説明

気液分離装置

【課題】軸部材の軸方向に隣接する羽根同士の相互の間の距離を調整しても、羽根部材の先端とケーシング内壁との間の隙間が大きくならずに、気液分離効率が低下しない気液分離装置を提供すること。
【解決手段】軸部材17の外周面には、取付板26が螺旋状に巻回されるとともに、取付板26には複数のピン27が、所定の間隔をおいて突設される。ピン27には、各羽根部材28が、軸部材17の軸方向に重なり合って取り付けられるとともに、軸部材17の周方向に隣接する羽根部材28同士は、周方向への接離移動を許容する連結機構29によって連結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液分離室に配置した羽根部材同士の相互の距離を調整することで、螺旋状通路を通過する気液混合流体の流速を可変させる可変機構を備えた気液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような気液分離装置としては、例えば、特許文献1に記載されているものがある。特許文献1の気液分離装置は、分離器ケーシングで入口と気液分離室と出口とを形成する。気液分離室には、遠心力付与部材として螺旋状の旋回羽根を上下に渡って1枚取り付けるとともに、旋回羽根の中央部に円筒部材を配置する。円筒部材は、中央に連通路を設けて、上部の連通孔を介して出口と連通する。さらに、円筒部材の上部に調節ねじを設けるとともに、調節ねじを上下することにより、旋回羽根の相互の間の距離を小さくしたり大きくしたりして、流路面積を調整し、流路を通過する流体の流速を可変する。
【0003】
入口からケーシング内へ流入した流体は、旋回羽根で遠心力が付与されて、質量の大きな水滴や錆等の異物は外側へ振り出され、バルブやスチームトラップを介して外部へ排出される。反対に質量の小さな蒸気は中心部を旋回し、円筒部材の連通路と連通孔を介して出口から外部へ流下する。
【特許文献1】特開平11−147014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の気液分離装置は、1枚の螺旋状の旋回羽根が円筒部材に上下に亘って取り付けられているため、旋回羽根の相互の間の距離を大きくすると、旋回羽根の先端が旋回羽根の中央側へ移動し、旋回羽根の外径が小さくなり、分離器ケーシングの内壁と旋回羽根とが離間してしまう。よって、分離ケーシングの内壁と旋回羽根との間の隙間が大きくなってしまうため、流速が低下し、気液分離効率が低下してしまう虞があった。
【0005】
本発明の目的は、軸部材の軸方向に隣接する羽根同士の相互の距離を調整しても、羽根部材の先端とケーシング内壁との間の隙間が大きくならずに、気液分離効率の低下を抑制し得る気液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ケーシング内には流入口から流入した気液混合流体を気液分離する気液分離室が形成されるとともに、前記気液分離室の中央には分離した気体を排出口に導く排出路を形成した軸部材が配置され、前記軸部材の周囲には前記気液混合流体に遠心力を与える遠心力付与部材が配置されることによって螺旋状通路が形成され、前記軸部材の軸方向に沿う前記遠心力付与部材の相互の距離を調整することで前記螺旋状通路を通過する前記気液混合流体の流速を可変させる可変機構を備えた気液分離装置であって、前記遠心力付与部材は、分割した複数枚の羽根部材によって構成し、前記複数枚の羽根部材は、前記螺旋状通路の延設方向に沿って隣り合う羽根部材同士の一部を重合させて配置し、前記羽根部材の重合部分において隣接する羽根同士を、前記延設方向への接離移動を許容する連結機構によって連結したことを要旨とする。
【0007】
この発明によれば、遠心力付与部材を分割した複数枚の羽根部材で形成し、羽根部材同士の接離移動を許容した状態で連結することで、羽根部材の先端とケーシング内壁との隙間を広げることなく、可変機構によって羽根部材の相互の距離を調整し得る。すなわち、羽根部材の相互の距離を調整しても、羽根部材の先端の径方向の位置が維持される。よって、ケーシング内壁と羽根部材との間の隙間が大きくならず、気液分離効率の低下を抑制し得る。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の気液分離装置において、前記連結機構は、一方の羽根部材に形成された突部と、他方の羽根部材に形成されるとともに前記突部が嵌挿され、前記突部を前記延設方向へ摺動案内する案内部によって構成されていることを要旨とする。この発明は、連結機構を構成する上で好適である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の気液分離装置において、前記連結機構は、一方の羽根部材を折り曲げ形成した係合凹所によって構成され、他方の羽根部材を前記係合凹所に係合させることで羽根部材同士が連結されることを要旨とする。この発明によれば、新たな部材を設けることなく、羽根部材を折り曲げ形成するだけで連結機構を構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、軸部材の軸方向に隣接する羽根同士の相互の間の距離を調整しても、羽根部材の先端とケーシング内壁との間の隙間が大きくならずに、気液分離効率が低下しない気液分離装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜図7にしたがって説明する。
図1に示すように、気液分離装置10のハウジングを構成するケーシング11には、液体と気体とを含む気液混合流体(以下、単に流体とする)の入口(流入口)12と、流体を液体と気体とに分離するための気液分離室13とが形成されている。また、気液分離装置10のハウジングを構成するケーシング11には、気液分離室13で分離された流体をケーシング11の外部へ排出するための排出口14と、気液分離室13で分離された気体をケーシング11の外部へ排出するための出口(流出口)15とが形成されている。気液分離室13内の下方には、分離された液体が滴下する下方空間16が形成される。気液分離室13内の中央には筒状の軸部材17が設けられているとともに、軸部材17は、ケーシング11の外部に設けられた駆動源としてのモータ18と接続されることで回転可能となっている。モータ18は、気液分離装置10の外部に設けられた制御装置19と電気的に接続されるとともに、制御装置19は、流体の入口12付近に設けられた流体の流量を検知するための流量センサ20と電気的に接続されている。
【0012】
軸部材17は、ケーシング11の上方を貫通するように設けられているとともに、気液分離室13内の上壁131に固設された支持部21で回転可能に支持されている。また、軸部材17には、気液分離室13で分離された気体が通過する排出路としてのガス通路22が軸方向に沿って直線状に形成されるとともに、軸部材17の上部にはガス通路22と出口15とを連通させるための連通孔23が形成されている。軸部材17の外周面には雄ねじ24が形成されており、雄ねじ24には内周面に雌ねじ25aが形成された可動部25が螺合されている。可動部25は、図示しない取付部材によって回転不能な状態で気液分離室13内に取り付けられている。そして、可動部25は、軸部材17が上下方向へ移動することなく気液分離室13内で回転することにより、その回転に伴って軸部材17の軸方向に沿って上下動する。
【0013】
図2に示すように、軸部材17の外周面には、樹脂製で、かつ薄板状の取付板26が螺旋状に巻回されている。取付板26の上端は支持部21に固着されているとともに、下端は可動部25に固着されている。そして、取付板26には、図1に示すように、樹脂製の複数のピン27が、所定の間隔をおいて突設されている。各ピン27には、入口12を介して気液分離室13に流入した流体に遠心力を与える遠心力付与部材としての羽根部材28が取り付けられている。本実施形態において各羽根部材28は、樹脂製とされ、同一形状で形成されている。そして、複数の羽根部材28は、軸部材17に対して螺旋状に巻回した取付板26のピン27に取付けられることにより、流体の通路としての螺旋状通路を気液分離室13に形成する。
【0014】
図3に示すように、ピン27の先端部272は、断面台形状に形成されており、先端部272の径は丸棒状に形成した基端部271の径よりも大きい膨出部とされている。そして、各羽根部材28の基端部281には、羽根28の先端部282に向かって延びる直線状の穴S1と、その先端が断面台形状をした穴S2とで構成される挿入穴Sが形成されている。各羽根部材28は、ピン27を基端部281に形成した挿入穴Sに挿入し、ピン27の先端部272を挿入穴Sの穴S2に係止させることで、取付板26に取付けられる。各羽根部材28の先端部282は、挿入穴Sが形成されている基端部281より薄く形成されている。
【0015】
図4に示すように、ピン27は、軸部材17の周方向に沿って略90度の間隔をおいて取付板26に一体形成されている。各羽根部材28は、それぞれ平面視扇形をなし、各羽根部材28の先端は、取付板26に取付けた状態でケーシング11の内壁111近傍まで延在する長さで形成されている。これらの各羽根部材28は、図4に示すように、軸部材17の周方向に隣接する羽根部材28同士の一部、具体的には各羽根部材28の側部が軸部材17の軸方向に重なり合って取付板26に取付けられる。そして、軸部材17の周方向に隣接する羽根部材28同士は、連結機構29によって連結されている。図4においては、4枚の羽根部材28A〜28Dが軸部材17に対して螺旋状に巻回するように図示されている。各羽根部材28は、図4における右側の羽根部材28Aが最も上側に位置するとともに、図4における下側の羽根部材28Bが、軸部材17に対して螺旋状に巻回するように羽根部材28Aの下側に配置されている。さらに、図4における左側の羽根部材28Cが軸部材17に対して螺旋状に巻回するように羽根部材28Bの下側に位置するとともに、図4における上側の羽根部材28Dが、軸部材17に対して螺旋状に巻回するように羽根部材28Cの下側に位置するように配置されている。
【0016】
ここで、連結機構29について説明する。図5(a)に示すように、軸部材17の周方向に隣接する羽根部材28同士が重合する部分H1において、上側の羽根部材28aの裏面281a側(下面側)には、先端を球状に形成した突部としての突起部291が形成されている。その一方で、軸部材17の周方向に隣接する羽根部材28同士が重合する部分H1において、下側の羽根部材28bの表面281b側(上面側)には、突起部291と対応する位置に突起部291を嵌挿する溝292aを有する案内部としてのレール部材292が設けられている。レール部材292は、突起部291の先端を摺動案内可能な溝292aを有する箱状に形成されている。そして、レール部材292の上面には、一方の端R側に突起部291を溝292a内に挿入するための平面視円形の挿入孔292bが形成され、挿入孔292bから他方の端L側に向かって突起部291の先端よりも幅狭のスリット292cが形成されている。これにより、突起部291は、挿入孔292bからの抜き差しのみが可能となり、スリット292cからは抜き差しできないようになっている。そして、図5(c)に示すように、レール部材292は、弧状に形成されているとともに、レール部材292の溝292aもレール部材292と同じように弧状に形成されている。これらの弧状は、羽根部材28の扇形の弧状と同じ弧を描くように形成されている。
【0017】
このような連結機構29によれば、隣接する羽根部材28同士は、上側の羽根部材28aの突起部291を下側の羽根部材28bのレール部材292の溝292aに嵌挿し、係合することで連結される。そして、上側の羽根部材28aと下側の羽根部材28bは、突起部291が溝292a内を摺動案内されることにより、互いが接離する方向への移動が許容された状態で連結される。また、上側の羽根部材28aと下側の羽根部材28bは、両端R,Lが壁面によって閉塞されていることで、端Rと端Lの範囲内での移動が許容されている。すなわち、上側の羽根部材28aと下側の羽根部材28bの移動量は、連結機構29によって規制されている。
【0018】
次に、羽根部材28の動きについて説明する。図7に示すように、例えば、車両のエンジンの回転数と負荷の関係によって、気液分離装置10に流入する流体の流量が変化する。一般に、流体は、エンジンの回転数及び負荷が小さい状態の場合は小流量であり、エンジンの回転数及び負荷が大きい場合は大流量である。気液分離装置10に流入される流体の流量は、流量センサ20によって検知する。そして、流量センサ20によって検知された情報を制御装置19に送ることによって、制御装置19がその情報を基にモータ18の回転方向及び回転数を制御する。例えば、車両のエンジンの回転数及び負荷が小さい状態の場合、すなわち、流体が小流量の場合は、流量センサ20によって検知した小流量の情報を制御装置19に送るとともに、制御装置19がモータ18を右回転に回転させる信号をモータ18に送り、モータ18が軸部材17を右回転に回転させる。すると、可動部25が上方へ移動するとともに、取付板26が上側へ移動する。よって、複数の羽根部材28も上側へ移動することで、軸部材17の軸方向に隣接する羽根部材28同士の相互の距離が小さくなる。このとき、図5(a)に示すような軸部材17の周方向に隣接する羽根部材28同士の重合する部分H1において、上側の羽根部材28aの突起部291は、溝292aの一方の端R側から他方の端L側へ向かって移動する。すなわち、上側の羽根部材28aが右回りに移動するとともに、図5(b)に示すように、上側の羽根部材28aと下側の羽根部材28bとの重合する面積が大きくなる。また、各羽根部材28の傾きは、取付板26が上側へ移動することによって小さくなる。よって、流体の通路面積が小さくなることで、気液分離室13内を通過する流体の速度は、入口12から流入したときの流体の速度よりも速くなる。すなわち、軸部材17、モータ18、可動部25及び取付板26は、軸部材17の軸方向に沿う羽根部材28同士の相互の距離を調整することで螺旋状通路を通過する流体の流速を可変させる可変機構を構成する。
【0019】
一方、車両のエンジンの回転数及び負荷が大きい状態の場合、すなわち、流体が大流量の場合は、流量センサ20によって検知した大流量の情報を制御装置19に送るとともに、制御装置19がモータ18を左回転に回転させる信号をモータ18に送り、モータ18が軸部材17を左回転に回転させる。すると、可動部25が下方へ移動するとともに、取付板26が下側へ移動する。よって、複数の羽根部材28も下側へ移動することで、軸部材17の軸方向に隣接する羽根部材28同士の相互の間の距離が大きくなる。このとき、図5(b)に示すような軸部材17の周方向に隣接する羽根部材28同士の重合する部分H2において、上側の羽根部材28aの突起部291は、溝292aの他方の端L側から一方の端R側へ向かって移動する。すなわち、上側の羽根部材28aが左回りに移動するとともに、図5(a)に示すように、上側の羽根部材28aと下側の羽根部材28bとの重合する面積が小さくなる。また、各羽根部材28の傾きは、取付板26が下側へ移動することによって大きくなる。よって、流体の通路面積が大きくなることで、気液分離室13内を通過する流体の速度は入口12から流入したときの流体の速度よりも遅くなる。
【0020】
入口12から気液分離室13内へ流入してきた流体は、複数の羽根部材28によって付与される遠心力によって液体と気体とに分離される。気体よりも質量の大きな液体は、羽根部材28の先端側に振り出されてケーシング11の内壁111を滴下して下方空間16へ至り、排出口14を介して外部へ排出される。一方、質量の小さな気体は、複数の羽根部材28が形成する螺旋状の通路を旋回して、下方空間16から軸部材17のガス通路22及び連通孔23を介して出口15から外部へ排出される。
【0021】
第1実施形態では以下のような効果を得ることができる。
(1)気液分離室13内に分割した複数枚の羽根部材28を配置して螺旋状通路を形成し、隣接する羽根部材28同士の接離移動を許容した状態で連結することで、羽根部材28の先端とケーシング11の内壁111との隙間を広げることなく、羽根部材28の相互の距離を調整し得る。すなわち、羽根部材28の相互の距離を調整しても、羽根部材28の先端の径方向の位置が維持される。よって、ケーシング11の内壁111と羽根部材28との間の隙間が大きくならず、気液分離効率の低下を抑制し得る。
【0022】
(2)連結機構29を突起部291とレール部材292によって構成し、突起部291をレール部材292で摺動案内させることで、羽根部材28同士の接離移動を確実に許容し得る。そして、羽根部材28同士は、螺旋状通路の延設方向に沿って移動することになるので、羽根部材28の相互の距離を調整した場合であっても、気液分離室13内に螺旋状通路を確実に形成し得る。
【0023】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図8及び図9を用いて説明する。なお、図8及び図9において、第1実施形態の図1〜図7に付した符号と同一符号を付した部分は同一又は相当部分を示し、その重複する説明を省略する。
【0024】
図8に示すように、軸部材17の周方向に隣接する羽根部材30同士が重合する部分H3において、上側の羽根30aの先端部301aには、ケーシング11の内壁111に沿うように下方へ屈曲するとともに、下側の羽根部材30bの先端を囲むように軸部材17側へ屈曲させた係合凹所301Bが形成されている。図9に示すように、上側の羽根部材30aの先端を側面視するとコの字状になっている。図8に示すように、軸部材17の周方向に隣接する羽根30同士が重合する部分H3において、下側の羽根部材30bの先端には切欠Kが形成されている。切欠Kは、図8及び図9に示すように、上側の羽根部材30aに形成した係合凹所301Bに下側の羽根部材30bを挿入し、係合させて連結する際に、下側の羽根部材30bと上側の羽根部材30aの先端部301aの干渉を防止する。
【0025】
本実施形態において、軸部材17の軸方向に隣接する羽根部材30同士の相互の間の距離を小さくすると、上側の羽根部材30aは、軸部材17の周方向に隣接する羽根部材30同士の重合する部分H3において、係合凹所301Bの形成範囲内で右周りに移動する。一方、軸部材17の軸方向に隣接する羽根30同士の相互の間の距離を大きくすると、上側の羽根部材30aは、軸部材17の周方向に隣接する羽根部材30同士の重合する部分H3において、係合凹所301Bの形成範囲内で左周りに移動する。すなわち、上側の羽根部材30aと下側の羽根部材30bは、係合凹所301Bに下側の羽根部材30bを係合させることにより、接離移動が許容された状態で連結される。
【0026】
なお、軸部材17の軸方向に隣接する羽根部材30同士の相互の間の距離を小さくし過ぎたとしても、下側の羽根部材30bの切欠Kが上側の羽根部材30aの先端部301aと接するため、軸部材17の周方向に隣接する羽根部材30同士の重合する部分H3内で羽根部材30が周方向へ移動する。また、軸部材17の軸方向に隣接する羽根部材30同士の相互の間の距離を大きくし過ぎたとしても、上側の羽根部材30aに形成した係合凹所301Bの屈曲部302aが下側の羽根部材30bの裏面301b側と接するため、軸部材17の周方向に隣接する羽根部材30同士の重合する部分H3内で羽根部材30が周方向へ移動する。したがって、隣接する羽根部材30同士は、接離移動が許容されつつ、移動量も規制されている。
【0027】
第2実施形態では、第1実施形態の(1)に対応する効果を得ることができるとともに、以下の効果を得ることができる。
(3)新たな部材を設けることなく、羽根部材30を折り曲げ形成するだけで連結機構(係合凹所301B)を構成することができる。また、隣接する羽根部材30を上下に重合させた時に形成される隙間も最小限に抑えることができる。
【0028】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、図10を用いて説明する。なお、図10において、第1実施形態の図1〜図7に付した符号と同一符号を付した部分は同一又は相当部分を示し、その重複する説明を省略する。
【0029】
図10に示すように、ケーシング11内には、内壁111に沿うように伸縮可能な蛇腹管31が設けられている。ケーシング11の内壁111の上方には、軸部材17に向かって延在する羽根部材32aが、軸部材17の周方向に略90度の間隔をおいて接合されている。蛇腹管31の底面には、流体の入口12から流入された流体が下方空間16に向かって通過するための通路口33が形成されるとともに、蛇腹管31の底面の中心部には軸部材17が貫通している。蛇腹管31の内側に屈曲する部分における、蛇腹管31の内面には、複数の羽根部材32が軸部材17の周方向に略90度の間隔をおいて接合されている。複数の羽根部材32と羽根部材32aとは、軸部材17の周囲を螺旋状の通路を形成するように配置されている。
【0030】
ケーシング11の外部上方には、図示しないインテークマニホールドと連通されている吸気口34が形成される吸気ハウジング35が接合されている。軸部材17の上端は、ケーシング11の上端及び吸気ハウジング35を貫通し、外部へ突出している。軸部材17と吸気ハウジング35の上壁351との近傍には、インテークマニホールドから吸気ハウジング内へ導かれる圧力が外部へ漏れないようにシール部材36がシールされている。吸気ハウジング35内には、軸部材17に接合されたピストン37が収容されている。ピストン37は、軸部材17から吸気ハウジング35の内壁に向かって延在している。ピストン37の裏面371側には、ケーシング11の上壁外部端面112と当接する引張ばね38が介在されている。
【0031】
車両のエンジンの回転数及び負荷が大きい状態の場合、すなわち、流体が大流量の場合は、インテークマニホールドから吸気口34を介して吸気ハウジング35内へ圧力が導かれるとともに、その圧力が引張ばね38を吸引することにより、ピストン37が上方へ移動する。ピストン37が上方へ移動することによって、軸部材17が上方へ移動するとともに、軸部材17と接合された蛇腹管31の底面が上方へ移動する。すると、蛇腹管31の内面に接合されている羽根部材32において、軸部材17の軸方向に隣接する羽根部材32同士の相互の間の距離が小さくなる。
【0032】
一方、車両のエンジンの回転数及び負荷が小さい状態の場合、すなわち、流体が小流量の場合は、インテークマニホールドから吸気ハウジング35内に導かれる圧力が、流体が大流量のときにインテークマニホールドから吸気ハウジング35内に導かれる圧力よりも低くなる。そのため、その圧力が、流体が大流量のときの引張ばね38の状態よりもさらに吸引することによって、流体が大流量のときのピストン37の位置よりもピストン37がさらに上方へ移動する。ピストン37が上方へ移動することによって、軸部材17が上方へ移動するとともに、軸部材17と接合された蛇腹管31の底面が上方へ移動する。すると、蛇腹管31の内面に接合されている羽根部材32において、軸部材17の軸方向に隣接する羽根部材32同士の相互の間の距離が、流体が大流量の場合の軸部材17の軸方向に隣接する羽根部材32同士の相互の間の距離よりさらに小さくなる。
【0033】
蛇腹管31は、軸部材17とともに上下に移動するのみであるため、羽根部材32の先端の位置は維持され、羽根部材32の先端と軸部材17の外周面との間の隙間は大きくならない。
【0034】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、図11を用いて説明する。なお、図11において、第1実施形態の図1〜図7に付した符号と同一符号を付した部分は同一又は相当部分を示し、その重複する説明を省略する。
【0035】
図11に示すように、軸部材17の周方向に隣接する羽根部材40同士が重合する部分H4において、上側の羽根部材40aの裏面401a側(下面側)には、下側の羽根部材40bに向かって直交するように突出する棒状の突部としての突起部411が形成されている。軸部材17の周方向に隣接する羽根部材40同士が重合する部分H4において、下側の羽根部材40bには、突起部411と対応する位置に突起部411が挿通可能な案内部としてのスリット(長孔)412が形成されている。スリット412は、第1実施形態で用いたレール部材292と同じような弧状をしている。突起部411は、スリット412に挿入され、下側の羽根部材40bの裏面401b側に延出する。そして、下側の羽根部材40bを挟むように、下側の羽根部材40bの裏面401b側から突起部411にナット(締結具)413を嵌合させ、上側の羽根部材40aとナット413とによって下側の羽根部材40bが挟持される。よって、軸部材17の周方向に隣接する上側の羽根部材40aと下側の羽根部材40bとは連結される。すなわち、突起部411,ナット413及びスリット412は、羽根部材40同士の接離方向への移動を許容しつつ、連結する連結機構41を構成する。
【0036】
第4実施形態では、第1実施形態に対応する効果を得ることができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について、図12を用いて説明する。なお、図11において、第1実施形態の図1〜図7に付した符号と同一符号を付した部分は同一又は相当部分を示し、その重複する説明を省略する。
【0037】
図12に示すように、金属製で、かつ薄板状の取付板42には、金属製の棒状突起部43が軸部材17の径方向外側に向かって延在するように設けられている。棒状突起部43には、金属製の羽根部材44が取り付けられている。羽根部材44の基端部441には、羽根部材44の先端部442に向かって延びる棒状の挿入穴S3が形成されている。羽根部材44は、棒状突起部43を羽根部材44の基端部441の挿入穴S3に挿入し、羽根部材44の基端部441の挿入穴S3に設けられた軸受45によって棒状突起部43に固定される。棒状突起部43の基端部端面431には雄ねじ46が設けられている。雄ねじ46は取付板42を貫通するとともに、取付板42の裏面421側からナット47でねじ結合されることによって、棒状突起部43は、ナット47と棒状突起部43の基端部端面431とで取付板42を挟むようにして固定される。羽根部材44の先端部442は、挿入穴S3が形成されている羽根部材44の基端部441より薄く形成されている。
【0038】
第5実施形態では、第1実施形態に対応する効果を得ることができる。
なお、本実施形態では以下のような実施形態も可能である。
○ 第1,第2,第4及び第5実施形態において、ピン27及び羽根28,30,44の数を変更しても良い。
【0039】
○ 各実施形態において、軸部材17の周方向に略90度の間隔をおいて配置された羽根28,30,32,44は、例えば、軸部材17の周方向に略120度の間隔をおいて配置してもよい。
【0040】
○ 各実施形態において、軸部材17の駆動源として上方に調節ねじを設けることで、軸部材17を回転させてもよい。すなわち、手動操作によって軸部材17を回転させ、羽根部材の相互の距離を調整しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1実施形態の気液分離装置を示す縦断面図。
【図2】軸部材に巻回された取付板を示す正面図。
【図3】羽根部材とピンとの接続部分を拡大した縦断面図。
【図4】図1におけるA−A線断面図。
【図5】(a)は図4におけるB−B線断面図、(b)は軸部材の軸方向に隣接する羽根部材同士の相互の間の距離を小さくしたときの連結機構を示す縦断面図、(c)は図5(a)におけるX−X線断面図。
【図6】図4におけるC−C線断面図。
【図7】流量の範囲をエンジン回転数と負荷との関係で示したグラフ。
【図8】第2実施形態の羽根部材を示す平断面図。
【図9】図8におけるD−D線断面図。
【図10】第3実施形態の気液分離装置を示す断面図。
【図11】第4実施形態の連結機構を示す縦断面図。
【図12】第5実施形態の羽根部材と棒状突起部との接続部分を拡大した縦断面図。
【符号の説明】
【0042】
11…ケーシング、12…ケーシングに形成された流入口としての入口、13…気液分離室、15…ケーシングに形成された流出口としての出口、17…可変機構を構成する軸部材、18…可変機構を構成するモータ、22…排出路としてのガス通路、25…可変機構を構成する可動部、26…可変機構を構成する取付板、28,30,32,40,44…遠心力付与部材としての羽根部材、29,41…連結機構、291…連結機構を構成する突部としての突起部、292…連結機構を構成する案内部としてのレール部材、301B…連結機構を構成する係合凹所。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内には流入口から流入した気液混合流体を気液分離する気液分離室が形成されるとともに、前記気液分離室の中央には分離した気体を流出口に導く排出路を形成した軸部材が配置され、前記軸部材の周囲には前記気液混合流体に遠心力を与える遠心力付与部材が配置されることによって螺旋状通路が形成され、前記軸部材の軸方向に沿う前記遠心力付与部材の相互の距離を調整することで前記螺旋状通路を通過する前記気液混合流体の流速を可変させる可変機構を備えた気液分離装置であって、
前記遠心力付与部材は、分割した複数枚の羽根部材によって構成し、
前記複数枚の羽根部材は、前記螺旋状通路の延設方向に沿って隣り合う羽根部材同士の一部を重合させて配置し、前記羽根部材の重合部分において隣接する羽根同士を、前記延設方向への接離移動を許容する連結機構によって連結したことを特徴とする気液分離装置。
【請求項2】
前記連結機構は、一方の羽根部材に形成された突部と、他方の羽根部材に形成されるとともに前記突部が嵌挿され、前記突部を前記延設方向へ摺動案内する案内部によって構成されている請求項1に記載の気液分離装置。
【請求項3】
前記連結機構は、一方の羽根部材を折り曲げ形成した係合凹所によって構成され、他方の羽根部材を前記係合凹所に係合させることで羽根部材同士が連結される請求項1に記載の気液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−165963(P2009−165963A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7123(P2008−7123)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】