説明

水なし平版印刷版の製造装置および製造方法

【課題】版面傷の発生を抑制する水なし平版印刷版の現像装置を提供する。
【解決手段】シリコーンゴム層を有する水なし平版印刷版原版1を現像して水なし平版印刷版を製造する装置であって、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版の搬送手段と、ブラシロール5により画線部のシリコーンゴム層を除去する現像手段とを備え、かつ、前記ブラシロールの毛先に接する位置に、前記ブラシロールの毛先をほぐす毛先分散手段12を備えている水なし平版印刷版製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水なし平版印刷版の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴム層を有する水なし平版印刷版原版を搬送しながら現像する自動現像装置は、これまでに様々なものが提案されている。例えば、水なし平版印刷版原版をロールで搬送しながら、水なし平版印刷版原版の搬送方向と同一方向に回転するブラシロールと、搬送方向とは反対方向に回転するブラシロールとを少なくとも1本ずつ設け、さらにブラシロールの少なくとも1本以上をロール軸方向に往復運動させて画線部におけるシリコーンゴム層を湿式で物理的に除去する現像装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
水なし平版印刷版原版の現像にブラシロールを用いるのは、表面のシリコーンゴム層が一般に現像液に対して不溶であるため、機械的な力で擦り取る必要があるためであり、加えて現像性能を満たすための実用上最も効率的な手段であることによる。
【0004】
しかしながら、ブラシロールは、手作業や機械加工で製作されても、厳密には、加工状態、毛先状態がブラシロールごとに異なることがほとんどであり、この違いは見た目でわからないことが多い。そして、ブラシロールの材質、毛の太さ、毛の長さ、植毛密度、植毛方向、先端形状などによっては、シリコーンゴム層に傷がつきやすい場合があり、印刷版面に微細な傷(版面傷)が生じる場合があった。
【0005】
これまでに、ブラシロール起因の版面傷を減少させる方法として、ブリッスル径平均が200μm以下であり、各ブリッスルの先端断面の角度が10〜70度であるブラシロールを回転させて現像する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−240916号公報
【特許文献2】特開2008−249758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、水なし平版印刷版原版表面のシリコーンゴム層は柔らかいため、ブラシロールの植毛密度によっては、ブラシロールの毛先が束状になり、シリコーンゴム層を傷つける場合があった。また、現像装置を使用しない夜間や休暇中にブラシロールが乾燥して硬くなったり、束状になったりして、シリコーンゴム層を傷つける場合があった。さらに、現像開始初期や、使用している段階で突然に、発生することもあった。
【0008】
印刷版面(シリコーンゴム層)にブラシロール起因の傷が存在すると、印刷時に用いられるインクの種類や粘度、溶剤の種類によっては、傷にインクが入り込み、さらに印刷紙に転写され、印刷物の微細なスジや汚れなど、印刷不良につながる。そこで、印刷版面にブラシロール起因の傷が発生した場合には、印刷版面の傷の位置に対応する部分のブラシロールを、手や定規などを用いて擦ったりほぐしたり、改善されない場合にはブラシロールを交換する必要があり、作業性や生産停機時間に課題があった。
【0009】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、版面傷の発生を抑制する水なし平版印刷版の製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記のいずかに記載の構成を特徴とするものである。
(1) シリコーンゴム層を有する水なし平版印刷版原版を現像して水なし平版印刷版を製造する装置であって、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版の搬送手段と、ブラシロールにより画線部のシリコーンゴム層を除去する現像手段とを備え、かつ、前記ブラシロールの毛先に接する位置に、前記ブラシロールの毛先をほぐす毛先分散手段を備えていることを特徴とする水なし平版印刷版製造装置。
(2) 前記ブラシロールの毛先がポリブチレンテレフタレートからなることを特徴とする、前記(1)に記載の水なし平版印刷版製造装置。
(3) 前記ブラシロールを該ブラシロールの軸方向に揺動する揺動手段を備えていることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の水なし平版印刷版製造装置。
(4) 前記毛先分散手段の位置および/またはブラシロールとの接触角度を調整する調整手段を備えていることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の水なし平版印刷版製造装置。
(5) シリコーンゴム層を有する水なし平版印刷版原版の前記シリコーンゴム層を、ブラシロールで擦って現像処理し、水なし平版印刷版を得るにあたり、前記ブラシロールの毛先を連続的にほぐしながら現像処理することを特徴とする水なし平版印刷版の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、版面傷を低減した水なし平版印刷版を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示す水なし平版印刷版製造装置の模式図である。
【図2】断面が矩形の棒材により構成された毛先分散手段12の一例を示す模式図である。
【図3】板材により構成された毛先分散手段12の一例を示す模式図である
【図4】ブラケットを介在して基台に取り付けられる毛先分散手段12の一例を示す模式図である。
【図5】2つの板材が重ね合わせられて構成され、その重ね合わせ量の調整機構を有する毛先分散手段12の一例を示す模式図である。
【図6】2つの板材が重ね合わせられて構成され、さらに、それらを結合するボルトの締め付け量でブラシロールに接触する位置を微調整できる毛先分散手段12の一例を示す模式図である。
【図7】実施例における毛先分散手段12の具体的形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、シリコーンゴム層を有する水なし平版印刷版原版を自動で現像する工程に好適に用いられるものであり、シリコーンゴム層を有する水なし平版印刷版原版の前記シリコーンゴム層をブラシロールで擦って現像処理するに際し、前記ブラシロールの毛先を連続的にほぐしながら現像処理することを特徴とするものである。
【0014】
本発明において、シリコーンゴム層を有する水なし平版印刷版原版としては、基板上に少なくとも、露光により隣接する層との接着力が変化する層と、シリコーンゴムを主成分とする層とを有するものが好ましい。より具体的には、特開2005−309126号公報、特開2000−47377号公報に記載された水なし平版印刷版原版を挙げることができる。
【0015】
次に、シリコーンゴム層を有する水なし平版印刷版原版の製版方法を説明する。露光部が画線部となるネガ型または露光部が非画線部となるポジ型の平版印刷版の場合、通常保護フィルム上に原図フィルムを配して活性光線により画像露光を行い、その後保護フィルムを除去し、現像することによって画像を形成することができる。また、直描型平版印刷版の場合、保護フィルムを有する印刷版原版についてはそのままもしくは保護フィルムを剥離してから、レーザー光で画像を露光する。その後、保護フィルムを有するものは剥離した後、無いものはそのまま、現像することによって画像を形成することができる。
【0016】
本発明において、水なし平版印刷版の製造装置としては、例えば上述したように製造される水なし平版印刷版原版を現像できるものであれば限定されるものではないが、現像部のみの装置、現像部が複数に分けられた装置、前処理部と現像部とがこの順に設けられた装置、前処理部と現像部と後処理部とがこの順に設けられた装置、前処理部と現像部と後処理部と水洗部とがこの順に設けられた装置等を使用できる。このような自動現像装置の具体例としては、TWL−650シリーズ、TWL−860シリーズ、TWL−1160シリーズ(東レ(株)製)、TWL−860CF、TWL−1160CF((株)東洋商社製)、特開平5−2272号公報、特開平5−6000号公報などに開示されている自動現像装置を挙げることができる。
【0017】
以下、本発明に好適に使用できる自動現像装置の実施の形態について、図1を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、前処理工程部、現像工程部、後処理工程部、水洗工程部がこの順序で設けられた水なし平版印刷版製造装置であり、各工程部には、水なし平版印刷版原版もしくは水なし平版印刷版の搬送ロール2が複数組水平に設けられている。なお、本発明においては、基本的には現像前の版を「水なし平版印刷版原版」、現像後の版を「水なし平版印刷版」と称するが、図面上はいずれも符号1で表すこととする。
【0019】
水なし平版印刷版原版1は、挿入台11より前処理工程部に挿入され、搬送ロール2により所定の速度で下流側の工程に搬送される。
【0020】
このとき、前処理工程部では、シリコーンゴム層の露光された部分を剥離しやすくするための処理液が、所定の温度でシャワーパイプ4より水なし平版印刷版原版1の版面上に供給される。該処理液としては、例えば特開2005−338580号公報に記載されるような処理液を用いることができる。
【0021】
その後、現像工程部において、シャワーパイプ4より所定の温度の水が水なし平版印刷版原版1の版面上に供給されるとともに、ブラシロール5で版面上のシリコーンゴム層が除去され、水なし平版印刷版1が得られる。
【0022】
そして、後処理工程部において、染色液がシャワーパイプ4より供給され、ブラシロール6でシリコーンゴム層が除去された画像部が染色されるとともに、モルトンロール3でシリコーンゴム層上等に残る染色液が除去される。なお、当該染色液としては、例えば特開2005−338580号公報に記載されるような染色液を用いることができる。
【0023】
その後、水洗工程部において、シャワーパイプ4より所定の温度の水が水なし平版印刷版1に供給され、ブラシロール7で版面上のシリコーンゴムのカスが除去されつつ、さらに染色液が洗い流され、ファン10で版表面の水気が除去れる。このようにして水なし平版印刷版が作製される。
【0024】
現像工程部に用いるブラシロール5としては、金属あるいはプラスチックなどの溝型材に直径100〜500μmのブラシ単糸を列状に植え込んだものを芯に取り付けたものを用いることが好ましい。また、上記ブラシ単糸を金属あるいはプラスチックなどの芯に放射線状に植え込んだものでもよく、上記ブラシ単糸をプラスチックシートあるいは布などの基材に植え込んだものを、金属あるいはプラスチックなどを芯として巻いたものでもよい。また、ブラシ単糸の素材としては、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリプロピレンなどが挙げられる。
【0025】
ブラシロール5の回転数は、10〜1000rpm、さらに好ましくは200〜600rpmであることが好ましい。ブラシロール5の回転方向としては、水なし平版印刷版原版1の搬送方向と同方向でも逆方向でも良いが、同方向がより好ましい。また、同方向のブラシロールの後に逆方向のブラシロールを併設する場合、上流側のブラシロールで除去仕切れなかったシリコーンゴムを下流側のブラシロールで除去しやすくなるので、これも好ましい。ブラシロール5の本数は正・逆両方法に回転するブラシを合計で2本以上備えることが好ましい。
【0026】
なお、ブラシロール5と水なし平版印刷版原版1を挟んで対向する位置(下側)には、水なし平版印刷板原版1を支えるためにブラシ受けロール8が設置されることが好ましい。
【0027】
また、図示しない駆動源により駆動されるカム機構、リンク機構などを利用して構成したブラシロール5の揺動機構を設け、該ロールを回転させると共にロール軸方向へ往復運動させると、シリコーンゴム層除去効果が向上するため好ましい。水なし平版印刷版原版の搬送方向と逆方向に回転するブラシロールを設ける場合も、同様に揺動機構を設け、ロールを回転させると共に軸方向へ往復運動させることが好ましい。
【0028】
本発明においては、さらに、現像部のブラシロール5の毛先が接する位置に、該ブラシロールの毛先をほぐす毛先分散手段12を設ける。毛先分散手段12は、1本のロールブラシ5に対して1つもしくは複数設置するが、装置の簡素化およびブラシロールの回転負荷低減という観点から1つとすることが好ましい。
【0029】
そして、それぞれの毛先分散手段12については、例えば図2〜6に示すように、断面が矩形、多角形、円形などの棒材、板材などを単体、もしくは複数組み合わせて構成する。厚みが薄い板材を用いる場合などは、毛先分散手段12としての強度を確保するため、図5、6に示すように折り曲げ加工などを施して、ブラシロールの幅方向に直交する方向の長さを短くするなどして、板材としての剛性を高めることも好ましい。
【0030】
現像部の現像液が水または水系の場合、毛先分散手段12の材質は、錆を発生しにくい材質が好ましい。使用する場所、あるいは使用する環境、液によっては耐薬品性、耐環境性のある材質が好ましい。これらの特性を有する材料としては、例えばステンレス、合成樹脂、複合材料などが挙げられる。
【0031】
毛先分散手段12の、ブラシロール5と接触する部分には、ブラシの毛先を均等にほぐしたり、毛先分散手段のブラシ接触部の表面が荒れたりブラシの先端部に傷がついたりすることを防止するため、適当な機械加工や表面処理加工を施してもよい。
【0032】
例えば、ブラシロール5が回転するごとに毛先が毛先分散手段12に均一に接触するように、毛先分散手段のブラシが接触する部分に、フライス加工や平面研削加工などを施して、真直度や平面度を確保することが好ましい。あるいは、状況に応じて、該表面を粗くしたり逆に研磨するなどしてもよい。また、強度を確保しつつブラシの傷つきを防いだり軽量化を図ったりするため、毛先分散手段の基材としてはステンレスを用い、該ステンレスのブラシが接触する部分のみにアルミニウムを取り付けるなど、複数の部材から構成してもよい。
【0033】
さらに、板材を用いて毛先分散手段を構成する場合、図3に示すように、ブラシロール5に接触する部分近傍に曲げ加工を施し装置としての省スペース化を図ってもよい。あるいはブラシロール5と接触する先端部が細くなるように、断面台形状の板材を用いてもよい。
【0034】
さらに、毛先分散手段12に孔を設け、該手段自体の重量の軽減を図ったり、現像液の流れをスムーズにしたり、現像して除去されたシリコーンゴムのカスなどが毛先分散手段に堆積しないようにすることも好ましい。同様の目的で整流板などを設けることも好ましい。
【0035】
毛先分散手段12は、ブラシロール5の毛先に接することができれば、どの位置に取り付け、固定してもよい。取り付け、取り外し作業の容易性から、ブラシロールよりも鉛直方向上部に設けることが好ましい。
【0036】
このような毛先分散手段12は、基台に直接取り付けてもよいし、図4に示すように、ブラケット13などを介在させて基台に取り付けてもよい。ブラケット13を介在させて基台に取り付ける場合は、毛先分散手段12とロールブラシ5の毛先との接触具合を微調整できるように、ブラケットの基台側固定部分や毛先分散手段側固定部分などに、位置調整機構や角度調整機構を設けることが好ましい。
【0037】
また、毛先分散手段12が複数の部材からなる場合には、例えば、図6に示すように、2つの部材12a、12bを重ね合わせて結合するネジやボルト50などを締め付けたり緩めたりすることで、ロールブラシ5に接触する毛先分散手段12の位置を、ネジやボルト50の軸方向に微調整できるように構成することも好ましい。
【0038】
あるいは、図5に示すように、前記2つの部材(12aと12bならびに12aと12c)が重ね合わせられる部分にスライド機構51を設けて2つの部材の重ね合わせ量を調整可能にし、ロールブラシ5に接触する毛先分散手段12の位置を該部材の面方向(前記ネジやボルトの軸方向に交差する方向)に微調整できるようにしてもよい。
【0039】
毛先分散手段12は、ブラシロール5の回転時に動力源に対する負荷が高くなりすぎないようにするため、ブラシと接触する面が例えば図3〜6に示されるようにブラシロール5の回転方向に向かうように設けることが好ましい。
【0040】
なお、上記態様においては、現像工程部に用いるブラシロール5の毛先をほぐす毛先分散手段について説明したが、後処理工程部や水洗工程部に設けるブラシロールについても同様の毛先分散手段を設けることが好ましい。
【0041】
本発明によれば、以上のような毛先分散手段を備えた装置で、シリコーンゴム層を有する水なし平版印刷版原版のシリコーンゴム層をブラシロールで擦って現像処理することで、ブラシロールの毛先を連続的にほぐしながら現像処理することが可能となる。すなわち、ブラシロールが元々持っている植毛状態、植毛方向、植毛密度により絡み合ったり束状になっている状態、また現像中や回転中に毛先同士、あるいは、異物やゴミ、シリコーンゴムのカスにより絡み合ったり束状になっている状態を、ブラシロールが連続的に回転しながら毛先分散手段と接触することで、毛先を連続的にほぐして分散することができ、シリコーンゴム層に傷をつけにくくすることができ、さらには版面傷を低減した水なし平版印刷版を得ることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。
【0043】
(実施例1)
TAC−VG5(東レ(株)製、直描型水なし平版印刷版原版)を露光した後、版から保護フィルムを剥離し、水なし平版印刷版用自動現像装置TWL−1160F(東レ(株)製)に後述の毛先分散手段を取り付けて図1のようにした自動現像装置に連続的に通版し、現像処理を行った。
【0044】
なお、現像装置において、前処理工程部ではCP−Y(東レ(株)製、水なし平版印刷版用前処理液)を、現像工程部では水を、後処理工程部ではPA−F(東レ(株)製、水なし平版用現像後処理液)を、水洗工程部では水を用いた。
【0045】
ブラシロールには、材質がポリブチレンテレフタレート、毛の直径150μmのものを用いた。
【0046】
また、毛先分散手段は、厚さ3mmのステンレス製の平板(SUS304)を用い、図7に示すように、該平板の一方の端部(ブラシロールに接触する部分となる位置)を60度に折り曲げ、その反対側の端部を補強のために同方向に90度折り曲げて構成した。
【0047】
そして、該毛先分散手段を、位置調整機構を有するブラケットを介して、現像工程部の槽内の基台に取り付け、該毛先分散手段を構成する平板の中央部が水平になり、60°に折り曲げた部分の先端がブラシロールの毛先に当たるように調整した。
【0048】
現像後の版を“東レ水なし平版”用プレートクリーナーを充分含ませた綿パットで軽く拭き、傷の状態を目視で観察することにより、版面傷を評価した。なお、通版数が初期、1万版通版時で評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0049】
(実施例2)
TAC−VG5(東レ(株)製、直描型水なし平版印刷版原版)よりシリコーン層が柔らかく、版面傷がより発現しやすいTAC−VH5(東レ(株)製、直描型水なし平版印刷版原版)を用いた以外は実施例1と同様に、連続的に現像処理を行った。版面傷の評価結果を表1に示す。
【0050】
(実施例3)
毛先分散手段として、断面形状が矩形である16mm×16mmの角棒を用い、該角棒の軸心が水平になるようにしつつ、さらに該角棒の角がブラシロールの毛先に当たるように接触させた以外は実施例1と同様に、連続的に現像処理を行った。版面傷の評価結果を表1に示す。
【0051】
(実施例4)
TAC−VG5(東レ(株)製、直描型水なし平版印刷版原版)よりシリコーン層が柔らかく、版面傷がより発現しやすいTAC−VH5(東レ(株)製、直描型水なし平版印刷版原版)を用いた以外は実施例3と同様に、連続的に現像処理を行った。版面傷の評価結果を表1に示す。
【0052】
(実施例5)
毛先分散手段として、断面形状が矩形である8mm×25mmの角棒を用い、該角棒を、軸心がブラシロールの軸心に対して平行になるようしつつ、さらに該角棒の幅25mmの辺が2本の水平線を含む平面に対して60°傾斜するように、ブラケットを介して基台に取り付け、該幅25mmの辺がブラシロールの毛先に当たるように調整した以外は実施例1と同様に、連続的に現像処理を行った。版面傷の評価結果を表1に示す。
【0053】
(実施例6)
TAC−VG5(東レ(株)製、直描型水なし平版印刷版原版)よりシリコーン層が柔らかく、版面傷がより発現しやすいTAC−VH5(東レ(株)製、直描型水なし平版印刷版原版)を用いた以外は実施例5と同様に、連続的に現像処理を行った。版面傷の評価結果を表1に示す。
【0054】
(実施例7)
TAC−VG5(東レ(株)製、直描型水なし平版印刷版原版)を露光した後、版から保護フィルムを剥離し、水なし平版印刷版用自動現像装置TWL−650F(東レ(株)製、前記TWL−1160F(東レ(株)製)よりも小型の装置)に後述の毛先分散手段を取り付けて図1のようにした自動現像装置に連続的に通版し、現像処理を行った。
【0055】
なお、現像装置において、前処理工程部ではCP−Y(東レ(株)製、水なし平版印刷版用前処理液)を、現像工程部では水を、後処理工程部ではPA−F(東レ(株)製、水なし平版用現像後処理液)を、水洗工程部では水を用いた。
【0056】
ブラシロールには、材質がポリブチレンテレフタレート、毛の直径150μmのブラシロールを用いた。
【0057】
また、毛先分散手段は、厚さ3mmのステンレス製の平板(SUS304)を用い、図7に示すように、該平板の一方の端部(ブラシロールに接触する部分となる位置)を60度に折り曲げ、その反対側の端部を補強のために同方向に90度折り曲げて構成した。
【0058】
そして、該毛先分散手段を、位置調整機構を有するブラケットを介して、現像工程部の槽内の基台に取り付け、該毛先分散手段を構成する平板の中央部が水平になり、60°に折り曲げた部分の先端がブラシロールの毛先に当たるように調整した。
【0059】
現像後の版の版面傷を、実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0060】
(実施例8)
TAC−VG5(東レ(株)製、直描型水なし平版印刷版原版)よりシリコーン層が柔らかく、版面傷がより発現しやすいTAC−VH5(東レ(株)製、直描型水なし平版印刷版原版)を用いた以外は実施例7と同様に、連続的に現像処理を行った。版面傷の評価結果を表1に示す。
【0061】
(比較例1)
自動現像装置として、毛先分散手段を取り付けることなく、水なし平版印刷版用自動現像装置TWL−1160F(東レ(株)製)をそのまま使用した以外は実施例1と同様にして、連続的に現像処理を行った。版面傷の評価結果を表1に示す。
【0062】
(比較例2)
TAC−VG5(東レ(株)製、直描型水なし平版印刷版原版)よりシリコーン層が柔らかく、版面傷がより発現しやすいTAC−VH5(東レ(株)製、直描型水なし平版印刷版原版)を用いた以外は比較例1と同様に、連続的に現像処理を行った。版面傷の評価結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【符号の説明】
【0064】
1:水なし平版印刷版原版、水なし平版印刷版
2:搬送ロール
3:モルトンロール
4:シャワーパイプ
5:ブラシロール(現像工程部)
6:ブラシロール(後処理工程部)
7:ブラシロール(水洗工程部)
8:ブラシ受けロール
9:ライダーロール
10:ファン
11:挿入台
12:毛先分散手段
13:ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴム層を有する水なし平版印刷版原版を現像して水なし平版印刷版を製造する装置であって、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版の搬送手段と、ブラシロールにより画線部のシリコーンゴム層を除去する現像手段とを備え、かつ、前記ブラシロールの毛先に接する位置に、前記ブラシロールの毛先をほぐす毛先分散手段を備えていることを特徴とする水なし平版印刷版製造装置。
【請求項2】
前記ブラシロールの毛先がポリブチレンテレフタレートからなることを特徴とする請求項1に記載の水なし平版印刷版製造装置。
【請求項3】
前記ブラシロールを該ブラシロールの軸方向に揺動する揺動手段を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の水なし平版印刷版製造装置。
【請求項4】
前記毛先分散手段の位置および/またはブラシロールとの接触角度を調整する調整手段を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の水なし平版印刷版製造装置。
【請求項5】
シリコーンゴム層を有する水なし平版印刷版原版の前記シリコーンゴム層を、ブラシロールで擦って現像処理し、水なし平版印刷版を得るにあたり、前記ブラシロールの毛先を連続的にほぐしながら現像処理することを特徴とする水なし平版印刷版の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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