説明

気液混合ノズル

【課題】気体供給圧の低圧下で、気液混合の液微粒子の噴射を可能とし、かつ噴射量を調節可能とする気液混合ノズルを提供することにある。
【解決手段】気液混合ノズルは、気体噴射部のオリフィス先端が、液体噴射部のオリフィス先端より噴射方向に突設するように、気体噴射部のオリフィス内に液体噴射部のオリフィスが配置される構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液混合(または2流体)ノズルに関し、より詳細には、気体噴射部のオリフィス先端が、液体噴射部のオリフィス先端より噴射方向に突設してなる気液混合ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、2流体ノズルは、気体供給圧と液体供給圧との2つの圧力を作用させて液体を微粒化(平均粒子径は、例えば10〜50μm程度)させている。この2流体ノズルの供給液量を調節する機構として、液体流通部の内部に、ニードルを移動可能に配置し、このニードルの移動によって、オリフィス開口面積を絞ることで、供給液量を調整する。
【0003】
また、近年、様々な産業分野で、低圧の気体供給圧(例えば、0.1MPa以下)での霧化噴射が要望されている。しかし、気体供給圧を低圧にするほど、液体噴射量が減少するものであった。
【0004】
ところで、微粒子ミストを生成するための噴霧ノズル装置が知られている(特許文献1)。この噴霧ノズル装置は、第1ノズル部と第2ノズル部を有し、第1ノズル部からの噴射液と第2ノズル部からの噴射液とを衝突させて、微粒子ミストを形成することができる。しかしながら、2流体ノズル部を2つ備えるため、コスト高であり、小型化にも適していない。また、気体供給圧を低圧にするのに適した構成ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−126587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、気体供給圧の低圧下で、気液混合の液微粒子の噴射を可能とし、かつ噴射量を調節可能とする気液混合ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、気体噴射部のオリフィス先端が、液体噴射部のオリフィス先端より噴射方向に突設するように、気体噴射部のオリフィス内に液体噴射部のオリフィスが配置される構成である。
【0008】
この構成によれば、気体噴射部のオリフィス先端が、液体噴射部のオリフィス先端より噴射方向に突設するように、気体噴射部のオリフィス内に液体噴射部のオリフィスが配置されているため、気体噴射部のオリフィス先端と液体噴射部のオリフィス先端のそれぞれの位置が一致している構成よりも、液微粒子の噴射量を大きくできる。
【0009】
上記発明において、低圧の気体供給圧力で、液体を微粒化させて噴射することができる。さらに、実質的に液体供給圧を作用させずに、気体供給の作用によって、液体を流動させて液微粒子を発生する場合においても、低圧の気体供給圧で液微粒子を発生することができる。
【0010】
上記発明の一実施形態として、気体噴射部の実質的に同径のオリフィス内に、液体噴射部のオリフィスが配置され、気体噴射部のオリフィスおよび液体噴射部のオリフィスのそれぞれの中心軸が一致する構成がある。
【0011】
「実質的に同径のオリフィス」は、実質的にストレートのオリフィスを形成していることを意味し、例えば、ノズル内部のオリフィス始端部と、ノズル先端部のオリフィス終端部との、それぞれの直径が同一、加工精度として実質的に同一(テーパー角度を許容する)、あるいは、オリフィス始端部の直径に対し、オリフィス終端部の直径が+−10%以内でストレート部を形成することを含む概念である。
【0012】
上記発明の一実施形態として、気体噴射部の実質的に同径のオリフィス内の気体供給側近位に、液体噴射部のオリフィス先端が配置される構成がある。「気体供給側近位」は、気体噴射部の同径オリフィスの始端部の近位を含む。気体噴射部の同径オリフィスの後端部は、ノズル先端部側である。
【0013】
上記発明の一実施形態として、気体噴射部のオリフィスと液体噴射部のオリフィスとが相対移動可能に構成する。
【0014】
この構成によれば、使用態様に応じて、気体噴射部のオリフィス内で液体噴射部のオリフィスが移動でき、あるいは、液体噴射部を固定して気体噴射部が移動できるようにして、液微粒子の噴射量を調節可能に構成できる。また、気体供給圧の変動に応じて、液体噴射部のオリフィスを移動させることができる。また、気体供給圧の変動に連動して、自動的に液体噴射部のオリフィスが移動するように構成できる。移動機構としては、例えば、回転式、直動式が挙げられる。例えば、気体噴射部本体と液体噴射部本体をネジ式で連結する機構(図1参照)において、気体噴射部を回転させて気体噴射部のオリフィス先端を液体オリフィスよりも突設することができ、また、連結機構のパッキンやスプリング等により寸法可変に構成できる。また、電気的には、サーボモータを利用することもできる。自動移動構成としては、例えば、気体供給圧を検知する圧力または気体流量の検知手段と、この検知手段の検知信号を受信し、移動量を算出し、移動機構に移動量データおよび移動指令を送信する制御手段と、制御手段からの移動指令に応じて液体噴射部と気体噴射部を相対的に移動させる移動機構を有して構成される。気液混合ノズルに、気体供給圧力の変動を検知し、報知する手段(光、音、表示)を接続することもできる。
【0015】
気液混合ノズルの他の構成部材としては、公知の部材を用いることができ、例えば、金属製、プラスチック製、ゴム製、それらが混在したもので構成できる。気液混合ノズルに供給される「気体」は、特に制限されず、例えば、空気、清浄空気、高酸素濃度空気、不活性ガス等の気体が挙げられる。また、気液混合ノズルに供給される「液体」は、特に制限されないが、水、イオン化水、化粧水等の化粧薬液、医薬液、殺菌液、除菌液等の薬液、塗料、燃料油、コーティング剤、溶剤、樹脂等が挙げられる。
【0016】
気液混合ノズル装置に供給される気体の供給圧力は、例えば、5kPa〜50kPa、好ましくは、5kPa〜40kPa、より好ましくは5kPa〜30kPa、さらに好ましくは5kPa〜20kPaの低圧条件である。液体の供給圧力は、フリー、例えば、液体の供給圧力等の外的作用がない状態である。この条件において、ノズルを上方に向けて、気体の噴射作用で液体を吸い上げて、気液混合し、液微粒子を発生させ噴射させることができる。すなわち、低エネルギーでも液微粒子を発生させることができる。また、気体噴射部のオリフィス先端を液体噴射部のオリフィス先端より噴射方向に突設し、この突設量を変えることで、液体噴射量を自在に調節できる。なお、気体供給圧力を低圧にできるため、気液混合ノズルの気体送給に必要な駆動源(例えば、コンプレッサー、エアポンプ、電源、圧縮空気ボンベ、手動の空気送給機構)を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】気液混合ノズルの例を示す断面模式図である。
【図2】気液混合ノズル先端部分の例を示す断面模式図である。
【図3】気液混合ノズル先端部分の例を示す断面模式図である。
【図4】気液混合ノズル先端部分の例を示す断面模式図である。
【図5】水オリフィス、空気オリフィスの配置を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、気液混合ノズルについて図を用いて説明する。図1は、気液混合ノズル10の断面図である。気液混合ノズル10は、気体を供給する気体供給部11と、この気体供給部11から気体を気体噴射部の気体オリフィス101に流通する気体流通部12と、液体を液体噴射部の液体オリフィス102に流通する液体流通部12と、を有し、図2から4に示すように、この気体オリフィス101の内部に液体オリフィス102が配置される構成である。
【0019】
図2の気体および液体噴射部の断面模式図において、気体オリフィス101先端と液体オリフィス102先端のそれぞれの位置が一致している。図3および4の気体および液体噴射部の断面模式図において、気体オリフィス101先端が、液体オリフィス102先端より噴射方向に突設している。いずれも、実質的に同一直径の気体オリフィス内に、液体オリフィス102が配置され、気体オリフィスおよび液体オリフィスのそれぞれのストレート方向の中心軸が一致している。図3より図4の方が、気体オリフィス101内の気体供給側近位(あるいは気体オリフィス始端部C近位(図5(b)参照))に、液体オリフィス102先端が配置されている。以下において、気体オリフィスを水オリフィスと、液体オリフィスを水オリフィスと称することがある。
【0020】
好ましい実施形態として、気体オリフィス101内に液体オリフィス102が配置される際に、気体オリフィス101のストレート部の始端部Cから、そのストレート長さの80%の距離までに液体オリフィス102の先端が配置されることが好ましく、始端部Cから、そのストレート長さの50%の距離までに液体オリフィス102の先端が配置されることがより好ましく、始端部Cから、そのストレート長さの20%の距離までに液体オリフィス102の先端が配置されることがさらに好ましく、始端部Cの近傍に液体オリフィス102の先端が配置されることが特に好ましい。始端部Cの近傍は、始端部Cから、気体オリフィス101のストレート長さの1%の距離から15%の距離である。あるいは、始端部Cからの液体オリフィス先端までの距離(L2 図5(b)参照)が、0.01mm以上0.1mm以下が好ましく、0.01mm以上0.08mm以下がより好ましく、0.02mm以上0.08mm以下がさらに好ましい。
【0021】
(実施例1)
空気オリフィス外径(φda[mm]、図5(a)参照)を0.62、空気オリフィス内径(φdb[mm])を0.5、水オリフィス径(φdw[mm])を0.35、0.24、0.15の3種類とし、空気オリフィス内における水オリフィス先端位置(L3、図5(b)参照)を変化した場合における空気圧(Pa[kPa])、空気流量(Qa[NL/min]、水全噴射量(Qw[ml/min])について測定した結果を表1に示す。気液混合ノズルを噴射方向を上向きにして静置させ、液面高さが水オリフィス先端から−25mmとなるように水を予め供給しておき、噴射開始時の空気圧における水全噴射量(Qw)を測定した。空気オリフィス101のストレート長さ寸法(L1、図5(b)参照)は0.51mmである。空気供給駆動源にコンプレッサーを用いた。L3は、空気オリフィス先端から、水オリフィス先端までの距離であり、オリフィス内部方向をマイナス表示とした。
【0022】
【表1】

【0023】
表1の結果から、いずれの水オリフィス径(φdw)においても、水(液体)オリフィス先端が、空気(気体)オリフィス内の気体供給側近位(気体オリフィス始端部C)に近づくほど、水全噴射量(Qw)が増加し、水オリフィス先端が気体オリフィスCと略同じ位置で水全噴射量(Qw)がピークとなり、それ以降は減少する傾向であることが分かった。また、水オリフィス先端が気体オリフィスC位置よりも内部に入り込むに従って、噴射量が急激に低下する結果であったが、これは、空気が空気オリフィスの噴射方向に流れる以外に、水オリフィス内に逆流するように空気が流れて、水オリフィス穴を塞いだり、水供給部内に多量の気泡が発生する。また、水オリフィス径(φdw)が大きいほど、水全噴射量(Qw)が大きい結果であった。
【0024】
(実施例2)
空気オリフィス外径(φda[mm])を0.64、空気オリフィス内径(φdb[mm])を0.5、水オリフィス径(φdw[mm])を0.38、空気オリフィスのストレート長さ(L1)を0.51mmとして、空気オリフィス内における水オリフィス先端位置(L2、L3)を変化させた。気液混合ノズルを噴射方向を上向きにして静置させ、液面高さが水オリフィス先端から−25mmとなるように水を予め供給しておき、液噴射が開始されたときの時の最小の空気圧(kPa)、および、空気圧を50kPaに一定にした場合における空気流量(Qa[NL/min]、水全噴射量(Qw[ml/min])について測定した結果を表2に示す。空気供給駆動源にコンプレッサーを用いた。L2は、空気(気体)オリフィス始端部Cから水(液体)オリフィス端部までの距離である。
【0025】
【表2】

【0026】
表2から実施例2−1〜2−12は、実施例1と同様の傾向であり、水(液体)オリフィス先端が空気(気体)オリフィス始端部C側に配置される程、噴射開始時の最小空気圧が小さく、空気圧50kPa一定時の水全噴射量(Qw)も増加する傾向であった。
【符号の説明】
【0027】
10 気液混合ノズル
101 気体オリフィス
102 液体オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体噴射部のオリフィス先端が、液体噴射部のオリフィス先端より噴射方向に突設するように、気体噴射部のオリフィス内に液体噴射部のオリフィスが配置される気液混合ノズル。
【請求項2】
低圧の気体供給圧力で、液体を微粒化させて噴射する請求項1に記載の気液混合ノズル。
【請求項3】
気体噴射部の実質的に同径のオリフィス内に、液体噴射部のオリフィスが配置され、気体噴射部のオリフィスおよび液体噴射部のオリフィスのそれぞれの中心軸が一致する構成である請求項1または2に記載の気液混合ノズル。
【請求項4】
気体噴射部の実質的に同径のオリフィス内の気体供給側近位に、液体噴射部のオリフィス先端が配置される請求項3に記載の気液混合ノズル。
【請求項5】
気体噴射部のオリフィスと液体噴射部のオリフィスとが相対移動可能に構成されている請求項1から4のいずれか1項に記載の気液混合ノズル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−62583(P2011−62583A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212772(P2009−212772)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(503045038)ノズルネットワーク株式会社 (18)
【Fターム(参考)】