説明

気泡シート体

【課題】環境負荷を低減すべくフィルムの可及的な薄肉化を図るとともに、十分な腰を有する気泡シート体を提供する。
【解決手段】2枚構造の気泡シート体1において、気泡シート体1の外部に表出する外面部として機能する面を有するキャップシート2及びバックシート3を2層状の積層体とし、これらキャップシート2及びバックシート3の各最外層22、32の70%以上をHDPEで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚又は3枚の合成樹脂製シートを積層してなる気泡シート体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、突状のキャップを複数有する合成樹脂製のキャップシートと、キャップの底部側に貼り合わされる合成樹脂製のバックシートとを積層状に構成し、多数の気泡を有するプラスチック気泡シート体(以下、「気泡シート体」と称す)が知られている。この種の気泡シート体は、軽量性及び緩衝性に優れており、包装材や断熱材等の様々な用途で使用されている。
【0003】
ところで、このような気泡シート体は、近年、原材料の使用量増大による反省資源化、廃棄焼却時における二酸化炭素の過度の排出量等、環境負荷が問題となっている。
【0004】
このような環境対策として、本出願人は、下記特許出願において、各シートを構成するフィルムを薄肉化することによって、省資源化、及び二酸化炭素排出量の削減を図りつつ、従来のものと同一の粒強度(換言すれば、各気泡単体の圧縮強度)を有する気泡シート体を提案している。
【特許文献1】特願2005―335865
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フィルムの薄肉化を実現した気泡シート体は、粒強度の点では満足が得られるものであったが、各フィルムが極度に薄いものであれば、フィルム同士の融着面の剛性が必然的に低下し、気泡シート体の腰、換言すれば、気泡シート体全体の靭性が低下するという問題があった。
【0006】
十分な腰を得られない気泡シート体は、自動加工機で加工する工程で、ピンチロールやコンベアでの受け渡し時にへたりを起こし、円滑なライン作業に支障を来たすという不具合が生じ、裁断や製袋の自動化に対応できないものとなっていた。また、腰が不十分な気泡シート体は、引っ越し時等の梱包作業や建築現場等において断熱材として使用する際の施工をスムーズに行うことができないという問題があった。さらに、腰が不十分な気泡シート体は、すべり性が悪く、まとわりつき易いという問題もあった。
【0007】
このような不具合の発生を回避するためには、結局のところ、フィルム同士の融着面の有効な剛性を担保し得る程度に各フィルムの厚みを設定することになり、気泡シート体全体から見ればオーバースペックとなり、ひいては環境負荷の増大を招来するものとなる。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、環境負荷を低減すべくフィルムの薄肉化を図りつつ、十分な腰を有する気泡シート体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の気泡シート体は、突状のキャップを複数成形したキャップシートと、当該キャップシートのうち前記キャップの底部側に貼り合わされるバックシートとを備えた2枚構造、又は前記キャップシートのうち前記キャップの頂部側に貼り合わされるライナーシートをさらに備えた3枚構造の気泡シート体であって、前記複数枚のシートのうち、外部に表出する外面部として機能する面を有するシートの少なくとも一枚が、2層以上の積層体であり、前記積層体の最外層が、HDPE70%以上で構成されたものであることを特徴とする。
【0010】
ここで、本発明が包含する気泡シート体の態様は、(A)キャップシートにバックシートのみを貼り合わせた態様、(B)キャップシートにバックシート及びライナーシートを貼り合わせた態様が挙げられ、(A)が2枚構造の気泡シート体であり、(B)が3枚構造の気泡シート体である。
【0011】
そして、各シートのうち、外部に表出する外面部として機能する面を有するシートとは、(A)であればキャップシートとバックシートとを指し、(B)であればバックシートとライナーシートとを指す。
【0012】
また、「最外層」とは、気泡シート体の表面又は裏面を形成する層、換言すれば外部に表出する層を意味する。
【0013】
このようなものであれば、気泡シート体のうち、外部に表出する層である最外層をHDPE(高密度ポリエチレン)70%以上で構成しているため、HDPEの結晶性という特性により、急冷した場合にラメラが形成されて表面に微細な凹凸を生じる。したがって、外部に表出する外面部として機能する面を有するシートの全てをLDPE(低密度ポリエチレン)やL―LDPE(リニア低密度ポリエチレン)で構成した気泡シート体と比較して、すべり性が良く、また剛性も高いため、十分な腰を得ることができ、自動加工機で加工する工程で、ピンチロールやコンベアでの受け渡し時にへたりを起こすことがなく、円滑なライン作業に支障を来たすことがなく、裁断や製袋の自動化に対応できるものとなる。また、十分な腰を得ることによって、引っ越し時等の梱包作業や建築現場等において断熱材として使用する際の施工をスムーズに行うことができ、さらに、まとわりつき難いものとなり、取り扱い性にも優れたものとなる。
【0014】
しかも、外部に表出する層である最外層をHDPE70%以上で構成することにより、剛性を得られるため、各フィルム(シートと同義)同士を融着させた融着面の剛性も良好なものとなり、各フィルムの可及的な薄肉化をも実現できる。
【0015】
このように、本発明であれば、従来の気泡シート体に対して指摘されていた前記問題点を悉く解消し、原材料の使用量削減による省資源化、廃棄焼却時における二酸化炭素排出量の削減を実現することができ、作業性及び取り扱い性にも優れた気泡シート体を提供することができる。
なお、用途によっては、突状のキャップを複数成形したキャップシートと、当該キャップシートのうち前記キャップの底部側に貼り合わされるバックシートとを備えた2枚構造、又は前記キャップシートのうち前記キャップの頂部側に貼り合わされるライナーシートをさらに備えた3枚構造の気泡シート体であって、前記複数枚のシートのうち、外部に表出する外面部として機能する面を有するシートの少なくとも一枚が、2層以上の積層体であり、前記積層体の最外層が、HDPE70%未満であっても、60%以上で構成されたものであれば、前述した効果は確保することができる。
【0016】
特に、前記最外層の厚み寸法が、前記積層体全体の厚み寸法の5%以上であって20%以下であることが望ましい。最外層の厚み寸法が、積層体全体の厚み寸法の5%未満であれば、製膜が極めて困難になり、十分な腰を得られないものとなる。一方、最外層の厚み寸法が、積層体全体の厚み寸法の21%以上であれば、HDPEの分子配向により、裂け易い気泡シート体となり、好ましくない。
さらに、前記外部に表出する外面部として機能する面を有する二枚のシートのうち何れか一方のシートが前記HDPE60%以上で構成された最外層を有する前記積層体である場合には他方のシートの外面に、又は前記外部に表出する外面部として機能する面を有する二枚のシートが何れも前記HDPE60%以上で構成された最外層を有する積層体である場合にはその何れか一方のシートの最外層の外面に、紙状シートをラミネートしていることが好ましい。ここで、「前記外部に表出する外面部として機能する面を有する二枚のシート」とは、前記(A)の2枚構造の気泡シート体であればキャップシートとバックシートとを意味し、前記(B)の3枚構造の気泡シート体であればバックシートとライナーシートとを意味する。このような気泡シート体を用いて、特願2007―259917に示すような方法で紙状シートが外面に表出するように折半、あるいは2枚重ねをして緩衝封筒等として利用される袋状物を製造した場合に、この袋状物は軽量な上に丈夫であり、なおかつ内側にHDPE60%以上で構成された層を有するものとなり、袋状物内へ内容物を極めてスムーズに収納することができる。また、従来は袋状物を作製する際に、気泡シート体とは別体の紙を気泡シート体の外面に重ね合わせて溶着する作業が要求され、その作業が面倒であったが、予め紙状シートをラミネートした気泡シート体であるため、このような気泡シート体を用いて袋状物を作製する段階において紙を気泡シート体の外面に重ね合わせて溶着する作業が不要となり、袋状物を容易に作製することができる。なお、紙状シートは、平坦な外面を有するものである。
好適な実施態様としては、紙状シートがクラフト紙である態様や、紙状シートが気泡シート体と同系の素材の不織布である態様が挙げられる。
また、緩衝封筒の従来の作り方としては予め裁断した紙と気泡シートを重ねた上で半折し、両側面及び口の部分を上下からヒートシールする方法もあるが、この場合にもHDPE層を内側にすることにより生産性が向上する。それは、半折した紙、気泡シートを重ねて両側面はそのままシールするが、口の部分は紙と気泡シートは強固に融着させたが、気泡シート同士は融着しては困る。口が塞がっていると物が入らなくなるからである。そのため、気泡シートと気泡シートとの間に金属板やベークライト板を挟んで上下からヒートする。
この作業を繰り返していくと、その金属板あるいはベークライト板は蓄熱していく。この時通常の原料配合の気泡シート、つまりHDPEを20〜40%含むLDPEの原料は融点〜軟化点の範囲が広く低温でべたつき始めるため、この蓄熱した金属板あるいはベークライト板にべたついて美観を損ねシール強度も低下する。しかし、本発明の気泡シートであればHDPE60%以上を含むため、融点〜軟化点の範囲が狭くべたつきがない。そのため、ある程度蓄熱しだした金属板あるいはベークライト板でも美観のある緩衝封筒を作ることが出来る。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、環境負荷を低減すべく各シートを構成する各フィルムの可及的な薄肉化を図りつつ、十分な腰を有する気泡シート体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る気泡シート体1は、図1及び図2に示すように、突状のキャップ2aを複数成形したキャップシート2と、キャップシート2のうちキャップ2aの底部側に貼り合わされるバックシート3とを備え、多数の気泡1aを有する2枚構造のシート体である。本実施形態において、キャップシート2及びバックシート3は、何れも外部に表出する外面部として機能する面を有するシートであり、これらキャップシート2及びバックシート3が、それぞれ複数の層からなる本発明の「積層体」に相当する。
【0020】
キャップシート2のうち、基礎となる層21は、これまで周知のものと同様に、LDPE、又はL―LDPE、或いはこれらの混合体から構成している。
【0021】
一方、キャップシート2の最外層22は、その70%以上をHDPEで構成し、残りの30%未満をLDPE、又はL―LDPE、或いはこれらの混合体から構成している。最外層22の厚み寸法を、キャップシート2全体の厚み寸法の5〜20%に設定している。本実施形態では、キャップシート2の最外層22の85%以上をHDPEで構成し、最外層22の残り15%をLDPE、又はL―LDPE、或いはこれらの混合体から構成している。また、最外層22の厚み寸法を、キャップシート2全体の厚み寸法の10%に設定している。キャップシート2のうち、基礎となる層21と最外層22とは接着性樹脂等によって一体化されている。各層(基礎となる層21、最外層22)の一体化は、共押出しによって行っている。
【0022】
一方、バックシート3は、キャップシート2と略同じ構成をなすものであり、基礎となる層31と最外層32とを備えた積層体である。バックシート3の基礎となる層31及び最外層32の素材や合成樹脂の割合を、それぞれキャップシート2の基礎となる層31及び最外層32に準じたものとしている。
【0023】
キャップシート2の最大厚み寸法は15μm、バックシート3の最大厚み寸法は10μmであり、従来品と比較して格段に薄肉のものとなっている。
【0024】
そして、キャップシート2のうちキャップ2aの底部側にバックシート3を貼り合わせる工程を経て、各シート(キャップシート2、バックシート3)からなる2枚構造のプラスチック気泡シート体1が成形される(図1及び図2参照)。なお、キャップシート2にバックシート3を貼り合わせた状態において、バックシート3の最外層32が外側、つまり、相対的にキャップシート2から離間した側を向くようにバックシート3の向きを決めておく。その結果、成形された気泡シート体1は、表面部及び裏面部、換言すれば外面部にそれぞれキャップシート2の最外層22、バックシート3の最外層32が表出したものとなる。なお、図2では、最外層22、32にのみハッチを付している。
【0025】
本実施形態に係る気泡シート体1は、各シート(キャップシート2、バックシート3)の薄肉化により単位面積当り重量(いわゆる目付重量)27±1.5g/m2を実現している。
【0026】
次に、本実施形態に係る気泡シート体1のすべり性を、従来の気泡シート体と比較して検証した下記試験、及び試験結果について説明する。
【0027】
[試験方法]
本試験方法は、図3に示すように、寸法300mm×300mmの気泡シート体1を、キャップシート2同士が対面するように、30度の傾斜面に重ね合わせた状態で載せ置き、さらに上方から所定重量のウェイトW(本試験では、高さ300mm、巾300mm、厚み10mmのアルミ板からなる重量略2430gのウェイトWを適用している)を載せ置き、振幅5mm、振動600回/分の揺れを与え、上方側の気泡シート体1が下方に向かってずれる距離X(図4)を計測することにより、気泡シート体1のすべり性を計測するという方法である。
【0028】
同一環境下、同一条件下で複数回(具体的には10回)試験を行った結果、表1に示す結果を得た。
【0029】
[表1]

[考察結果]
表1に示すように、従来品の気泡シート体(キャップシート及びバックシートの何れもが、LDPE69%、LDPE31%で構成された単一層である気泡シート体)のずれる距離Xの平均が18.3mmであったのに対して、本実施形態に係る気泡シート体1の前記ずれる距離Xの平均は226mmであった。
【0030】
本試験結果からも明らかなように、本実施形態に係る気泡シート体1は、従来品の気泡シート体よりもすべり性が格段に良好なものであることが判明した。
【0031】
このように、気泡シート体1の外部に表出する外面部として機能する面を有するキャップシート2及びバックシート3が、それぞれ積層体であり、これらキャップシート2及びバックシート3の最外層22、32が、HDPE70%以上で構成されたものであるため、HDPEの結晶性という特性により、急冷した場合にラメラが形成されて表面に微細な凹凸を生じ、シートの全てをLDPEやL―LDPEで構成した従来の気泡シート体と比較して、すべり性が良く、また剛性も高いため、十分な腰を得ることができ、自動加工機で加工する工程で、ピンチロールやコンベアでの受け渡し時にへたりを起こすことがなく、ラインの円滑な流れを保ち、自動裁断や自動製袋に対応できるものとなる。また、気泡シート1が十分な腰を有するものとなることによって、引っ越し時等の梱包作業や建築現場等において断熱材として使用する際の施工をスムーズに行うことができ、さらに、まとわりつき難いものとなり、取り扱い性にも優れたものとなる。
【0032】
しかも、外部に表出する層である最外層22、32をHDPE70%以上で構成することにより、剛性を得られるため、フィルム同士を融着させた融着面(換言すれば、キャップシート2とバックシート3との融着面)の剛性も向上し、各フィルム(キャップシート2、バックシート3)の可及的な薄肉化をも実現できる。
【0033】
このように、本実施形態に係る気泡シート体1は、従来の気泡シート体に対して指摘されていた問題点を悉く解消し、原材料の使用量削減による省資源化、廃棄焼却時における二酸化炭素排出量の削減を実現することができるのみならず、作業性及び取り扱い性にも優れたものである。
【0034】
特に、キャップシート2及びバックシート3の各最外層22、32の厚み寸法が、キャップシート2全体の厚み寸法、或いはバックシート3全体の厚み寸法の5%以上20%以下に設定しているため、各最外層22、32の厚み寸法が、各シート2、3の厚み寸法の5%未満であれば生じる不具合、つまり、製膜が極めて困難になり、十分な腰を得られないものとなる、という不具合や、最外層22、32の厚み寸法が、各シート2、3の厚み寸法の21%以上であれば生じる不具合、つまり、HDPEの分子配向により裂け易くなる、という不具合を解消し、全体的に良好な靭性を有し、裂け難い気泡シート体1となる。
【0035】
一方で、キャップシート2及びバックシート3の基礎となる層21、31をLDPE、又はL―LDPE、或いはこれらの混合体から構成しているため、これら基礎となる層21、31は、安価であって且つ加工性に優れた従来から用いられている材料から成形することより、外面部として機能する層22、32に要求される機能を付与することができる一方で気泡シート体1全体の製造コストを可及的に抑えることができる。
【0036】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0037】
例えば、前記実施形態では、2枚構造の気泡シート体1において、気泡シート体1の外面部として機能する面を有するキャップシート2及びバックシート3の何れの最外層22、32も、その70%以上をHDPEで構成した態様を例示したが、キャップシート2の最外層22のみがHDPE70%以上で構成されたものである態様、或いはバックシート3の最外層32のみがHDPE70%以上で構成されたものである態様であっても構わない。
【0038】
また、キャップシートと、キャップシートのうちキャップの底部側に貼り合わされるバックシートと、キャップシートのうちキャップの頂部側に貼り合わされるライナーシートとを備えた3枚構造の気泡シート体であってもよい。この場合、各シート(キャップシート、バックシート、ライナーシート)のうち、外部に表出する外面部として機能する面を有するシートは、バックシート及びライナーシートであり、これらバックシート及びライナーシートが、それぞれ複数の層からなる本発明の「積層体」に相当する。そして、バックシート及びライナーシートの何れの最外層もHDPE70%以上で構成したものである態様、何れか一方の最外層のみがHDPE70%以上で構成したものである態様、これら各種態様であってもよい。
【0039】
また、2枚構造の気泡シート体又は3枚構造の気泡シート体において、複数枚のシートのうち、外部に表出する外面部として機能する面を有するシートの一枚のみを、2層以上の積層体とし、当該シート以外のシートを単一層のものとしても構わない。
【0040】
つまり、本発明に係る気泡シート体の本質部分は、外部に表出して気泡シート体の外面部を形成し得る面を有する2枚のシート(2枚構造の気泡シート体であればキャップシート及びバックシート、3枚構造の気泡シート体であればバックシート及びライナーシート)の少なくとも何れか一方が、その最外層をHDPE70%以上で構成したものである点である。
【0041】
また、外部に表出して気泡シート体の外面部を形成し得る面を有する2枚のシート(2枚構造の気泡シート体であればキャップシート及びバックシートであり、3枚構造の気泡シート体であればバックシート及びライナーシート)の何れもが、その最外層の70%以上をHDPEで構成したものである場合、一方のシートの最外層を構成するHDPEとHDPE以外の合成樹脂との混合比と、他方のシートの最外層を構成するHDPEとHDPE以外の合成樹脂との混合比とを用途や設置場所等に応じて異ならせても構わない。
【0042】
また、前記実施形態では、積層体として2層状のものを例示したが、積層体が3層以上のものであってもよい。
【0043】
また、積層体であるシートにおいて、各層(基礎となる層や最外層)の一体化を接着や融着によって行うようにしても構わない。
【0044】
加えて、キャップシート2の最外層22として、その60%以上70%未満をHDPEで構成し、残りの30%以上40%未満をLDPE、又はL―LDPE、或いはこれらの混合体から構成しているものであっても、従来周知のLDPE、又はL―LDPE、或いはこれらの混合体から構成したシートと比較してHDPEを十分多く含み、従ってHDPEの結晶性及び剛性という特性に由来する効果、すなわち上述した実施形態の気泡シート体の構成に係る効果をある程度は得ることができる。なお、HDPE60%以上でも、被包装物の表面にキャップシートによる凹凸跡が付く現象を抑制する効果を期待することができる。
また、外部に表出する外面部として機能する面を有する二枚のシートのうち何れか一方のシートがHDPE60%以上で構成された最外層を有する積層体である場合には他方のシートの外面に紙状シートをラミネートしている気泡シートや、外部に表出する外面部として機能する面を有する二枚のシートが何れもHDPE60%以上で構成された最外層を有する積層体である場合にはその何れか一方のシートの最外層の外面に紙状シートをラミネートしている気泡シート体であっても構わない。このような気泡シート体を用いて、紙状シートが外面に表出するように折半、あるいは2枚重ねをして緩衝封筒等として利用される袋状物を製造した場合に、この袋状物は軽量な上に丈夫であり、なおかつHDPE60%以上で構成された層を内側に有するものとなり、袋状物内への内容物の収納作業を極めてスムーズに行うことができる。また、従来は袋状物を作製する際に、気泡シート体とは別体の紙を気泡シート体の外面に重ね合わせて溶着する作業が要求され、その作業が面倒であったが、予め紙状シートをラミネートした気泡シート体であるため、このような気泡シート体を用いて袋状物を作製する段階において紙を気泡シート体の外面に重ね合わせて溶着する作業が不要となり、袋状物を容易に作製することができる。なお、紙状シートは、平坦な外面を有するものである。紙状シートとしては、クラフト紙や、気泡シート体と同系の素材の不織布が挙げられる。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る2枚構造の気泡シート体の側面図を模式的に示す図。
【図2】図1の一部拡大図。
【図3】気泡シート体のすべり性を計測する試験方法を模式的に示す図。
【図4】気泡シート体のすべり性を計測する試験方法を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0046】
1…気泡シート体
2…キャップシート
21…基礎となる層
22…最外層
3…バックシート
31…基礎となる層
32…最外層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突状のキャップを複数成形したキャップシートと、当該キャップシートのうち前記キャップの底部側に貼り合わされるバックシートとを備えた2枚構造、又は前記キャップシートのうち前記キャップの頂部側に貼り合わされるライナーシートをさらに備えた3枚構造の気泡シート体であって、
前記複数枚のシートのうち、外部に表出する外面部として機能する面を有するシートの少なくとも一枚が、2層以上の積層体であり、
当該積層体の最外層が、HDPE70%以上で構成されたものであることを特徴とする気泡シート体。
【請求項2】
突状のキャップを複数成形したキャップシートと、当該キャップシートのうち前記キャップの底部側に貼り合わされるバックシートとを備えた2枚構造、又は前記キャップシートのうち前記キャップの頂部側に貼り合わされるライナーシートをさらに備えた3枚構造の気泡シート体であって、
前記複数枚のシートのうち、外部に表出する外面部として機能する面を有するシートの少なくとも一枚が、2層以上の積層体であり、
当該積層体の最外層が、HDPE60%以上で構成されたものであることを特徴とする気泡シート体。
【請求項3】
前記最外層の厚み寸法が、前記積層体全体の厚み寸法の5%以上であって且つ20%以下である請求項1又は2記載の気泡シート体。
【請求項4】
前記外部に表出する外面部として機能する面を有する二枚のシートのうち何れか一方のシートが前記HDPE60%以上で構成された最外層を有する前記積層体である場合には他方のシートの外面に、又は前記外部に表出する外面部として機能する面を有する二枚のシートが何れも前記HDPE60%以上で構成された最外層を有する積層体である場合にはその何れか一方のシートの最外層の外面に、紙状シートをラミネートしている請求項2又は3記載の気泡シート体。
【請求項5】
前記紙状シートがクラフト紙である請求項4記載の気泡シート体。
【請求項6】
前記紙状シートが不織布である請求項4記載の気泡シート体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−279917(P2009−279917A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203058(P2008−203058)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】