説明

水中集魚灯

【課題】構造が比較的簡単で、それにより製造コストも低廉化でき、LED基板の裏面に放熱装置を設ける必要がなく、もってLED集魚灯など装置の大型化、複雑化を招来せず、また、漏電を防止でき、もってより深いところへ集魚灯を投入しても耐圧の面などからも全く問題のない水中水魚灯を提供する。
【解決手段】ケース1と、ケース1内に取り付けられた発光体とを有して構成され、水中に水没させて、発光させ、光によって集魚する水中集魚灯において、発光体をLED2により構成してケース1内に取り付け、ケース1内には絶縁性を有し、透明性を有する液体3をLED2及び配線部に接触状態にして充填してなり、液体3をLED2の冷却部材とすると共に、所定形状の透明性を有するケース1と、ケース1内の液体3をLED2からの光を集光させて外部へ投射するレンズ部材4として機能させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中集魚灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中集魚灯とは、水中内に水没させ、光によって魚を集める装置を指標する。すなわち、集まった魚を捕獲する目的で光を放出するものである。
この水中集魚灯には、従来では、例えばメタルハライドランプが用いられてきた。しかし、かかるメタルハライドランプでは、消費電力が大きく、このランプを点灯するために漁船のエンジンをかけ続けなければならず、消費エネルギーが大きいとの課題があった。
【0003】
そして、近年、地球温暖化問題からエコ問題への意識が高まり、特にCO削減の観点から、従来のメタルハライドランプを消費電力の少ない例えばLED照明に変えるという取り組みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−21203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、現在通常一般に実用化されている、いわゆるLED集魚灯は、光の集光、放熱、耐久性に課題がある。
【0006】
例えば、光の集光にはレンズが用いられているが、構造が複雑になること、及び製造コストが高価になってしまうなどの点で大きな課題があった。 例えば、LEDが発光する際に発生する熱の放熱に関しては、一般的にLED基板の裏面に放熱装置を設ける必要があり、もってLED集魚灯など装置の大型化、複雑化を招来していた。
【0007】
また、LEDなど電気部品部分は海水の浸入による漏電を防ぐため密閉された空間を設ける必要があった。しかし、この空間が存在するため、より深いところへ集魚灯を投入することは耐圧の面などでの課題があった。
【0008】
かくして、本発明は前記従来の課題に対処すべく創案されたものであり、構造が比較的簡単で、それにより製造コストも低廉化でき、例えば、LEDが発光する際に発生する熱の放熱に関して、LED基板の裏面に放熱装置を設ける必要がなく、もってLED集魚灯など装置の大型化、複雑化を招来せず、また、LEDなど電気部品部分は海水の浸入による漏電を防ぐため密閉された空間を設ける必要なく、漏電を防止でき、もってより深いところへ集魚灯を投入しても耐圧の面などからも全く問題のない水中水魚灯を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による水中水魚灯は、
ケースと、該ケース内に取り付けられた発光体とを有して構成され、水中に水没させて、発光させ、該光によって集魚する水中集魚灯において、
前記発光体をLEDにより構成して前記ケース内に取り付け、ケース内には絶縁性を有し、透明性を有する液体を前記LED及び配線部に接触状態にして充填してなり、
前記液体をLEDの冷却部材とすると共に、所定形状の透明性を有するケースと、該ケース内の液体をLEDからの光を集光させて外部へ投射するレンズ部材として機能させた、
ことを特徴とし、
または、
ケースと、該ケース内に取り付けられた発光体とを有して構成され、水中に水没させて、発光させ、該光によって集魚する水中集魚灯において、
前記発光体をLEDにより構成して前記ケース内に取り付け、ケース内には絶縁抵抗が10の8乗以上、好ましくは10の10乗以上の絶縁性を有し、透明性を有する液体を前記LED及び配線部に接触状態にして充填してなり、
前記液体をLEDの冷却部材とすると共に、所定形状の透明性を有するケースと、該ケース内の液体をLEDからの光を集光させて外部へ投射するレンズ部材として機能させた、
ことを特徴とし、
または、
ケースと、該ケース内に取り付けられた発光体とを有して構成され、水中に水没させて、発光させ、該光によって集魚する水中集魚灯において、
前記発光体をLEDにより構成して前記ケース内に取り付け、ケース内には絶縁抵抗が10の8乗以上、好ましくは10の10乗以上の絶縁性を有し、粘度は、動粘性係数が13mm2/s以上であり、かつ透明性を有する液体を前記LED及び配線部に接触状態にして充填してなり、
前記液体をLEDの冷却部材とすると共に、所定形状の透明性を有するケースと、該ケース内の液体をLEDからの光を集光させて外部へ投射するレンズ部材として機能させた、
ことを特徴とし、
または、
前記ケース内でのLEDの取り付け位置、ケースの外形形状は、該水中集魚灯が要求される配光特性に合わせて任意位置に取り付け決定できる、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明による水中水魚灯であれば、製造コストも低廉化できる比較的簡易な構造で、また例えば、LEDが発光する際に発生する熱の放熱に関して、LED基板の裏面に放熱装置を設ける必要がなく、もってLED集魚灯など装置の大型化、複雑化を招来せず、また、LEDなど電気部品部分は海水の浸入による漏電を防ぐため密閉された空間を設ける必要なく漏電を防止でき、もってより深いところへ集魚灯を投入しても耐圧の面などからも全く問題のないなど優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施例を示す説明図である。
【図2】本発明の第2実施例を示す説明図である。
【図3】本発明の第3実施例を示す説明図である。
【図4】本発明の第4実施例を示す説明図である。
【図5】本発明の第5実施例を示す説明図である。
【図6】本発明の第6実施例を示す説明図である。
【図7】シリコンゴムの粘度依存性を示す実験を説明したグラフである。
【図8】本発明を使用した場合の温度変化を示す実験データである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の第1実施例である。
ケース1は、略円筒状に構成されており、透明色の例えば合成樹脂材で構成されている。なお、ケース1の材質については何ら限定されるものではなく、例えば後述するLED2の光を透過する箇所が透明色であればよい。
【0014】
また、図1から理解される様に、ケース1の内面には、発光体となるLED2が取り付けられており、その上でケース1内には液体3が充填されている。
該液体3につき説明すると、該液体3は、絶縁抵抗値が10の8乗Ω以上の液体で、好ましくは絶縁抵抗値が10の10乗Ω以上の液体で構成するものとする。
【0015】
このような液体3で構成することにより、LED2や該LED2についての配線に前記液体3が直に接したとしても、電気漏れ等のおそれがなく、通常の絶縁シールと同様に、あるいはそれ以上に絶縁性を保つことが出来る。しかも液体であるため、LED2からの発熱を押さえることも出来る。
【0016】
そして、さらに、該液体3の粘度を、動粘性係数13mm/s 以上の液体とすれば、前記ケース1の密封性を高めるパッキンなどの気密材が直に液体3に接したとしても、前記パッキンなどの耐久性を低下させるおそれがないものとなる。
【0017】
図7に実験例を示す。図7から理解されるように、パッキンとしてシリコンゴムを使用した場合、動粘性係数13mm/s 以上の液体3とすれば、
シリコンゴムは例えば3日経過してもあるいは6日経過してもあまりその厚みに変化をもたらさないという結果が現れている。
【0018】
よって、動粘性係数13mm/s 以上の液体3であれば、前記ケース1の密封性を高めるパッキンなどの気密材が直に液体3に接したとしても、パッキンなどの耐久性が低下しないのである。
また、前記液体3の具体例としては、流動パラフィンやシリコンオイルあるいはそれらを混合したものが用いられるが、これらに限定されるものではなく、絶縁抵抗値が10の8乗Ω以上の液体で、好ましくは絶縁抵抗値が10の10乗Ω以上の液体で構成されているものであればよい。
【0019】
図8に本発明による液体3を冷却システムに使用した場合の実験例を示す。このグラフから理解されるように、本発明を使用した場合には明らかにLED2の基板の温度が低下していることが理解できる。
【0020】
ここで、グラフ上、「放熱システム内部」とは、ケース1内部に充填された液体3の温度上昇を表している。そして、「放熱システムあり」とは、前記充填された液体3により冷却されたLED基板の温度上昇を表したものである。
さらに、該液体3は、比較的透明性の高い液体を使用すべきである。
【0021】
しかして、この透明性の高い液体3と、透明性を有するケース1との組み合わせにより、レンズ部材4として機能することになり、LED2からの光は図1に示すように屈曲して外部へ投射される。
【実施例2】
【0022】
図2は本発明の第2実施例である。
【0023】
図2から理解されるように、ケース1は、LED2の取り付け面側を角筒状に形成し、LED2の投射面側を略半円状に構成したものである。
このような形状のケース1に構成すると、LED2の取り付け位置から略半円状をなす投射面5までの距離が実施例1の場合と比較して長く構成できるため、図1のようにLED2が発光した光が外側にあまり拡散せずに外部へ投射されるものとなる。すなわち、本実施例ではLED2の取り付け位置を0.42rの位置に設けたものであり、この場合、光は図2に示すように、平行に進むものとなる。・
【0024】
このケース1についても透明色の例えば合成樹脂材で構成されているが、ケース1の材質については何ら限定されるものではなく、例えばLED2の光を透過する箇所が透明色であればよいこと実施例1の場合と同様である。
【実施例3】
【0025】
図3に示す第3実施例では、前述した第2実施例のケース1よりさらに、LED2の取り付け位置から略半円状をなす投射面5までの距離を長く構成してある。よって、前記投射面から外部へ投射されるLED2の光は、図3に示すように若干収束され、幅の狭い光束となっている。すなわち、本実施例では、LED2の取り付け位置を円の外1rの位置設けたものであり、この場合、光は絞られるものとなる。
【実施例4】
【0026】
図4に第4実施例を示す。この実施例ではケース1の形状を略半円状の筒として構成してある。よって、LED2の取り付け位置から略半円状をなす投射面5までの距離が短く、LED2から発光された光は図4に示すように投射面5から拡散するものとなる。すなわち、本実施例では円の中心位置にLED2を取り付けた場合であり、この場合、光はいわゆる光源からほぼ直進する。
【実施例5】
【0027】
図5に示す第5実施例では、ケース1の形状につき、LED2の取り付け面側を角筒状に形成し、LED2の投射面側を略半円状に構成したものである。
このような形状のケース1に構成すると、LED2の取り付け位置から略半円状をなす投射面5までの距離が実施例4の場合と比較してさらに短く構成してあるため、図4に比較し、さらに投射面5から拡散するものとなる。すなわち、本実施例では、LED2の取り付け位置を円の内側0.5r野市に設けたものであり、この場合、光は広がる方向へ調整されるものとなる。
【実施例6】
【0028】
図6に示す第6実施例では、ケース1の形状を長方形状の筒に形成しており、長辺側の一辺略中央位置にLED2を取り付け、対向する長辺の他辺に形成された投射面5に光を投射している。
ここで、本実施例における投射面5はカーブする湾曲面としては構成されていないので図6に示すように大きく拡散してしまうものとなる。
【0029】
前述したように、本発明であれば、ケース1の形状と、ケース1内に充填される液体3とによって、レンズ部材4が形成されるため、ケース1の形状を各種変更することにより、外部へ向けて各種各様の光の束を投射することが出来るものとなっている。
【0030】
ここで、集魚灯にとって外部へ向けて投射される光の束の形状はきわめて重要なファクターである。
すなわち、集魚灯は、魚類が光に向かって集まる性質、すなわち魚の光走性を利用して多数の魚を捕獲するために用いられるものであるが、集魚灯の光によって作られる水中照度分布と集魚力とは関連があるとされているからである。
【0031】
よって、集魚灯の照射角度により照射範囲や照度を調節することで、集魚力が変わると考えられている。
なお、魚の光走性の理由に関しては複数の説があるが、例えば魚によって好む照度があるとする好適照度説を考えると、照度の調節によって捕獲の目的とする魚の種類に対応させることができると考えられる。
【0032】
魚の光走性すなわち、光に集まる性質としては前記した好適照度説があげられ、それぞれの魚種に好む照度があるとの説である。
また、集魚灯での照度の調節を行う理由として、光の浸透力あるいは光の透過率がイカやサバ等の網膜の分光感度に影響を与えるためといわれている。
【0033】
ところで、本発明の集魚灯は前述の如く、海中に水没させて使用するものである。従って、従来のように、集魚灯内部に空間が存在していると、従来、例えば、深海の中で使用すると、圧力バランスとれずに耐圧上問題が生じていたが、本発明においてはケース1内は液体3で充填されているため、たとえ深海の中で使用しても、良好な圧力バランスとれ、もって耐圧上問題は生じないものである。
【符号の説明】
【0034】
1 ケース
2 LED
3 液体
4 レンズ部材
5 投射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、該ケース内に取り付けられた発光体とを有して構成され、水中に水没させて、発光させ、該光によって集魚する水中集魚灯において、
前記発光体をLEDにより構成して前記ケース内に取り付け、ケース内には絶縁性を有し、透明性を有する液体を前記LED及び配線部に接触状態にして充填してなり、
前記液体をLEDの冷却部材とすると共に、所定形状の透明性を有するケースと、該ケース内の液体をLEDからの光を集光させて外部へ投射するレンズ部材として機能させた、
ことを特徴とする水中集魚灯。
【請求項2】
ケースと、該ケース内に取り付けられた発光体とを有して構成され、水中に水没させて、発光させ、該光によって集魚する水中集魚灯において、
前記発光体をLEDにより構成して前記ケース内に取り付け、ケース内には絶縁抵抗が10の8乗以上、好ましくは10の10乗以上の絶縁性を有し、透明性を有する液体を前記LED及び配線部に接触状態にして充填してなり、
前記液体をLEDの冷却部材とすると共に、所定形状の透明性を有するケースと、該ケース内の液体をLEDからの光を集光させて外部へ投射するレンズ部材として機能させた、
ことを特徴とする水中集魚灯。
【請求項3】
ケースと、該ケース内に取り付けられた発光体とを有して構成され、水中に水没させて、発光させ、該光によって集魚する水中集魚灯において、
前記発光体をLEDにより構成して前記ケース内に取り付け、ケース内には絶縁抵抗が10の8乗以上、好ましくは10の10乗以上の絶縁性を有し、粘度は、動粘性係数が13mm22/s以上であり、かつ透明性を有する液体を前記LED及び配線部に接触状態にして充填してなり、
前記液体をLEDの冷却部材とすると共に、所定形状の透明性を有するケースと、該ケース内の液体をLEDからの光を集光させて外部へ投射するレンズ部材として機能させた、
ことを特徴とする水中集魚灯。
【請求項4】
前記ケース内でのLEDの取り付け位置、ケースの外形形状は、該水中集魚灯が要求される配光特性に合わせて任意位置に取り付け決定できる、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の水中集魚灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−205961(P2011−205961A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76586(P2010−76586)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(502334973)株式会社イネックス (7)
【Fターム(参考)】