気泡の可視化装置を提供することを第1の課題とする。
【0015】
本発明は、又、水槽中の物体の位置や形状を、違和感無く実感的に観測可能な観測用液槽を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、少なくとも観測側が曲面とされた透明な筒状体内の液体中に存在する気泡を外側から観測する際に用いる気泡の可視化装置であって、前記筒状体の少なくとも一部を収容する、少なくとも観測側が平面とされた透明な液槽と、該液槽内で筒状体を完全に浸漬する高さまで充満された液体と、を備えることにより、前記第1の課題を解決したものである。
【0017】
ここで、前記液槽と観測位置の間に凹レンズを配設することができる。
【0018】
更に、前記液槽の表面にフレネル型凹レンズを配設することができる。
【0019】
又、前記液槽内の液体の屈折率を、前記筒状体内の液体の屈折率と同じとすることができる。
【0020】
又、観測位置に3D用カメラを配設することができる。
【0021】
本発明は、又、少なくとも観測側が平面とされた透明な液槽と、該液槽の表面に配設されたフレネル型凹レンズと、を備えたことを特徴とする観測用液槽により、前記第2の課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、透明円筒中を流れる液体中に存在する気泡を外側から観測する場合であっても、透明円筒のレンズ効果に係らず、気泡の位置を正確に観測することができる。
【0023】
又、本発明の観測用液槽によれば、液槽内に存在する物体の位置や形状を、違和感無く実感的に観測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】XYZ方向の定義を示す図
【図2】従来の問題点を説明するための断面図
【図3】本発明の第1実施形態を示す断面図
【図4】本発明の第2実施形態を示す横断面図
【図5】本発明の第3実施形態を示す横断面図
【図6】本発明の第4実施形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0026】
本発明の第1実施形態は、図3に示す如く、従来例と同様の透明円筒10を収容する直方体状の液槽(角槽と称する)20を設け、該角槽20内で透明円筒10を浸漬する高さまで、屈折率n2の液体22を充満したものである。
【0027】
前記角槽20は、例えば透明円筒10と同じアクリル製とすることができる。
【0028】
前記液体22としては、液体12と同じ物が望ましいが、屈折率n2が液体12の屈折率n1と同じか、近い物であれば、別の液体を用いても良い。
【0029】
本実施形態においては、角槽20内の液体22(屈折率n2≒n1>n0)により、気泡14が二点鎖線の方向、即ち、中心により近い、ほぼ正しい方向に見える。
【0030】
更に、角槽20を上方に延長し、カメラ18も液浸させることで、視差を更に少なくすることもできる。
【0031】
又、液体12と22の温度が異なる場合には、液体22の温度調節装置を設けて、液体22の温度を液体12の温度と一致させ、屈折率の差を生じないようにしたり、液体12と22が異なる場合には、液体22の温度を調節して両者の屈折率を近づけることもできる。
【0032】
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態を詳細に説明する。
【0033】
本実施形態は、第1実施形態と同様の構成において、角槽20内の液体22の表面とカメラ18の間に凹レンズ30を配置したものである。
【0034】
凹レンズ30が無いと、液体12と22の屈折率n1、n2が空気16の屈折率n0より大きいことにより、気泡14が槽内液表面に近付いて浮いて見えるが、凹レンズ30を設ける事により、気泡14からの光は実線矢印のようにカメラ18に入射し、気泡は破線の方向(正しい方向)に見える。
【0035】
次に図5を参照して、本発明の第3実施形態を詳細に説明する。
【0036】
本実施形態は、図4に示した第2実施形態と同様の構成において、カメラを3D用カメラ40に変えたものである。
【0037】
本実施形態によれば、透明円筒10内を流れる液体12に存在する気泡14の高さ方向(Z方向)の位置も正確に観測でき、リアルタイムの立体可視化が実現できる。従って、中心部と周辺部の流速の違いもリアルタイムで検出でき、流れの状態を、より詳細に知ることができる。
【0038】
なお、前記実施形態においては、いずれも筒状体が円筒とされ、液槽が角槽とされていたが、円筒10は、少なくとも観測側が曲面とされた透明な筒状体であれば、他の形状であっても良い。又、角槽20も、少なくとも観測側が平面とされた透明な液槽であれば、他の形状であっても良い。
【0039】
又、透明円筒10内の液体12と角槽20内の液体22の屈折率は同じであることが望ましいが、同じでなくてもよい。
【0040】
更に、前記実施形態においては、いずれも角槽20の観測側面(実施形態では上面)が開放されていたが、上面にも壁面があってもよい。上面に壁面がある場合には、角槽20内を全て液体22で充満することもできる。
【0041】
次に、図6を参照して、本発明の第4実施形態を詳細に説明する。
【0042】
本実施形態は、例えば水52中に鑑賞用魚貝54が入れられた観測用水槽50において、少なくとも一面(図では上面)にフレネル型凹レンズ60を配設し、3D用カメラ40で観測するようにしたものである。
【0043】
本実施形態においては、フレネル型凹レンズ60により、XY方向の視差(横ずれ)、及びZ方向の視差(浮き)を補正できる。従って、観賞用の水槽に生じる違和感のある視差を補正できる。なお、フレネル型凹レンズ60は図に示した上方だけでなく、側面から鑑賞する場合には、側面に設置することも出来る。
【符号の説明】
【0044】
10…透明円筒
12、22…液体
14…気泡
16…空気
18…カメラ
20…角槽
30…凹レンズ
40…3D用カメラ
50…観測用水槽
52…水
54…観賞用魚貝
60…フレネル型凹レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも観測側が曲面とされた透明な筒状体内の液体中に存在する気泡を外側から観測する際に用いる気泡の可視化装置であって、
前記筒状体の少なくとも一部を収容する、少なくとも観測側が平面とされた透明な液槽と、
該液槽内で筒状体を完全に浸漬する高さまで充満された液体と、
を備えたことを特徴とする気泡の可視化装置。
【請求項2】
前記液槽と観測位置の間に凹レンズが配設されていることを特徴とする請求項1に記載の気泡の可視化装置。
【請求項3】
前記液槽の表面にフレネル型凹レンズが配設されていることを特徴とする請求項2に記載の気泡の可視化装置。
【請求項4】
前記液槽内の液体の屈折率が、前記筒状体内の液体の屈折率と同じであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の気泡の可視化装置。
【請求項5】
観測位置に3D用カメラが配設されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の気泡の可視化装置。
【請求項6】
少なくとも観測側が平面とされた透明な液槽と、
該液槽の表面に配設されたフレネル型凹レンズと、
を備えたことを特徴とする観測用液槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−202868(P2012−202868A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68553(P2011−68553)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、経済産業省、戦略的基盤技術高度化支援事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【出願人】(503158475)株式会社ティーエヌケー (14)
【Fターム(参考)】