気象変動情報提供システム、気象変動情報提供方法、気象変動情報提供プログラム及び記録媒体
【課題】飛行物体が離着陸する施設において発生するダウンバースト等の気象変動を予測するために利用可能な情報をリアルタイムに可視化して提供することができる気象変動情報提供システム、気象変動情報提供方法、気象変動情報提供プログラム及び記録媒体を提供すること。
【解決手段】気象変動情報提供システム1は、飛行物体の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に分散して配置される複数の気圧計測装置2と、データ処理装置4と、を含む。データ処理装置4は、複数の気圧計測装置2の各々から気圧データを取得する気圧データ取得部32と、気圧データ取得部32が取得した気圧データに基づいて、気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動に関する情報を生成する気象変動情報生成部34と、を含む。気象変動情報生成部34は、気象変動に関する情報の少なくとも一部として、離着陸領域における気圧分布を表す時系列の画像情報を生成する。
【解決手段】気象変動情報提供システム1は、飛行物体の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に分散して配置される複数の気圧計測装置2と、データ処理装置4と、を含む。データ処理装置4は、複数の気圧計測装置2の各々から気圧データを取得する気圧データ取得部32と、気圧データ取得部32が取得した気圧データに基づいて、気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動に関する情報を生成する気象変動情報生成部34と、を含む。気象変動情報生成部34は、気象変動に関する情報の少なくとも一部として、離着陸領域における気圧分布を表す時系列の画像情報を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行物体が離着陸する施設における気象変動に関する情報を提供する気象変動情報提供システム、気象変動情報提供方法、気象変動情報提供プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
アメダス(AMeDAS)とは「Automated Meteorological Data Acquisition System」の略で、「地域気象観測システム」のことを言う。雨、風、雪などの気象状況を時間的、地域的に細かく監視するために、降水量、風向・風速、気温、日照時間の観測を自動的に行い、気象災害の防止・軽減に重要な役割を果たしている。アメダスは1974年11月1日から運用を開始し、現在、降水量を観測する観測所は全国に約1300か所存在する。このうち、約850か所(約21km間隔)では降水量に加えて、風向・風速、気温、日照時間を観測しているほか、雪の多い地方の約290か所では積雪の深さも観測している。
【0003】
気象庁は、全国に網羅した気象観測地点の広範な気象情報或いは人工衛星から送られてくる雲の動き等による広範な地域の気象情報等から天気予報を出している。このような気象庁の天気予報の場合には、観測メッシュが大きく、かつ、時間メッシュも大きく、天気予報から広域な地域の降雨予測は可能であるが、ある限られた地点ないし地域,例えば屋外設置のプラント設備をもつ工場などのごとく極小地域の降雨を予測することは非常に難しい。何となれば、その工場近くの地形等の不特定要因が多いと、天気予報とは全く異なる気象状況,例えば夕立等を降らす場合がしばしば発生するためである。
【0004】
更に、温度、湿度、雨量等の気候特性に応じて、店舗における販売傾向、野外施設における利用状況が変化する。したがって、これらのビジネスにおいてリアルタイムでその地域の気象情報を取得し、分析することが重要となる。また、利用者にとっても、現地の気候がどのようなものかを知ることは、現地において快適に行動する上で重要である。
【0005】
ところで、広範囲な地域にわたる気象情報は気象庁の天気予報等から無料で取得できるが、きめ細かな気象情報や分析結果は専門のサービス業者から取得しなければならず、また高価であった。
【0006】
従来の気象情報収集配信方式は、気象衛星やアメダス、気象レーダー等により比較的範囲の広い気象情報を気象協会等から得ることで、コンテンツ業者が利用者に配信するものである。この場合、入手した気象情報は比較的広範囲な地域を対象としているため、利用者が本当に得たいピンポイントな地区の天気情報等が得られず、利用者のニーズに対応することができないのが現状である。
【0007】
一般の人々は、気象情報、花粉情報等をテレビ、ラジオ等を通じて、気象庁が設置している「アメダス」等から得ているが、これらの情報はかなり広範囲にわたる一般的な情報であり、必ずしも利用者が期待する特定地域、あるいは地域に密着したきめの細かい情報とは言えなかった。これらの情報を取得するには、上記のような従来通りの方法で実現することも可能ではあるが、新たな観測装置、通信設備の導入には莫大な経費がかかる。また、地域を限定した情報を個々人に配信したい場合や、地震、火山の予知情報等を各家庭に配信したい場合においても、受信装置を各家庭に設置する必要があり、かなりの経費負担を個人に強いることになる。
【0008】
特許文献1には、「複数の気象センサー(湿度計,気圧計,日射計,降雨計,風向・風速計等)から収集される現在および過去の気圧データに基づいて当該気圧データの傾向を求めるとともに、この傾向気圧データに基づいて将来の予測時刻の気圧データを予測する傾向抽出手段と、予め定めた極小地域に特有な極小地域気圧データを記憶する極小地域データ記憶手段と、予め過去の気圧データから作成される降雨に関する確信度関数情報を記憶する確信度関数情報記憶手段と、前記傾向抽出手段によって作成される傾向気圧データ,予測気圧データおよび現在気圧データのうち1つ以上の気圧データについて前記極小地域気圧データおよび前記確信度関数情報を用いて各気圧データごとの降雨の確信度を求めるとともに、これら降雨確信度を総合的に判断し、最終的な降雨確信度を求める予測判定手段とを備え、極小地域の降雨を予測することを特徴とする降雨予測装置」が提案されている。
【0009】
特許文献2には、「気象に関する物理量を観測して気圧データを生成する手段(室内温度、屋外温度、室内湿度、屋外湿度、気圧、風速、風向きおよび雨量の少なくとも1つに関するデータを生成する)と、インターネットに接続され、上記気圧データを記憶する気象情報提供用サーバーと、上記気象情報提供用サーバーからインターネットを介して上記気圧データを取り出して所定の処理を行うクライアント(コンピューター)とを有することを特徴とする気象情報処理装置」が提案されている。
【0010】
特許文献3には、「互いに離れた地域にある複数の情報端末が通信回線を介してサーバーの情報装置にそれぞれ接続し、これら情報端末同士及び情報端末とサーバーとの間で情報の転送を行うインターネットであって、前記情報端末に気象観測用のセンサー(気圧、温度、湿度、照度、雨量、雲高、風向、風速等を検出する)とタイマーとを接続するとともに、得られた気圧データを時間関数のグラフに表示するグラフ用プログラムを設け、前記サーバーには気圧データを格納する記憶装置と地図データと気圧天気図作成用の気圧プログラムとを設け、前記情報端末からサーバーをインターネット上でアクセスし気圧データを送信し、及び前記いずれかの前記センサーの気圧データを受信しグラフ化して表示し、また前記サーバーでは前記記憶装置に蓄積した気圧データから前記気圧プログラムにより前記地図データを利用した広域の気圧天気図を作成し、前記情報端末ではこれらを受信して表示することを特徴とする気象観測ネットワークシステム」が提案されている。
【0011】
特許文献4には、「計測した検針値を通信システムを介してセンターに送信する検針装置を設け、前記検針装置に接続され、温度・湿度・気圧・騒音・降雨の有無・降雨量の少なくともいずれか1つの観測データを観測するセンサー装置であって、前記観測データを前記検針値と共に前記センターに送信許容して前記検針装置に記憶させるセンサー装置」が提案されている。
【0012】
特許文献5には、「気象観測できる気象観測端末を積載し気圧データを送信する複数の移動体と、前記気圧データの配信要求と前記気圧データを授受する複数の利用者端末と、前記利用者端末から要求される前記気圧データの検索配信の管理を行うコンテンツサーバーと、前記複数の移動体と前記複数の利用者端末及び前記コンテンツサーバーとを情報接続するインターネットとを備え、前記複数の移動体は車に積載されている各種のセンサーからの情報とGPS受信機からの位置情報及び時間情報を一定の時間周期で携帯電話機を介して前記コンテンツサーバーに送信し、前記コンテンツサーバーは前記複数の移動体より受信した気象情報を、地区ポイント、時間毎に処理蓄積して、前記複数の利用者端末からの問合せに応じて配信し、前記気象観測端末は、気温、気圧、湿度、照度、雨量、雷のいずれかの大気状態を検知しセンサーデータを出力するセンサーであることを特徴とする気象情報収集配信方式」が提案されている。
【0013】
従って、気象情報収集配信方式は、各移動体が走行している各地区ポイントにおける最新の位置データ及び気圧データを送信できるので、ピンポイントな地区の精度の高い天気予報等を多数の利用者に容易に提供することができる。
【0014】
特許文献6には、「複数の携帯端末と、これら携帯端末から情報を収集するとともに加工して配信する情報処理センターと、前記携帯端末と前記情報処理センターとの通信を行う通信網とを具備する情報収集・配信システムにおいて、前記携帯端末は、自己の所在位置を特定する位置特定手段と、情報を収集する情報収集手段と、前記位置特定手段の出力および情報収集手段の出力を前記情報処理センターへ送信する送信手段と、前記情報処理センターからの情報を表示する表示手段とを具備し、前記情報処理センターは、入出力情報を管理するサーバーと前記携帯端末からの情報を蓄積管理する情報データベースと、前記携帯端末へ前記情報データベース内の情報を送信する送信手段と、を具備し、前記位置特定手段は、前記携帯端末の現在の所在位置を経度データ、緯度データとして測定し、前記情報収集手段は、気温、湿度、気圧、紫外線強度、花粉濃度等の気象情報を測定する気象情報測定手段であることを特徴とする情報収集・配信システム」が提案されている。よって、特定地域の情報や、きめの細かい情報を提供することができる。
【0015】
特許文献7には、「多数の各車両に設置した情報検出手段(車両の速度と位置との情報、車両のワイパー稼動情報、外気温度情報、及び、気圧情報を検出するもの)で検出した情報を、前記多数の各車両から収集し、該収集情報を予め設定した特定地域毎及び/又は情報種類毎に地域情報として整理し、該地域情報を有線、無線、もしくは、特定媒体等を介してユーザーに提供することを特徴とする車両を用いた情報収集整理利用システム」が提案されている。
【0016】
従って、車両を用いた情報収集整理利用システムは、道路上等を走行する多数の車両から検出される検出情報を収集し、該収集した総ての情報を分析整理して地域情報(地域的、種類的、時間的な情報に分析整理した情報)とすることによって、リアルタイムで、前記地域情報をユーザーに提供することができる。 また、車両数を多くして情報の収集元を多数することができると共に、多様な情報を検出情報として検出できるので、情報の偏りが少なく、きめの細かい情報を提供できる。
【0017】
特許文献8には、「GPSにより位置情報を取得する測位手段と、気圧データを測定する測定手段と、前記位置情報、気圧データ及び測定時刻を含む観測情報を外部装置へ送信する送信手段と、前記送信手段が送信した気圧データを記憶する記憶手段を備え、前記測定手段が、温度センサー、湿度センサー及び気圧センサーのうち少なくとも一つを備えてなり、前記測定手段が、所定の時間間隔ごとにまたは連続的に、気圧データを測定し、記憶手段に記憶された前回の気圧データと、測定した気圧データとの間に所定の変化が生じた場合に、前記送信手段が測定した気圧データを含む観測情報を送信することを特徴とする気象情報収集用の情報端末」が提案されている。
【0018】
従って、GPSにより位置情報を取得しているので、任意の位置で、気圧データを迅速かつ容易に取得でき、情報端末が現在位置する狭い範囲の地域の天気を高い精度で予報することができる。
【0019】
前述したように、無線移動体通信システムにおいて、基地局のセル半径は数100mから数kmの範囲内であり、数kmのセル半径の場合には1つのセルを複数のセクターに分割している場合が多い。つまり、無線移動体通信システムは、アメダスの設置区間よりも狭い地域の気象情報を収集することができる。今後ますます普及すると考えられるGPSを移動携帯端末に搭載すれば、更に詳細な位置決めが可能となる。つまり、各移動携帯端末に気象センサーを搭載し、移動体通信網を利用し、気象センサーの情報を収集すれば、アメダスと比べ非常に狭い範囲の気象情報を短時間の間隔において収集することができ、短時間予報を正確に行うことが可能である。
【0020】
課題としては、移動携帯端末に搭載された気象センサーにより観測された気象情報の信頼性が、アメダスにおいて観測された気象情報に比べて低くなることである。移動携帯端末においては、小型化、低価格化が要求され、高精度、高価格な気象センサーを搭載することが難しい。更に、移動携帯端末が鞄やバックの中にある場合、移動携帯端末が空調の効いた室内に置かれてある場合、移動携帯端末を身に付け体温の影響がある場合等、気象センサーによる観測条件が様々に異なる。高精度、高価格な気象センサーを移動携帯端末に搭載することが今後も難しいと考えられ、気象センサーにより収集された気象情報をいかに高い精度にするか、つまり収集された気象情報のうち、気象予報に不必要な気象情報をいかに効率的に除去するかが重要である。
【0021】
更に、移動携帯端末において、観測した気象情報のデータ通信量を多く送信することが難しいことである。通常の移動体通信システムにおいて、非音声の通信にはパケット通信が使用されており、送受信した情報量に応じて課金される料金システムである。通信料の低減、通信トラフィックの低減等を考えると、観測した気象情報の通信データ量はできる限り少ない方が好ましい。
【0022】
ここで、移動携帯端末の通信頻度を少なくし、通信時間間隔を長くすれば、通信料を低減することができ、又通信トラフィックを低減することができる。アメダスにおいては、10分に1度の気象観測が行われている。しかしながら、移動体通信においては、10分に1度の気象観測を行い、その都度、定期的に気象情報を送信することは、送信頻度としては比較的多い方である。また、前述のように、狭い地域の短時間間隔の気象予報を正確に行なうという点では、短時間間隔で定期的に気象情報を送信することが必要になる。
【0023】
特許文献9には、「移動携帯端末と通信ホスト装置とから構成された気象予測システムであって、前記移動携帯端末は、気象情報を測定するセンサー部と、前記通信ホスト装置から閾値情報を受信する通信手段と、前記通信手段により受信された閾値情報に基づき前記センサー部で測定された気象情報を破棄し、破棄されなかった気象情報を前記通信手段により前記通信ホスト装置へ送信させる情報制御部とを備え、前記通信ホスト装置は、前記センサー部で測定される気象情報以外の端末外気象情報、季節情報及び地図情報の少なくとも1つの情報を蓄積する端末外気象情報データベース部と、前記端末外気象情報データベース部に蓄積された情報に基づいて演算された前記センサー部で測定された気象情報を取捨するための閾値情報を蓄積する閾値情報蓄積部と、前記閾値情報蓄積部に蓄積された閾値情報を前記移動携帯端末へ送信し、前記通信手段により送信された気象情報を受信するネットワークインターフェースと、を備えることを特徴とする気象予測システム」が提案されている。
【0024】
この構成によれば、センサー部により気象情報を測定し、この気象情報に基づき第1の気象予測部において第1の気象予測を行なうことができる。更に、第1の閾値情報蓄積部に蓄積された閾値情報に基づき不必要な気象情報を破棄し、必要な少量の気象情報に基づき第1の気象予測を行い、気象予測出力手段に第1の気象予測を出力することができるので、第1の気象予測に必要な演算処理能力を軽減し、第1の気象予測を自信で行なうことができる移動携帯端末の小型化、低消費電力化を実現することができる。更に、センサー部においては、最小限の気象情報を測定しているので、通信手段により送信する気象情報量を減少することができる。
【0025】
移動携帯端末、通信ホスト装置のそれぞれの機能分担を適切に割り振り、気象予報を正確に行い、通信トラフィックを低減することができ、かつ移動携帯端末における複雑な処理を減少することができ、利用者に利便性の高い気象予報サービスを提供することができる気象予測システムを提供することができる。
【0026】
特許文献10には、「送信装置が、無線接続されたセンサー装置と送受信装置とで構成され、前記センサー装置に環境状態検出手段が設けられ、前記送受信装置に送信手段が設けられことを特徴とする環境情報供給システム」が提案されている。
【0027】
特許文献11には、「多数の船舶の船舶搭載無線機から送信される気象・海象計測データ及び各船舶の位置データを受信し得る中央受信装置で受信した上記データを収集、記録し、予め定められた時刻における多数の定点における気象・海象データを算出し、当該気象・海象データ本体とヘッダー情報とから成るグリッドデータを作成すると共に、更にそのグリッドデータに基づいて、等圧線データ等を算出し得る演算回路と、その演算結果を格納し得る記憶装置と、通信回線網に接続し得る通信用インターフェースとを具備するデータベースを備えた気象・海象データリアルタイム提供システム」が提案されている。また、中央受信装置で受信された各データは、メッシュ状に細分化(その広さは任意であるが、例えば10Km平方)した海域に対応するGPSによる位置データごとにGIS(Geographic Information System)技術を用いて処理し、等圧線等を求めて地図上に表示する[類似例「アメダス」]と共に、その結果をデータベースに保存することが記載されている。
【0028】
ところで、現在の民間気象会社の実施する気象情報システムサービスは、気象庁の作成する数値予報モデルの結果やアメダス等の広域的全国データを準用して、これらをコンピューター上で画像表示させたものである。すなわち、気象庁のスーパ−コンピューターによって作成される数値予報モデルを主体とした格子点値データ(Grid Point Value。以下、GPVデータと言う。)が予報の主流となっている。このGPVデータは日本列島域ばかりでなく日本を囲む沿岸海域を含めた広い範囲をカバーするものであるため、逆にこのような広範囲のデータからは狭い範囲の局地的気象の予測をすることは難しい。なぜならGPVデータの1番小さい格子でも1辺が30km位の広範囲のもの(例えば東京で言えば、東京−川崎の間が入ってしまう広さ。)で、例えば羽田飛行場、代々木公園といった局地の気象はこのモデルでは捕らえられず解析不可能だからである。そこで数値予報モデル結果から各ユーザーの局地予報を作成する場合には、予報作成の都度、気象技術者がコンピューター上のテクニックでさらに細分化してかつ地形的な修正データを加えて広域的モデル結果から狭義の局地予報に大気現象を翻訳するようにしていた。しかしこのように翻訳したとしても、元々このGPVデータには局地的・特異的データが含まれていないため正確なものとはなり得ない。
【0029】
ところで、積雲や積乱雲は、通常強い上昇気流によって形成されるということが知られているが、減衰期に入ると降水粒子が周囲の空気に摩擦効果を働きかけることで下降気流が発生する。この下降気流のうち、地上に災害を起こすほど極端に強いものをダウンバーストという。ダウンバーストは様々な(往々にして深刻な)被害を及ぼすことが多く、特に航空機にとっては深刻で最も注目すべき気象現象である。なお、下降気流の風速は、通常のものでも「強い台風」あるいはF1の竜巻並みの瞬間風速30(m/s)程度が観測され、稀にこの倍以上の風速に達する。
【0030】
ダウンバーストは地上付近に吹き降ろした後、地面にぶつかって水平方向に広がる。この広がりが約4km未満の比較的小型なダウンバーストはマイクロバースト、広がりが4km以上の大型のダウンバーストをマクロバーストと呼んでいる。普通、マクロバーストよりもマイクロバーストの方が、風速が速く、強い。
【0031】
また、ドップラーレーダーの観測においては、レーダーに対して離れる方向と近づく方向の2方向の風速の差(水平流の風速差にあたる)が10(m/s)以上のものをダウンバーストとしている。ただし、風速差の範囲があまりに大きいものはレーダーでの判別が難しいため、主に風速差の範囲が4km未満のマイクロバーストを対象としている。
【0032】
離着陸を行っている航空機にとって、このダウンバーストは墜落に直結する現象である。これは特に失速速度に近い速度で飛ぶ、機体姿勢の不安定な着陸時に強い下降気流によって地面に機体が押されるためである。またダウンバーストと同時に起きる現象としてウインドシアがある。これはダウンバースト中心から下降流が地面に吹き付けるが、この下降流は地面に跳ね返されて乱気流となりダウンバースト中心から放射状に風向が変わる。つまり低高度で急激に風向が変わるのである。
【0033】
例えば着陸進入時に滑走路手前でダウンバーストが発生していたとすると、最初は強い向かい風が吹くために機体が浮き上がる。これに対してエンジン出力を絞るなどしてパイロットは着陸進入を続けるが、ダウンバースト(マイクロバースト)中心付近を通過すると一挙に機体が地面に向かって押された後で、今度は機体に対して強烈な追い風が吹く。このためエンジン出力を増して対気速度を上げる必要に迫られるが、民間機用のジェットエンジンはレシプロエンジンと違いパイロットの操作から出力上昇まで数秒のタイムラグがある。従って着陸時は元々失速速度までの余裕が少ないために、あっという間に失速に陥ってしまい低高度のため回復させる余裕もなく墜落してしまうことがある。墜落に至らなくても、ほとんど墜落に近いかなりの衝撃を伴った着陸となる。
【0034】
このような事故が1970年代から80年代に特に民間航空機の就航本数の多いアメリカ合衆国で多発した。そのため、近年では空港に気象用ドップラーレーダーを設置し、その発生を検知・予測し、墜落事故の防止を行う研究が進んでいる。また、航空機側でもウインドシアに対する対策は進められており、A320(登録商標)等ではウインドシアを感知した場合、警告を発すると共に自動的にゴーアラウンドに入って回避するプログラムが作動するようになっている。
【0035】
特許文献12には、「ニューラルネットワークを用いて過去の気象現象データをその周囲環境の変化に合わせて多数回学習させ、その学習結果にて算出した「しきい値」および「シナプス結合係数」をもって、局地的に特定した地点での気象を予測する局地的気象予測方法」が提案されている。
【0036】
これにより気象庁の数値予報モデルにこだわることなく、独自の気象ネットワークで局地に限定した精度の高い予測を作成することができる。
【0037】
特許文献13には、「低気圧の移動ベクトルを用いて気象予測結果を選定する方法であって、低気圧の移動ベクトルと、ある時点における気圧データに基づき算出された複数の気象予測結果による複数の予測移動ベクトルとを比較するステップと、前記移動ベクトルとの差が最も小さい予測移動ベクトルに対応する気象予測結果を選定し、当該気象予測結果についてのデータを記憶装置に格納する予測結果選定ステップと、を含む気象予測結果選定方法」が提案されている。
【0038】
これにより、気象予測を適切に補正して気象予測の精度を向上させるための新規な技術を提供することができる。
【0039】
特許文献14には、航空機の進入経路中に発生するマイクロバーストを検出するマイクロバースト検出システムに関し、更に詳しくは、下降気流によって発生する地表上の圧力変化を圧力センサーによって検知してマイクロバーストの発生を予測するようにしたマイクロバースト検出システムに関する技術思想が記載されている。
【0040】
つまり、従来、マイクロバースト検出システムは、レーダーエコーによって大気の状態を把握していたため、気流中に反射体となる何らかの微粒子、例えば雨粒等が必要となる。また、高高度スキャンと低高度スキャンを行うために2つのレーダースキャンが必要となるほか、高高度スキャンは、航空機が進入体制に入ったときに所定の高度で、一定の角度でスキャンを行わなければならないという制限があり、低高度スキャンは、滑走路の周辺にある建物や車の影響を受けないように行わなければならないという制限があった。
【0041】
そこで、このような点に鑑みて、マイクロバーストの下降気流によって発生する地表上の圧力変化を直接圧力センサーによって検知し、マイクロバーストで生じるウインドシアによる危険性の度合いを予測するようにしたもので、気流中の反射体を必要とせず、航空機の位置や滑走路の周辺にある建物等の影響を受けないで、高い検出確度でクリーン・エアーでのマイクロバーストを含めて予想することのできるマイクロバースト検出システムを提供することを目的としている。即ち、「滑走路に進入する航空機の進入経路中に発生するマイクロバーストを検出するマイクロバースト検出システムにおいて、前記滑走路と前記進入路付近の少なくとも何れか一方にマトリックス状に設けられていて、下降気流によって発生する地表上の圧力変化を検知する複数の圧力センサーと、この圧力センサーの得た圧力データを送信する送信手段と、を具備し、前記圧力データを前記航空機に前記送信手段より送信するようにしたことを特徴としたマイクロバースト検出システム」が提案されている。
【0042】
特許文献15には、航空機用情報送受信システムが提案されている。従来、航空機の飛行には、少なくとも気象等の変動が比較的激しい低空域では数十m〜数百m刻みの比較的細かい範囲ごとの情報が必要であり、高度方向を含む3次元的な情報が必要となり、しかも、航空機が高速で飛行すること等を考慮して、全体として航空機の前方や左右方向には少なくとも100kmの範囲、高度方向には数千ft〜数万ftの範囲の情報の提供が要求される。このように、航空機に対しては、膨大な量のデータの配信が必要となり、しかも、リアルタイム性も要求されるため、情報を圧縮して高速に配信することが求められる。
【0043】
しかしながら、上記のように空域を3次元的に細分化した各小空間における各情報を、例えばJPEG圧縮等の情報圧縮技術を用いて圧縮して配信した場合、航空機では、各小空間における各情報を可逆的に正確に復元できない。そのため、例えば気象の状況が互いに異なる空間同士の境界が不鮮明になってしまい、情報が劣化して、航空機の飛行経路管理等に用いることができないものになってしまうという問題があった。
【0044】
そこで、このような問題を解決するために、「自らの管理空域を飛行する航空機に対して飛行に関する情報を配信する地上局を備え、地上局は、当該航空機に飛行に関する情報を配信する領域を管理空域内に設定し、飛行に関する情報を、飛行に関する情報の数値が変化する領域内の位置を表す位置情報と、当該位置における数値の変化量を表す変化量情報とに分離し、変化量情報を圧縮し、位置情報と圧縮した変化量情報とを航空機に配信する航空機用情報送受信システム」が提案されている。
【0045】
特許文献16には、任意の3次元格子点における気圧データを一意的に推定できる装置及び方法が提案されている。従来、地形が複雑で比較的狭い範囲(50km四方程度)で、気象観測データを利用して、前述の客観解析法により3次元格子点上の気圧データを推定する場合、対象範囲に含まれる気象観測地点が少ない、それらの位置が均等に分布していない、上空の風向速データがないなどの原因で、一部の格子点で各気象観測点から設定される観測データの重み係数がすべてゼロに近い微小値となり、数値的に重み付き平均を計算することができず、一次推定値が求められないため、客観解析が不可能になることが多い。その対策としては、仮想的な気圧データを人為的に試行錯誤で追加するしかないため、初心者には気圧データの客観解析を行うことが困難である。また、仮想的な気圧データを追加して、結果が得られても、追加した仮想気圧データの位置や数値に依存して、得られる結果が一意的ではないという問題があった。
【0046】
そこで、特許文献16では、気象観測データを利用して大気拡散予測や局地気象調査のためのシミュレーションを行う際に、対象範囲の選び方によらず、仮想的な気圧データを追加することなく、対象範囲に含まれる気象観測データだけを用いて、任意の3次元格子点における気圧データを一意的に推定できる装置及び方法を提供することを目的としている。
【0047】
即ち、「対象とする空間及び時間領域に含まれる複数の気象観測点の気象要素観測データから、対象空間領域を格子状に分割した各格子点の気象要素データを推定する気圧データ推定装置において、各格子点に対応する各地点の気象要素観測データの重み係数を、各格子点と各気象観測点との少なくとも水平距離、鉛直高さおよび地形障壁の高さのいずれか、もしくはこれらの複数について各格子点に近い程重み付けをした係数(重み係数成分)を付与してそれらの成分の積として算出する観測データ重み係数計算手段と、各格子点での気象要素データの推定値を、各気象観測点の気象要素観測データに前述の算出した観測データ重み係数を乗じて平均することにより算出する気圧データ一次推定処理手段と、各格子点について各気象観測点の前述した観測データ重み係数の最大値があらかじめ設定した微小しきい値以下になるかを判定する微小重み係数判定手段と、該算出した観測データ重み係数の最大値が微小しきい値以下になると判定される場合に、その最大値が微小しきい値を超える観測データ重み係数成分のみの積を使用するか、もしくは全観測点について重み付けをしないで定数を付与することにより、各気象観測点の重み係数の最大値が微小しきい値を超えるようにして修正設定する微小重み係数修正処理手段と、該修正設定した重み係数を使用して前記気圧データ一次推定処理により推定された気圧データを修正する修正気圧データ推定処理手段と、を有することを特徴とする気圧データ推定装置」が提案されている。
【0048】
特許文献17には、次のような事項が記載されている。
【0049】
航空機が乱気流に遭遇した場合、遭遇した乱気流の規模によっては、乗客や乗務員が負傷する虞や、航空機自体に重大な事故が発生する可能性がある。このため、航空機の運行において、乱気流、特に視認やレーダーでは発見することが困難な晴天乱気流(CAT:Clear−Air Turbulence)の発生を正確に予測し、これを回避することが求められてきた。
【0050】
ここで、従来、乱気流の予測には、気象庁より提供される情報に基づいて、航路上の各ポイントにおける垂直ウインドシア(Vertical Wind Shear)の大きさに係る指数(Index)を算出することで乱気流を予測する手法が主に用いられている。しかし、垂直ウインドシアに基づく従来の予測では、乱気流の発生が予測されていないにもかかわらず航空機が乱気流に遭遇してしまうことや、逆に乱気流の発生が予測されていたにもかかわらず乱気流が発生しないといったことがあった。即ち、従来の乱気流予測手法では、乱気流の発生を正確に予測し、これを回避することは非常に困難であった。
【0051】
そこで、特許文献17では、「大気の状態に関するデータの入力を受け付けるデータ受付手段と、前記データ受付手段によって受け付けられた前記データを用いて、乱気流の発生に関わる異なる物理過程に係る複数種類の指数を算出する指数算出手段と、前記指数算出手段によって算出された前記複数種類の指数に基づいて、乱気流の発生可能性を示す予測値を算出する予測値算出手段と、を備える、乱気流予測システム」が提案されている。
【0052】
特許文献18には、「レーザー光を利用したドップラーライダー方式の光学式遠隔気流計測装置において、受信信号強度に閾値を設けて、該閾値以下の該受信信号については情報を無効とすると共に、前記閾値以上の受信信号については同一位置で一定時間継続することを確認することにより、正しい気流情報と判別するようにし、正しいと判別された気流情報に基づいて特異な気流情報が認識された場合には音声または表示により自動的に警報を発するものとした遠隔気流の警報表示方法」が提案されている。
【0053】
特許文献19には、「飛行場管制区域内の気象情報を提供する気象情報提供システムにおいて、気圧データサーバーから定期的に提供される、前記飛行場管制区域を含む広域気圧データを受信する受信手段と、レイリー散乱/ブラッグ散乱の反射波を観測し、その観測結果から降雨時/晴天時の全方位の風速を算出することで、前記飛行場管制区域内の風分布を観測し、数分間隔で出力する気象観測装置と、前記広域気圧データを初期値とし、前記風分布を含む気象観測データを逐次データ同化して前記区域内の気象予測モデルを作成・更新し、当該予測モデルから前記区域内の1kmメッシュ以下の風分布を含む極細密気象予測演算を行い、その演算結果を気象予測情報として出力する気象予測演算装置とを具備することを特徴とする気象情報提供システム」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開平7−225284号公報
【特許文献2】特開平10−132956号公報
【特許文献3】特開2000−138978号公報
【特許文献4】特開2001−134882号公報
【特許文献5】特開2002−044289号公報
【特許文献6】特開2002−358321号公報
【特許文献7】特開2002−358599号公報
【特許文献8】特開2003−028967号公報
【特許文献9】特開2005−300176号公報
【特許文献10】特開2004−303125号公報
【特許文献11】特開2005−189165号公報
【特許文献12】特開平09−049884号公報
【特許文献13】特開2003−098271号公報
【特許文献14】特開平9−080166号公報
【特許文献15】特開2009−251730号公報
【特許文献16】特開2007−248355号公報
【特許文献17】特開2009−192262号公報
【特許文献18】特開2010−217077号公報
【特許文献19】特開2007−017316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0055】
前述したように、離着陸を行っている航空機にとって、ダウンバーストは墜落に直結する現象であり、ダウンバーストの発生を正確に予測することが重要な課題になっている。図24(A)〜図24(C)は、ダウンバーストの発生メカニズムを示す概略図である。図24(A)は積雲期であり、地表付近の空気が温められることで上昇気流が発生し、積雲(積乱雲)が発達していく。図24(B)は成熟期であり、十分に成長した積雲(積乱雲)が急激な下降気流(ダウンバースト)を発生させる。図24(C)は減衰期であり、積雲(積乱雲)が徐々に消滅していき下降気流が弱くなる。このように、ダウンバーストは、積雲や積乱雲の成長に伴って局地的に発生して短時間で消滅する現象であり、遅くとも積雲期までの気象条件の変化からダウンバーストの発生を正確に予測し、パイロットに通知することが求められる。
【0056】
特許文献1〜11に記載された装置やシステムは、センサー等の手段を用いて気象に関するデータを取得するものではあるが、局地的に発生して短時間で消滅するダウンバーストのような気象変動をいかにして予測するかについては、有効な提案がなされていない。
【0057】
更に、特許文献12の手法は、例えば、羽田で観測した風向・風速・気圧の現在の実測値と、羽田を中心に東西南北の4つの観測地点である銚子・御前崎・八丈島・秋田の気圧の現在の実測値を用いて羽田の局地的な気象を予測するものであるが、把握したい気象現象のサイズが数kmであるのに対して観測地点間の距離が大きすぎる。そのため、局地的な気象変動の原因となる現象を捉えることができず、原理上、ダウンバーストの発生を的確に予測することはできない。
【0058】
また、特許文献13の手法でいう低気圧とは赤外線写真として天気図上に現れる低気圧のことであり、局地的に発達する積雲や積乱雲による小さな低気圧を捉えることができない。すなわち、赤外線写真から得られる低気圧に関する情報はそのサイズ的分解能が十分でなく、また、得られる情報のリアルタイム性が乏しい。
【0059】
特許文献14〜19に記載された装置やシステムによるダウンバーストの予測には以下に示すような問題点があった。すなわち、乱気流の発生は、雲の形などで推測できることもあるが、晴天時の乱気流などの突然の揺れが発生するものや、地形に起因する乱気流も生じる場合があるので、予測することが難しい。また、航空機などの離着陸に影響するダウンバーストは、リアルタイムに発生状況を管制塔やパイロットへフィードバックすることに重要性があるが、ドップラーライダーを用いた風向・風速を観測して判断しているので、正確なダウンバーストの発生予測、計測は出来ていないのが現状である。さらに、ダウンバーストを正確に予測するためには、ダウンバーストに関連する気象状況の変化をリアルタイムにわかりやすく可視化することが重要であるが、そのような試みはなされていない。
【0060】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、飛行物体が離着陸する施設において発生するダウンバースト等の気象変動を予測するために利用可能な情報をリアルタイムに可視化して提供することができる気象変動情報提供システム、気象変動情報提供方法、気象変動情報提供プログラム及び記録媒体を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0061】
(1)本発明は、飛行物体が離着陸する施設において気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動に関する情報を提供する気象変動情報提供システムであって、飛行物体の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に分散して配置される複数の気圧計測装置と、前記複数の気圧計測装置の各々が計測した気圧データを処理するデータ処理装置と、を含み、前記データ処理装置は、前記複数の気圧計測装置の各々から前記気圧データを取得する気圧データ取得部と、前記気圧データ取得部が取得した気圧データに基づいて、前記気象変動に関する情報をリアルタイムに生成する気象変動情報生成部と、を含み、前記気象変動情報生成部は、前記気象変動に関する情報の少なくとも一部として、前記離着陸領域における気圧分布を表す時系列の画像情報を生成する、気象変動情報提供システムである。
【0062】
本発明によれば、飛行物体の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に、複数の気圧計測装置を分散して配置することで、各気圧計測装置が計測する気圧データを取得して離着陸領域における気圧分布の情報を得ることができる。そして、本発明によれば、この気圧分布の情報を処理することで、離着陸領域において気圧の変化に起因して発生するダウンバースト等の局所的な気象変動の発生の有無の判断や気象変動の発生の予測等に利用可能な有益な情報を提供することができる。
【0063】
また、本発明によれば、離着陸領域における気圧分布を時系列の画像(リアルタイムに変化する画像)として可視化して提供するので、この画像を監視することでリアルタイムに変化する気圧の状況を容易に把握することができ、気象変動の予測等に有効利用することができる。
【0064】
(2)この気象変動情報提供システムにおいて、前記気象変動情報生成部は、前記気圧分布を表す時系列の画像情報として、前記離着陸領域における気圧分布を気圧に応じて色分けして表す時系列の画像情報を生成するようにしてもよい。
【0065】
このようにすれば、離着陸領域における気圧分布の時間変化を視覚的に極めて容易に把握することができる。
【0066】
(3)この気象変動情報提供システムにおいて、前記気象変動情報生成部は、前記気圧データに基づいて、前記離着陸領域における複数の位置の気圧傾度を計算し、前記気象変動に関する情報の少なくとも一部として、前記離着陸領域における気圧傾度の変化の情報を生成するようにしてもよい。
【0067】
気圧傾度と風向・風速の間には相関があるので、気圧傾度の変化の情報から概略的な風向・風速を知ることができる。従って、気圧分布の情報と合わせて気圧傾度分布の情報を利用することで、ダウンバースト等の気象変動の発生の有無の判断や気象変動の発生の予測の精度を高めることが期待できる。
【0068】
(4)この気象変動情報提供システムにおいて、前記データ処理装置は、前記気象変動に関する情報に基づいて前記離着陸領域におけるダウンバーストの発生の検出及び予測の少なくとも一方を行い、ダウンバーストの発生を検出又は予測した場合には警報情報を生成するダウンバースト解析部をさらに含むようにしてもよい。
【0069】
このようにすれば、ダウンバーストの検出や予測を自動化し、ダウンバーストに関する警報情報を提供することができる。
【0070】
(5)この気象変動情報提供システムにおいて、前記データ処理装置は、前記気象変動に関する情報又は前記警報情報を送信する制御を行う送信制御部をさらに含むようにしてもよい。
【0071】
このようにすれば、気象変動に関する情報や警報情報をデータ処理装置のモニターに表示するだけでなく、飛行物体等に自動的に送信することができる。
【0072】
(6)この気象変動情報提供システムにおいて、前記複数の気圧計測装置は、前記離着陸の目標位置からの距離に応じて密度が異なるように配置されているようにしてもよい。
【0073】
このようにすれば、ダウンバーストの発生に伴う危険性が高い位置ほど観測メッシュが細かくなり、ダウンバーストの解析精度を高めることができる。逆に、ダウンバーストが発生に伴う危険性が相対的に低い位置は、観測メッシュを多少粗くすることで、必要十分な解析精度を確保しながらコストを削減することができる。
【0074】
(7)この気象変動情報提供システムにおいて、前記複数の気圧計測装置の少なくとも一部は、互いに高度が異なる位置に配置されているようにしてもよい。
【0075】
このようにすれば、高さ方向の気圧変化も加味したより詳細な情報を提供することができる。
【0076】
(8)この気象変動情報提供システムにおいて、前記複数の気圧計測装置の各々は、気圧に応じて共振周波数を変化させる感圧素子を有し、当該感圧素子の振動周波数に応じた気圧データを出力する気圧センサーを含むようにしてもよい。
【0077】
一般に気象観測に用いられる気圧計の分解能はhPaオーダーであるのに対して、周波数変化型の気圧センサーは、感圧素子の振動周波数を高い周波数のクロック信号で計測することで比較的容易にPaオーダーの測定分解能を得ることができる。また、周波数変化型の気圧センサーは、気圧がゆっくり変化しているのか、あるいは急激に変化しているのか、気圧の変動量(気圧の変化具合)を高精度に検出することができる。本発明によれば、高分解能な周波数変化型の気圧センサーを用いることで短時間におけるわずかな気圧の変化を捉えて、局所的に発生して短時間に消滅する気象変動(ダウンバースト等)を検出・予測するための情報を提供することができる。この情報を解析することで、気象変動を精度よく検出・予測することができる。
【0078】
(9)この気象変動情報提供システムにおいて、前記感圧素子は、双音叉圧電振動子であるようにしてもよい。
【0079】
双音叉圧電振動子を用いることで、より高い分解能の気圧センサーを実現することができる。
【0080】
(10)本発明は、飛行物体が離着陸する施設において気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動に関する情報を提供する気象変動情報提供方法であって、飛行物体の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に分散して配置される複数の気圧計測装置の各々から気圧データを取得する気圧データ取得ステップと、前記気圧データ取得ステップで取得した気圧データに基づいて、前記気象変動に関する情報をリアルタイムに生成する気象変動情報生成ステップと、を含み、前記気象変動情報生成ステップにおいて、前記気象変動に関する情報の少なくとも一部として、前記離着陸領域における気圧分布を表す時系列の画像情報を生成する、気象変動情報提供方法である。
【0081】
(11)本発明は、飛行物体が離着陸する施設において気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動に関する気象変動情報を提供する気象変動情報提供プログラムであって、飛行物体の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に分散して配置される複数の気圧計測装置の各々から気圧データを取得する気圧データ取得部と、前記気圧データ部が取得した気圧データに基づいて、前記気象変動に関する情報をリアルタイムに生成する気象変動情報生成部としてコンピューターを機能させ、前記気象変動情報生成部は、前記気象変動に関する情報の少なくとも一部として、前記離着陸領域における気圧分布を表す時系列の画像情報を生成する、気象変動情報提供プログラムである。
【0082】
(12)本発明は、上記の気象変動情報提供プログラムを記録した、コンピューター読み取り可能な記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本実施形態の気象変動情報提供システムの概要図。
【図2】気圧計測装置の配置例を示す図。
【図3】本実施形態の気象変動情報提供システムの構成例を示す図。
【図4】判定テーブルの一例を示す図。
【図5】本実施形態の気圧センサーの構成例を示す図。
【図6】本実施形態の圧力センサー素子の断面の模式図。
【図7】本実施形態の圧力センサー素子の断面の模式図。
【図8】本実施形態の振動片およびダイヤフラムを模式的に示す下面図。
【図9】全体処理のフローチャートの一例を示す図。
【図10】気圧傾度を計算する処理のフローチャートの一例を示す図。
【図11】ノード間の気圧傾度ベクトルの説明図。
【図12】各ノードの気圧傾度ベクトルの計算例の説明図。
【図13】気象変動情報を生成する処理のフローチャートの一例を示す図。
【図14】気圧分布の表示画像の一例を概略的に示す図。
【図15】気圧傾度分布の表示画像の一例を概略的に示す図。
【図16】気圧分布と気圧傾度分布の表示画像の一例を概略的に示す図。
【図17】ダウンバーストの予測処理のフローチャートの一例を示す図。
【図18】ダウンバーストの発生過程と気圧分布及び気圧傾度分布との関係を概念的に示す図。
【図19】変形例1における気圧計測装置の配置例を示す図。
【図20】変形例1における各ノードの気圧傾度ベクトルの計算例の説明図。
【図21】変形例2における気圧計測装置の配置例を示す図。
【図22】変形例3における気圧計測装置の配置例を示す図。
【図23】気圧傾度と風の関係の説明図。
【図24】ダウンバーストの発生メカニズムを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0084】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0085】
1.気象変動情報提供システムの概要
本実施形態の気象変動情報提供システムは、飛行物体が離着陸する施設において気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動に関する情報(以下、「気象変動情報」という)を提供する。飛行物体は、飛行機、ヘリコプター、グライダー、飛行船、気球などの航空機やラジコン模型など飛行することができる物体であれば何でもよい。また、飛行物体が離着陸する施設は、例えば、空港、ヘリポート、航空母艦、広場などであり、航空機等が臨時に離着陸する可能性のある施設(学校のグラウンドや駐車場など)も含まれる。気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動とは、例えば、ダウンバースト(急激な下降気流)、横風などの突風、竜巻、豪雨などが挙げられる。以下では、空港において、航空機の離発着に特に重大な影響を与えるダウンバーストに関する情報を提供する気象変動情報提供システムを例に挙げて説明する。
【0086】
図1は、本実施形態の気象変動情報提供システムの概要について説明するための図である。図1に示すように、本実施形態の気象変動情報提供システムでは、空港の滑走路5の周辺の、航空機6の離着陸の目標位置(タッチダウンゾーン)TD1,TD2を含む領域(離着陸領域)に複数の気圧計測装置2(白抜きの丸で表示)が分散して配置されている。例えば、図2(A)に示すように、滑走路5の全体を覆うように気圧計測装置2を分散配置してもよいし、図2(B)に示すように、TD1の周辺とTD2の周辺にのみ気圧計測装置2を分散配置してもよい。
【0087】
本実施形態では、多数の気圧計測装置2が碁盤目状に分散配置され、各気圧計測装置2をノードとする観測メッシュが形成されている。ただし、複数の気象計測装置2が分散配置されていればよく、碁盤目状に配置されていなくてもよい。この観測メッシュでは、4つのノードによって1つの矩形状の区画が形成されている。各区画の1辺の長さ(ノード間の距離)は、空港の気候やその他の状況を考慮して、十分な精度でダウンバーストの発生の検出や予測が可能な値(例えば、数百m以下)に設定される。ただし、ノード間の距離は一定でなくてもよい。なお、図1及び図2では、便宜上、区画の境界線を破線で表示しているが、実際には、空港においてこのような境界線を表示する必要はない。
【0088】
各気圧計測装置2は、一定周期で気圧を計測し、計測した気圧データを不図示のデータ処理装置に送信する。データ処理装置は、例えば、図1の管制塔7にある管制室に設置されており、各気圧計測装置2からの気圧データを受信し、受信した気圧データに基づいて気象変動情報を生成する。ただし、データ処理装置は、空港外に設置されていてもよい。例えば、航空機6にデータ処理装置を搭載してもよいし、インターネット等の通信ネットワークに接続されたサーバーをデータ処理装置としてもよい。
【0089】
データ処理装置が生成した気象変動情報は、データ処理装置のモニターあるいは管制室にある他の表示装置に送信されて表示される。さらに、この気象変動情報は、航空機6にも送信され、航空機6のモニターに表示される。管制官やパイロットは、この気象変動情報を監視することで、ダウンバーストの発生の有無の判断やダウンバーストの発生の予測をすることができる。あるいは、データ処理装置が、あらかじめ決められた判定基準に従い、ダウンバーストの検出や予測を行うようにしてもよい。これにより、管制官は、危険度に応じて着陸や離陸を禁止する旨の指示をパイロットに対して迅速に行うことができる。また、パイロットは、自らの判断で着陸や離陸を回避することができる。
【0090】
2.気象変動情報提供システムの構成
図3は、本実施形態の気象変動情報提供システムの構成を示す図である。本実施形態の気象変動情報提供システムは、図3の構成要素(各部)の一部を省略したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0091】
図3に示すように、本実施形態の気象変動情報提供システム1は、複数の気圧計測装置2とデータ処理装置4を含む。
【0092】
複数の気圧計測装置2の各々は、気圧センサー10を備え、離着陸領域に分散して配置される。気圧センサー10としては、圧力の変化を振動子の周波数の変化として捉える周波数変化型、圧力の変化を静電容量の変化として捉える静電容量型、圧力の変化をピエゾ抵抗の抵抗値の変化として捉えるピエゾ抵抗型などのセンサーを適用することができる。
【0093】
気圧計測装置2は、秒オーダーの周期でリアルタイムに気象を計測し、計測された気圧データは、送信部12により、例えば、気圧計測装置2毎に割り当てられた周波数の電波で送信される。各気圧計測装置2には互いに異なる送信周波数が割り当てられる。
【0094】
データ処理装置4は、受信部20、処理部(CPU:Central Processing Unit)30、操作部40、記憶部50、記録媒体60、表示部70、送信部80を含んで構成されている。
【0095】
受信部20は、受信周波数が順番に気圧計測装置2毎に割り当てられた送信周波数になるように所定の周期で切り替えながら各気圧計測装置2からの送信データを受信し、気圧データを復調する。そして、受信部20は、復調した気圧データを処理部(CPU)30に送る。
【0096】
なお、各気圧計測装置2の送信部12が、同一の送信周波数の電波を用いて、あらかじめ決められた互いに異なる周期的なタイミングで時分割に気圧データを送信し、データ処理装置4の受信部20が、各気圧計測装置2の送信タイミングと同期して、時分割に気圧データを受信するようにしてもよい。
【0097】
操作部40は、操作キーやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、ユーザーによる操作に応じた操作信号を処理部(CPU)30に出力する。
【0098】
記憶部50は、処理部(CPU)30が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。特に、本実施形態の記憶部50は、気象条件に対する判定基準とダウンバーストとの対応関係を定義する判定テーブル52を記憶している。この判定基準は少なくとも気圧に関する条件を含み、一定時間当たりの気圧の低下量が所定の閾値を超えたか否かをダウンバーストの判定基準としてもよい。また、データ処理装置4が温度や湿度の情報を得られる場合には、判定基準に温度や湿度等に関する条件を含ませてもよい。例えば、一定時間当たりの気圧の低下量が所定の閾値を超えるとともに温度が所定の範囲にあるか否かをダウンバーストの判定基準としてもよい。
【0099】
図4は、判定テーブル52の一例を示す図である。図4の例では、判定基準1が満たされるとダウンバーストが発生中であることを示している。また、判定基準2が満たされると所定時間内にダウンバーストが発生する可能性があることを示している。さらに、ダウンバーストの発生可能性の程度を複数段階に分けて、判定基準2を例えば判定基準2−1〜2−3のように細分化してもよい。
【0100】
また、記憶部50は、処理部(CPU)30の作業領域として用いられ、操作部40から入力されたデータ、記録媒体60から読み出されたプログラムやデータ、処理部(CPU)30が各種プログラムに従って実行した演算結果等を一時的に記憶するためにも使用される。
【0101】
処理部(CPU)30は、記憶部50や記録媒体60に記憶されているプログラムに従って、各種の計算処理や制御処理を行う。具体的には、処理部(CPU)30は、受信部20から気圧データを受け取って各種の計算処理を行う。また、処理部(CPU)30は、操作部40からの操作信号に応じた各種の処理、表示部70に各種の情報を表示させる処理、受信部20及び送信部80を介した航空機や管制塔とのデータ通信を制御する処理等を行う。
【0102】
特に、本実施形態では、処理部(CPU)30は、以下に説明する気圧データ取得部32、気象変動情報生成部34、ダウンバースト解析部36、送信制御部38を含む。ただし、本実施形態の処理部(CPU)30は、これらの一部の構成(要素)を省略したり、他の構成(要素)を追加した構成としてもよい。
【0103】
気圧データ取得部32は、受信部20から送られてくる気圧データを、気圧計測装置2の識別IDと対応づけて継続して取得する処理を行う。具体的には、気圧データ取得部32は、各気圧データを受け取り、受け取った各気圧データを気圧計測装置2毎に割り当てられた識別IDと対応づけて順番に記憶部50に保存する。
【0104】
気象変動情報生成部34は、気圧データ取得部32が取得した気圧データに基づいて、離着陸領域における気象変動情報をリアルタイムに生成する処理を行う。特に、本実施形態の気象変動情報生成部34は、気象変動情報の少なくとも一部として、離着陸領域における気圧分布を表す時系列の画像情報(リアルタイムに更新される画像情報)を生成する。
【0105】
また、気象変動情報生成部34は、気圧データ取得部32が取得した気圧データに基づいて、離着陸領域における複数の位置の気圧傾度を計算し、気象変動情報の少なくとも一部として、離着陸領域における気圧傾度の変化の情報を生成するようにしてもよい。気圧傾度の計算対象となる位置は、任意の位置でよく、例えば、観測メッシュの各ノードの位置でもよい。
【0106】
この気圧傾度の変化の情報は、観測メッシュの各ノードの気圧傾度の時間変化を表すグラフ情報であってもよいし、観測メッシュにおける気圧傾度の分布を表す時系列の画像情報(リアルタイムに更新される画像情報)であってもよい。
【0107】
ダウンバースト解析部36は、気象変動情報生成部34が生成した気象変動情報に基づいて、離着陸領域におけるダウンバーストの発生の検出及び予測の少なくとも一方を行い、ダウンバーストの発生を検出又は予測した場合には警報情報を生成する処理を行う。具体的には、ダウンバースト解析部36は、記憶部50に記憶された判定テーブル52を参照し、判定テーブル52に含まれる第1の判定基準(図4の例では判定基準1に対応する)に従い、ダウンバーストの発生の有無を判定する。また、ダウンバースト解析部36は、判定テーブル52に含まれる第2の判定基準(図4の例では判定基準2に対応する)に従い、ダウンバーストが所定時間以内に発生するか否かを判定する。
【0108】
なお、ダウンバースト解析部36は、ダウンバーストの発生を検出した場合には、ダウンバーストの発生位置を含む警報情報を生成するようにしてもよい。また、ダウンバースト解析部36は、ダウンバーストの発生を予測した場合にはダウンバーストの発生予測位置や発生予測時間を含む警報情報を生成するようにしてもよい。
【0109】
送信制御部38は、気象変動情報生成部34が生成した気象変動情報やダウンバースト解析部36が生成した警告情報を、送信部80を介して航空機6や管制塔7(データ処理装置4が管制塔7の外部にある場合)などに送信する制御を行う。
【0110】
なお、本実施形態の気象変動情報提供システムが気象変動情報を提供することで足りる場合は、ダウンバースト解析部36はなくてもよい。
【0111】
記録媒体60は、コンピューター読み取り可能な記録媒体であり、特に本実施形態では、コンピューターを上記の各部として機能させるための気象変動情報提供プログラムが記憶されている。そして、本実施形態の処理部(CPU)30は、記録媒体60に記憶されている気象変動情報提供プログラムを実行することで、気圧データ取得部32、気象変動情報生成部34、ダウンバースト解析部36、送信制御部38として機能する。あるいは、通信部80等を介して有線又は無線の通信ネットワークに接続されたサーバーから気象変動情報提供プログラムを受信し、受信した気象変動情報提供プログラムを記憶部50や記録媒体60に記憶して当該気象変動情報提供プログラムを実行するようにしてもよい。ただし、気圧データ取得部32、気象変動情報生成部34、ダウンバースト解析部36、送信制御部38の少なくとも一部をハードウェア(専用回路)で実現してもよい。
【0112】
なお、記録媒体60は、例えば、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、メモリー(ROM、フラッシュメモリーなど)により実現することができる。
【0113】
表示部70は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成される表示装置であり、処理部(CPU)30から入力される表示信号に基づいて各種の情報を表示する。表示部70には、例えば、気圧分布画像や気圧傾度分布画像の各フレームがリアルタイムに表示される。
【0114】
このような構成の気象変動情報提供システム1により、離着陸領域におけるダウンバーストの発生や前兆をリアルタイムに捉えるためには、気圧センサー10としてPaオーダーの高分解能なセンサーを用いることが望ましい。現在のところ、周波数変化型の気圧センサーは、静電容量型やピエゾ抵抗型の気圧センサーよりも高い分解能が得られており、周波数変化型の気圧センサーであれば1Pa以下の分解能も実現可能である。
【0115】
図5は、周波数変化型の気圧センサー10の構成例を示す図である。図5に示すように、本実施形態の気圧センサー10は、圧力センサー素子100、発振回路110、カウンター120、TCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator)130、MPU(Micro Processing Unit)140、温度センサー150、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)160、通信インターフェース(I/F)170を含んで構成されている。ただし、本実施形態の気圧センサーは、図5の構成要素(各部)の一部を省略したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0116】
圧力センサー素子100は、振動片の共振周波数の変化を利用する方式(振動方式)の感圧素子を有している。この感圧素子は、例えば、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の圧電材料で形成された圧電振動子であり、例えば、音叉型振動子、双音叉型振動子、AT振動子(厚みすべり振動子)、SAW共振子などが適用される。
【0117】
特に、双音叉型圧電振動子は、AT振動子(厚みすべり振動子)などに比べて、伸長・圧縮応力に対する共振周波数の変化が極めて大きく共振周波数の可変幅が大きいので、感圧素子として双音叉型圧電振動子を用いることで、わずかな気圧差を検出可能な高い分解能の気圧センサーを実現することができる。そのため、本実施形態の気圧センサー10は、感圧素子として双音叉型圧電振動子を用いている。なお、圧電材料として、Q値が高くかつ温度安定性に優れた水晶を選択することで、優れた安定性と最高水準の分解能および精度を実現することができる。
【0118】
図6は、本実施形態の圧力センサー素子100の断面の模式図である。図7は、本実施形態の圧力センサー素子100の振動片220およびダイヤフラム210を模式的に示す下面図である。図7は、封止板としてのベース230を省略して描いてある。図6は、図7のA−A線の断面に対応する。
【0119】
圧力センサー素子100は、ダイヤフラム210と、振動片220と、封止板としてのベース230と、を含む。
【0120】
ダイヤフラム210は、圧力を受圧して撓む可撓部を有する平板状の部材である。ダイヤフラム210の外側の面が受圧面214となっており、受圧面214の裏面側に一対の突起212が形成されている。
【0121】
振動片220は、振動ビーム(梁)222及び振動ビーム222の両端に形成された一対の基部224を有する。振動ビーム222は、一対の基部224の間に両持ち梁状に形成される。一対の基部224は、ダイヤフラム210に形成された一対の突起212にそれぞれ固定される。振動ビーム222には図示しない電極が適宜設けられ、電極から駆動信号を供給することで振動ビーム222を一定の共振周波数で屈曲振動させることができる。振動片220は、圧電性を有する材料で形成される。振動片220の材質としては、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料が挙げられる。振動片220は、支持梁226によって枠部228に支持されている。
【0122】
ベース230は、ダイヤフラム210と接合されて、ダイヤフラム210との間にキャビティー232を形成する。キャビティー232を減圧空間とすることにより、振動片220のQ値を高める(CI値を小さくする)ことができる。
【0123】
このような構造の圧力センサー素子100において、ダイヤフラム210は、受圧面214に圧力を受けた場合に撓み、変形する。すると、振動片220の一対の基部224が、ダイヤフラム210の一対の突起212にそれぞれ固定されているため、ダイヤフラム210の変形に従って基部224間の間隔が変化する。すなわち、圧力センサー素子100に圧力が印加されたときに、振動ビーム222に引張または圧縮の応力を生じさせることができる。
【0124】
図8は、圧力センサー素子100の断面の模式図であり、ダイヤフラム210が圧力Pによって変形した状態を示している。図8は、圧力センサー素子100の外側から内側への力(圧力P)が作用することにより、ダイヤフラム210が素子の内側に向かって凸となる変形が生じた例である。この場合、一対の突起212の間の間隔は大きくなる。他方、図示しないが、圧力センサー素子100の内側から外側への力が作用する場合は、ダイヤフラム210が素子の外側に向かって凸となる変形が生じ、一対の突起212の間の間隔は小さくなる。従って、両端が一対の突起212にそれぞれ固定された振動片220の振動ビーム222に平行な方向に引張または圧縮の応力が生じる。すなわち、受圧面214に対して垂直方向に加わった圧力は、突起(支持部)212を介して、振動片220の振動ビーム222に対して平行な直線方向の応力に変換される。
【0125】
振動ビーム222の共振周波数は、以下のようにして解析することができる。図6及び図7に示すように、振動ビーム222の長さをl、幅をw、厚みをdとすると、振動ビーム222の長辺方向に外力Fが作用したときの運動方程式は、次式(1)によって近似される。
【0126】
【数1】
【0127】
式(1)において、Eは縦弾性定数(ヤング率)、ρは密度、Aは振動ビームの断面積(=w・d)、gは重力加速度、Fは外力、yは変位、xは振動ビームの任意の位置をそれぞれ表す。
【0128】
式(1)に一般解と境界条件を与えて解くことで、次のような、外力が無い場合の共振周波数の式(2)が得られる。
【0129】
【数2】
【0130】
断面2次モーメントI=dw3/12、断面積A=dw、λI=4.73より、式(2)は次式(3)のように変形することができる。
【0131】
【数3】
【0132】
従って、外力F=0の時の共振周波数f0は、ビームの幅wに比例し、長さlの2乗に反比例する。
【0133】
外力Fを2本の振動ビームに加えたときの共振周波数fFも同様の手順で求めると、次式(4)が得られる。
【0134】
【数4】
【0135】
断面2次モーメントI=dw3/12より式(4)は次式(5)のように変形することができる。
【0136】
【数5】
【0137】
式(5)において、SFは応力感度(=K・12/E・(l/w)2)、σは応力(=F/(2A))をそれぞれ表す。
【0138】
以上から、圧力センサー素子100に作用する力Fを圧縮方向のとき負、伸張方向のとき正としたとき、力Fが圧縮方向に加わると共振周波数fFが減少し、力Fが伸縮方向に加わると共振周波数fFが増加する。
【0139】
そして、次式(6)に示す多項式を用いて、圧力センサー素子100の圧力−周波数特性と温度−周波数特性に起因する直線性誤差を補正することで、高分解能かつ高精度の圧力値Pを得ることができる。
【0140】
【数6】
【0141】
式(6)において、fnはセンサー規格化周波数であり、fn=(fF/f0)2で表される。また、tは温度であり、α(t)、β(t)、γ(t)、δ(t)は、それぞれ次式(7)〜(10)で表される。
【0142】
【数7】
【0143】
【数8】
【0144】
【数9】
【0145】
【数10】
【0146】
式(7)〜(10)において、a〜pは補正係数である。
【0147】
すなわち、圧力センサー素子100の出力信号の周波数を計測することで、振動ビーム220の振動周波数(力Fが作用した時の共振周波数fF)が得られ、あらかじめ測定された共振周波数f0や補正係数a〜pを用いて、式(6)から圧力Pを計算することができる。
【0148】
図5に戻り、発振回路110は、圧力センサー素子100の振動ビーム222を共振周波数で発振させた発振信号を出力する。
【0149】
カウンター120は、発振回路110が出力する発振信号の所定周期を、基準クロック源であるTCXO130が出力する高精度のクロック信号でカウントするレシプロカルカウンターである。ただし、カウンター120を、所定のゲートタイムにおける圧力センサー素子100の発振信号のパルス数をカウントする直接計数方式の周波数カウンター(ダイレクトカウンター)として構成してもよい。
【0150】
MPU(Micro Processing Unit)140は、カウンター120のカウント値から圧力値Pを計算する処理を行う。具体的には、MPU140は、温度センサー150の検出値から温度tを計算し、EEPROM160にあらかじめ記憶されているa〜pの補正係数値を用いて、式(7)〜(10)よりα(t)、β(t)、γ(t)、δ(t)を計算する。さらに、MPU140は、カウンター120のカウント値とEEPROM160にあらかじめ記憶されている共振周波数f0の値を用いて、式(6)より圧力値Pを計算する。そして、MPUが計算した圧力値Pは、通信インターフェース170を介して、気圧センサー10の外部に出力される。
【0151】
このような構成の周波数変化型の気圧センサー10によれば、圧力センサー素子100の振動周波数をカウンター120によりTCXO130が出力する高精度かつ高周波数(例えば数十MHz)のクロック信号でカウントするとともに、MPU140でデジタル演算処理により圧力値の計算及び直線性誤差の補正を行うので、Paオーダーの高い分解能かつ高精度の圧力値(気圧データ)を得ることができる。さらに、気圧センサー10は、カウント時間を考慮しても秒オーダーの周期で気圧データを更新することができるので、短時間におけるわずかな気圧の変化も捉えることができ、リアルタイムの気圧計測に適している。
【0152】
なお、本実施形態では、基準クロック源としてTCXO130を用いているが、基準クロック源を、温度補償回路を有さない発振回路、例えば、ATカット水晶振動子を搭載した水晶発振回路で構成しても良い。この場合、温度補償回路を有さない分、気圧変動の検出精度は低下するが、基準クロック源を当該水晶発振回路とするか、或いはTCXO130とするかは、予測システムのコストや予測精度に応じて設計者が適宜選択すればよい。
【0153】
3.気象変動情報提供システムの処理
[全体処理]
図9は、データ処理装置4の処理部(CPU)30の全体処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0154】
まず、データ処理装置4が起動すると、処理部(CPU)30は、時刻変数tを0にセットする(S10)。
【0155】
次に、処理部(CPU)30(気圧データ取得部32)は、各気圧計測装置2が計測した気圧データを取得する(S12)。この気圧データにより、時刻tにおける観測メッシュの各ノードの気圧が得られる。
【0156】
次に、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、ステップS12で取得した気圧データ(観測メッシュの各ノードの気圧)から時刻tにおける各ノードの気圧傾度を計算する(S14)。
【0157】
次に、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、ステップS12で得られた各ノードの気圧とステップS14で計算した各ノードの気圧傾度から、時刻tにおける離着陸領域の気圧の分布データと気圧傾度の分布データを生成する(S16)。
【0158】
次に、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、ステップS16で生成した時刻tまでの気圧の分布データと気圧傾度の分布データからダウンバーストの発生の検出と予測を行い、必要に応じて警告情報を生成する(S18)。
【0159】
次に、処理部(CPU)30は、時刻tにおける、気圧の分布データ、気圧傾度の分布データ、警告情報をモニターに表示し、航空機6等に送信する(S20)。
【0160】
そして、処理部(CPU)30は、処理を終了する(S22のY)まで、時刻変数tをΔtだけ増加し、S12〜S20の処理を繰り返し行う。
【0161】
このような処理部(CPU)30の処理により、例えば、Δtを1秒とすると、モニターに表示される気圧や気圧傾度の分布画像が1秒毎にリアルタイムに更新される。
【0162】
[気圧傾度の計算処理]
図10は、時刻tにおける各ノードの気圧傾度を計算する処理(図9のS14の処理)のフローチャートの一例を示す図である。
【0163】
まず、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、時刻tの気圧データから、すべての隣接する2つのノード間の気圧傾度を計算する(S110)。ここで、隣接する2つのノードとは、観測メッシュの各区画の各辺にある2つのノードである。隣接する2つのノードN1とN2の間の気圧傾度Gは、ノードN1の気圧をP1、ノードN2の気圧をP2、ノードN1とN2の距離をLとすると、次式(11)により計算される。
【0164】
【数11】
【0165】
ここで、図11に示すように、ノードN1とN2の中点を始点とし、気圧傾度Gの大きさに応じた長さと、気圧傾度Gの符号に応じた向き(気圧の高い方から低い方へ向かう向き)とを有する気圧傾度ベクトルgを考えることができる。
【0166】
次に、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、変数iを0にセットし(S112)、時刻tにおけるノードNiとノードNiに隣接する各ノードとの間の気圧傾度のベクトル和から、ノードNiの気圧傾度を計算する(S114)。図12(A)に示すように、ノードNiとノードNiに隣接する4つのノードNA,NB,NC,NDとの間の気圧傾度ベクトルをそれぞれgA,gB,gC,gDとすると、図12(B)に示すように、ノードNiの気圧傾度ベクトルgiは、gA+gB+gC+gD(gA,gB,gC,gDのベクトル和)で計算される。この気圧傾度ベクトルgiの長さをノードNiの気圧傾度Giと考えることができる。
【0167】
処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、気圧傾度を未計算のノードがあれば(S116のY)、未計算のノードが無くなるまで変数iを1ずつ増やしながら(S118)、S114の処理を繰り返し行う。
【0168】
[気象変動情報の生成処理]
図13は、時刻tにおける気圧の分布データと気圧傾度の分布データを生成する処理(図9のS16の処理)のフローチャートの一例を示す図である。
【0169】
まず、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、時刻tにおける各ノードの気圧と気圧傾度からノード間の位置の気圧を補完計算する(S210)。具体的には、各ノードの気圧値と各ノード間の気圧傾度から任意の位置の気圧を線形補完計算により求めることができる。
【0170】
次に、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、ステップS210の計算結果から、同じ気圧の位置を線で結び、時刻tの等圧線データを生成する(S212)。
【0171】
次に、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、ステップS212で生成した等圧線データを気圧に応じて色分けし、時刻tの気圧分布データを生成する(S214)。
【0172】
次に、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、各ノードの気圧傾度の大きさと向きを矢印で表現し、時刻tの気圧傾度の分布データを生成する(S216)。
【0173】
ステップS214で生成された気圧分布データとステップS216で生成された気圧傾度の分布データは画像に変換されてモニターに表示される。これにより、気圧や気圧傾度の分布が可視化される。
【0174】
図14は、気圧分布の表示画像の一例を概略的に示す図である。図14の例では、同じ模様の部分が同じ色になっている。処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、例えば、サーモグラフィーの画像のように、気圧が高い部分ほど赤く気圧が低い部分ほど青くなるような気圧分布データを生成するようにしてもよい。例えば領域A1は気圧が最も高い部分であり赤色で表示される。領域A2は、領域A1よりも少し低い気圧であり、橙色で表示される。領域A3は、領域A2よりも少し低い気圧であり、黄色で表示される。領域A4は、領域A3よりも少し低い気圧であり、緑色で表示される。領域A5は、領域A4よりも少し低い気圧であり、水色で表示される。領域A6は気圧が最も低い部分であり青色で表示される。
【0175】
このように、離発着領域の気圧分布を色分けして可視化することで、離着陸領域における気圧分布の時間変化を視覚的に極めて容易に把握することができる。従って、局所的な(小さな)低気圧(「降水セル」ともいう)の発生場所(図14ではA6の部分)を容易に特定することができる。
【0176】
また、図15は、気圧傾度分布の表示画像の一例を概略的に示す図である。図15の例では、各ノードの位置に、気圧傾度の大きさに応じた太さで、気圧の高い方から低い方へ向かう向きを有する矢印(気圧傾度ベクトルを表す)が表示されている。
【0177】
このように、離発着領域の気圧傾度分布を可視化することで、気圧傾度と相関がある風の情報(風向・風速)を概略的に知ることができる。
【0178】
管制官やパイロットは、可視化された気圧分布データや気圧傾度データを利用することで、気圧や風の時間変化を視覚的に把握することができ、ダウンバーストの発生の検出や予測を精度よく行うことが期待できる。
【0179】
なお、図16に示すように、気圧分布と気圧傾度分布を重ねて表示するようにしてもよい。
【0180】
[ダウンバーストの解析処理]
図17は、ダウンバーストの解析(検出及び予測)処理(図9のS18の処理)のフローチャートの一例を示す図である。
【0181】
まず、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、時刻tまでの気圧の分布データと気圧傾度の分布データから局地的な低気圧(降水セル)の有無を判定する(S310)。
【0182】
処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、局所的な低気圧が無いと判定した場合(S312のN)、ダウンバーストは発生しておらず、かつ、所定時間内にダウンバーストが発生する可能性はないと判定し(S316)、時刻tにおける解析処理を終了する。
【0183】
一方、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、局所的な低気圧があると判定した場合(S312のY)、時刻tにおける、局所的な低気圧の位置、強さ、移動方向、移動速度等を計算する(S314)。
【0184】
次に、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、ステップS314の計算結果から、第1の判定基準に従い、ダウンバーストが発生中か否かを判定する(S318)。例えば、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、局所的な低気圧の強さが所定の閾値よりも大きいか否かを第1の判定基準としてもよい。
【0185】
処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、ダウンバーストが発生中であると判定した場合(S320のY)、ダウンバーストの発生位置を特定し、発生位置の情報を含む警告情報を生成する(S322)。
【0186】
次に、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、ステップS314の計算結果から、第2の判定基準に従い、所定時間内にダウンバーストが発生する可能性があるか否かを判定する(S324)。例えば、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、局所的な低気圧における一定時間の気圧の変化量が所定の閾値よりも大きいか否かを第2の判定基準としてもよい。急激な気圧の低下は積乱雲の発達期における上昇気流の発生に関連するものであると考えられる。従って、例えば、一定時間の気圧低下量が所定の閾値よりも大きいことを判定基準とすることで、積乱雲の発達に伴うダウンバーストの発生を予測することができる。ただし、予測の精度を上げるために、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、気圧データをベースに、気圧以外のデータ(温度や湿度のデータ)を加味して予測するようにしてもよい。さらに、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、図4の例の判定基準2−1〜2−3のように、第2の判定基準を細分化して、ダウンバーストの発生の可能性を段階的に判定してもよい。
【0187】
処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、所定時間内にダウンバーストが発生する可能性が無いと判定した場合(S326のN)、時刻tにおける解析処理を終了する。
【0188】
一方、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、所定時間内にダウンバーストが発生する可能性があると判定した場合(S326のY)、ダウンバーストの発生予測位置と発生予測時間を計算し、発生予測位置と発生予測時間の情報を含む警告情報を生成し(S328)、時刻tにおける解析処理を終了する。なお、この警告情報に、ダウンバーストが発生する可能性(確率)がどの程度であるかの情報を含めてもよい。
【0189】
図18は、ダウンバーストの発生過程と気圧分布及び気圧傾度分布との関係を概念的に示す図である。図18(A)は、局所的な低気圧の発生前の気圧分布及び気圧傾度分布の一例であり、例えば、ノードN1〜N9の気圧はほぼ同じであり、気圧傾度もほぼ0になっている。図18(B)は、図23(A)の積雲期の気圧分布及び気圧傾度分布の一例であり、局所的な低気圧が発生することで、ノードN5とN8の間の位置を中心とする気圧の低い部分A1と各ノードから低気圧の中心に向かう小さめの気圧傾度が観測される。図18(C)は、図23(B)の成熟期の気圧分布及び気圧傾度分布の一例であり、低気圧の中心がノードN5に近い位置に移動するとともに、気圧がかなり低い部分A2と各ノードから低気圧の中心に向かう大きな気圧傾度が観測される。図18(D)は、図23(C)の減衰期の気圧分布及び気圧傾度分布の一例であり、低気圧が消滅し、ノードN1〜N9の気圧圧差と気圧傾度が小さくなる。
【0190】
処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、例えば、図18(C)のような気圧分布と気圧傾度分布が観測されている状態では、ダウンバーストが発生中であると判定することができる。また、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、各ノードの気圧傾度ベクトルの向きや気圧の低い部分からダウンバーストの発生位置を特定することができる。
【0191】
また、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、例えば、図18(A)のような気圧分布と気圧傾度分布が観測されている状態から、図18(B)のような気圧分布と気圧傾度分布が観測されるようになると、所定時間以内にダウンバーストが発生すると判定することができる。また、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、各ノードの気圧傾度ベクトルの向きや気圧の低い部分の時間変化から低気圧の移動経路を算出することで、ダウンバーストの発生位置や発生時間を予測することができる。
【0192】
以上に説明したように、本実施形態の気象変動情報提供システムによれば、航空機6(飛行物体)の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に、複数の気圧計測装置2を分散して配置することで、各気圧計測装置2が計測する気圧データを取得して離着陸領域における気圧分布の情報を得ることができる。そして、この気圧分布の情報を処理することで、離着陸領域において気圧の変化に起因して発生するダウンバースト等の局所的な気象変動の発生の有無の判断や気象変動の発生の予測等に利用可能な有益な情報を提供することができる。
【0193】
また、本実施形態の気象変動情報提供システムによれば、離着陸領域における気圧分布を時系列の画像(リアルタイムに変化する画像)として可視化して提供するので、この画像を監視することでリアルタイムに変化する気圧の状況を容易に把握することができ、気象変動の予測等に有効利用することができる。
【0194】
また、一般的な気圧計は高価であるため、多数の気圧計を配置することは現実的でないのに対して、本実施形態では、気圧センサー10を半導体の製造技術を用いて安価で提供することができるので、多数の気圧計測装置2を分散配置することができる。さらに、気圧センサー10をPaオーダーの高分解能な周波数変化型の気圧センサーとすることで、ダウンバーストなどの局所的な気象変動の発生前のわずかな気圧変化を的確に捉えることが可能になる。
【0195】
4.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0196】
[変形例1]
観測メッシュの各区画は矩形でなくてもよく、例えば、図19に示すように、6つのノードによって1つの六角形状の区画が形成されるように複数の気圧計測装置2(白抜きの丸で表示)を分散配置してもよい。この場合、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、図20(A)に示すように、ノードNiとノードNiに隣接する3つのノードNA,NB,NCとの間の気圧傾度ベクトルgA,gB,gCを計算し、図20(B)に示すように、gA+gB+gC(gA,gB,gCのベクトル和)によりノードNiの気圧傾度ベクトルgiを計算するようにしてもよい。
【0197】
[変形例2]
離着陸領域内の気圧計測装置2の配置密度は一定でなくてもよく、例えば、離着陸の目標位置(タッチダウンゾーン)からの距離に応じて気圧計測装置2(白抜きの丸で表示)の配置密度を変えてもよい。例えば、図21に示すように、離着陸の目標位置(タッチダウンゾーン)TDから近い位置ほど気圧計測装置2の配置密度を高くするようにしてもよい。
【0198】
航空機の離着陸時にダウンバーストが発生すると危険性が高い位置ほど観測メッシュを細かくすることで、解析精度を高めることができる。逆に、ダウンバーストが発生しても相対的に危険性が低い位置は、観測メッシュを多少粗くすることで、必要十分な解析精度を確保しながらコストを削減することができる。
【0199】
[変形例3]
気圧計測装置2を3次元状に配置することで、3次元の観測メッシュを形成するようにしてもよい。例えば、図22に示すように、ヘリコプター8がビルの屋上にあるヘリポートに離着陸する際の気象変動情報を提供するシステムを構成する場合、当該ビル及び近くの他のビルの屋上や側面、地上等に気圧計測装置2(白抜きの丸で表示)を配置することで、離着陸の目標位置Pを含む3次元の領域に観測メッシュを形成することができる。このようにすれば、高さ方向の気圧の変化の情報も得られるので、気象変動の解析精度を高めることができる。なお、10m高くなる毎に気圧が約1hPa下がるので、3次元の観測メッシュを形成する場合は、気圧計測装置2の設置高度に応じて気圧や気圧傾度を補正計算することが望ましい。
【0200】
[変形例4]
処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、気圧傾度の分布データに代えて、又は気圧傾度の分布データとともに、風の分布データを生成するようにしてもよい。図23に示すように、地上や海上付近の風の向きや強さは、気圧傾度力、摩擦力、コリオリの力から求めることができる。摩擦力は、風の向きと反対向きに加わる。コリオリの力は、北半球では風の向きに直角右向きに働き、南半球では風の向きに直角左向きに働く。
【0201】
なお、気圧傾度力Fは、気圧傾度をG、空気塊の質量をm、空気塊の密度をρとすると、次式(12)で計算される。
【0202】
【数12】
【0203】
風の分布データを画像に変換してモニターに表示すれば、例えば、空港の滑走路付近のダウンバーストや横風などが直感的に分かり易くなる。
【0204】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0205】
1 気象変動情報提供システム、2 気圧計測装置、4 データ処理装置、5 滑走路、6 航空機、7 管制塔、8 ヘリコプター、10 気圧センサー、12 送信部、20 受信部、30 処理部(CPU)、32 気圧データ取得部、34 気象変動情報生成部、36 ダウンバースト解析部、38 送信制御部、40 操作部、50 記憶部、52 判定テーブル、60 記録媒体、70 表示部、80 送信部、100 圧力センサー素子、110 発振回路、120 カウンター、130 TCXO、140 MPU、150 温度センサー、160 EEPROM、170 通信インターフェース(I/F)、210 ダイヤフラム、212 突起、214 受圧面、220 振動片、222 振動ビーム(梁)、224 基部、226 支持梁、228 枠部、230 ベース、232 キャビティー
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行物体が離着陸する施設における気象変動に関する情報を提供する気象変動情報提供システム、気象変動情報提供方法、気象変動情報提供プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
アメダス(AMeDAS)とは「Automated Meteorological Data Acquisition System」の略で、「地域気象観測システム」のことを言う。雨、風、雪などの気象状況を時間的、地域的に細かく監視するために、降水量、風向・風速、気温、日照時間の観測を自動的に行い、気象災害の防止・軽減に重要な役割を果たしている。アメダスは1974年11月1日から運用を開始し、現在、降水量を観測する観測所は全国に約1300か所存在する。このうち、約850か所(約21km間隔)では降水量に加えて、風向・風速、気温、日照時間を観測しているほか、雪の多い地方の約290か所では積雪の深さも観測している。
【0003】
気象庁は、全国に網羅した気象観測地点の広範な気象情報或いは人工衛星から送られてくる雲の動き等による広範な地域の気象情報等から天気予報を出している。このような気象庁の天気予報の場合には、観測メッシュが大きく、かつ、時間メッシュも大きく、天気予報から広域な地域の降雨予測は可能であるが、ある限られた地点ないし地域,例えば屋外設置のプラント設備をもつ工場などのごとく極小地域の降雨を予測することは非常に難しい。何となれば、その工場近くの地形等の不特定要因が多いと、天気予報とは全く異なる気象状況,例えば夕立等を降らす場合がしばしば発生するためである。
【0004】
更に、温度、湿度、雨量等の気候特性に応じて、店舗における販売傾向、野外施設における利用状況が変化する。したがって、これらのビジネスにおいてリアルタイムでその地域の気象情報を取得し、分析することが重要となる。また、利用者にとっても、現地の気候がどのようなものかを知ることは、現地において快適に行動する上で重要である。
【0005】
ところで、広範囲な地域にわたる気象情報は気象庁の天気予報等から無料で取得できるが、きめ細かな気象情報や分析結果は専門のサービス業者から取得しなければならず、また高価であった。
【0006】
従来の気象情報収集配信方式は、気象衛星やアメダス、気象レーダー等により比較的範囲の広い気象情報を気象協会等から得ることで、コンテンツ業者が利用者に配信するものである。この場合、入手した気象情報は比較的広範囲な地域を対象としているため、利用者が本当に得たいピンポイントな地区の天気情報等が得られず、利用者のニーズに対応することができないのが現状である。
【0007】
一般の人々は、気象情報、花粉情報等をテレビ、ラジオ等を通じて、気象庁が設置している「アメダス」等から得ているが、これらの情報はかなり広範囲にわたる一般的な情報であり、必ずしも利用者が期待する特定地域、あるいは地域に密着したきめの細かい情報とは言えなかった。これらの情報を取得するには、上記のような従来通りの方法で実現することも可能ではあるが、新たな観測装置、通信設備の導入には莫大な経費がかかる。また、地域を限定した情報を個々人に配信したい場合や、地震、火山の予知情報等を各家庭に配信したい場合においても、受信装置を各家庭に設置する必要があり、かなりの経費負担を個人に強いることになる。
【0008】
特許文献1には、「複数の気象センサー(湿度計,気圧計,日射計,降雨計,風向・風速計等)から収集される現在および過去の気圧データに基づいて当該気圧データの傾向を求めるとともに、この傾向気圧データに基づいて将来の予測時刻の気圧データを予測する傾向抽出手段と、予め定めた極小地域に特有な極小地域気圧データを記憶する極小地域データ記憶手段と、予め過去の気圧データから作成される降雨に関する確信度関数情報を記憶する確信度関数情報記憶手段と、前記傾向抽出手段によって作成される傾向気圧データ,予測気圧データおよび現在気圧データのうち1つ以上の気圧データについて前記極小地域気圧データおよび前記確信度関数情報を用いて各気圧データごとの降雨の確信度を求めるとともに、これら降雨確信度を総合的に判断し、最終的な降雨確信度を求める予測判定手段とを備え、極小地域の降雨を予測することを特徴とする降雨予測装置」が提案されている。
【0009】
特許文献2には、「気象に関する物理量を観測して気圧データを生成する手段(室内温度、屋外温度、室内湿度、屋外湿度、気圧、風速、風向きおよび雨量の少なくとも1つに関するデータを生成する)と、インターネットに接続され、上記気圧データを記憶する気象情報提供用サーバーと、上記気象情報提供用サーバーからインターネットを介して上記気圧データを取り出して所定の処理を行うクライアント(コンピューター)とを有することを特徴とする気象情報処理装置」が提案されている。
【0010】
特許文献3には、「互いに離れた地域にある複数の情報端末が通信回線を介してサーバーの情報装置にそれぞれ接続し、これら情報端末同士及び情報端末とサーバーとの間で情報の転送を行うインターネットであって、前記情報端末に気象観測用のセンサー(気圧、温度、湿度、照度、雨量、雲高、風向、風速等を検出する)とタイマーとを接続するとともに、得られた気圧データを時間関数のグラフに表示するグラフ用プログラムを設け、前記サーバーには気圧データを格納する記憶装置と地図データと気圧天気図作成用の気圧プログラムとを設け、前記情報端末からサーバーをインターネット上でアクセスし気圧データを送信し、及び前記いずれかの前記センサーの気圧データを受信しグラフ化して表示し、また前記サーバーでは前記記憶装置に蓄積した気圧データから前記気圧プログラムにより前記地図データを利用した広域の気圧天気図を作成し、前記情報端末ではこれらを受信して表示することを特徴とする気象観測ネットワークシステム」が提案されている。
【0011】
特許文献4には、「計測した検針値を通信システムを介してセンターに送信する検針装置を設け、前記検針装置に接続され、温度・湿度・気圧・騒音・降雨の有無・降雨量の少なくともいずれか1つの観測データを観測するセンサー装置であって、前記観測データを前記検針値と共に前記センターに送信許容して前記検針装置に記憶させるセンサー装置」が提案されている。
【0012】
特許文献5には、「気象観測できる気象観測端末を積載し気圧データを送信する複数の移動体と、前記気圧データの配信要求と前記気圧データを授受する複数の利用者端末と、前記利用者端末から要求される前記気圧データの検索配信の管理を行うコンテンツサーバーと、前記複数の移動体と前記複数の利用者端末及び前記コンテンツサーバーとを情報接続するインターネットとを備え、前記複数の移動体は車に積載されている各種のセンサーからの情報とGPS受信機からの位置情報及び時間情報を一定の時間周期で携帯電話機を介して前記コンテンツサーバーに送信し、前記コンテンツサーバーは前記複数の移動体より受信した気象情報を、地区ポイント、時間毎に処理蓄積して、前記複数の利用者端末からの問合せに応じて配信し、前記気象観測端末は、気温、気圧、湿度、照度、雨量、雷のいずれかの大気状態を検知しセンサーデータを出力するセンサーであることを特徴とする気象情報収集配信方式」が提案されている。
【0013】
従って、気象情報収集配信方式は、各移動体が走行している各地区ポイントにおける最新の位置データ及び気圧データを送信できるので、ピンポイントな地区の精度の高い天気予報等を多数の利用者に容易に提供することができる。
【0014】
特許文献6には、「複数の携帯端末と、これら携帯端末から情報を収集するとともに加工して配信する情報処理センターと、前記携帯端末と前記情報処理センターとの通信を行う通信網とを具備する情報収集・配信システムにおいて、前記携帯端末は、自己の所在位置を特定する位置特定手段と、情報を収集する情報収集手段と、前記位置特定手段の出力および情報収集手段の出力を前記情報処理センターへ送信する送信手段と、前記情報処理センターからの情報を表示する表示手段とを具備し、前記情報処理センターは、入出力情報を管理するサーバーと前記携帯端末からの情報を蓄積管理する情報データベースと、前記携帯端末へ前記情報データベース内の情報を送信する送信手段と、を具備し、前記位置特定手段は、前記携帯端末の現在の所在位置を経度データ、緯度データとして測定し、前記情報収集手段は、気温、湿度、気圧、紫外線強度、花粉濃度等の気象情報を測定する気象情報測定手段であることを特徴とする情報収集・配信システム」が提案されている。よって、特定地域の情報や、きめの細かい情報を提供することができる。
【0015】
特許文献7には、「多数の各車両に設置した情報検出手段(車両の速度と位置との情報、車両のワイパー稼動情報、外気温度情報、及び、気圧情報を検出するもの)で検出した情報を、前記多数の各車両から収集し、該収集情報を予め設定した特定地域毎及び/又は情報種類毎に地域情報として整理し、該地域情報を有線、無線、もしくは、特定媒体等を介してユーザーに提供することを特徴とする車両を用いた情報収集整理利用システム」が提案されている。
【0016】
従って、車両を用いた情報収集整理利用システムは、道路上等を走行する多数の車両から検出される検出情報を収集し、該収集した総ての情報を分析整理して地域情報(地域的、種類的、時間的な情報に分析整理した情報)とすることによって、リアルタイムで、前記地域情報をユーザーに提供することができる。 また、車両数を多くして情報の収集元を多数することができると共に、多様な情報を検出情報として検出できるので、情報の偏りが少なく、きめの細かい情報を提供できる。
【0017】
特許文献8には、「GPSにより位置情報を取得する測位手段と、気圧データを測定する測定手段と、前記位置情報、気圧データ及び測定時刻を含む観測情報を外部装置へ送信する送信手段と、前記送信手段が送信した気圧データを記憶する記憶手段を備え、前記測定手段が、温度センサー、湿度センサー及び気圧センサーのうち少なくとも一つを備えてなり、前記測定手段が、所定の時間間隔ごとにまたは連続的に、気圧データを測定し、記憶手段に記憶された前回の気圧データと、測定した気圧データとの間に所定の変化が生じた場合に、前記送信手段が測定した気圧データを含む観測情報を送信することを特徴とする気象情報収集用の情報端末」が提案されている。
【0018】
従って、GPSにより位置情報を取得しているので、任意の位置で、気圧データを迅速かつ容易に取得でき、情報端末が現在位置する狭い範囲の地域の天気を高い精度で予報することができる。
【0019】
前述したように、無線移動体通信システムにおいて、基地局のセル半径は数100mから数kmの範囲内であり、数kmのセル半径の場合には1つのセルを複数のセクターに分割している場合が多い。つまり、無線移動体通信システムは、アメダスの設置区間よりも狭い地域の気象情報を収集することができる。今後ますます普及すると考えられるGPSを移動携帯端末に搭載すれば、更に詳細な位置決めが可能となる。つまり、各移動携帯端末に気象センサーを搭載し、移動体通信網を利用し、気象センサーの情報を収集すれば、アメダスと比べ非常に狭い範囲の気象情報を短時間の間隔において収集することができ、短時間予報を正確に行うことが可能である。
【0020】
課題としては、移動携帯端末に搭載された気象センサーにより観測された気象情報の信頼性が、アメダスにおいて観測された気象情報に比べて低くなることである。移動携帯端末においては、小型化、低価格化が要求され、高精度、高価格な気象センサーを搭載することが難しい。更に、移動携帯端末が鞄やバックの中にある場合、移動携帯端末が空調の効いた室内に置かれてある場合、移動携帯端末を身に付け体温の影響がある場合等、気象センサーによる観測条件が様々に異なる。高精度、高価格な気象センサーを移動携帯端末に搭載することが今後も難しいと考えられ、気象センサーにより収集された気象情報をいかに高い精度にするか、つまり収集された気象情報のうち、気象予報に不必要な気象情報をいかに効率的に除去するかが重要である。
【0021】
更に、移動携帯端末において、観測した気象情報のデータ通信量を多く送信することが難しいことである。通常の移動体通信システムにおいて、非音声の通信にはパケット通信が使用されており、送受信した情報量に応じて課金される料金システムである。通信料の低減、通信トラフィックの低減等を考えると、観測した気象情報の通信データ量はできる限り少ない方が好ましい。
【0022】
ここで、移動携帯端末の通信頻度を少なくし、通信時間間隔を長くすれば、通信料を低減することができ、又通信トラフィックを低減することができる。アメダスにおいては、10分に1度の気象観測が行われている。しかしながら、移動体通信においては、10分に1度の気象観測を行い、その都度、定期的に気象情報を送信することは、送信頻度としては比較的多い方である。また、前述のように、狭い地域の短時間間隔の気象予報を正確に行なうという点では、短時間間隔で定期的に気象情報を送信することが必要になる。
【0023】
特許文献9には、「移動携帯端末と通信ホスト装置とから構成された気象予測システムであって、前記移動携帯端末は、気象情報を測定するセンサー部と、前記通信ホスト装置から閾値情報を受信する通信手段と、前記通信手段により受信された閾値情報に基づき前記センサー部で測定された気象情報を破棄し、破棄されなかった気象情報を前記通信手段により前記通信ホスト装置へ送信させる情報制御部とを備え、前記通信ホスト装置は、前記センサー部で測定される気象情報以外の端末外気象情報、季節情報及び地図情報の少なくとも1つの情報を蓄積する端末外気象情報データベース部と、前記端末外気象情報データベース部に蓄積された情報に基づいて演算された前記センサー部で測定された気象情報を取捨するための閾値情報を蓄積する閾値情報蓄積部と、前記閾値情報蓄積部に蓄積された閾値情報を前記移動携帯端末へ送信し、前記通信手段により送信された気象情報を受信するネットワークインターフェースと、を備えることを特徴とする気象予測システム」が提案されている。
【0024】
この構成によれば、センサー部により気象情報を測定し、この気象情報に基づき第1の気象予測部において第1の気象予測を行なうことができる。更に、第1の閾値情報蓄積部に蓄積された閾値情報に基づき不必要な気象情報を破棄し、必要な少量の気象情報に基づき第1の気象予測を行い、気象予測出力手段に第1の気象予測を出力することができるので、第1の気象予測に必要な演算処理能力を軽減し、第1の気象予測を自信で行なうことができる移動携帯端末の小型化、低消費電力化を実現することができる。更に、センサー部においては、最小限の気象情報を測定しているので、通信手段により送信する気象情報量を減少することができる。
【0025】
移動携帯端末、通信ホスト装置のそれぞれの機能分担を適切に割り振り、気象予報を正確に行い、通信トラフィックを低減することができ、かつ移動携帯端末における複雑な処理を減少することができ、利用者に利便性の高い気象予報サービスを提供することができる気象予測システムを提供することができる。
【0026】
特許文献10には、「送信装置が、無線接続されたセンサー装置と送受信装置とで構成され、前記センサー装置に環境状態検出手段が設けられ、前記送受信装置に送信手段が設けられことを特徴とする環境情報供給システム」が提案されている。
【0027】
特許文献11には、「多数の船舶の船舶搭載無線機から送信される気象・海象計測データ及び各船舶の位置データを受信し得る中央受信装置で受信した上記データを収集、記録し、予め定められた時刻における多数の定点における気象・海象データを算出し、当該気象・海象データ本体とヘッダー情報とから成るグリッドデータを作成すると共に、更にそのグリッドデータに基づいて、等圧線データ等を算出し得る演算回路と、その演算結果を格納し得る記憶装置と、通信回線網に接続し得る通信用インターフェースとを具備するデータベースを備えた気象・海象データリアルタイム提供システム」が提案されている。また、中央受信装置で受信された各データは、メッシュ状に細分化(その広さは任意であるが、例えば10Km平方)した海域に対応するGPSによる位置データごとにGIS(Geographic Information System)技術を用いて処理し、等圧線等を求めて地図上に表示する[類似例「アメダス」]と共に、その結果をデータベースに保存することが記載されている。
【0028】
ところで、現在の民間気象会社の実施する気象情報システムサービスは、気象庁の作成する数値予報モデルの結果やアメダス等の広域的全国データを準用して、これらをコンピューター上で画像表示させたものである。すなわち、気象庁のスーパ−コンピューターによって作成される数値予報モデルを主体とした格子点値データ(Grid Point Value。以下、GPVデータと言う。)が予報の主流となっている。このGPVデータは日本列島域ばかりでなく日本を囲む沿岸海域を含めた広い範囲をカバーするものであるため、逆にこのような広範囲のデータからは狭い範囲の局地的気象の予測をすることは難しい。なぜならGPVデータの1番小さい格子でも1辺が30km位の広範囲のもの(例えば東京で言えば、東京−川崎の間が入ってしまう広さ。)で、例えば羽田飛行場、代々木公園といった局地の気象はこのモデルでは捕らえられず解析不可能だからである。そこで数値予報モデル結果から各ユーザーの局地予報を作成する場合には、予報作成の都度、気象技術者がコンピューター上のテクニックでさらに細分化してかつ地形的な修正データを加えて広域的モデル結果から狭義の局地予報に大気現象を翻訳するようにしていた。しかしこのように翻訳したとしても、元々このGPVデータには局地的・特異的データが含まれていないため正確なものとはなり得ない。
【0029】
ところで、積雲や積乱雲は、通常強い上昇気流によって形成されるということが知られているが、減衰期に入ると降水粒子が周囲の空気に摩擦効果を働きかけることで下降気流が発生する。この下降気流のうち、地上に災害を起こすほど極端に強いものをダウンバーストという。ダウンバーストは様々な(往々にして深刻な)被害を及ぼすことが多く、特に航空機にとっては深刻で最も注目すべき気象現象である。なお、下降気流の風速は、通常のものでも「強い台風」あるいはF1の竜巻並みの瞬間風速30(m/s)程度が観測され、稀にこの倍以上の風速に達する。
【0030】
ダウンバーストは地上付近に吹き降ろした後、地面にぶつかって水平方向に広がる。この広がりが約4km未満の比較的小型なダウンバーストはマイクロバースト、広がりが4km以上の大型のダウンバーストをマクロバーストと呼んでいる。普通、マクロバーストよりもマイクロバーストの方が、風速が速く、強い。
【0031】
また、ドップラーレーダーの観測においては、レーダーに対して離れる方向と近づく方向の2方向の風速の差(水平流の風速差にあたる)が10(m/s)以上のものをダウンバーストとしている。ただし、風速差の範囲があまりに大きいものはレーダーでの判別が難しいため、主に風速差の範囲が4km未満のマイクロバーストを対象としている。
【0032】
離着陸を行っている航空機にとって、このダウンバーストは墜落に直結する現象である。これは特に失速速度に近い速度で飛ぶ、機体姿勢の不安定な着陸時に強い下降気流によって地面に機体が押されるためである。またダウンバーストと同時に起きる現象としてウインドシアがある。これはダウンバースト中心から下降流が地面に吹き付けるが、この下降流は地面に跳ね返されて乱気流となりダウンバースト中心から放射状に風向が変わる。つまり低高度で急激に風向が変わるのである。
【0033】
例えば着陸進入時に滑走路手前でダウンバーストが発生していたとすると、最初は強い向かい風が吹くために機体が浮き上がる。これに対してエンジン出力を絞るなどしてパイロットは着陸進入を続けるが、ダウンバースト(マイクロバースト)中心付近を通過すると一挙に機体が地面に向かって押された後で、今度は機体に対して強烈な追い風が吹く。このためエンジン出力を増して対気速度を上げる必要に迫られるが、民間機用のジェットエンジンはレシプロエンジンと違いパイロットの操作から出力上昇まで数秒のタイムラグがある。従って着陸時は元々失速速度までの余裕が少ないために、あっという間に失速に陥ってしまい低高度のため回復させる余裕もなく墜落してしまうことがある。墜落に至らなくても、ほとんど墜落に近いかなりの衝撃を伴った着陸となる。
【0034】
このような事故が1970年代から80年代に特に民間航空機の就航本数の多いアメリカ合衆国で多発した。そのため、近年では空港に気象用ドップラーレーダーを設置し、その発生を検知・予測し、墜落事故の防止を行う研究が進んでいる。また、航空機側でもウインドシアに対する対策は進められており、A320(登録商標)等ではウインドシアを感知した場合、警告を発すると共に自動的にゴーアラウンドに入って回避するプログラムが作動するようになっている。
【0035】
特許文献12には、「ニューラルネットワークを用いて過去の気象現象データをその周囲環境の変化に合わせて多数回学習させ、その学習結果にて算出した「しきい値」および「シナプス結合係数」をもって、局地的に特定した地点での気象を予測する局地的気象予測方法」が提案されている。
【0036】
これにより気象庁の数値予報モデルにこだわることなく、独自の気象ネットワークで局地に限定した精度の高い予測を作成することができる。
【0037】
特許文献13には、「低気圧の移動ベクトルを用いて気象予測結果を選定する方法であって、低気圧の移動ベクトルと、ある時点における気圧データに基づき算出された複数の気象予測結果による複数の予測移動ベクトルとを比較するステップと、前記移動ベクトルとの差が最も小さい予測移動ベクトルに対応する気象予測結果を選定し、当該気象予測結果についてのデータを記憶装置に格納する予測結果選定ステップと、を含む気象予測結果選定方法」が提案されている。
【0038】
これにより、気象予測を適切に補正して気象予測の精度を向上させるための新規な技術を提供することができる。
【0039】
特許文献14には、航空機の進入経路中に発生するマイクロバーストを検出するマイクロバースト検出システムに関し、更に詳しくは、下降気流によって発生する地表上の圧力変化を圧力センサーによって検知してマイクロバーストの発生を予測するようにしたマイクロバースト検出システムに関する技術思想が記載されている。
【0040】
つまり、従来、マイクロバースト検出システムは、レーダーエコーによって大気の状態を把握していたため、気流中に反射体となる何らかの微粒子、例えば雨粒等が必要となる。また、高高度スキャンと低高度スキャンを行うために2つのレーダースキャンが必要となるほか、高高度スキャンは、航空機が進入体制に入ったときに所定の高度で、一定の角度でスキャンを行わなければならないという制限があり、低高度スキャンは、滑走路の周辺にある建物や車の影響を受けないように行わなければならないという制限があった。
【0041】
そこで、このような点に鑑みて、マイクロバーストの下降気流によって発生する地表上の圧力変化を直接圧力センサーによって検知し、マイクロバーストで生じるウインドシアによる危険性の度合いを予測するようにしたもので、気流中の反射体を必要とせず、航空機の位置や滑走路の周辺にある建物等の影響を受けないで、高い検出確度でクリーン・エアーでのマイクロバーストを含めて予想することのできるマイクロバースト検出システムを提供することを目的としている。即ち、「滑走路に進入する航空機の進入経路中に発生するマイクロバーストを検出するマイクロバースト検出システムにおいて、前記滑走路と前記進入路付近の少なくとも何れか一方にマトリックス状に設けられていて、下降気流によって発生する地表上の圧力変化を検知する複数の圧力センサーと、この圧力センサーの得た圧力データを送信する送信手段と、を具備し、前記圧力データを前記航空機に前記送信手段より送信するようにしたことを特徴としたマイクロバースト検出システム」が提案されている。
【0042】
特許文献15には、航空機用情報送受信システムが提案されている。従来、航空機の飛行には、少なくとも気象等の変動が比較的激しい低空域では数十m〜数百m刻みの比較的細かい範囲ごとの情報が必要であり、高度方向を含む3次元的な情報が必要となり、しかも、航空機が高速で飛行すること等を考慮して、全体として航空機の前方や左右方向には少なくとも100kmの範囲、高度方向には数千ft〜数万ftの範囲の情報の提供が要求される。このように、航空機に対しては、膨大な量のデータの配信が必要となり、しかも、リアルタイム性も要求されるため、情報を圧縮して高速に配信することが求められる。
【0043】
しかしながら、上記のように空域を3次元的に細分化した各小空間における各情報を、例えばJPEG圧縮等の情報圧縮技術を用いて圧縮して配信した場合、航空機では、各小空間における各情報を可逆的に正確に復元できない。そのため、例えば気象の状況が互いに異なる空間同士の境界が不鮮明になってしまい、情報が劣化して、航空機の飛行経路管理等に用いることができないものになってしまうという問題があった。
【0044】
そこで、このような問題を解決するために、「自らの管理空域を飛行する航空機に対して飛行に関する情報を配信する地上局を備え、地上局は、当該航空機に飛行に関する情報を配信する領域を管理空域内に設定し、飛行に関する情報を、飛行に関する情報の数値が変化する領域内の位置を表す位置情報と、当該位置における数値の変化量を表す変化量情報とに分離し、変化量情報を圧縮し、位置情報と圧縮した変化量情報とを航空機に配信する航空機用情報送受信システム」が提案されている。
【0045】
特許文献16には、任意の3次元格子点における気圧データを一意的に推定できる装置及び方法が提案されている。従来、地形が複雑で比較的狭い範囲(50km四方程度)で、気象観測データを利用して、前述の客観解析法により3次元格子点上の気圧データを推定する場合、対象範囲に含まれる気象観測地点が少ない、それらの位置が均等に分布していない、上空の風向速データがないなどの原因で、一部の格子点で各気象観測点から設定される観測データの重み係数がすべてゼロに近い微小値となり、数値的に重み付き平均を計算することができず、一次推定値が求められないため、客観解析が不可能になることが多い。その対策としては、仮想的な気圧データを人為的に試行錯誤で追加するしかないため、初心者には気圧データの客観解析を行うことが困難である。また、仮想的な気圧データを追加して、結果が得られても、追加した仮想気圧データの位置や数値に依存して、得られる結果が一意的ではないという問題があった。
【0046】
そこで、特許文献16では、気象観測データを利用して大気拡散予測や局地気象調査のためのシミュレーションを行う際に、対象範囲の選び方によらず、仮想的な気圧データを追加することなく、対象範囲に含まれる気象観測データだけを用いて、任意の3次元格子点における気圧データを一意的に推定できる装置及び方法を提供することを目的としている。
【0047】
即ち、「対象とする空間及び時間領域に含まれる複数の気象観測点の気象要素観測データから、対象空間領域を格子状に分割した各格子点の気象要素データを推定する気圧データ推定装置において、各格子点に対応する各地点の気象要素観測データの重み係数を、各格子点と各気象観測点との少なくとも水平距離、鉛直高さおよび地形障壁の高さのいずれか、もしくはこれらの複数について各格子点に近い程重み付けをした係数(重み係数成分)を付与してそれらの成分の積として算出する観測データ重み係数計算手段と、各格子点での気象要素データの推定値を、各気象観測点の気象要素観測データに前述の算出した観測データ重み係数を乗じて平均することにより算出する気圧データ一次推定処理手段と、各格子点について各気象観測点の前述した観測データ重み係数の最大値があらかじめ設定した微小しきい値以下になるかを判定する微小重み係数判定手段と、該算出した観測データ重み係数の最大値が微小しきい値以下になると判定される場合に、その最大値が微小しきい値を超える観測データ重み係数成分のみの積を使用するか、もしくは全観測点について重み付けをしないで定数を付与することにより、各気象観測点の重み係数の最大値が微小しきい値を超えるようにして修正設定する微小重み係数修正処理手段と、該修正設定した重み係数を使用して前記気圧データ一次推定処理により推定された気圧データを修正する修正気圧データ推定処理手段と、を有することを特徴とする気圧データ推定装置」が提案されている。
【0048】
特許文献17には、次のような事項が記載されている。
【0049】
航空機が乱気流に遭遇した場合、遭遇した乱気流の規模によっては、乗客や乗務員が負傷する虞や、航空機自体に重大な事故が発生する可能性がある。このため、航空機の運行において、乱気流、特に視認やレーダーでは発見することが困難な晴天乱気流(CAT:Clear−Air Turbulence)の発生を正確に予測し、これを回避することが求められてきた。
【0050】
ここで、従来、乱気流の予測には、気象庁より提供される情報に基づいて、航路上の各ポイントにおける垂直ウインドシア(Vertical Wind Shear)の大きさに係る指数(Index)を算出することで乱気流を予測する手法が主に用いられている。しかし、垂直ウインドシアに基づく従来の予測では、乱気流の発生が予測されていないにもかかわらず航空機が乱気流に遭遇してしまうことや、逆に乱気流の発生が予測されていたにもかかわらず乱気流が発生しないといったことがあった。即ち、従来の乱気流予測手法では、乱気流の発生を正確に予測し、これを回避することは非常に困難であった。
【0051】
そこで、特許文献17では、「大気の状態に関するデータの入力を受け付けるデータ受付手段と、前記データ受付手段によって受け付けられた前記データを用いて、乱気流の発生に関わる異なる物理過程に係る複数種類の指数を算出する指数算出手段と、前記指数算出手段によって算出された前記複数種類の指数に基づいて、乱気流の発生可能性を示す予測値を算出する予測値算出手段と、を備える、乱気流予測システム」が提案されている。
【0052】
特許文献18には、「レーザー光を利用したドップラーライダー方式の光学式遠隔気流計測装置において、受信信号強度に閾値を設けて、該閾値以下の該受信信号については情報を無効とすると共に、前記閾値以上の受信信号については同一位置で一定時間継続することを確認することにより、正しい気流情報と判別するようにし、正しいと判別された気流情報に基づいて特異な気流情報が認識された場合には音声または表示により自動的に警報を発するものとした遠隔気流の警報表示方法」が提案されている。
【0053】
特許文献19には、「飛行場管制区域内の気象情報を提供する気象情報提供システムにおいて、気圧データサーバーから定期的に提供される、前記飛行場管制区域を含む広域気圧データを受信する受信手段と、レイリー散乱/ブラッグ散乱の反射波を観測し、その観測結果から降雨時/晴天時の全方位の風速を算出することで、前記飛行場管制区域内の風分布を観測し、数分間隔で出力する気象観測装置と、前記広域気圧データを初期値とし、前記風分布を含む気象観測データを逐次データ同化して前記区域内の気象予測モデルを作成・更新し、当該予測モデルから前記区域内の1kmメッシュ以下の風分布を含む極細密気象予測演算を行い、その演算結果を気象予測情報として出力する気象予測演算装置とを具備することを特徴とする気象情報提供システム」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開平7−225284号公報
【特許文献2】特開平10−132956号公報
【特許文献3】特開2000−138978号公報
【特許文献4】特開2001−134882号公報
【特許文献5】特開2002−044289号公報
【特許文献6】特開2002−358321号公報
【特許文献7】特開2002−358599号公報
【特許文献8】特開2003−028967号公報
【特許文献9】特開2005−300176号公報
【特許文献10】特開2004−303125号公報
【特許文献11】特開2005−189165号公報
【特許文献12】特開平09−049884号公報
【特許文献13】特開2003−098271号公報
【特許文献14】特開平9−080166号公報
【特許文献15】特開2009−251730号公報
【特許文献16】特開2007−248355号公報
【特許文献17】特開2009−192262号公報
【特許文献18】特開2010−217077号公報
【特許文献19】特開2007−017316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0055】
前述したように、離着陸を行っている航空機にとって、ダウンバーストは墜落に直結する現象であり、ダウンバーストの発生を正確に予測することが重要な課題になっている。図24(A)〜図24(C)は、ダウンバーストの発生メカニズムを示す概略図である。図24(A)は積雲期であり、地表付近の空気が温められることで上昇気流が発生し、積雲(積乱雲)が発達していく。図24(B)は成熟期であり、十分に成長した積雲(積乱雲)が急激な下降気流(ダウンバースト)を発生させる。図24(C)は減衰期であり、積雲(積乱雲)が徐々に消滅していき下降気流が弱くなる。このように、ダウンバーストは、積雲や積乱雲の成長に伴って局地的に発生して短時間で消滅する現象であり、遅くとも積雲期までの気象条件の変化からダウンバーストの発生を正確に予測し、パイロットに通知することが求められる。
【0056】
特許文献1〜11に記載された装置やシステムは、センサー等の手段を用いて気象に関するデータを取得するものではあるが、局地的に発生して短時間で消滅するダウンバーストのような気象変動をいかにして予測するかについては、有効な提案がなされていない。
【0057】
更に、特許文献12の手法は、例えば、羽田で観測した風向・風速・気圧の現在の実測値と、羽田を中心に東西南北の4つの観測地点である銚子・御前崎・八丈島・秋田の気圧の現在の実測値を用いて羽田の局地的な気象を予測するものであるが、把握したい気象現象のサイズが数kmであるのに対して観測地点間の距離が大きすぎる。そのため、局地的な気象変動の原因となる現象を捉えることができず、原理上、ダウンバーストの発生を的確に予測することはできない。
【0058】
また、特許文献13の手法でいう低気圧とは赤外線写真として天気図上に現れる低気圧のことであり、局地的に発達する積雲や積乱雲による小さな低気圧を捉えることができない。すなわち、赤外線写真から得られる低気圧に関する情報はそのサイズ的分解能が十分でなく、また、得られる情報のリアルタイム性が乏しい。
【0059】
特許文献14〜19に記載された装置やシステムによるダウンバーストの予測には以下に示すような問題点があった。すなわち、乱気流の発生は、雲の形などで推測できることもあるが、晴天時の乱気流などの突然の揺れが発生するものや、地形に起因する乱気流も生じる場合があるので、予測することが難しい。また、航空機などの離着陸に影響するダウンバーストは、リアルタイムに発生状況を管制塔やパイロットへフィードバックすることに重要性があるが、ドップラーライダーを用いた風向・風速を観測して判断しているので、正確なダウンバーストの発生予測、計測は出来ていないのが現状である。さらに、ダウンバーストを正確に予測するためには、ダウンバーストに関連する気象状況の変化をリアルタイムにわかりやすく可視化することが重要であるが、そのような試みはなされていない。
【0060】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、飛行物体が離着陸する施設において発生するダウンバースト等の気象変動を予測するために利用可能な情報をリアルタイムに可視化して提供することができる気象変動情報提供システム、気象変動情報提供方法、気象変動情報提供プログラム及び記録媒体を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0061】
(1)本発明は、飛行物体が離着陸する施設において気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動に関する情報を提供する気象変動情報提供システムであって、飛行物体の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に分散して配置される複数の気圧計測装置と、前記複数の気圧計測装置の各々が計測した気圧データを処理するデータ処理装置と、を含み、前記データ処理装置は、前記複数の気圧計測装置の各々から前記気圧データを取得する気圧データ取得部と、前記気圧データ取得部が取得した気圧データに基づいて、前記気象変動に関する情報をリアルタイムに生成する気象変動情報生成部と、を含み、前記気象変動情報生成部は、前記気象変動に関する情報の少なくとも一部として、前記離着陸領域における気圧分布を表す時系列の画像情報を生成する、気象変動情報提供システムである。
【0062】
本発明によれば、飛行物体の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に、複数の気圧計測装置を分散して配置することで、各気圧計測装置が計測する気圧データを取得して離着陸領域における気圧分布の情報を得ることができる。そして、本発明によれば、この気圧分布の情報を処理することで、離着陸領域において気圧の変化に起因して発生するダウンバースト等の局所的な気象変動の発生の有無の判断や気象変動の発生の予測等に利用可能な有益な情報を提供することができる。
【0063】
また、本発明によれば、離着陸領域における気圧分布を時系列の画像(リアルタイムに変化する画像)として可視化して提供するので、この画像を監視することでリアルタイムに変化する気圧の状況を容易に把握することができ、気象変動の予測等に有効利用することができる。
【0064】
(2)この気象変動情報提供システムにおいて、前記気象変動情報生成部は、前記気圧分布を表す時系列の画像情報として、前記離着陸領域における気圧分布を気圧に応じて色分けして表す時系列の画像情報を生成するようにしてもよい。
【0065】
このようにすれば、離着陸領域における気圧分布の時間変化を視覚的に極めて容易に把握することができる。
【0066】
(3)この気象変動情報提供システムにおいて、前記気象変動情報生成部は、前記気圧データに基づいて、前記離着陸領域における複数の位置の気圧傾度を計算し、前記気象変動に関する情報の少なくとも一部として、前記離着陸領域における気圧傾度の変化の情報を生成するようにしてもよい。
【0067】
気圧傾度と風向・風速の間には相関があるので、気圧傾度の変化の情報から概略的な風向・風速を知ることができる。従って、気圧分布の情報と合わせて気圧傾度分布の情報を利用することで、ダウンバースト等の気象変動の発生の有無の判断や気象変動の発生の予測の精度を高めることが期待できる。
【0068】
(4)この気象変動情報提供システムにおいて、前記データ処理装置は、前記気象変動に関する情報に基づいて前記離着陸領域におけるダウンバーストの発生の検出及び予測の少なくとも一方を行い、ダウンバーストの発生を検出又は予測した場合には警報情報を生成するダウンバースト解析部をさらに含むようにしてもよい。
【0069】
このようにすれば、ダウンバーストの検出や予測を自動化し、ダウンバーストに関する警報情報を提供することができる。
【0070】
(5)この気象変動情報提供システムにおいて、前記データ処理装置は、前記気象変動に関する情報又は前記警報情報を送信する制御を行う送信制御部をさらに含むようにしてもよい。
【0071】
このようにすれば、気象変動に関する情報や警報情報をデータ処理装置のモニターに表示するだけでなく、飛行物体等に自動的に送信することができる。
【0072】
(6)この気象変動情報提供システムにおいて、前記複数の気圧計測装置は、前記離着陸の目標位置からの距離に応じて密度が異なるように配置されているようにしてもよい。
【0073】
このようにすれば、ダウンバーストの発生に伴う危険性が高い位置ほど観測メッシュが細かくなり、ダウンバーストの解析精度を高めることができる。逆に、ダウンバーストが発生に伴う危険性が相対的に低い位置は、観測メッシュを多少粗くすることで、必要十分な解析精度を確保しながらコストを削減することができる。
【0074】
(7)この気象変動情報提供システムにおいて、前記複数の気圧計測装置の少なくとも一部は、互いに高度が異なる位置に配置されているようにしてもよい。
【0075】
このようにすれば、高さ方向の気圧変化も加味したより詳細な情報を提供することができる。
【0076】
(8)この気象変動情報提供システムにおいて、前記複数の気圧計測装置の各々は、気圧に応じて共振周波数を変化させる感圧素子を有し、当該感圧素子の振動周波数に応じた気圧データを出力する気圧センサーを含むようにしてもよい。
【0077】
一般に気象観測に用いられる気圧計の分解能はhPaオーダーであるのに対して、周波数変化型の気圧センサーは、感圧素子の振動周波数を高い周波数のクロック信号で計測することで比較的容易にPaオーダーの測定分解能を得ることができる。また、周波数変化型の気圧センサーは、気圧がゆっくり変化しているのか、あるいは急激に変化しているのか、気圧の変動量(気圧の変化具合)を高精度に検出することができる。本発明によれば、高分解能な周波数変化型の気圧センサーを用いることで短時間におけるわずかな気圧の変化を捉えて、局所的に発生して短時間に消滅する気象変動(ダウンバースト等)を検出・予測するための情報を提供することができる。この情報を解析することで、気象変動を精度よく検出・予測することができる。
【0078】
(9)この気象変動情報提供システムにおいて、前記感圧素子は、双音叉圧電振動子であるようにしてもよい。
【0079】
双音叉圧電振動子を用いることで、より高い分解能の気圧センサーを実現することができる。
【0080】
(10)本発明は、飛行物体が離着陸する施設において気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動に関する情報を提供する気象変動情報提供方法であって、飛行物体の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に分散して配置される複数の気圧計測装置の各々から気圧データを取得する気圧データ取得ステップと、前記気圧データ取得ステップで取得した気圧データに基づいて、前記気象変動に関する情報をリアルタイムに生成する気象変動情報生成ステップと、を含み、前記気象変動情報生成ステップにおいて、前記気象変動に関する情報の少なくとも一部として、前記離着陸領域における気圧分布を表す時系列の画像情報を生成する、気象変動情報提供方法である。
【0081】
(11)本発明は、飛行物体が離着陸する施設において気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動に関する気象変動情報を提供する気象変動情報提供プログラムであって、飛行物体の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に分散して配置される複数の気圧計測装置の各々から気圧データを取得する気圧データ取得部と、前記気圧データ部が取得した気圧データに基づいて、前記気象変動に関する情報をリアルタイムに生成する気象変動情報生成部としてコンピューターを機能させ、前記気象変動情報生成部は、前記気象変動に関する情報の少なくとも一部として、前記離着陸領域における気圧分布を表す時系列の画像情報を生成する、気象変動情報提供プログラムである。
【0082】
(12)本発明は、上記の気象変動情報提供プログラムを記録した、コンピューター読み取り可能な記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本実施形態の気象変動情報提供システムの概要図。
【図2】気圧計測装置の配置例を示す図。
【図3】本実施形態の気象変動情報提供システムの構成例を示す図。
【図4】判定テーブルの一例を示す図。
【図5】本実施形態の気圧センサーの構成例を示す図。
【図6】本実施形態の圧力センサー素子の断面の模式図。
【図7】本実施形態の圧力センサー素子の断面の模式図。
【図8】本実施形態の振動片およびダイヤフラムを模式的に示す下面図。
【図9】全体処理のフローチャートの一例を示す図。
【図10】気圧傾度を計算する処理のフローチャートの一例を示す図。
【図11】ノード間の気圧傾度ベクトルの説明図。
【図12】各ノードの気圧傾度ベクトルの計算例の説明図。
【図13】気象変動情報を生成する処理のフローチャートの一例を示す図。
【図14】気圧分布の表示画像の一例を概略的に示す図。
【図15】気圧傾度分布の表示画像の一例を概略的に示す図。
【図16】気圧分布と気圧傾度分布の表示画像の一例を概略的に示す図。
【図17】ダウンバーストの予測処理のフローチャートの一例を示す図。
【図18】ダウンバーストの発生過程と気圧分布及び気圧傾度分布との関係を概念的に示す図。
【図19】変形例1における気圧計測装置の配置例を示す図。
【図20】変形例1における各ノードの気圧傾度ベクトルの計算例の説明図。
【図21】変形例2における気圧計測装置の配置例を示す図。
【図22】変形例3における気圧計測装置の配置例を示す図。
【図23】気圧傾度と風の関係の説明図。
【図24】ダウンバーストの発生メカニズムを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0084】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0085】
1.気象変動情報提供システムの概要
本実施形態の気象変動情報提供システムは、飛行物体が離着陸する施設において気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動に関する情報(以下、「気象変動情報」という)を提供する。飛行物体は、飛行機、ヘリコプター、グライダー、飛行船、気球などの航空機やラジコン模型など飛行することができる物体であれば何でもよい。また、飛行物体が離着陸する施設は、例えば、空港、ヘリポート、航空母艦、広場などであり、航空機等が臨時に離着陸する可能性のある施設(学校のグラウンドや駐車場など)も含まれる。気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動とは、例えば、ダウンバースト(急激な下降気流)、横風などの突風、竜巻、豪雨などが挙げられる。以下では、空港において、航空機の離発着に特に重大な影響を与えるダウンバーストに関する情報を提供する気象変動情報提供システムを例に挙げて説明する。
【0086】
図1は、本実施形態の気象変動情報提供システムの概要について説明するための図である。図1に示すように、本実施形態の気象変動情報提供システムでは、空港の滑走路5の周辺の、航空機6の離着陸の目標位置(タッチダウンゾーン)TD1,TD2を含む領域(離着陸領域)に複数の気圧計測装置2(白抜きの丸で表示)が分散して配置されている。例えば、図2(A)に示すように、滑走路5の全体を覆うように気圧計測装置2を分散配置してもよいし、図2(B)に示すように、TD1の周辺とTD2の周辺にのみ気圧計測装置2を分散配置してもよい。
【0087】
本実施形態では、多数の気圧計測装置2が碁盤目状に分散配置され、各気圧計測装置2をノードとする観測メッシュが形成されている。ただし、複数の気象計測装置2が分散配置されていればよく、碁盤目状に配置されていなくてもよい。この観測メッシュでは、4つのノードによって1つの矩形状の区画が形成されている。各区画の1辺の長さ(ノード間の距離)は、空港の気候やその他の状況を考慮して、十分な精度でダウンバーストの発生の検出や予測が可能な値(例えば、数百m以下)に設定される。ただし、ノード間の距離は一定でなくてもよい。なお、図1及び図2では、便宜上、区画の境界線を破線で表示しているが、実際には、空港においてこのような境界線を表示する必要はない。
【0088】
各気圧計測装置2は、一定周期で気圧を計測し、計測した気圧データを不図示のデータ処理装置に送信する。データ処理装置は、例えば、図1の管制塔7にある管制室に設置されており、各気圧計測装置2からの気圧データを受信し、受信した気圧データに基づいて気象変動情報を生成する。ただし、データ処理装置は、空港外に設置されていてもよい。例えば、航空機6にデータ処理装置を搭載してもよいし、インターネット等の通信ネットワークに接続されたサーバーをデータ処理装置としてもよい。
【0089】
データ処理装置が生成した気象変動情報は、データ処理装置のモニターあるいは管制室にある他の表示装置に送信されて表示される。さらに、この気象変動情報は、航空機6にも送信され、航空機6のモニターに表示される。管制官やパイロットは、この気象変動情報を監視することで、ダウンバーストの発生の有無の判断やダウンバーストの発生の予測をすることができる。あるいは、データ処理装置が、あらかじめ決められた判定基準に従い、ダウンバーストの検出や予測を行うようにしてもよい。これにより、管制官は、危険度に応じて着陸や離陸を禁止する旨の指示をパイロットに対して迅速に行うことができる。また、パイロットは、自らの判断で着陸や離陸を回避することができる。
【0090】
2.気象変動情報提供システムの構成
図3は、本実施形態の気象変動情報提供システムの構成を示す図である。本実施形態の気象変動情報提供システムは、図3の構成要素(各部)の一部を省略したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0091】
図3に示すように、本実施形態の気象変動情報提供システム1は、複数の気圧計測装置2とデータ処理装置4を含む。
【0092】
複数の気圧計測装置2の各々は、気圧センサー10を備え、離着陸領域に分散して配置される。気圧センサー10としては、圧力の変化を振動子の周波数の変化として捉える周波数変化型、圧力の変化を静電容量の変化として捉える静電容量型、圧力の変化をピエゾ抵抗の抵抗値の変化として捉えるピエゾ抵抗型などのセンサーを適用することができる。
【0093】
気圧計測装置2は、秒オーダーの周期でリアルタイムに気象を計測し、計測された気圧データは、送信部12により、例えば、気圧計測装置2毎に割り当てられた周波数の電波で送信される。各気圧計測装置2には互いに異なる送信周波数が割り当てられる。
【0094】
データ処理装置4は、受信部20、処理部(CPU:Central Processing Unit)30、操作部40、記憶部50、記録媒体60、表示部70、送信部80を含んで構成されている。
【0095】
受信部20は、受信周波数が順番に気圧計測装置2毎に割り当てられた送信周波数になるように所定の周期で切り替えながら各気圧計測装置2からの送信データを受信し、気圧データを復調する。そして、受信部20は、復調した気圧データを処理部(CPU)30に送る。
【0096】
なお、各気圧計測装置2の送信部12が、同一の送信周波数の電波を用いて、あらかじめ決められた互いに異なる周期的なタイミングで時分割に気圧データを送信し、データ処理装置4の受信部20が、各気圧計測装置2の送信タイミングと同期して、時分割に気圧データを受信するようにしてもよい。
【0097】
操作部40は、操作キーやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、ユーザーによる操作に応じた操作信号を処理部(CPU)30に出力する。
【0098】
記憶部50は、処理部(CPU)30が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。特に、本実施形態の記憶部50は、気象条件に対する判定基準とダウンバーストとの対応関係を定義する判定テーブル52を記憶している。この判定基準は少なくとも気圧に関する条件を含み、一定時間当たりの気圧の低下量が所定の閾値を超えたか否かをダウンバーストの判定基準としてもよい。また、データ処理装置4が温度や湿度の情報を得られる場合には、判定基準に温度や湿度等に関する条件を含ませてもよい。例えば、一定時間当たりの気圧の低下量が所定の閾値を超えるとともに温度が所定の範囲にあるか否かをダウンバーストの判定基準としてもよい。
【0099】
図4は、判定テーブル52の一例を示す図である。図4の例では、判定基準1が満たされるとダウンバーストが発生中であることを示している。また、判定基準2が満たされると所定時間内にダウンバーストが発生する可能性があることを示している。さらに、ダウンバーストの発生可能性の程度を複数段階に分けて、判定基準2を例えば判定基準2−1〜2−3のように細分化してもよい。
【0100】
また、記憶部50は、処理部(CPU)30の作業領域として用いられ、操作部40から入力されたデータ、記録媒体60から読み出されたプログラムやデータ、処理部(CPU)30が各種プログラムに従って実行した演算結果等を一時的に記憶するためにも使用される。
【0101】
処理部(CPU)30は、記憶部50や記録媒体60に記憶されているプログラムに従って、各種の計算処理や制御処理を行う。具体的には、処理部(CPU)30は、受信部20から気圧データを受け取って各種の計算処理を行う。また、処理部(CPU)30は、操作部40からの操作信号に応じた各種の処理、表示部70に各種の情報を表示させる処理、受信部20及び送信部80を介した航空機や管制塔とのデータ通信を制御する処理等を行う。
【0102】
特に、本実施形態では、処理部(CPU)30は、以下に説明する気圧データ取得部32、気象変動情報生成部34、ダウンバースト解析部36、送信制御部38を含む。ただし、本実施形態の処理部(CPU)30は、これらの一部の構成(要素)を省略したり、他の構成(要素)を追加した構成としてもよい。
【0103】
気圧データ取得部32は、受信部20から送られてくる気圧データを、気圧計測装置2の識別IDと対応づけて継続して取得する処理を行う。具体的には、気圧データ取得部32は、各気圧データを受け取り、受け取った各気圧データを気圧計測装置2毎に割り当てられた識別IDと対応づけて順番に記憶部50に保存する。
【0104】
気象変動情報生成部34は、気圧データ取得部32が取得した気圧データに基づいて、離着陸領域における気象変動情報をリアルタイムに生成する処理を行う。特に、本実施形態の気象変動情報生成部34は、気象変動情報の少なくとも一部として、離着陸領域における気圧分布を表す時系列の画像情報(リアルタイムに更新される画像情報)を生成する。
【0105】
また、気象変動情報生成部34は、気圧データ取得部32が取得した気圧データに基づいて、離着陸領域における複数の位置の気圧傾度を計算し、気象変動情報の少なくとも一部として、離着陸領域における気圧傾度の変化の情報を生成するようにしてもよい。気圧傾度の計算対象となる位置は、任意の位置でよく、例えば、観測メッシュの各ノードの位置でもよい。
【0106】
この気圧傾度の変化の情報は、観測メッシュの各ノードの気圧傾度の時間変化を表すグラフ情報であってもよいし、観測メッシュにおける気圧傾度の分布を表す時系列の画像情報(リアルタイムに更新される画像情報)であってもよい。
【0107】
ダウンバースト解析部36は、気象変動情報生成部34が生成した気象変動情報に基づいて、離着陸領域におけるダウンバーストの発生の検出及び予測の少なくとも一方を行い、ダウンバーストの発生を検出又は予測した場合には警報情報を生成する処理を行う。具体的には、ダウンバースト解析部36は、記憶部50に記憶された判定テーブル52を参照し、判定テーブル52に含まれる第1の判定基準(図4の例では判定基準1に対応する)に従い、ダウンバーストの発生の有無を判定する。また、ダウンバースト解析部36は、判定テーブル52に含まれる第2の判定基準(図4の例では判定基準2に対応する)に従い、ダウンバーストが所定時間以内に発生するか否かを判定する。
【0108】
なお、ダウンバースト解析部36は、ダウンバーストの発生を検出した場合には、ダウンバーストの発生位置を含む警報情報を生成するようにしてもよい。また、ダウンバースト解析部36は、ダウンバーストの発生を予測した場合にはダウンバーストの発生予測位置や発生予測時間を含む警報情報を生成するようにしてもよい。
【0109】
送信制御部38は、気象変動情報生成部34が生成した気象変動情報やダウンバースト解析部36が生成した警告情報を、送信部80を介して航空機6や管制塔7(データ処理装置4が管制塔7の外部にある場合)などに送信する制御を行う。
【0110】
なお、本実施形態の気象変動情報提供システムが気象変動情報を提供することで足りる場合は、ダウンバースト解析部36はなくてもよい。
【0111】
記録媒体60は、コンピューター読み取り可能な記録媒体であり、特に本実施形態では、コンピューターを上記の各部として機能させるための気象変動情報提供プログラムが記憶されている。そして、本実施形態の処理部(CPU)30は、記録媒体60に記憶されている気象変動情報提供プログラムを実行することで、気圧データ取得部32、気象変動情報生成部34、ダウンバースト解析部36、送信制御部38として機能する。あるいは、通信部80等を介して有線又は無線の通信ネットワークに接続されたサーバーから気象変動情報提供プログラムを受信し、受信した気象変動情報提供プログラムを記憶部50や記録媒体60に記憶して当該気象変動情報提供プログラムを実行するようにしてもよい。ただし、気圧データ取得部32、気象変動情報生成部34、ダウンバースト解析部36、送信制御部38の少なくとも一部をハードウェア(専用回路)で実現してもよい。
【0112】
なお、記録媒体60は、例えば、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、メモリー(ROM、フラッシュメモリーなど)により実現することができる。
【0113】
表示部70は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成される表示装置であり、処理部(CPU)30から入力される表示信号に基づいて各種の情報を表示する。表示部70には、例えば、気圧分布画像や気圧傾度分布画像の各フレームがリアルタイムに表示される。
【0114】
このような構成の気象変動情報提供システム1により、離着陸領域におけるダウンバーストの発生や前兆をリアルタイムに捉えるためには、気圧センサー10としてPaオーダーの高分解能なセンサーを用いることが望ましい。現在のところ、周波数変化型の気圧センサーは、静電容量型やピエゾ抵抗型の気圧センサーよりも高い分解能が得られており、周波数変化型の気圧センサーであれば1Pa以下の分解能も実現可能である。
【0115】
図5は、周波数変化型の気圧センサー10の構成例を示す図である。図5に示すように、本実施形態の気圧センサー10は、圧力センサー素子100、発振回路110、カウンター120、TCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator)130、MPU(Micro Processing Unit)140、温度センサー150、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)160、通信インターフェース(I/F)170を含んで構成されている。ただし、本実施形態の気圧センサーは、図5の構成要素(各部)の一部を省略したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0116】
圧力センサー素子100は、振動片の共振周波数の変化を利用する方式(振動方式)の感圧素子を有している。この感圧素子は、例えば、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の圧電材料で形成された圧電振動子であり、例えば、音叉型振動子、双音叉型振動子、AT振動子(厚みすべり振動子)、SAW共振子などが適用される。
【0117】
特に、双音叉型圧電振動子は、AT振動子(厚みすべり振動子)などに比べて、伸長・圧縮応力に対する共振周波数の変化が極めて大きく共振周波数の可変幅が大きいので、感圧素子として双音叉型圧電振動子を用いることで、わずかな気圧差を検出可能な高い分解能の気圧センサーを実現することができる。そのため、本実施形態の気圧センサー10は、感圧素子として双音叉型圧電振動子を用いている。なお、圧電材料として、Q値が高くかつ温度安定性に優れた水晶を選択することで、優れた安定性と最高水準の分解能および精度を実現することができる。
【0118】
図6は、本実施形態の圧力センサー素子100の断面の模式図である。図7は、本実施形態の圧力センサー素子100の振動片220およびダイヤフラム210を模式的に示す下面図である。図7は、封止板としてのベース230を省略して描いてある。図6は、図7のA−A線の断面に対応する。
【0119】
圧力センサー素子100は、ダイヤフラム210と、振動片220と、封止板としてのベース230と、を含む。
【0120】
ダイヤフラム210は、圧力を受圧して撓む可撓部を有する平板状の部材である。ダイヤフラム210の外側の面が受圧面214となっており、受圧面214の裏面側に一対の突起212が形成されている。
【0121】
振動片220は、振動ビーム(梁)222及び振動ビーム222の両端に形成された一対の基部224を有する。振動ビーム222は、一対の基部224の間に両持ち梁状に形成される。一対の基部224は、ダイヤフラム210に形成された一対の突起212にそれぞれ固定される。振動ビーム222には図示しない電極が適宜設けられ、電極から駆動信号を供給することで振動ビーム222を一定の共振周波数で屈曲振動させることができる。振動片220は、圧電性を有する材料で形成される。振動片220の材質としては、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料が挙げられる。振動片220は、支持梁226によって枠部228に支持されている。
【0122】
ベース230は、ダイヤフラム210と接合されて、ダイヤフラム210との間にキャビティー232を形成する。キャビティー232を減圧空間とすることにより、振動片220のQ値を高める(CI値を小さくする)ことができる。
【0123】
このような構造の圧力センサー素子100において、ダイヤフラム210は、受圧面214に圧力を受けた場合に撓み、変形する。すると、振動片220の一対の基部224が、ダイヤフラム210の一対の突起212にそれぞれ固定されているため、ダイヤフラム210の変形に従って基部224間の間隔が変化する。すなわち、圧力センサー素子100に圧力が印加されたときに、振動ビーム222に引張または圧縮の応力を生じさせることができる。
【0124】
図8は、圧力センサー素子100の断面の模式図であり、ダイヤフラム210が圧力Pによって変形した状態を示している。図8は、圧力センサー素子100の外側から内側への力(圧力P)が作用することにより、ダイヤフラム210が素子の内側に向かって凸となる変形が生じた例である。この場合、一対の突起212の間の間隔は大きくなる。他方、図示しないが、圧力センサー素子100の内側から外側への力が作用する場合は、ダイヤフラム210が素子の外側に向かって凸となる変形が生じ、一対の突起212の間の間隔は小さくなる。従って、両端が一対の突起212にそれぞれ固定された振動片220の振動ビーム222に平行な方向に引張または圧縮の応力が生じる。すなわち、受圧面214に対して垂直方向に加わった圧力は、突起(支持部)212を介して、振動片220の振動ビーム222に対して平行な直線方向の応力に変換される。
【0125】
振動ビーム222の共振周波数は、以下のようにして解析することができる。図6及び図7に示すように、振動ビーム222の長さをl、幅をw、厚みをdとすると、振動ビーム222の長辺方向に外力Fが作用したときの運動方程式は、次式(1)によって近似される。
【0126】
【数1】
【0127】
式(1)において、Eは縦弾性定数(ヤング率)、ρは密度、Aは振動ビームの断面積(=w・d)、gは重力加速度、Fは外力、yは変位、xは振動ビームの任意の位置をそれぞれ表す。
【0128】
式(1)に一般解と境界条件を与えて解くことで、次のような、外力が無い場合の共振周波数の式(2)が得られる。
【0129】
【数2】
【0130】
断面2次モーメントI=dw3/12、断面積A=dw、λI=4.73より、式(2)は次式(3)のように変形することができる。
【0131】
【数3】
【0132】
従って、外力F=0の時の共振周波数f0は、ビームの幅wに比例し、長さlの2乗に反比例する。
【0133】
外力Fを2本の振動ビームに加えたときの共振周波数fFも同様の手順で求めると、次式(4)が得られる。
【0134】
【数4】
【0135】
断面2次モーメントI=dw3/12より式(4)は次式(5)のように変形することができる。
【0136】
【数5】
【0137】
式(5)において、SFは応力感度(=K・12/E・(l/w)2)、σは応力(=F/(2A))をそれぞれ表す。
【0138】
以上から、圧力センサー素子100に作用する力Fを圧縮方向のとき負、伸張方向のとき正としたとき、力Fが圧縮方向に加わると共振周波数fFが減少し、力Fが伸縮方向に加わると共振周波数fFが増加する。
【0139】
そして、次式(6)に示す多項式を用いて、圧力センサー素子100の圧力−周波数特性と温度−周波数特性に起因する直線性誤差を補正することで、高分解能かつ高精度の圧力値Pを得ることができる。
【0140】
【数6】
【0141】
式(6)において、fnはセンサー規格化周波数であり、fn=(fF/f0)2で表される。また、tは温度であり、α(t)、β(t)、γ(t)、δ(t)は、それぞれ次式(7)〜(10)で表される。
【0142】
【数7】
【0143】
【数8】
【0144】
【数9】
【0145】
【数10】
【0146】
式(7)〜(10)において、a〜pは補正係数である。
【0147】
すなわち、圧力センサー素子100の出力信号の周波数を計測することで、振動ビーム220の振動周波数(力Fが作用した時の共振周波数fF)が得られ、あらかじめ測定された共振周波数f0や補正係数a〜pを用いて、式(6)から圧力Pを計算することができる。
【0148】
図5に戻り、発振回路110は、圧力センサー素子100の振動ビーム222を共振周波数で発振させた発振信号を出力する。
【0149】
カウンター120は、発振回路110が出力する発振信号の所定周期を、基準クロック源であるTCXO130が出力する高精度のクロック信号でカウントするレシプロカルカウンターである。ただし、カウンター120を、所定のゲートタイムにおける圧力センサー素子100の発振信号のパルス数をカウントする直接計数方式の周波数カウンター(ダイレクトカウンター)として構成してもよい。
【0150】
MPU(Micro Processing Unit)140は、カウンター120のカウント値から圧力値Pを計算する処理を行う。具体的には、MPU140は、温度センサー150の検出値から温度tを計算し、EEPROM160にあらかじめ記憶されているa〜pの補正係数値を用いて、式(7)〜(10)よりα(t)、β(t)、γ(t)、δ(t)を計算する。さらに、MPU140は、カウンター120のカウント値とEEPROM160にあらかじめ記憶されている共振周波数f0の値を用いて、式(6)より圧力値Pを計算する。そして、MPUが計算した圧力値Pは、通信インターフェース170を介して、気圧センサー10の外部に出力される。
【0151】
このような構成の周波数変化型の気圧センサー10によれば、圧力センサー素子100の振動周波数をカウンター120によりTCXO130が出力する高精度かつ高周波数(例えば数十MHz)のクロック信号でカウントするとともに、MPU140でデジタル演算処理により圧力値の計算及び直線性誤差の補正を行うので、Paオーダーの高い分解能かつ高精度の圧力値(気圧データ)を得ることができる。さらに、気圧センサー10は、カウント時間を考慮しても秒オーダーの周期で気圧データを更新することができるので、短時間におけるわずかな気圧の変化も捉えることができ、リアルタイムの気圧計測に適している。
【0152】
なお、本実施形態では、基準クロック源としてTCXO130を用いているが、基準クロック源を、温度補償回路を有さない発振回路、例えば、ATカット水晶振動子を搭載した水晶発振回路で構成しても良い。この場合、温度補償回路を有さない分、気圧変動の検出精度は低下するが、基準クロック源を当該水晶発振回路とするか、或いはTCXO130とするかは、予測システムのコストや予測精度に応じて設計者が適宜選択すればよい。
【0153】
3.気象変動情報提供システムの処理
[全体処理]
図9は、データ処理装置4の処理部(CPU)30の全体処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0154】
まず、データ処理装置4が起動すると、処理部(CPU)30は、時刻変数tを0にセットする(S10)。
【0155】
次に、処理部(CPU)30(気圧データ取得部32)は、各気圧計測装置2が計測した気圧データを取得する(S12)。この気圧データにより、時刻tにおける観測メッシュの各ノードの気圧が得られる。
【0156】
次に、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、ステップS12で取得した気圧データ(観測メッシュの各ノードの気圧)から時刻tにおける各ノードの気圧傾度を計算する(S14)。
【0157】
次に、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、ステップS12で得られた各ノードの気圧とステップS14で計算した各ノードの気圧傾度から、時刻tにおける離着陸領域の気圧の分布データと気圧傾度の分布データを生成する(S16)。
【0158】
次に、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、ステップS16で生成した時刻tまでの気圧の分布データと気圧傾度の分布データからダウンバーストの発生の検出と予測を行い、必要に応じて警告情報を生成する(S18)。
【0159】
次に、処理部(CPU)30は、時刻tにおける、気圧の分布データ、気圧傾度の分布データ、警告情報をモニターに表示し、航空機6等に送信する(S20)。
【0160】
そして、処理部(CPU)30は、処理を終了する(S22のY)まで、時刻変数tをΔtだけ増加し、S12〜S20の処理を繰り返し行う。
【0161】
このような処理部(CPU)30の処理により、例えば、Δtを1秒とすると、モニターに表示される気圧や気圧傾度の分布画像が1秒毎にリアルタイムに更新される。
【0162】
[気圧傾度の計算処理]
図10は、時刻tにおける各ノードの気圧傾度を計算する処理(図9のS14の処理)のフローチャートの一例を示す図である。
【0163】
まず、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、時刻tの気圧データから、すべての隣接する2つのノード間の気圧傾度を計算する(S110)。ここで、隣接する2つのノードとは、観測メッシュの各区画の各辺にある2つのノードである。隣接する2つのノードN1とN2の間の気圧傾度Gは、ノードN1の気圧をP1、ノードN2の気圧をP2、ノードN1とN2の距離をLとすると、次式(11)により計算される。
【0164】
【数11】
【0165】
ここで、図11に示すように、ノードN1とN2の中点を始点とし、気圧傾度Gの大きさに応じた長さと、気圧傾度Gの符号に応じた向き(気圧の高い方から低い方へ向かう向き)とを有する気圧傾度ベクトルgを考えることができる。
【0166】
次に、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、変数iを0にセットし(S112)、時刻tにおけるノードNiとノードNiに隣接する各ノードとの間の気圧傾度のベクトル和から、ノードNiの気圧傾度を計算する(S114)。図12(A)に示すように、ノードNiとノードNiに隣接する4つのノードNA,NB,NC,NDとの間の気圧傾度ベクトルをそれぞれgA,gB,gC,gDとすると、図12(B)に示すように、ノードNiの気圧傾度ベクトルgiは、gA+gB+gC+gD(gA,gB,gC,gDのベクトル和)で計算される。この気圧傾度ベクトルgiの長さをノードNiの気圧傾度Giと考えることができる。
【0167】
処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、気圧傾度を未計算のノードがあれば(S116のY)、未計算のノードが無くなるまで変数iを1ずつ増やしながら(S118)、S114の処理を繰り返し行う。
【0168】
[気象変動情報の生成処理]
図13は、時刻tにおける気圧の分布データと気圧傾度の分布データを生成する処理(図9のS16の処理)のフローチャートの一例を示す図である。
【0169】
まず、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、時刻tにおける各ノードの気圧と気圧傾度からノード間の位置の気圧を補完計算する(S210)。具体的には、各ノードの気圧値と各ノード間の気圧傾度から任意の位置の気圧を線形補完計算により求めることができる。
【0170】
次に、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、ステップS210の計算結果から、同じ気圧の位置を線で結び、時刻tの等圧線データを生成する(S212)。
【0171】
次に、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、ステップS212で生成した等圧線データを気圧に応じて色分けし、時刻tの気圧分布データを生成する(S214)。
【0172】
次に、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、各ノードの気圧傾度の大きさと向きを矢印で表現し、時刻tの気圧傾度の分布データを生成する(S216)。
【0173】
ステップS214で生成された気圧分布データとステップS216で生成された気圧傾度の分布データは画像に変換されてモニターに表示される。これにより、気圧や気圧傾度の分布が可視化される。
【0174】
図14は、気圧分布の表示画像の一例を概略的に示す図である。図14の例では、同じ模様の部分が同じ色になっている。処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、例えば、サーモグラフィーの画像のように、気圧が高い部分ほど赤く気圧が低い部分ほど青くなるような気圧分布データを生成するようにしてもよい。例えば領域A1は気圧が最も高い部分であり赤色で表示される。領域A2は、領域A1よりも少し低い気圧であり、橙色で表示される。領域A3は、領域A2よりも少し低い気圧であり、黄色で表示される。領域A4は、領域A3よりも少し低い気圧であり、緑色で表示される。領域A5は、領域A4よりも少し低い気圧であり、水色で表示される。領域A6は気圧が最も低い部分であり青色で表示される。
【0175】
このように、離発着領域の気圧分布を色分けして可視化することで、離着陸領域における気圧分布の時間変化を視覚的に極めて容易に把握することができる。従って、局所的な(小さな)低気圧(「降水セル」ともいう)の発生場所(図14ではA6の部分)を容易に特定することができる。
【0176】
また、図15は、気圧傾度分布の表示画像の一例を概略的に示す図である。図15の例では、各ノードの位置に、気圧傾度の大きさに応じた太さで、気圧の高い方から低い方へ向かう向きを有する矢印(気圧傾度ベクトルを表す)が表示されている。
【0177】
このように、離発着領域の気圧傾度分布を可視化することで、気圧傾度と相関がある風の情報(風向・風速)を概略的に知ることができる。
【0178】
管制官やパイロットは、可視化された気圧分布データや気圧傾度データを利用することで、気圧や風の時間変化を視覚的に把握することができ、ダウンバーストの発生の検出や予測を精度よく行うことが期待できる。
【0179】
なお、図16に示すように、気圧分布と気圧傾度分布を重ねて表示するようにしてもよい。
【0180】
[ダウンバーストの解析処理]
図17は、ダウンバーストの解析(検出及び予測)処理(図9のS18の処理)のフローチャートの一例を示す図である。
【0181】
まず、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、時刻tまでの気圧の分布データと気圧傾度の分布データから局地的な低気圧(降水セル)の有無を判定する(S310)。
【0182】
処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、局所的な低気圧が無いと判定した場合(S312のN)、ダウンバーストは発生しておらず、かつ、所定時間内にダウンバーストが発生する可能性はないと判定し(S316)、時刻tにおける解析処理を終了する。
【0183】
一方、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、局所的な低気圧があると判定した場合(S312のY)、時刻tにおける、局所的な低気圧の位置、強さ、移動方向、移動速度等を計算する(S314)。
【0184】
次に、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、ステップS314の計算結果から、第1の判定基準に従い、ダウンバーストが発生中か否かを判定する(S318)。例えば、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、局所的な低気圧の強さが所定の閾値よりも大きいか否かを第1の判定基準としてもよい。
【0185】
処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、ダウンバーストが発生中であると判定した場合(S320のY)、ダウンバーストの発生位置を特定し、発生位置の情報を含む警告情報を生成する(S322)。
【0186】
次に、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、ステップS314の計算結果から、第2の判定基準に従い、所定時間内にダウンバーストが発生する可能性があるか否かを判定する(S324)。例えば、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、局所的な低気圧における一定時間の気圧の変化量が所定の閾値よりも大きいか否かを第2の判定基準としてもよい。急激な気圧の低下は積乱雲の発達期における上昇気流の発生に関連するものであると考えられる。従って、例えば、一定時間の気圧低下量が所定の閾値よりも大きいことを判定基準とすることで、積乱雲の発達に伴うダウンバーストの発生を予測することができる。ただし、予測の精度を上げるために、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、気圧データをベースに、気圧以外のデータ(温度や湿度のデータ)を加味して予測するようにしてもよい。さらに、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、図4の例の判定基準2−1〜2−3のように、第2の判定基準を細分化して、ダウンバーストの発生の可能性を段階的に判定してもよい。
【0187】
処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、所定時間内にダウンバーストが発生する可能性が無いと判定した場合(S326のN)、時刻tにおける解析処理を終了する。
【0188】
一方、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、所定時間内にダウンバーストが発生する可能性があると判定した場合(S326のY)、ダウンバーストの発生予測位置と発生予測時間を計算し、発生予測位置と発生予測時間の情報を含む警告情報を生成し(S328)、時刻tにおける解析処理を終了する。なお、この警告情報に、ダウンバーストが発生する可能性(確率)がどの程度であるかの情報を含めてもよい。
【0189】
図18は、ダウンバーストの発生過程と気圧分布及び気圧傾度分布との関係を概念的に示す図である。図18(A)は、局所的な低気圧の発生前の気圧分布及び気圧傾度分布の一例であり、例えば、ノードN1〜N9の気圧はほぼ同じであり、気圧傾度もほぼ0になっている。図18(B)は、図23(A)の積雲期の気圧分布及び気圧傾度分布の一例であり、局所的な低気圧が発生することで、ノードN5とN8の間の位置を中心とする気圧の低い部分A1と各ノードから低気圧の中心に向かう小さめの気圧傾度が観測される。図18(C)は、図23(B)の成熟期の気圧分布及び気圧傾度分布の一例であり、低気圧の中心がノードN5に近い位置に移動するとともに、気圧がかなり低い部分A2と各ノードから低気圧の中心に向かう大きな気圧傾度が観測される。図18(D)は、図23(C)の減衰期の気圧分布及び気圧傾度分布の一例であり、低気圧が消滅し、ノードN1〜N9の気圧圧差と気圧傾度が小さくなる。
【0190】
処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、例えば、図18(C)のような気圧分布と気圧傾度分布が観測されている状態では、ダウンバーストが発生中であると判定することができる。また、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、各ノードの気圧傾度ベクトルの向きや気圧の低い部分からダウンバーストの発生位置を特定することができる。
【0191】
また、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、例えば、図18(A)のような気圧分布と気圧傾度分布が観測されている状態から、図18(B)のような気圧分布と気圧傾度分布が観測されるようになると、所定時間以内にダウンバーストが発生すると判定することができる。また、処理部(CPU)30(ダウンバースト解析部36)は、各ノードの気圧傾度ベクトルの向きや気圧の低い部分の時間変化から低気圧の移動経路を算出することで、ダウンバーストの発生位置や発生時間を予測することができる。
【0192】
以上に説明したように、本実施形態の気象変動情報提供システムによれば、航空機6(飛行物体)の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に、複数の気圧計測装置2を分散して配置することで、各気圧計測装置2が計測する気圧データを取得して離着陸領域における気圧分布の情報を得ることができる。そして、この気圧分布の情報を処理することで、離着陸領域において気圧の変化に起因して発生するダウンバースト等の局所的な気象変動の発生の有無の判断や気象変動の発生の予測等に利用可能な有益な情報を提供することができる。
【0193】
また、本実施形態の気象変動情報提供システムによれば、離着陸領域における気圧分布を時系列の画像(リアルタイムに変化する画像)として可視化して提供するので、この画像を監視することでリアルタイムに変化する気圧の状況を容易に把握することができ、気象変動の予測等に有効利用することができる。
【0194】
また、一般的な気圧計は高価であるため、多数の気圧計を配置することは現実的でないのに対して、本実施形態では、気圧センサー10を半導体の製造技術を用いて安価で提供することができるので、多数の気圧計測装置2を分散配置することができる。さらに、気圧センサー10をPaオーダーの高分解能な周波数変化型の気圧センサーとすることで、ダウンバーストなどの局所的な気象変動の発生前のわずかな気圧変化を的確に捉えることが可能になる。
【0195】
4.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0196】
[変形例1]
観測メッシュの各区画は矩形でなくてもよく、例えば、図19に示すように、6つのノードによって1つの六角形状の区画が形成されるように複数の気圧計測装置2(白抜きの丸で表示)を分散配置してもよい。この場合、処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、図20(A)に示すように、ノードNiとノードNiに隣接する3つのノードNA,NB,NCとの間の気圧傾度ベクトルgA,gB,gCを計算し、図20(B)に示すように、gA+gB+gC(gA,gB,gCのベクトル和)によりノードNiの気圧傾度ベクトルgiを計算するようにしてもよい。
【0197】
[変形例2]
離着陸領域内の気圧計測装置2の配置密度は一定でなくてもよく、例えば、離着陸の目標位置(タッチダウンゾーン)からの距離に応じて気圧計測装置2(白抜きの丸で表示)の配置密度を変えてもよい。例えば、図21に示すように、離着陸の目標位置(タッチダウンゾーン)TDから近い位置ほど気圧計測装置2の配置密度を高くするようにしてもよい。
【0198】
航空機の離着陸時にダウンバーストが発生すると危険性が高い位置ほど観測メッシュを細かくすることで、解析精度を高めることができる。逆に、ダウンバーストが発生しても相対的に危険性が低い位置は、観測メッシュを多少粗くすることで、必要十分な解析精度を確保しながらコストを削減することができる。
【0199】
[変形例3]
気圧計測装置2を3次元状に配置することで、3次元の観測メッシュを形成するようにしてもよい。例えば、図22に示すように、ヘリコプター8がビルの屋上にあるヘリポートに離着陸する際の気象変動情報を提供するシステムを構成する場合、当該ビル及び近くの他のビルの屋上や側面、地上等に気圧計測装置2(白抜きの丸で表示)を配置することで、離着陸の目標位置Pを含む3次元の領域に観測メッシュを形成することができる。このようにすれば、高さ方向の気圧の変化の情報も得られるので、気象変動の解析精度を高めることができる。なお、10m高くなる毎に気圧が約1hPa下がるので、3次元の観測メッシュを形成する場合は、気圧計測装置2の設置高度に応じて気圧や気圧傾度を補正計算することが望ましい。
【0200】
[変形例4]
処理部(CPU)30(気象変動情報生成部34)は、気圧傾度の分布データに代えて、又は気圧傾度の分布データとともに、風の分布データを生成するようにしてもよい。図23に示すように、地上や海上付近の風の向きや強さは、気圧傾度力、摩擦力、コリオリの力から求めることができる。摩擦力は、風の向きと反対向きに加わる。コリオリの力は、北半球では風の向きに直角右向きに働き、南半球では風の向きに直角左向きに働く。
【0201】
なお、気圧傾度力Fは、気圧傾度をG、空気塊の質量をm、空気塊の密度をρとすると、次式(12)で計算される。
【0202】
【数12】
【0203】
風の分布データを画像に変換してモニターに表示すれば、例えば、空港の滑走路付近のダウンバーストや横風などが直感的に分かり易くなる。
【0204】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0205】
1 気象変動情報提供システム、2 気圧計測装置、4 データ処理装置、5 滑走路、6 航空機、7 管制塔、8 ヘリコプター、10 気圧センサー、12 送信部、20 受信部、30 処理部(CPU)、32 気圧データ取得部、34 気象変動情報生成部、36 ダウンバースト解析部、38 送信制御部、40 操作部、50 記憶部、52 判定テーブル、60 記録媒体、70 表示部、80 送信部、100 圧力センサー素子、110 発振回路、120 カウンター、130 TCXO、140 MPU、150 温度センサー、160 EEPROM、170 通信インターフェース(I/F)、210 ダイヤフラム、212 突起、214 受圧面、220 振動片、222 振動ビーム(梁)、224 基部、226 支持梁、228 枠部、230 ベース、232 キャビティー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行物体が離着陸する施設において気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動に関する情報を提供する気象変動情報提供システムであって、
飛行物体の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に分散して配置される複数の気圧計測装置と、
前記複数の気圧計測装置の各々が計測した気圧データを処理するデータ処理装置と、を含み、
前記データ処理装置は、
前記複数の気圧計測装置の各々から前記気圧データを取得する気圧データ取得部と、
前記気圧データ取得部が取得した気圧データに基づいて、前記気象変動に関する情報をリアルタイムに生成する気象変動情報生成部と、を含み、
前記気象変動情報生成部は、
前記気象変動に関する情報の少なくとも一部として、前記離着陸領域における気圧分布を表す時系列の画像情報を生成する、気象変動情報提供システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記気象変動情報生成部は、
前記気圧分布を表す時系列の画像情報として、前記離着陸領域における気圧分布を気圧に応じて色分けして表す時系列の画像情報を生成する、気象変動情報提供システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記気象変動情報生成部は、
前記気圧データに基づいて、前記離着陸領域における複数の位置の気圧傾度を計算し、前記気象変動に関する情報の少なくとも一部として、前記離着陸領域における気圧傾度の変化の情報を生成する、気象変動情報提供システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記データ処理装置は、
前記気象変動に関する情報に基づいて前記離着陸領域におけるダウンバーストの発生の検出及び予測の少なくとも一方を行い、ダウンバーストの発生を検出又は予測した場合には警報情報を生成するダウンバースト解析部をさらに含む、気象変動情報提供システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記データ処理装置は、
前記気象変動に関する情報又は前記警報情報を送信する制御を行う送信制御部をさらに含む、気象変動情報提供システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記複数の気圧計測装置は、前記離着陸の目標位置からの距離に応じて密度が異なるように配置されている、気象変動情報提供システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記複数の気圧計測装置の少なくとも一部は、互いに高度が異なる位置に配置されている、気象変動情報提供システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記複数の気圧計測装置の各々は、
気圧に応じて共振周波数を変化させる感圧素子を有し、当該感圧素子の振動周波数に応じた気圧データを出力する気圧センサーを含む、気象変動情報提供システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記感圧素子は、双音叉圧電振動子である、気象変動情報提供システム。
【請求項10】
飛行物体が離着陸する施設において気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動に関する情報を提供する気象変動情報提供方法であって、
飛行物体の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に分散して配置される複数の気圧計測装置の各々から気圧データを取得する気圧データ取得ステップと、
前記気圧データ取得ステップで取得した気圧データに基づいて、前記気象変動に関する情報をリアルタイムに生成する気象変動情報生成ステップと、を含み、
前記気象変動情報生成ステップにおいて、
前記気象変動に関する情報の少なくとも一部として、前記離着陸領域における気圧分布を表す時系列の画像情報を生成する、気象変動情報提供方法。
【請求項11】
飛行物体が離着陸する施設において気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動に関する気象変動情報を提供する気象変動情報提供プログラムであって、
飛行物体の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に分散して配置される複数の気圧計測装置の各々から気圧データを取得する気圧データ取得部と、
前記気圧データ部が取得した気圧データに基づいて、前記気象変動に関する情報をリアルタイムに生成する気象変動情報生成部としてコンピューターを機能させ、
前記気象変動情報生成部は、
前記気象変動に関する情報の少なくとも一部として、前記離着陸領域における気圧分布を表す時系列の画像情報を生成する、気象変動情報提供プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の気象変動情報提供プログラムを記録した、コンピューター読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
飛行物体が離着陸する施設において気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動に関する情報を提供する気象変動情報提供システムであって、
飛行物体の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に分散して配置される複数の気圧計測装置と、
前記複数の気圧計測装置の各々が計測した気圧データを処理するデータ処理装置と、を含み、
前記データ処理装置は、
前記複数の気圧計測装置の各々から前記気圧データを取得する気圧データ取得部と、
前記気圧データ取得部が取得した気圧データに基づいて、前記気象変動に関する情報をリアルタイムに生成する気象変動情報生成部と、を含み、
前記気象変動情報生成部は、
前記気象変動に関する情報の少なくとも一部として、前記離着陸領域における気圧分布を表す時系列の画像情報を生成する、気象変動情報提供システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記気象変動情報生成部は、
前記気圧分布を表す時系列の画像情報として、前記離着陸領域における気圧分布を気圧に応じて色分けして表す時系列の画像情報を生成する、気象変動情報提供システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記気象変動情報生成部は、
前記気圧データに基づいて、前記離着陸領域における複数の位置の気圧傾度を計算し、前記気象変動に関する情報の少なくとも一部として、前記離着陸領域における気圧傾度の変化の情報を生成する、気象変動情報提供システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記データ処理装置は、
前記気象変動に関する情報に基づいて前記離着陸領域におけるダウンバーストの発生の検出及び予測の少なくとも一方を行い、ダウンバーストの発生を検出又は予測した場合には警報情報を生成するダウンバースト解析部をさらに含む、気象変動情報提供システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記データ処理装置は、
前記気象変動に関する情報又は前記警報情報を送信する制御を行う送信制御部をさらに含む、気象変動情報提供システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記複数の気圧計測装置は、前記離着陸の目標位置からの距離に応じて密度が異なるように配置されている、気象変動情報提供システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記複数の気圧計測装置の少なくとも一部は、互いに高度が異なる位置に配置されている、気象変動情報提供システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記複数の気圧計測装置の各々は、
気圧に応じて共振周波数を変化させる感圧素子を有し、当該感圧素子の振動周波数に応じた気圧データを出力する気圧センサーを含む、気象変動情報提供システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記感圧素子は、双音叉圧電振動子である、気象変動情報提供システム。
【請求項10】
飛行物体が離着陸する施設において気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動に関する情報を提供する気象変動情報提供方法であって、
飛行物体の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に分散して配置される複数の気圧計測装置の各々から気圧データを取得する気圧データ取得ステップと、
前記気圧データ取得ステップで取得した気圧データに基づいて、前記気象変動に関する情報をリアルタイムに生成する気象変動情報生成ステップと、を含み、
前記気象変動情報生成ステップにおいて、
前記気象変動に関する情報の少なくとも一部として、前記離着陸領域における気圧分布を表す時系列の画像情報を生成する、気象変動情報提供方法。
【請求項11】
飛行物体が離着陸する施設において気圧の変化に起因して発生する局所的な気象変動に関する気象変動情報を提供する気象変動情報提供プログラムであって、
飛行物体の離着陸の目標位置を含む離着陸領域に分散して配置される複数の気圧計測装置の各々から気圧データを取得する気圧データ取得部と、
前記気圧データ部が取得した気圧データに基づいて、前記気象変動に関する情報をリアルタイムに生成する気象変動情報生成部としてコンピューターを機能させ、
前記気象変動情報生成部は、
前記気象変動に関する情報の少なくとも一部として、前記離着陸領域における気圧分布を表す時系列の画像情報を生成する、気象変動情報提供プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の気象変動情報提供プログラムを記録した、コンピューター読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図14】
【図16】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図14】
【図16】
【図18】
【公開番号】特開2013−54005(P2013−54005A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194185(P2011−194185)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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