説明

気液接触膜、気液接触膜モジュール、及びガス回収方法

【課題】高い効率で気液を接触させることができる高性能な気液接触膜を提供する。
【解決手段】細孔を有する気液接触膜であって、該細孔の細孔ピッチが30〜1000nmであり、該細孔の細孔径が10〜300nmであり、該気液接触膜の厚さが30〜1000nmであり、かつ該細孔の孔径分布における標準偏差が平均値の30%以下である気液接触膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体を液体に溶解させるために使用する気液接触膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から化学工業等の多くの分野では、液体への気体(以下「ガス」ともいう。)の溶解、及び該液体からの該気体の回収操作、いわゆる気液接触操作が頻繁に行われている。たとえば、医薬品分野における微生物培養液への酸素供給、電子工業における超純水ラインへのオゾン溶解、水産業界における養魚への酸素供給、並びに化学工場又は火力発電所におけるNO及びSO等の排ガス処理が挙げられる。
【0003】
また近年、様々な場面において地球温暖化ガスの排出削減が求められている。特に排出量が最も多い二酸化炭素(CO)の分離回収は急務であり、火力発電所の燃料排ガスから二酸化炭素を分離する研究が行われている。また、ランドフィルガス(埋め立て処分場から発生するガス)又は消化ガス(汚泥の消化過程で発生するガス)からの二酸化炭素除去なども重要な課題である。
【0004】
これらの処理は、二酸化炭素ガスを含む混合ガスから二酸化炭素を分離する技術であり、様々な手法が取り入れられているが、近年中空糸を用いた分離技術が高効率かつ経済的な方法として提案されている(非特許文献1参照)。しかし、主に研究されてきたものは、中空糸自体を膜として使用する方法であり、膜を透過するガス種の選択性(ガス分離能力に相当)及び透過性(装置全体の処理量に相当)が必ずしも充分とは言えない(非特許文献2参照)。
【0005】
一方、ガス分離能力を持たない中空糸を液膜の支持体として利用する簡便な気液接触装置が提案されており、特に疎水性多孔質中空糸を液膜の支持体として用いる方式が効率の良い二酸化炭素除去を可能にする技術として注目されている(非特許文献3参照)。この技術は、混合ガス成分の液膜への移動性の相違を利用することにより混合ガスからの二酸化炭素除去を行うものである。この際に液膜にアミン水溶液などの二酸化炭素との反応性が大きい溶液を用いることにより、除去性能を向上できることが知られている。
【0006】
また、膜の構造で二酸化炭素の回収効率を向上させる技術として、膜の透過性能を両端で変化させる方法(特許文献1,2参照)が開示されている。しかしながら、この膜の細孔の設計にも限界があり、二酸化炭素回収効率は未だ効率的とは言えず、革新的な膜の細孔の設計が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−305263号公報
【特許文献2】特開2005−305264号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.R.Pena:Symp Pap Energy Biomass Wasters,8(1984),1021−1051.
【非特許文献2】T.Kawai:Tansangasu Kaisyuu Gijutsu,(NTS,Tokyo,1991),PP.22.
【非特許文献3】A.Gabelman and S.Hwang:J Membr Sci,159(1999),61−106.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、特定のガスを含む混合ガスから短時間かつ高回収率で該特定のガスを回収できる気液接触膜モジュール、該モジュールに使用する気液接触膜および気液接触膜積層体、並びに該モジュールを用いたガス回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、細孔の孔径分布が極めて狭いCO回収用気液接触膜が短時間で高い回収率でCOを回収することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、以下に記載の気液接触膜及びその製造方法、気液接触膜積層体及びその製造方法、気液接触膜モジュール、並びにガス回収方法に関するものである。
【0012】
1. 細孔を有する気液接触膜であって、該細孔の細孔ピッチが30〜1000nmであり、該細孔の細孔径が10〜300nmであり、該気液接触膜の厚さが30〜1000nmであり、かつ該細孔の孔径分布における標準偏差が平均値の30%以下である、気液接触膜。
【0013】
2. 細孔から成る凹部を有する第1の鋳型の凹凸を第2の鋳型に転写する工程、及び
該第2の鋳型の凹凸を高分子から成る膜に転写する工程、
を含む、上記1に記載の気液接触膜の製造方法。
【0014】
3. 前記細孔から成る凹部を有する第1の鋳型が、アルミニウム板を陽極酸化することにより作製される、上記2に記載の製造方法。
【0015】
4. 突起から成る凸部を有する第3の鋳型の凹凸を第1の鋳型に転写する工程、
該第1の鋳型の凹凸を第2の鋳型に転写する工程、及び
該第2の鋳型の凹凸を高分子から成る膜に転写する工程、
を含む、上記1に記載の気液接触膜の製造方法。
【0016】
5. 前記突起から成る凸部を有する第3の鋳型が、基板上に積層されたフォトレジスト層を干渉露光して現像することにより作製される、上記4に記載の製造方法。
【0017】
6. 上記1に記載の気液接触膜と多孔性フィルム基材とを積層させて成る気液接触膜積層体。
【0018】
7. 上記1に記載の気液接触膜と多孔性フィルム基材とを積層する工程、及び
加熱により該気液接触膜および/または該多孔性フィルム基材を融かして両者を融着させる工程、
を含む気液接触膜積層体の製造方法。
【0019】
8. 上記1に記載の気液接触膜または上記6に記載の気液接触膜積層体によって内部空間を第1の空間と第2の空間に分離された容器から成り、第1の空間に外部空間からのガス入口とガス出口とを有し、第2の空間に外部空間からの液体入口と液体出口とを有する気液接触膜モジュール。
【0020】
9. 上記8に記載の気液接触膜モジュールのガス入口からガス出口に向かって特定のガスを含む混合ガスを流すとともに、液体入口から液体出口に向かって該特定のガスを吸収する液体を流すことによって、該液体に該特定のガスを吸収させる工程を含むガス回収方法。
【0021】
10. 前記特定のガスが二酸化炭素である上記9記載の方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の気液接触膜は微細孔の孔径分布が狭いため、平均孔径に対して高い圧力で気液接触操作が行え、特定のガスを含む混合ガスから短時間かつ高い回収率で該特定のガスを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の気液接触膜の一態様を示す断面模式図である。
【図2】細孔から成る凹部を有する陽極酸化ポーラスアルミナから成る第1の鋳型を作製するプロセスを示す図である。
【図3】突起から成る凸部を有する第3の鋳型の凹凸を第1の鋳型に転写するプロセスを示す図である。
【図4】細孔から成る凹部を有する第1の鋳型から気液接触膜を作製するプロセスの一例を示す図である。
【図5】実施例1および2で用いた本発明のモジュールを示す断面模式図である。
【図6】比較例1で用いた中空糸モジュールを示す断面模式図である。
【図7】比較例2で用いた平膜モジュールを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の気液接触膜は、細孔を有しており、細孔の細孔ピッチが30〜1000nmであり、該細孔の細孔径が10〜300nmであり、該気液接触膜の厚さが30〜1000nmであり、かつ該細孔の孔径分布における標準偏差が平均値の30%以下である微多孔膜である。なお、本発明における細孔とは、直径が約10〜300nmの微細な寸法を有する孔をいう。
【0025】
本発明の気液接触膜は、片側に特定のガスを含む混合ガスを配置し、他方の側に上記特定のガスを吸収する液体を配置し、膜の細孔を通して気液接触させることによって、特定のガスを含む混合ガスから短時間かつ高回収率で上記特定のガスを回収することが可能になる。
【0026】
一般に混合ガスと液体が接した状態において、混合ガス中の特定のガスの液体への溶解度は、下記(1)式に示すヘンリーの法則に従う。式中、Pは上記混合ガス中の上記特定のガスの分圧、χは上記液体に溶解する上記特定のガスのモル分率、Kは定数である。
P=Kχ ・・・(1)
【0027】
即ち、上記特定のガスの分圧が大きいほど上記液体への溶解度は大きくなる。しかしながら、気液接触膜を介して混合ガスを液体に接触させている場合、上記特定のガスの溶解効率を上げるため上記混合ガスの圧力を上げすぎると上記混合ガスは細孔を通過して液体中で気泡を生成する(「バブリング現象」ともいう。)。気液接触膜の細孔径に分布がある場合、このバブリング現象を発生させない最大圧は、該気液接触膜の最大細孔径に依存する。従って平均孔径は同じでも細孔径分布が狭い気液接触膜ほど、バブリング現象を発生させない最大圧を増加させることができ、特定の気体の液体への溶解度も増加させることができる。このような効果を発揮させるためには、気液接触膜の細孔の孔径分布における標準偏差は、平均値の30%以下であり、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0028】
また、本発明の気液接触膜は、後述する多孔性フィルム基材に比較して表面平滑性が高いため、接触する流体の局所滞留が少なくなり、濃度境界層が薄くなって液側の物質移動が促進され、効率よく気体の溶解を行うことができると考えられる。
【0029】
本発明の別の態様は、上記の気液接触膜と多孔性フィルム基材とを積層して成る気液接触膜積層体である。上述の通り、本発明の気液接触膜は、多孔性フィルム基材に比較して表面平滑性が高いため、気液接触膜積層体に使用する場合は、気液接触膜側に液体を流し、多孔性フィルム基材側に気体を流すことが、液体への気体回収効率が高くなるので好ましい。
【0030】
以下に、本発明の気液接触膜の望ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の気液接触膜に用いられる薄膜の一態様を示す断面模式図である。本態様の気液接触膜の細孔は、薄膜の表面から裏面に渡って細孔径が増加していくテーパー形状を有している。本発明の気液接触膜を後述する製造方法にて製造する場合は、気液接触膜の表面から裏面に渡って細孔径が均一な場合、鋳型より気液接触膜を離型する工程において、薄膜の剥離をスムーズに行うことができず欠陥を生じる可能性があるため、本態様のテーパー形状がより好ましい。
【0031】
次に、本発明の気液接触膜の製造方法について説明する。
第1の製造方法は、細孔から成る凹部を有する第1の鋳型の凹凸を第2の鋳型に転写する工程、及び該第2の鋳型の凹凸を高分子から成る膜に転写する工程を含む気液接触膜の製造方法である。ここで、該第1の鋳型は、たとえば、アルミニウム板を陽極酸化することにより好適に作製することができる。
【0032】
第2の製造方法は、突起から成る凸部を有する第3の鋳型の凹凸を第1の鋳型に転写する工程、該第1の鋳型の凹凸を第2の鋳型に転写する工程、及び該第2の鋳型の凹凸を高分子から成る膜に転写する工程を含む気液接触膜の製造方法である。ここで、該第3の鋳型は、例えば、基板上に積層されたフォトレジスト層を干渉露光して現像することにより好適に作製することができる。
【0033】
上記2種の製造方法において、第1の鋳型は、本発明の気液接触膜と同様に細孔から成る凹部を有する鋳型である。また、第2の鋳型、及び第3の鋳型は、本発明の気液接触膜とは逆に突起から成る凸部を有する鋳型であり、前記第1の鋳型とはポジとネガの関係にある。
【0034】
上記第1の製造方法について、より詳細に説明する。
図2は、細孔から成る凹部を有する第1の鋳型(陽極酸化ポーラスアルミナ)の作製方法を示す。陽極酸化ポーラスアルミナ3は、陽極酸化によりアルミニウム基材2の表面に形成されるが、陽極酸化ポーラスアルミナ3の細孔4の形状は、底部を除いてほぼ一定の径を有する円筒形状をしており、これをそのまま鋳型として用いた場合、薄膜の金型からの剥離をスムーズに行うことができず、欠陥を生じる可能性がある。
【0035】
一方、陽極酸化とエッチングによる細孔の拡大処理とを組み合わせることにより、所望のテーパー形状の孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナから成る反射防止膜作製用のスタンパを製造する方法が知られている(特開2005−156695号公報)。
【0036】
上記方法について簡単に述べると、アルミニウム基材2に所定の時間、陽極酸化を実施して所望の深さの細孔を形成した後、適当な酸溶液中に浸漬することにより孔径の拡大処理を行う。その後、再び陽極酸化を行うことで、1段階目に比較して孔径の小さな細孔を形成する。この操作を繰り返すことにより、テーパー形状の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを得ることができる。繰り返し段数を増やすことで、より滑らかなテーパー形状の細孔を得ることができる。陽極酸化時間と孔径拡大処理時間とを調整することで、様々なテーパー形状を有する細孔の形成が可能であり、この方法を気液接触膜の製造に利用することで、ピッチ、孔の深さに合わせて最適な気液接触膜の構造設計が可能となると考えられる。
【0037】
また、定電圧で長時間陽極酸化を施した後、一旦酸化膜を除去し、再び同一条件で陽極酸化を施すことで作製した陽極酸化ポーラスアルミナを用いることで、高い孔配列規則性を有する陽極酸化ポーラスアルミナを鋳型とすることが可能となる。
【0038】
使用する陽極酸化ポーラスアルミナとしては、例えば、シュウ酸を電解液として用い、化成電圧30V〜60Vにおいて作製した陽極酸化ポーラスアルミナを用いることができる。また、硫酸を電解液として用い、化成電圧25V〜30Vにおいて作製した陽極酸化ポーラスアルミナを用いることもできる。このような陽極酸化ポーラスアルミナを用いることで、より高い規則性を有する窪み配列を有する鋳型を得ることができる。
【0039】
さらに、陽極酸化ポーラスアルミナの作製において、陽極酸化に先立ちアルミニウム表面に微細な窪みを形成し、これを陽極酸化時の細孔発生点とすることもでき、任意の配列を有する窪み配列を鋳型とすることが可能となる。
【0040】
上記方法により作製した第1の鋳型の細孔に、金属、金属酸化物、高分子などの物質を充填した後、第1の鋳型を除去することにより第2の鋳型を得ることができる。
金属、金属酸化物としては、特に限定されるものではないが、一般的にはNi、Ta、SiO、炭素、有機SOG等が使用される。これらの例の中で、Niは電鋳が容易であるため好ましい。
【0041】
また、第1の鋳型の細孔に充填される高分子としては、加工性を有するものであれば限定されないが、代表的なものとして、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシ3フッ化エチレン共重合体、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、ポリ3フッ化塩化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テフロン(登録商標)AF(登録商標:DuPont社製)、ハイフロンAD(登録商標:Solvay Solexis社製)、サイトップ(登録商標:旭硝子社製))、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコール共重合体、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ナイロン、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、並びにそれらの共重合体等を挙げることができる。また、前記高分子のモノマーを第1の鋳型に充填後、UV等の光及び/又は熱で重合させてもよい。これらの例の中で、フッ素系樹脂は第1の鋳型からの離型性に優れるため好ましい。
【0042】
さらに、上記第2の鋳型に高分子を充填し、その後、該第2の鋳型から該高分子膜を離型することによって、気液接触膜を得ることができる。
【0043】
第2の鋳型に高分子を転写する方法としては、特に限定はされないが、光インプリント、熱インプリント、室温インプリント、ナノキャスティングインプリント等の方法を用いることができる。高分子は、第2の鋳型に充填したときに、第2の鋳型の材料と接着又は融着等を起こさず、かつ回収対象となる特定のガスを溶かす液体に対する耐腐食性があるものであれば、特に限定されない。
【0044】
特に回収対象となる特定のガスが二酸化炭素の場合は、二酸化炭素を溶かす液体としてエタノールアミン類等アルカリ性の液体を用いるのが通常であるため、上記高分子は、耐アルカリ性の高いことが好ましい。代表的なものとして、ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシ3フッ化エチレン共重合体、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、テフロン(登録商標)AF、ハイフロンAD(登録商標)、サイトップ(登録商標)等のフッ素樹脂、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、並びにそれらの共重合体等が挙げられる。これらは耐久性が高いので好ましい。
【0045】
また、前記高分子のモノマーを第2の鋳型に充填後、UV等の光及び/又は熱で重合させてもよい。この中でもフッ素樹脂は第2の鋳型からの離型性に優れるためより好ましい。
【0046】
転写に使用する高分子の体積を第2の鋳型の突起から成る凹凸の空隙の体積より多く使用した場合は、気液接触膜の片側の細孔が余分の残膜で塞がれた状態となっているため、離型前又は離型後に、この残膜をエッチング処理することにより除去して貫通開孔薄膜とする必要がある。エッチング方法としては、プラズマ等を利用した高真空ドライエッチング、大気圧ドライエッチング、溶剤を用いたウェットエッチング等を挙げることができる。これらの中でも大気圧ドライエッチングは低コストでエッチング精度が高いため好ましい。
【0047】
以上の工程によって、気液接触膜を製造するプロセスの一例を図4に示す。
陽極酸化ポーラスアルミナ3から成る第1の鋳型の表面に、無電解メッキ又はスパッタリングによりNi−P、Au、Cr等から成る表面導電層を形成した後、Ni等の電解メッキにより第2の鋳型を形成する。第1の鋳型から第2の鋳型を剥離させるか、第1の鋳型を選択的に溶解除去することにより第2の鋳型を得る。次に、第2の鋳型に高分子、例えば、ポリスルホンを溶媒に溶解させた溶液を充填し、溶媒を乾燥させて高分子から成る薄膜を得る。この薄膜の余分に充填された高分子膜をプラズマエッチングで除去した後、第2の鋳型から剥離して気液接触膜を得る。該気液接触膜と多孔性フィルム基材とを積層させることで、本発明の気液接触膜積層体を得ることができる。
【0048】
次に、上記第2の製造方法について、より詳細に説明する。
図3は、突起から成る凸部を有する第3の鋳型から、細孔から成る凹部を有する第1の鋳型を作製する方法を示す。
【0049】
上記第3の鋳型は、干渉露光法によって好適に作製することができる。まず、平滑な基板7(例えば研磨されたガラス原盤)上に、ポジ型フォトレジストを塗布する。ポジ型フォトレジストは半導体装置製造の技術分野において周知のレジストであり、フェノール性水酸基を有する樹脂と、光酸発生剤とを含む組成物である。この組成物は光照射前のアルカリ性現像液に対する溶解性は低いが、光照射によって酸が発生しアルカリ性現像液に対する溶解性が高くなる。この現像液に対する光照射部と光未照射部の溶解性の差異を利用してパターニングを行うことが可能となる。以下においては、上記光未照射部のことを硬化部、上記光照射部のことを未硬化部ともいう。
【0050】
次に、レーザー光を用いた干渉露光法(以下「レーザー干渉露光法」ともいう。)により露光を行い、微細なテーパー形状の突起から成る硬化部と残余の未硬化部を得る。露光後、現像を行い未硬化部を除去することによって、突起から成る凸部8を有する第3の鋳型9として得る。
【0051】
フォトレジストに形成された凸部8は、レーザー干渉露光法により、凸部の頂上部8aが細くなる一方、底部8bが太くなる、いわゆるテーパー形状となる。この現象は、レーザー光のパワー強度がフォトレジスト表面で強く、フォトレジストの中を進むに従って弱くなり、その結果、フォトレジスト表面で露光量が大きくなって頂上部8aが浸食され、フォトレジストの深さ方向へ進むに従って露光量が小さくなって深さ方向への浸食が弱くなり、底面部8bが広がるためであると考えられる。従ってフォトレジストの感光性の度合い(γ値)によってテーパーの角度を調整することができる。
【0052】
なお、レーザー干渉露光法とは、特定の波長のレーザー光を角度θ’の2つの方向から照射して形成される干渉縞を利用した露光法であり、角度θ’を変化させることで、使用するレーザーの波長で制限される範囲内で色々なピッチを有する凹凸格子の構造を得ることができる。例えば、方向を120度ずつずらした3組の上記干渉縞を重ね合わせて露光することで、上記のテーパー形状の突起から成る凹凸パターンを形成することができる。
干渉露光に使用できるレーザーとしては、TEM00モードのレーザーに限定される。TEM00モードのレーザー発振できる紫外光レーザーとしては、アルゴンレーザー(波長364nm、351nm、333nm)、又はYAGレーザーの4倍波(波長266nm)などが挙げられる。
【0053】
また、形成されたパターンのエッチングによってもテーパーの角度を変化させることが可能である。すなわち、高真空プラズマエッチングにおいて、エッチングの異方性を制御することによりテーパーの角度を変えることができる。
【0054】
一般的に入射する反応性イオンの平均自由行程を低圧力にして長くする程、垂直にガスが入射して異方性が大きくなるが、この場合、垂直方向に一様にエッチングされるためテーパーの角度の変化は小さい。逆に圧力を高めに設定することにより、横方向への反応性イオンの入射が増加して横方向にもエッチングされ、テーパーの角度が変化する。
【0055】
上記方法により作製した第3の鋳型に対して、図3(b)に示すように、表面導電層を形成した後Ni電鋳を行い、第1の鋳型を形成する。該第3の鋳型を除去すると凹凸が反転して転写された凹凸を有する第1の鋳型10が得られる(図3(c))。
【0056】
上記方法により作製した第1の鋳型を用いて、その孔に、金属、金属酸化物、高分子などの物質を充填した後、該第1の鋳型を除去することにより第2の鋳型を得ることができる。
【0057】
上記第2の製造方法で作製した第2の鋳型は、前記第1の製造方法で作製した第2の鋳型と同様に、高分子を充填し、該第2の鋳型から離型することによって、連続的に細孔径が変化するテーパー形状を有し、細孔径の孔径分布が非常に小さい気液接触膜を得ることができる。
【0058】
上記の製造方法によって、細孔ピッチが30〜1000nmであり、細孔径が10〜300nmであり、細孔深さが30nm〜1000nmであり、かつ細孔径の孔径分布が極めて狭いことを特徴とする気液接触膜を得ることができる。微細孔径の孔径分布が非常に小さいとは、孔径(孔の直径)の孔径分布における標準偏差が平均値の30%以下であることをいい、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下であることをいう。
【0059】
また、本発明の気液接触膜の気孔率は、特に限定されないが、通常25%以上95%以下、好ましくは、40%以上、更に好ましくは、50%以上、特に好ましくは60%以上である。25%以上であれば透水性に優れ、95%以下であれば気液接触膜として用いる十分な強度を確保できる。
【0060】
上記製造方法によって得られた気液接触膜は、そのまま用いることも可能であるが、機械的強度を高めるために多孔性フィルム基材と積層して気液接触膜積層体として用いることが好ましい。多孔性フィルム基材としては、微多孔膜、不織布、相分離膜、延伸開口膜等を挙げることができる。
【0061】
多孔性フィルム基材の材質としては、回収対象となる特定のガスを溶かす液体に対する耐腐食性があるものであれば、特に限定はされない。
【0062】
例えばCO回収用気液接触膜積層体の場合は、多孔性フィルム基材の材質は、COの吸収剤としてエタノールアミン類等アルカリ性の液体を用いるため、耐アルカリ性の高い材質から成ることが好ましい。代表的なものとして、ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシ3フッ化エチレン共重合体、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、テフロン(登録商標)AF、ハイフロンAD(登録商標)、サイトップ(登録商標)等のフッ素樹脂、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、並びにそれらの共重合体等が耐久性が高く好ましい。
【0063】
多孔性フィルム基材の孔径は、気液接触膜の細孔径より大きいものが好ましく、1〜100μmの範囲にあることがより好ましい。また、多孔性フィルム基材の厚みは10〜1000μmであることが強度と気孔率のバランス上好ましい。気液接触膜の多孔性フィルム基材への積層は、気液接触膜を金型から剥離しながら多孔性フィルム基材に重ね合わせていく方法が一般的であるが、残膜をエッチングすると気液接触膜が金型から離型し難くなる場合がある。この場合は積層した後に残膜をエッチングする必要がある。しかし単純な移し変えによる重ね合わせでは残膜は多孔性フィルム基材側になるので、後工程でエッチングができない問題がある。このような場合、一度別の基材に移し取って裏返しにしてから、多孔性フィルム基材に重ね合わせる必要がある。この別の基材は金型から剥がした薄膜を多孔性フィルム基材に貼り直す必要があるので弱粘着性であることが好ましい。
【0064】
気液接触膜及び多孔性フィルムは、単に重ね合わせて使用することも可能であるが、熱融着及び/又は接着剤による接着を行ってもよい。熱融着の場合、加熱により気液接触膜および多孔性フィルム基材を融かして両者を融着させる。このとき、多孔性フィルム基材を構成する材料の溶融温度が気液接触膜を構成する材料の溶融温度よりも低い方が、熱融着時に気液接触膜の細孔形状への影響が少ないので、より好ましい。熱融着の場合の加熱法としては、加熱板を当てること、熱風を当てること、及び赤外線又は高周波を照射すること等の方法が挙げられる。
【0065】
本発明の別の態様は、上記の気液接触膜および気液接触膜積層体を利用した以下のような気液接触膜モジュールである。気液接触膜モジュールは、混合ガスから特定のガスを回収するために使用することができる。
【0066】
本発明の気液接触膜モジュールは、本発明の気液接触膜及び/又は気液接触膜積層体によって内部空間を第1の空間と第2の空間に分離された容器から成り、第1の空間に外部空間からのガス入口とガス出口とを有し、第2の空間に外部空間からの液体入口と液体出口とを有するものである。また、上記気液接触膜モジュールのガス入口及び/またはガス出口、液体入口及び/または液体出口に、コック又は流量若しくは圧力調整用のバルブを設けることも好ましい。
【0067】
気液接触膜モジュールの容器の材料は、回収対象となる特定のガスを溶かす液体に対する耐腐食性があるものであれば、特に限定はされない。回収対象が二酸化炭素である場合は、耐アルカリ性の高い材質から成ることが好ましい。代表的なものとして、ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシ3フッ化エチレン共重合体、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、テフロン(登録商標)AF、ハイフロンAD(登録商標)、サイトップ(登録商標)等のフッ素樹脂、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、並びにそれらの共重合体等が、高い耐久性のために好ましい。
【0068】
たとえば、図5に断面模式図を示した一態様においては、気液接触膜積層体11によって気液接触膜モジュールの内部空間が二分されており、ガス入口12とガス出口13、および液体入口14と液体出口15を有する。なお、図5では気液接触膜積層体を単純な形状として図示しているが、気液接触面積を大きくするために、このようなモジュールで公知の構造、たとえばスパイラル型、またはプリーツ型にしてもよい。
【0069】
本発明のガス回収方法は、本発明の気液接触膜モジュールのガス入口から特定のガスを含む混合ガスを圧力をかけて流すとともに、本発明の気液接触膜モジュールの液体入口から該特定のガスを吸収する液体を流す(たとえば、圧送する)ことによって、気液接触膜の細孔を通して上記特定のガスを上記液体に吸収させることで行う。
【0070】
本発明のガス回収方法は、特に二酸化炭素の回収に好適に使用できる。COを含む混合ガスに気液接触膜を介して接触させる液体はCO吸収剤を含む液体であることが好ましい(以下「CO吸収液」ともいう。)。CO吸収剤は、COのキャリアとなるものであり、COを吸収できるものであれば特に制限されるものではないが、好ましくはCO吸収剤として周知であるモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等を挙げることができる。その他、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等も用いることができる。これらは単独で、2種類を混合して、または3種類以上を混合して用いることができる。また、CO吸収剤を含むための液体は、特に限定されないが、水でもよい。つまり、CO吸収剤を含む水溶液をCO吸収液として使用することが好ましい。なお、吸収された二酸化炭素は、例えば加熱することで脱離させることができる。
【実施例】
【0071】
次に、二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を回収する実施例に基づいて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されるものではない。
【0072】
[鋳型、及び膜の構造観察]
走査型電子顕微鏡による観察:作製した鋳型、及び気液接触膜から任意の大きさに切り取った試料を導電性両面テープにより試料台に固定し、白金を3nm程度の厚みにスパッタリングして顕微鏡試料とした。高分解能走査型電子顕微鏡装置(日立株式会社製 S−3000N)を用い、加速電圧1.0kV、及び所定の倍率で試料の表面、及び断面を観察した。鋳型の凸部の径、鋳型及び膜の厚み、細孔径、細孔ピッチについて50箇所測定し、平均値を求めた。
【0073】
原子間力顕微鏡による観察:作製した試料から任意の大きさに切り取った気液接触膜試料を両面テープにより試料台に固定し観察試料とした。原子間力顕微鏡(デジタルインスツルメント社製NanoScopeIII)を用い、Veeco社製のNCHVの探針を用いて所定の倍率で膜の表面形状を観察した。
【0074】
[膜厚]
多孔性フィルム基材:膜厚計(Mitutoyo社製 Digimatic Indicator IDF−130)を用いて測定した。異なる10点の箇所で測定し、平均値を求めた。
気液接触膜:走査型電子顕微鏡による気液接触膜の断面観察より膜厚を測定した。
【0075】
[気孔率]
走査型電子顕微鏡による膜の観察により、気液接触膜の測定範囲にある孔の体積を測定し、次式(2)によって気孔率を算出した。ここで、孔の体積は上面の直径がAであり、底面の直径がBであり、高さが膜の厚さに等しい円錐台形状と仮定して計算した。
気孔率(%)=(測定範囲内の孔の体積)/測定範囲の膜の体積×100・・・(2)
【0076】
[CO濃度]
CO吸収液に回収されたCO濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。
【0077】
<実施例1>
0.3Mシュウ酸を電解液として用い、化成電圧60Vで、純度99.99%のアルミニウム板に50秒間陽極酸化を行った。その後、2重量%リン酸30℃中に10分間浸漬し、孔径拡大処理を行った。この操作を5回繰り返し、縦横ともに200mmで、細孔ピッチ300nm、細孔径開口部0.2μm、孔の深さ0.3μmのテーパー形状細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナから成る第1の鋳型を得た。
【0078】
次にこの第1の鋳型の電鋳を行った。まず、ニッケルスパッタにより表面電極処理を行い、その上にニッケルの電気メッキを施した。金属メッキを鋳型から剥離することによって、ニッケルから成る第2の鋳型を得た。
【0079】
得られた第2の鋳型を、蒸留水中で十分に洗浄した。事前に調製したポリスルホン(帝人アモコ社製、UDEL−P3500)のN−メチルピロリドン溶液2wt%をこの第2の鋳型にスピンコートし、80℃で乾燥し、第2の鋳型上に厚さ0.4μmのCO回収用気液接触膜前駆体を形成した。CO回収用気液接触膜前駆体の表面にある残膜をプラズマエッチングにより厚さ0.15μm程度除去した。
【0080】
多孔性フィルム基材として縦横ともに200mmのポリプロピレン不織布(シンテックス(登録商標)MB MO18YY 三井化学株式会社製)を用いて第2の鋳型上の薄膜と160℃(ポリスルホンの熱変形温度は約175℃、ポリプロピレンの融点は約160℃)で熱融着させることによって、第2の鋳型からの薄膜の剥離及び多孔性フィルム基材との積層を同時に行い、ポリプロピレン不織布上にポリスルホンから成るCO回収用気液接触膜が積層されたCO回収用気液接触膜積層体を得た。この積層体の厚みは157μmであった。
【0081】
このCO回収用気液接触膜を電子顕微鏡及び原子間力顕微鏡で解析したところ、空孔率40%、細孔径は50個測定して最小値0.18μm、最大値0.23μm、平均値0.21μm、標準偏差0.02であった。膜厚は平均値0.25μmであった。
【0082】
次にこの気液接触膜積層体を5cm×20cmに切り出し、図5に示すような平膜モジュールを作製し、CO回収試験を実施した。有効膜面積は76cmであった。
【0083】
図5ではCO吸収液を液体入口14から入れて液体出口15から出す。このとき液体出口15側の調圧弁(図示しない)でCO回収用気液接触膜積層体11にかかる圧力を調整する。またCOを含む混合ガスをガス入口12から入れてガス出口13から出す。このときガス出口13側の調圧弁(図示しない)でCO回収用気液接触膜積層体11にかかる圧力を調整してCO吸収液にCOを溶解させる。
【0084】
図5のモジュールにおいて、液体入口14からCO吸収液として30wt%モノエタノールアミン水溶液を気相側に漏出しない限界の圧力をかけ、流量0.2l/分で流し、一方ガス入口12から混合ガスとしてN:CO=9:1のガスをCO吸収液側にバブリングしない限界の圧力で通気した。CO吸収液の圧力は0.21kg/cm、混合ガスの圧力は0.21kg/cm、液温および混合ガス温度は25℃であった。液体出口15から採取したCO吸収液のCO濃度を測定した結果、COの回収率は85%であった。
【0085】
<実施例2>
平滑に研磨された縦横ともに200mmのガラス板上にポジ型のフォトレジストを厚み300nmで塗布してフォトレジスト付基板を得た。TEM00モードのアルゴンレーザ(波長364nm)から出射される光をミラーで2分割して45度の角度で2方向から照射して重ね合わせることで干渉縞を形成させ、形成された干渉縞を120度間隔で3方向からフォトレジスト付基板に照射してフォトレジストを露光した。露光後、現像を行い、未硬化部を除去することによって、第3の鋳型を得た。
【0086】
この第3の鋳型の突起はピッチ260nmで、凸部の径は底部で250nm、頂部で120nmであり、高さは300nmであった。
【0087】
次にこの第3の鋳型の電鋳を行った。まず、ニッケルスパッタにより表面電極処理を行った。その上にニッケルの電気メッキを施し、金属メッキを第3の鋳型から剥離することによって、第3の鋳型の凹凸構造を反転して転写された第1の鋳型を得た。
【0088】
次に第二の電鋳の剥離のための処理として、第1の鋳型の表面を酸化処理して金属の酸化被膜を形成した。そして、電鋳として第1の鋳型の表面にニッケルメッキを施した。第1の鋳型から金属メッキを剥離して第2の鋳型を得ることができた。この第2の鋳型は第1の鋳型を原盤として作製されるため、壊れても補充が可能である。
【0089】
事前に調製したポリスルホン(帝人アモコ社製、UDEL−P3500)のN−メチルピロリドン溶液2wt%をこの第2の鋳型にスピンコートし、80℃で乾燥し、厚さ0.4μmのCO回収用気液接触膜前駆体を第2の鋳型上に得た。
【0090】
次に縦横ともに200mmに切出したフィックスフィルムHG−1(フジコピアン(株)社製)を張り合わせ、剥がすことによりCO回収用気液接触膜前駆体を金型から離型した。
【0091】
多孔性フィルム基材としてポリプロピレン不織布(シンテックス(登録商標)MB MO18YY 三井化学株式会社製)を縦横ともに200mmに切出して金型から離型したCO回収用気液接触膜前駆体と重ね合わせた。160℃で加熱してCO回収用気液接触膜前駆体と多孔性フィルム基材とを熱融着させた後フィックスフィルムHG−1を剥離した。CO回収用気液接触膜前駆体の表面にある残膜をプラズマエッチングにより厚さ0.15μm程度除去してCO回収用気液接触膜積層体を得た。この積層体の厚みは158μmであった。
【0092】
このCO回収用気液接触膜を電子顕微鏡及び原子間力顕微鏡で解析したところ、空孔率48%、細孔径は50個測定して最小値0.17μm、最大値0.24μm、平均値0.22μm、標準偏差0.02であった。膜厚は平均値0.26μmであった。
【0093】
次にこの気液接触膜積層体を5cm×20cmに切り出し、図5に示すような平膜モジュールを作製し、CO回収を実施した。有効膜面積は76cmであった。
【0094】
図5のモジュールにおいて、液体入口14からCO吸収液として30wt%モノエタノールアミン水溶液を気相側に漏出しない限界の圧力をかけ、流量0.2l/分で流し、一方ガス入口12から混合ガスとしてN:CO=9:1のガスをCO吸収液側にバブリングしない限界の圧力で通気した。CO吸収液の圧力は0.22kg/cm、混合ガスの圧力は0.22kg/cm、液温および混合ガス温度は25℃であった。液体出口15から採取したCO吸収液のCO濃度を測定した結果、COの回収率は89%であった。
【0095】
<比較例1>
ポリスルホン(帝人アモコ社製、UDEL−P3500)19重量部、ジメチルスルホキシド31重量部、ポリエチレングリコール(分子量200)19重量部を混合した製膜溶液を50℃下で35℃の内部凝固液(水/ジメチルスルホキシド/ポリエチレングリコール=21/50/29重量部)とともに二重管ノズルに吐出させ、75℃の凝固浴中で凝固させて中空糸膜を作製した。中空糸膜の外径は1.2mm、内径は1.0mmであった。
【0096】
得られた中空糸を電子顕微鏡及び原子間力顕微鏡で解析したところ、空孔率40%、細孔径は50個測定して最小値0.03μm、最大値1.25μm、平均値0.21μm、標準偏差0.20であった。膜厚は平均値100μmであった。
【0097】
長さ1mに切り出した中空糸(16)を100本使用して、図6に示すような中空糸膜モジュールを作製し、CO回収試験を実施した。有効膜面積は75cmであった。
【0098】
図6の中空糸膜モジュールにおいて、液体入口19からCO吸収液として30wt%モノエタノールアミン水溶液を気相側に漏出しない限界の圧力をかけ、流量0.2l/分で流し、一方ガス入口17から混合ガスとしてN:CO=9:1のガスをCO吸収液側にバブリングしない限界の圧力で通気した。CO吸収液の圧力は0.21kg/cm、混合ガスの圧力は0.11kg/cm、液温および混合ガス温度は25℃であった。液体出口20から採取したCO吸収液のCO濃度を測定した結果、COの回収率は42%であった。
【0099】
<比較例2>
ポリスルホン(帝人アモコ社製、UDEL−P3500)19重量部、ジメチルスルホキシド31重量部、ポリエチレングリコール(分子量200)19重量部を混合した製膜溶液を50℃下で25cm×25cmのガラス板上にドクターブレードで流延し、35℃の凝固液(水/ジメチルスルホキシド/ポリエチレングリコール=21/50/29重量部)中に浸漬し、75℃の凝固浴中で凝固させて平膜を作製した。
【0100】
得られた平膜を電子顕微鏡及び原子間力顕微鏡で解析したところ、空孔率40%、細孔径は50個測定して最小値0.03μm、最大値1.23μm、平均値0.20μm、標準偏差0.19であった。膜厚は平均値150μmであった。
【0101】
平膜の大きさは5cm×20cmであった。この平膜(21)を用いて図7に示すような平膜モジュールを作製し、CO回収試験を実施した。有効膜面積は76cmであった。
【0102】
図7の平膜モジュールにおいて、液体入口24からCO吸収液として30wt%モノエタノールアミン水溶液を気相側に漏出しない限界の圧力をかけ、流量0.2l/分で流し、一方ガス入口22から混合ガスとしてN:CO=9:1のガスをCO吸収液側にバブリングしない限界の圧力で通気した。CO吸収液の圧力は0.20kg/cm、混合ガスの圧力は0.10kg/cm、液温および混合ガス温度は25℃であった。液体出口25から採取したCO吸収液のCO濃度を測定した結果、COの回収率は38%であった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の気液接触膜は混合ガスの分離回収、特にCO回収の分野で好適に使用できる。
【符号の説明】
【0104】
1 第1の製造方法による第2の鋳型
2 アルミニウム
3 陽極酸化ポーラスアルミナ
4 細孔
5 気液接触膜
6 多孔性フィルム基材
7 基板
8 テーパー形状の突起から成る凸部
8a 凸部の頂上部
8b 凸部の底部
9 第2の製造方法による第3の鋳型
10 第2の製造方法による第1の鋳型
11 実施例1および2で用いたモジュールのCO回収用気液接触膜積層体(平膜)
12 実施例1および2で用いたモジュールのガス入口
13 実施例1および2で用いたモジュールのガス出口
14 実施例1および2で用いたモジュールの液体入口
15 実施例1および2で用いたモジュールの液体出口
16 比較例1で用いたモジュールのCO回収用気液接触膜(中空糸膜)
17 比較例1で用いたモジュールのガス入口
18 比較例1で用いたモジュールのガス出口
19 比較例1で用いたモジュールの液体入口
20 比較例1で用いたモジュールの液体出口
21 比較例2で用いたモジュールのCO回収用気液接触膜(平膜)
22 比較例2で用いたモジュールのガス入口
23 比較例2で用いたモジュールのガス出口
24 比較例2で用いたモジュールの液体入口
25 比較例2で用いたモジュールの液体出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔を有する気液接触膜であって、該細孔の細孔ピッチが30〜1000nmであり、該細孔の細孔径が10〜300nmであり、該気液接触膜の厚さが30〜1000nmであり、かつ該細孔の孔径分布における標準偏差が平均値の30%以下である、気液接触膜。
【請求項2】
細孔から成る凹部を有する第1の鋳型の凹凸を第2の鋳型に転写する工程、及び
該第2の鋳型の凹凸を高分子から成る膜に転写する工程
を含む、請求項1に記載の気液接触膜の製造方法。
【請求項3】
前記細孔から成る凹部を有する第1の鋳型が、アルミニウム板を陽極酸化することにより作製される、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
突起から成る凸部を有する第3の鋳型の凹凸を第1の鋳型に転写する工程、
該第1の鋳型の凹凸を第2の鋳型に転写する工程、及び
該第2の鋳型の凹凸を高分子から成る膜に転写する工程
を含む、請求項1に記載の気液接触膜の製造方法。
【請求項5】
前記突起から成る凸部を有する第3の鋳型が、基板上に積層されたフォトレジスト層を干渉露光して現像することにより作製される、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の気液接触膜と多孔性フィルム基材とを積層させて成る気液接触膜積層体。
【請求項7】
請求項1に記載の気液接触膜と多孔性フィルム基材とを積層する工程、及び
加熱により該気液接触膜および/または該多孔性フィルム基材を融かして両者を融着させる工程
を含む気液接触膜積層体の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の気液接触膜または請求項6に記載の気液接触膜積層体によって内部空間を第1の空間と第2の空間に分離された容器から成り、第1の空間に外部空間からのガス入口とガス出口とを有し、第2の空間に外部空間からの液体入口と液体出口とを有する気液接触膜モジュール。
【請求項9】
請求項8に記載の気液接触膜モジュールのガス入口からガス出口に向かって特定のガスを含む混合ガスを流すとともに、液体入口から液体出口に向かって該特定のガスを吸収する液体を流すことによって、該液体に該特定のガスを吸収させる工程を含むガス回収方法。
【請求項10】
前記特定のガスが二酸化炭素である請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−206721(P2011−206721A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78512(P2010−78512)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】