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水中有害イオンの携帯検出方法とその器具
説明

水中有害イオンの携帯検出方法とその器具

【課題】安全な水を必要とするその場で、容易な操作で水中のヒ素など有害なイオンを検出し、その汚染を知ることを方法を提供する。
【解決手段】受水容器2に被試験液が満たされた後,外部から押し込み棒10を押して調整液容器隔膜4を破る。呈色性選択吸着剤であるセンサ材5と被試験液は,検出管全体を軽く振ることで均一となり、対象とする重金属イオンが検出できれば呈色反応を示す。なお,この反応に伴う色調変化を見るためには,検出器1および受水容器は透明もしくは必要部分が見える構造とする。検出器に配置されたカラースケール11との対比により汚染濃度を判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ヒ素などの重金属汚染された可能性ある飲料水から,呈色反応を利用して対象とする重金属の存在の有無やその濃度を比色測定する分析法において,携帯可搬が可能で且つ簡単な操作によって分析することのできる分析機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
厚生省の水質基準(非特許文献1)によれば,飲用可能な水中に溶存する有害性重金属の許容量は対象とする重金属の種類によってそれぞれ(Cd<0.01, Pb<0.01, Cr(6+)<0.05, Hg<0.0005, As<0.01 mg/l)などと規定されている。
【0003】
これらの物質のいずれかがこの基準値を超えた場合,重金属汚染水となる訳であるが,通常,その値が基準値を遥かに超えた高濃度でない限り,一般的にはその汚染水は無味,無臭である。また,これらの重金属が水中にイオンとして溶解している場合,原理的にはそのイオンがある特定の波長の光を吸収するため呈色することになるが,その色調は物質により異なるとともに,色濃度はイオン濃度ばかりではなく,観察水の厚さによって著しく異なって見える。とくに,上記許容量のように微量な濃度領域で,かつ観察水の厚さが薄い場合(例えば,コップ一杯の厚さ程度)では人間の目の感覚よって汚染を検出することは困難と考えられ,その検出に当たっては,高度な分析機器と訓練を経たオペレーターの存在が不可欠の要素となっている。
【0004】
しかしながら,これらの方法は震災、津波、洪水等の災害非常時、あるいは、井戸水や湧き水を使用する一般家庭などにおいては適用困難な方法であり,特別な専門的知識・技術を必要とせず,かつ携帯可能でその場検出することのできる小型の検出・分析機器の開発が強く望まれている。
【0005】
なお,その場検出の観点からすれば,可搬型のエネルギー分散型蛍光エックス線分光分析装置を用いる方法(非特許文献2)や,イオン選択性電極を用いたイオン分析法(特許文献1)などが開発されているが,いずれの場合もその分野における専門知識,オペレーション技術が必要であり,一般の人々が家庭内等で日常的に使用できる技術とは言い難いのが現状である。
【0006】
一方これとは別に,発明者らは,重金属イオンの選択的吸着体を開発するとともに,それらの吸着中には重金属イオンの吸着に伴い呈色反応による色変化が進行し,その色相変化から重金属イオン濃度を精度良く定量出来ることを見出した(非特許文献3)。
【0007】
このような吸着体を使用することにより,特別な分析機器を用いること無く,比色試験によって容易に重金属イオン濃度を測定できることになる。したがって,これらの特性を応用することにより,重金属イオンその場検出が容易な可搬型検出器を構成することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9-89832号報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】環境庁告示第59号 (1974)
【非特許文献2】九州大学中央分析センター報告 第26号(2008)
【非特許文献3】Nanomaterials for Life Sciences Vol 2: NanostructuredOxides. 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら,上記の方法により重金属イオンを検出する場合においても,被試験水のpH調整や反応助剤の添加・混合等の処理が必要であり(例えば,非特許文献3の選択吸着剤を用いたヒ素検出の場合,pHを7以下の酸性とすることが求められている),未経験者が被試験水量に合わせてそれらを調整することはかなり困難であることも事実である。
【0011】
本発明は,重金属イオンの測定を任意の場所において迅速・かつ簡便に行うことのできる小型・軽量機器を提供することを目的にしたものであり,そのためには,被試験水の採取から計量・調合・呈色反応までの全過程を同一容器内で連続的に行うことのできるバッチ方式の採用が有効であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するための機器形態としては,検出管の一部あるいは全体を無色透明な材質(例えばガラス)で構成するとともに,そのサイズを片手で操作可能な大きさ(大略:直径10cm以下,長さ50cm以下,重量5kg以下)とし,その中に呈色反応を示す選択的吸着剤(固形センサ)を配した無色透明な小容器(以下受水容器2)を設置し,該固形センサの色相変化により目的とする重金属イオンの検出を行う。その際,被試験水の採取量を一定とし,その採取量に見合った量の調整液(pH調整や補助成分添加に使用)を予めカートリッジとして準備する(以下調整液容器3)。この両者の内容物を混合することにより,選択的吸着剤の呈色環境に適した水溶液条件を検出管内に構築する。重金属イオンの有無あるいはその濃度はこれらの操作によって得られた色相変化を基準となるカラースケールと対比することにより判定する。
【0013】
被試験水量を一定にするには,検出管内部に一定容積の受水容器2を配置し,一旦その小容器全体に被試験水が満たされるまで検出管内に被試験水を導入し,その後過剰の被試験水を排出する。検出管内への試験水の導入には,スポイトもしくはシリンダーによる吸引や,上部に空気逃げをつけての検出管内中への被試験水の浸漬,もしくは上部からの被試験水の流し込みなどがある。
【0014】
なお,この受水容器2の底部は,後述する調整液との混合に際しての外部操作により容易に破壊でき,かつ調整液と反応しないもの(例えばプラスチック膜など)であれば材質は問わない。
【0015】
この受水容器2とは別に,調整液を充填した調整液容器3を検出管内に配置する。この調整液容器3の一部分は受水容器2の底部と同様に容易に破ることのできる隔壁をもつ。なお,この隔壁の材質は上記受水容器2の底面と同様の特性を有するものであればよい。被試験水が受水容器2に満たされ,過剰な水が排出された段階で,受水容器2の底部および調整液容器3の隔壁を外部操作によって破壊し,調整液と被試験水とを混合する。この調整液と被試験水との混合に際し,受水容器2と調整液容器3の合算容積よりも大きい容積の小容器を検出管内に配置してもよいが,調整液容器3の上部に破壊用隔壁を設け,その破壊用隔壁を受水容器2の底面となるように配置する(すなわち,受水容器2の底面を調整液容器3の破壊用隔壁と共用する)ことにより,一段の隔壁破壊で受水容器2と調整液容器3を連結させることができる。この調整液容器3の隔壁破壊には,ニードルを上部からノックする方法がある。その際,受水容器2の蓋の役割を果すものをニードル軸部に設けておき,隔壁破壊と同時に受水容器2に蓋をすることで受水容器2底部と調整液容器3の合体した小容器は閉鎖系とすることができ,上下振盪による液の均一化を容易に行うことができる。
【0016】
呈色性の個体重金属イオン選択吸着剤(以下センサ材5)は,容積一定の条件を損なわない範囲であれば,受水容器2底部もしくは調整液容器3のいずれに配置しても良いが,受水容器2に配置しておくと,被試験水に汚染が認められなかった場合には調整液の入った調整液容器3を交換するだけで測定に再利用できる。
上述のように,本発明の測定器は,被試験水の吸引採取から調整液との混合,センサ材の呈色反応までの諸過程に必要な機能を一種の閉鎖系と見なせる検出管内に構築したバッチ方式とすることにより,測定時における検出器外部からの操作を,スポイト吸引による試験水の採取,ニードル押込みによる受水容器の封鎖と調整液容器との一体化,検出器の振盪による試験水と調整液との混合,という極めてシンプルな操作方法としたものであり,片手操作が可能である。
【発明の効果】
【0017】
上記携帯型重金属イオン検出器により,化学に対する専門知識,技術を持たない人でも,安全な飲み水を必要としているその場で,その対象水が有害重金属によって汚染されているか否かを容易に知ることが可能である。
なお,本法に使用される呈色性選択吸着剤としては,As,Cd,Hgなどの有害金属を対象とするものが開発されているが,対象物質に応じた呈色性選択吸着剤を開発することができれば,本法を他の金属ばかりではなく有害有機化合物の検出に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】検出管の基本構造の一例(スポイトタイプ)を図1に示す。 ここで,1は検出管,2は受水容器,3は調整液容器,4は受水容器2と調整液容器3を隔てる調整液容器隔膜,5は重金属イオンを選択吸着する呈色性センサ材,6は調整液容器隔膜破壊用ピン,7は試験水採取用スポイト,8は試験水採取口,9は隔膜破壊用ピンに取り付けられた受水容器2用の測定蓋,10は破壊ピン6を駆動するための押込み棒,11はセンサ材5の発色状態を比較するためのカラースケールである。 なおここで,重金属汚染の有無を判定する場合,広範囲の汚染濃度を判定できるカラースケール11(図2参照)を内蔵することは不要であり,測定対象とする重金属イオンの許容濃度前後の色対象のみをカラースケールとして配置すれば良い。
【図2】一例として,Asイオンの呈色性選択吸着剤をセンサ材とした場合のAsイオン濃度とセンサ材の色相変化との関係を図2に示した。 なお,ここでは,Asイオン濃度:0〜50ppbの範囲について,カラーNo.1〜5に分けて示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
検出管の基本構造を図1のスポイトタイプを例に説明する。
検出管の中には受水容器2と調整液容器3の二つの容器があり,これらは調整液容器3の上部にある調整液容器隔膜で接している。なお,受水容器2は,底面を有さない円筒状とし,その側面をネジ込みあるいは擦り合わせ等により調整液容器3の上部に密着させ,その底面を調整液容器隔膜4と共有することにより,後述するような測定時における隔膜の破壊工程を一段階で行うことができる。
【0020】
さらに,検出管内部には押し込み棒10があり,受水容器2に被試験液が満たされた後,外部から検定者がこの棒を押すなどの行為で調整液容器隔膜4を破ることができる。その時,押し込み棒に付属した測定蓋9が受水容器2に密着して蓋をする構造とすることにより,受水容器2と調整液容器3で形成された空間が密閉され,振盪に際して溶液の外部漏洩が防止される。呈色性選択吸着剤であるセンサ材5は受水容器2の中にあり,押し込み棒を押した後,検出管全体を軽く振ることで均一となった溶液と反応し,対象とする重金属イオンが検出できれば呈色反応を示す。なお,この反応に伴う色調変化を見るためには,検出管および受水容器は透明もしくは必要部分が見える構造とする。検出管の一部に選択吸着剤の呈色反応度を表す基準の色対象(カラースケール11)を配置しておけば汚染の有無を容易に判断することができるとともに,検出管とは別に用意したより詳細なカラースケールと対比することにより汚染濃度を判定することができる。
なお,本検出器による測定操作は,スポイトにより被試験水を吸引して受水容器2に被試験液を満たした後,スポイト部を介して押し込み棒10を下方に押込む(これにより,測定蓋9による受水容器2の封鎖,調整液容器隔膜4の破壊および受水容器2と調整液容器3の一体化が生じる)。ついで,検出管を上下等に振盪し,試験水と調整液とを混合した後,所定の時間経過後,センサ材5の色相変化をチェックする。
このように、本検出器において必要とされる外部からの測定操作は、スポイトによる被試験水を吸引、スポイト部を介して押し込み棒の押込および検出管の振盪、センサ材色相判定といった単純なものであり、その操作には特段の知識・技術を必要としないものである。
【実施例】
【0021】
有害重金属としてヒ素を対象とした検出器の実施例を示す。ヒ素の呈色性選択吸着剤としては,非特許文献3(ヒ素イオン吸着素子と,それを用いた水中のAsイオン濃度検出方法)にあるTiOナノマテリアル基盤のヒ素(V)イオン光学センサを使用した。
本試験に使用した検出管は外径約12mm,長さ約100mmのスポイトタイプのものであり,受水容器および調整液容器の外径はいずれも約8mmで両容器の合計内容積は約0.5mlである。また,測定に使用したカラースケールを図2に示した。
【0022】
試験液のヒ素(V)イオン濃度を種々変化させた場合における発色状態を目視検査により測定した結果を表1に示した。
【0023】
【表1】


ここで,本発明の目的の一つが一般人にも容易に測定可能であることに鑑み,この発色状態の目視検査(発色状態とカラースケールとの比較)に際しては,専門知識を有さない一般人3名が各試験条件(ヒ素(V)イオン濃度)について各々繰返し3回実施したものである。
【0024】
これらの結果から判るように,本発明の測定法および測定器具を使用することにより,専門知識を有さない一般人であっても有害重金属イオンの有無ばかりではなく,その濃度をも極めて容易に測定できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は,飲料水中に含まれる人体に有害な重金属イオンのその場検出を目的に開発した小型の携帯検出器であり,その特徴は,測定に当たって特別な付属設備・機器等を必要とせず,かつ,その測定操作にも専門性を必要としないというものである。本発明を利用することにより,世界的に課題となっている水資源の開発・利用促進を進展できるばかりではなく,僻地,被災地などにおける飲み水の安全性向上に大きく寄与できるものと考えられる。
【符号の説明】
【0026】
1 検出器
2 受水容器
3 調整液容器
4 調整液容器隔膜
5 センサ材
6 破壊ピン
7 スポイト
8 水採取口
9 測定蓋
10 押込み棒
11 カラースケール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の重金属イオンの測定において,呈色反応性選択吸着剤を用いてその色相変化を利用したことを特徴とする測定方法。
【請求項2】
請求項1の測定方法を適用する重金属イオン測定器であって、被試験水の採取から計量・調合・呈色反応までの全過程を同一容器内で行うことのできるバッチ方式としたことを特徴とする重金属イオン測定器。
【請求項3】
請求項1の測定方法を適用する重金属イオン測定器であって、測定を簡単な外部操作のみによって行うことができるように構成したことを特徴とする重金属イオン測定器。
【請求項4】
請求項1の測定方法を適用する重金属イオン測定器であって、測定を片手操作で行うことができるよう,小型化したことを特徴とする重金属イオン測定器。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−208105(P2012−208105A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224432(P2011−224432)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】