説明

水中距離計測システム

【課題】水中浮遊物がレーザー光である伝送路上に存在しても、これの影響を最小限にすることにより、計測可能な距離を長くとることができ、更に安定して距離計測することができる水中距離計測システムを提供する。
【解決手段】第一の水中機器103と第二の水中機器123間の距離を計測する水中距離計測システムであって、第一の水中機器103は、送信レーザー光を送信する第一のレーザー送信機A104、送信レーザー光が水中浮遊物により反射された反射送信レーザー光を受ける第一のレーザー受信機C109、及び反射送信レーザー光の光量により送信レーザー光のビーム口径を変化させる第一のビーム口径可変部A105を備え、第二の水中機器123は、送信レーザー光を受信し、送信レーザー光を受信したことを示すタイミング情報を発生する第二のレーザー受信機A126を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中機器間で距離計測を行う水中距離計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水中における距離計測は、音響を使用して行われるのが通常であった。
例えば、北海道開発局で行われた平成20年度北海道開発技術研究発表会にて(独)土木研究所が、水中地形計測技術の開発について−マルチビームソナーを用いた陸上からの計測手法の発表があり、現在市販されている音響を使用した距離計測の誤差に関して発表(下記URL参照)があった。
http://www.hkd.mlit.go.jp/topics/gijyutu/giken/h20_pre_intra/pdf_files_h20/gijutsu/GT-20.pdf
この発表において、最も分解能が高い機材は、最大距離120m時の分解能として6mmと記載されている。また100mの距離を測定した実測データは、標準偏差0.33mと記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】平成20年度北海道開発技術研究発表会論文:技−20「水中地形計測技術の開発について―マルチビームソナーを用いた陸上からの計測手法―」
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−229622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
海底地震予知のためには、年間数cm〜数十cm程度のプレートの移動量を正確に計測する必要があるが、音響計測によるには上記のように精度が不足している。また資源探査、音響合成開口アンテナ等、水中で2点間の距離を数mm〜数cmの精度で計測するニーズがあるが、音響計測によるには同様に精度が不足している。
一方、上記精度を得られる手段として単純なレーザー光による距離計測が考えられるが、水中での使用時においては伝送路上に存在する水中の浮遊物によって距離計測が妨げられることがあった(特許文献1参照)。
【0006】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、水中浮遊物がレーザー光の伝送路上に存在しても、これの影響を最小限にすることにより、計測可能な距離を長くとることができ、更に安定して距離計測することができる水中距離計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る水中距離計測システムは、送信すべき信号を送信レーザー光として、第一の水中機器から第二の水中機器に送信し、さらに前記送信レーザー光を受けて前記第二の水中機器から前記送信レーザー光を受信したことを示すタイミング情報を前記第一の水中機器に送信することにより、前記第一の水中機器と前記第二の水中機器間の距離を計測する水中距離計測システムであって、前記第一の水中機器は、前記送信レーザー光を送信するレーザー送信機、前記送信レーザー光が水中浮遊物により反射された反射送信レーザー光を受ける第一のレーザー受信機、及び前記反射送信レーザー光の光量により前記送信レーザー光のビーム口径を変化させる第一のビーム口径可変部を備え、前記第二の水中機器は、前記送信レーザー光を受信し、前記タイミング情報を発生する第二のレーザー受信機を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水中距離計測システムによれば、水中浮遊物が送信レーザー光である伝送路上に存在しても、水中浮遊物の影響を受け難いビーム口径、及び拡散角度を制限した太い伝送路が水中で確保できるため、対向する水中機材で受光するエネルギー密度を高めることができ、最大の距離計測性能が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1による水中距離計測システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の課題を示す概念図である。
【図3】本発明の課題を示す概念図である。
【図4】本発明の課題を示す概念図である。
【図5】本発明の効果を示す概念図である。
【図6】本発明の効果を示す概念図である。
【図7】実施の形態2による水中距離計測システムの構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態3による水中距離計測システムの構成を示すブロック図である。
【図9】実施の形態4による水中距離計測システムの構成を示すブロック図である。
【図10】本発明のビーム口径を変化させる具体例を示す概念図である。
【図11】本発明のビーム口径を変化させる具体例を示す概念図である。
【図12】本発明のビーム口径を変化させる具体例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明はレーザー光による水中機器間の距離計測システムに関するものであるが、ここで、双方の水中機器の距離計測機器において、少なくともレーザー光による送信または受信が水中で実施されるものは、たとえ送受信機以外の機器が水上にあっても、以下水中機器と称することとする。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による水中機器間の距離計測システムの構成例を示すブロック図である。
図に示すように、本実施の形態1による水中距離計測システムは、一方の耐圧容器102に内蔵された第一の水中機器103内のレーザー送信機A104で作られた送信レーザー光を、ビーム口径可変部A105及びレーザー指向制御部A106を通して、光学ウインドA101から送信し、また他方の耐圧容器122に内蔵された光学ウインドB121を通して上記のレーザー光を受け、第二の水中機器123内の受光指向制御部A124及びレーザー集光部A125を経てレーザー受信機A126にて受信し、さらにレーザー受信機A126は上記のレーザー光を受信したことを示すタイミング情報を、ケーブル127を通して第一の水中機器103内のデータ処理部110に送る構成となっている。
【0012】
ここで第一の水中機器103と第二の水中機器123間の距離は、第一の水中機器103内のレーザー送信機A104からレーザー光が送信された時からデータ処理部110において受信確認のタイミング情報信号を受け取るまでの時間差に対し、第二の水中機器内での信号処理時間並びにケーブル127内の伝達時間を差し引いた水中でのレーザー光伝達時間により算出される。
【0013】
第一の水中機器103は、送信すべきレーザー光をまずレーザー送信機A104において発生させ、ビームエキスパンダ等で構成されるビーム口径可変部A105でビーム口径を例えば1mm〜1000mm等の範囲で拡大または縮小し、更に拡散角度を例えば±10度以内に制限したレーザー光信号とされる。
【0014】
この拡散角度を変化させるのには、例えばカメラのズームレンズは複数のレンズから構成されるが、遠くを見る場合は視野角を狭めるため複数のレンズの間隔を一般的には広げ、近くを見る場合は視野角を広げるため複数のレンズの間隔を狭める動きを行うが、これと同じ動きをビーム口径可変部A105で行うことで、拡散角度を可変にすることができる。
【0015】
ここでビーム口径の拡大率または縮小率に関して説明する。まず第二の水中機器123の方向に指向制御するレーザー指向制御部A106から送信レーザー光が第二の水中機器123に送信され、この送信レーザー光が水中浮遊物111による反射された場合、その反射レーザー光が第一の水中機器103の受光指向制御部B107で受光される。
さらに受光された反射送信レーザー光は、レーザー集光部B108で集光されてレーザー受信機C109にて受信され、その受信光量が最も少なくなるビーム口径になるようビーム口径可変部A105にて制御される。また、レーザー指向制御部A106において受光した光量が少なくなるよう発光方向が調整され指向制御される。
【0016】
次に具体的にビーム口径の拡大または縮小動作について説明する。
まず受光指向制御部B107において受光する水中浮遊物111からの反射送信レーザー光はレーザービーム幅と水中浮遊物の大きさが同じときに最大となる。そのときには例えば、送信レーザー光のビーム幅を数倍に拡大して複数回送信し、受光指向制御部B107における反射送信レーザー光の受光強度が最小となる範囲を求める。その範囲の中でなるべくビーム口径が小となるものが選択される。
【0017】
普通にはビーム口径を大きくした場合、水中浮遊物111からの反射光は比例的に少なくなる傾向にあるが、一般的に水中においては、複数の水中浮遊物が存在するのが通常であるためビーム幅の拡大によってその中に含まれる水中浮遊物111の数も増大することになり、ある最小値を示すことがある。そのときにはその反射による受光強度が最小値を示すビーム幅が選択される。最小値が無いまたはほとんど変化のない場合は、水中浮遊物111の10倍程度のビーム幅が選択される。この場合には水中浮遊物111が1個あたり、10%のエネルギーを消費することになるが、全体の回線設計上において小さな値であり無視することが可能である。
【0018】
ここでビーム口径可変部A105は、実際には複数のレンズから構成されるが、最も単純な、レンズ2枚の例を図10に示しており、このレンズの間隔を広げると図11に示す通りビーム幅が広くなり、レンズ間隔を狭めると図12に示す通りビーム幅を狭くすることができる。
【0019】
また、第二の水中機器123は、第一の水中機器103から送信される適切なビーム口径及び拡散角度にされた送信レーザー光を最適な受光方向に指向制御を行う受光指向制御部A124、受光したビーム口径が拡大した送信レーザー光を集光するレーザー集光部A125、及び集光された送信レーザー光を受信するレーザー受信機A126を備え、受信した送信レーザー光のタイミング情報を、ケーブル127を介して第一の水中機器103内のデータ処理部110へ送るように構成されている。
【0020】
ここで、第一の水中機器103において送信レーザー光の送信方向を制御するレーザー指向制御部A106は比較的安定した測定条件下、例えば水流がほとんど無い場合や、透明度が高くカメラ等により容易に目的物の位置を捕捉できる場合等においては、備えなくても本来の目的を達成することができる。これは第二の水中機器123における受光指向制御部A124においても同様のことが言える。またさらに第一の水中機器103において反射送信レーザー光を受ける受光指向制御部B107においても水中浮遊物111の方向に指向した方が精度の向上は認められるが、特に無くとも乱反射される反射送信レーザー光のみでも本発明の目的は達成することができる。
【0021】
さらに第一の水中機器103及び第二の水中機器123におけるレーザー集光部B108,A125においても、比較的水中浮遊物111の無い測定条件下においては、送信レーザー光のビーム幅は絞ることができるので、あえてレーザー集光部を備えていなくとも本発明の目的を達成することができる。
また図1においては、タイミング情報をケーブル127で送信する構成を示したが、このケーブルは光ケーブルでも良いし、通常の電気信号を伝達する信号ケーブルであってもよい。さらには、従来の伝達手段であった音響によりタイミング情報を送信する構成でも本発明の目的を達成することができる。
【0022】
図2〜図6は、本発明におけるビーム口径可変部A105の効果を説明するための概念図である。
図2は、水中浮遊物111の大きさが第一の水中機器103から出力されている送信レーザー光の口径より大きい、または等しい場合を示しており、水中浮遊物111により送信レーザー光が遮断され、第二の水中機器123に送信レーザー光が届かず、距離計測が不能となる。
図3は、第一の水中機器103から送信レーザー光を拡散させ、第二の水中機器123へ送信レーザー光を照射させているが、送信レーザー光が拡散しているため、第二の水中機器123に到達する光量が減少する。また、水中浮遊物111の影響によって、第二の水中機器123に到達する光量が減少する。
図4は、水中浮遊物111が第一の水中機器103に近づいた場合をイメージしており、この場合、水中浮遊物111により送信レーザー光が遮断され、第二の水中機器123に送信レーザー光が届かず、距離計測が不能となる。
【0023】
以上の図2〜図4のような場合において本発明を適用したときに得られる効果を図5及び図6に示す。
図5は水中浮遊物111に対して送信レーザー光のビーム幅を大きくしたときの効果を示している。ここで経験的に送信レーザー光のビーム口径を水中浮遊物111の10倍にした場合には、1/10のレーザー光が遮られるだけとなり、この程度であれば距離計測に影響はほとんど認められない。しかしながら送信レーザー光のビーム口径を極端に大きくすると、それに伴い水中機器のサイズが大きくなるため実用的でなくなる。一般的な水中浮遊物111の大きさが通常の海洋等であれば100mm以下であるのがほとんどなので、従ってビーム口径はその10倍の1000mmを上限とするのが適切である。
またビーム口径拡散角度については、想定される測定距離が数百m以内である場合には、図6に示すように10deg以内が適切で、その範囲内であれば第二の水中機器123へ到達する送信レーザー光の強度を高めることができ、距離計測性能が向上する。
【0024】
以上のように本実施の形態1に係わる水中距離計測システムは、送信すべき信号を送信レーザー光として、第一の水中機器103から第二の水中機器123に送信し、さらに送信レーザー光を受けて第二の水中機器123から送信レーザー光を受信したことを示すタイミング情報を第一の水中機器103に送信することにより、第一の水中機器103と第二の水中機器123間の距離を計測する水中距離計測システムであって、第一の水中機器103は、送信レーザー光を送信する第一のレーザー送信機A104、送信レーザー光が水中浮遊物111により反射された反射送信レーザー光を受ける第一のレーザー受信機C109、及び反射送信レーザー光の光量により送信レーザー光のビーム口径を変化させる第一のビーム口径可変部A105を備え、第二の水中機器123は、送信レーザー光を受信し、タイミング情報を発生する第二のレーザー受信機A126を備えた基本的構成を有している。
このような構成により、水中浮遊物が送信レーザー光の伝送路上に存在しても、水中浮遊物の影響を受け難いビーム口径、及び拡散角度を制限した太い伝送路が水中で確保できるため、対向する水中機材で受光するエネルギー密度を高めることができ、最大の距離計測性能が確保できる。
【0025】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2による水中距離計測システムの構成例を示すブロック図である。
前述の実施の形態1は、第一の水中機器103から第二の水中機器123に送信レーザー光を送信し、第二の水中機器123で送信レーザー光を受信したことを示すタイミング情報をケーブル127にて第一の水中機器103に送り返し、第一の水中機器103のデータ処理部110にて、第一の水中機器103と第二の水中機器123間の距離を計測するものであったが、それに対して本実施の形態2では、第二の水中機器123から第一の水中機器103にタイミング情報をケーブル127で送信するのではなく、第二の水中機器123から第一の水中機器103へタイミング情報を載せたタイミング情報レーザー光を送信し、第一の水中機器103内のデータ処理部110で、受信したタイミング情報に基づいて第一の水中機器103と第二の水中機器123間の距離を計測するものである。
【0026】
具体的には、第一の水中機器103は、送信すべき送信レーザー光をレーザー送信機A104で発生させ、ビームエキスパンダ等のビーム口径可変部A105でビーム口径を拡大または縮小させ、更に拡散角度を±10度以内に制限した送信レーザー光として光学ウインドA101を通して送信している。
ここでビーム口径の拡大率または縮小率に関しては、第二の水中機器123の方向に送信レーザー光を指向制御するレーザー光指向制御部A106から第二の水中機器123に送信した送信レーザー光が水中浮遊物111によって反射された場合、その反射レーザー光が第一の水中機器103の受光指向制御部B107で受光される。
さらに受光された反射送信レーザー光は、レーザー集光部B108で集光されてレーザー受信機C109にて受信され、その受信光量が最も少なくなるビーム口径になるようビーム口径可変部A105にて制御される。また拡散角度についても適切な角度に調整される。
【0027】
また、第二の水中機器123において、第一の水中機器103から送信されたビーム口径が拡大または縮小された送信レーザー光を、光学ウインドB121を経て最適な受光方向に指向制御を行う受光指向制御部A124で受光し、次いで受光したビーム口径が拡大したレーザー光をレーザー集光部A125で集光し、さらに集光された送信レーザー光をレーザー受信機A126で受信する。この受信した送信レーザー光のタイミング情報をレーザー送信機B128でタイミング情報レーザー光として発生させる。
さらにこのタイミング情報レーザー光は、ビームエキスパンダ等のビーム口径可変部B129でビーム口径を拡大または縮小され、更に拡散角度を±10度以内に制限されたタイミング情報レーザー光として光学ウインドB121を通して送信される。
【0028】
ここでビーム口径の拡大率または縮小率に関しては、第一の水中機器103の方向に指向制御するレーザー光指向制御部B130から第一の水中機器103に送信したレーザー光が水中浮遊物112によって反射した場合、この反射タイミング情報レーザー光を第二の水中機器123の受光指向制御部B131で受光する。
受光された反射タイミング情報レーザー光は、レーザー集光部D132を経由してレーザー受信機B133にて受信され、その受信光量が少なくなるビーム口径になるようビーム口径可変部B129にて制御される。また拡散角度についても適切な角度に調整される。
【0029】
第一の水中機器103では、第二の水中機器123から送信されたビーム口径が拡大または縮小されたタイミング情報レーザー光を最適な受光方向に指向制御を行う受光指向制御部C113で受光し、さらに受光したビーム口径が拡大したレーザー光をレーザー集光部C114で集光し、さらに集光されたタイミング情報レーザー光をレーザー受信機D115で受信し、受信したタイミング情報をデータ処理部110に送ることで、第一の水中機器103と第二の水中機器123間の距離を計算する。
【0030】
以上のように本実施の形態2によれば、実施の形態1における基本的構成に加えて、さらに第二の水中機器123において、タイミング情報をタイミング情報レーザー光として送信するための第二のレーザー送信機B128、タイミング情報レーザー光が水中浮遊物により反射された反射タイミング情報レーザー光を受ける第三のレーザー受信機B133、及び反射タイミング情報レーザー光の光量によりタイミング情報レーザー光のビーム口径を変化させる第二のビーム口径可変部B129を備え、第一の水中機器103において、タイミング情報レーザー光を受ける第四のレーザー受信機D115を備えることにより、第一の水中機器103と第二の水中機器123との間をケーブルで接続せずとも、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0031】
実施の形態3.
図8は、本発明の実施の形態3による水中距離計測システムの構成例を示すブロック図である。
前述の実施の形態2は、第一の水中機器103内に、浮遊物111からの反射送信レーザー光を受信するための、レーザー指向制御部B107、レーザー集光部B108、レーザー受信機C109及び第二の水中機器123からのタイミング情報レーザー光を受光するための受光指向制御部C113、レーザー集光部C114、レーザー受信機D115の2系統の受信系を有しており、第二の水中機器123も同様に2系統の受信系を有しているが、本実施の形態3においては、第一の水中機器103及び第二の水中機器123において2系統の受信系を共通化し、1系統化している。
【0032】
すなわち、図8に示すように第二の水中機器123は、タイミング情報をタイミング情報レーザー光として送信するためのレーザー送信機B126を備え、タイミング情報レーザー光が水中浮遊物111により反射された反射タイミング情報レーザー光を、送信レーザー光を受信するレーザー受信機A126で受け、受信された反射タイミング情報レーザー光の光量によりタイミング情報レーザー光のビーム口径をビーム口径可変部B129により変化させると共に、第一の水中機器103は、タイミング情報レーザー光を受けるレーザー受信機C109を備えている。
【0033】
本実施の形態3においては、基本的に実施の形態2と同じ動作を行うので詳細な説明は省略するが、水中浮遊物からの反射光と水中機器からの送信光の区別方法としては、急激に測定距離(時間軸)が変動した場合は、水中浮遊物からの反射と判断できるため、測定距離(時間軸)にゲートを設けることで区別する方式や、レーザー受信機への入射角度が異なることを利用して光学系で分離する方式等がある。
【0034】
以上のように本実施の形態3によれば、実施の形態1における基本的構成に加えて、さらに第二の水中機器123は、タイミング情報をタイミング情報レーザー光として送信する第二のレーザー送信機B128を備え、タイミング情報レーザー光が水中浮遊物111により反射された反射タイミング情報レーザー光を第二のレーザー受信機A126で受け、受信された反射タイミング情報レーザー光の光量によりタイミング情報レーザー光のビーム口径を第二のビーム口径可変部B129により変化させると共に、第一の水中機器103は、タイミング情報レーザー光を受ける第三のレーザー受信機C109を備えることにより、実施の形態2における2系統の受信系を共通化し、1系統化することができるので、より簡単な構成で実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【0035】
実施の形態4.
図9は、実施の形態4による水中距離計測システムの構成例を示すブロック図である。
図に示すように、本実施の形態4による水中距離計測システムは、光学ウインドA101を取り付けた耐圧容器102に内蔵された第一の水中機器103から光学ウインドB121を取り付けた耐圧容器122に内蔵された第二の水中機器123に、送信レーザー光を送信し、第二の水中機器123で受光した送信レーザー光をミラー部134で反射させ、受光指向制御部A124経由で第一の水中機器103へ送り返し、第一の水中機器103内のレーザー指向制御部A106、レーザー集光部C114を経由してレーザー受信機D115経由で、データ処理部110にタイミング情報として送り、これにより距離計算を行うものである。
【0036】
第一の水中機器103は、送信すべき送信レーザー光をレーザー送信機104で発生させ、ビームエキスパンダ等のビーム口径可変部A105でビーム口径を適切な範囲で拡大または縮小し、更に拡散角度を±10度以内に制限したレーザー光信号としている。またビーム口径の拡大率に関しては、第二の水中機器123の方向に指向制御するレーザー光指向制御部A106から第二の水中機器123に送信した送信レーザー光が水中浮遊物111によって反射した場合、この反射送信レーザー光を第一の水中機器103のレーザー指向制御部A106で受光し、受光した反射送信レーザー光をレーザー集光部C114を経由してレーザー受信機D115にて受信し、その受信光量が少なくなるビーム口径になるよう制御される。
なお、水中浮遊物111からの反射光と水中機器123からのレーザー光は、前述の実施の形態3と同様にして区別することができる。
【0037】
以上のように本実施の形態4に係わる水中距離計測システムは、送信すべき信号を送信レーザー光として、第一の水中機器103から第二の水中機器123に送信し、さらに送信レーザー光を受けて第二の水中機器123から送信レーザー光を受信したことを示すタイミング情報を第一の水中機器103に送信することにより、第一の水中機器103と第二の水中機器123間の距離を計測する水中距離計測システムであって、第一の水中機器103は、送信レーザー光を送信するレーザー送信機A104、送信レーザー光が水中浮遊物111により反射された反射送信レーザー光を受けるレーザー受信機D115、及び反射送信レーザー光の光量により送信レーザー光のビーム口径を変化させるビーム口径可変部A105を備え、第二の水中機器123は、送信レーザー光を反射させるミラー部134を備え、第一の水中機器103は、反射された送信レーザー光をレーザー受信機D115によりタイミング情報として受けるように構成されたもので、第二の水中機器123において送信レーザー光を反射させるミラー部134を用いることにより、より簡単な構成で実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、水中機器間において距離計測する場合、水中浮遊物の影響を少なくでき、また高精度で計測できるため、海底地殻変動調査、資源探査機器の性能向上、音響通信装置の合成開口アンテナ位置計測、複数機器を同時運用時する場合の位置判定に有効である。
【符号の説明】
【0039】
101 光学ウインドA
102 耐圧容器
103 第一の水中機器
104 レーザー送信機A
105 ビーム口径可変部A
106 レーザー指向制御部A
107 受光指向制御部B
108 レーザー集光部B
109 レーザー受信機C
110 データ処理部
111 水中浮遊物
112 水中浮遊物
113 受光指向制御部C
114 レーザー集光部C
115 レーザー受信機D
121 光学ウインドB
122 耐圧容器
123 第二の水中機器
124 受光指向制御部A
125 レーザー集光部A
126 レーザー受信機A
127 ケーブル
128 レーザー送信機B
129 ビーム口径可変部B
130 レーザー指向制御部B
131 受光指向制御部B
132 レーザー集光部D
133 レーザー受信機B
134 ミラー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信すべき信号を送信レーザー光として、第一の水中機器から第二の水中機器に送信し、さらに前記送信レーザー光を受けて前記第二の水中機器から前記送信レーザー光を受信したことを示すタイミング情報を前記第一の水中機器に送信することにより、前記第一の水中機器と前記第二の水中機器間の距離を計測する水中距離計測システムであって、
前記第一の水中機器は、前記送信レーザー光を送信する第一のレーザー送信機、前記送信レーザー光が水中浮遊物により反射された反射送信レーザー光を受ける第一のレーザー受信機、及び前記反射送信レーザー光の光量により前記送信レーザー光のビーム口径を変化させる第一のビーム口径可変部を備え、
前記第二の水中機器は、前記送信レーザー光を受信し、前記タイミング情報を発生する第二のレーザー受信機を備えたことを特徴とする水中距離計測システム。
【請求項2】
前記第一の水中機器と前記第二の水中機器間はケーブルによって連結され、前記タイミング情報は前記第二の水中機器の前記第二のレーザー受信機より前記第一の水中機器に前記ケーブルにより送信されることを特徴とする請求項1に記載の水中距離計測システム。
【請求項3】
前記第二の水中機器は、前記タイミング情報をタイミング情報レーザー光として送信する第二のレーザー送信機、前記タイミング情報レーザー光が水中浮遊物により反射された反射タイミング情報レーザー光を受ける第三のレーザー受信機、及び前記反射タイミング情報レーザー光の光量により前記タイミング情報レーザー光のビーム口径を変化させる第二のビーム口径可変部を備え、
前記第一の水中機器は、前記タイミング情報レーザー光を受ける第四のレーザー受信機を備えたことを特徴とする請求項1に記載の水中距離計測システム。
【請求項4】
前記第二の水中機器は、前記タイミング情報をタイミング情報レーザー光として送信する第二のレーザー送信機を備え、前記タイミング情報レーザー光が水中浮遊物により反射された反射タイミング情報レーザー光を前記第二のレーザー受信機で受け、受信された前記反射タイミング情報レーザー光の光量により前記タイミング情報レーザー光のビーム口径を第二のビーム口径可変部により変化させると共に、
前記第一の水中機器は、前記タイミング情報レーザー光を受ける第三のレーザー受信機を備えたことを特徴とする請求項1に記載の水中距離計測システム。
【請求項5】
送信すべき信号を送信レーザー光として、第一の水中機器から第二の水中機器に送信し、さらに前記送信レーザー光を受けて前記第二の水中機器から前記送信レーザー光を受信したことを示すタイミング情報を前記第一の水中機器に送信することにより、前記第一の水中機器と前記第二の水中機器間の距離を計測する水中距離計測システムであって、
前記第一の水中機器は、前記送信レーザー光を送信するレーザー送信機、前記送信レーザー光が水中浮遊物により反射された反射送信レーザー光を受けるレーザー受信機、及び前記反射送信レーザー光の光量により前記送信レーザー光のビーム口径を変化させるビーム口径可変部を備え、
前記第二の水中機器は、前記送信レーザー光を反射させるミラー部を備え、
前記第一の水中機器は、反射された前記送信レーザー光を前記レーザー受信機により前記タイミング情報として受けることを特徴とする水中距離計測システム。
【請求項6】
前記第一の水中機器は、前記第一のビーム口径可変部に接続され、前記送信レーザー光の送信方向を制御するレーザー指向制御部を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の水中距離計測システム。
【請求項7】
前記第二の水中機器は、前記第二のビーム口径可変部に接続され、前記タイミング情報レーザー光の送信方向を制御するレーザー指向制御部を備えたことを特徴とする請求項3または4に記載の水中距離計測システム。
【請求項8】
前記第一の水中機器は、前記反射送信レーザー光を受け受光方向を制御する受光指向制御部を前記レーザー受信機の前に備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の水中距離計測システム。
【請求項9】
前記第二の水中機器は、前記反射タイミング情報レーザー光を受け受光方向を制御する受光指向制御部を前記レーザー受信機の前に備えたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の水中距離計測システム。
【請求項10】
前記第一の水中機器及び前記第二の水中機器は、前記レーザー受信機の前段に、受信するレーザー光をあらかじめ集光するレーザー集光部を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の水中距離計測システム。
【請求項11】
前記第一の水中機器及び前記第二の水中機器は、前記ビーム口径可変部により送信するレーザー光の拡散角度を制御することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の水中距離計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−191250(P2011−191250A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59286(P2010−59286)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(394025094)三菱電機特機システム株式会社 (24)
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【Fターム(参考)】