水中加温処理用フロート
【課題】保持対象となる容器形状に制限がなく、汎用性の向上を図ることができる水中加温処理用フロートを提供すること。
【解決手段】水中加温処理用フロート1は、水面に浮上可能なフロート本体2と、該フロート本体2の厚さ方向に貫通して形成され液体収容容器6の外周部を挟持可能な孔部3と、前記フロート本体2の外周面2Aから前記孔部3の内周面3Aに向けて形成され前記液体収容容器6が通過可能に変形可能なスリット部4とを備える。
【解決手段】水中加温処理用フロート1は、水面に浮上可能なフロート本体2と、該フロート本体2の厚さ方向に貫通して形成され液体収容容器6の外周部を挟持可能な孔部3と、前記フロート本体2の外周面2Aから前記孔部3の内周面3Aに向けて形成され前記液体収容容器6が通過可能に変形可能なスリット部4とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清等の液体を収容した液体収容容器の少なくとも一部を水中に浸漬させて加温処理する場合に用いられる水中加温処理用フロートに関する。
【背景技術】
【0002】
水中加温処理の一例として、血清調製工程におけるいわゆる非働化処理が挙げられる。この非働化処理とは、血清を収容した容器を加温された水中に浸漬し一定時間保持(例えば、56℃×30分)させて血清中の補体を失活させる処理である。この非働化処理等の水中加温処理を確実かつ安定して行うために、従来、水面にフロートを浮かべ、このフロートに血清等の液体を収容した容器を保持させる手段が採用されている。
上記のように用いられる水中加温処理用フロートとしては、フロート本体に該フロート本体の厚さ方向に貫通する円形又は略円形孔部を閉ループ状に形成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−157243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水中加温処理用フロートに容器を保持させる場合、保持対象となる容器が一端部側から他端部側に向けて漸次径の大きくなるような外周面を有する容器であれば、該容器を一端部側よりフロート本体の上方から孔部内に差し込むことによって、容器の他端部寄りの外周面部を孔部の内周面で挟持させて該容器をフロート本体に保持させることが可能である。
【0005】
しかしながら、孔部で挟持される外周面部よりも径の大きい部分が一端部側に存在するような形状の容器を保持対象とする場合には、該容器をフロート本体の上方から差し込んで保持させることができない。従って、従来の水中加温処理用フロートは、保持対象となる容器が上述したような特定形状のものに限定され、汎用性に欠けるものであった。
【0006】
本発明は、保持対象となる容器形状に制限がなく、汎用性の向上を図ることができる水中加温処理用フロートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水面に浮上可能なフロート本体と、該フロート本体の厚さ方向に貫通して形成され液体収容容器の外周部を挟持可能な孔部と、前記フロート本体の外周面から前記孔部の内周面に向けて形成され前記液体収容容器が通過可能に変形可能なスリット部と、を備える水中加温処理用フロートを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
また、前記スリット部の幅は、前記フロート本体の外周面側から前記孔部の内周面側に向かって漸次狭くなっていることが好ましい。
【0009】
また、前記孔部及び前記スリット部は、前記フロート本体に複数形成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記フロート本体は、複数の円弧状の外周面部が周方向に連続して配列されて形成され、前記孔部及び前記スリット部は、周方向に隣接する前記外周面部の端部同士が接して形成される複数の入込部と前記フロート本体の中心部とを結ぶ位置にそれぞれ形成されていることが好ましい。
【0011】
また、前記孔部は、前記入込部に接するように形成され、前記スリット部は、前記フロート本体に外力が加えられていない状態において閉じていることが好ましい。
【0012】
また、前記外周面部は、隣り合う2つの前記入込部の中央に位置する頂部と前記フロート本体の中心部とを結ぶ線分が長径となる略楕円形状に形成されることが好ましい。
【0013】
また、前記フロート本体は、中心部を含む中央フロート部と該中央フロート部の外周に配置される外周フロート部とを備え、前記外周フロート部は、複数の前記孔部及び複数の前記スリット部を有し、前記中央フロート部は、前記中心部に形成された1つの前記孔部及び前記スリット部を有すると共に、前記外周フロート部に対して着脱可能に構成されていることが好ましい。
【0014】
本発明は、直線状の分割面で分割された一対の分割フロート部により構成され水面に浮上可能なフロート本体と、前記フロート本体における前記一対の分割フロート部の前記分割面が互いに当接した状態で該一対の分割フロート部同士を結合及び分離可能とする分割フロート部結合分離部と、前記一対の分割フロート部それぞれの前記分割面に前記フロート本体の厚さ方向に貫通して形成され、前記一対の分割フロート部同士を結合した場合に、液体収容容器の外周部を挟持可能な複数の孔部を形成する複数の孔部構成部と、を備える水中加温処理用フロートを提供することによっても、上記目的を達成したものである。
【0015】
また、前記フロート本体は、前記孔部の周囲に形成され該フロート本体の厚さ方向に立ち上がる立上がり部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、保持対象となる容器形状に制限がなく、汎用性の向上を図ることができる水中加温処理用フロートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の水中加温処理用フロートの第1実施形態を示す平面図である。
【図2】第1実施形態の水中加温処理用フロートを用いて保持される液体収容容器の一例を示す側面図である。
【図3】第1実施形態の水中加温処理用フロートに液体収容容器を保持させた状態を示す平面図である。
【図4】図3のX−X線断面図である。
【図5】本発明の水中加温処理用フロートの第2実施形態を示す平面図である。
【図6】本発明の水中加温処理用フロートの第3実施形態を示す平面図である。
【図7】本発明の水中加温処理用フロートの第3実施形態の第1変形例を示す平面図である。
【図8】本発明の水中加温処理用フロートの第3実施形態の第2変形例を示す平面図である。
【図9】本発明の水中加温処理用フロートの第4実施形態を示す平面図である。
【図10】本発明の水中加温処理用フロートの第4実施形態の変形例を示す平面図である。
【図11】本発明の水中加温処理用フロートの第5実施形態を示す平面図である。
【図12】本発明の水中加温処理用フロートの第6実施形態を示す平面図である。
【図13】本発明の水中加温処理用フロートの変形例を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の水中加温処理用フロート1の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
先ず、本発明の第1実施形態について、図1〜図4を参照しながら説明する。
第1実施形態の水中加温処理用フロート1は、図1に示すように、水面に浮上可能なフロート本体2と、このフロート本体2の厚さ方向に貫通して形成される複数の孔部としての複数の第1孔部3と、フロート本体2の外周面2Aから複数の第1孔部3の内周面3Aに向けて形成された複数のスリット部4と、フロート本体2の厚さ方向に貫通して形成されスリット部4が設けられていない複数の第2孔部5と、を備えている。
【0019】
フロート本体2は、図1に示すように、平面視において略正方形の平板状であり、水よりも比重が軽く、かつ可撓性を有する材料により構成されている。フロート本体2を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ウレタン系スポンジ、合成ゴム、各種エラストマー等の発泡樹脂材料が挙げられる。
【0020】
複数の第1孔部3は、図1に示すように、正方形状のフロート本体2の各辺長さの中央位置でフロート本体2の各外周面2Aより少し中心部寄り位置のそれぞれに計4つ形成されている。これら4つの第1孔部3は、平面視において略円形に形成されている。第1孔部3は、後述する液体収容容器としての血液成分収容容器(図2参照)6の外周部を挟持する。
複数の第2孔部5は、フロート本体2の2つの対角線上の4隅部及びフロート本体2の中心部に計5つ形成されている。これら5つの第2孔部5は、第1孔部3よりも径の大きい略円形の閉ループ状に形成されている。第2孔部5は、一端部側から他端部側に向けて漸次径の大きくなるような外周面を有する試験管やマイクロチューブ等を挟持する。
【0021】
スリット部4は、複数の第1孔部3のそれぞれに計4つ形成されている。これら複数のスリット部4は、図1に示すように、フロート本体2の外周面2A側が最も幅広く、第1孔部3の内周面3Aに向けて漸次幅狭となる略V字形状に形成されている。
【0022】
血液成分収容容器6は、図2に示すように、縦長状で一端側が開口した収容容器本体15と、この収容容器本体15の開口に嵌合されるキャップ7と、収容容器本体15の他端側に設けられる成分採取口12と、を備える。
収容容器本体15には、血清等の液性の血液成分が収容される。キャップ7には、このキャップ7の上面から下面に貫通する貫通孔により形成される血液成分導入路8及び血液成分収容容器6内に空気を出入りさせる通気路9が設けられている。
【0023】
血液成分導入路8には、連結チューブ10の一端側が接続されており、この連結チューブ10を介して血清等の血液成分が血液成分収容容器6内に導入される。通気路9には、通気チューブ11の一端側が接続されており、この通気チューブ11の他端側には、気体は通過させるが液体や細菌等は通過させない性質を有するフィルタ(図示せず)が接続されている。これら連結チューブ10及び通気チューブ11は、血液成分収容容器6内に所定量の血液成分が充填された後は、溶断されかつ溶着されて閉塞されている。これによって、血液成分収容容器6内に収容された血液成分の無菌状態が保たれる。
【0024】
成分採取口12は、血液成分収容容器6内に収容された血液成分を採取する場合に使用される。この成分採取口12は、血液成分収容容器6の他端側から下方に向かって一体に延びる小径の第1中空円筒部12Aとこの第1中空円筒部12Aよりもやや径が大きく下端が開口する大径の第2中空円筒部12Bと、第2中空円筒部12Bの開口を閉塞するカバー13と、を備える。また、カバー13には、成分採取口12の側方へ突出する開閉操作片14が一体に連設されている。
【0025】
次に、第1実施形態の水中加温処理用フロート1を用いて、図2に示した状態の血液成分収容容器6内に収容された血清等の血液成分の非働化処理(56℃の水中に30分間浸漬させて血清等の血液成分中の補体を失活させる処理)を行なう態様について、図3及び図4を参照して説明する。
【0026】
先ず、血液成分収容容器6を、図3及び図4に示すように、上下方向に反転させる。次いで、この上下方向に反転された血液成分収容容器6における成分採取口12の第1中空円筒部12Aを、フロート本体2の外周面2Aに当接させてスリット部4の幅広の開口部に位置合せした後、血液成分収容容器6をスリット部4に沿って押し込み移動させる。この押し込み移動によって、スリット部4は幅を広げる方向に順次変形されるため、血液成分収容容器6における第1中空円筒部12Aはスリット部4を通過移動して第1孔部3内に移入される。血液成分収容容器6における第1中空円筒部12Aが第1孔部3内に完全に移入位置されると、スリット部4は元の略V字形状に復帰し、この復帰に伴い第1中空円筒部12Aの外周面部が第1孔部3の内周面部によって挟持される。これにより、血液成分収容容器6がフロート本体2に安定的に保持される。
【0027】
上記と同様な要領で、図3及び図4に示すように、フロート本体2の4つの第1孔部3のそれぞれに血液成分収容容器6を挟持させ、水中加温処理用フロート1に4つの血液成分収容容器6を保持させる。このとき、必要に応じて径の大きい第2孔部5に、血液成分収容容器6以外の試験管やマイクロチューブ等を挟持させてもよい。
【0028】
以上の準備作業が完了した後に、フロート本体2を水面上に浮上させて4つの血液成分収容容器6の成分収容部を加温された水中に浸漬させる。これにより、各血液成分収容容器6内部に収容された血液成分(血清)に対する非働化処理(56℃×30分)を行い、血液成分(血清)中の補体を失活させる。
【0029】
上述した構成を有する第1実施形態の水中加温処理用フロート1によれば、以下のような効果を奏する。
フロート本体2の外周面2Aから第1孔部3の内周面3Aに向けて血液成分収容容器6の通過を許容する状態に変形可能なスリット部4を設けた。これにより、一端部に第1孔部3で挟持される外周面部(第1中空円筒部12A)よりも大径の部分(第2中空円筒部12B及びカバー13)が存在する形状の血液成分収容容器6であっても、第1中空円筒部12Aを第1孔部3に差し入れ挟持させられる。よって、保持対象となる容器形状に制限がなく、汎用性の向上を図れる。
【0030】
また、フロート本体2には、4つ(複数)の第1孔部3及びスリット部4を設けた。これにより、フロート本体2に4つ(複数)の血液成分収容容器6を保持させられるので、4つ(複数)の血液成分収容容器6の非働化処理を同時に行うことができる。よって、非働化処理の効率を高められる。
【0031】
また、スリット部4を略V字形状に形成した。これにより、血液成分収容容器6をフロート本体2の外周面2A側から第1孔部3内にまで押し込み移動させる場合に、スリット部4が幅を広げる方向に変形しやすくなるので、血液成分収容容器6を第1孔部3に挟持させるための押し込み操作を容易に行うことができる。また、第1孔部3内に血液成分収容容器6の第1中空円筒部12Aを位置させた場合に、スリット部4の形状復帰によって第1孔部3の内周面3Aに近い幅狭部分が密閉される。これにより、第1孔部3の内周面3Aにより血液成分収容容器6の第1中空円筒部12Aの外周部分を強く挟持させることができる。
【0032】
また、フロート本体2に、血液成分収容容器6以外の試験管やマイクロチューブ等を挟持する第2孔部5を設けた。これにより、水中加温処理用フロート1の汎用性をより一層向上できる。
【0033】
次に、本発明の水中加温処理用フロート1の第2実施形態〜第5実施形態について説明する。これら第2実施形態〜第5実施形態については、上述した第1実施形態と異なる点を主に説明し、同様な点は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。
【0034】
第2実施形態の水中加温処理用フロート1は、図5に示すように、フロート本体2の外周面2Aからフロート本体2の4箇所に形成された第1孔部3の内周面3Aに向けて形成されるスリット部4が、全長にわたって狭小な幅を有する直線状に形成されている点において第1実施形態と異なる。
【0035】
第2実施形態の水中加温処理用フロート1によれば、フロート本体2を厚さ方向に貫通するスリット部4の面積が少なくなるので、第1実施形態に比して浮力が大きくなるので、非働化処理時におけるフロート1の浮上姿勢及び血液成分収容容器6の保持姿勢を安定化できる。
【0036】
第3実施形態の水中加温処理用フロート1は、図6に示すように、フロート本体2を、略270°の中心角を持つ4つの円弧状の外周面部2A1が周方向に連続して配列された外周面を有する形状に構成した点で、第1実施形態と異なる。言い換えれば、第3実施形態の水中加温処理用フロート1は、平面視において略四つ葉のクローバー形状を有している。この水中加温処理用フロート1は、フロート本体2の外周面で周方向に隣接する外周面部2A1,2A1の端部同士が接して形成される4つの入込部2A2を有する。また、4つの第1孔部3は、入込部2A2とフロート本体2の中心部とを結ぶ線上の位置であって、フロート本体2の中心部に近い位置それぞれに形成されている。また、スリット部4は、それぞれ、入込部2A2から第1孔部3の内周面3Aに向けて形成されている。
【0037】
4つの外周面部2A1は、それぞれ、直径30mm〜50mmの大きさの円における円弧により構成されることが好ましく、直径40mmの大きさの円における円弧により構成されることがより好ましい。
【0038】
第3実施形態の水中加温処理用フロート1によれば、第1孔部3をフロート本体2の中心部に近い位置に形成した。よって、第1孔部3に血液成分収容容器6を保持させた場合における重心バランスを安定化できる。
【0039】
また、フロート本体2を、4つの円弧状の外周面部2A1を含んで構成した。これにより、フロート本体2を水面上に浮上させた状態で水面に波が発生した場合に、この波の影響を円弧状の曲面により構成された外周面部2A1により分散できるので、水中加温処理用フロート1の揺動を低減できる。よって、水中加温処理用フロート1の水面上での姿勢の安定性をより向上できる。
また、血液成分収容容器6により荷重が負荷される第1孔部3の位置からフロート本体2の外周部に向かう距離を、全方向において大きな差を設けることなく構成できるので、第1孔部3に血液成分収容容器6を保持させた場合における重心バランスを安定化できる。
【0040】
また、第1孔部3に血液成分収容容器6を挿入する場合、及び血液成分収容容器6を第1孔部3から離脱させる場合における操作性を向上できる。
即ち、第1孔部3に血液成分収容容器6を挿入する場合には、まず、4つの外周面部2A1のうちのいずれか1つを、例えば、親指と人差し指又は中指により両側から把持する。この状態で入込部2A2に血液成分収容容器6をあてて内側に押し込むことで、スリット部4を容易に開口させて血液成分収容容器6を第1孔部3に挿入できる。
一方、血液成分収容容器6を第1孔部3から離脱させる場合には、4つの外周面部2A1のうちのいずれか1つを両側から把持した状態で血液成分収容容器6を入込部2A2側(外側)に押し出すことで、スリット部4を容易に開口させて血液成分収容容器6第1孔部3から容易に離脱させられる。つまり、第3実施形態によれば、隣り合う外周面部2A1の間に形成される入込部2A2にスリット部4を設けたので、このスリット部4を開口させる方向に容易に力を加えられる。
【0041】
また、水中加温処理用フロート1を4つの外周面部2A1を含んで構成した。よって、水中加温処理用フロート1が四葉のクローバー状の外観を呈するので、美観に優れる。
【0042】
また、水中加温処理用フロート1を、フロート本体2の中心部を対称点とする点対称に構成した。よって、フロート本体2が波のような外力負荷を受けた場合でも、フロート本体2が特定方向に揺動するのを防止できるので、水中加温処理用フロート1の水面上での姿勢の安定性を更に向上できる。
【0043】
図7は、第3実施形態の水中加温処理用フロート1の第1変形例を示す図である。第1変形例の水中加温処理用フロート1は、主として、第1孔部3が入込部2A2に接するように形成される点で、第3実施形態の水中加温処理用フロートと異なる。
【0044】
より具体的には、第1孔部3は、フロート本体2の入込部2A2と中心部との間における入込部2A2の内側に形成される。つまり、第1変形例では、スリット部4の長さは、極めて短く(例えば、3mm未満に)構成される。このスリット部4は、フロート本体2に外力が加えられていない通常状態では閉じた状態となっている。そして、第1孔部3は、スリット部4が閉じた状態では、平面視において、欠けることのない円形に構成されている。
【0045】
また、第1変形例の水中加温処理用フロート1の外形は、図7に示すように、同径(例えば直径40mm)の4つの円が接した形状を有している。従って、第1変形例の水中加温処理用フロート1では、4つの入込部2A2は、第3実施形態の水中加温処理用フロート1に比して、フロート本体2の中央部に寄って配置されている。これにより、4つの入込部2A2それぞれの内側に接するように形成される4つの第1孔部3もフロート本体2の中央部に寄って配置される。
【0046】
より具体的には、第1変形例では、4つの第1孔部3は、直径8mmの円形に形成されており、フロート本体2の中心部を挟んで対向する2つの第1孔部3の中心間の距離L1は、32mmとなっている。また、フロート本体2における対向する2つの第1孔部3を結ぶ方向に沿う方向の長さL2は、80mmとなっている。
ここで、第1孔部3に血液成分収容容器6を保持させた場合におけるフロート本体2の中心部を挟んで対向する2つの第1孔部3の中心間の距離L1と、フロート本体2における対向する2つの第1孔部3を結ぶ方向に沿う方向の長さL2と、の関係(L1/L2(%))は、25%から50%の範囲であるのが好ましく、35%から45%の範囲であるのがより好ましい。前記L1とL2の関係が50%を超えれば、フロート本体2の重心バランスをより良好に保てなくなる可能性がある。また、前記L1とL2の関係が25%未満であれば、例えば、複数の第1孔部3に血液成分収容容器6を保持させた場合、各血液成分収容容器6による干渉が生じる可能性がある。
【0047】
第1変形例の水中加温処理用フロート1によれば、第1孔部3を入込部2A2に接するように形成した。これにより、スリット部4の長さを短く構成できるので、第1孔部3に血液成分収容容器6を挿入する場合、及び血液成分収容容器6を離脱させる場合における操作性を向上できる。また、スリット部4を、通常状態において閉じるように構成した。よって、第1孔部3による血液成分収容容器6の挟持性を向上できる。
【0048】
また、水中加温処理用フロート1の外形を、4つの円が接した形状に構成した。これにより、入込部2A2の位置をフロート本体2のより中央部側に配置できるので、入込部2A2に接するように形成される第1孔部3をよりフロート本体2の中心部に近い位置に配置できる。よって、第1孔部3に血液成分収容容器6を保持させた場合における重心バランスをより安定化できる。
【0049】
図8は、第3実施形態の水中加温処理用フロート1の第2変形例を示す図である。第2変形例の水中加温処理用フロート1は、外周面部2A1の形状において第1変形例の水中加温処理用フロート1と異なる。
より具体的には、第2変形例では、外周面部2A1は、図8に示すように、隣り合う2つの入込部2A2の中央に位置する頂部と前記フロート本体の中心部とを結ぶ直線が長径となる略楕円形状に形成される。従って、第2変形例の水中加温処理用フロート1では、4つの入込部2A2は、第1変形例の水中加温処理用フロート1に比して、更にフロート本体2の中央部に寄って配置されている。これにより、4つの入込部2A2それぞれの内側に接するように形成される4つの第1孔部3もフロート本体2の中央部に寄って配置される。より具体的には、第2変形例では、4つの第1孔部3は、直径8mmの円形に形成されており、フロート本体2の中心部を挟んで対向する2つの第1孔部3の中心間の距離L3は、20mmとなっている。また、フロート本体2における対向する2つの第1孔部3を結ぶ方向に沿う方向の長さL4は、80mmとなっている。
【0050】
尚、フロート本体2の中心部を挟んで対向する2つの第1孔部3の中心間の距離L3は、第1孔部3に血液成分収容容器6を安定的に挟持させる観点から、20mm以上であることが好ましい。フロート本体2の中心部を挟んで対向する2つの第1孔部3の中心間の距離L3が20mm未満の場合には、これら2つの第1孔部3に挟持された血液成分収容容器6が干渉してしまうおそれがある。
【0051】
第2変形例の水中加温処理用フロート1によれば、外周面部2A1を、頂部と前記フロート本体の中心部とを結ぶ直線が長径となる略楕円形状に形成した。これにより、入込部2A2の位置をフロート本体2の更に中央部側に配置できるので、入込部2A2に接するように形成される第1孔部3を更にフロート本体2の中心部に近い位置に配置できる。よって、第1孔部3に血液成分収容容器6を保持させた場合における重心バランスを更に安定化できる。
【0052】
また、フロート本体2の中心部を挟んで対向する2つの第1孔部3の中心間の距離L3を20mm以上に構成した。よって、第1孔部3に血液成分収容容器6を保持させた場合における水中加温処理用フロート1の重心バランスを安定化しつつ、第1孔部3に挟持された血液成分収容容器6の干渉を防げる。
【0053】
第4実施形態の水中加温処理用フロート1は、図9に示すように、フロート本体2が略円形部分21と触覚を備えた頭部分22とを有し全体が略蝸牛形状に形成されている。この略蝸牛形状のフロート本体2の前記略円形部分21にスリット部4を渦巻き状に形成し、該渦巻き状のスリット部4の渦巻きの途中部分に複数、具体的には、4つの第1孔部3が形成されている。
【0054】
第4実施形態の水中加温処理用フロート1によれば、渦巻き状のスリット部4の途中に4つの第1孔部3を形成した。これにより、例えば、1つ又は2つの血液成分収容容器6をフロート本体2に保持させて用いる場合、重心バランスを考慮しての血液成分収容容器6を任意の位置の第1孔部3に差し込み保持させられる。
【0055】
尚、第4実施形態においては、図9に示すように、第1孔部3を、スリット部4により分断される2つの略半円形状の孔部を合致させて略円形形状に構成したがこれに限らない。即ち、図10に示すように、第1孔部3を、略円形の第1孔部3の周縁の一箇所がスリット部4に接するように設けてもよい。これにより、第1孔部3による血液成分収容容器6の保持性を向上できる。
【0056】
第5実施形態の水中加温処理用フロート1は、図11に示すように、フロート本体2を、このフロート本体2の中心部を含む円形の中央フロート部23と、この中央フロート部23の外周を取り囲む正方形状の外周フロート部24とに分割可能に構成している。外周フロート部24の中央部には、中央フロート部23を嵌合保持及び離脱可能とする円形孔231が形成されている。第1孔部3は、外周フロート部24の円形孔231の内周面に近い箇所に円周方向に等間隔で4つ形成されている。スリット部4は、円形孔231の内周面から4つの第1孔部3に向かってそれぞれ形成されている。
中央フロート部23の中心部には、第1孔部3が形成されている。スリット部4は、中央フロート部23の外周面から第1孔部3に向かって径方向に延びて形成されている。
【0057】
第5実施形態の水中加温処理用フロート1によれば、フロート本体2を、中央フロート部23と外周フロート部24との2つに分割可能に構成し、中央フロート部23及び外周フロート部24それぞれに第1孔部3及びスリット部4を設けた。これにより、非働化処理に供する血液成分収容容器6の数が1つの場合は、中央フロート部23を単独使用し、また、2つ以上の場合は、中央フロート部23を外周フロート部24の円形孔231内に嵌合保持させて併用するといった具合に、非働化処理に供する血液成分収容容器6の数に応じて中央フロート部23の単独使用状態と中央フロート部23及び外周フロート部24の併用使用状態とを使い分けることができる。また、非働化処理に供する血液成分収容容器6の数に応じて血液成分収容容器を保持させる第1孔部3の位置を調節することで、水中加温処理用フロート1の重心バランスを安定化できる。
また、中央フロート部23の円形孔231に、血液成分収容容器6以外の比較的外径の大きい試験管やマイクロチューブ等を挟持させてもよい。これにより、水中加温処理用フロート1の汎用性をより一層向上できる。
【0058】
次に、本発明の水中加温処理用フロートの第6実施形態について図12を参照しながら説明する。
第6実施形態の水中加温処理用フロート1は、図12に示すように、直線状の分割面に沿い二分割された一対の分割フロート部25,26からなる水面に浮上可能なフロート本体2と、このフロート本体2における一対の分割フロート部25,26の分割面25A,26Aが互いに当接した状態で一対の分割フロート部25,26同士を一体に結合及び分離可能とする分割フロート部結合分離部と、一対の分割フロート部25,26それぞれの分割面25A,26Aにフロート本体2の厚さ方向に貫通して形成される複数の孔部構成部31,32と、を備える。
【0059】
一対の分割フロート部25,26は、共に帯板形状に形成され、第1実施形態と同様に、水よりも比重の軽くかつ可撓性を有する材料から構成されている。
【0060】
孔部構成部31,32は、図12に示すように、分割面25A,26Aの長手方向に沿って等間隔おきに4つ形成されており、平面視において略半円形状を有している。孔部構成部31,32は、一対の分割フロート部25,26同士が結合されたとき、血液成分収容容器6における成分採取口12の第1中空円筒部12Aを挟持可能な略円形の第1孔部3を形成する。
【0061】
図12に示すように、分割フロート部結合分離部は、一対の係合突起27と、一対の被係合孔28とにより構成される。一対の係合突起27は、鍵穴形状を有しており、一対の分割フロート部25,26のうち、一方の分割フロート部25の分割面25Aの長手方向両端部に設けられる。一対の被係合孔28は、係合突起27の形状に対応する鍵穴形状を有しており、他方の分割フロート部26の分割面26Aの長手方向両端部に設けられる。これら係合突起27と被係合孔28とにより、一対の分割フロート部25,26は、結合及び分離可能となっている。
【0062】
上述した構成を有する第6実施形態の水中加温処理用フロート1によれば、一対の分割フロート部25,26同士を分離させた状態で、孔部構成部31又は32に血液成分収容容器6おける成分採取口12の第1中空円筒部12Aの略半分を嵌め込んだ後、係合突起27を被係合孔28に押込み係合させて一対の分割フロート部25,26同士を一体に結合する。この結合によって、略半円形の孔部構成部31、32の開口が閉じられて略円形の第1孔部3を形成することになり、この第1孔部3に血液成分収容容器6おける成分採取口12の第1中空円筒部12Aが挟持される。このように、一端部に第1孔部3で挟持される外周面部(第1中空円筒部12A)よりも径の大きい部分(第2中空円筒部12B及びカバー13)が存在する形状の血液成分収容容器6であっても、第1孔部3に挟持させて使用することが可能である。よって、保持対象となる容器形状に制限がなく、汎用性の向上を図ることができる。
【0063】
また、一対の分割フロート部25,26にそれぞれ直線状の分割面25A,26Aを設けた。これにより、直線状の分割面25A,26A間に、例えば採血バッグ等の袋状容器(図示せず)を挟持させて水中加温処理等に用いることが可能であり、汎用性をより向上できる。
【0064】
以上、本発明をその好ましい実施形態及び実施態様に基づいて説明したが、本発明は上記各実施形態及び実施態様には制限されることなく、適宜変更可能である。
例えば、上述した各実施形態では、フロート本体2を平板状に形成したがこれに限らない。即ち、図13に示すように、フロート本体2に形成される第1孔部3の周囲に、該第1孔部3に挟持された血液成分収容容器6おける成分採取口12の第2中空円筒部12B及びカバー13の外周を取り囲む立上がり部33を形成してもよい。これにより、血液成分収容容器6を水中に浸漬させて非働化処理する際、周囲に飛散した水が血液成分収容容器6おける成分採取口12の第2中空円筒部12B及びカバー13に降りかかることを防止できる。
【0065】
また、フロート本体2の構成材料として、上記各実施形態では、例えばポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ウレタン系スポンジ、合成ゴム、各種エラストマー等の発泡樹脂材料を用いたが、これに限らない。即ち、フロート本体2の構成材料として、空気を充填することで水面に浮上可能とした袋状のものを用いてもよい。
【0066】
また、フロート本体2は、平面視において正方形状や長方形状のものに限らず、円形状や楕円形状等のいかなる形状のものであってもよい。
【0067】
また、フロート1への保持対象となる液体収容容器として、上記各実施形態では、血液成分収容容器を用いたが、これ以外に、水中での加温処理に用いられるものであれば、どのような形態の容器にも適用可能である。
【0068】
また、フロート本体2に形成する第1孔部3及びスリット部4の数は、4つに限らず、1つでも、2つや3つでも、更には5つ以上であってもよい。また、第1孔部3及びスリット部4の配置については、水中加温処理用フロート全体における重心バランスが安定するような配置であれば特に制限はない。
【符号の説明】
【0069】
1 水中加温処理用フロート
2 フロート本体
2A フロート本体の外周面
23 中央フロート部
24 外周フロート部
25,26 分割フロート部
25A,26A 分割面
27 係合突起(分割フロート部結合分離部)
28 被係合孔(分割フロート部結合分離部)
3 第1孔部
3A 第1孔部の内周面
31,32 孔部構成部
33 立ち上がり部
4 スリット部
6 血液成分収容容器(液体収容容器)
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清等の液体を収容した液体収容容器の少なくとも一部を水中に浸漬させて加温処理する場合に用いられる水中加温処理用フロートに関する。
【背景技術】
【0002】
水中加温処理の一例として、血清調製工程におけるいわゆる非働化処理が挙げられる。この非働化処理とは、血清を収容した容器を加温された水中に浸漬し一定時間保持(例えば、56℃×30分)させて血清中の補体を失活させる処理である。この非働化処理等の水中加温処理を確実かつ安定して行うために、従来、水面にフロートを浮かべ、このフロートに血清等の液体を収容した容器を保持させる手段が採用されている。
上記のように用いられる水中加温処理用フロートとしては、フロート本体に該フロート本体の厚さ方向に貫通する円形又は略円形孔部を閉ループ状に形成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−157243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水中加温処理用フロートに容器を保持させる場合、保持対象となる容器が一端部側から他端部側に向けて漸次径の大きくなるような外周面を有する容器であれば、該容器を一端部側よりフロート本体の上方から孔部内に差し込むことによって、容器の他端部寄りの外周面部を孔部の内周面で挟持させて該容器をフロート本体に保持させることが可能である。
【0005】
しかしながら、孔部で挟持される外周面部よりも径の大きい部分が一端部側に存在するような形状の容器を保持対象とする場合には、該容器をフロート本体の上方から差し込んで保持させることができない。従って、従来の水中加温処理用フロートは、保持対象となる容器が上述したような特定形状のものに限定され、汎用性に欠けるものであった。
【0006】
本発明は、保持対象となる容器形状に制限がなく、汎用性の向上を図ることができる水中加温処理用フロートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水面に浮上可能なフロート本体と、該フロート本体の厚さ方向に貫通して形成され液体収容容器の外周部を挟持可能な孔部と、前記フロート本体の外周面から前記孔部の内周面に向けて形成され前記液体収容容器が通過可能に変形可能なスリット部と、を備える水中加温処理用フロートを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
また、前記スリット部の幅は、前記フロート本体の外周面側から前記孔部の内周面側に向かって漸次狭くなっていることが好ましい。
【0009】
また、前記孔部及び前記スリット部は、前記フロート本体に複数形成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記フロート本体は、複数の円弧状の外周面部が周方向に連続して配列されて形成され、前記孔部及び前記スリット部は、周方向に隣接する前記外周面部の端部同士が接して形成される複数の入込部と前記フロート本体の中心部とを結ぶ位置にそれぞれ形成されていることが好ましい。
【0011】
また、前記孔部は、前記入込部に接するように形成され、前記スリット部は、前記フロート本体に外力が加えられていない状態において閉じていることが好ましい。
【0012】
また、前記外周面部は、隣り合う2つの前記入込部の中央に位置する頂部と前記フロート本体の中心部とを結ぶ線分が長径となる略楕円形状に形成されることが好ましい。
【0013】
また、前記フロート本体は、中心部を含む中央フロート部と該中央フロート部の外周に配置される外周フロート部とを備え、前記外周フロート部は、複数の前記孔部及び複数の前記スリット部を有し、前記中央フロート部は、前記中心部に形成された1つの前記孔部及び前記スリット部を有すると共に、前記外周フロート部に対して着脱可能に構成されていることが好ましい。
【0014】
本発明は、直線状の分割面で分割された一対の分割フロート部により構成され水面に浮上可能なフロート本体と、前記フロート本体における前記一対の分割フロート部の前記分割面が互いに当接した状態で該一対の分割フロート部同士を結合及び分離可能とする分割フロート部結合分離部と、前記一対の分割フロート部それぞれの前記分割面に前記フロート本体の厚さ方向に貫通して形成され、前記一対の分割フロート部同士を結合した場合に、液体収容容器の外周部を挟持可能な複数の孔部を形成する複数の孔部構成部と、を備える水中加温処理用フロートを提供することによっても、上記目的を達成したものである。
【0015】
また、前記フロート本体は、前記孔部の周囲に形成され該フロート本体の厚さ方向に立ち上がる立上がり部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、保持対象となる容器形状に制限がなく、汎用性の向上を図ることができる水中加温処理用フロートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の水中加温処理用フロートの第1実施形態を示す平面図である。
【図2】第1実施形態の水中加温処理用フロートを用いて保持される液体収容容器の一例を示す側面図である。
【図3】第1実施形態の水中加温処理用フロートに液体収容容器を保持させた状態を示す平面図である。
【図4】図3のX−X線断面図である。
【図5】本発明の水中加温処理用フロートの第2実施形態を示す平面図である。
【図6】本発明の水中加温処理用フロートの第3実施形態を示す平面図である。
【図7】本発明の水中加温処理用フロートの第3実施形態の第1変形例を示す平面図である。
【図8】本発明の水中加温処理用フロートの第3実施形態の第2変形例を示す平面図である。
【図9】本発明の水中加温処理用フロートの第4実施形態を示す平面図である。
【図10】本発明の水中加温処理用フロートの第4実施形態の変形例を示す平面図である。
【図11】本発明の水中加温処理用フロートの第5実施形態を示す平面図である。
【図12】本発明の水中加温処理用フロートの第6実施形態を示す平面図である。
【図13】本発明の水中加温処理用フロートの変形例を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の水中加温処理用フロート1の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
先ず、本発明の第1実施形態について、図1〜図4を参照しながら説明する。
第1実施形態の水中加温処理用フロート1は、図1に示すように、水面に浮上可能なフロート本体2と、このフロート本体2の厚さ方向に貫通して形成される複数の孔部としての複数の第1孔部3と、フロート本体2の外周面2Aから複数の第1孔部3の内周面3Aに向けて形成された複数のスリット部4と、フロート本体2の厚さ方向に貫通して形成されスリット部4が設けられていない複数の第2孔部5と、を備えている。
【0019】
フロート本体2は、図1に示すように、平面視において略正方形の平板状であり、水よりも比重が軽く、かつ可撓性を有する材料により構成されている。フロート本体2を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ウレタン系スポンジ、合成ゴム、各種エラストマー等の発泡樹脂材料が挙げられる。
【0020】
複数の第1孔部3は、図1に示すように、正方形状のフロート本体2の各辺長さの中央位置でフロート本体2の各外周面2Aより少し中心部寄り位置のそれぞれに計4つ形成されている。これら4つの第1孔部3は、平面視において略円形に形成されている。第1孔部3は、後述する液体収容容器としての血液成分収容容器(図2参照)6の外周部を挟持する。
複数の第2孔部5は、フロート本体2の2つの対角線上の4隅部及びフロート本体2の中心部に計5つ形成されている。これら5つの第2孔部5は、第1孔部3よりも径の大きい略円形の閉ループ状に形成されている。第2孔部5は、一端部側から他端部側に向けて漸次径の大きくなるような外周面を有する試験管やマイクロチューブ等を挟持する。
【0021】
スリット部4は、複数の第1孔部3のそれぞれに計4つ形成されている。これら複数のスリット部4は、図1に示すように、フロート本体2の外周面2A側が最も幅広く、第1孔部3の内周面3Aに向けて漸次幅狭となる略V字形状に形成されている。
【0022】
血液成分収容容器6は、図2に示すように、縦長状で一端側が開口した収容容器本体15と、この収容容器本体15の開口に嵌合されるキャップ7と、収容容器本体15の他端側に設けられる成分採取口12と、を備える。
収容容器本体15には、血清等の液性の血液成分が収容される。キャップ7には、このキャップ7の上面から下面に貫通する貫通孔により形成される血液成分導入路8及び血液成分収容容器6内に空気を出入りさせる通気路9が設けられている。
【0023】
血液成分導入路8には、連結チューブ10の一端側が接続されており、この連結チューブ10を介して血清等の血液成分が血液成分収容容器6内に導入される。通気路9には、通気チューブ11の一端側が接続されており、この通気チューブ11の他端側には、気体は通過させるが液体や細菌等は通過させない性質を有するフィルタ(図示せず)が接続されている。これら連結チューブ10及び通気チューブ11は、血液成分収容容器6内に所定量の血液成分が充填された後は、溶断されかつ溶着されて閉塞されている。これによって、血液成分収容容器6内に収容された血液成分の無菌状態が保たれる。
【0024】
成分採取口12は、血液成分収容容器6内に収容された血液成分を採取する場合に使用される。この成分採取口12は、血液成分収容容器6の他端側から下方に向かって一体に延びる小径の第1中空円筒部12Aとこの第1中空円筒部12Aよりもやや径が大きく下端が開口する大径の第2中空円筒部12Bと、第2中空円筒部12Bの開口を閉塞するカバー13と、を備える。また、カバー13には、成分採取口12の側方へ突出する開閉操作片14が一体に連設されている。
【0025】
次に、第1実施形態の水中加温処理用フロート1を用いて、図2に示した状態の血液成分収容容器6内に収容された血清等の血液成分の非働化処理(56℃の水中に30分間浸漬させて血清等の血液成分中の補体を失活させる処理)を行なう態様について、図3及び図4を参照して説明する。
【0026】
先ず、血液成分収容容器6を、図3及び図4に示すように、上下方向に反転させる。次いで、この上下方向に反転された血液成分収容容器6における成分採取口12の第1中空円筒部12Aを、フロート本体2の外周面2Aに当接させてスリット部4の幅広の開口部に位置合せした後、血液成分収容容器6をスリット部4に沿って押し込み移動させる。この押し込み移動によって、スリット部4は幅を広げる方向に順次変形されるため、血液成分収容容器6における第1中空円筒部12Aはスリット部4を通過移動して第1孔部3内に移入される。血液成分収容容器6における第1中空円筒部12Aが第1孔部3内に完全に移入位置されると、スリット部4は元の略V字形状に復帰し、この復帰に伴い第1中空円筒部12Aの外周面部が第1孔部3の内周面部によって挟持される。これにより、血液成分収容容器6がフロート本体2に安定的に保持される。
【0027】
上記と同様な要領で、図3及び図4に示すように、フロート本体2の4つの第1孔部3のそれぞれに血液成分収容容器6を挟持させ、水中加温処理用フロート1に4つの血液成分収容容器6を保持させる。このとき、必要に応じて径の大きい第2孔部5に、血液成分収容容器6以外の試験管やマイクロチューブ等を挟持させてもよい。
【0028】
以上の準備作業が完了した後に、フロート本体2を水面上に浮上させて4つの血液成分収容容器6の成分収容部を加温された水中に浸漬させる。これにより、各血液成分収容容器6内部に収容された血液成分(血清)に対する非働化処理(56℃×30分)を行い、血液成分(血清)中の補体を失活させる。
【0029】
上述した構成を有する第1実施形態の水中加温処理用フロート1によれば、以下のような効果を奏する。
フロート本体2の外周面2Aから第1孔部3の内周面3Aに向けて血液成分収容容器6の通過を許容する状態に変形可能なスリット部4を設けた。これにより、一端部に第1孔部3で挟持される外周面部(第1中空円筒部12A)よりも大径の部分(第2中空円筒部12B及びカバー13)が存在する形状の血液成分収容容器6であっても、第1中空円筒部12Aを第1孔部3に差し入れ挟持させられる。よって、保持対象となる容器形状に制限がなく、汎用性の向上を図れる。
【0030】
また、フロート本体2には、4つ(複数)の第1孔部3及びスリット部4を設けた。これにより、フロート本体2に4つ(複数)の血液成分収容容器6を保持させられるので、4つ(複数)の血液成分収容容器6の非働化処理を同時に行うことができる。よって、非働化処理の効率を高められる。
【0031】
また、スリット部4を略V字形状に形成した。これにより、血液成分収容容器6をフロート本体2の外周面2A側から第1孔部3内にまで押し込み移動させる場合に、スリット部4が幅を広げる方向に変形しやすくなるので、血液成分収容容器6を第1孔部3に挟持させるための押し込み操作を容易に行うことができる。また、第1孔部3内に血液成分収容容器6の第1中空円筒部12Aを位置させた場合に、スリット部4の形状復帰によって第1孔部3の内周面3Aに近い幅狭部分が密閉される。これにより、第1孔部3の内周面3Aにより血液成分収容容器6の第1中空円筒部12Aの外周部分を強く挟持させることができる。
【0032】
また、フロート本体2に、血液成分収容容器6以外の試験管やマイクロチューブ等を挟持する第2孔部5を設けた。これにより、水中加温処理用フロート1の汎用性をより一層向上できる。
【0033】
次に、本発明の水中加温処理用フロート1の第2実施形態〜第5実施形態について説明する。これら第2実施形態〜第5実施形態については、上述した第1実施形態と異なる点を主に説明し、同様な点は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。
【0034】
第2実施形態の水中加温処理用フロート1は、図5に示すように、フロート本体2の外周面2Aからフロート本体2の4箇所に形成された第1孔部3の内周面3Aに向けて形成されるスリット部4が、全長にわたって狭小な幅を有する直線状に形成されている点において第1実施形態と異なる。
【0035】
第2実施形態の水中加温処理用フロート1によれば、フロート本体2を厚さ方向に貫通するスリット部4の面積が少なくなるので、第1実施形態に比して浮力が大きくなるので、非働化処理時におけるフロート1の浮上姿勢及び血液成分収容容器6の保持姿勢を安定化できる。
【0036】
第3実施形態の水中加温処理用フロート1は、図6に示すように、フロート本体2を、略270°の中心角を持つ4つの円弧状の外周面部2A1が周方向に連続して配列された外周面を有する形状に構成した点で、第1実施形態と異なる。言い換えれば、第3実施形態の水中加温処理用フロート1は、平面視において略四つ葉のクローバー形状を有している。この水中加温処理用フロート1は、フロート本体2の外周面で周方向に隣接する外周面部2A1,2A1の端部同士が接して形成される4つの入込部2A2を有する。また、4つの第1孔部3は、入込部2A2とフロート本体2の中心部とを結ぶ線上の位置であって、フロート本体2の中心部に近い位置それぞれに形成されている。また、スリット部4は、それぞれ、入込部2A2から第1孔部3の内周面3Aに向けて形成されている。
【0037】
4つの外周面部2A1は、それぞれ、直径30mm〜50mmの大きさの円における円弧により構成されることが好ましく、直径40mmの大きさの円における円弧により構成されることがより好ましい。
【0038】
第3実施形態の水中加温処理用フロート1によれば、第1孔部3をフロート本体2の中心部に近い位置に形成した。よって、第1孔部3に血液成分収容容器6を保持させた場合における重心バランスを安定化できる。
【0039】
また、フロート本体2を、4つの円弧状の外周面部2A1を含んで構成した。これにより、フロート本体2を水面上に浮上させた状態で水面に波が発生した場合に、この波の影響を円弧状の曲面により構成された外周面部2A1により分散できるので、水中加温処理用フロート1の揺動を低減できる。よって、水中加温処理用フロート1の水面上での姿勢の安定性をより向上できる。
また、血液成分収容容器6により荷重が負荷される第1孔部3の位置からフロート本体2の外周部に向かう距離を、全方向において大きな差を設けることなく構成できるので、第1孔部3に血液成分収容容器6を保持させた場合における重心バランスを安定化できる。
【0040】
また、第1孔部3に血液成分収容容器6を挿入する場合、及び血液成分収容容器6を第1孔部3から離脱させる場合における操作性を向上できる。
即ち、第1孔部3に血液成分収容容器6を挿入する場合には、まず、4つの外周面部2A1のうちのいずれか1つを、例えば、親指と人差し指又は中指により両側から把持する。この状態で入込部2A2に血液成分収容容器6をあてて内側に押し込むことで、スリット部4を容易に開口させて血液成分収容容器6を第1孔部3に挿入できる。
一方、血液成分収容容器6を第1孔部3から離脱させる場合には、4つの外周面部2A1のうちのいずれか1つを両側から把持した状態で血液成分収容容器6を入込部2A2側(外側)に押し出すことで、スリット部4を容易に開口させて血液成分収容容器6第1孔部3から容易に離脱させられる。つまり、第3実施形態によれば、隣り合う外周面部2A1の間に形成される入込部2A2にスリット部4を設けたので、このスリット部4を開口させる方向に容易に力を加えられる。
【0041】
また、水中加温処理用フロート1を4つの外周面部2A1を含んで構成した。よって、水中加温処理用フロート1が四葉のクローバー状の外観を呈するので、美観に優れる。
【0042】
また、水中加温処理用フロート1を、フロート本体2の中心部を対称点とする点対称に構成した。よって、フロート本体2が波のような外力負荷を受けた場合でも、フロート本体2が特定方向に揺動するのを防止できるので、水中加温処理用フロート1の水面上での姿勢の安定性を更に向上できる。
【0043】
図7は、第3実施形態の水中加温処理用フロート1の第1変形例を示す図である。第1変形例の水中加温処理用フロート1は、主として、第1孔部3が入込部2A2に接するように形成される点で、第3実施形態の水中加温処理用フロートと異なる。
【0044】
より具体的には、第1孔部3は、フロート本体2の入込部2A2と中心部との間における入込部2A2の内側に形成される。つまり、第1変形例では、スリット部4の長さは、極めて短く(例えば、3mm未満に)構成される。このスリット部4は、フロート本体2に外力が加えられていない通常状態では閉じた状態となっている。そして、第1孔部3は、スリット部4が閉じた状態では、平面視において、欠けることのない円形に構成されている。
【0045】
また、第1変形例の水中加温処理用フロート1の外形は、図7に示すように、同径(例えば直径40mm)の4つの円が接した形状を有している。従って、第1変形例の水中加温処理用フロート1では、4つの入込部2A2は、第3実施形態の水中加温処理用フロート1に比して、フロート本体2の中央部に寄って配置されている。これにより、4つの入込部2A2それぞれの内側に接するように形成される4つの第1孔部3もフロート本体2の中央部に寄って配置される。
【0046】
より具体的には、第1変形例では、4つの第1孔部3は、直径8mmの円形に形成されており、フロート本体2の中心部を挟んで対向する2つの第1孔部3の中心間の距離L1は、32mmとなっている。また、フロート本体2における対向する2つの第1孔部3を結ぶ方向に沿う方向の長さL2は、80mmとなっている。
ここで、第1孔部3に血液成分収容容器6を保持させた場合におけるフロート本体2の中心部を挟んで対向する2つの第1孔部3の中心間の距離L1と、フロート本体2における対向する2つの第1孔部3を結ぶ方向に沿う方向の長さL2と、の関係(L1/L2(%))は、25%から50%の範囲であるのが好ましく、35%から45%の範囲であるのがより好ましい。前記L1とL2の関係が50%を超えれば、フロート本体2の重心バランスをより良好に保てなくなる可能性がある。また、前記L1とL2の関係が25%未満であれば、例えば、複数の第1孔部3に血液成分収容容器6を保持させた場合、各血液成分収容容器6による干渉が生じる可能性がある。
【0047】
第1変形例の水中加温処理用フロート1によれば、第1孔部3を入込部2A2に接するように形成した。これにより、スリット部4の長さを短く構成できるので、第1孔部3に血液成分収容容器6を挿入する場合、及び血液成分収容容器6を離脱させる場合における操作性を向上できる。また、スリット部4を、通常状態において閉じるように構成した。よって、第1孔部3による血液成分収容容器6の挟持性を向上できる。
【0048】
また、水中加温処理用フロート1の外形を、4つの円が接した形状に構成した。これにより、入込部2A2の位置をフロート本体2のより中央部側に配置できるので、入込部2A2に接するように形成される第1孔部3をよりフロート本体2の中心部に近い位置に配置できる。よって、第1孔部3に血液成分収容容器6を保持させた場合における重心バランスをより安定化できる。
【0049】
図8は、第3実施形態の水中加温処理用フロート1の第2変形例を示す図である。第2変形例の水中加温処理用フロート1は、外周面部2A1の形状において第1変形例の水中加温処理用フロート1と異なる。
より具体的には、第2変形例では、外周面部2A1は、図8に示すように、隣り合う2つの入込部2A2の中央に位置する頂部と前記フロート本体の中心部とを結ぶ直線が長径となる略楕円形状に形成される。従って、第2変形例の水中加温処理用フロート1では、4つの入込部2A2は、第1変形例の水中加温処理用フロート1に比して、更にフロート本体2の中央部に寄って配置されている。これにより、4つの入込部2A2それぞれの内側に接するように形成される4つの第1孔部3もフロート本体2の中央部に寄って配置される。より具体的には、第2変形例では、4つの第1孔部3は、直径8mmの円形に形成されており、フロート本体2の中心部を挟んで対向する2つの第1孔部3の中心間の距離L3は、20mmとなっている。また、フロート本体2における対向する2つの第1孔部3を結ぶ方向に沿う方向の長さL4は、80mmとなっている。
【0050】
尚、フロート本体2の中心部を挟んで対向する2つの第1孔部3の中心間の距離L3は、第1孔部3に血液成分収容容器6を安定的に挟持させる観点から、20mm以上であることが好ましい。フロート本体2の中心部を挟んで対向する2つの第1孔部3の中心間の距離L3が20mm未満の場合には、これら2つの第1孔部3に挟持された血液成分収容容器6が干渉してしまうおそれがある。
【0051】
第2変形例の水中加温処理用フロート1によれば、外周面部2A1を、頂部と前記フロート本体の中心部とを結ぶ直線が長径となる略楕円形状に形成した。これにより、入込部2A2の位置をフロート本体2の更に中央部側に配置できるので、入込部2A2に接するように形成される第1孔部3を更にフロート本体2の中心部に近い位置に配置できる。よって、第1孔部3に血液成分収容容器6を保持させた場合における重心バランスを更に安定化できる。
【0052】
また、フロート本体2の中心部を挟んで対向する2つの第1孔部3の中心間の距離L3を20mm以上に構成した。よって、第1孔部3に血液成分収容容器6を保持させた場合における水中加温処理用フロート1の重心バランスを安定化しつつ、第1孔部3に挟持された血液成分収容容器6の干渉を防げる。
【0053】
第4実施形態の水中加温処理用フロート1は、図9に示すように、フロート本体2が略円形部分21と触覚を備えた頭部分22とを有し全体が略蝸牛形状に形成されている。この略蝸牛形状のフロート本体2の前記略円形部分21にスリット部4を渦巻き状に形成し、該渦巻き状のスリット部4の渦巻きの途中部分に複数、具体的には、4つの第1孔部3が形成されている。
【0054】
第4実施形態の水中加温処理用フロート1によれば、渦巻き状のスリット部4の途中に4つの第1孔部3を形成した。これにより、例えば、1つ又は2つの血液成分収容容器6をフロート本体2に保持させて用いる場合、重心バランスを考慮しての血液成分収容容器6を任意の位置の第1孔部3に差し込み保持させられる。
【0055】
尚、第4実施形態においては、図9に示すように、第1孔部3を、スリット部4により分断される2つの略半円形状の孔部を合致させて略円形形状に構成したがこれに限らない。即ち、図10に示すように、第1孔部3を、略円形の第1孔部3の周縁の一箇所がスリット部4に接するように設けてもよい。これにより、第1孔部3による血液成分収容容器6の保持性を向上できる。
【0056】
第5実施形態の水中加温処理用フロート1は、図11に示すように、フロート本体2を、このフロート本体2の中心部を含む円形の中央フロート部23と、この中央フロート部23の外周を取り囲む正方形状の外周フロート部24とに分割可能に構成している。外周フロート部24の中央部には、中央フロート部23を嵌合保持及び離脱可能とする円形孔231が形成されている。第1孔部3は、外周フロート部24の円形孔231の内周面に近い箇所に円周方向に等間隔で4つ形成されている。スリット部4は、円形孔231の内周面から4つの第1孔部3に向かってそれぞれ形成されている。
中央フロート部23の中心部には、第1孔部3が形成されている。スリット部4は、中央フロート部23の外周面から第1孔部3に向かって径方向に延びて形成されている。
【0057】
第5実施形態の水中加温処理用フロート1によれば、フロート本体2を、中央フロート部23と外周フロート部24との2つに分割可能に構成し、中央フロート部23及び外周フロート部24それぞれに第1孔部3及びスリット部4を設けた。これにより、非働化処理に供する血液成分収容容器6の数が1つの場合は、中央フロート部23を単独使用し、また、2つ以上の場合は、中央フロート部23を外周フロート部24の円形孔231内に嵌合保持させて併用するといった具合に、非働化処理に供する血液成分収容容器6の数に応じて中央フロート部23の単独使用状態と中央フロート部23及び外周フロート部24の併用使用状態とを使い分けることができる。また、非働化処理に供する血液成分収容容器6の数に応じて血液成分収容容器を保持させる第1孔部3の位置を調節することで、水中加温処理用フロート1の重心バランスを安定化できる。
また、中央フロート部23の円形孔231に、血液成分収容容器6以外の比較的外径の大きい試験管やマイクロチューブ等を挟持させてもよい。これにより、水中加温処理用フロート1の汎用性をより一層向上できる。
【0058】
次に、本発明の水中加温処理用フロートの第6実施形態について図12を参照しながら説明する。
第6実施形態の水中加温処理用フロート1は、図12に示すように、直線状の分割面に沿い二分割された一対の分割フロート部25,26からなる水面に浮上可能なフロート本体2と、このフロート本体2における一対の分割フロート部25,26の分割面25A,26Aが互いに当接した状態で一対の分割フロート部25,26同士を一体に結合及び分離可能とする分割フロート部結合分離部と、一対の分割フロート部25,26それぞれの分割面25A,26Aにフロート本体2の厚さ方向に貫通して形成される複数の孔部構成部31,32と、を備える。
【0059】
一対の分割フロート部25,26は、共に帯板形状に形成され、第1実施形態と同様に、水よりも比重の軽くかつ可撓性を有する材料から構成されている。
【0060】
孔部構成部31,32は、図12に示すように、分割面25A,26Aの長手方向に沿って等間隔おきに4つ形成されており、平面視において略半円形状を有している。孔部構成部31,32は、一対の分割フロート部25,26同士が結合されたとき、血液成分収容容器6における成分採取口12の第1中空円筒部12Aを挟持可能な略円形の第1孔部3を形成する。
【0061】
図12に示すように、分割フロート部結合分離部は、一対の係合突起27と、一対の被係合孔28とにより構成される。一対の係合突起27は、鍵穴形状を有しており、一対の分割フロート部25,26のうち、一方の分割フロート部25の分割面25Aの長手方向両端部に設けられる。一対の被係合孔28は、係合突起27の形状に対応する鍵穴形状を有しており、他方の分割フロート部26の分割面26Aの長手方向両端部に設けられる。これら係合突起27と被係合孔28とにより、一対の分割フロート部25,26は、結合及び分離可能となっている。
【0062】
上述した構成を有する第6実施形態の水中加温処理用フロート1によれば、一対の分割フロート部25,26同士を分離させた状態で、孔部構成部31又は32に血液成分収容容器6おける成分採取口12の第1中空円筒部12Aの略半分を嵌め込んだ後、係合突起27を被係合孔28に押込み係合させて一対の分割フロート部25,26同士を一体に結合する。この結合によって、略半円形の孔部構成部31、32の開口が閉じられて略円形の第1孔部3を形成することになり、この第1孔部3に血液成分収容容器6おける成分採取口12の第1中空円筒部12Aが挟持される。このように、一端部に第1孔部3で挟持される外周面部(第1中空円筒部12A)よりも径の大きい部分(第2中空円筒部12B及びカバー13)が存在する形状の血液成分収容容器6であっても、第1孔部3に挟持させて使用することが可能である。よって、保持対象となる容器形状に制限がなく、汎用性の向上を図ることができる。
【0063】
また、一対の分割フロート部25,26にそれぞれ直線状の分割面25A,26Aを設けた。これにより、直線状の分割面25A,26A間に、例えば採血バッグ等の袋状容器(図示せず)を挟持させて水中加温処理等に用いることが可能であり、汎用性をより向上できる。
【0064】
以上、本発明をその好ましい実施形態及び実施態様に基づいて説明したが、本発明は上記各実施形態及び実施態様には制限されることなく、適宜変更可能である。
例えば、上述した各実施形態では、フロート本体2を平板状に形成したがこれに限らない。即ち、図13に示すように、フロート本体2に形成される第1孔部3の周囲に、該第1孔部3に挟持された血液成分収容容器6おける成分採取口12の第2中空円筒部12B及びカバー13の外周を取り囲む立上がり部33を形成してもよい。これにより、血液成分収容容器6を水中に浸漬させて非働化処理する際、周囲に飛散した水が血液成分収容容器6おける成分採取口12の第2中空円筒部12B及びカバー13に降りかかることを防止できる。
【0065】
また、フロート本体2の構成材料として、上記各実施形態では、例えばポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ウレタン系スポンジ、合成ゴム、各種エラストマー等の発泡樹脂材料を用いたが、これに限らない。即ち、フロート本体2の構成材料として、空気を充填することで水面に浮上可能とした袋状のものを用いてもよい。
【0066】
また、フロート本体2は、平面視において正方形状や長方形状のものに限らず、円形状や楕円形状等のいかなる形状のものであってもよい。
【0067】
また、フロート1への保持対象となる液体収容容器として、上記各実施形態では、血液成分収容容器を用いたが、これ以外に、水中での加温処理に用いられるものであれば、どのような形態の容器にも適用可能である。
【0068】
また、フロート本体2に形成する第1孔部3及びスリット部4の数は、4つに限らず、1つでも、2つや3つでも、更には5つ以上であってもよい。また、第1孔部3及びスリット部4の配置については、水中加温処理用フロート全体における重心バランスが安定するような配置であれば特に制限はない。
【符号の説明】
【0069】
1 水中加温処理用フロート
2 フロート本体
2A フロート本体の外周面
23 中央フロート部
24 外周フロート部
25,26 分割フロート部
25A,26A 分割面
27 係合突起(分割フロート部結合分離部)
28 被係合孔(分割フロート部結合分離部)
3 第1孔部
3A 第1孔部の内周面
31,32 孔部構成部
33 立ち上がり部
4 スリット部
6 血液成分収容容器(液体収容容器)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面に浮上可能なフロート本体と、該フロート本体の厚さ方向に貫通して形成され液体収容容器の外周部を挟持可能な孔部と、前記フロート本体の外周面から前記孔部の内周面に向かって形成され前記液体収容容器が通過可能に変形可能なスリット部と、を備える水中加温処理用フロート。
【請求項2】
前記スリット部の幅は、前記フロート本体の外周面側から前記孔部の内周面側に向かって漸次狭くなっている請求項1に記載の水中加温処理用フロート。
【請求項3】
前記孔部及び前記スリット部は、前記フロート本体に複数形成されている請求項1又は2に記載の水中加温処理用フロート。
【請求項4】
前記フロート本体は、複数の円弧状の外周面部が周方向に連続して配列されて形成され、前記孔部及び前記スリット部は、周方向に隣接する前記外周面部の端部同士が接して形成される複数の入込部と前記フロート本体の中心部とを結ぶ位置にそれぞれ形成されている請求項2又は3に記載の水中加温処理用フロート。
【請求項5】
前記孔部は、前記入込部に接するように形成され、
前記スリット部は、前記フロート本体に外力が加えられていない状態において閉じている請求項4に記載の水中加温処理用フロート。
【請求項6】
前記外周面部は、隣り合う2つの前記入込部の中央に位置する頂部と前記フロート本体の中心部とを結ぶ線分が長径となる略楕円形状に形成される請求項5に記載の水中加温用フロート。
【請求項7】
前記フロート本体は、中心部を含む中央フロート部と該中央フロート部の外周に配置される外周フロート部とを備え、
前記外周フロート部は、複数の前記孔部及び複数の前記スリット部を有し、
前記中央フロート部は、前記中心部に形成された1つの前記孔部及び前記スリット部を有すると共に、前記外周フロート部に対して着脱可能に構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の水中加温処理用フロート。
【請求項8】
直線状の分割面で分割された一対の分割フロート部により構成され水面に浮上可能なフロート本体と、
前記フロート本体における前記一対の分割フロート部の前記分割面が互いに当接した状態で該一対の分割フロート部同士を結合及び分離可能とする分割フロート部結合分離部と、
前記一対の分割フロート部それぞれの前記分割面に前記フロート本体の厚さ方向に貫通して形成され、前記一対の分割フロート部同士を結合した場合に、液体収容容器の外周部を挟持可能な複数の孔部を形成する複数の孔部構成部と、を備える水中加温処理用フロート。
【請求項9】
前記フロート本体は、前記孔部の周囲に形成され該フロート本体の厚さ方向に立ち上がる立上がり部を備える請求項1〜6のいずれかに記載の水中加温処理用フロート。
【請求項1】
水面に浮上可能なフロート本体と、該フロート本体の厚さ方向に貫通して形成され液体収容容器の外周部を挟持可能な孔部と、前記フロート本体の外周面から前記孔部の内周面に向かって形成され前記液体収容容器が通過可能に変形可能なスリット部と、を備える水中加温処理用フロート。
【請求項2】
前記スリット部の幅は、前記フロート本体の外周面側から前記孔部の内周面側に向かって漸次狭くなっている請求項1に記載の水中加温処理用フロート。
【請求項3】
前記孔部及び前記スリット部は、前記フロート本体に複数形成されている請求項1又は2に記載の水中加温処理用フロート。
【請求項4】
前記フロート本体は、複数の円弧状の外周面部が周方向に連続して配列されて形成され、前記孔部及び前記スリット部は、周方向に隣接する前記外周面部の端部同士が接して形成される複数の入込部と前記フロート本体の中心部とを結ぶ位置にそれぞれ形成されている請求項2又は3に記載の水中加温処理用フロート。
【請求項5】
前記孔部は、前記入込部に接するように形成され、
前記スリット部は、前記フロート本体に外力が加えられていない状態において閉じている請求項4に記載の水中加温処理用フロート。
【請求項6】
前記外周面部は、隣り合う2つの前記入込部の中央に位置する頂部と前記フロート本体の中心部とを結ぶ線分が長径となる略楕円形状に形成される請求項5に記載の水中加温用フロート。
【請求項7】
前記フロート本体は、中心部を含む中央フロート部と該中央フロート部の外周に配置される外周フロート部とを備え、
前記外周フロート部は、複数の前記孔部及び複数の前記スリット部を有し、
前記中央フロート部は、前記中心部に形成された1つの前記孔部及び前記スリット部を有すると共に、前記外周フロート部に対して着脱可能に構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の水中加温処理用フロート。
【請求項8】
直線状の分割面で分割された一対の分割フロート部により構成され水面に浮上可能なフロート本体と、
前記フロート本体における前記一対の分割フロート部の前記分割面が互いに当接した状態で該一対の分割フロート部同士を結合及び分離可能とする分割フロート部結合分離部と、
前記一対の分割フロート部それぞれの前記分割面に前記フロート本体の厚さ方向に貫通して形成され、前記一対の分割フロート部同士を結合した場合に、液体収容容器の外周部を挟持可能な複数の孔部を形成する複数の孔部構成部と、を備える水中加温処理用フロート。
【請求項9】
前記フロート本体は、前記孔部の周囲に形成され該フロート本体の厚さ方向に立ち上がる立上がり部を備える請求項1〜6のいずれかに記載の水中加温処理用フロート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−227552(P2010−227552A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44907(P2010−44907)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】
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